(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150147
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20231005BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20231005BHJP
B60R 99/00 20090101ALN20231005BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/02
B60R99/00 322
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059095
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】伊知地 紀公
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 鮎美
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BB03
3D241CE01
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DC33Z
(57)【要約】
【課題】コストを増大させることなく運転支援できる場面を拡充できる車両を提供することである。
【解決手段】コーナーセンサを備える車両であって、駐車する際に駐車方向におけるコーナーセンサの検出結果と車両の位置とに基づいて駐車した車両の左右側方に存在する障害物の位置を算出して特定用情報を記憶し、駐車した車両を発進させるとき(出庫のとき)に当該特定用情報を用いて特定される障害物の位置と、車両の位置となり得る想定経路とに応じて、障害物への接触回避を支援するための支援制御を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を検出するための第1検出手段と、
駐車方向における車両コーナー周辺の所定範囲内に存在する障害物までの距離を検出するための第2検出手段と、
駐車するまでの所定期間における前記第1検出手段の検出結果による車両の位置と前記第2検出手段の検出結果による障害物の位置とに基づいて、駐車した車両の側方に存在する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶する記憶手段と、
駐車した車両を発進させるときに、前記特定用情報から特定される障害物の位置に応じて、障害物への接触回避を支援するための支援制御を行う支援制御手段とを備える、車両。
【請求項2】
前記支援制御手段は、駐車した車両を発進させるときに、前記特定用情報から特定される障害物の位置と前記第1検出手段の検出結果による車両の位置とに応じて前記支援制御を行う、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
車両側方の周辺状況を取得する状況取得手段を備え、
前記支援制御手段は、駐車した車両を発進させるときに取得した周辺状況が駐車したときに取得した周辺状況と異なるときに、前記支援制御として車両周辺の状況確認を促すための制御を行う、請求項1または請求項2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操舵角を検知する操舵角センサや、車両の外界の空間や障害物を検知する外界センサなどを備える車両として、旋回して出庫する場合に操舵角などから走行経路を算出し、当該走行経路で走行した場合に車両が障害物に衝突する可能性があるときにその旨をドライバーに報知するものが開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、ソナーを備える車両として、車両の前方コーナーや後方コーナーのみならず、車両の側方にもソナーを搭載しているものが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-527333号公報
【特許文献2】特開2019-505873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術における衝突可能性の判定対象となる障害物は、駐車している車両を走行させた先の所定領域内の障害物であり、駐車している車両側方における障害物ではない。このため、車両側方に存在する障害物(例えば出庫しようとする車両の横に駐車されている他の車両や、車両側方に立っている柱など)に衝突する可能性を判定・報知できない。その結果、特に運転に不慣れなドライバーなどにとって、運転支援が充分なものとはいえなかった。
【0006】
これを解決するために、特許文献2に記載の技術のように車両側方にソナーなどのセンサを搭載させて、駐車している車両の側方の障害物を検知可能にすることも考えられる。しかし、この場合には、センサの数が増えてしまい、その結果、製造コスト・車両単価を増大させてしまう。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、コストを増大させることなく運転支援できる場面を拡充できる車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる車両は、
車両の位置を検出するための第1検出手段と、
駐車方向における車両コーナー周辺の所定範囲内に存在する障害物までの距離を検出するための第2検出手段と、
駐車するまでの所定期間における前記第1検出手段の検出結果による車両の位置と前記第2検出手段の検出結果による障害物の位置とに基づいて、駐車した車両の側方に存在する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶する記憶手段と、
駐車した車両を発進させるときに、前記特定用情報から特定される障害物の位置に応じて、障害物への接触回避を支援するための支援制御を行う支援制御手段とを備える。
【0009】
本発明にかかる車両の一実施形態においては、前記支援制御手段は、駐車した車両を発進させるときに、前記特定用情報から特定される障害物の位置と前記第1検出手段の検出結果による車両の位置とに応じて前記支援制御を行う。
【0010】
本発明にかかる車両の別の実施形態においては、車両側方の周辺状況を取得する状況取得手段を備え、
前記支援制御手段は、駐車した車両を発進させるときに取得した周辺状況が駐車したときに取得した周辺状況と異なるときに、前記支援制御として車両周辺の状況確認を促すための制御を行う。
【0011】
本発明にかかる車両の別の実施形態においては、前記支援制御手段は、前記第1検出手段の検出結果による車両の位置と、前記特定用情報から特定される障害物との距離が、第1距離未満であるときには第1支援制御を行い、前記第1距離よりも短い第2距離未満であるときには第2支援制御を行う。
【0012】
本発明にかかる車両の別の実施形態においては、前記第1支援制御は、注意喚起を促すための報知を行う制御であり、
前記第2支援制御は、車両の発進停止または緊急停止を行う制御である。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる車両によれば、コストを増大させることなく、駐車した車両を発進させる場面において駐車時に記憶した特定用情報を用いて支援制御を行うことができる。その結果、駐車した車両を発進させる際において、例えば内輪差による障害物との衝突の危険性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】運転支援装置の動作(処理)の一例を示すフローチャートである。
【
図3】運転支援装置の動作(処理)の一例を示すフローチャートである。
【
図4】車両を駐車場に駐車するときの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0016】
本実施の形態の車両1は、出庫時における運転の支援機能を有する運転支援装置2を搭載している。運転支援装置2は、車両1の位置を特定するためのセンサ(例えば、舵角センサ、車速センサなど)と、車両1の前方コーナーおよび後方コーナー周辺の障害物を検出するセンサ(例えば、ソナーなど)を用いて、駐車する際に駐車方向におけるセンサの検出結果と車両の位置とに基づいて駐車した車両の側方に存在する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶し、駐車した車両を発進させるとき(出庫のとき)に当該特定用情報を用いて特定される障害物の位置に応じて、障害物への接触回避を支援するための支援制御(例えば、アラート報知、緊急停止など)を行うものである。
【0017】
図1は、運転支援装置2の構成を示す模式図である。運転支援装置2は、ソナーECU3と、カメラECU4と、各種センサと、カメラとを備える。ソナーECU3には、左前コーナーセンサ31と、右前コーナーセンサ32と、左後コーナーセンサ33と、右後コーナーセンサ34と、舵角センサ35と、車速センサ36と、ドアセンサ37とが接続されている。
【0018】
左前コーナーセンサ31は、車両1のフロント(前方)の左端コーナーに取り付けられており、左端コーナー周辺の所定範囲(例えば、略扇形となる範囲であって、車両1の左側面よりも左側(外側)および車両1の前端よりも前方を含む範囲)に存在する障害物を検出するとともに、当該障害物までの距離を検出するセンサである。右前コーナーセンサ32は、車両1のフロントの右端コーナーに取り付けられており、右端コーナー周辺の所定範囲(例えば、略扇形となる範囲であって、車両1の右側面よりも右側(外側)および車両1の前端よりも前方を含む範囲)に存在する障害物を検出するとともに、当該障害物までの距離を検出するセンサである。左後コーナーセンサ33および右後コーナーセンサ34は、各々、車両1のリア(後方)の左端コーナー、右端コーナーに取り付けられているセンサであって、左端コーナー、右端コーナー周辺の所定範囲(例えば、略扇形となる範囲であって、車両1の側面よりも外側および車両1の後ろ端よりも後方を含む範囲)に存在する障害物を検出するとともに、当該障害物までの距離を検出するセンサである。左前コーナーセンサ31、右前コーナーセンサ32、左後コーナーセンサ33、右後コーナーセンサ34(以下では、これらをまとめてコーナーセンサともいう)は、第2検出手段の一例であり、各々が所定時間(例えば、0.1秒など)毎に障害物の有無、および、障害物までの距離などを少なくとも特定するための検出信号をソナーECU3に出力する。コーナーセンサは、ソナーである例を示すが、障害物までの距離を特定できるものであればこれに限らず、LiDARセンサ、レーダ(例えば、ミリ波レーダなど)、またはステレオカメラなどであってもよい。
【0019】
舵角センサ35は、所定時間(例えば、0.1秒など)毎に、車両1のステアリングホイールの中立位置からの回転角である舵角を検出し、当該舵角を特定するための検出信号をソナーECU3に出力する。車速センサ36は、所定時間(例えば、0.1秒など)毎に、車両1の車速を検出し、当該車速を特定するための検出信号をソナーECU3に出力する。舵角センサ35および車速センサ36は、第1検出手段の一例である。ドアセンサ37は、所定時間(例えば、0.1秒など)毎に、車両1の運転席に通じるドアの状態(例えば、開状態)を検出し、当該状態を特定するための検出信号をソナーECU3およびカメラECU4に出力する。
【0020】
ソナーECU3は、CPU、RAM(揮発性メモリ)、ROM(不揮発性メモリ)、およびI/Oを含むマイクロコンピュータで構成されており、例えば、舵角センサ35および車速センサ36からの検出信号に基づき車両1の位置を特定し、コーナーセンサからの検出信号に基づき車両1のコーナー周辺の障害物の位置を特定することにより、車両1に対する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶するための処理などを行う。
【0021】
より具体的に、ソナーECU3は、例えばシフトをリバースにチェンジしたことを特定するためのシフトポジション情報をCVTECUなどから受信することにより駐車しようとしていることが推定されるときに、舵角センサ35および車速センサ36からの検出信号に基づき特定した車両の位置と、駐車方向におけるコーナーセンサからの検出信号に基づき特定した障害物の位置とから、駐車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶する。また、ソナーECU3は、駐車中の車両1のドアが開状態となり出庫することが推定されるときに、駐車時に記憶していた特定用情報から特定される障害物の位置に応じて、障害物への接触回避を支援するための支援制御(例えば、アラート報知、緊急停止など)を行う。
【0022】
カメラECU4には、ドアセンサ37と、左サイドカメラ38と、右サイドカメラ39と、フロントカメラ40と、リアカメラ41とが接続されている。左サイドカメラ38は、車両1の左部(例えば、左サイドミラーの下面)に、車両1の左側面およびその左方の所定範囲を含めて撮影可能に配置されている。右サイドカメラ39は、車両1の右部(例えば、右サイドミラーの下面)に、車両1の右側面およびその右方の所定範囲を含めて撮影可能に配置されている。フロントカメラ40は、車両1の前部の略中央位置に、車両1の前側面およびその前方の所定範囲を含めて撮影可能に配置されている。リアカメラ41は、車両1の後部の略中央位置に、車両1の後側面およびその後方の所定範囲を含めて撮影可能に配置されている。左サイドカメラ38、右サイドカメラ39、フロントカメラ40、および、リアカメラ41(以下では、これらをまとめてカメラともいう)は、例えば、所定のフレームレートで静止画を連続して撮影し、当該静止画を特定するための画像信号をカメラECU4に出力する。
【0023】
カメラECU4は、CPU、RAM(揮発性メモリ)、ROM(不揮発性メモリ)、およびI/Oを含むマイクロコンピュータで構成されており、カメラからの画像信号に基づき、例えば、撮像画像の解析処理や、駐車前後の周辺画像を比較して駐車後の周辺状況が駐車時から変化したか否かを判定する処理、車両1の舵角や走行軌跡などを予備的に特定・記憶する処理などを行う。
【0024】
図2および
図3は、運転支援装置2の動作(処理)の一例を示すフローチャートである。運転支援装置2は、例えば、イグニッションがオンのときに
図2に示す処理を繰り返し実行し、イグニッションがオフのときに
図3に示す処理を繰り返し実行する。
図2および
図3にしたがって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
図2に示す駐車時処理では、ステップS1において、駐車開始条件が成立しているか否かを判定する。駐車開始条件は、車両1の駐車を開始したと推定できる事象が生じていることにより成立する条件であり、例えば、シフトがリバースにチェンジされかつカメラ(左右サイドカメラ、リアカメラなど)の撮像画像の解析結果等に基づき車両周辺に駐車場が確認されたことや、車速が所定速度(例えば、5km/h)以下で前進しておりかつカメラ(左右サイドカメラ、フロントカメラなど)の撮像画像の解析結果等に基づき車両周辺に駐車場が確認されたことなどにより成立する条件である。ステップS1において駐車開始条件が成立していると判定されなかったときには、駐車時ではないと推定されて、そのまま駐車時処理を終了する。
【0026】
一方、ステップS1において駐車開始条件が成立していると判定されたときには、駐車時であると推定されて、ステップS2において、舵角センサ35および車速センサ36からの信号に基づき車両1の位置(車両1の向きを含む走行軌跡ともいえる)を特定して記憶する。具体的には、駐車開始条件が成立したときの車両1の位置を位置座標の原点とし、舵角センサ35からの信号に基づき移動方向を求め、車速センサ36からの信号に基づき移動量を求め、これらからX軸方向の移動量とY軸方向の移動量を求めて、車両1の現在位置をRAMにおいて記憶・更新する。車両1を切り返した場合においても、同様に車両1の現在位置を特定して記憶・更新する。これにより、位置座標から車両1の走行軌跡が特定可能となる。
【0027】
ステップS3において、駐車方向における左右コーナーセンサからの信号に基づき、車両コーナー周辺の障害物までの距離から当該障害物の位置を特定して記憶する。具体的には、ソナーECU3は、車両1に対して各コーナーセンサが取り付けられている位置を特定するためのデータを記憶しており、駐車方向における左右コーナーセンサのうち障害物を検出したコーナーセンサの位置と当該コーナーセンサにより検出された障害物までの距離との差異から、車両1の現在位置に対する障害物の位置(障害物の座標)を特定して、位置座標上における車両1の現在位置に対する当該障害物の位置をRAMにおいて記憶・更新する。これにより、位置座標から車両1の走行軌跡に対する障害物の位置が特定可能となる。駐車方向における左右コーナーセンサとは、例えば、駐車開始条件がリバースにチェンジしたことなどにより成立したときには後退で駐車しようとしているときであるため左右後方コーナーセンサ33、34となり、車速が所定速度(例えば、5km/h)以下で前進していることなどにより駐車開始条件が成立したときには前進で駐車しようとしているときであるため左右前方コーナーセンサ31、32となる。なお、車両1と障害物との位置関係を特定する手法の一例として、ステップS2およびS3を例示したが、これに限るものではない。
【0028】
ステップS4では、カメラの撮像画像を解析して車両の舵角・走行軌跡などの予備情報を特定して記憶する。ステップS5では、駐車完了条件が成立したか否かを判定する。駐車完了条件は、車両の駐車を完了したと推定できる事象が生じていることにより成立する条件であり、例えば、シフトをパーキングにチェンジしたことや、イグニッションをオフしたことなどにより成立する条件である。ステップS5において駐車完了条件が成立していると判定されなかったときには、ステップS2に移行する。これにより、ステップS2~S4は、駐車開始条件が成立してから駐車完了条件が成立するまで繰り返し行われる。
【0029】
一方、ステップS5において駐車完了条件が成立していると判定されたときには、ステップS6において、ステップS2およびステップS3にて記憶した車両および障害物各々の位置から、駐車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶する。具体的には、ステップS2およびステップS3において車両1の走行に伴い随時更新された位置座標を用いて、駐車した車両1の現在位置が位置座標の原点となるように、車両1の位置と障害物の位置とを移動させた位置座標を特定用情報として記憶する。このように特定用情報を駐車完了時に記憶しておくことにより、出庫の際における車両側方の障害物の特定を早めることができる。なお、特定用情報としては、車両1に対する障害物の位置を特定するための情報であれば、位置座標に限るものではない。また、ステップS7においては、カメラで周辺画像を撮像して記憶し、駐車時処理を終了する。
【0030】
次に、
図3に示す出庫時処理について説明する。出庫時処理では、ステップS10において、ドアセンサ37に基づき運転席側のドアが開かれたか否かを判定する。ドアが開かれたと判定されなかったときには出庫時処理を終了する。ドアが開かれたと判定されたときには、出庫しようとしていることが推定されるため、ステップS11においてソナーECU3およびカエラECU4を起動して、記憶されている特定用情報を読み出す。ステップS12においては、駐車時に撮像した周辺画像(ステップ7で撮像・記憶した周辺画像)を読み出すとともに、現在の周辺画像をカメラで撮像して記憶する。このようにイグニッションがオンとなるまでに、特定用情報等の読み出しや周辺画像の撮像等の支援制御の準備を行うことにより、例えば即発進・出庫しようとしたときであっても支援制御を行うことができる。なお、
図3では、出庫しようとしていることが推定される事象として、運転席側のドアが開かれたことを例示したが、これに限らず、例えば、ドアロックが解除されたことなどであってもよい。
【0031】
ステップS13では、イグニッションがオンとなったか否かを判定し、オンとなったと判定されるとステップS14においてシフトがドライブかリバースにチェンジされているかを判定する。つまり、発進・出庫しようとしているかを判定する。
【0032】
ステップS15においては、ステップS12において読み出した駐車時の周辺画像と新たに撮像した周辺画像とに基づき、周辺状況が駐車時から変化しているか否かを判定する。周辺状況が変化していると判定されなかったときには、ステップS16において現在の舵角センサ35および車速センサ36からの信号に基づき想定経路を算出する。以下の処理では、ステップS11で読み出した特定用情報から特定される障害物の位置と、ステップS16で算出した想定経路とを対比することにより行われる。
【0033】
ステップS17においては、障害物の位置と想定経路とを対比して、車両1の側面が、当該車両1の側面に最も近い障害物と第1基準値(例えば、50cm)以上離れているか否かを判定する。なお、障害物の位置と想定経路とを対比する際には、車両1のボディサイズや、車両1の向き、前輪と後輪との内輪差などの項目も加味される。ステップS17において第1基準値以上離れていると判定されたときには、障害物に接触する可能性が低いため、ステップS18において周辺確認報知を行う。周辺確認報知とは、例えば、「周辺を確認してください」といった音声を出力することや、「周辺を確認してください」といったメッセージ画像を表示部に表示することなどが該当する。なお、ステップS15において周辺状況が変化していると判定されたときには、特定用情報から特定される障害物の位置が変化している可能性が高いため、特定用情報を用いた支援制御を行うことなく、ステップS18において周辺確認報知を行う。
【0034】
一方、ステップS17において第1基準値以上離れていると判定されなかったときには、ステップS20において障害物の位置と想定経路とを対比して、車両1の側面が、当該車両1の側面に最も近い障害物と第2基準値(第1基準値よりも小さい値であって、例えば、30cm)以上離れているか否かを判定する。ステップS20において第2基準値以上離れていると判定されたときには、障害物に接触する可能性が若干なりともあり得るため、ステップS21においてドライバーに注意喚起を促すためのアラート報知を行う。アラート報知とは、例えば、「進路上に障害物があります。ハンドルを戻してください」といった音声を出力することや、「進路上に障害物があります。ハンドルを戻してください」といったメッセージ画像を表示部に表示することなどが該当する。
【0035】
一方、ステップS20において第2基準値以上離れていると判定されなかったときには、障害物に接触する可能性が高くなるため、ステップS22において、走行中であるときには緊急停止し、走行中でないときには発進中止するための処理が行われる。具体的に、緊急停止するための処理としては、ブレーキECUに緊急停止信号を出力する処理であり、発進中止するための処理としては、誤発進防止のための制御を行うECU(例えばEFIECUなど)に発進中止信号を出力する処理である。これにより、車両1が障害物に接触する可能性が高いときには一時的に走行できないようになるため、障害物との接触を回避できる。ステップS22が行われた以降であって出庫完了条件が成立するまでの間においては、ステップS20において第2基準値以上離れていると判定されなかったときであっても、ステップS21に移行させて、車両1を走行可能な状態となるように制御される。なお、ステップS22が行われた以降であって出庫完了条件が成立するまでの間において、ステップS20にて第2基準値以上離れていると判定されなかったときにおいてステップS21に移行させたときには、第2基準値以上離れていると判定されたときとは異なる態様でアラート報知(例えば、「危険です。すぐにハンドルを戻してください」といった音声出力やメッセージ画像表示)を行うようにしてもよい。
【0036】
ステップS18およびステップS21にて報知されると、ステップS19に移行されて、出庫完了条件が成立したか否かを判定する。出庫完了条件は、車両の出庫が完了したと推定できる事象が生じていることにより成立する条件であり、例えば、カメラの撮像画像に基づき車両周辺に駐車場が確認されずかつ車速が一定の速度(例えば、10km/h)以上であることなどにより成立する条件である。
【0037】
ステップS19において出庫完了条件が成立していると判定されていないときには、ステップS15へ移行して、ステップS15以降の処理が繰り返し行われる。一方、ステップS19において出庫完了条件が成立していると判定されたときには、出庫時処理を終了する。
【0038】
図4は、車両1を駐車場に駐車するときの一例を示す図であり、
図5は、車両1を出庫するときの一例を示す図である。
図4(a)は、既に駐車している他の車両Xと車両Yとの間に車両1を後進(バック)で駐車し始めたときの例を示している。シフトをリバースにチェンジすることなどにより駐車開始条件が成立したと判定されて、
図2のステップS2~S4の処理が繰り返し実行される。
図4では、駐車しようとしている駐車方向が車両1の後方であるため、駐車方向における左右コーナーセンサが左後コーナーセンサ33および右後コーナーセンサ34となる。
図4では、説明の便宜上、左後コーナーセンサ33および右後コーナーセンサ34各々により障害物を検出可能な範囲を点線で例示している。
図4(a)に示す状況下においては、車両Yのフロント部分が障害物として右後コーナーセンサ34により検出され、
図2のステップS2およびS3において、車両の位置と障害物となる車両Yのフロント部分の位置を各々対応させて特定・記憶されることとなる。
【0039】
図4(a)に示す状況から継続して後退することにより、
図4(b)に示すように、右後コーナーセンサ34により車両Yの左側面が障害物として検出されるとともに、左後コーナーセンサ33により車両Xのフロント部分および右側面が障害物として検出される。これにより、
図2のステップS2およびS3において、障害物となる車両Xのフロント部分および右側面の位置と、車両Yのフロント部分および左側面の位置と、車両1の位置とを各々対応させて特定・記憶される。
【0040】
図4(c)は、車両1の駐車を完了したときの例を示している。シフトをパーキングにチェンジしたことなどにより駐車完了条件が成立したと判定されて、
図2のステップS6およびS7の処理が実行される。
図4の例では、駐車開始条件が成立してから駐車完了条件が成立するまでに
図2のステップS2およびS3により特定・記憶されている車両の位置および障害物の位置を特定する位置座標から、駐車した車両1の左右側方に存在する障害物である、車両Xおよび車両Yのフロント部分および側面の位置(
図4(c)では車両Xおよび車両Yのフロント部分および側面に沿って示した破線の位置)を算出し、当該車両Xおよび車両Yのフロント部分および側面の位置を特定するための特定用情報を記憶することとなる。また、カメラにより、車両1の両側方に車両Xおよび車両Yが停車している周辺画像を撮像して記憶することとなる。
【0041】
図5(a)は、車両1を出庫させるときであって実際に発進させるまでの発進前の一場面であって、発進前にハンドルを右に回した例を示している。
図3のステップS16において舵角センサ35からの信号に基づき、舵角に応じて右に旋回する想定経路が算出されて、ステップS17およびS20において想定経路と障害物の位置とを対比判定する処理が行われ、発進前の運転操作状況等に応じてステップS18、S21、S22などの支援制御が行われる。
【0042】
図5(b)は、車両1を出庫させるために走行(発進)させているときの一場面であって、ハンドルを右に回して走行している例を示している。
図3のステップS16において舵角センサ35および車速センサ36からの信号に基づき、舵角および車速に応じて右に旋回する想定経路が算出されて、ステップS17およびS20において想定経路と障害物の位置とを対比判定する処理が行われ、出庫中の運転操作状況等に応じてステップS18、S21、S22などの支援制御が行われる。
【0043】
図5(c)は、出庫時の周辺状況が駐車時から変化しているときの一場面であって、車両1の右側に駐車されている車両が車両Yから車両Zに変化している例を示している。車両Zに変化している場合には、駐車時に記憶した特定用情報のうち少なくとも車両Y側の情報を用いることはできない。このため、ステップS17およびS20などの処理を行うことなく、支援制御としてステップS18において周辺確認報知が行われる。なお、
図5(c)に示すように車両Y側の周辺状況が変化しているときであっても、車両X側については変化していないため、例えば、車両1を左旋回させて出庫する場合には、車両Xとの距離に応じた支援制御を行うようにしてもよい。
【0044】
なお、
図4および
図5では、既に駐車している他の車両Xと車両Yとの間に車両1を後進で駐車し、その後、前進で出庫する例を示しているが、障害物は車両に限らず、建築物(例えば、柱、壁など)や、ガードレール、看板、設置物などである場合も想定でき、また、車両1を前進で駐車して後進で出庫する場面や、車両1を後進で駐車して後進で出庫する場面なども想定できる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態における車両1に搭載されている運転支援装置2は、
図2および
図3で示したように、車両1のコーナーセンサを用いて、駐車する際に駐車方向におけるコーナーセンサの検出結果と車両の位置とに基づいて駐車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を算出して特定用情報を記憶し、駐車した車両1を発進させるとき(出庫のとき)に当該特定用情報を用いて特定される障害物の位置と、車両1の位置となり得る想定経路とに応じて、障害物への接触回避を支援するための支援制御(例えば、アラート報知、緊急停止など)を行うことができる。これにより、例えば車両1の左右側方の障害物を検出するセンサなどを搭載することなく、駐車した車両1を出庫させる場面において駐車時に記憶した特定用情報を用いて支援制御を行うことができる。その結果、コストを増大させることなく、駐車した車両1を出庫させる場面において、例えば内輪差による障害物との衝突の危険性を低減させることができる。
【0046】
また、
図3のステップS17およびS18で示したように、障害物の位置と想定経路とを対比して、車両1の側面が、当該車両1の側面に最も近い障害物と離れている距離に応じた支援制御が行われる。すなわち、離れている距離が第1基準値以上であるときには、周辺確認報知が行われ、第1基準値未満であるが第2基準値以上であるときには、アラート報知が行われ、第2基準値未満であるときには、車両1の緊急停止あるいは発進中止するための処理が行われる。これにより、接近度合いに適した支援制御を段階的に行うことができる。
【0047】
また、出庫時の周辺状況が駐車時から変化しているときであって、駐車時に記憶した特定用情報を用いることができない場合には、ステップS17およびS20などの処理を行うことなく支援制御として車両周辺の状況確認を促すための周辺確認報知が行われるため、効率的にドライバーに注意を促すことができる。
【0048】
以上、図面に基づいて本発明の実施の一態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。以下に、その他の変形例について説明する。
【0049】
上記実施形態においては、駐車した車両1を発進させるとき(出庫のとき)に駐車時に記憶した特定用情報を用いて特定される障害物の位置と、車両1の位置となり得る想定経路とに応じて、障害物への接触回避を支援するための支援制御を行う例について説明したが、これに加えてあるいは替えて、車両1の想定経路にかかわらず、特定用情報を用いて特定される障害物の位置のみに応じて支援制御を行うようにしてもよい。例えば、特定用情報に基づいて、駐車している車両1の側面から第2基準値未満に近接している障害物が特定される場合には、支援制御としてその旨を報知(例えば、「障害物が近接していますので注意してください」といった音声出力あるいはメッセージ画像表示など)するようにしてもよい。これにより、駐車した車両を発進させる際において、障害物との衝突の危険性を低減させることができる。なお、駐車している車両1の側面から第2基準値未満に近接している障害物が特定される場合において、支援制御としてその旨が報知された後においては、出庫完了条件が成立するまでの間において、ステップS20において第2基準値以上離れていると判定されなかったときであっても、ステップS21に移行させて、車両1を走行可能な状態となるように制御される。
【0050】
上記実施形態においては、ステップS21におけるアラート報知として、「進路上に障害物があります。ハンドルを戻してください」といった音声出力あるいはメッセージ画像表示する例について説明したが、これに加えてあるいは替えて、第1基準値未満となっている部位を判定し、当該部位を特定するための情報を報知するようにしてもよい。例えば、車両1が想定経路を走行した場合に当該車両1の左後方の側面に障害物が近接して第1基準値未満となっていると判定した場合には、アラート報知として「このまま進むと左後方に障害物が接触する可能性がありますのでハンドルを戻してください」といった音声出力あるいはメッセージ画像表示するようにしてもよい。また、将来的に障害物が近接して第1基準値未満となっていると判定された箇所が、現在の車両1の位置から見るとどの方向の障害物であるかを特定(例えば、「左斜め前方」など)し、その方向を報知するようにしてもよい(例えば、「左斜め前方の障害物に接触する可能性がありますのでハンドルを戻してください」といった音声出力あるいはメッセージ画像表示)。これにより、ドライバーの注意力を危険個所に集中させることができるため、障害物との衝突の危険性を低減させることができる。
【0051】
上記実施形態においては、
図2のステップS6において、ステップS1にて記憶した車両の位置から、ステップS6にて駐車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を算出し、当該障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶する例について説明したが、これに加えて、ステップS4にてカメラの画像を解析して記憶した予備情報をも加味して特定される車両の位置に基づき、ステップS6にて駐車した車両1の左右側方に存在する障害物の位置を算出し、当該障害物の位置を特定するための特定用情報を記憶するようにしてもよい。これにより、特定用情報の精度を高めることができる。
【0052】
上記実施形態においては、
図2のステップS2において、舵角センサ35および車速センサ36からの信号に基づき車両1の位置を特定・記憶し、ステップS3において、駐車方向における左右コーナーセンサからの信号に基づき、車両コーナー周辺の障害物までの距離から当該障害物の位置を特定・記憶する例について説明したが、これに限らず、ステップS2において、舵角センサ35および車速センサ36からの信号に基づく舵角や車速を特定・記憶し、ステップS3において、駐車方向における左右コーナーセンサからの信号に基づき、車両コーナー周辺の障害物までの距離を特定・記憶するようにしてもよい。この場合、ステップS6においては、ステップS2、S3で記憶した舵角や、車速、障害物までの距離に基づき、駐車した車両の左右側方に存在する障害物の位置を算出し、特定用情報を記憶するようにしてもよい。また、ステップS6における処理は、駐車完了時に行う例について説明したが、これに限らず、出庫時に行うようにしてもよい。
【0053】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 …車両
2 …運転支援装置
3 …ソナーECU
4 …カメラECU