(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150146
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20231005BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20231005BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20231005BHJP
【FI】
B60J5/00 K
E05F15/611
E05F15/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059094
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】植田 祐生
(72)【発明者】
【氏名】中田 千秋
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052EA03
2E052EC01
2E052GA06
2E052GB01
2E052GB12
2E052GC02
2E052GC10
2E052GD03
(57)【要約】
【課題】コストを増大させずかつ設計し難くなることを防止しつつドアの接触回避を支援する支援制御を行うことができる車両を提供することである。
【解決手段】ドアが開く方向の所定範囲内に障害物が存在するか否かを特定するためのセンサと、車両の周囲の状況を取得するカメラとを備える車両であって、カメラにより取得される周囲の状況であってドアが軸支されている側面の状況の変化に基づいてドアの可動状態を特定し、障害物が存在することを特定しているときであってドアが開いているときの可動状態に基づいて開いているドアが障害物に接触してしまう可能性が高まる閾値を超えた所定の状態であるか否かを判定し、所定の状態であると判定されたときに障害物への接触回避のための回避支援制御を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面に対して開閉自在に軸支されているドアと、
前記ドアが開く方向の所定範囲内に障害物が存在するか否かを特定する障害物特定手段と、
車両の周囲の状況を取得する周囲状況取得手段と、
前記周囲状況取得手段により取得される周囲の状況であって前記ドアが軸支されている側面の状況の変化に基づいて、前記ドアの可動状態を特定する可動状態特定手段と、
障害物が存在することを前記障害物特定手段が特定しているときであって前記ドアが開いているときの可動状態に基づいて、開いているドアが前記障害物に接触してしまう可能性が高まる所定の状態であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記所定の状態であると判定されたときに、前記障害物への接触回避のための支援制御を行う支援制御手段とを備える、車両。
【請求項2】
前記障害物特定手段は、車両コーナー周辺に存在する障害物までの距離を検出する検出部を含み、当該検出部による検出結果に基づいて前記所定範囲内に障害物が存在するか否かを特定する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ドアの可動状態は、前記ドアが開いている開度と、前記ドアが開く際の開速度との少なくとも一方を含む、請求項1または請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記周囲状況取得手段は、イグニッションがオン状態であるときのみならず、イグニッションがオフ状態となってから所定の降車条件が成立するまでの間においても、周囲の状況を取得する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアの表面に対し、ドアが開扉される方向にずれた平面を走査するようにレーザ光を送光するとともに、障害物によって反射された反射光を受光するレーザセンサと、レーザセンサからの信号に基づきドアの開扉される方向に存在する障害物を検出する制御装置とを備え、障害物が検出されたときにドアが障害物に接触することを回避するための支援制御を行う車両が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術におけるレーザセンサは、ドアの開扉される方向に存在する障害物を検出するためだけに搭載されたセンサであるため、製造コスト・車両単価を増大させてしまうことに加え、搭載するための専用スペースをドア周辺に新たに設ける必要があり設計し難いものとなる虞があった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、コストを増大させずかつ設計し難くなることを防止しつつドアの接触回避を支援する支援制御を行うことができる車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる車両は、車両の側面に対して開閉自在に軸支されているドアと、
前記ドアが開く方向の所定範囲内に障害物が存在するか否かを特定する障害物特定手段と、
車両の周囲の状況を取得する周囲状況取得手段と、
前記周囲状況取得手段により取得される周囲の状況であって前記ドアが軸支されている側面の状況の変化に基づいて、前記ドアの可動状態を特定する可動状態特定手段と、
障害物が存在することを前記障害物特定手段が特定しているときであって前記ドアが開いているときの可動状態に基づいて、開いているドアが前記障害物に接触してしまう可能性が高まる所定の状態であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記所定の状態であると判定されたときに、前記障害物への接触回避のための支援制御を行う支援制御手段とを備える。
【0007】
本発明にかかる車両の一実施形態においては、前記障害物特定手段は、車両コーナー周辺に存在する障害物までの距離を検出する検出部を含み、当該検出部による検出結果に基づいて前記所定範囲内に障害物が存在するか否かを特定する。
【0008】
本発明にかかる車両の別の実施形態においては、前記ドアの可動状態は、前記ドアが開いている開度と、前記ドアが開く際の開速度との少なくとも一方を含む。
【0009】
本発明にかかる車両の別の実施形態においては、前記周囲状況取得手段は、イグニッションがオン状態であるときのみならず、イグニッションがオフ状態となってから所定の降車条件が成立するまでの間においても、周囲の状況を取得する。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる車両によれば、専用のセンサなどをドア周辺に新たに搭載させることなく、コストを増大させずかつ設計し難くなることを防止しつつ、ドアの障害物への接触回避のための支援制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両に搭載されているドア、センサ、および、カメラを示すとともに、ドアの可動範囲、センサの検出範囲、およびカメラの視野を説明するための図である。
【
図3】支援装置の動作(処理)の一例を示すフローチャートである。
【
図4】閾値特定用テーブルの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0013】
本実施の形態の車両1は、車両の側面に対して開閉自在に軸支されているドアを開ける際に障害物への接触回避を支援する機能を有する支援装置2を搭載している。支援装置2は、ドアが開く方向の所定範囲内に障害物が存在するか否かを特定するためのセンサ(例えば、コーナーセンサ、舵角センサ、車速センサなど)と、車両1の周囲の状況を取得するカメラ(例えば、アラウンドビュー表示を可能とするカメラなど)とを備え、カメラにより取得される周囲の状況(撮像画像)であってドアが軸支されている側面の状況の変化に基づいてドアの可動状態(例えば、ドアの開度、開速度など)を特定し、障害物が存在することを特定しているときであってドアが開いているときの可動状態に基づいて開いているドアが障害物に接触してしまう可能性が高まる閾値を超えた所定の状態であるか否かを判定し、所定の状態であると判定されたときに障害物への接触回避のための回避支援制御(例えば、アラート報知など)を行うものである。
【0014】
図1は、車両1に搭載されているドア、センサ、および、カメラを示すとともに、ドアの可動範囲、センサの検出範囲、およびカメラの視野を説明するための図である。車両1には、左右側面に対してドアDLと、ドアDRとが開閉自在に軸支されている。ドアDL、DRは、各々、車両1の側面に対して略90度開くように設計されている。
図1における破線のドアDL’、DR’は、それぞれ、ドアが最大開度まで開いた状態を示している。なお、ドアの数は、車両の車種などに応じた数であれば、2つに限らず、4つなど他の数であってもよい。
【0015】
また、車両1の前部には、カメラ12Fが搭載され、車両1の後部には、カメラ12Bが搭載され、左側のドアミラーMLの下部には、カメラ12Lが搭載され、右側のドアミラーMRの下部には、カメラ12Rが搭載されている。カメラ12F、カメラ12B、カメラ12L、および、カメラ12Rは、これらをまとめてカメラともいう。
【0016】
カメラ12Fは、所定時間(例えば、0.1秒)毎に、車両1の前方の視野VFを撮像して画像データを出力する。同様に、カメラ12Bは、所定時間毎に車両1の後方の視野VBを撮像して画像データを出力し、カメラ12Lは、所定時間毎に車両1の左下の視野VLを撮像して画像データを出力し、カメラ12Rは、所定時間毎に車両1の右下の視野VRを撮像して画像データを出力する。出力された画像データはいずれも、
図2に示す支援ECU14に与えられる。
【0017】
支援ECU14は、各カメラから与えられた画像データに基づいて車両1の周囲を鳥瞰した状態を表す鳥瞰画像データを作成し、さらに車両1を鳥瞰した状態を模式的に表す車両画像データを作成し、車両1に搭載されているディスプレイモニタなどに表示する。これにより、車両1のアラウンドビュー表示が可能となる。
【0018】
また、支援ECU14は、カメラからの画像データを利用して、ドアDL、DRの可動状態を特定する。すなわち、支援ECU14は、カメラ12Lからの画像データに基づき、変化量を解析して、ドアDLの可動状態(例えば、ドアDLが開いているか否か、開度、開速度など)を特定可能である。また、支援ECU14は、カメラ12Rからの画像データの変化量を解析して、ドアDRの可動状態(例えば、ドアDRが開いているか否か、開度、開速度など)を特定可能である。これにより、ドアの動作を検出するための専用のセンサなどを搭載することなく、アラウンドビュー表示を可能とするカメラを兼用・活用することにより、ドアの可動状態を特定する。
【0019】
また、車両1の前部の左端コーナーには、左前コーナーセンサ13FLが搭載され、車両1の前部の右端コーナーには、右前コーナーセンサ13FRが搭載され、車両1の後部の左端コーナーには、左後コーナーセンサ13BLが搭載され、車両1の後部の右端コーナーには、右後コーナーセンサ13BRが搭載されている。
【0020】
左前コーナーセンサ13FLは、車両1の前部の左端コーナー周辺の所定範囲AFL(例えば、略扇形となる範囲であって、車両1の左側面よりも左側(外側)および車両1の前端よりも前方を含む範囲)に存在する障害物を検出するとともに、当該障害物までの距離を検出するセンサである。右前コーナーセンサ13FRは、車両1の前部の右端コーナー周辺の所定範囲AFR(例えば、略扇形となる範囲であって、車両1の右側面よりも右側(外側)および車両1の前端よりも前方を含む範囲)に存在する障害物を検出するとともに、当該障害物までの距離を検出するセンサである。左後コーナーセンサ13BLおよび右後コーナーセンサ13BRは、各々、車両1の後部の左端コーナー、右端コーナー周辺の所定範囲ABL、ABR(例えば、略扇形となる範囲であって、車両1の側面よりも外側および車両1の後ろ端よりも後方を含む範囲)に存在する障害物を検出するとともに、当該障害物までの距離を検出するセンサである。
【0021】
左前コーナーセンサ13FL、右前コーナーセンサ13FR、左後コーナーセンサ13BL、右後コーナーセンサ13BRは、これらをまとめてコーナーセンサともいう。また、左前コーナーセンサ13FLおよび左後コーナーセンサ13BLは、まとめて左コーナーセンサともいい、右前コーナーセンサ13FRおよび右後コーナーセンサ13BRは、まとめて右コーナーセンサともいう。左コーナーセンサは、車両1が前進あるいは後進して停車したときに、ドアDLの左側方に存在することとなる障害物を事前に検出可能であって、その検出範囲は、ドアDLを最大開度まで開いたときの当該ドアDLの開側端部よりも左側(外側)の範囲を含むように設定されている。また、右コーナーセンサは、車両1が前進あるいは後進して停車したときに、ドアDRの右側方に存在することとなる障害物を事前に検出可能であって、その検出範囲は、ドアDRを最大開度まで開いたときの当該ドアDRの開側端部よりも右側(外側)の範囲を含むように設定されている。
【0022】
コーナーセンサは、各々、所定範囲内における障害物の有無、および、障害物までの距離などを所定時間(例えば、0.1秒)毎に繰り返し検出し、検出結果を特定するための検出信号を
図2に示す支援ECU14に出力する。コーナーセンサは、ソナーである例を示すが、障害物までの距離を特定できるものであればこれに限らず、LiDARセンサ、レーダ(例えば、ミリ波レーダなど)、またはステレオカメラなどであってもよい。
【0023】
図2は、支援装置2の構成を示す模式図である。支援装置2は、支援ECU14を備えている。支援ECU14には、前述したカメラやコーナーセンサに加えて、舵角センサ24、車速センサ25、エンジンECU20,CVT_ECU22,ブレーキECU26およびEPS_ECU28などが接続される。車両1の動作状態ないし動きは、これらのデバイスの出力に基づいて判別される。
【0024】
舵角センサ24は、所定時間(例えば、0.1秒など)毎に、車両1のステアリングホイールの中立位置からの回転角である舵角を検出し、当該舵角を特定するための検出信号を支援ECU14に出力する。車速センサ25は、所定時間(例えば、0.1秒など)毎に、車両1の車速を検出し、当該車速を特定するための検出信号を支援ECU14に出力する。
【0025】
支援ECU14は、CPU、RAM(揮発性メモリ)、ROM(不揮発性メモリ)、およびI/Oを含むマイクロコンピュータで構成されており、例えば、走行中におけるコーナーセンサからの検出信号に基づき車両1の前方および後方の周辺に障害物が存在する場合に効果音を出力することにより、障害物の確認を補助する。また、本実施形態における支援ECU14は、例えば、舵角センサ35および車速センサ36からの検出信号に基づき車両1の位置を特定し、コーナーセンサからの検出信号に基づき車両1のコーナー周辺の障害物の位置を特定することにより、車両1に対する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶するための処理などを行う。
【0026】
より具体的に、支援ECU14は、例えば、その後に停車する可能性を有するときに、舵角センサ24および車速センサ25からの検出信号に基づき特定した車両の位置と、コーナーセンサからの検出信号に基づき特定した障害物の位置とから、駐車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶する。これにより、コーナーセンサや舵角センサ24、車速センサ25などを兼用・活用することにより、専用のセンサなどを搭載することなく、ドアDL、DR各々の側方に障害物が存在するか否かを特定する。
【0027】
また、支援ECU14は、カメラからの画像データに基づきドアの可動状態を特定し、ドアが特定用情報から特定される障害物に接触してしまう可能性が高まる閾値を超えた所定の状態であるときに障害物への接触回避のための支援制御(例えば、アラート報知など)を行う。
【0028】
図3は、支援装置2の動作(処理)の一例を示すフローチャートである。支援装置2は、例えば、ドアのロックが解除されてから、再びドアがロックされるまでの間(イグニッションがオンされた後(走行などした後)にオフされるまでの間を含む)において
図3に示す処理を繰り返し実行する。
図3にしたがって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
図3に示す支援制御処理では、ステップS1において、車両1が走行中であって停車可能性条件が成立しているか否かを判定する。停車可能性条件は、走行中の車両1が停車する可能性を有するときに成立する条件であり、例えば、車速が所定速度(例えば、5km/h)以下となることなどにより成立する条件である。つまり、ステップS1では、車両1を停車しようとしている状況であるか否かが判定される。
【0030】
ステップS1において停車可能性条件が成立していると判定されたときには、ステップS2において、舵角センサ24および車速センサ25からの信号に基づき車両1の位置(車両1の向きを含む走行軌跡ともいえる)を特定して記憶する。具体的には、停車可能性条件が成立したときの車両1の位置を位置座標の原点とし、舵角センサ24からの信号に基づき移動方向を求め、車速センサ25からの信号に基づき移動量を求め、これらからX軸方向の移動量とY軸方向の移動量を求めて、車両1の現在位置をRAMにおいて記憶・更新する。車両1を切り返した場合においても、同様に車両1の現在位置を特定して記憶・更新する。これにより、位置座標から車両1の走行軌跡が特定可能となる。
【0031】
ステップS3において、四方のコーナーセンサからの信号に基づき、車両コーナー周辺の障害物までの距離から当該障害物の位置を特定して記憶する。具体的には、支援ECU14は、車両1に対して各コーナーセンサが取り付けられている位置を特定するためのデータを記憶しており、各コーナーセンサのうち障害物を検出したコーナーセンサの位置と当該コーナーセンサにより検出された障害物までの距離との差異から、車両1の現在位置に対する障害物の位置(障害物の座標)を特定して、位置座標上における車両1の現在位置に対する当該障害物の位置をRAMにおいて記憶・更新する。これにより、位置座標から車両1の走行軌跡に対する障害物の位置が特定可能となる。なお、車両1と障害物との位置関係を特定する手法の一例として、ステップS2およびS3を例示したが、これに限るものではない。
【0032】
ステップS4では、停車完了条件が成立したか否かを判定する。停車完了条件は、車両1の停車を完了したと推定できる事象が生じていることにより成立する条件であり、例えば、シフトをパーキングにチェンジしたことや、イグニッションをオフしたことなどにより成立する条件である。ステップS4において停車完了条件が成立していると判定されなかったときには、ステップS1に移行する。これにより、ステップS2およびS3は、停車可能性条件が成立してから停車完了条件が成立するか、停車せずに再び停車可能性条件が成立していると判定されなくなるまで繰り返し行われる。
【0033】
一方、ステップS4において停車完了条件が成立していると判定されたときには、ステップS5において、ステップS2およびステップS3にて記憶した車両および障害物各々の位置から、停車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶する。具体的には、ステップS2およびステップS3において車両1の走行に伴い随時更新された位置座標を用いて、駐車した車両1の現在位置が位置座標の原点となるように、車両1の位置と障害物の位置とを移動させた位置座標を特定用情報として記憶する。これにより、停車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を特定可能となり、ドアDL、DRが開く方向に障害物が存在するか否か、および存在する障害物の位置を特定できる。なお、特定用情報としては、車両1に対する障害物の位置を特定するための情報であれば、位置座標に限るものではない。
【0034】
ステップS6では、記憶されている特定用情報に基づいて、ドアDL、DRが開く範囲(ドアの可動範囲)としてドアの大きさ・規格等から予め定まる範囲内に障害物が存在するか否かを判定する。ステップS6においてドアDL、DRが開く範囲内に障害物が存在すると判定されなかったときには、ドアDL、DRをどのような態様で開けても障害物に接触する可能性は極めて低いため、支援制御処理を終了する。一方、ステップS6においてドアDL、DRが開く範囲内に障害物が存在すると判定されたときには、ドアDL、DRを開ける態様によって障害物に接触する可能性があるため、ステップS7以降において障害物への接触回避のための支援制御が行われる。
【0035】
まず、ステップS7では、障害物が存在する側を撮像可能なカメラで周囲画像を撮像するための処理を行う。カメラ(少なくとも、カメラ12L、12R)は、イグニッションがオンである間に限らず、イグニッションがオフであってもドアロックされるまでの間およびドアロックが解除されてイグニッションがオンとなるまでの間においては周囲画像を撮像する。障害物が存在する側を撮像可能なカメラとは、ドアDLの左側方に障害物が存在する場合はカメラ12Lであり、ドアDRの右側方に障害物が存在する場合はカメラ12Rであり、ドアDLの左側方およびドアDRの右側方のいずれにも障害物が存在する場合はカメラ12Lおよびカメラ12Rである。
【0036】
ステップS8では、ステップS7において撮像した周囲画像の変化量に基づき、ドアの開度および開速度を特定する。前述したとおり、カメラからは、所定時間毎に対応する視野を撮像し画像データが出力される。ステップS8では、例えば、1回前のステップS7でカメラから受信した画像データに基づく周囲画像のテクスチャと、今回のステップS7でカメラから受信した画像データ撮像した周囲画像のテクスチャとを比較して、そのテクスチャの移動量などからドアの開度および開速度を算出する。なお、ドアの開度および開速度を算出する手法はこれに限るものではない。なお、本実施形態におけるドアの開度とは、例えばドアが閉まっている状態から開いた角度をいい、ドアの開速度とは、例えば1秒間当りにドアが開いた開度(度/秒)をいう。
【0037】
ステップS9では、ドアの開度に基づき、最も近い障害物までの距離を特定する。例えば、ドアの開度から現在のドアの側面の位置を特定し、ドアの側方に存在する障害物のうちドアの側面に最も近い障害物までの距離を算出する。ステップS10では、RAMに格納されている閾値特定用テーブルを参照して、ドアの開速度に応じた閾値を特定する。閾値とは、最も近い障害物までの距離がその値になるとドアが障害物に接触してしまう可能性が高まるとして設計されている値であって、ドアの開速度に応じて段階的に定められている。
【0038】
図4は、閾値特定用テーブルの一例を説明するための図である。本実施の形態においては、開速度が5度/秒未満である場合の閾値として5cmが定められ、5度/秒以上で10度/秒未満である場合の閾値として10cmが定められ、10度/秒以上である場合の閾値として15cmが定められている。開速度が速い場合には、勢いがついているため、ある時点においてドアが開いている開度が同じであっても、開速度が遅い場合よりも次の瞬間においてドアが大きく開くこととなる。このため、
図4に示すように、開速度が速い程、大きな閾値が定められている。
【0039】
図3に戻り、ステップS11では、ステップS9において特定した障害物までの距離が、ステップS10において特定した閾値以下であるか否か(つまり、障害物に接触してしまう可能性が高まる所定の状態であるか否か)が判定される。ステップS11において障害物までの距離が閾値以下であると判定されなかったときには、現状のドアの可動状態からすると、障害物に接触する可能性が低いため接触回避支援を行うことなく、ステップS12へ移行する。これにより、過度に接触回避支援が行われて煩わしさを抱かせてしまうことを防止できる。
【0040】
一方、ステップS11において障害物までの距離が閾値以下であると判定されたときには、現状のドアの可動状態からすると、障害物に接触する可能性が高い状態であると擬制し、ステップS13において接触回避支援としてアラート報知を行い、ステップS12へ移行する。アラート報知としては、例えば、ピピピ…といった効果音とともに、「ドアが障害物に接触する可能性があるため注意してください」といった音声を出力することや、「ドアが障害物に接触する可能性があるため注意してください」といったメッセージ画像を表示部に表示することなどが該当する。これにより、ドアの可動状態に応じて障害物に接触する可能性が高まる状態となったタイミングで適切に接触回避支援としてアラート報知を行うことができる。
【0041】
ステップS12では、発進条件あるいは降車条件が成立しているか否かが判定される。発進条件とは、停車完了条件が成立したものの再び発進したときに成立する条件であり、例えば、車速が所定速度(例えば、1km/h)以上となり車両1が移動したことなどにより成立する条件である。降車条件とは、停車させた後に運転者や乗員が降車したときに成立する条件であり、例えば、ドアがロックされることなどにより成立する条件である。ステップS12において発進条件あるいは降車条件が成立していると判定されたときには、支援制御処理を終了する。なお、発進条件が成立して支援制御処理を終了したときには、走行中であるため、以降において支援制御処理が繰り返し実行される。
【0042】
ここまでは、ステップS1において停車可能性条件が成立する場合、つまり車両1を停車させる場面について説明したが、以下では、駐車していた車両1に乗り込んで発進させる場面について説明する。駐車していた車両1のドアロックを解除すると、支援制御処理が行われる。
【0043】
駐車していた車両1は、走行中ではないため、ステップS1において停車可能性条件が成立しているとは判定されず、ステップS14に移行して乗車条件が成立したか否かが判定される。乗車条件は、駐車していた車両1を発進させる可能性を有するときに成立する条件であり、例えば、イグニッションがオフとなって駐車していた車両1のドアロックが解除された直後であることなどにより成立する条件である。
【0044】
ステップS14において乗車条件が成立していると判定されなかったときには、停車時でも発車時でもないため支援制御処理を終了する。一方、ステップS14において乗車条件が成立していると判定されたときには、ステップS6へ移行し、駐車前における支援制御処理のステップS5で記憶した特定用情報に基づいて、ドアDL、DRが開く範囲内に障害物が存在するか否かを判定する。ステップS6にてドアDL、DRが開く範囲内に障害物が存在すると判定されなかったときには、支援制御処理を終了する一方、ドアDL、DRが開く範囲内に障害物が存在すると判定されたときには、ステップS7以降において障害物への接触回避のための支援制御が行われる。つまり、車両1に乗り込もうとする人がドアDL、DRを開こうとする際にも、ドアDL、DRの開度および開速度などのドアの可動状態に応じて障害物への接触回避のための支援が行われる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態における車両1に搭載されている支援装置2は、車両1に搭載されているコーナーセンサや、舵角センサ24、車速センサ25、カメラなどを有効利用して、カメラにより取得される周囲の状況(撮像画像)であってドアが軸支されている側面の状況の変化に基づいてドアの可動状態(例えば、ドアの開度、開速度など)を特定し、ドアの側方に障害物が存在することを特定しているときであってドアが開いているときの可動状態に基づいて開いているドアが障害物に接触してしまう可能性が高まる閾値を超えた所定の状態であるか否かを判定し、所定の状態であると判定されたときに障害物への接触回避のための回避支援制御としてアラート報知を行うことができる。その結果、回避支援制御を行うための専用のセンサなどをドア周辺に新たに搭載させる必要がないため、コストを増大させずかつ設計し難くなることを防止しつつ、ドアの接触回避を支援する回避支援を行うことができる。
【0046】
また、ドアの可動状態は、ドアが開いている開度と、ドアが開く際の開速度とを含む。これにより、よりきめ細やかで精度よくアラート報知を行うことができる。具体的には、ドアの開度が同じであっても、開速度が速い場合には、開速度が遅い場合よりも、早い段階(障害物までの距離が長くても)でアラート報知を行うことができる。
【0047】
また、イグニッションがオフとなったときに稼働させる必要がなかったカメラを、イグニッションがオフとなった後においても利用・活用させて、ドアの可動状態を判定できる。これにより、カメラをアラウンドビュー表示に加えてドアの可動状態の判定にも有効利用できる。
【0048】
また、ステップS7~S13で示した回避支援は、ステップS6においてドアDL、DRが開く範囲内に障害物が存在すると判定されたときにのみ行われるため、ドアが障害物に接触する可能性がないときにまで無駄に回避支援のための処理が行われてしまうことを防止できる。
【0049】
以上、図面に基づいて本発明の実施の一態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。以下に、その他の変形例について説明する。
【0050】
上記実施形態においては、
図3のステップS11においてYESと判定されたときにはアラート報知を行う例について説明したが、これに限らず、
図3のステップS11においてYESと判定されたときには、障害物までの距離に応じて段階的に異なる態様でアラート報知を行うようにしてもよい。例えば、障害物までの距離が閾値以下であっても、閾値より小さい第1の値を超えているときには第1の態様(例えば、ステップS13で示した態様など)でアラート報知を行うのに対し、障害物までの距離が第1の値以下であるときには第2の態様(例えば、ビビビ…といった効果音とともに、「ドアを止めてください」といった音声を出力することや、「ドアを止めてください」といったメッセージ画像を表示部に表示や点滅など)でより強いアラート報知を行うようにしてもよい。これにより、アラート報知の態様が変化することにより、より効率的に回避支援を行うことができる。
【0051】
上記実施形態における停車可能性条件としては、車速が所定速度以下となることなどにより成立する条件を例示したが、車両1の状態にかかわらず、所定操作(例えば、回避支援用のボタンへの操作)により成立する条件であってもよい。これにより、乗員等の意思に応じて回避支援を提供することができる。
【0052】
上記実施形態においては、
図3のステップS2、S3で記憶した舵角や、車速、障害物までの距離に基づき、停車した車両の左右側方に存在する障害物の位置を算出し、特定用情報を記憶し、ステップS11にて障害物までの距離が閾値以下であるときに回避支援を行う例について説明した。しかし、回避支援は、これに限らず、例えば、停車時において左コーナーセンサ13FL、13BLのいずれも障害物を検出していることを条件としてドアDLについての障害物への回避支援を行うものであってもよく、また、停車時において右コーナーセンサ13FR、13BRのいずれも障害物を検出していることを条件としてドアDRについての障害物への回避支援を行うものであってもよい。
【0053】
上記実施形態においては、ドアが開く方向の所定範囲内に障害物が存在するか否かを、コーナーセンサ、舵角センサ、車速センサなどからの検出信号に基づいて特定する例について説明したが、これに限らず、例えば、コーナーセンサからの検出信号に替えてあるいは加えて、舵角センサ、車速センサなどからの検出信号と、カメラからの撮像画像を解析することにより、ドアが開く方向の所定範囲内に障害物が存在するか否かを特定するようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態においては、
図3のステップS7~S13までの支援制御が、停車時(ステップS1でYES)および乗車時(ステップS14でYES)に行われ得る例について説明したが、これに限らず、停車時(ステップS1でYES)にのみ行われ得るようにしてもよい。
【0055】
上記実施形態においては、支援制御として、アラート報知を例示したが、障害物への接触回避を支援するものであればこれに限らず、ドアの開度をロックする機構を備え、障害物までの距離が閾値以下となったときにはドアの開度をロックする制御を行うようなものであってもよい。
【0056】
上記実施形態においては、
図3のステップS2において、舵角センサ24および車速センサ25からの信号に基づき車両1の位置を特定・記憶し、ステップS3において、コーナーセンサからの信号に基づき、車両コーナー周辺の障害物までの距離から当該障害物の位置を特定・記憶する例について説明したが、これに限らず、ステップS2において、舵角センサ24および車速センサ25からの信号に基づく舵角や車速を特定・記憶し、ステップS3において、コーナーセンサからの信号に基づき、車両コーナー周辺の障害物までの距離を特定・記憶するようにしてもよい。この場合、ステップS5においては、ステップS2、S3で記憶した舵角や、車速、障害物までの距離に基づき、駐車した車両の左右側方に存在する障害物の位置を算出し、特定用情報を記憶するようにしてもよい。
【0057】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 …車両
2 …支援装置
14 …支援ECU