IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

特開2023-150132インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ
<>
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図1
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図2
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図3
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図4
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図5
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図6
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図7
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図8
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図9
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図10
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図11
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図12
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図13
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図14
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図15
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図16
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図17
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図18
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図19
  • 特開-インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150132
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20231005BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01F17/06 F
H01F17/06 D
H01F27/24 Q
H01F27/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059077
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】桑島 一
(72)【発明者】
【氏名】黒田 朋史
(72)【発明者】
【氏名】関 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 敦
(72)【発明者】
【氏名】飯笹 圭太郎
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA16
5E070CA03
5E070CA07
5E070DA15
5E070EA05
(57)【要約】
【課題】導体表面の絶縁性低下が抑制されたインダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】 インダクタ1の磁性コア10の貫通孔12内では、内側面12aとワイヤ20との間に第1樹脂51が介在しているため、ワイヤ20が貫通孔12の内側面12aに接しづらくなっている。外部からの大きな衝撃により、ワイヤ20が貫通孔12の内側面12aに接したとしても、第1樹脂51が緩衝材として機能するため、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21が剥離しづらくなっている。そのため、インダクタ1において、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21の剥離が抑制されており、ワイヤ20の絶縁性が低下する事態が効果的に抑制されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対面する第1主面および第2主面を有し、前記第1主面と前記第2主面との対面方向において積層された複数の磁性層を含む積層構造を有するとともに、前記第1主面と前記第2主面との対面方向に延びる貫通孔を有する磁性コアと、
前記磁性コアの前記貫通孔を貫くとともに、表面に絶縁被膜が設けられた導体と、
前記磁性コアの前記貫通孔の内側面と前記導体との間隙に配置された第1樹脂と
を備えるインダクタ。
【請求項2】
前記磁性コアが前記貫通孔を一対備え、
前記導体が、前記磁性コアの前記一対の貫通孔をそれぞれ貫く一対の貫通部と、前記一対の貫通部のそれぞれの前記第1主面側の端部を連結する連結部と、前記一対の貫通部のそれぞれの前記第2主面側の端部に設けられた一対の端子部とを備える、請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記磁性コアの第1主面と、前記第1主面上に位置する前記導体の前記連結部とを一体的に覆う第2樹脂をさらに備える、請求項2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記第2樹脂が、前記第1主面と前記第2主面との対面方向において重なる複数層の樹脂で構成されている、請求項3に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記第2樹脂が、樹脂層と該樹脂層上に重ねられた樹脂シートとを含む、請求項4に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記第2樹脂の前記樹脂層の表面が、前記導体の前記連結部の表面より前記磁性コアの第1主面側に位置している、請求項5に記載のインダクタ。
【請求項7】
前記第2樹脂が、前記樹脂層と前記樹脂シートとが交互に重ねられた積層構造を有し、
前記樹脂シートが、前記樹脂層を介して前記導体の前記連結部の表面を覆っている、請求項5に記載のインダクタ。
【請求項8】
前記第1樹脂が、前記磁性コアの前記第1主面側の前記間隙を部分的に埋めており、
前記第1樹脂と前記第2樹脂とが一体的に設けられている、請求項3~7のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項9】
前記第1樹脂が、前記磁性コアの前記第1主面側から前記第2主面側に亘って前記間隙を埋める、請求項8に記載のインダクタ。
【請求項10】
前記磁性コアの第2主面を覆う第3樹脂をさらに備える、請求項3~9のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項11】
前記磁性コアが、第1主面と第2主面とを結ぶ側面を有し、該側面を覆う第4樹脂をさらに備える、請求項10に記載のインダクタ。
【請求項12】
前記第1樹脂、前記第2樹脂、前記第3樹脂および前記第4樹脂が一体的に設けられている、請求項11に記載のインダクタ。
【請求項13】
前記磁性層を厚さ方向に貫く複数のギャップにより前記磁性層が複数に分割されており、
前記第1樹脂、前記第2樹脂、前記第3樹脂および前記第4樹脂の少なくともいずれか1つが、前記ギャップに入り込んでいる、請求項11または12に記載のインダクタ。
【請求項14】
前記磁性コアの前記貫通孔の内側面が凹凸を有し、該凹凸の少なくとも一部の凹部に前記第1樹脂が入り込んでいる、請求項1~13のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項15】
前記磁性層を構成する材料がアモルファスまたはナノ結晶合金である、請求項1~14のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のインダクタを備える、DC-DCコンバータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、1対の貫通孔が設けられた圧粉磁芯と、圧粉磁芯の1対の貫通孔の両方を貫通する1本の導体とを備えた構成のインダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-022724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インダクタのコアとして、アモルファスリボンまたはナノ結晶リボンを積層した積層コアを用いる技術が知られており、このような積層コアによれば飽和磁束密度を高めることができ、それにより良好な直流重畳特性を実現することができる。
【0005】
しかしながら、積層コアに貫通孔を設けた場合には、貫通孔の内側面が粗くなりやすいため、貫通孔を貫通する導体の表面が貫通孔の内側面に接して、導体の表面が損傷する事態が考えられ、導体の表面に絶縁被膜が設けられている場合には絶縁被膜が剥離して、導体表面の絶縁性が低下する事態が考えられる。
【0006】
本開示は、導体表面の絶縁性低下が抑制されたインダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係るインダクタは、互いに対面する第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との対面方向において積層された複数の磁性層を含む積層構造を有するとともに、第1主面と第2主面との対面方向に延びる貫通孔を有する磁性コアと、磁性コアの貫通孔を貫くとともに、表面に絶縁被膜が設けられた導体と、磁性コアの貫通孔の内側面と導体との間隙に配置された第1樹脂とを備える。
【0008】
本開示の一形態に係るDC-DCコンバータは、上記インダクタを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、導体表面の絶縁性低下が抑制されたインダクタおよびそれを用いたDC-DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るインダクタを示す概略斜視図である。
図2図1に示した磁性コアを示す概略斜視図である。
図3図1に示したワイヤを示す概略斜視図である。
図4図1に示したインダクタのIV-IV線断面図である。
図5図1に示したインダクタの底面図である。
図6】磁性コアの構成を示した概略断面図である。
図7】磁性コアの貫通孔の内部の様子を示した図である。
図8図1に示したインダクタが用いられるDC-DCコンバータの回路を示した図である。
図9】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図10図9に示したインダクタの平面図である。
図11】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図12】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図13】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図14】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図15】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図16】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図17】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図18】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図19】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
図20】異なる形態のインダクタを示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
図1に、一実施形態に係るインダクタ1を示す。インダクタ1は、図8に示すDC-DCコンバータ5の回路のチョークコイルに採用され得る。インダクタ1は、磁性コア10と、一対のワイヤ20(導体)とを備えて構成されている。すなわち、本実施形態に係るインダクタ1は、1つの磁性コアに2つのインダクタを設けた複合インダクタである。
【0013】
DC-DCコンバータ5は、直流入力電圧が入力される一対の入力端子と、一対の出力端子と、一対の入力端子の高電位側に直列接続されるスイッチング素子およびチョークコイルと、スイッチング素子とチョークコイルとの接続点と一対の入力端子の低電位側との間に接続されるダイオードと、一対の出力端子間に接続されるコンデンサと、を備えている。このDC-DCコンバータ5は、図示しない制御回路からの制御信号に基づき、スイッチング素子のオンとオフが切り替えられることで、入力直流電圧を降圧する降圧コンバータとして動作する。なお、DC-DCコンバータ5は、スイッチング素子、チョークコイル、ダイオードによる変換部を複数備え、これら変換部が並列接続されたマルチフェーズコンバータであってもよく、各変換部のチョークコイルとして上記インダクタ1が採用され得る。
【0014】
磁性コア10は、図2に示すように略直方体の外形を有する。磁性コア10は、上面10a(第1主面)、下面10b(第2主面)、互いに対面する一対の側面10c、10dおよび互いに対面する一対の側面10e、10fを有する。磁性コア10には、その厚さ方向(すなわち、上面10aと下面10bとの対面方向)に延びて磁性コア10を貫通する、互いに平行な4つの貫通孔12を有する。4つの貫通孔12は、側面10c、10dの対面方向および側面10e、10fの対面方向に沿って、2行2列で整列されて配置されている。各貫通孔12は、略長方形状の開口形状および断面形状を有し、その長辺は側面10e、10fの対面方向と平行になっている。磁性コア10の貫通孔12はたとえば打ち抜き加工により形成することができる。なお、4つの貫通孔は互いに平行でなくても構わない。また、各貫通孔12の開口形状は略長方形状に限られず、略円形状、略楕円形状、頂点の数が4つ以上の多角形状であっても構わない。
【0015】
一対のワイヤ20はいずれも、Cu、Ag、Au、Al、Niなどから選ばれる金属で構成されており、図3に示す形状を有する。詳しくは、各ワイヤ20は1本の細長い帯状導体が矩形波状に折り曲げられた構成を有する。より詳しくは、各ワイヤ20は、一対の貫通部22と連結部24と一対の端子部26とを備えて構成されている。
【0016】
一対の貫通部22は、同じ長さを有し、互いに平行に延びている。図1に示すようにワイヤ20が磁性コア10に取り付けられた状態では、一対の貫通部22は、磁性コア10の厚さ方向(すなわち、貫通孔12の延在方向)に延びて、磁性コア10の側面10c、10dの対面方向に沿って並ぶ一対の貫通孔12をそれぞれ貫く。なお、一対の貫通部22は、互いに平行でなくてもよく、たとえば一方が他方に対して所定角度だけ傾いていてもよい。
【0017】
連結部24は、ワイヤ20の中間部に位置しており、一対の貫通部22のそれぞれの上端を連結する部分である。図1に示すようにワイヤ20が磁性コア10に取り付けられた状態では、連結部24は、磁性コア10の上面10a上に露出し、側面10c、10dの対面方向に沿って延びる。
【0018】
一対の端子部26はいずれもワイヤ20の端部であり、一対の貫通部22のそれぞれの下端から互いに離れるように延びている。図1に示すようにワイヤ20が磁性コア10に取り付けられた状態では、一対の端子部26は、磁性コア10の下面10b上に露出し、側面10c、10dの対面方向に沿って延びる。詳しくは、図5に示すように、一方の端子部26が側面10cに向かって延び、他方の端子部26が側面10dに向かって延びる。一対の端子部26は、インダクタ1の端子として機能し、インダクタ1が表面実装される回路基板側の端子と電気的に接続され得る。本実施形態では、一対の端子部26は下面10b上において終端しているが、必要に応じて側面10c、10dに沿って延びるように引き延ばしてもよい。また、一対の端子部26は、一対の貫通部22のそれぞれの下端から、接触しない範囲で、互いに近づくように延びていてもよい。
【0019】
各ワイヤ20は、図4に示すように、表面に絶縁被膜21が設けられている。端子部26では電気的接続のために絶縁被膜21が部分的に除かれているが、それ以外の部分には絶縁被膜21が設けられている。絶縁被膜21は、たとえばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ジアリルフタレート等で構成されている。絶縁被膜21の厚さは0.005~0.1mm(一例として0.02mm)である。
【0020】
次に、磁性コア10の構成について図6を参照しつつ説明する。
【0021】
図6に示すように、磁性コア10は、複数の磁性薄帯30と複数の接着層40(絶縁層)とを含む積層構造を有する。詳しくは、磁性コア10の厚さ方向に沿って、磁性薄帯30と接着層40とが交互に並んでいる。磁性コア10に含まれる磁性薄帯30の層数は、一例として120層である。磁性コア10の上面10aおよび下面10bは、磁性薄帯30または絶縁層40で構成されていてもよく、必要に応じて別途に設けられた保護膜で構成されていてもよい。
【0022】
磁性薄帯30は、金属軟磁性体の薄帯で構成されており、たとえば、アモルファス合金、微結晶合金、パーマロイ、ナノヘテロ構造からなる合金等の磁性合金などで構成され得る。アモルファス合金材料には、Fe基アモルファス軟磁性材料、Co基アモルファス軟磁性材料などがあり、また、微結晶合金にはFe基ナノ結晶軟磁性材料などがある。ナノヘテロ構造とは微結晶がアモルファス中に存在する構造のことを指す。
【0023】
各磁性薄帯30は、複数の微小なギャップ32(マイクロギャップ)を有する。各ギャップ32は磁性薄帯30をその厚さ方向に貫いており、ギャップ32において各磁性薄帯30は分断されている。すなわち、各磁性薄帯30は、複数のギャップ32により、複数の小片に分割されている。図6では、複数のギャップ32の幅を一様に示しているが、複数のギャップ32の幅にはある程度のバラツキがある。
【0024】
複数のギャップ32の平均の幅wは、磁性コア10の断面の撮像を画像解析することにより求めることができる。たとえば、磁性コア10を厚さ方向に切断するとともにその切断面を鏡面研磨し、鏡面研磨された切断面を顕微鏡(たとえば光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡)により観察する。このとき、複数の磁性薄帯30が接着層40を介して積層された構造を観察することができ、また、各磁性薄帯30に微小なギャップが形成されている構造を観察することができる。そして、磁性コア10の鏡面研磨された切断面の写真を撮影し、その写真を画像解析し、複数のギャップ32(少なくとも50個のギャップ)においてそれぞれの幅を測定し、その測定結果から平均の幅wを算出する。
【0025】
ギャップ32の幅に関しては、複数の磁性薄帯30のそれぞれにおいて傾向が異なることがあり得るため、ランダムに選出した3~4層の磁性薄帯30において幅の平均を求めてもよい。図6に示したように、1つのギャップ32において幅が均一(すなわち、磁性薄帯30の厚さ方向において幅が変わらない)である場合と、1つのギャップ32において幅が不均一である場合がある。たとえば、ギャップ32の両側に位置する磁性薄帯30の端面が平行でない場合や、磁性薄帯30の端面が厚さ方向に対して交差する方向に延びる場合に、ギャップ32の幅が不均一となり得る。1つのギャップ32において幅が不均一である場合には、そのギャップの幅は、そのギャップ32における最小距離を採用する。磁性薄帯30をその厚さ方向に貫いていないものについては、ギャップ32とカウントしないようにする。
【0026】
磁性薄帯30において隣り合うギャップ32の平均の離間距離dについても、複数のギャップ32の平均の幅w同様、磁性コア10の断面の撮像を画像解析することにより求めることができる。ギャップ32の平均の離間距離dは、複数のギャップ対(少なくとも50対のギャップ)においてそれぞれの離間距離を測定し、その測定結果から平均の離間距離dを算出する。ギャップ32の離間距離も、ギャップ32の幅同様、複数の磁性薄帯30のそれぞれにおいて傾向が異なることがあり得るため、ランダムに選出した3~4層の磁性薄帯30において離間距離の平均を求めてもよい。一対のギャップ32の少なくとも一方の幅が不均一である場合の離間距離は、磁性薄帯30の厚さ方向の中央位置における離間距離を採用する。
【0027】
磁性薄帯30の平均の厚さTおよび平均の層間距離tについても、複数のギャップ32の平均の幅w同様、磁性コア10の断面の撮像を画像解析することにより求めることができる。本実施形態において、磁性薄帯30の層間距離は接着層40の厚さに相当する。磁性薄帯30の厚さおよび層間距離にはバラツキがあり得るため、磁性コア10の厚さ方向に延びる基準線Lを設けて、その基準線L上における磁性薄帯30の厚さおよび層間距離を採用する。磁性薄帯30の平均の厚さTは、複数層の磁性薄帯30(少なくとも50層)においてそれぞれの厚さを測定し、その測定結果から平均の厚さTを算出する。同様に、磁性薄帯30の平均の層間距離tは、複数層の磁性薄帯30(少なくとも50層)においてそれぞれの層間距離を測定し、その測定結果から平均の層間距離tを算出する。磁性薄帯30の厚さおよび層間距離に用いる基準線Lは、1本であってもよく、複数本であってもよい。たとえば、磁性薄帯30の層数が比較的少ない場合(たとえば、50層未満)、複数本の基準線Lを用いてもよい。
【0028】
接着層40は、非磁性の絶縁性材料で構成されている。接着層40は、たとえばアクリル系接着材、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等からなる接着材やホットメルト等を用いることができる。接着層40により磁性薄帯30の分割後の小片の脱落を抑えることができる。接着層40は、磁性薄帯30上に直接塗布して形成してもよく、またPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの基材表面に塗布したものを転写して形成してもよい。
【0029】
続いて、本実施形態に係る磁性コア10を作製する手順について説明する。磁性コア10を作製する際には、まず、接着層40を介して複数(たとえば4枚)の磁性薄帯30を積層し、プレスすることにより一体化された磁性シートを作製する。磁性薄帯30の厚さはたとえば20μm程度であり、透磁率はたとえば20000程度である。次に、磁性シートをローラで押圧することにより、磁性シートを構成する磁性薄帯30にクラックを生じさせて、磁性薄帯30を厚さ方向に貫くギャップ32を形成する。ギャップ32の平均の幅wおよび平均の離間距離dについては、ローラの径、押圧力、押圧速度などによって調整され得る。ローラの表面に凹凸を設けて調整することもできる。磁性シートのみをローラで押圧すると、ローラによる圧延作用によって磁性シートが面内に広がるとともに、処理で生じたギャップ32の幅を広げることができる。したがって、たとえば磁性シートが厚いほど、または押圧力が高いほど、ギャップ32の幅を広げることができる。一方、磁性シートをベースプレート(またはベースフィルム)に接着した状態でローラにより押圧すると、磁性シートはベースプレート等により拘束されるため、厚さ方向に直交する方向への広がりを抑えることができ、ギャップ32の幅を狭めることができる。これらの条件を適宜調整することで、所望の幅を有するギャップ32を形成することができる。次に、ギャップ32が形成された磁性シートを、磁性コア10の外形に合わせて打ち抜き加工し、接着層40を介して複数枚積層することで磁性コア10を作製する。たとえば4枚積層された磁性シートを25枚積層することで100層の磁性薄帯30が積層された磁性コア10とすることができる。磁性コア10の貫通孔は積層前の磁性シートに打ち抜き加工などで形成することができる。
【0030】
ここで、インダクタ1においては、図4に示すように、磁性コア10の貫通孔12内には第1樹脂51が設けられている。第1樹脂51は、磁性コア10の貫通孔12の内側面12aとワイヤ20の貫通部22との間隙に配置され、両者の間に第1樹脂51が介在している。本実施形態では、第1樹脂51は、磁性コア10の貫通孔12とワイヤ20との間隙に充填されて、磁性コア10の上面10aから下面10bに亘って間隙を完全に埋めている。第1樹脂51は、たとえばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ジアリルフタレート等で構成されている。第1樹脂51は、たとえば鉄、コバルト等からなるアモルファスやナノ結晶、パーマロイ、ケイ素鋼等の磁性材を含んでいてもよい。
【0031】
上述したとおり、磁性コア10は複数の磁性薄帯30を含む積層構造を有するため、貫通孔12の内側面12aは平滑にはなりにくく、図7に示すように貫通孔12の全長に亘ってある程度の凹凸が生じている。そのため、外部からの衝撃等によりワイヤ20が貫通孔12の内側面12aに接した場合には、ワイヤ20の表面が損傷し、場合によっては絶縁被膜21の剥離が生じ得る。特に、ワイヤ20の連結部24と貫通部22との間の屈曲箇所(図7の符号G1の箇所)および端子部26と貫通部22との間の屈曲箇所(図7の符号G2の箇所)は、ワイヤ20が貫通孔12の内側面12aに接しやすく、ワイヤ20の表面が損傷しやすい。
【0032】
上述したとおり、インダクタ1の磁性コア10の貫通孔12内では、内側面12aとワイヤ20との間に第1樹脂51が介在しているため、ワイヤ20が貫通孔12の内側面12aに接しづらくなっている。外部からの大きな衝撃により、ワイヤ20が貫通孔12の内側面12aに接したとしても、第1樹脂51が緩衝材として機能するため、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21が剥離しづらくなっている。したがって、インダクタ1において、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21の剥離が抑制されており、ワイヤ20の絶縁性が低下する事態が効果的に抑制されている。
【0033】
本実施形態においては、貫通孔12の内側面12aとワイヤ20との間に介在する第1樹脂51が、貫通孔12の内側面12aに形成された凹凸の少なくとも一部の凹部に入り込んでいる。それにより、第1樹脂51の磁性コア10に対する密着性が向上している。
【0034】
第1樹脂51は、貫通孔12の内側面12aとワイヤ20との間隙を完全に埋める態様であってもよく、間隙の一部を埋める態様であってもよい。たとえば、第1樹脂51は、上記間隙を貫通孔12の全長にわたって埋める態様ではなく、たとえば上面10a側の間隙を部分的に埋める態様であってもよい。また、第1樹脂51は空孔(ボイド)を含んでいてもよい。空孔は、たとえば第1樹脂51を貫通孔12内に充填する際に巻き込まれた空気が気泡となって生じる。
【0035】
上述したインダクタ1は、上記構成に限られず、図9~20に示した構成であってもよい。
【0036】
図9に示した態様では、磁性コア10の上面10aを覆う第2樹脂52が設けられている。第2樹脂52は、磁性コア10の上面10aの全面を覆うとともに、上面10a上に位置するワイヤ20の連結部24とを一体的に覆っている。第2樹脂52は、たとえばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ジアリルフタレート等で構成されている。第2樹脂52は、たとえば鉄、コバルト等からなるアモルファスやナノ結晶、パーマロイ、ケイ素鋼等の磁性材を含んでいてもよい。第2樹脂52は、第1樹脂51と同じ材料で構成される場合には、第1樹脂51と一体的に設けることができる。第2樹脂52の厚さは0.1~2.0mm(一例として0.4mm)である。第2樹脂52は、たとえば、樹脂シートの積層、ペースト状樹脂の塗布成形、顆粒状樹脂や樹脂タブレットを用いた成形により形成することができる。図9に示すように、ワイヤ20の端子部26には導電被覆27を設けることができる。導電被覆27は、絶縁被膜21が除去された領域およびワイヤ端面領域を覆っている。導電被覆27は、たとえばSn、Au、Ag、Cu、Niなどから選ばれる金属で構成されている。導電被覆27は、単層であってもよく複数層構造であってもよい。
【0037】
図10に示すように、第2樹脂52の上面にはマーク7を設けることができる。マーク7には、製品の型番、トレーサビリティ情報、インダクタ1の向きを識別することができる方向識別マークが含まれ得る。マーク7は、たとえば印刷やレーザ刻印により設けることができる。
【0038】
図11に示した態様では、第2樹脂52が上面10aを覆う磁性コア10において、第1樹脂51が上面10a側の間隙を部分的に埋めている。この場合も、第1樹脂51と第2樹脂52とが同じ材料で構成される場合には、第1樹脂51と第2樹脂52とを一体的に設けることができる。たとえば、磁性コア10の上面10a上に第2樹脂52を塗布形成する際に、塗布される樹脂材料を上面10a側の間隙に入り込ませることで、第2樹脂52と一体的である第1樹脂51を間隙内に設けることができる。このような第1樹脂51は、特にワイヤ20の連結部24と貫通部22との間の屈曲箇所(図7の符号G1の箇所)において緩衝材として機能し、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21の剥離を抑制する。
【0039】
第2樹脂52は、図12に示すようにワイヤ20の連結部24と面一となる厚さであってもよい。この場合、第2樹脂52からワイヤ20の連結部24が露出するが、ワイヤ20の表面には絶縁被膜21が設けられているため、ワイヤ20の絶縁性は確保されている。第2樹脂52は、図13に示すように複数層構造(すなわち、磁性コア10の厚さ方向において複数の層が重なった構造)であってもよい。図13に示した第2樹脂52は、磁性コア10から近い順に第1層52a、第2層52bが並ぶ2層構造である。第2樹脂52を構成する各層は構成材料が異なる。第2樹脂52の第1層52aおよび第2層52bの少なくとも一方は樹脂シートで構成されていてもよい。図13に示した第2樹脂52では第2層52bのみ樹脂シートで構成されている。第2樹脂52の第1層52aは、ワイヤ20の連結部24の表面(頂面)より下側(すなわち、磁性コア10の上面10a側)に位置している。第2樹脂52は、図14に示すように複数の第1層52aと複数の第2層52bとが交互に並ぶ多層構造であってもよい。図14に示した第2樹脂52は、磁性コア10の上面10a上に位置する連結部24を収容するキャビティ52cが設けられている。図14に示した第2樹脂52では、磁性コア10の上面10a上に第1層52aが位置している。複数の第1層52aはいずれも樹脂接着材で構成されており、複数の第2層52bはいずれも樹脂シートで構成されている。第2樹脂52の第2層52bが樹脂シートで構成される場合、接着性を備えた樹脂シートを用いてもよく、第2層52bにおける第1層52a側の表面に接着樹脂層を設けた樹脂シートを用いても構わない。第2樹脂52の第1層52aが第1樹脂51と同じ材料で構成される場合には、磁性コア10の上面10a上に位置する第1層52aは上面10a側の間隙を部分的に埋める第1樹脂51と一体的に設けることができる。たとえば、磁性コア10の上面10a上に第2樹脂52の第1層52aを塗布形成する際に、塗布される樹脂材料を上面10a側の間隙に入り込ませることで、第2樹脂52の第1層52aと一体的である第1樹脂51を間隙内に設けることができる。図14に示した第2樹脂52では、樹脂シートで構成された第2層52bが第1層52aを介してワイヤ20の連結部24の表面(頂面)を覆っている。ワイヤ20の連結部24の表面と第1層52aは接していてもよく、間に隙間を設けていてもよい。
【0040】
磁性コア10の上面10aが第2樹脂52により覆われることで、磁性コア10の上面10a側からのワイヤ20の保護が図られる。また、インダクタ1の上面が平坦面となるため、たとえば基板実装時にピックアップする際の取扱い性が向上する。
【0041】
図15に示した態様では、磁性コア10の下面10bを覆う第3樹脂53が設けられている。第3樹脂53からワイヤ20の端子部26の一部が露出している。第3樹脂53は、たとえばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ジアリルフタレート等で構成されている。第3樹脂53は、たとえば鉄、コバルト等からなるアモルファスやナノ結晶、パーマロイ、ケイ素鋼等の磁性材を含んでいてもよい。第3樹脂53は、第1樹脂51と同じ材料で構成される場合には、第1樹脂51と一体的に設けることができる。第3樹脂53の厚さは0.05~0.5mm(一例として0.2mm)である。第3樹脂53は、ワイヤ20の端子部26と面一となる厚さであってもよい。第3樹脂53の下面は、ワイヤ20の端子部26の下面より上側(すなわち、磁性コア10の下面10b側)に位置していてもよい。第3樹脂53から露出するワイヤ20の端子部26には導電被覆27を設けてもよい。導電被覆27は、第3樹脂53から露出した領域であって絶縁被膜21が除去された領域を覆っている。第3樹脂53は、図16に示すように複数層構造(すなわち、磁性コア10の厚さ方向において複数の層が重なった構造)であってもよい。図16に示した第3樹脂53は、磁性コア10から近い順に第1層53a、第2層53bが並ぶ2層構造である。第3樹脂53を構成する各層は構成材料が異なる。
【0042】
図17に示した態様では、磁性コア10の側面10c、10dを覆う第4樹脂54が設けられている。第4樹脂54は、4つの側面10c~10fを覆っており、磁性コア10を囲むように一体的に設けられている。第4樹脂54は、たとえばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ジアリルフタレート等で構成されている。第4樹脂54は、たとえば鉄、コバルト等からなるアモルファスやナノ結晶、パーマロイ、ケイ素鋼等の磁性材を含んでいてもよい。第4樹脂54は、第1樹脂51、第2樹脂52および第3樹脂53と同じ材料で構成される場合には、第1樹脂51、第2樹脂52および第3樹脂53と一体的に設けることができる。第4樹脂54の厚さは0.01~1mm(一例として0.1mm)である。
【0043】
図18に示した態様では、磁性コア10の全ての表面が絶縁被膜11で構成されている。絶縁被膜11は、磁性コア10の上面10a、下面10b、側面10c~10fを構成するとともに、貫通孔12の内側面12aを構成している。絶縁被膜11は、たとえばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ジアリルフタレート等で構成されている。絶縁被膜11の厚さは0.005~1mm(一例として0.075mm)である。絶縁被膜11により、ワイヤ20は貫通孔12の内側面12aにさらに接しづらくなっており、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21がさらに剥離しづらくなっている。
【0044】
図19に示した態様では、さらに、磁性コア10の角部が面取りされている。具体的には、磁性コア10の上面10a、下面10b、側面10c~10fによって画成される角部、および、貫通孔の開口縁に位置する角部が面取りされている。つまり、磁性コア10の上面10a、下面10b、側面10c~10fによって画成される角部、および、貫通孔の開口縁に位置する角部は湾曲している。面取りは、C面取りであってもよくR面取りであってもよい。面取りにより、ワイヤ20の連結部24と貫通部22との間の屈曲箇所(図7の符号G1の箇所)および端子部26と貫通部22との間の屈曲箇所(図7の符号G2の箇所)では、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21がさらに剥離しづらくなっている。
【0045】
図20に示した態様では、磁性コア10の上面10aおよび下面10bが樹脂保護膜11で構成されている。樹脂保護膜11は、たとえばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ジアリルフタレート等で構成されている。樹脂保護膜11の厚さは0.005~1mm(一例として0.075mm)である。樹脂保護膜11により、ワイヤ20の表面の絶縁被膜21がさらに剥離しづらくなっている。なお、磁性コア10の上面10aおよび下面10bのいずれか一方が、樹脂保護膜11で構成された態様であってもよい。
【0046】
磁性コア10を覆う樹脂材および磁性コア10を構成する樹脂材(すなわち、第1樹脂51、第2樹脂52、第3樹脂53、第4樹脂54、絶縁被膜11、樹脂保護膜11)の樹脂材料は、磁性コア10を構成する磁性薄帯30のギャップに入り込んでいてもよい。
【0047】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0048】
たとえば、磁性コアの貫通孔の数は、4本に限らず、1~3本であってもよく5本以上であってもよい。ワイヤの数は、2本に限らず、磁性コアに設けられた貫通孔の数に応じて適宜増減することができる。
【0049】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本開示の一形態に係るインダクタは、互いに対面する第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との対面方向において積層された複数の磁性層を含む積層構造を有するとともに、第1主面と第2主面との対面方向に延びる貫通孔を有する磁性コアと、磁性コアの貫通孔を貫くとともに、表面に絶縁被膜が設けられた導体と、磁性コアの貫通孔の内側面と導体との間隙に配置された第1樹脂とを備える。
【0051】
上記インダクタにおいては、磁性コアの貫通孔の内側面が粗い場合であっても、貫通孔と導体との間隙に配置される第1樹脂により、導体の表面が貫通孔の内側面に接する事態が抑制されている。そのため、導体の表面に設けられた絶縁被膜が剥離する事態が抑制されている。
【0052】
他の形態に係るインダクタは、磁性コアが貫通孔を一対備え、導体が、磁性コアの一対の貫通孔をそれぞれ貫く一対の貫通部と、一対の貫通部のそれぞれの第1主面側の端部を連結する連結部と、一対の貫通部のそれぞれの第2主面側の端部に設けられた一対の端子部とを備えていてもよい。この場合、導体の表面に設けられた絶縁被膜が剥離する事態が抑制された1ターンコイルが得られる。
【0053】
他の形態に係るインダクタは、磁性コアの第1主面と、第1主面上に位置する導体の連結部とを一体的に覆う第2樹脂をさらに備えていてもよい。この場合、磁性コアの第1主面側からの導体の保護が図られる。また、インダクタの第1主面を平坦面とすることができ、たとえば基板実装時にピックアップする際の取扱い性が向上する。
【0054】
他の形態に係るインダクタは、第2樹脂が、第1主面と第2主面との対面方向において重なる複数層の樹脂で構成されていてもよい。この場合、インダクタの第1主面の平坦性がより高まる。
【0055】
他の形態に係るインダクタは、第2樹脂が、樹脂層と該樹脂層上に重ねられた樹脂シートとを含んでいてもよい。この場合、平坦性および厚み精度の高い樹脂シートを樹脂層上に重ねることで、インダクタの第1主面の平坦性がより高まる。
【0056】
他の形態に係るインダクタは、第2樹脂の樹脂層の表面が、導体の連結部の表面より磁性コアの第1主面側に位置していてもよい。この場合、樹脂シートと導体との密着性が向上し、導体の磁性コアに対する固着強度が高まる。
【0057】
他の形態に係るインダクタは、第2樹脂が、樹脂層と樹脂シートとが交互に重ねられた積層構造を有し、樹脂シートが、樹脂層を介して導体の連結部の表面を覆っていてもよい。この場合、樹脂シートと導体との密着性が向上する。
【0058】
他の形態に係るインダクタは、第1樹脂が、磁性コアの第1主面側の間隙を部分的に埋めており、第1樹脂と第2樹脂とが一体的に設けられていてもよい。この場合、導体の磁性コアに対する固着強度が高まる。また、外部からの衝撃等により導体が磁性コアの貫通孔の内側面に接することが抑制され、導体の表面に設けられた絶縁被膜が剥離する事態が抑制される。
【0059】
他の形態に係るインダクタは、第1樹脂が、磁性コアの第1主面側から第2主面側に亘って間隙を埋めてもよい。この場合、導体の磁性コアに対する固着強度が高まる。また、外部からの衝撃等により導体が磁性コアの貫通孔の内側面に接することが抑制され、導体の表面に設けられた絶縁被膜が剥離する事態が抑制される。
【0060】
他の形態に係るインダクタは、磁性コアの第2主面を覆う第3樹脂をさらに備えていてもよい。この場合、導体の一対の端子部の固着強度が高まる。また、インダクタの第2主面の平坦性が高まる。
【0061】
他の形態に係るインダクタは、磁性コアが、第1主面と第2主面とを結ぶ側面を有し、該側面を覆う第4樹脂をさらに備えていてもよい。この場合、磁性コアの外部からの絶縁性が高まる。
【0062】
他の形態に係るインダクタは、第1樹脂、第2樹脂、第3樹脂および第4樹脂が一体的に設けられていてもよい。この場合、樹脂により磁性コア及び導体の大部分が覆われることになるため、絶縁性がより高まる。
【0063】
他の形態に係るインダクタは、磁性層を厚さ方向に貫く複数のギャップにより磁性層が複数に分割されており、第1樹脂、第2樹脂層、第3樹脂および第4樹脂の少なくともいずれか1つが、ギャップに入り込んでいてもよい。この場合、第1樹脂、第2樹脂層、第3樹脂および第4樹脂の少なくともいずれか1つと磁性コアとの密着性が向上する。
【0064】
他の形態に係るインダクタは、磁性コアの貫通孔の内側面が凹凸を有し、該凹凸の少なくとも一部の凹部に第1樹脂が入り込んでいてもよい。この場合、第1樹脂の磁性コアに対する密着性が向上する。また、導体が磁性コアに固着され、外部からの衝撃等により導体が磁性コアの貫通孔の内側面に接することが抑制され、導体の表面に設けられた絶縁被膜が剥離する事態が抑制される。
【0065】
他の形態に係るインダクタは、磁性層を構成する材料がアモルファスまたはナノ結晶合金であってもよい。この場合、インダクタの大型化を抑制しつつ、インダクタンスが向上する。
【0066】
本開示の一形態に係るDC-DCコンバータは、上記インダクタを備える。
【0067】
上記DC-DCコンバータにおいては、導体の表面に設けられた絶縁被膜が剥離する事態が抑制されたインダクタを備えたDC-DCコンバータが得られる。
【符号の説明】
【0068】
1…インダクタ、5…DC-DCコンバータ、10…磁性コア、12…貫通孔、20…ワイヤ、21…絶縁被膜、22…貫通部、24…連結部、26…端子部、30…磁性薄帯、32…ギャップ、40…接着層、51…第1樹脂、52…第2樹脂、53…第3樹脂、54…第4樹脂。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20