(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150158
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】不織布ワイパー
(51)【国際特許分類】
D04H 1/542 20120101AFI20231005BHJP
A47L 13/16 20060101ALI20231005BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20231005BHJP
D04H 1/49 20120101ALI20231005BHJP
【FI】
D04H1/542
A47L13/16 A
D04H1/541
D04H1/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059111
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 生弥
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074AC02
3B074AC03
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA19
4L047AA21
4L047BA04
4L047BA09
4L047BB09
4L047CA02
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB07
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】目付を低く設定することで、低コストであり、優れた吸液性と高い表面強度とを両立した不織布ワイパーの提供。
【解決手段】セルロース系繊維、合成繊維、及び熱融着繊維を含む不織布ワイパーであって、合成繊維の含有量が不織布ワイパー全量の1重量%以上50重量%以下であり、かつ熱融着繊維の含有量が不織布ワイパー全量の10重量%以上30重量%以下であり、目付が25g/m2以上35g/m2以下、厚みが0.25mm/1ply以上、密度が0.080g/cm3以上0.130g/cm3以下、ドライテーバー測定値が5回以上である、不織布ワイパー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維、合成繊維、及び熱融着繊維を含む不織布ワイパーであって、
前記合成繊維の含有量が前記不織布ワイパー全量の3重量%以上50重量%以下であり、かつ前記熱融着繊維の含有量が前記不織布ワイパー全量の10重量%以上30重量%以下であり、
目付が25g/m2以上35g/m2以下、厚みが0.25mm/1ply以上、密度が0.080g/cm3以上0.130g/cm3以下、ドライテーバー測定値が5回以上である、不織布ワイパー。
【請求項2】
湿潤相対引張強度(GMT)が5.5N/25mm以上20.0N/25mm以下である、請求項1に記載の不織布ワイパー。
【請求項3】
吸水速度が20秒以下、吸油速度が260秒以下、T.W.A.が170g/m2以上、T.O.A.が170g/m2以上である、請求項1又は請求項2に記載の不織布ワイパー。
【請求項4】
前記合成繊維が熱可塑性樹脂繊維であり、かつ前記熱融着繊維が芯鞘型複合繊維である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の不織布ワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から不織布で作られたワイパーがクリーンエリア等低発塵性を必要とする環境で使用されている。これまでは半導体産業等、限定的な工業分野でのみ製造環境のクリーン化が行われていたが、近年では、化粧品や医療品、食品等、様々な工業分野でクリーン環境の導入が行われ、不織布ワイパーの需要が高まっている。様々な拭き取り環境に対応して、例えば、セルロース系繊維(木材パルプ、ビスコースレーヨンやリヨセル等)と合成繊維(PET、PP、PE等)の短繊維とを用い、湿式法又はスパンレース法により工業用不織布ワイパーが製造されている。
【0003】
特許文献1には、木質パルプ、熱融着性繊維、レーヨン繊維、ビニロンバインダー繊維及び紙力増強剤を湿式抄造し、抄造物の坪量が10g/m2以上30g/m2以下であり、繊維分として木質パルプ50~85重量%、レーヨン繊維10~50重量%、熱融着性繊維1~3重量%の割合で含有し、かつこれらの繊維分100重量%に対してビニロンバインダー繊維を1~15重量%含む湿式不織布製ワイパー用基布が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化粧品や食品等の製造において、不織布ワイパーに更に吸液性を向上させるため、厚みを高くすることが一般的に行われるが、吸液性は向上する反面で、表面摩耗強度が低下して、油など粘度が高いものへの拭き取りを行ったとき、十分な強度を得ることができない。また、親水性であるセルロース系繊維の量を増やす方法については、製造コストが増加するなどの課題がある。
【0006】
本発明の目的は、目付を低く設定することで、低コストであり、優れた吸液性と高い表面強度とを両立した不織布ワイパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、目付を低く設定しつつ、合成繊維及び熱融着繊維の各配合比率(含有量)並びに不織布ワイパーの密度を調整することで、所望の不織布ワイパーが低コストで得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の不織布ワイパーに係る。
【0008】
(1)セルロース系繊維、合成繊維、及び熱融着繊維を含む不織布ワイパーであって、
前記合成繊維の含有量が前記不織布ワイパー全量の3重量%以上50重量%以下であり、かつ前記熱融着繊維の含有量が前記不織布ワイパー全量の10重量%以上30重量%以下であり、
目付が25g/m2以上35g/m2以下、厚みが0.25mm/1ply以上、密度が0.080g/cm3以上0.130g/cm3以下、ドライテーバー測定値が5回以上である、不織布ワイパー。
(2)湿潤相対引張強度(GMT)が5.5N/25mm以上20.0N/25mm以下である、上記(1)の不織布ワイパー。
(3)吸水速度が20秒以下、吸油速度が260秒以下、T.W.A.が170g/m2以上、T.O.A.が170g/m2以上である、上記(1)又は(2)の不織布ワイパー。
(4)前記合成繊維が熱可塑性樹脂繊維であり、前記熱融着繊維が、芯鞘型複合繊維である、上記(1)乃至(3)のいずれかの不織布ワイパー。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目付を低く設定することで、低コストであり、優れた吸液性と高い表面強度とを両立した不織布ワイパーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の不織布ワイパーの製造方法の一実施形態を模式的に示す側面図である。
【
図2】ドライテーバー試験後の本実施形態の不織布ワイパーの表面状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<不織布ワイパー>
本実施形態に係る不織布ワイパーは、セルロース系繊維、合成繊維、及び熱融着繊維を含み、かつ目付が25g/m2以上35g/m2以下の範囲、厚みが0.25mm/1ply以上の範囲、密度が0.080g/cm3以上0.130g/cm3以下の範囲、及びドライテーバー測定値が5回以上のものである。このような不織布ワイパーは、良好な吸液性と表面強度とをバランス良く併せ持ち、各種工業分野において清拭用のワイパーとして好適に使用できる。
【0012】
本実施形態によれば、強度、吸液性維持の為、目付を高くする方法を用いるのではなく、熱融着繊維を適切に配合することで、目付を維持したまま、低コストで強度、吸液性を維持することができる。より具体的には、不織布ワイパーの強度を向上させるために、合成繊維の配合比率(含有量)を高くし、合成繊維の配合比率が増えることによる吸液性の低下は、不織布の密度を低めに調整することで保持し、更に密度の低下に伴う表面強度の低下は、熱融着繊維を配合することで強度を維持した不織布ワイパーが得られる。
【0013】
<不織布ワイパーの原料>
本実施形態の不織布ワイパーは、前述のように、所定量の合成繊維、及び所定量の熱融着繊維を含み、残部がセルロース系繊維を含んで構成されている。以下、セルロース系繊維、合成繊維、及び熱融着繊維の順で各繊維を詳しく説明する。
【0014】
(セルロース系繊維)
セルロース系繊維は、例えば、本実施形態の不織布ワイパーに吸水性、吸油性等を付与する。セルロース系繊維としては、例えば、リヨセル、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維レーヨン繊維、木綿繊維、針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)、広葉樹晒クラフトパルプ(以下「LBKP」ともいう)等、一般的なセルロース系繊維を用いることができる。セルロース系繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は、例えば、NBKP:LBKP=50:50以上100:0以下の範囲、NBKP:LBKP=70:30以上100:0以下の範囲、NBKP:LBKP=90:10以上100:0以下の範囲、又はNBKP:LBKP=100:0である。NBKPとしては、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。これらの中でも、リヨセル、ビスコースレーヨン等が好ましい。セルロース系繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
(熱融着繊維)
熱融着繊維を配合することで、例えば、本実施形態の不織布ワイパーの密度の低下に伴う表面強度の低下を防止し、湿潤強度を向上させ、嵩高化により吸油量を向上させる。また、嵩高化の効果もあり、これにより吸油の容量の向上に寄与する。また融着によるバインディング効果により発塵を抑えることができる。本実施形態の不織布ワイパーにおける、熱融着繊維の含有量は、本実施形態の不織布ワイパー全量の10重量%以上30重量%以下の範囲、15重量%以上25重量%以下の範囲、又は18重量%以上22重量%以下の範囲である。熱融着繊維の含有量が10重量%未満では、油の拭き取り性は比較的良好であり、ゴワゴワ感も少ないが、ドライテーバーが5回未満で耐摩耗性が低く、高粘性物や水の拭き取り性が低下する傾向がある。一方、熱融着繊維の含有量が30重量%を超えると、不織布ワイパーの耐摩耗性や高粘性物の拭き取り性、発塵性は向上するものの、水や油の拭き取り性が低下し、ゴワゴワ感が増し、全体としてバランスの良い不織布ワイパーが得られない傾向がある。
【0016】
熱融着繊維とは、融点が100℃乃至200℃の範囲にある熱可塑性樹脂繊維である。このような熱可塑性樹脂繊維としては、融点が前述の範囲にあるものを特に限定なく使用でき、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル等のポリアクリル系繊維等が挙げられる。また、熱融着繊維として、低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる複合繊維を使用できる。前述の複合繊維としては、芯鞘型の複合繊維が挙げられる。好ましく、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。芯鞘型の複合繊維としては、芯成分が同心芯鞘型複合繊維や、偏心芯鞘型複合繊維が挙げられる。これら複合繊維の具体例としては、特開平9-296325号公報や特許2759331号公報等に記載のものが挙げられる。さらに市販の熱融着繊維も使用でき、市販品としては、ES Chopシリーズ(チッソ(株)製)、NBFシリーズ(大和紡績(株)製)等が挙げられる。特にNBFのEタイプは、低融点(約100℃)のEVA(エチレン-酢ビ共重合体)を鞘成分としており、抄造時の乾燥工程で乾燥と同時に融着を行うことができ、操業工程が簡略化できるために好適である。これらの熱融着繊維の中でも、芯鞘型複合繊維が好ましく、PE/PET型複合繊維がより好ましい。
【0017】
(合成繊維)
合成繊維は、例えば、本実施形態の不織布ワイパーの強度を向上させる。合成繊維の含有量は、本実施形態の不織布ワイパー全量の3重量%以上50重量%以下の範囲、10重量%以上40重量%以下の範囲、又は20重量%以上30重量%以下の範囲である。合成樹脂が1重量%未満では、ゴワゴワ感は比較的少ないものの、耐摩耗性、高粘性物や油の拭き取り性、発塵性等が低下する傾向がある。一方、合成樹脂が50重量%を超えると、耐摩耗性、高粘性物や油の拭き取り性は向上するものの、水の拭き取り性が顕著に低下し、ゴワゴワ感がでる傾向がある。
【0018】
合成繊維とは融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維である。このような熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル等のポリアクリル系繊維、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系繊維等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維等が好ましく、PP、PE、PET等がより好ましい。合成繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
以上のようなセルロース系繊維、熱融着性繊維、及び合成繊維の各所定量を用いて不織布を抄造することで、以下の各物性を有する不織布ワイパーを得ることができる。
【0019】
<不織布ワイパーの物性>
次に、本実施形態に係る不織布ワイパーの物性について、目付、厚み、密度、ドライテーバー測定値、湿潤相対引張強度(GMT)、吸水速度、吸油速度、保水量(T.W.A.)、及び吸油量(T.O.A.)の順でさらに詳しく説明する。
【0020】
(目付)
本実施形態に係る不織布ワイパーの目付(坪量)は、25g/m2以上35g/m2以下の範囲、27g/m2以上33g/m2以下の範囲、又は28g/m2以上32g/m2以下の範囲である。目付が前述の範囲にあることで、強度が高くて破れ難く、柔らかでゴワゴワ感がないことから、拭き取りの際の密着性が良く、拭き取り性が良好である。目付が25g/m2未満では、耐摩耗性が低下し、高粘性物や水、油の拭き取り性が低下する傾向があり、目付が35g/m2を超えると、耐摩耗性や高粘性物、水、油の拭き取り性は向上するものの、ゴワゴワ感が非常に強く、発塵性が顕著に低下する傾向がある。不織布ワイパーの目付は、JIS P 8124に準拠して測定される。
【0021】
(厚み)
本実施形態に係る不織布ワイパーの厚みは、0.25mm/1ply以上の範囲、0.26mm/1ply以上0.40mm/1ply以下の範囲、又は0.28mm/1ply以上0.32mm/1ply以下の範囲である。厚みを前述の範囲に調整することで、例えば、高い強度とゴワゴワ感の低さとを両立しつつ、拭き取り性を向上させることができる。厚みが0.25mm/1ply未満では、厚みが低くなるため、水や油の抜き取り性が低下する傾向があり、更に粘性の高いものを拭き取りづらくなる傾向がある。厚みは、シックネスゲージ(尾崎製作所製、ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定される。
【0022】
(密度)
本実施形態に係る不織布ワイパーの密度は、0.080g/cm3以上0.130g/cm3以下の範囲、0.090g/cm3以上0.120g/cm3以下の範囲、又は0.100g/cm3以上0.110g/cm3以下の範囲である。密度が前述の範囲にあることで、不織布ワイパーの拭き取り性が向上し、特に水、油に対する拭き取り性が顕著に向上する。密度が0.080g/cm3未満では、耐摩耗性や、高粘性物、油等の拭き取り性、発塵性等が低下する傾向があり、密度が0.130g/cm3を超えると、水、油等の拭き取り性が低下する傾向がある。密度は目付と厚みから算出される。
【0023】
(ドライテーバー測定値)
本実施形態に係る不織布ワイパーのドライテーバー測定値が5回以上の範囲、5回以上15回以下の範囲、又は5回以上12回以下の範囲である。ドライテーバー測定値が前述の範囲にあることで、不織布ワイパーの耐摩耗性や、高粘性物、水、油等の拭き取り性が
向上する。ドライテーバー測定値が5回未満では、耐摩耗性や、高粘性物、水等の拭き取り性等が低下する傾向がある。また、ドライテーバー測定値が15回以上になると、ゴワゴワ感が強まり、ワイパーの使用感が低下する傾向がある。
【0024】
好ましい実施形態では、本実施形態の不織布ワイパーは、湿潤相対引張強度(GMT)が5.5N/25mm以上20.0N/25mm以下の範囲、6.0N/25mm以上15.0N/25mm以下の範囲、又は8.0N/25mm以上13.0N/25mm以下の範囲である。湿潤相対引張強度(GMT)を前述の範囲とすることで、本実施形態の不織布ワイパーは、優れた耐摩耗性や拭き取り性と、柔らかさと、低い発塵性と、をバランス良く併せ持つものとなる。湿潤相対引張強度(GMT)が5.5N/25mm未満では、不織布ワイパーの耐摩耗性、高粘性物や油の拭き取り性が低下する傾向にあり、湿潤相対引張強度(GMT)が20.0N/25mmを超えると、不織布ワイパーにゴワゴワ感が強く現れ、発塵性が顕著に低下する傾向がある。湿潤相対引張強度(GMT)は、JIS P8113に基づいて測定される。
【0025】
(吸水速度)
好ましい実施形態では、本実施形態の不織布ワイパーは、吸水速度が20秒以下の範囲、又は8秒以下の範囲である。吸水速度が前述の範囲にあることで、各種工業分野において、特に水や油の拭き取り性が向上し、清拭性の高い不織布ワイパーとなる。吸水速度が20秒を超えると、耐摩耗性や、水、油等の拭き取り性が低下する傾向がある。吸水速度はJIS L 1907に規定された吸水速度試験に基づいて測定される。
【0026】
(吸油速度)
好ましい実施形態では、本実施形態の不織布ワイパーは、吸油速度が260秒以下の範囲、又は200秒以下である。吸油速度が前述の範囲にあることで、各種工業分野において、特に水や油の拭き取り性が向上し、清拭性の高い不織布ワイパーとなる。吸油速度が260秒を超えると、水、油等の拭き取り性が低下する傾向がある。吸油速度は、JIS L 1907に規定された吸水速度試験において、水に代えて油を用いて測定する。
【0027】
(保水量(T.W.A.))
好ましい実施形態では、本実施形態の不織布ワイパーは、保水量(T.W.A.)が170g/m2以上の範囲、又は200g/m2以上の範囲である。保水量を前述の範囲とすることで、各種工業分野において、特に水や油の拭き取り性が向上し、清拭性の高い不織布ワイパーとなる。保水量が170g/m2未満であると、本実施形態の不織布ワイパーの耐摩耗性又は拭き取り性が低下する傾向がある。
【0028】
(吸油量(T.O.A.))
好ましい実施形態では、本実施形態の不織布ワイパーは、吸油量(T.O.A.)が170g/m2以上の範囲、又は200g/m2以上の範囲である。保油量を前述の範囲とすることで、各種工業分野において、特に水や油の拭き取り性が向上し、清拭性の高い不織布ワイパーとなる。保油量が170g/m2未満であると、本実施形態の不織布ワイパーの耐摩耗性又は拭き取り性が低下する傾向がある。
【0029】
<不織布ワイパーの製造方法>
本実施形態に係る不織布ワイパーは、従来公知のスパンレース不織布の製造方法に従って作製することができ、スパンレース不織布として得ることができる。
図1に、ウェブ作製工程と、水流交絡工程と、乾燥工程と、を含むスパンレース不織布の製造方法の一実施形態を示す。
【0030】
ウェブ作製工程では、セルロース系繊維、合成繊維、及び熱融着繊維の各所定量をカード機10に通すことで、繊維ウェブを得る。得られた繊維ウェブは、水流交絡工程に搬送される。
【0031】
水流交絡工程では、繊維ウェブに対して上方のほぼ垂直な方向に配置されたウォータージェットノズル11から高圧水流を噴射し、繊維ウェブ内で各繊維を交絡させる。本実施形態ではウォータージェットノズル11は4本であるが、本実施形態に限定されず、任意の本数とすることができる。ここで、ウォータージェットノズル11の穴直径φは、例えば、0.06mm以上0.15mm以下の範囲、又は0.10mm以上0.12mm以下の範囲である。また、隣り合う2つのウォータージェットノズル11の間隔は例えば0.4mm以上1.0mm以下の範囲である。また、水流交絡処理の水圧は、繊維ウェブの坪量等に応じて設定され、例えば、1MPa以上30MPa以下の範囲である。こうして水流交絡が施され、各繊維が絡み合った繊維ウェブが得られ、この繊維ウェブは乾燥工程に搬送される。
【0032】
乾燥工程では、前述の繊維同士が絡み合った繊維ウェブを乾燥機12内にて乾燥し、本実施形態の不織布ワイパーをスパンレース不織布として得る。所定量のセルロース系繊維、合成繊維、及び熱融着繊維を用いるとともに、ウォータージェットノズル11の穴直径φ、ウォータージェットノズル11の間隔、及び水流交絡処理の水圧をそれぞれ前述の範囲にすることで、本実施形態の所定の特性を有するスパンレース不織布を得ることができる。ここで、乾燥条件は特に限定されないが、例えば、80℃以上180℃以下の温度条件で1分以上20分以下の範囲で乾燥を実施すればよい。さらに80℃以上180℃以下の温度条件で熱プレスパート(熱カレンダー等)を実施するのが好ましい。
【0033】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0034】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をさらに具体的に説明する。
【0035】
(実施例1~7及び比較例1~8)
ビスコースレーヨン(セルロース系繊維)、ポリエチレンテレフタレート繊維(合成繊維)、及びPE/PET芯鞘繊維(熱融着繊維)を表1に示す割合(重量%)で用い、スパンレース不織布を作製し、実施例1~7及び比較例1~8の不織布ワイパーを作製した。得られた不織布ワイパーを下記の通り評価した。結果を表1に示す。
【0036】
〔測定方法〕
実施例1~7及び比較例1~8で得られた各不織布ワイパーについて、下記の試験を実施した。
(目付)JIS P 8124に準拠して測定した。
(厚み)シックネスゲージ(尾崎製作所製、ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料(不織布ワイパー1プライ)を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。測定は10回繰り返して平均値を求めた。
(密度)目付と厚みより算出した。
(表面強度)ドライテーバー試験を実施した。ドライテーバー試験は、テーバー形摩耗試験機((株)東洋精器製作所製、商品名:Rotary Abrasion Tester TS-2)を使用し、その上部の所定箇所に2個の摩耗輪:CS-0/S-32(Rubber)を対向するように取り付け、試料(不織布ワイパー)を2個の摩耗輪の間に挟み込み、2個の摩耗輪を所定の回数で回転させ、試料(不織布ワイパー)の2個の摩耗輪との接触面を目視観察し、毛羽立ちが生じるまでの回数を測定した。
(湿潤引張強度)JIS P8113に基づき湿潤時の縦横の引張強度を測定した。
(吸水速度)吸水速度はJIS L1907に規定された吸水速度試験に準拠し、0.1mlの水滴が試験片の表面に達したときから、試験片の鏡面反射が消えるまでの時間(秒)を測定して求めた。
(吸油速度)吸水速度の測定で使用した水に代えて油を使用する以外は、吸水速度と同様に測定した。油は、機械油(商品名:FBK-100、エネオス(株)製)を使用した。
(保水量、TWA)不織布を75mm×75mmの正方形に切断してサンプルを作製し、乾燥重量(W1)を測定する。次に、このサンプルを蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態(100%RH)の容器中で、サンプルの1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態で吊るし、30分放置して重量(W2)を測定する。そして、測定値(W2-W1)をサンプル1m
2当たりの保水量(g/m
2)に換算する。
(TOA、吸油量)TWAの測定で使用した蒸留水に替えて油を使用する以外は、TWAと同様の方法で吸油量を測定した。油は、日石機械油(FBK-100)を使用した。
(耐摩耗性)上述のドライテーバー試験を実施し、以下の基準で評価した。
図2に、本実施形態の不織布ワイパーにドライテーバー試験を施した後の、不織布ワイパーの表面状態を示す。この写真では、中央部分に毛羽立ちは生じていない。
毛羽立ちまでの回数が2未満のものを「1」
毛羽立ちまでの回数が2以上、5未満のものを「2」
毛羽立ちまでの回数が5以上、8未満のものを「3」
毛羽立ちまでの回数が8以上、11未満のものを「4」
毛羽立ちまでの回数が11以上のものを「5」
(拭き取り性)モニター10名により、平面上に拭き取り対称物である高粘度物(糊、接着剤等)、水又は油を散布し、これを不織布ワイパーで拭き取り、拭き取り易さを5段階で評価した。「5」は一回又は2回程度の拭き取りで拭き取り対象物を完全に拭き取ることができ、不織布ワイパーの破れもなく、「4」は複数回の拭き取りで拭き取り対象物をほぼ完全に拭き取ることができ、不織布ワイパーに少し破れが生じ、「3」は複数回以上拭き取っても、少量の拭き取り対象物が残存し、不織布ワイパーの破れが比較的目立ち、「2」は複数回以上拭き取っても、拭き取り対象物を十分に拭き取ることができず、不織布ワイパーには破れが目立ち、「1」は繰り返し何度も拭き取りをしても、不織布ワイパーの破れが多くなり、拭き取り対象物を十分に拭き取ることができない。
(ゴワゴワ感)モニター10名により、不織布ワイパーの触感を次の基準に従って評価した。「4」は柔らかで滑らかな感触であり、「3」は比較的柔らかであるものの、ゴワゴワ感を多少感じる感触であり、「2」は硬さとゴワゴワ感のある感触であり、「1」は硬さとゴワゴワ感が強い感触である。
(発塵性)
不織布ワイパーの自己発塵性を評価した。JIS B 9923のタンブリング法で、250mm×250mmのサイズの不織布ワイパーを自己発塵させ、発塵させた空気10L中の粒子径0.3μm~5μmの発塵の個数をパーティクルカウンター(商品名:KC-03B、リオン(株)製)で計測した。前述のサイズの不織布ワイパー1枚当たりの発塵個数を求め、下記の基準で評価した。
発塵個数が1100以上のものを「1」
発塵個数が800以上、1100未満のものを「2」
発塵個数が500以上、800未満のものを「3」
発塵個数が100以上、500未満のものを「4」
発塵個数が100以下のものを「5」
【0037】
【0038】
実施例1~7の不織布ワイパーは、耐摩耗性、高粘性物、水、油の拭き取り性、ゴワゴワ感(ゴワゴワ感がなく、柔らかで滑らかな感触)、発塵性(発塵しにくい)という各特性をバランス良くかつ高水準で併せ持ち、各種工業分野において清拭用不織布ワイパーとして好適に使用できる。
【0039】
(比較例1)目付が低すぎるため、吸液性、拭き取り性、表面強度が低い。
(比較例2)目付が高すぎるため、ごわごわ感があり、発塵しやすい。
(比較例3)厚みが低く、密度が高い為、拭き取り性が劣る。
(比較例4)厚みが高すぎるため、表面強度、発塵性が低い。
(比較例5)ドライテーバー値が低い為、表面強度、発塵性が低い。
(比較例6)合成樹脂比率が高すぎるため、水の拭き取り性が低く、ゴワゴワ感がある。
(比較例7)熱融着繊維比率が低い為、表面強度、発塵性が低い。
(比較例8)熱融着繊維比率が高い為、水の拭き取り性が低く、ゴワゴワ感がある。