IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鐵住金建材株式会社の特許一覧

特開2023-150148緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法
<>
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図1
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図2
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図3
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図4
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図5
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図6
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図7
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図8
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図9
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図10
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図11
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図12
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図13
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図14
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図15
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図16
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図17
  • 特開-緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150148
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/04 20060101AFI20231005BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20231005BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20231005BHJP
   E21D 5/08 20060101ALI20231005BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16B35/04 K
F16B5/02 U
F16B35/00 S
E21D5/08
E04B1/61 502L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059096
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄充
【テーマコード(参考)】
2E125
3J001
【Fターム(参考)】
2E125AA68
2E125AD06
2E125AE13
2E125AG12
2E125BB08
2E125BE01
2E125BF01
2E125CA04
3J001FA02
3J001GA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA04
3J001HA07
3J001JA10
3J001KA19
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】施工時間の短縮化を図ることが可能となる緊結金具を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る緊結金具1は、貫通孔が形成されるライナープレート9同士を緊結するためのものであって、隣接するライナープレート9に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部2と、貫通部2の一端部2a側に螺合可能な頭部30と、貫通孔よりも径大に形成される拡径部31と、を有する第1係止部3と、を備え、貫通部2は、一端部2a側に頭部30が螺合されるネジ部29と、ネジ部29に対して直交して延びる第2係止部22と、を有する。拡径部31は、側面に平坦面32が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成される鋼製部材同士を緊結するための緊結金具であって、
隣接する鋼製部材に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部と、
前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部と、前記貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を備え、
前記貫通部は、
一端部側に前記第1係止部が螺合されるネジ部と、
前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有し、
前記拡径部は、側面に平坦面が形成されること
を特徴とする緊結金具。
【請求項2】
前記第1係止部は、前記頭部と前記拡径部とが一体化されること
を特徴とする請求項1記載の緊結金具。
【請求項3】
前記平坦面は、平面視円形状の前記拡径部の一部を直線状に切り欠いて形成されること
を特徴とする請求項1又は2記載の緊結金具。
【請求項4】
貫通孔が形成される鋼製部材同士を緊結する鋼製部材の緊結構造であって、
第1貫通孔が形成される第1鋼製部材と、
第2貫通孔が形成される、前記第1鋼製部材に隣接する第2鋼製部材と、
前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材とを緊結するための緊結金具とを備え、
前記緊結金具は、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに貫通される貫通部と、
前記貫通部の一端部側に設けられる頭部と、前記頭部と前記第1鋼製部材との間に配置されるとともに前記第1貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を有し、
前記貫通部は、
一端部側に前記頭部が螺合されるネジ部と、
前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有し、
前記第1係止部と前記第2係止部とは、隣接する前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材を挟んで緊結するものであり、
前記拡径部は、側面に平坦面が形成されること
を特徴とする鋼製部材の緊結構造。
【請求項5】
前記平坦面の法線方向は、前記第2係止部の延伸方向と異なる方向に配置されること
を特徴とする請求項4記載の鋼製部材の緊結構造。
【請求項6】
貫通孔が形成される鋼製部材を緊結する鋼製部材の緊結方法であって、
第1鋼製部材に形成される第1貫通孔と、前記第1鋼製部材に隣接する第2鋼製部材に形成される第2貫通孔と、に貫通される貫通部と、
前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部と、側面に平坦面が形成されるとともに前記第1貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を備え、
前記貫通部は、
一端部側に前記頭部が螺合されるネジ部と、
前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有する、緊結金具を用いて、
予め前記ネジ部に前記頭部と前記拡径部を配置させておき、前記平坦面を前記第1鋼製部材に対向させて前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記第2係止部を貫通させ、前記平坦面が前記第1鋼製部材に対して起立するように前記貫通部を回転させ、前記拡径部と前記第2係止部との間に、前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材とを配置する貫通工程と、
前記ネジ部に前記頭部を螺合させることにより、前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材とを前記第1係止部と前記第2係止部とにより挟んで緊結する緊結工程と、を備えること
を特徴とする鋼製部材の緊結方法。
【請求項7】
複数の前記緊結金具を用いて、各々の前記緊結金具について前記貫通工程を行った後に、各々の前記緊結金具について前記緊結工程を行うこと
を特徴とする請求項6記載の鋼製部材の緊結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ライナープレートやコルゲート鋼板等の波形鋼板が互いに連結されて構造物が構築される。例えば、ライナープレート同士が複数連結されて、深礎杭、集水井、水中仮締切、橋脚等を構築する際の土留めとして用いられる。例えば、コルゲート鋼板同士が複数連結されて、水路として用いられる。
【0003】
従来、ライナープレート同士を連結する作業を簡単に行うことを目的として、特許文献1の開示技術が提案されている。
【0004】
特許文献1に開示されたライナープレートの緊結金具は、隣接する波形鋼板に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部と、貫通部の一端部側に螺合可能で、貫通孔よりも径大に形成される第1係止部と、を備える。第1係止部は、例えば平面視円形状のワッシャーが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-124658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図18に示すように、従来の緊結金具61では、L字状の貫通部62の一端部のネジ部629に螺合される係止部63と、ネジ部629に直交する貫通部62の他端部の係止部622と、を備える。従来の緊結金具61は、係止部63と係止部622とでフランジ691を挟むことができる。係止部63のナット630は、ネジ部29に螺合され、係止部63のワッシャー631は、側面が湾曲面とされている。L字状の貫通部62をライナープレート69のフランジ691の孔692に貫通させる際には、図18(a)に示すように、ワッシャー631の湾曲面をフランジ691に接触させる。そして、図18(b)に示すように、ワッシャー631の湾曲面がフランジ691に対して起立するように貫通部2を回転させる。このとき、ネジ部629の軸心C2とワッシャー631の湾曲面との距離L2が、回転半径となる。しかしながら、ワッシャー631が湾曲面とされているため、距離L2が大きくなる。これにより、貫通部62を孔692に貫通させる際、貫通部62が孔692に干渉するおそれがある。このため、施工時間に時間を要する懸念がある。
【0007】
また、ナット630のネジ部629に対する螺合を緩くした場合、貫通部62と孔692との干渉を抑制することができる。しかしながら、この場合には、ワッシャー631と係止部622とでライナープレート69のフランジ691を挟んだ後にナット630をネジ部629に締め込む際に、ネジ部629に螺合するナット630の回転数が増加してしまう。このような事情から、施工時間の短縮化を図ることができる技術が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工時間の短縮化を図ることが可能となる緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る緊結金具は、貫通孔が形成される鋼製部材同士を緊結するための緊結金具であって、隣接する鋼製部材に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部と、前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部と、前記貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を備え、前記貫通部は、一端部側に前記第1係止部が螺合されるネジ部と、前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有し、前記拡径部は、側面に平坦面が形成されることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る緊結金具は、第1発明において、前記第1係止部は、前記頭部と前記拡径部とが一体化されることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る緊結金具は、第1発明又は第2発明において、前記平坦面は、平面視円形状の前記拡径部の一部を直線状に切り欠いて形成されることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る鋼製部材の緊結構造は、貫通孔が形成される鋼製部材同士を緊結する鋼製部材の緊結構造であって、第1貫通孔が形成される第1鋼製部材と、第2貫通孔が形成される、前記第1鋼製部材に隣接する第2鋼製部材と、前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材とを緊結するための緊結金具とを備え、前記緊結金具は、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに貫通される貫通部と、前記貫通部の一端部側に設けられる頭部と、前記頭部と前記第1鋼製部材との間に配置されるとともに前記第1貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を有し、前記貫通部は、一端部側に前記頭部が螺合されるネジ部と、前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有し、前記第1係止部と前記第2係止部とは、隣接する前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材を挟んで緊結するものであり、前記拡径部は、側面に平坦面が形成されることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る鋼製部材の緊結構造は、第4発明において、前記平坦面の法線方向は、前記第2係止部の延伸方向と異なる方向に配置されることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る鋼製部材の緊結方法は、貫通孔が形成される鋼製部材を緊結する鋼製部材の緊結方法であって、第1鋼製部材に形成される第1貫通孔と、前記第1鋼製部材に隣接する第2鋼製部材に形成される第2貫通孔と、に貫通される貫通部と、前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部と、側面に平坦面が形成されるとともに前記第1貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を備え、前記貫通部は、一端部側に前記頭部が螺合されるネジ部と、前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有する、緊結金具を用いて、予め前記ネジ部に前記頭部と前記拡径部を配置させておき、前記平坦面を前記第1鋼製部材に対向させて前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記第2係止部を貫通させ、前記平坦面が前記第1鋼製部材に対して起立するように前記貫通部を回転させ、前記拡径部と前記第2係止部との間に、前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材とを配置する貫通工程と、前記ネジ部に前記頭部を螺合させることにより、前記第1鋼製部材と前記第2鋼製部材とを前記第1係止部と前記第2係止部とにより挟んで緊結する緊結工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
第7発明に係る鋼製部材の緊結方法は、第6発明において、複数の前記緊結金具を用いて、各々の前記緊結金具について前記貫通工程を行った後に、各々の前記緊結金具について前記緊結工程を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明~第5発明によれば、拡径部は、側面に平坦面が形成される。これにより、第2係止部を貫通孔に貫通させる際、平坦面の法線方向と第2係止部の延伸方向とが同一方向となり、ネジ部の軸心と平坦面との距離を従来よりも小さくできる。すなわち、第1フランジに対向した平坦面を第1フランジに対して起立するように貫通部を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、貫通部が貫通孔に干渉するのを抑制することができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0017】
また、第1発明~第5発明によれば、拡径部は、側面に平坦面が形成される。これにより、貫通部を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、第1係止部から第2係止部までの距離を従来よりも小さくすることができる。したがって、拡径部と第2係止部とでライナープレートのフランジを挟んだ後に頭部をネジ部に螺合する際に、ネジ部に螺合する頭部の回転数を低減させることができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることができる可能となる。
【0018】
特に、第2発明によれば、第1係止部は、頭部と拡径部とが一体化される。これにより、第1フランジに対向させた平坦面を第1フランジに対して起立するように貫通部を回転させる際、作業者は頭部及び拡径部の少なくともいずれかを保持すればよい。このため、頭部と拡径部とが分離される場合よりも、施工の容易性を向上させることが可能となる。
【0019】
特に、第2発明によれば、第1係止部は、頭部と拡径部とが一体化される。これにより、緊結金具に作用する曲げモーメントMを、頭部と拡径部とが分離可能に構成される場合よりも、大きくすることができる。このため、ネジ部の軸心の傾きを抑制することが可能となる。
【0020】
特に、第3発明によれば、平坦面は、平面視円形状の拡径部の一部を直線状に切り欠いて形成される。これにより、既製品のフランジ付きナットの平面視円形状のフランジ部分の一部を切り欠いたものを第1係止部として用いることができる。また、既製品の平面視円形状のワッシャーの一部を切り欠いたものを拡径部として用いることができる。このため、既製品を一部加工するだけでよく、緊結金具の製造の容易性を向上させることが可能となる。
【0021】
特に、第5発明によれば、平坦面32の法線方向は、第2係止部の延伸方向と異なる方向に配置される。これにより、法線方向と第2係止部の延伸方向とが同一方向である場合と比較して、貫通部の貫通孔からの脱落を抑制することができる。このため、鋼製部材同士をより強固に緊結することが可能となる。
【0022】
特に、第6発明~第7発明によれば、貫通工程では、平坦面を第1鋼製部材に対向させて第1貫通孔と第2貫通孔とに第2係止部を貫通させ、平坦面が第1鋼製部材に対して起立するように貫通部を回転させる。これにより、第2係止部を貫通孔に貫通させる際、平坦面の法線方向と第2係止部の延伸方向とが同一方向となり、ネジ部の軸心と平坦面との距離を従来よりも小さくできる。すなわち、第1フランジに対向した平坦面を第1フランジに対して起立するように貫通部を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、貫通部が貫通孔に干渉するのを抑制することができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0023】
また、第6発明~第7発明によれば、貫通工程では、平坦面を第1鋼製部材に対向させて第1貫通孔と第2貫通孔とに第2係止部を貫通させ、平坦面が第1鋼製部材に対して起立するように貫通部を回転させる。これにより、貫通部を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、第1係止部から第2係止部までの距離を従来よりも小さくすることができる。したがって、拡径部と第2係止部とでライナープレートのフランジを挟んだ後に頭部をネジ部に螺合する際に、ネジ部に螺合する頭部の回転数を低減させることができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることができる可能となる。
【0024】
特に、第7発明によれば、複数の緊結金具を用いて、各々の緊結金具に対して貫通工程を行った後、各々の緊結金具に対して緊結工程を行う。これにより、複数の緊結金具を用いて鋼製部材を緊結する際に、インパクトレンチ等で緊結金具を緊結する際の段取り替えの時間を短縮することができる。このため、施工時間の大幅に短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す斜視図である。
図2図2(a)は、第1実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す正面図であり、図2(b)は、その側面図である。
図3図3(a)は、第1実施形態に係る緊結金具の一例を示す側面図であり、図3(b)は、その平面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、鋼製部材の緊結方法の一例における貫通工程を示す正面図である。
図5図5(a)は、鋼製部材の緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結する前の状態を示す正面図であり、図5(b)は、鋼製部材の緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結した後の状態を示す正面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す正面図であり、図7(a)は、頭部と拡径部とが分離可能に構成される例を示す図であり、図7(b)は、頭部と拡径部とが一体化される例を示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す斜視図である。
図9図9(a)は、第2実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す正面図であり、図9(b)は、その側面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、鋼製部材の緊結方法の一例における貫通工程を示す正面図である。
図11図11(a)は、鋼製部材の緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結する前の状態を示す正面図であり、図11(b)は、鋼製部材の緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結した後の状態を示す正面図である。
図12図12は、第3実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す斜視図である。
図13図13(a)は、第3実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す正面図であり、図13(b)は、その底面図である。
図14図14(a)及び図14(b)は、鋼製部材の緊結方法の一例における貫通工程を示す正面図である。
図15図15(a)は、鋼製部材の緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結する前の状態を示す正面図であり、図15(b)は、鋼製部材の緊結方法において第1係止部と第2係止部とにより挟んで緊結した後の状態を示す正面図である。
図16図16は、第4実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す斜視図である。
図17図17(a)は、第4実施形態に係る鋼製部材の緊結構造の一例を示す正面図であり、図17(b)は、その底面図である。
図18図18(a)及び図18(b)は、従来の緊結金具を用いてライナープレートを緊結する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す斜視図である。図2(a)は、第1実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す正面図であり、図2(b)は、その側面図である。図3(a)は、第1実施形態に係る緊結金具1の一例を示す側面図であり、図3(b)は、その平面図である。
【0028】
鋼製部材の緊結構造100では、鋼製部材としてライナープレート9が用いられる。鋼製部材の緊結構造100は、フランジ91に貫通孔92が形成されるライナープレート9同士を緊結するものである。
【0029】
ライナープレート9は、隣接する他のライナープレート9に緊結されて、筒状に構築されるものである。筒状に構築されたライナープレート9は、立坑内や地上等に設けられ、深礎杭、集水井、水中仮締切、橋脚等を構築する際の土留め等として用いられる。
【0030】
ライナープレート9は、上下方向に波形に形成される波形鋼板と、波形鋼板の上端、下端及び両側端にそれぞれフランジ91を有する。フランジ91には、貫通孔92が形成される。
【0031】
ライナープレート9は、波形鋼板の上端及び下端のフランジ91を周方向フランジとし、波形鋼板の両側端のフランジ91を軸方向フランジとしたとき、鋼製部材の緊結構造100は、上下方向に隣接するライナープレート同士を緊結するものとして、周方向フランジ同士が緊結されるものであってもよい。また、鋼製部材の緊結構造100は、側方向に隣接するライナープレート同士を緊結するものとして、軸方向フランジ同士が緊結されるものであってもよい。
【0032】
鋼製部材の緊結構造100は、第1ライナープレート9-1と、第2ライナープレート9-2と、緊結金具1とを備える。
【0033】
第1ライナープレート9-1は、第1貫通孔92-1が形成される第1フランジ91-1を有する。第2ライナープレート9-2は、第1ライナープレート9-1に隣接するものであって、第2貫通孔92-2が形成される第2フランジ91-2を有する。
【0034】
緊結金具1は、第1ライナープレート9-1と第2ライナープレート9-2とを緊結するためのものである。緊結金具1は、貫通部2と、第1係止部3とを備える。
【0035】
貫通部2は、円柱状等に形成される鋼製等の棒状の部材が用いられる。貫通部2は、第1貫通孔92-1と、第2貫通孔92-2とに貫通される。貫通部2は、一端部2a側に第1係止部3が螺合されて設けられる。
【0036】
貫通部2は、棒状の部材がL字状に屈曲されて形成される。貫通部2は、一端部2a側に第1係止部3が螺合されるネジ部29と、ネジ部29に対して直交して延びる第2係止部22と、を有する。ネジ部29は、円柱状に形成された外面に第1係止部3が螺合可能なネジ山又はネジ溝が形成されるものである。貫通部2は、例えば折り曲げられてL字状に形成されてもよい。貫通部2は、鍛造、鋳物等によりL字状に形成されてもよい。貫通部2は、2つの棒状の部材が溶接等により接合されてL字状に形成されてもよい。
【0037】
貫通部2は、貫通部2の他端部2b側に第2係止部22を有する。第2係止部22は、第2フランジ91-2に平行に形成される。第2係止部22は、例えば、円柱状に形成されるが、四角柱、六角形柱等の角柱状等に形成されてもよい。
【0038】
第1係止部3は、貫通部2の一端部2a側のネジ部29に螺合されて設けられる。第1係止部3は、第1貫通孔92-1及び第2貫通孔92-2よりも径大に形成される。第1係止部3は、少なくとも2辺が平行に形成されることが好ましく、例えば六角柱状等の角柱状に形成される。
【0039】
第1係止部3と第2係止部22とは、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結するものである。第1係止部3は、第1フランジ91-1に当接され、第2係止部22は、第2フランジ91-2に当接される。なお、第1係止部3は、第2フランジ91-2に当接され、第2係止部22は、第1フランジ91-1に当接されてもよい。
【0040】
第1係止部3は、例えばフランジ付きナットのフランジ部分を一部切り欠いて形成される。第1係止部3は、ナットとしての頭部30と、頭部30よりも径大に形成されるフランジとしての拡径部31と、を有する。すなわち、第1係止部3は、頭部30と拡径部31とが一体化される。第1係止部3は、ネジ部29に螺合可能であることから、第1係止部3と第2係止部22との距離H1は、適宜調整することができる。拡径部31は、ナットの下部に付いた鍔(フランジ)部分でありワッシャーと同じ役目を果たす。
【0041】
拡径部31は、側面に平面視直線状に形成される平坦面32を有する。平坦面32は、平面視円形状の拡径部31の一部を直線状に切り欠いて形成される。平坦面32は、フランジ付きナットの平面視円形状のフランジ部分の一部を切り欠いて平坦面32が形成される。
【0042】
第1係止部3は、フランジ付きナットのかわりに、ナットとしての頭部30とワッシャーとしての拡径部31とが溶接等により一体化されるものが用いられてもよい。この場合、平面視円形状のワッシャーの一部を切り欠いて平坦面32が形成されてもよい。
【0043】
なお、第1係止部3は、頭部30と拡径部31とが分離可能とされてもよい。この場合、頭部30は、例えばネジ部29に螺合可能なナットが用いられる。拡径部31は、例えば頭部30よりも拡径されたワッシャーが用いられる。
【0044】
次に、鋼製部材の緊結方法について、説明する。鋼製部材の連結方法は、フランジ91に貫通孔92が形成されるライナープレート9同士を緊結するものであって、緊結金具1が用いられる。鋼製部材の緊結方法では、貫通工程と、緊結工程とを備える。鋼製部材の緊結方法では、予め第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とを対向させておく。
【0045】
図4(a)に示すように、貫通工程では、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和よりも大きくなるように、予めネジ部29に頭部30と拡径部31とを配置させておく。このとき、ネジ部29に頭部30が螺合される。
【0046】
そして、貫通工程では、平坦面32を第1ライナープレート9-1の第1フランジ91-1に対向させる。このとき、平坦面32を第1フランジ91-1に接触させる。そして、貫通工程では、第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに第2係止部22を貫通させる。第2係止部22を貫通させたとき、平坦面32の法線方向と第2係止部22の延伸方向とが、同一方向となる。
【0047】
次に、図4(b)に示すように、貫通工程では、平坦面32が第1フランジ91-1に対して起立するように貫通部2を回転させる。このとき、ネジ部29の軸心C1と平坦面32との距離L1が、回転半径となる。
【0048】
そして、図5(a)に示すように、貫通工程では、第1係止部3の拡径部31と第2係止部22との間に、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを配置する。
【0049】
このとき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和よりも大きいため、貫通工程では、第1係止部3が第1フランジ91-1に係止され、第2係止部22が第2フランジ91-2から離間されることとなる。
【0050】
また、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1と、第1フランジ91-1の厚みt1と第2フランジ91-2の厚みt2との和と、の差Δhとし、第1係止部3の高さh1としたとき、差Δhは、第1係止部3の高さh1よりも小さいことが好ましい。
【0051】
次に、図5(b)に示すように、緊結工程では、貫通部2の一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3の頭部30を螺合させる。これにより、第2フランジ91-2から離間された第2係止部22が第2フランジ91-2に近づいていき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が徐々に小さくなり、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0052】
緊結工程では、ネジ部29に第1係止部3を螺合させる際には、スパナ等の所定の挟持手段により第1係止部3を挟持しつつ、挟持した第1係止部3に対してネジ部29をインパクトレンチ等で回転させることにより、ネジ部29に第1係止部3の頭部30を螺合してもよい。また、緊結工程では、ネジ部29に第1係止部3の頭部30を螺合させる際には、シノ等により貫通部2を押さえつつ、第1係止部3の頭部30をネジ部29に対して回転させることにより、ネジ部29に第1係止部3を螺合してもよい。このように、第1係止部3及び貫通部2の少なくとも何れかを挟持しておくことにより、第1係止部3とネジ部29との供回りを防止することができる。
【0053】
図6に示すように、緊結工程では、第1係止部3の頭部30をネジ部29に対して回転させる際には、貫通部2の他端部2bを第2ライナープレート9-2に当接させた上で、第1係止部3をネジ部29に対して回転させることが好ましい。これにより、鋼製部材に当接した他端部2bの回転ができなくなる。このため、第1係止部3とネジ部29との供回りを防止することができる。
【0054】
また、図6に示すように、緊結工程では、平坦面32の法線方向Nと、第2係止部22の延伸方向Aとが、異なる方向となったときに、螺合を完了させることが好ましい。これにより、ライナープレート9に作用する外力に伴って第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とが分離しようとする場合であっても、貫通部2の貫通孔92からの脱落を抑制することができる。
【0055】
このようにして、緊結工程では、第1ライナープレート9-1と第2ライナープレート9-2とを、第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0056】
以上により、鋼製部材の緊結方法の一例が完了する。
【0057】
なお、鋼製部材の緊結方法では、複数の緊結金具1を用いて、各々の緊結金具1について順次貫通工程を行った後、貫通工程の完了した各々の緊結金具1について一括して緊結工程を行ってもよい。また、鋼製部材の緊結方法では、複数の緊結金具1を用いて、各々の緊結金具1について貫通工程と緊結工程とを繰り返して行ってもよい。
【0058】
本実施形態によれば、拡径部31は、側面に平坦面32が形成される。これにより、第2係止部22を貫通孔92に貫通させる際、平坦面32の法線方向と第2係止部22の延伸方向とが同一方向となり、ネジ部29の軸心C1と平坦面32との距離L1を従来よりも小さくできる。すなわち、第1フランジ91-1に対向した平坦面32を第1フランジ91-1に対して起立するように貫通部2を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、貫通部2が貫通孔92に干渉するのを抑制することができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、拡径部31は、側面に平坦面32が形成される。これにより、貫通部2を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1を従来よりも小さくすることができる。したがって、拡径部31と第2係止部22とでライナープレート9のフランジ91を挟んだ後に頭部30をネジ部29に螺合する際に、ネジ部29に螺合する頭部30の回転数を低減させることができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることができる可能となる。
【0060】
ここで、ライナープレート9に作用する外力に伴って第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とが分離しようとする場合がある。この場合、第1係止部3と第2係止部22とにより隣接する第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを挟んで緊結した際に、外力の作用に伴って貫通部2の脱落が懸念される。この点、本実施形態によれば、これにより、第1係止部3と第2係止部22とによりフランジ91を挟んで緊結した際に、平坦面32の法線方向Nは、第2係止部22の延伸方向Aと異なる方向に配置される。これにより、法線方向Nと第2係止部22の延伸方向Aとが同一方向である場合と比較して、貫通部2の貫通孔92からの脱落を抑制することができる。このため、ライナープレート9同士をより強固に緊結することが可能となる。
【0061】
本実施形態によれば、平坦面32は、平面視円形状の拡径部31の一部を直線状に切り欠いて形成される。これにより、既製品のフランジ付きナットの平面視円形状のフランジ部分の一部を切り欠いたものを第1係止部3として用いることができる。また、既製品の平面視円形状のワッシャーの一部を切り欠いたものを拡径部31として用いることができる。このため、既製品を一部加工するだけでよく、緊結金具1の製造の容易性を向上させることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、複数の緊結金具1を用いて、各々の緊結金具1に対して貫通工程を行った後、各々の緊結金具1に対して緊結工程を行う。これにより、複数の緊結金具1を用いて鋼製部材を緊結する際に、インパクトレンチ等で緊結金具1を緊結する際の段取り替えの時間を短縮することができる。このため、施工時間の大幅に短縮することが可能となる。
【0063】
本実施形態によれば、第1係止部3は、頭部30と拡径部31とが一体化される。これにより、第1フランジ91-1に対向させた平坦面32を第1フランジ91-1に対して起立するように貫通部2を回転させる際、作業者は頭部30及び拡径部31の少なくともいずれかを保持すればよい。このため、頭部30と拡径部31とが分離される場合よりも、施工の容易性を向上させることが可能となる。
【0064】
図7に示すように、ネジ部29の軸心C1から頭部30の周端までの距離D1とし、ネジ部29の軸心C1から拡径部31の湾曲面までの距離D2とする。このとき、D1<D2を満たす。頭部30をネジ部29に螺合し過ぎてしまうと、第2フランジ91-2に接触されていた第2係止部22が第2フランジ91-2に対してずれてしまい、軸心C1が斜めになる場合があるが、このとき、軸心C1の傾きを抑制する曲げモーメントMが作用する。
【0065】
図7(a)に示すように、頭部30と拡径部31とが分離可能に構成される場合、鋼製部材に外力等が作用したとき、頭部30と拡径部31とが分離し、頭部30の点B1を支点に引き抜かれようとする。このため、曲げモーメントM-1は、ネジ部29の軸心C1に作用する引き抜き力と距離D1の積で表される。これに対し、図7(b)に示すように、頭部30と拡径部31とが一体化されて構成される場合、鋼製部材に外力等が作用したとき、頭部30と拡径部31とが一体的であるため、拡径部31の点B2を支点に引き抜かれようとする。このため、曲げモーメントM-2は、ネジ部29の軸心C1に作用する引き抜き力と距離D2の積で表される。D1<D2であることから、頭部30と拡径部31とが一体化されて構成される場合の曲げモーメントM-2は、頭部30と拡径部31とが分離可能に構成される場合の曲げモーメントM-1よりも大きくすることができる。
【0066】
したがって、本実施形態によれば、第1係止部3は、頭部30と拡径部31とが一体化される。これにより、緊結金具1に作用する曲げモーメントMを、頭部30と拡径部31とが分離可能に構成される場合よりも、大きくすることができる。このため、ネジ部29の軸心C1の傾きを抑制することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、第1鋼製部材と第2鋼製部材は、貫通孔92が形成されるフランジ91を有するライナープレート9である。これにより、ライナープレート9同士を緊結した土留壁等の構造物を構築することが可能となる。
【0068】
特に、本実施形態によれば、貫通工程では、平坦面32を第1フランジ91-1に対向させて第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに第2係止部22を貫通させ、平坦面32が第1フランジ91-1に対して起立するように貫通部2を回転させる。これにより、第2係止部22を貫通孔92に貫通させる際、平坦面32の法線方向と第2係止部22の延伸方向とが同一方向となり、ネジ部29の軸心C1と平坦面32との距離L1を従来よりも小さくできる。すなわち、第1フランジ91-1に対向した平坦面32を第1フランジ91-1に対して起立するように貫通部2を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、貫通部2が貫通孔92に干渉するのを抑制することができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、貫通工程では、平坦面32を第1フランジ91-1に対向させて第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに第2係止部22を貫通させ、平坦面32が第1フランジ91-1に対して起立するように貫通部2を回転させる。これにより、貫通部2を回転させるときの回転半径を小さくすることができる。このため、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1を従来よりも小さくすることができる。したがって、拡径部31と第2係止部22とでライナープレート9のフランジ91を挟んだ後に頭部30をネジ部29に螺合する際に、ネジ部29に螺合する頭部30の回転数を低減させることができる。その結果、施工時間の短縮化を図ることができる可能となる。
【0070】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す斜視図である。図9(a)は、第2実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す正面図であり、図9(b)は、その側面図である。
【0071】
鋼製部材の緊結構造100では、鋼製部材としてコルゲート鋼板90が用いられる。鋼製部材の緊結構造100は、端部に貫通孔92が形成されるコルゲート鋼板90同士を緊結するものである。
【0072】
コルゲート鋼板90は、隣接する他のコルゲート鋼板90に緊結されて、断面U字状等に構築されるものである。U字状に構築されたコルゲート鋼板90は、地面等に設けられ、水路等として用いられる。
【0073】
コルゲート鋼板90は、山部94と谷部95が繰り返し形成される波形に形成され、山部94の端部に貫通孔92が形成される。複数のコルゲート鋼板90は、端部同士が重ね合わされて、緊結金具1により互いに緊結される。なお、第2実施形態では、山部94に貫通孔92が形成される形態について説明するが、谷部95に貫通孔92が形成されて、緊結金具1により緊結されてもよい。
【0074】
鋼製部材の緊結構造100は、第1コルゲート鋼板90-1と、第2コルゲート鋼板90-2と、緊結金具1とを備える。
【0075】
次に、鋼製部材の緊結方法について、説明する。鋼製部材の連結方法は、貫通孔92が形成されるコルゲート鋼板90同士を緊結するものであって、緊結金具1が用いられる。鋼製部材の緊結方法では、貫通工程と、緊結工程とを備える。鋼製部材の緊結方法では、予め第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とを対向させておく。
【0076】
図10(a)に示すように、貫通工程では、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、第1コルゲート鋼板90-1の厚みt1と第2コルゲート鋼板90-2の厚みt2との和よりも大きくなるように、予めネジ部29に頭部30と拡径部31とを配置させておく。このとき、ネジ部29に頭部30が螺合される。
【0077】
そして、貫通工程では、平坦面32を第1コルゲート鋼板90-1に対向させる。このとき、平坦面32を第1コルゲート鋼板90-1に接触させる。そして、貫通工程では、第1貫通孔92-1と第2貫通孔92-2とに第2係止部22を貫通させる。
【0078】
次に、図10(b)に示すように、貫通工程では、平坦面32が第1コルゲート鋼板90-1に対して起立するように貫通部2を回転させる。このとき、ネジ部29の軸心C1と平坦面32との距離L1が、回転半径となる。
【0079】
そして、図11(a)に示すように、貫通工程では、第1係止部3の拡径部31と第2係止部22との間に、第1コルゲート鋼板90-1と第2コルゲート鋼板90-2とを配置する。
【0080】
このとき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、第1コルゲート鋼板90-1の厚みt1と第2コルゲート鋼板90-2の厚みt2との和よりも大きいため、貫通工程では、第1係止部3が第1コルゲート鋼板90-1に係止され、第2係止部22が第2コルゲート鋼板90-2から離間されることとなる。
【0081】
また、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1と、第1コルゲート鋼板90-1の厚みt1と第2コルゲート鋼板90-2の厚みt2との和と、の差Δhとし、第1係止部3の高さh1としたとき、差Δhは、第1係止部3の高さh1よりも小さいことが好ましい。
【0082】
次に、図11(b)に示すように、緊結工程では、貫通部2の一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3の頭部30を螺合させる。これにより、第2コルゲート鋼板90-2から離間された第2係止部22が第2コルゲート鋼板90-2に近づいていき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が徐々に小さくなり、第1コルゲート鋼板90-1と第2コルゲート鋼板90-2とを第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0083】
このようにして、緊結工程では、第1コルゲート鋼板90-1と第2コルゲート鋼板90-2とを、第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0084】
特に、本実施形態によれば、第1鋼製部材と第2鋼製部材は、貫通孔92が形成されるコルゲート鋼板90である。これにより、コルゲート鋼板90同士を緊結した構造物を構築することが可能となる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100について説明する。図12は、第3実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す斜視図である。図13(a)は、第3実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す側面図であり、図13(b)は、その底面図である。
【0086】
本実施形態では、第1鋼製部材として鋼板8-1が用いられ、第2鋼製部材として筒状の支柱8-2が用いられる。鋼製部材の緊結構造100は、鋼板8-1と、支柱8-2とを緊結するものである。
【0087】
鋼板8-1は、隣接する支柱8-2に緊結される。鋼板8-1は、鋼板が曲げ加工されており、支柱8-2に接触する部分が湾曲して形成される。鋼板8-1は、支柱8-2に接触する部分に第2貫通孔82-2が形成される。鋼板8-1は、両端に孔が形成され、この孔を介して図示しない防護柵等の柵用パネルが接続可能な接続金具が用いられる。
【0088】
支柱8-2は、断面円形状等の筒状に形成され、下端が地面に固定される。支柱8-2は、側壁部に第2貫通孔82-2が形成され、第2貫通孔82-2に対向する位置には貫通孔が形成されていない。
【0089】
鋼製部材の緊結構造100は、鋼板8-1と、支柱8-2と、緊結金具1とを備える。
【0090】
次に、鋼製部材の緊結方法について、説明する。鋼製部材の連結方法は、第1貫通孔82-1が形成される鋼板8-1と、第2貫通孔82-2が形成される支柱8-2と、を緊結するものであって、緊結金具1が用いられる。鋼製部材の緊結方法では、貫通工程と、緊結工程とを備える。鋼製部材の緊結方法では、予め第1貫通孔82-1と第2貫通孔82-2とを対向させておく。
【0091】
図14(a)に示すように、貫通工程では、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、鋼板8-1の厚みt1と支柱8-2の厚みt2との和よりも大きくなるように、予めネジ部29に頭部30と拡径部31とを配置させておく。このとき、ネジ部29に頭部30が螺合される。
【0092】
そして、貫通工程では、平坦面32を鋼板8-1に対向させる。このとき、平坦面32を鋼板8-1に接触させる。そして、貫通工程では、第1貫通孔82-1と第2貫通孔82-2とに第2係止部22を貫通させる。
【0093】
次に、図14(b)に示すように、貫通工程では、平坦面32が鋼板8-1に対して起立するように貫通部2を回転させる。このとき、ネジ部29の軸心C1と平坦面32との距離L1が、回転半径となる。
【0094】
そして、図15(a)に示すように、貫通工程では、第1係止部3の拡径部31と第2係止部22との間に、鋼板8-1と支柱8-2とを配置する。
【0095】
このとき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が、鋼板8-1の厚みt1と支柱8-2の厚みt2との和よりも大きいため、貫通工程では、第1係止部3が鋼板8-1に係止され、第2係止部22が支柱8-2から離間されることとなる。
【0096】
また、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1と、鋼板8-1の厚みt1と支柱8-2の厚みt2との和と、の差Δhとし、第1係止部3の高さh1としたとき、差Δhは、第1係止部3の高さh1よりも小さいことが好ましい。
【0097】
次に、図15(b)に示すように、緊結工程では、貫通部2の一端部2aに形成されるネジ部29に第1係止部3の頭部30を螺合させる。これにより、支柱8-2から離間された第2係止部22が支柱8-2に近づいていき、第1係止部3から第2係止部22までの距離H1が徐々に小さくなり、鋼板8-1と支柱8-2とを第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0098】
このようにして、緊結工程では、鋼板8-1と支柱8-2とを、第1係止部3と第2係止部22とにより挟んで緊結する。
【0099】
特に、本実施形態によれば、第1鋼製部材は、鋼板8-1であり、第2鋼製部材は、筒状に形成される支柱8-2である。これにより、鋼板8-1と支柱8-2とを緊結した構造物を構築することが可能となる。
【0100】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100について説明する。図16は、第4実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す斜視図である。図17(a)は、第4実施形態に係る鋼製部材の緊結構造100の一例を示す正面図であり、図17(b)は、その底面図である。
【0101】
本実施形態では、第1鋼製部材として溝形鋼7-1が用いられ、第2鋼製部材として筒状の支柱7-2が用いられる。鋼製部材の緊結構造100は、溝形鋼7-1と、支柱7-2とを緊結するものである。
【0102】
溝形鋼7-1は、隣接する支柱7-2に緊結される。溝形鋼7-1は、例えばリップ溝形鋼が用いられる。溝形鋼7-1は、断面コの字状に形成され、一対のフランジと、一対のフランジを繋ぐウェブとを有する。溝形鋼7-1は、ウェブに第1貫通孔72-1が形成される。溝形鋼7-1は、例えば構造物の胴縁として用いられる。
【0103】
支柱7-2は、断面矩形状等の筒状に形成され、下端が地面に固定される。支柱7-2は、側壁部に第2貫通孔72-2が形成され、第2貫通孔72-2に対向する位置には貫通孔が形成されていない。
【0104】
特に、本実施形態によれば、第1鋼製部材は、溝形鋼7-1であり、第2鋼製部材は、筒状に形成される支柱7-2である。これにより、溝形鋼7-1と支柱7-2とを緊結した構造物を構築することが可能となる。
【0105】
本発明では、鋼製部材としてH形鋼、アングル鋼、溝形鋼等の形鋼同士の緊結に用いられてもよい。
【0106】
本発明では、鋼製部材の背面に手が回りにくくナットの取付けが困難な箇所や、短時間での緊結が求められる場合に有効である。
【0107】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これらの実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。さらに、この発明は、上記いくつかの実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
100 :鋼製部材の緊結構造
1 :緊結金具
2 :貫通部
2a :一端部
2b :他端部
22 :第2係止部
29 :ネジ部
3 :第1係止部
30 :頭部
31 :拡径部
32 :平坦面
8-1 :鋼板
82-1 :第1貫通孔
8-2 :支柱
82-2 :第2貫通孔
9 :ライナープレート
9-1 :第1ライナープレート
9-2 :第2ライナープレート
91 :フランジ
91-1 :第1フランジ
91-2 :第2フランジ
90 :コルゲート鋼板
90-1 :第1コルゲート鋼板
90-2 :第2コルゲート鋼板
92 :貫通孔
92-1 :第1貫通孔
92-2 :第2貫通孔
94 :山部
95 :谷部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18