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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150173
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/26 20120101AFI20231005BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20231005BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20231005BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B24B37/26
B24B37/12 D
B24B37/30
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059135
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】黒部 久徳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 規之
(72)【発明者】
【氏名】上野 敬
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 綾真
(72)【発明者】
【氏名】岸本 正俊
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158DA12
3C158EB05
3C158EB19
3C158ED00
5F057AA48
5F057BA12
5F057DA02
5F057EB08
5F057EB10
(57)【要約】
【課題】ウェハの研磨加工において、被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現する。
【解決手段】本発明の研磨パッド10は、研磨面10aに複数の凹部が凹設されている。凹部のうち、研磨面における凹部の開口縁の長径aに対する開口縁の短径bの比を長短径比Rとしたとき、R=b/aの値が0.5~1の範囲内にあるものを穴と規定し、かつ、研磨面における穴の開口面積が0.785mm2 ~78.5mm2 の範囲内にあるものを特定穴と規定する。このとき、特定穴が研磨面1cm2 当たりに0.5~5個凹設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心と直交する方向に延びる固定面を有し、前記軸心周りに回転される定盤と、前記定盤に対して平板状のウェハを相対回転可能に保持するキャリヤとを備えたウェハ研磨装置に用いられ、
前記固定面に固定され、前記ウェハを研磨液の存在下、所定の面圧の研磨面で研磨する研磨パッドにおいて、
母材樹脂からなり、複数の気孔が形成された母材と、前記母材又は前記気孔内に保持された研磨粒子とを有し、
前記研磨面には複数の凹部が凹設され、
前記凹部のうち、前記研磨面における前記凹部の開口縁の長径aに対する前記開口縁の短径bの比を長短径比Rとしたとき、R=b/aの値が0.5~1の範囲内にあるものを穴と規定し、かつ、
前記研磨面における前記穴の開口面積が0.785mm2 ~78.5mm2 の範囲内にあるものを特定穴と規定したとき、
前記特定穴が前記研磨面1cm2 当たりに0.5~5個凹設されていることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記特定穴が前記研磨面1cm2 当たりに0.7~3.6個凹設されている請求項1記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
定盤とキャリヤとを備えたウェハ研磨装置が知られている。定盤は、軸心と直交する方向に延びる固定面を有し、軸心周りに回転される。キャリヤは、定盤に対して平板状のウェハを相対回転可能に保持する。
【0003】
このウェハ研磨装置によりSi、SiC、GaN等の平板状のウェハを研磨する場合、定盤の固定面に研磨パッドが固定され、キャリヤにウェハが定盤に対して相対回転可能となるように保持される。そして、研磨液の存在下で研磨パッドとウェハとを所定の面圧の下で当接しながら、定盤とウェハとを相対回転させる。
【0004】
研磨パッドが一般的な不織布や硬質ウレタン等からなる場合、研磨粒子を含む研磨液が用いられる。また、研磨パッドが特許文献1~3に開示されているように、母材樹脂からなり、複数の気孔が形成された母材と、母材又は気孔内に保持された研磨粒子とを有しているものである場合には、研磨粒子を含まない研磨液を採用できる。こうしてウェハの研磨を行うことができる。研磨液がアルカリ等の薬剤を含む場合には、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)工程でウェハが研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4266579号公報
【特許文献2】特許第5511266号公報
【特許文献3】特許第6636634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ウェハの研磨加工において、近年は被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現することが求められている。特に、被研磨物の硬度が高い場合にその要望が大きい。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ウェハの研磨加工において、被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の研磨パッドは、軸心と直交する方向に延びる固定面を有し、前記軸心周りに回転される定盤と、前記定盤に対して平板状のウェハを相対回転可能に保持するキャリヤとを備えたウェハ研磨装置に用いられ、
前記固定面に固定され、前記ウェハを研磨液の存在下、所定の面圧の研磨面で研磨する研磨パッドにおいて、
母材樹脂からなり、複数の気孔が形成された母材と、前記母材又は前記気孔内に保持された研磨粒子とを有し、
前記研磨面には複数の凹部が凹設され、
前記凹部のうち、前記研磨面における前記凹部の開口縁の長径aに対する前記開口縁の短径bの比を長短径比Rとしたとき、R=b/aの値が0.5~1の範囲内にあるものを穴と規定し、かつ、
前記研磨面における前記穴の開口面積が0.785mm2 ~78.5mm2 の範囲内にあるものを特定穴と規定したとき、
前記特定穴が前記研磨面1cm2 当たりに0.5~5個凹設されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の研磨パッドにおける研磨面には、上記のように規定される特定の大きさの特定穴が形成されている。しかも、その特定穴は、研磨面において単位面積当たり特定の数だけ形成されている。本発明者らの試験によれば、このような研磨パッドを用いてウェハを研磨加工することで、被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現できる。
【0010】
したがって、上記ウェハ研磨装置に本発明の研磨パッドを用いたウェハの研磨加工において、被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現することができる。
【0011】
特定穴は研磨面1cm2 当たりに0.7~3.6個凹設されていることが好ましい。
【0012】
この場合、本発明者らの試験によれば、被研磨面の高面品位をより良好に維持しつつさらなる低消費電力化も実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の研磨パッドによれば、ウェハの研磨加工において、被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の研磨パッドの模式拡大断面図である。
図2図2は、研磨面にある穴及びその大きさを模式的に説明する図である。
図3図3は、実施例1の研磨パッドに係り、研磨面の一部を撮影した写真である。
図4図4は、実施例2の研磨パッドに係り、研磨面の一部を撮影した写真である。
図5図5は、ウェハ研磨装置の模式断面図である。
図6図6は、実施例1~3及び比較例1、2の研磨パッドを用いてウェハ研磨を行い、被研磨面の面粗度と消費電力との評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す本発明の研磨パッド10は、ウェハを研磨するためのウェハ研磨装置に用いられる。ウェハ研磨装置としては、定盤と、キャリヤとを備えたものとすることができる。定盤は、軸心と直交する方向に延びる固定面を有し、軸心周りに回転される。定盤の固定面に研磨パッド10が固定される。キャリヤは、定盤に対して被研磨物としての平板状のウェハを相対回転可能に保持する。
【0016】
研磨パッド10により研磨加工される被研磨物として、半導体用のウェハを採用することができる。特に、このウェハ研磨装置は、半導体用のウェハを粗加工したり、あるいはその後に仕上げ加工したりするラップ工程に好適に用いることができる。ラップ工程としては、ウェハの片面のみをラップする片面ラップでも、一対の研磨パッドによりウェハの両面を同時にラップする両面ラップでもどちらでもよい。
【0017】
このウェハ研磨装置を用いたウェハの研磨加工では、研磨液の存在下で所定の面圧の下、研磨パッド10の研磨面10aによりウェハが研磨される。
【0018】
この研磨パッド10は、母材樹脂からなり、複数の気孔が形成された母材と、母材又は気孔内に保持された研磨粒子とを備える。
【0019】
研磨パッド10に用いることができる母材樹脂の種類は、特に限定されない。例えば、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニル・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル等を母材樹脂として採用することが可能である。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。
【0020】
研磨パッド10に用いることができる研磨粒子の種類は、特に限定されない。例えば、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ダイヤモンド、マンガン酸化物、炭酸バリウム、酸化クロム、酸化鉄等を採用することが可能である。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。これらの研磨粒子は、研磨パッド10に保持させるとともに、研磨液に含有させてもよい。
【0021】
図1に示すように、この研磨パッド10の研磨面10aには、複数の穴12が凹設されている。
【0022】
本明細書において、「穴」とは、研磨面に形成された穴状や溝状の凹部のうち、研磨面における凹部の開口縁の長径aに対する開口縁の短径bの比を長短径比Rとしたとき、R=b/aの値が0.5~1の範囲内にある凹部のことをいう。
【0023】
図2において、研磨面に形成された凹部14の研磨面における開口縁14aの形状を示すように、凹部14の開口縁14aの長径aとは、研磨面における凹部14を観察した時、その凹部14の開口縁14aにおいて内径が最も長い箇所の長さを意味する。また、凹部14の開口縁14aの短径bとは、研磨面における凹部14を観察した時、その凹部14の開口縁14aにおいて長径aに対して直交する方向のうち最も長い箇所の長さを意味する。
【0024】
研磨面に形成された凹部のうち、長短径比Rの値が0.5未満となる溝状のものは穴12ではない。このような溝状の凹部は、研磨抵抗の低下に寄与しづらいし、凹部の開口縁におけるエッジ部分により被研磨面が粗くなるおそれがある。
【0025】
ここに、研磨面に形成された穴12のうち、特定の大きさの穴12を特定穴IDと規定する。「特定穴ID」とは、研磨面に形成された穴12のうち、研磨面における穴の開口面積が0.785mm2 ~78.5mm2 の範囲内にあるものをいう。なお、0.785mm2 の開口面積は、半径が0.5mmの円形穴の開口面積に相当する。
【0026】
この研磨パッド10の研磨面10aには、このような特定穴IDが特定の数で形成されている。すなわち、研磨面1cm2 当たりに特定穴IDが0.5~5個形成されている。
【0027】
これにより、ウェハの研磨加工において、被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現することができる。この理由については、以下のように考えることができる。
【0028】
すなわち、研磨面10aに特定穴IDが存在することで、研磨加工に実質的に寄与する研磨面10aの面積が小さくなる。これにより、研磨加工において、研磨抵抗が低下し、これに伴い消費電力が低下すると考えられる。
【0029】
研磨面10aに存在する特定穴IDが多すぎると、穴12の開口縁12aにより構成されるエッジ部分が多くなる。このエッジ部分は被研磨面を鋭利に研磨しやすい。このため、エッジ部分が多くなれば被研磨面を鋭利に研磨する機会が多くなり、被研磨面が粗くなる可能性がある。
【0030】
また、研磨面10aに存在する穴12のサイズが大きすぎても、上記エッジ部分が多くなるため、被研磨面が粗くなる可能性がある。このため、本発明では、研磨面における穴の開口面積が78.5mm2 以下のものを特定穴を規定した。
【0031】
一方、研磨面10aに存在する穴12が少なすぎたり、小さすぎたりすれば、研磨抵抗の低下が不十分となり、消費電力の低下に寄与し得ない。
【0032】
特定穴IDが研磨面1cm2 当たりに0.7~3.6個凹設されていれば、被研磨面の高面品位をより良好に維持しつつさらなる低消費電力化も実現できる。
【0033】
被研磨面の高面品位を維持しつつ、研磨加工における消費電力を低減させる観点より、研磨面1cm2 当たり特定穴IDの数の上限値の好ましい値は、4個、3.6個、3個を例示することができる。同様の観点より、研磨面1cm2 当たり特定穴IDの数の下限値の好ましい値は、1個、1.3個を例示することができる。
【0034】
研磨面10aには、特定穴ID以外の穴12が存在していてもよい。ただし、上述のとおり、大きすぎる穴12により被研磨面が粗くなる可能性があるため、例えば、長径aが5mmを超えるような穴12は研磨面10aに存在しない方が好ましい。
【0035】
特定穴IDの断面形状は、特に限定されないが、例えば略半球状、又は半球状に近い略長方形状とすることができる。また、研磨パッドの厚さ方向における特定穴IDの長さは、0.5mm~3mm程度とすることができる。
【0036】
本発明の研磨パッドは、例えば以下の第1~3工程を備えた製造方法によって製造可能である。第1工程では、母材樹脂と、研磨粒子と、溶媒とを含むペーストを用意する。第2工程では、成形板上において、ペーストをシート状の成形体に成形する。第3工程では、成形体を置換液中に浸漬し、成形体中の溶媒を置換液で置換する。これにより、微細な気孔を形成する。所定時間経過後に置換液から取り出した成形体を乾燥させ、所定の厚みまで研削して研磨パッドを完成する。
【0037】
本発明の研磨パッドでは、第2工程において、気孔形成材を準備する。この気孔形成材としては、置換液に溶解し得る材料よりなり、特定穴IDのサイズに対応する大きさのものとすることができる。気孔形成材を予め成形板上に特定の数だけ分散させて振り掛けておき、その上に成形体を成形する。こうすることで、第3工程において、気孔形成材が置換液に溶解するので、気孔形成材があった部分に特定穴IDを形成することができる。
【0038】
第1工程で用いる溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等を採用することができる。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。溶剤は、母材樹脂の種類に応じて種々選択される。
【0039】
第1工程で準備するペーストは、母材樹脂と溶媒と研磨粒子とを含む他、炭酸ナトリウム、ピペラジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、炭酸カリウム、酸化マグネシウム等のアルカリ微粒子を含んでいてもよい。また、ペーストは、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤、炭化水素系撥水剤及び金属化合物系撥水剤等の撥水剤を含んでもよい。さらに、ペーストは、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機顔料、アゾ顔料、多環顔料等の有機顔料等の顔料を含んでもよい。これらは1種でもよく、2種以上が混合されていてもよい。
【0040】
第3工程で溶媒と置換される置換液としては、油性の溶媒を採用した場合には、水道水等の水性の液体を採用することができる。また、水道水等の水性の液体を採用した場合、気孔形成材として、例えば角砂糖を採用することができる。
【0041】
本発明の研磨パッドを用いた研磨加工において、研磨液を用いる場合、研磨液は純水であってもよく、油性であってもよく、酸性又はアルカリ性の薬品を含むものであってもよい。
【0042】
(実施例・比較例)
以下、本発明を具体化した実施例1~3と、比較例1~2とを説明する。
【0043】
まず、第1工程として、以下の母材樹脂と、研磨粒子と、溶剤とを準備した。
(母材樹脂)
PES
(研磨粒子)
シリカ(SiO2 )(平均粒径:0.3μm)
(溶剤)
NMP
【0044】
これらを表1に示す配合(体積%)で混合してペーストを得た。
【0045】
【表1】
【0046】
第2工程として、成形板上に角砂糖を砕いた気孔形成材を振り掛けた。この際、実施例1~3及び比較例1~2において、成形板上に振り掛ける気孔形成材の量を種々変更した。そして、上記第1工程で得られたペーストを用い、この成形板上にTダイ等の成形装置を用いてシート状に成形し、実施例1~3及び比較例1~2の成形体を得た、この成形方法についてはある程度厚みを揃えることができればこれに限られない。
【0047】
第3工程として、各成形体を置換液としての水道水に浸漬させ、所定時間経過後に水道水からそれぞれを取り出し、乾燥させ、各固化体を得た。各固化体の表面を所定の厚みまで研削し、直径30cmの実施例1~3及び比較例1~2の研磨パッドを得た。各研磨パッドには溝パターンを設けていない。
【0048】
実施例1~3及び比較例1~2の各研磨パッドは、母材樹脂からなり、複数の気孔が形成された母材と、母材又は気孔内に保持された研磨粒子とを有している。また、実施例1~3の各研磨パッド10の研磨面10aには、図1に示すように、特定穴IDとしての穴12が形成されている。
【0049】
実施例1の研磨パッド10の研磨面10aを撮影した写真を図3に示し、実施例2の研磨パッド10の研磨面10aを撮影した写真を図4に示す。
【0050】
実施例1~3及び比較例1~2の各研磨パッドにおいて、研磨面に存在する特定穴IDの数をそれぞれ調べた。
【0051】
これは、研磨面を撮影した写真について、画像解析ソフト(「image j」)を用いた画像解析から二値化処理により得られた黒色の穴について開口面積を求めて特定穴IDを規定した。そして、研磨面のうち10cm×10cmの領域における特定穴IDの数を求めることにより、研磨面1cm2 当たりの数を求めた。その結果を表2に示す。
【0052】
なお、実施例1~3及び比較例1~2の各研磨パッドにおける研磨面には、研磨面における穴の開口面積が78.5mm2 を超えるよう大きな穴、すなわち特定穴IDよりも大きな穴は存在しなかった。
【0053】
【表2】
【0054】
(研磨加工試験)
図5に示すように、ウェハ1を被研磨物とするウェハ研磨装置(Engis EJW-380)を用意し、実施例1~3及び比較例1~2の各研磨パッドによってウェハ1の研磨を行った。
【0055】
ウェハ研磨装置は、複数のキャリヤ5と、定盤7と、駆動装置9と、研磨液供給装置11とを備えている。図5には単一のキャリヤ5だけを図示しているが、ウェハ研磨装置は複数のキャリヤ5を有している。各キャリヤ5は水平な円板状をなしている。各キャリヤ5の下面には第2固定面5aが凹設されており、第2固定面5aにはウェハ1が固定されるようになっている。各キャリヤ5の上面にはキャリヤ回転軸5bが垂直に突設されている。各ウェハ1は、直径4inchの4H-SiC単結晶である。各ウェハ1のSi面である被研磨面1aは下方を向いている。
【0056】
定盤7は、全てのキャリヤ5を内包する水平な円板状をなしている。定盤7の下面には定盤回転軸7aが垂直に突設されている。定盤7の上面は固定面7bとされている。固定面7bには、各ウェハ1と対面するように円板状の研磨パッド10が接着剤によって固定されている。研磨パッド10の中心線は第1軸心O1と一致されている。
【0057】
駆動装置9は、主駆動装置9aと、副駆動装置9bと、加圧装置9cとを有している。主駆動装置9aは定盤回転軸7aを第1軸心O1周りで所定速度で回転駆動する。副駆動装置9bは各キャリヤ回転軸5bを第2軸心O2周りで所定速度で回転駆動する。加圧装置9cは各キャリヤ回転軸5b及び副駆動装置9bを定盤7に向けて所定荷重で加圧する。
【0058】
研磨液供給装置11は定盤7の上方に設けられている。研磨液供給装置11は各ウェハ1と研磨パッド10との間に研磨液11aを介在させる。過マンガン酸カリウム水溶液からなり、研磨粒子を含まない研磨液11aを用いた。
【0059】
このウェハ研磨装置において、以下の条件で各ウェハ1を研磨した。
研磨液11aの流量:10mL/分
荷重:30kPa
定盤7の回転数:60rpm
キャリヤ5の回転数:60rpm
加工時間:60分
【0060】
研磨後のウェハ1の面粗度Sa(nm)と、消費電力(W)とを評価した。面粗度Saの測定にはNikon社製BW-D501を用いた。結果を図6及び表2に示す。図6において、消費電力の評価結果は棒グラフで示し、面粗度の評価結果は折れ線グラフで示す。
【0061】
図6及び表2から明らかなように、特定穴IDを特定の数だけ研磨面10aに有する実施例1~3の研磨パッド10は、特定穴IDを有さない比較例1の研磨パッドとほぼ同等の高面品位を維持しつつ、消費電力を低減させることができた。一方、特定穴IDの数が多すぎた比較例2の研磨パッドでは、消費電力を低減させることはできたが、被研磨面の面品位も低下してしまった。
【0062】
したがって、研磨面10aに特定数の特定穴IDを有する実施例1~3の研磨パッドによれば、ウェハの研磨加工において、被研磨面の高面品位を維持しつつ低消費電力化を実現できることが確認できた。
【0063】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は半導体製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…ウェハ
5…キャリヤ
7…定盤
7b…固定全ての面
10…研磨パッド
10a…研磨面
12…穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6