(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015015
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】車両において道路状態を検出するように構成されたシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022114099
(22)【出願日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】202141032310
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】515022571
【氏名又は名称】ロバート ボッシュ エンジニアリング アンド ビジネス ソリューションズ プライヴェット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch Engineering and Business Solutions Private Limited
【住所又は居所原語表記】123, Industrial Layout, Hosur Road, Koramangala, Bangalore - 560 095, India
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カラガンドラ ハリナス スーマン レッディ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッジ アーナンド アショック
(72)【発明者】
【氏名】ネマーニ ラマ アディチャ
(72)【発明者】
【氏名】サティッシュ クンマー ジャヤラジャ
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181EE11
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】本開示は、レーザ光源(1)と撮像ユニット(2)と少なくとも1つの処理ユニット(3)とを含む、幾何学的レーザ投影及び画像処理システムを使用して、車両において道路状態を検出するように構成されたシステム及びその方法を提案する。
【解決手段】レーザ光源(1)は、道路上に幾何学的レーザ投影を投影するように構成されている。撮像ユニット(2)は、幾何学的投影の画像を捕捉するように構成されている。処理ユニット(3)は、投影された幾何学的投影についての表面反射率を計算するように構成されている。さらに処理ユニット(3)は、捕捉された画像に基づき、規則的なタイムインターバルで投影の幾何学的パラメータを計算するように構成されている。処理ユニット(3)は、表面反射率と幾何学的パラメータとに基づき道路状態を特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源(1)と撮像ユニット(2)と少なくとも1つの処理ユニット(3)とを含む、車両において道路状態を検出するように構成されたシステムであって、
前記レーザ光源(1)は、道路上に幾何学的レーザ投影を投影するように構成されており、
前記撮像ユニット(2)は、前記幾何学的投影の画像を捕捉するように構成されており、
前記処理ユニット(3)は、
投影された前記幾何学的投影の表面反射率を計算し、
捕捉された前記画像に基づき規則的なタイムインターバルで前記投影の幾何学的パラメータを計算し、
前記表面反射率と前記幾何学的パラメータとに基づき道路状態を特定する
ように構成されている、
ことを特徴とする、車両において道路状態を検出するように構成されたシステム。
【請求項2】
前記幾何学的投影を、多角形又は楕円のいずれかとし得る、
請求項1に記載の、車両において道路状態を検出するように構成されたシステム。
【請求項3】
他の幾何学的パラメータ及び前記表面反射率に依存して変化していく前記投影の領域によって、検出された前記道路状態からの距離が特定される、
請求項1に記載の、車両において道路状態を検出するように構成されたシステム。
【請求項4】
レーザ光源(1)と撮像ユニット(2)と少なくとも1つの処理ユニット(3)とを含む車両において道路状態を検出する方法において、
前記レーザ光源(1)によって道路上に幾何学的レーザ投影を投影するステップ(201)と、
前記撮像ユニット(2)によって前記幾何学的投影の画像を捕捉するステップ(202)と、
捕捉された前記画像を前記処理ユニット(3)によって処理するステップであって、以下のステップ、即ち、
投影された前記幾何学的投影について表面反射率を計算するステップ(203)、
捕捉された前記画像に基づき、規則的なタイムインターバルで前記投影の幾何学的パラメータを計算するステップ(204)、
前記表面反射率と前記幾何学的パラメータとに基づき道路状態を特定するステップ(205)
を通じて処理するステップと、
を含む、車両において道路状態を検出する方法。
【請求項5】
前記幾何学的投影を、多角形又は楕円のいずれかとし得る、
請求項4に記載の、車両において道路状態を検出する方法。
【請求項6】
他の幾何学的パラメータ及び前記表面反射率に依存して変化していく前記投影の領域によって、検出された前記道路状態からの距離を特定する、
請求項4に記載の、車両において道路状態を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両において道路状態を検出するように構成されたシステム及びその方法に関する。より具体的には、本開示によれば、道路損傷又は障害物といった道路状態を検出するための基礎となる方法、及び、この方法の関連するハードウェア構成が開示される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自動化された車両、又は、所定の運転者支援レベルを備えた車両は、道路状態を正確に予測し、それに応じて反応することが必要とされる。予測による道路状態サービスは、道路損傷、路面の穴又は障害物といった危険を、重大な状況が発生する前に、遠方からシステムが検出することを支援する。数多くの既存のソリューションによれば、インターネット又はクラウドに基づくプラットフォームを使用して、周囲状態、及び、ハイドロプレーニング、氷又は雪といった関連する潜在的な危険に関するリアルタイム情報が車両に提供される。他のいくつかのソリューションによれば、マシンビジョンに基づく技術、レーダに基づく検出などが用いられる。これらの技術は、ほとんどの道路状態を識別するために役立つが、路面の穴及び亀裂といった道路損傷の識別には役立たない。さらに、これらの技術は高価であり、低コストの車両に取り入れることは困難である。従って、移動中の車両から道路損傷を検出するための、費用対効果が大きくかつ正確な方法が必要とされている。
【0003】
米国特許出願公開第2006104481号明細書、発明の名称「画像処理による車両安全管理システム」には、車両周辺の領域を撮像するように構成された画像処理システムが開示されており、この画像処理システムは、画像捕捉装置によって自動的に捕捉された車両付近の領域の画像を表す情報を受信するように構成された画像プロセッサを備えている。この場合、画像プロセッサは、車両付近の画像を表す情報を解析し、車両付近の領域の画像を表す情報が、少なくとも1つの予め定められた周囲を表しているか否かを自動的に特定するロジックを含む。いくつかの実施形態において、この画像処理システムは、衝突防止及び衝突記録のために利用される。いくつかの実施形態において、この画像処理システムは、衝突尤度増加及び/又は衝突発生を識別するために、及び/又は、衝突回避装置及び/又は衝突安全装置を実行するために、利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006104481号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの実施形態を、以下の添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】車両(10)において道路状態を検出するように構成されたシステムを示す図である。
【
図2】車両において道路状態を検出するように構成されたシステム(100)の構成要素を示す図である。
【
図3】レーザ光源から発生する幾何学的レーザ投影を示す図である。
【
図4】車両において道路状態を検出するための方法ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面の詳細な説明
図1には、車両において道路状態を検出するように構成されたシステムが示されている。このシステムは、本開示において詳述する機能に限定されるものではない個別のハードウェア構成として、車両に設けられている。しかしながら、本開示の1つの実施の形態において、このシステムは、今日の車両と互換性がある装置又は今日の車両に後から据え付けることができる装置として具現化される。
図2には、車両において道路状態を検出するように構成されたシステムの構成要素が示されている。このシステムは、レーザ光源(1)と、撮像ユニット(2)と、少なくとも1つの処理ユニット(3)とを含む。今日の車両においては、電子ブレーキモジュレータ(4)モジュール及びブレーキシステム(5)モジュールといった独立して動作する他の構成要素も、上述のシステムに結合されるように構成され得る。
【0008】
レーザ光源(1)は、道路上に幾何学的レーザ投影を投影するように構成されている。幾何学的投影は、多角形又は楕円のいずれかとすることができる。
図3には、レーザ光源から発生する幾何学的レーザ投影が示されている。幾何学的レーザ投影は、車両から予め規定された最小距離に投影される。この最小距離は、車両の瞬時速度に基づき車両を停止させるために必要な制動距離に相当する。この距離は、古典物理における周知の運動方程式に従って簡単に計算される。このためレーザ光源(1)は、車両の瞬時速度に応じて様々な距離にレーザ投影を投影するように構成されている。さらに、1つの例示的な実施形態におけるレーザ光源(1)は、レーザビームを円形又は楕円形の投影に変換する回折光学素子も有する。
【0009】
撮像ユニット(2)は、幾何学的投影の画像を捕捉するように構成されている。自動車における撮像の目的において、斯かるカメラは、商業的に入手可能であり、従来技術において周知である。
【0010】
処理ユニット(3)は、この処理ユニット(3)によって受信された信号を解釈して有意義な情報とする役割を担うスマートコンピューティングチップを有する。ここでも、本発明の1つの例示的な実施形態において、処理ユニット(3)は、さらに、機械学習アルゴリズムを実行するために必要とされる必須の制御及び演算ロジックのすべてを実行する専用回路を備えている。処理ユニット(3)は、投影された幾何学的投影についての表面反射率を計算するように構成されている。さらに、処理ユニット(3)は、捕捉された画像に基づき、規則的なタイムインターバルで投影の幾何学的パラメータを計算するように構成されている。処理ユニット(3)は、表面反射率と幾何学的パラメータとに基づき道路状態を特定する。さらに、他の幾何学的パラメータに依存して変化していく投影領域によって、検出された道路状態からの距離が特定される。
【0011】
図4には、車両において道路状態を検出するための方法ステップが示されている。車両は、
図1についての記載のとおり、レーザ光源(1)と、撮像ユニット(2)と、少なくとも1つの処理ユニット(3)とを含む。方法ステップ201において、幾何学的レーザ投影がレーザ光源(1)によって道路上に投影される。幾何学的投影は、多角形又は楕円のいずれかとすることができる。上述のように、この幾何学的投影は、車両の瞬時速度に基づき予め規定された距離(安全な制動距離)に投影される。1つの実施形態において、この幾何学的投影は楕円である。
【0012】
ステップ202において、幾何学的投影の画像が撮像ユニット(2)によって捕捉される。さらなるステップにおいて、捕捉された画像は、処理ユニット(3)によって、画像処理技術を用いて処理される。1つの実施形態において、画像処理技術は、機械学習モデルによって実行することができる。方法ステップ203において、投影された幾何学的投影について表面反射率が計算される。表面放射輝度又は表面反射率は、表面、たとえば路面における入射光束に対する反射放射束の比(屈折力)として定義される。これは、概して、入射光の方向と光周波数又は光波長とに依存する。表面反射率の計算は、拡散反射に対する数学的モデルを用いて行われ、これにより、ランベルトのモデル、トーレンス-スパローモデルなどのような表面の反射率が推定される。道路損傷の場合においては、表面反射率は、平坦な道路の反射率とは相違することになる。同様に、道路に障害物がある場合における投影された幾何学的投影についての表面放射輝度も、平坦な道路状態とは相違することになる。
【0013】
方法ステップ204において、捕捉された画像に基づき、規則的なタイムインターバルで投影の幾何学的パラメータが計算される。幾何学的パラメータには、周長、面積などのようなパラメータが含まれる。楕円投影の場合には、パラメータには、さらに、2つの楕円焦点、楕円定数、楕円中心、偏心量などが含まれる。方法ステップ205において、表面反射率と幾何学的パラメータとに基づき道路状態が特定される。他の幾何学的パラメータに依存して変化していく投影領域によって、検出された道路状態からの距離が特定される。
【0014】
基本的に、道路表面におけるレーザ投影に由来する楕円(幾何学的投影)の変化及びその特性は、道路損傷状態の作用を把握するための入力として使用することができる。道路上の車輪ポジションを模倣するように楕円方程式を微調整することができるので、これを幾何学的投影として使用することが望ましい。カメラは、道路上に投影された楕円の画像を捕捉する。出力画像は、処理ユニット(3)に送信され、処理ユニット(3)は、画像処理技術を用いて画像出力から、反射した幾何学的投影の、たとえば平滑性又は歪みを解析する。この幾何学的投影を表面反射と共に評価することによって、道路損傷状態が得られる。
【0015】
たとえば、路面の穴の場合には、幾何学的投影は、不連続の円周を有することになる。同様に、路面の穴が検出された場合には、変化していく幾何学的投影領域によって、道路損傷からの距離が得られる。急な衝撃又は急ブレーキに起因する不快感を軽減する目的で、道路損傷からの距離を利用して、車両の電子ブレーキモジュレータ(4)又はブレーキシステム(5)から反動的な措置を講じることができる。上述のシステムが画像を処理して解析するために要する時間は、100ミリ秒以下である。他方、手動では、平均すると、道路損傷に対する運転者の反応時間は2.5秒である。時速100kmの初期速度で車両を停止させるために必要な最小制動時間は、(ニュートンの運動方程式によれば)約2.5秒である。従って、上述のシステムを用いない場合、車両を減速させるためには、2.5秒の反応時間+2.5秒の制動時間により、5秒となる。しかしながら、上述のシステム及び方法論を使用することによって、最小制動時間をわずか2.5秒に短縮することができる。
【0016】
車両において道路状態を検出するように構成されたシステム及びその方法を開発するというこの着想によって、路面の穴、路面破断個所、他の障害物のような道路損傷状態に対する運転者の反応時間が短縮される。しかも、これは、特にインドやその他の新興市場におけるESPシステムのための低コストで高付加価値の機能(VAF)である。
【0017】
上述の詳細な記載において説明した実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないということを理解されたい。車両において道路状態を検出するように構成されたシステム及びその方法に対するあらゆる変更が予見され、そのような変更は、本発明の一部を成すものである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【外国語明細書】