(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150179
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 71/00 20060101AFI20231005BHJP
C08G 65/336 20060101ALI20231005BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20231005BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20231005BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L71/00 Z
C08G65/336
C08K5/09
C08K5/17
C09K3/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059143
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】張 冬
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 捷人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】神谷 翔大
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB01
4H017AB15
4J002CH051
4J002EF016
4J002EF056
4J002EF068
4J002EG016
4J002EG058
4J002EG086
4J002EN027
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4J002EN107
4J002EN117
4J002EU077
4J002EU237
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD148
4J002GJ00
4J005BD08
(57)【要約】
【課題】非有機錫系硬化触媒を含んでいても、良好な速硬化性を示す、反応性ケイ素基含有有機重合体を含有する硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】反応性ケイ素基を有する有機重合体を含む硬化性組成物において、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、並びにアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、プロリン、プロリン誘導体、及びスルホン酸ピリジニウム塩から選択される1種以上である化合物(b3)を含む硬化触媒を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機重合体(A)、及び硬化触媒(B)を含む、硬化性組成物であって、
前記有機重合体(A)が、下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表わされる反応性ケイ素基を有し、
前記硬化触媒(B)が、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)を含み、
前記化合物(b3)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、プロリン、プロリン誘導体、及びスルホン酸ピリジニウム塩から選択される1種以上であり、
前記有機カルボン酸又はその金属塩(b1)は、前記プロリン、及び前記プロリン誘導体に該当しない化合物であり、
前記有機アミン化合物(b2)は、前記プロリン、前記プロリン誘導体、アミジン化合物、及びグアニジン化合物に該当しない化合物であり、
前記有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、前記有機アミン化合物(b2)、及び前記化合物(b3)から選択される2種以上が、互いに反応していてもよい、硬化性組成物。
【請求項2】
前記有機重合体(A)の主鎖構造が、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記有機重合体(A)の主鎖構造が、前記ポリオキシアルキレン系重合体である、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量と、前記有機アミン化合物(b2)の質量との比率が、(前記有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量)/(前記有機アミン化合物(b2)の質量)として、15/1~1/1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量、及び前記有機アミン化合物(b2)の質量の合計と、前記化合物(b3)の質量との比率が、{(前記有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量)+(前記有機アミン化合物(b2)の質量)}/(前記化合物(b3)の質量)として、50/1~1/1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記有機重合体(A)100質量部に対して、前記化合物(b3)0.1~5質量部を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物、又は前記硬化性組成物の硬化物を用いる防水材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋を形成し得るケイ素基(以下、「反応性ケイ素基」ともいう。)を有する有機重合体、及びその有機重合体を含む硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を有する有機重合体は、室温においても湿分等によるシリル基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し得る。反応性ケイ素基を有する有機重合体がかかる架橋反応によってゴム状硬化物を与える性質を有することが知られている。
【0003】
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体として、主鎖構造がポリオキシアルキレンやポリアクリル酸エステル、ポリイソブチレンである有機重合体は、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料、防水材等の用途に広く使用されている(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3(MA))、(特許文献4(XMAP))。
【0004】
反応性ケイ素基を有する有機重合体をシーリング材、接着剤、塗料、防水材等の硬化性組成物として使用する場合、硬化性や接着性、作業性、硬化物の機械特性、防水性等種々の特性が硬化性組成物に要求される。
【0005】
反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物は、通常、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)に代表される、炭素-錫結合を有する有機錫化合物等のシラノール縮合触媒を用いて硬化させる。シラノール縮合触媒は硬化触媒とも称される。近年、有機錫系化合物はその毒性が指摘されており、環境に対する安全の観点からその使用には注意が必要である。
【0006】
このため、有機錫化合物以外の硬化触媒として、カルボン酸錫塩やその他のカルボン酸金属塩、カルボン酸とアミン化合物を併用した有機塩、チタン化合物等の金属錯体等の使用が提案されている(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52-73998号公報
【特許文献2】特開昭63-6041号公報
【特許文献3】特開昭55-9669号公報
【特許文献4】特開2003-206410号公報
【特許文献5】特開平5-117519号公報
【特許文献6】国際公開第2005/108499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術には、硬化性組成物の速硬化性の面で改善の余地があった。
【0009】
したがって、本発明は、非有機錫系硬化触媒を含んでいても、良好な速硬化性を示す、反応性ケイ素基含有有機重合体を含有する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の問題を解決するために鋭意検討した結果、反応性ケイ素基を有する有機重合体と、特定の硬化触媒を用いることにより、速硬化性を示す硬化性組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
有機重合体(A)、及び硬化触媒(B)を含む、硬化性組成物であって、
有機重合体(A)が、下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表わされる反応性ケイ素基を有し、
硬化触媒(B)が、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)を含み、
化合物(b3)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、プロリン、プロリン誘導体、及びスルホン酸ピリジニウム塩から選択される1種以上であり、
有機カルボン酸又はその金属塩(b1)は、プロリン、及びプロリン誘導体に該当しない化合物であり、
有機アミン化合物(b2)は、プロリン、プロリン誘導体、アミジン化合物、及びグアニジン化合物に該当しない化合物であり、
有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)から選択される2種以上が、互いに反応していてもよい、硬化性組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非有機錫系硬化触媒を含んでいても、良好な速硬化性を示す、反応性ケイ素基含有有機重合体を含有する硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、有機重合体(A)、及び硬化触媒(B)を含む。
有機重合体(A)は、下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表わされる反応性ケイ素基を有する。
硬化触媒(B)は、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)を含む。
【0015】
化合物(b3)は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、プロリン、プロリン誘導体、及びスルホン酸ピリジニウム塩から選択される1種以上である。
有機カルボン酸又はその金属塩(b1)は、プロリン、及びプロリン誘導体に該当しない化合物である。
有機アミン化合物(b2)は、プロリン、プロリン誘導体、アミジン化合物、及びグアニジン化合物に該当しない化合物である。
硬化性組成物中において、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)から選択される2種以上が、互いに反応していてもよい。
上記の硬化組成物は、優れた速硬化性を示す。
【0016】
以下、硬化性組成物が含み得る、必須、又は任意の成分について説明する。
【0017】
<有機重合体(A)>
有機重合体は、後述する所定の構造の反応性ケイ素基を有する。有機重合体(A)は、重合体骨格と、該重合体骨格に結合した高分子鎖末端を有する。本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、重合体骨格を「主鎖構造」ともいう。重合体骨格は、モノマーに由来する複数の構成単位が連続して結合した構造のことである。モノマーは1種類であっても複数種類であってもよい。
【0018】
高分子鎖末端とは、有機重合体(A)の末端に位置する部位である。有機重合体(A)の高分子鎖末端の数は、主鎖構造が直鎖状の場合、2であり、重合体骨格が分岐鎖状の場合、3以上である。有機重合体(A)が、直鎖状の主鎖構造を有する重合体と、分岐鎖状の主鎖構造を有する重合体との混合物である場合、高分子鎖末端の数は、平均値として2と3との間の数値である。
【0019】
反応性ケイ素基は、重合体骨格中及び高分子鎖末端中に存在しうる。また、高分子鎖末端中に2個以上の反応性ケイ素基が存在し得る。接着剤、シーリング材、弾性コーティング剤や粘着剤等に硬化性組成物を使用する場合には、有機重合体(A)において、反応性ケイ素基は、高分子鎖末端中に存在することが好ましい。
【0020】
有機重合体(A)は、下記式(1)で表される反応性ケイ素基を有する有機重合体であれば特に限定されない。
【0021】
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素原子数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表されるトリオルガノシロキシ基である。3個のR0は炭素原子数1~20の炭化水素基である。3個のR0は、同じでもよく、異なっていてもよい。Xは、水酸基、又は加水分解性基である。aは、1、2、又は3である。R1、又はXが複数存在するとき、複数のR1、又は複数のXは同じでもよく、異なっていてもよい。)。
【0022】
式(1)中のR1の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、及びn-ドデシル基等のアルキル基;ビニル基、イソプロペニル基、及びアリル基等の不飽和炭化水素基;メトキシメチル等のアルコキシメチル基;クロロメチル基等のハロゲン化メチル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トルイル基、及び1-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの基の中では、アルキル基、及びアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、及びフェニル基がより好ましく、メチル基、及びエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。式(1)中にR1が複数存在する場合、複数のR1は、同一の基であってよく、2種類以上の異なる基の組み合わせであってもよい。
【0023】
式(1)中のXは、水酸基、又は加水分解性基である。加水分解性基としては、特に限定されず、公知の加水分解性基であってよい。加水分解性基の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの中では、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、及びアルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、及びエトキシ基等のアルコキシ基がより好ましい。
【0024】
式(1)で表される反応性ケイ素基としては、特に限定されない。式(1)で表される反応性ケイ素基の具体例としては、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシフェニルシリル基、メトキシメチルジメトキシシリル基、メトキシメチルジエトキシシリル基、トリイソプロペニロキシシリル基、及びトリアセトキシシリル基等が挙げられる。これらの中では、ジメトキシメチルシリル基、及びトリメトキシシリル基が、有機重合体(A)の合成が容易であることから好ましい。トリメトキシシリル基、及びメトキシメチルジメトキシシリル基は、硬化性に優れる点から好ましい。
【0025】
(有機重合体(A)の主鎖構造について)
有機重合体(A)の主鎖構造は、特に限定されず、公知の種々の主鎖構造であってよい。主鎖構造の具体例として、ポリオキシエチレン重合体、ポリオキシプロピレン重合体、ポリオキシブチレン重合体、ポリオキシテトラメチレン重合体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン-プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン系共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレン-アクリロニトリル系共重合体、イソプレン-スチレン系共重合体、イソプレン-スチレン-アクリロニトリル系共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル系共重合体、ブタジエン-スチレン系共重合体、ブタジエン-スチレン-アクリロニトリル系共重合体、ポリブタジエン、及びこれらのポリオレフィン系重合体が水素添加された水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの重縮合体、及びラクトン類の開環重合体等のポリエステル系重合体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体のラジカル重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系単量体、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びスチレン等から選択される2種以上の単量体のラジカル重合により得られるビニル系共重合;前述の有機重合体に対して、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びスチレン等から選択される1種以上の単量体をグラフト重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン11、ナイロン12、これらのナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ポリ(ビスフェノールAカーボネート)等のポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルの双方を意味する。
【0026】
透湿性が高いことに起因して1液型組成物としての深部硬化性が優れ、さらに接着性にも優れることから、主鎖構造としては、ポリオキシアルキレン系重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体が特に好ましい。主鎖構造としては、ポリオキシアルキレン系重合体がより好ましく、ポリオキシプロピレンがさらに好ましい。
【0027】
重合体を構成するモノマーの組成を種々変化させることで、接着性を向上させたり、硬化物の耐熱性、耐候性、及び吸水性等を低くできる等の効果を得られる点からは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体も主鎖構造として有用である。
有機重合体(A)の主鎖構造は上記のうちの1つであっても複数の組合せでもよい。例えば、主鎖構造がポリオキシプロピレン系重合体である有機重合体(A)と、主鎖構造が(メタ)アクリル酸エステル系重合体である有機重合体(A)とは、互いに均一に相溶し、得られる硬化物に弾性、機械強度、接着強度等をバランスよく与える。この点で、主鎖構造がポリオキシプロピレン系重合体である有機重合体(A)と、主鎖構造が(メタ)アクリル酸エステル系重合体である有機重合体(A)とを組み合わせて用いることも好ましい。
【0028】
ポリオキシアルキレン系重合体は、-R3-O-で表される繰り返し単位を有する重合体である。R3は、炭素原子数1~14の直鎖状、又は分岐鎖状のアルキレン基である。R3としては、炭素原子数2~4の直鎖状、又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましい。-R3-O-で表される繰り返し単位の具体例としては、-CH2O-、-CH2CH2O-、-CH2CH(CH3)O-、-CH2CH(C2H5)O-、-CH2C(CH3)(CH3)O-、及び-CH2CH2CH2CH2O-等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖構造は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、硬化性組成物がシーラント、接着剤等に使用される場合には、オキシプロピレンの繰り返し単位を重合体主鎖構造の50重量%以上、好ましくは80重量%以上有するポリオキシプロピレン系重合体が、ポリオキシアルキレン系重合体として好ましい。かかるポリオキシアルキレン系重合体が、非晶質であるとともに比較的低粘度であるからである。
【0029】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖構造は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0030】
ポリオキシアルキレン系重合体としては、開始剤の存在下、重合触媒を用いて、環状エーテル化合物の開環重合反応により得られる重合体が好ましい。
【0031】
環状エーテル化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの環状エーテル化合物は1種のみ使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
これらの環状エーテル化合物の中では、非晶質で比較的低粘度なポリエーテル重合体を得られることから、プロピレンオキシドが特に好ましい。
【0032】
開始剤の具体例としては、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びソルビトール等のアルコール類;ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール等のポリオキシアルキレン系重合体等が挙られる。
【0033】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成方法は特に限定されない。ポリオキシアルキレン系重合体の合成方法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61-215623号公報に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46-27250号公報、特公昭59-15336号公報、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、及び米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10-273512号公報に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、及び特開平11-060722号公報に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等が挙げられる。製造コストが低くいことや、分子量分布の狭い重合体が得られること等の理由から、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法がより好ましい。
【0034】
有機重合体(A)の主鎖構造は、所望する効果が大きく損なわれない範囲で、ウレタン結合、及びウレア結合等のエーテル結合以外の他の結合を含んだポリオキシアルキレン系重合体を用いてもよい。このような主鎖構造を有する重合体の具体例としては、ポリウレタンプレポリマー、及びポリウレアプレポリマーを挙げることができる。
【0035】
ポリウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる方法等の公知の方法により得ることができる。ポリウレアプレポリマーは、ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる方法等の公知の方法により得ることができる。
ポリオール化合物、及びポリアミン化合物を、ポリイソシアネート化合物と反応させて得られる、ウレタン結合とウレア結合とを組み合わせて有するプレポリマーが主鎖構造であってもよい。
【0036】
ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエーテルポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0037】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
ポリウレタンプレポリマーの末端は、水酸基、及びイソシアネート基のいずれであってもよい。ポリウレアプレポリマーの末端は、アミノ基、及びイソシアネート基のいずれであってもよい。
【0039】
有機重合体(A)として、主鎖構造中にウレタン結合、ウレア結合、及びエステル結合から選択される1種以上の結合を有する重合体を含む硬化性組成物の硬化物では、熱等による、主鎖構造中のウレタン結合、ウレア結合、又はエステル結合の開裂により硬化物の強度が低下する場合がある。
【0040】
主鎖構造中にアミド結合を含む重合体を有機重合体として用いる場合、硬化性組成物の硬化性が向上する場合がある。アミド結合は、例えば、-NR4-C(=O)-で表される。R4は、水素原子、又は置換基を有してもよい有機基である。主鎖構造中のアミド結合の量が適切な範囲内であると、重合体の粘度が低く、熱等によるアミド結合の開裂による硬化物の強度低下や、貯蔵による硬化性組成物の粘度上昇が起きにくく、硬化性組成物の作業性が良好である。
【0041】
有機重合体(A)が主鎖構造中にアミド結合を含む場合、アミド結合の数は、1分子あたりの平均数として、1~10個が好ましく、1.5~5個がより好ましく、2~3個がさらに好ましい。1分子あたりの平均数としてのアミド結合の数がかかる範囲内であると、硬化性組成物の硬化性が良好であり、有機重合体(A)の粘度が低く、有機重合体(A)及び硬化性組成物の取り扱いが容易である。
【0042】
以上説明した有機重合体(A)としては、貯蔵安定性や作業性に優れた硬化性組成物を得るという点から、主鎖構造中に、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、及び、アミド結合を含まないポリオキシアルキレン系重合体が最も好ましい。
【0043】
有機重合体(A)としては、下記(a)から(d)のいずれかの方法により反応性ケイ素基を重合体に導入して得られた重合体が好ましい。
(a)水酸基末端有機重合体の末端水酸基を炭素-炭素不飽和基に変換した後、炭素-炭素不飽和基を、HSiR1
3-aXaで表されるヒドロシランによりヒドロシリル化する方法。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
(b)水酸基末端有機重合体の末端水酸基に、OCN-W-SiR1
3-aXaで表されるイソシアネートアルキルシラン化合物を反応させる方法。Wは2価の有機基である。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
(c)水酸基末端有機重合体の末端水酸基を炭素-炭素不飽和基に変換した後、炭素-炭素不飽和基と、HS-W-SiR1
3-aXaで表されるメルカプトアルキルシラン化合物とのエン-チオール反応を行う方法。Wは2価の有機基である。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
(d)水酸基末端有機重合体をポリイソシアネート化合物と反応させてNCO基末端有機重合体を合成した後、末端NCO基を、HNR5-W-SiR1
3-aXa、又はHS-W-SiR1
3-aXaで表されるシラン化合物と反応させる方法。Wは2価の有機基である。R5は水素原子、又はアルキル基である。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
【0044】
上記(a)、及び(c)の方法において、末端の炭素-炭素不飽和基としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アレニル基、及びプロパルギル基等が例示できる。
【0045】
上記(b)~(d)のいずれかの方法において、Wがメチレンであるシラン化合物を用いて得られる有機重合体(A)は非常に高い硬化性を示す。
【0046】
(a)の方法は、貯蔵安定性が良好である有機重合体(A)を得やすい点で好ましい。(b)、(c)、及び(d)の方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られることから好ましい。
【0047】
(a)の方法による反応性ケイ素基の導入方法としては、特公昭45-36319号、同46-12154号、特開昭50-156599号、同54-6096号、同55-13767号、同55-13468号、同57-164123号、特公平3-2450号、米国特許3632557号、米国特許4345053号、米国特許4366307号、及び米国特許4960844号等の各公報に提案されている方法、又は特開昭61-197631号、同61-215622号、同61-215623号、及び同61-218632号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシプロピレン重合体にヒドロシリル化等により反応性ケイ素基を導入する方法や、特開平3-72527号公報に提案されている方法が例示できる。
【0048】
有機重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されない。有機重合体(A)の数平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算分子量として、3,000~100,000が好ましく、3,000~50,000がより好ましく、3,000~30,000が特に好ましい。数平均分子量が上記の範囲内であると、加水分解性シリル基の導入量が適度であることにより、製造コストを適度な範囲内に抑えつつ、扱いやすい粘度を有し作業性に優れる重合体(A)を得やすい。
【0049】
加水分解性シリル基導入前の重合体前駆体を、JIS K 1557の水酸基価の測定方法と、JIS K 0070に規定されたよう素価の測定方法の原理に基づいた滴定分析により、直接的に末端基濃度を測定し、重合体の構造(使用した重合開始剤によって定まる分岐度)を考慮して求めた末端基換算分子量として、有機重合体(A)の分子量を示すことも出来る。有機重合体(A)の末端基換算分子量は、重合体前駆体の一般的なGPC測定により求めた数平均分子量と上記末端基換算分子量の検量線を作成し、有機重合体(A)のGPCにより求めた数平均分子量を末端基換算分子量に換算して求めることも可能である。
【0050】
有機重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されない。有機重合体(A)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的には、分子量分布は、好ましくは1.6以下であり、より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下であり、特に好ましくは1.2以下である。有機重合体(A)の分子量分布はGPC測定により得られる数平均分子量と重量平均分子量から求めることが出来る。
【0051】
良好なゴム状硬化物を得るためには、有機重合体(A)の反応性ケイ素基は、高分子鎖末端に存在することが好ましい。反応性ケイ素基の数は高分子鎖末端あたり平均して0.5個以上であることが好ましく、0.6個以上がより好ましく、0.7個以上がさらに好ましく、0.8個以上が特に好ましい。反応性ケイ素基の数が0.5個以上であると、有機重合体(A)及び硬化性組成物の硬化性が良好であり、硬化性組成物の硬化物が良好なゴム弾性を有する。
【0052】
1分子中の反応性ケイ素基の数は平均して1~7個が好ましく、1~4個がより好ましく、1~3個が特に好ましい。
【0053】
また、WO2013/180203号公報に記載されるように、高分子鎖末端に2つ以上の反応性ケイ素基を有する有機重合体も有機重合体(A)として用いることができる。このような有機重合体(A)は高い硬化性を示し、得られる硬化物が高い強度や高い復元性を有することを期待できる。
【0054】
有機重合体(A)の市販されている製品の具体例としては、カネカMSポリマー(登録商標)、及びカネカサイリル(登録商標)等の各種反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン製品、カネカTAポリマー(登録商標)、及びKANEKA XMAP(登録商標)等の反応性ケイ素基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル製品、EPION(登録商標)等の反応性ケイ素基含有ポリイソブチレン製品等が挙げられる。これらの市販の有機重合体(A)は、いずれも株式会社カネカの製品である。
【0055】
<硬化触媒(B)>
硬化性組成物は、加水分解縮合により有機重合体(A)を硬化させる硬化触媒を含有する。
硬化触媒(B)は、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)を含む。
化合物(b3)は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、プロリン、プロリン誘導体、及びスルホン酸ピリジニウム塩から選択される1種以上である。
有機カルボン酸又はその金属塩(b1)は、プロリン、及びプロリン誘導体に該当しない化合物である。
有機アミン化合物(b2)は、プロリン、プロリン誘導体、アミジン化合物、及びグアニジン化合物に該当しない化合物である。
カルボキシ基を有する有機アミン化合物は、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)として用いることも、有機アミン化合物(b2)として用いることもできる。ただし、カルボキシ基を有する有機アミン化合物は、有機アミンに該当しない有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、又はカルボキシ基を持たない有機アミン化合物(b2)と組み合わせて使用される。
つまり、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)と、有機アミン化合物(b2)とが、ともにカルボキシ基を有する有機アミン化合物であることはない。
硬化性組成物において、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)から選択される2種以上が、互いに反応していてもよい。
【0056】
有機カルボン酸又はその金属塩(b1)のうち、有機カルボン酸は、カルボキシ基を有する有機化合物であって、プロリン、及びプロリン誘導体に該当しない化合物であれば特に限定されない。有機カルボン酸は、カルボキシ基を1つ有するモノカルボン酸化合物であっても、2以上のカルボキシ基を有する多価カルボン酸化合物であってもよい。
有機カルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、3価以上の脂肪族ポリカルボン酸、及び芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0057】
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、及びラクセル酸等の直鎖飽和脂肪酸類;ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、2-ヘキサデセン酸、6-ヘキサデセン酸、7-ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及び10-ウンデセン酸等のモノエン不飽和脂肪酸類;リノエライジン酸、リノール酸、10,12-オクタデカジエン酸、ヒラゴ酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、8,11,14-エイコサトリエン酸、7,10,13-ドコサトリエン酸、4,8,11,14-ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、8,12,16,19-ドコサテトラエン酸、4,8,12,15,18-エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ニシン酸、及びドコサヘキサエン酸等のポリエン不飽和脂肪酸類;2-メチル酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、ピバル酸、2,2-ジメチル酪酸、2-エチル-2-メチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2-フェニル酪酸、イソ吉草酸、2,2-ジメチル吉草酸、2-エチル-2-メチル吉草酸、2,2-ジエチル吉草酸、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、バーサチック酸、ネオデカン酸、及びツベルクロステアリン酸等の枝分れ脂肪酸類;プロピオール酸、タリリン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸、及び7-ヘキサデシン酸等の三重結合をもつ脂肪酸類;ナフテン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルプス酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、1-メチルシクロペンタンカルボン酸、1-メチルシクロヘキサンカルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸、及びビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸等の脂環式カルボン酸類;アセト酢酸、エトキシ酢酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グルコン酸、サビニン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、3-ヒドロキシイソ酢酸、2-ヒドロキシオクタデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸、9,10-ジヒドロキシオクタデカン酸、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸リシノール酸、カムロレン酸、リカン酸、フェロン酸、及びセレブロン酸等の含酸素脂肪酸類;クロロ酢酸、及び2-クロロアクリル酸等のモノカルボン酸のハロゲン置換体;ピペリジン-2-カルボン酸、ピペリジン-3-カルボン酸、及びピペリジン-4-カルボン酸等のピペリジンカルボン酸等が挙げられる。脂肪族モノカルボン酸は、上記の化合物には限定されない。
上記の化合物のうち、ピペリジンカルボン酸、又はその金属塩は、有機アミン化合物(b2)としても使用され得る。
【0058】
脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルこはく酸、2,2-ジエチルこはく酸、2,2-ジメチルグルタル酸等の鎖状ジカルボン酸、1,2,2-トリメチル-1,3-シクロペンタンジカルボン酸、及びオキシ二酢酸等の飽和ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸、及びイタコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸は、上記の化合物には限定されない。
【0059】
3価以上の脂肪族ポリカルボン酸としては、アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、3-メチルイソクエン酸、及び4,4-ジメチルアコニット酸等の鎖状トリカルボン酸等が挙げられる。3価以上の脂肪族ポリカルボン酸は、上記の化合物には限定されない。
【0060】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、クロロ安息香酸、9-アントラセンカルボン酸、アトロラクチン酸、アニス酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、及びトルイル酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、カルボキシフェニル酢酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、上記の化合物には限定されない。
【0061】
また、カルボン酸無水物、エステル、アミド、ニトリル、塩化アシル等の加水分解によってカルボン酸を生じるカルボン酸誘導体等をカルボン酸として使用することも使用できる。
【0062】
有機カルボン酸金属塩の具体例としては、リチウム、ナトリウム、及びカリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びマグネシウム等のアルカリ土類金属の塩が挙げられる。
【0063】
容易に入手できること、安価であること、反応性ケイ素基含有有機重合体(A)との相溶性が良好であること等から、これらの中では、2-エチルヘキサン酸、オクチル酸、ネオデカン酸、オレイン酸、及びナフテン酸が好ましい。高い触媒活性を得やすいことからネオデカン酸が特に好ましい。有機カルボン酸又はその金属塩(b1)は単一の成分を用いても複数の成分を併用してもよい。
【0064】
有機アミン化合物(b2)の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、3-ヒドロキシプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、及び3-ラウリルオキシプロピルアミン等の脂肪族第一級モノアミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、4-ピペリジンカルボン酸エチル、ピペリジン2-カルボン酸、ピペリジン3-カルボン酸、ピペリジン4-カルボン酸、ヘキサメチルピペラジン、及びジエタノールアミン等の脂肪族第二級モノアミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、及びトリエタノールアミン等の脂肪族第三級モノアミン類;トリアリルアミン、及びオレイルアミン等の脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N'-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、3-ジブチルアミノプロピルアミン、及び3-モルホリノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及び2-(1-ピペラジニル)エチルアミン等の3価以上の多価アミン類;ベンジルアミン、キシリレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のその他のアミン類が挙げられる。
上記の化合物のうち、ピペリジン2-カルボン酸、ピぺリジン3-カルボン酸、及びピペリジン4-カルボン酸等のピペリジンカルボン酸は、有機アミン化合物(b2)としても使用され得る。
【0065】
入手性、有機重合体(A)との相溶性、硬化性の点から、これらの中では、ラウリルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、及び4-メチルピペリジンが好ましい。有機アミン化合物(b2)は単一の成分を用いても複数の成分を併用してもよい。
【0066】
有機アミン化合物(b2)は、硬化性組成物中で、前述の有機カルボン酸又はその金属塩(b1)としての有機カルボン酸、又は後述する化合物(b3)としての、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、プロリン、プロリン誘導体、又はスルホン酸ピリジニウム塩と塩を形成していてもよい。
【0067】
化合物(b3)について、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びこれらの金属塩の具体例としては、L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸;L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸のエステル誘導体;L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸のリン酸エステル誘導体;L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸のエーテル誘導体;L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸の金属塩;L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸のエステル誘導体の金属塩;L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸のリン酸エステル誘導体の金属塩;L-アスコルビン酸、及びイソアスコルビン酸のエーテル誘導体の金属塩が挙げられる。
イソアスコルビン酸は、L-アスコルビン酸の構造異性体である。
上記のエステル誘導体の具体例としては、パルミチン酸L-アスコルビル、ステアリン酸L-アスコルビル、2-エチルヘキサン酸L-アスコルビル、パルミチン酸イソアスコルビル、パルミチン酸イソアスコルビル、ステアリン酸イソアスコルビル、及び2-エチルヘキサン酸イソアスコルビルが挙げられる。
上記のリン酸エステル誘導体の具体例としては、L-アスコルビン酸モノリン酸エステル、L-アスコルビン酸ジリン酸エステル、L-アスコルビン酸トリリン酸エステル、イソアスコルビン酸モノリン酸エステル、イソアスコルビン酸ジリン酸エステル、及びイソアスコルビン酸トリリン酸エステルが挙げられる。
上記のエーテル誘導体の具体例としては、L-アスコルビン酸-2-グルコシド、及びイソアルコビン酸-2-グルコシドが挙げられる。
上記の金属塩としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩:マグネシウム塩、カルシウム塩、及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩:アルミニウム塩等の多価金属塩が挙げられる。
アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びこれらの金属塩は、上記の具体例には何ら限定されない。
【0068】
化合物(b3)について、プロリン、プロリン誘導体の具体例としては、アゼチジン2-カルボン酸、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、3-アミノプロリン、4-アミノプロリン、3,4-デヒドロキシプロリン、α-メチルプロリン、3-フルオロプロリン、4-フルオロプロリン、プロリンテトラゾール、及びプロリンスルホンアミド等が挙げられる。
プロリン、及びプロリン誘導体の金属塩の具体例は、プロリン、及び上記のプロリン誘導体の金属塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩:マグネシウム塩、カルシウム塩、及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩:アルミニウム塩等の多価金属塩が挙げられる。
プロリン、プロリン誘導体、及びこれらの金属塩は、上記の具体例には何ら限定されない。
【0069】
化合物(b3)について、スルホン酸ピリジニウム塩の具体例としては、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム塩、及びベンゼンスルホン酸ピリジニウム塩等の芳香族スルホン酸ピリジニウム塩;メタンスルホン酸ピリジニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸ピリジニウム塩、及び10-カンファースルホン酸ピリジニウム塩等の脂肪族スルホン酸ピリジニウム塩が挙げられる。
【0070】
上記の化合物(b3)の具体例の中では、アスコルビン酸、プロリン、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム塩が好ましい。
【0071】
硬化性組成物の速硬化性の点で、硬化性組成物における、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量と、前記有機アミン化合物(b2)の質量との比率は、(有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量)/(有機アミン化合物(b2)の質量)として、15/1~1/1であるのが好ましく、12/1~1.5/1であるのがより好ましく、10/1~2/1であるのが特に好ましい。
硬化性組成物の速硬化性の点で、硬化性組成物における、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量、及び前記有機アミン化合物(b2)の質量の合計と、化合物(b3)の質量との比率が、{(有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量)+(有機アミン化合物(b2)の質量)}/(化合物(b3)の質量)として、100/1~2/1であるのが好ましく、97/1~3/1であるのがより好ましく、95/1~4/1であるのがさらに好ましい。
硬化性組成物の速硬化性の点で、硬化性組成物における化合物(b3)の含有量は、有機重合体(A)100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.12~4質量部がより好ましく、0.15~3質量部がさらに好ましい。
【0072】
<その他の添加剤>
硬化性組成物は、所望する効果が損なわれない範囲で、有機重合体(A)、及び硬化触媒(B)以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、硬化触媒(B)以外のシラノール縮合触媒、充填剤、接着性付与剤、可塑剤、溶剤、希釈剤、タレ防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、粘着付与樹脂、エポキシ基を含有する化合物、光硬化性物質、酸素硬化性物質、エポキシ樹脂、その他の樹脂、表面性改良剤、発泡剤、硬化性調整剤、難燃剤、シリケート、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、及び防かび剤等が挙げられる。
【0073】
(シラノール縮合触媒)
硬化性組成物は、有機重合体(A)が有する反応性ケイ素基間の加水分解縮合反応を促進し、重合体を鎖延長又は架橋させる目的で、前述の硬化触媒(B)以外のシラノール縮合触媒を含んでいてもよい。
シラノール縮合触媒としては、例えば有機錫化合物、及びアルコキシ金属等が挙げられる。
【0074】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、及びジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等が挙げられる。
【0075】
アルコキシ金属の具体例としては、テトラブチルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)等のチタン化合物や、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウム化合物類、並びにジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)等のジルコニウム化合物類が挙げられる。
その他のシラノール縮合触媒として、例えば、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、DBU、DBA-DBU、DBN等のアミジン類、グアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、ブチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、フッ素アニオン含有化合物、光酸発生剤や光塩基発生剤も使用できる。
シラノール縮合触媒は、異なる2種類以上の触媒を併用して使用してもよい。
シラノール縮合触媒の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.001~20重量部が好ましく、0.01~15重量部がより好ましく、0.01~10重量部が特に好ましい。
【0076】
(充填剤)
硬化性組成物には、種々の充填剤が配合されてもよい。充填剤としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、及びカーボンブラック等の補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、及び樹脂粉末等の充填剤;石綿、ガラス繊維、及びフィラメントのような繊維状充填剤等が挙げられる。
樹脂粉末としては、PVC粉末、及びPMMA粉末等が挙げられる。
充填剤を使用する場合、充填剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して1~300重量部が好ましく、10~200重量部がより好ましい。
【0077】
これらの充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、及び活性亜鉛華等から選ばれる充填剤が好ましく使用できる。
硬化物の強度の点で好ましいこれらの充填剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対し、1~200重量部が好ましい。また、低強度で破断伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、及びシラスバルーン等から選ばれる充填剤が好ましく使用できる。硬化物の破断伸びの点で好ましいこれらの充填剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、5~200重量部が好ましい。
【0078】
一般的に、炭酸カルシウムの比表面積の値が大きいほど、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性の改善効果は大きい。これらの充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。脂肪酸表面処理膠質炭酸カルシウムと、表面処理がされていない重質炭酸カルシウム等の粒径が1μm以上の炭酸カルシウムとを併用できる。
【0079】
硬化性組成物は、硬化物の軽量化(低比重化)の目的でバルーンのような球状中空体を含んでいてもよい。
バルーンとは、内部が中空の球状充填剤である。バルーンの材料としては、ガラス、シラス、及びシリカ等の無機系の材料、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サラン、及びアクリルニトリル等の有機系の材料が挙げられる。バルーンの材料は、これら材料に限定されない。バルーンの材料は、無機系の材料と有機系の材料とからなる複合材料であってもよい。また、バルーンの材料として、複数の層が積層されていてもよい。また、バルーンは、1種を単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。バルーンの表面は、表面加工されていたり、コーティングされていたり、各種の表面処理剤で処理されていたりしてもよい。例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等でコーティングされた有機系のバルーンや、シランカップリング剤で表面処理された無機系のバルーンを用いることができる。
【0080】
バルーンの粒径は、3~200μmであることが好ましく、特に10~110μmであることが好ましい。バルーンの粒径が上記の範囲内であると、適度な量のバルーンの使用により所望する程度に硬化物を軽量化でき、表面における凹凸の発生や、伸びの低下を抑制しつつ硬化物を形成できる。
【0081】
バルーンを用いる際には、特開2000-154368号公報に記載されているようなスリップ防止剤、特開2001-164237号公報に記載されているような硬化物の表面を凹凸状態に加えて艶消し状態にするためのアミン化合物を硬化性組成物に添加できる。前述のアミン化合物として、特に融点35℃以上の第一級、及び/又は第二級アミンが好ましい。
【0082】
バルーンの具体例は、特開平2-129262号公報、特開平4-8788号、特開平4-173867号公報、特開平5-1225号公報、特開平7-113073号公報、特開平9-53063号公報、特開平10-251618号、特開2000-154368号公報、特開2001-164237号公報、WO97/05201号等の各公報に記載されている。
【0083】
球状中空体(バルーン)の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.01~30重量部が好ましい。下限は0.1重量部がより好ましく、上限は20重量部がより好ましい。上記の範囲内の量の球状中空体を用いると、硬化性組成物の良性が良好であり、伸びと破断強度とに優れる硬化物を形成しやすい。
【0084】
(接着性付与剤)
硬化性組成物は、接着性付与剤を含んでいてもよい。接着性付与剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤は、分子内に加水分解性ケイ素基と、加水分解性ケイ素基以外の官能基とを有する化合物である。シランカップリング剤を使用することで、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、及びモルタル等の無機基材や、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネート等の有機基材である各種被着体に、硬化性組成物を適用した場合に、ノンプライマー条件、又はプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示す。ノンプライマー条件下で硬化性組成物を使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。シランカップリグン剤は、上記の機能の他にも脱水剤、物性調整剤、無機充填材の分散性改良剤等としての機能を奏し得る。
【0085】
シランカップリング剤が有する加水分解性ケイ素基における加水分解性基としては、特に限定されない。加水分解性基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、及びメルカプト基等が挙げられる。これらの中では、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、及びアリールオキシ基が、活性が高い点で好ましい。塩素原子、及びアルコキシ基は、シランカップリング剤への導入が容易であり好ましい。加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、及びエトキシ基等のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、及びエトキシ基が特に好ましい。また、エトキシ基やイソプロペニルオキシ基は、反応により脱離する化合物がそれぞれエタノール、アセトンであり、安全性の点で好ましい。シランカップリング剤中のケイ素原子と結合する加水分解性基の個数は、良好な接着性を確保するために3個が好ましい場合がある。また、硬化性組成物の貯蔵安定性を確保するためには2個が良い場合がある。
【0086】
シランカップリング剤を接着性付与剤として使用する場合、加水分解性ケイ素基と、置換あるいは非置換のアミノ基とを有するアミノシランカップリング剤が、接着性改善効果が大きいことから好ましい。置換アミノ基における置換基としては、特に限定されない。当該置換基としては、例えばアルキル基、アラルキル基、及びアリール基等が挙げられる。
【0087】
アミノシランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(2-(2-アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-エチルアミノ)-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等のアミノ基含有シラン類;N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のケチミン型シラン類を挙げることができる。
【0088】
これらのうち、硬化物の良好な接着性の点で、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。アミノシランカップリング剤は1種類のみ使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランは、他のアミノシランに比べて刺激性があることが指摘されている。γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを減量する代わりに、γ-アミノプロピルトリメトキシシランを併用することで刺激性を緩和させることができる。また、加水分解性ケイ素基を部分的に縮合させてオリゴマー化させたシランカップリング剤も安全性、安定性の点で好適に使用できる。縮合させるシランカップリング剤は単一でも複数種でもよい。オリゴマー化させたシランカップリング剤としては、Evonik社のDynasylan1146等が挙げられる。硬化性組成物の良好な貯蔵安定性の点では、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0089】
アミノシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の具体例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、及び(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びメルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、及びN-β-(カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、及びγ-アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シランカップリング剤;γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシランカップリング剤等を挙げることができる。また、上記のシランカップリング剤を部分的に縮合した縮合体も使用できる。かかる縮合体としては、例えば、Evonik社のDynasylan6490、及びDynasylan6498等が挙げられる。さらに、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、及びシリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0090】
これらのうち、硬化物の良好な接着性の点で、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0091】
上記シランカップリング剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
シランカップリング剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0092】
(可塑剤)
硬化性組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の添加により、硬化性組成物の粘度、及びスランプ性や、硬化物の引張り強度、及び伸び等の機械特性を調整できる。
【0093】
可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、及びブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル化合物;ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレート等のテレフタル酸エステル化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等の非フタル酸エステル化合物;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、及びアセチルクエン酸トリブチル等の脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の不飽和脂肪酸エステル化合物;アルキルスルホン酸フェニルエステル;トリクレジルホスフェート、及びトリブチルホスフェート等のリン酸エステル化合物;トリメリット酸エステル化合物;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、及びエポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤等を挙げることができる。
テレフタル酸エステル化合物の具体例としては、EASTMAN168(商品名、EASTMAN CHEMICAL製)が挙げられる。非フタル酸エステル化合物の具体例としては、Hexamoll DINCH(商品名、BASF製)が挙げられる。アルキルスルホン酸フェニルエステルの具体例としては、Mesamoll(商品名、LANXESS製)が挙げられる。
【0094】
高分子可塑剤を使用することもできる。高分子可塑剤を使用すると、低分子可塑剤を使用した場合に比較して、硬化物の初期の物性を長期にわたり維持することができる。さらに、該硬化物にアルキド塗料を塗付した場合の乾燥性(塗装性)が改良される。
【0095】
高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系モノマーの重合体であるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、及びペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールやポリオールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、及びフタル酸等の2塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコール等の2価アルコールとから得られるポリエステル系可塑剤;数平均分子量500以上、さらには1,000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;これらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体;ポリスチレンやポリ-α-メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられる。高分子可塑剤は、これらに限定されない。
【0096】
高分子可塑剤は、有機重合体(A)と相溶するのが好ましい。この点から、ポリエーテル類やビニル系重合体が好ましい。ポリエーテル類を可塑剤として使用すると、表面硬化性、及び深部硬化性が改善され、貯蔵後の硬化遅延も起こらない。ポリエーテル類の中では、ポリプロピレングリコールがより好ましい。また、ビニル計重合体は、有機重合体(A)との相溶性の点と、硬化物の耐候性、及び耐熱性の点とから好ましい。ビニル系重合体の中では、アクリル系重合体、及び/又はメタクリル系重合体が好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステル等のアクリル系重合体がさらに好ましい。ビニル系重合体の合成法としては、分子量分布が狭く、低粘度の重合体が得られることから、リビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001-207157号公報に記載されている、アクリル酸アルキルエステル系単量体を高温・高圧で連続塊状重合する、いわゆるSGOプロセスも、ビニル系重合体の製造方法として好ましい。
【0097】
高分子可塑剤の数平均分子量は、500~15,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000がさらに好ましく、1,000~5,000が特に好ましく、1,000~3,000が最も好ましい。
高分子可塑剤の数平均分子量が上記の範囲内であると、熱や降雨等による硬化物からの可塑剤の経時的な流出を抑制しつつ、硬化物の初期の物性を長期にわたり維持でき、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の作業性が良好である。
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましい。具体的には、分子量分布は、1.80未満が好ましく、1.70以下がより好ましく、1.60以下がなお好ましく、1.50以下がさらに好ましく、1.40以下が特に好ましく、1.30以下が最も好ましい。
【0098】
ビニル系重合体の数平均分子量は、GPC法で測定される。ポリエーテル系重合体の数平均分子量は、末端基分析法で測定される。また、分子量分布(Mw/Mn)はGPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0099】
高分子可塑剤は、反応性ケイ素基を有していても、有していなくてもよい。高分子可塑剤が反応性ケイ素基を有する場合、高分子可塑剤が反応性可塑剤として作用し、硬化物からの可塑剤の移行を防止できる。高分子可塑剤が反応性ケイ素基を有する場合、反応性ケイ素基の数は、1分子に対し平均して1個以下が好ましく、0.8個以下がより好ましい。反応性ケイ素基有する可塑剤、特に反応性ケイ素基を有するポリエーテル系重合体を使用する場合、その数平均分子量は、有機重合体(A)より低いことが必要である。
【0100】
可塑剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、5~150重量部が好ましく、10~120重量部がより好ましく、20~100重量部がさらに好ましい。可塑剤の使用量が上記の範囲内であると、可塑剤の使用による所望する効果を十分に得つつ、機械的強度に優れる硬化物を形成できる。可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。低分子可塑剤と高分子可塑剤とを併用してもよい。これらの可塑剤は、有機重合体(A)を製造する際に、有機重合体(A)に配合されてもよい。
【0101】
(溶剤、希釈剤)
硬化性組成物は、溶剤、又は希釈剤を含んでいてもよい。溶剤、及び希釈剤としては、特に限定されない。溶剤、及び希釈剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、及びエーテル等を使用できる。溶剤、又は希釈剤を使用する場合、硬化性組成物を屋内で使用した時の空気への汚染の問題から、溶剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。上記溶剤、又は希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0102】
(タレ防止剤)
硬化性組成物は、必要に応じてタレを防止し、作業性を良くするためにタレ防止剤を含んでいてもよい。タレ防止剤としては特に限定されない。タレ防止剤としては、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。これらのタレ防止剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
タレ防止剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましい。
【0103】
(酸化防止剤)
硬化性組成物は、酸化防止剤(老化防止剤)を含んでいてもよい。酸化防止剤を使用すると、硬化物の耐候性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物が例示でき、特にヒンダードフェノール系が好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス245,イルガノックス1010,イルガノックス1035,イルガノックス1076,イルガノックス1135,イルガノックス1330,イルガノックス1520(以上いずれもBASF製);SONGNOX1076(SONGWON製)、BHTが挙げられる。
チヌビン622LD,チヌビン144,チヌビン292,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上いずれもBASF製);アデカスタブLA-57,アデカスタブLA-62,アデカスタブLA-67,アデカスタブLA-63,アデカスタブLA-68(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS-2626,サノールLS-1114,サノールLS-744(以上いずれも三共ライフテック株式会社製);ノクラックCD(大内新興化学工業株式会社製)等のヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。
他に、SONGNOX4120,ナウガード445,OKABEST CLX050等の酸化防止剤も使用できる。
酸化防止剤の具体例は特開平4-283259号公報や特開平9-194731号公報にも記載されている。
酸化防止剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0104】
(光安定剤)
硬化性組成物は、光安定剤を含んでいてもよい。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、及びベンゾエート系化合物等が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物が特に好ましい。
光安定剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
光安定剤の具体例は、例えば、特開平9-194731号公報に記載されている。
【0105】
硬化性組成物に光硬化性物質を配合する場合、特に不飽和アクリル系化合物を用いる場合、特開平5-70531号公報に記載されているように、ヒンダードアミン系光安定剤として第三級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが硬化性組成物の保存安定性改良のために好ましい。第三級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としては、チヌビン123,チヌビン144,チヌビン249,チヌビン292,チヌビン312,チヌビン622LD,チヌビン765,チヌビン770,チヌビン880,チヌビン5866,チヌビンB97,CHIMASSORB119FL,CHIMASSORB944LD(以上いずれもBASF製);アデカスタブLA-57,LA-62,LA-63,LA-67,LA-68(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS-292,LS-2626,LS-765,LS-744,LS-1114(以上いずれも三共ライフテック株式会社製),SABOSTAB UV91,SABOSTAB UV119,SONGSORB CS5100,SONGSORB CS622,SONGSORB CS944(以上いずれもSONGWON製),ノクラックCD(大内新興化学工業株式会社製)等を例示できる。
【0106】
(紫外線吸収剤)
硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチレート系化合物、トリアジン系化合物、置換トリル系化合物、及び金属キレート系化合物等を例示できる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、チヌビン234,チヌビン326,チヌビン327,チヌビン328,チヌビン329,チヌビン350,チヌビン571,チヌビン900,チヌビン928,チヌビン1130,チヌビン1600(以上いずれもBASF製);SONGSORB3290(SONGWON製)が挙げられる。トリアジン系化合物の具体例としては、チヌビン400,チヌビン405,チヌビン477,チヌビン1577ED(以上いずれもBASF製);SONGSORB CS400,SONGSORB1577(SONGWON製)が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、SONGSORB8100(SONGWON製)が挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。フェノール系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを併用するのが好ましい。
酸化防止剤、光安定剤、及び紫外線吸収剤が混合された製品として、AddworksIBC760(Clariant製)を使用できる。
【0107】
(物性調整剤)
硬化性組成物は、必要に応じて、硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を含んでいてもよい。物性調整剤としては、特に限定されない。物性調整剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。物性調整剤を用いることにより、硬化物の硬度を上げたり、逆に硬化物の硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0108】
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特開平5-117521号公報に記載されている化合物が挙げられる。また、加水分解によりトリメチルシラノール等のトリアルキルシラノールを生成する、ヘキサノール、オクタノール、及びデカノール等のアルキルアルコールの誘導体、特開平11-241029号公報に記載されている、加水分解によりトリメチルシラノール等のトリアルキルシラノールを生成する、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、又はソルビトール等の水酸基数が3以上の多価アルコールの誘導体を挙げることができる。
特開平7-258534号公報に記載されているような、加水分解によりトリメチルシラノール等のトリアルキルシラノールを生成するシリコン化合物を生成するオキシアルキレン重合体の誘導体も挙げることができる。さらに特開平6-279693号公報に記載されている架橋可能な加水分解性ケイ素含有基と、加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基とを有する重合体を使用することもできる。
物性調整剤は有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部の範囲で使用される。
【0109】
(粘着付与樹脂)
硬化性組成物は、硬化物の基材への接着性や密着性を高める等の目的で、粘着付与樹脂を含んでいてもよい。粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、種々の硬化性組成物において通常使用されている粘着付与樹脂を用いることが出来る。
粘着付与樹脂の具体例としては、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロック共重合体、スチレン系ブロック共重合体の水素添加物、石油樹脂、水添石油樹脂、及びDCPD樹脂等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、及びC5C9炭化水素共重合樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着付与樹脂の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して2~100重量部が好ましく、5~50重量部がより好ましく、5~30部がさらに好ましい。かかる範囲内の量の粘着付与樹脂を用いると、基材への接着性、密着性が良好な硬化物を形成できる。硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取り扱い性が良好である。
【0110】
(エポキシ基を含有する化合物)
硬化性組成物は、エポキシ基を含有する化合物を含んでいてもよい。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体、及びこれらの混合物等が例示できる。エポキシ基を有する化合物の具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、ビス(2-エチルヘキシル)-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレ-ト、及びエポキシブチルステアレ-ト等が挙げられる。
エポキシ基を含有する化合物の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.5~50重量部が好ましい。
【0111】
(エポキシ樹脂)
硬化性組成物にはエポキシ樹脂を含んでいてもよい。エポキシ樹脂を含む硬化性組成物は、接着剤、特に外壁タイル用接着剤として好ましい。エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂類や、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
有機重合体(A)の重量と、エポキシ樹脂の重量との比率は、重量比で(有機重合体(A)の重量)/(エポキシ樹脂の重量)として、100/1~1/100の範囲が好ましい。有機重合体(A)とエポキシ樹脂とが上記の比率で使用されると、衝撃強度や強靭性に優れる高強度の硬化物を形成しやすい。
エポキシ樹脂を用いる場合、硬化性組成物は、エポキシ樹脂とともに硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の種類は特に限定されず、一般に使用される硬化剤を用いることができる。
硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、0.1~300重量部が好ましい。
【0112】
(光硬化性物質)
硬化性組成物は、光硬化性物質を含んでいてもよい。光硬化性物質を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや硬化物の耐候性を改善できる。光硬化性物質としては、有機単量体、オリゴマー、及び樹脂等の種々の化合物が知られている。また、光硬化性物質を含む組成物も多数知られている。代表的な光硬化性物質としては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類、及びアジド化樹脂等がえる。不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系不飽和基、又はメタクリル系不飽和基を1以上有するモノマー、オリゴマー、又はこれらの混合物が挙げられる。
光硬化性物質の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。かかる範囲内の量の光硬化性物質が使用されると、耐候性に優れ、ひび割れの発生が抑制された柔軟な硬化物を形成しやすい。
【0113】
(酸素硬化性物質)
硬化性組成物は、酸素硬化性物質を含んでいてもよい。酸素硬化性物質としては、空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示できる。硬化性物質が酸素硬化性物質を含むと、酸素硬化性物質が空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜が形成される。硬化物の表面に硬化被膜が形成されることにより、硬化物表面における、べたつきや、ゴミやホコリの付着を防止できる。酸素硬化性物質の具体例としては、キリ油、及びアマニ油等の乾性油;乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、及びシリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、又は1,3-ペンタジエン等のジエン系化合物を重合又は共重合させて得られる1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、又はC5~C8ジエンの重合体等の液状重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
酸素硬化性物質の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。かかる範囲内の量の酸素硬化性物質を用いると、表面がゴミやホコリにより汚染されにくく、引張り特性等の機械的特性に優れる硬化物を形成しやすい。特開平3-160053号公報に記載されるように、酸素硬化性物質は、好ましくは光硬化性物質と併用される。
【0114】
<硬化性組成物の調製>
硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することが可能である。硬化剤組成物を、硬化触媒(B)と、充填材、可塑剤、及び水等の成分とが配合された硬化剤としての配合材と、別途調製された有機重合体(A)を含む組成物を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。作業性の点からは、1成分型が好ましい。
硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧等により脱水されるのが好ましい。脱水乾燥法に加えてメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。脱水剤としては、Evonik社のDynasylan6490等の部分的に縮合したシラン化合物等も、安全性、安定性の観点で好適に使用できる。
脱水剤、特にビニルトリメトキシシラン等の水と反応し得るケイ素化合物の使用量は、有機重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0115】
硬化性組成物は、建築用シーリング材や工業用接着剤、防水塗膜形成用組成物、粘着剤原料等として使用することができる。また、建造物、船舶、自動車、及び道路等の密封剤として硬化性組成物を使用することができる。さらに、硬化性組成物は、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、及び樹脂成形物等の広範囲の基材に密着し得る。このため、硬化性組成物は、種々のタイプの密封組成物及び接着組成物としても使用することができる。硬化性組成物は、通常の接着剤のほかに、コンタクト接着剤としても使用可能である。さらに、硬化性組成物は、食品包装材料、注型ゴム材料、型取り用材料、塗料としても有用である。上記の硬化性組成物の硬化物は低吸水性を示す。このため、上記の硬化性組成物、及びその硬化物は、特にシーリング材、防水用接着剤、防水塗膜等の防水材料の用途に好適である。
【0116】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0117】
すなわち、本発明の一態様は、以下を含む。
【0118】
<1>有機重合体(A)、及び硬化触媒(B)を含む、硬化性組成物であって、
有機重合体(A)が、下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表わされる反応性ケイ素基を有し、
硬化触媒(B)が、有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)を含み、
化合物(b3)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、プロリン、プロリン誘導体、及びスルホン酸ピリジニウム塩から選択される1種以上であり、
有機カルボン酸又はその金属塩(b1)は、プロリン、及びプロリン誘導体に該当しない化合物であり、
有機アミン化合物(b2)は、プロリン、プロリン誘導体、アミジン化合物、及びグアニジン化合物に該当しない化合物であり、
有機カルボン酸又はその金属塩(b1)、有機アミン化合物(b2)、及び化合物(b3)から選択される2種以上が、互いに反応していてもよい、硬化性組成物。
<2>有機重合体(A)の主鎖構造が、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群より選択される1種以上である、<1>に記載の硬化性組成物。
<3>有機重合体(A)の主鎖構造が、ポリオキシアルキレン系重合体である、<2>に記載の硬化性組成物。
<4>有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量と、有機アミン化合物(b2)の質量との比率が、(有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量)/(有機アミン化合物(b2)の質量)として、15/1~1/1である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5>有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量、及び有機アミン化合物(b2)の質量の合計と、化合物(b3)の質量との比率が、{(有機カルボン酸又はその金属塩(b1)の質量)+(有機アミン化合物(b2)の質量)}/(化合物(b3)の質量)として、100/1~1/1である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6>有機重合体(A)100質量部に対して、化合物(b3)0.1~5質量部を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物の硬化物。
<8><1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物、又は硬化性組成物の硬化物を用いる防水材料。
【実施例0119】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、下記実施例に限定されない。
【0120】
(有機重合体(A)の合成例)
以下、数平均分子量は以下の条件で測定したGPC分子量である。
送液システム:東ソー製HLC-8420GPC
カラム:東ソー製TSKgel SuperHシリーズ
溶媒:THF
分子量:ポリスチレン換算
測定温度:40℃
【0121】
実施例中の末端基換算分子量は、水酸基価をJIS K 1557の測定方法により、ヨウ素価をJIS K 0070の測定方法により求め、有機重合体の構造を考慮して求めた分子量である。有機重合体の構造について考慮されたのは、使用した重合開始剤によって定まる分岐度である。
【0122】
実施例に示す重合体の末端1個あたり、又は1分子あたりのシリル基の平均数は1H-NMR(ブルカー製AVANCE III HD-500を用いて、CDCl3溶媒中で測定)による測定により算出した。
【0123】
(調製例1:有機重合体(A-1)の合成)
開始剤としての分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールと、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒とを用いてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量28,500の水酸基末端ポリプロピレンオキシドを得た。続いて、この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2モル当量のNaOMeのメタノール溶液を添加した。反応液からメタノールを留去した後、反応液に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去した。得られた未精製のアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合した後、攪拌した。次いで、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。得られたヘキサン相に、水300重量部を混合した後、攪拌した。再度、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。その後、ヘキサン相からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基である数平均分子量約28,500の2官能ポリプロピレンオキシドを得た。得られたアリル末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%の2-プロパノール溶液150ppmを触媒として加えた。次いで、アリル末端ポリプロピレンオキシドのアリル基に対して0.8モル当量のトリメトキシシランをアリル末端ポリプロピレンオキシドに加え、アリル末端基とトリメトキシシランとを、90℃で5時間反応させ、トリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン系重合体(A-1)を得た。トリメトキシシリル基の数は高分子鎖末端あたり約0.7個であった。
【0124】
(調製例2:有機重合体(A-2)の調製)
10%L-アスコルビン酸水溶液を作製した。有機重合体(A-1)の重量に対するL-アスコルビン酸の重量の比率が0.25wt%となるように、有機重合体(A-1)に対して10%L-アスコルビン酸水溶液を混合した。その後、エバポレーターを用いて、混合物から水を減圧脱揮により除去し、L-アスコルビン酸を含む有機重合体(A-2)を得た。
【0125】
(調製例3:有機重合体(A-3)の合成)
開始剤としての分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールと分子量約3,000のポリオキシプロピレントリオールとの等重量混合物と、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒とを用いて、プロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約19,000の水酸基末端ポリプロピレンオキシドを得た。続いて、この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加した。反応液からメタノールを留去した後、反応液に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。以上により、末端がアリル基である数平均分子量約19,000のポリプロピレンオキシドを得た。
得られた未精製のアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合した後、攪拌した。次いで、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。得られたヘキサン相に、水300重量部を混合した後、攪拌した。再度、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。その後、ヘキサン相からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であるポリプロピレンオキシドを得た。得られたアリル末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として加えた。次いで、アリル末端ポリプロピレンオキシドのアリル基に対して0.7モル当量のメチルジメトキシシランをアリル末端ポリプロピレンオキシドに加え、アリル末端基とメチルジメトキシシランとを90℃で5時間反応させ、メチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキシド(A-3)を得た。メチルジメトキシシリル基の数は高分子鎖末端あたり約0.7個であった。重合体(A-3)は主鎖構造として、直鎖状と分岐状の両方を有する。
【0126】
(調製例4:有機重合体(A-4)の調製)
10%L-アスコルビン酸水溶液を作製した。有機重合体(A-3)の重量に対するL-アスコルビン酸の重量の比率が0.25wt%となるように、有機重合体(A-3)に対して10%L-アスコルビン酸水溶液を混合した。その後、エバポレーターを用いて、混合物から水を減圧脱揮により除去し、L-アスコルビン酸を含む有機重合体(A-4)を得た。
【0127】
(評価)
(実施例1)
(皮張り時間(硬化性))
23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて、重合体(A-1)を容量20mlのプラスチック容器に計量した。次いで、表1に記載の組成比になるように、重合体(A-1)に対して、L-アスコルビン酸(キシダ化学株式会社製)を添加し混合した。続いて、ネオデカン酸(東部ケミカル(株)製、商品名:ネオデカン酸(バーサティック10))、及び4-メチルピぺリジン(東京化成工業株式会社製)を、重合体(A-1)に添加した後混合して、硬化性組成物を得た。硬化性組成物をスパチュラで触り、スパチュラに混合物が付着しなくなった時間を皮張り時間として、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0128】
(実施例2、及び実施例3)
L-アスコルビン酸の添加量を表1に記載の量に変えること以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例1と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0129】
(実施例4)
L-アスコルビン酸をL-プロリン(東京化成工業株式会社製)に変えること以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例1と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0130】
(実施例5)
重合体(A-1)を、表1に記載の量の重合体(A-2)に変えることと、硬化性組成物を調製する際に重合体(A-2)にL-アスコルビン酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例1と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0131】
(比較例1)
硬化性組成物を調製する際に重合体(A-1)にL-アスコルビン酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例1と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0132】
(比較例2)
ネオデカン酸の量を表1に記載の量に変えることと、硬化性組成物を調製する際に重合体(A-2)にL-アスコルビン酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例1と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0133】
(比較例3)
ネオデカン酸を用いないこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例1と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0134】
(結果)
表1に示される通り、硬化触媒(B)として、成分(b1)、成分(b2)、及び成分(b3)を組み合わせて含有する実施例1~5の硬化性組成物は、成分(b1)、成分(b2)、及び成分(b3)のうちの2種類しか含まない比較例1~3の硬化性組成物と比べ、速硬化を示した。
【0135】
【0136】
(実施例6)
有機重合体(A-1)を有機重合体(A-3)に変えた以外、実施例3と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例3と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0137】
(実施例7)
有機重合体(A-1)を有機重合体(A-3)に変えた以外、実施例4と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例4と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0138】
(実施例8)
有機重合体(A-2)を有機重合体(A-4)に変えた以外は、実施例5と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例5と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0139】
(比較例4)
L-アスコルビン酸を使用しなかったこと以外は、実施例6と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例6と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0140】
(結果)
表2に示される通り、硬化触媒(B)として、成分(b1)、成分(b2)、及び成分(b3)を組み合わせて含有する実施例6~8の硬化性組成物は、成分(b1)、成分(b2)、の2種類しか含まない比較例4の硬化性組成物と比べ、速硬化を示した。
【表2】
【0141】
(実施例9)
表3に記載の量の、脱水剤(Evonik製、商品名:Dynasylan VTMO、ビニルトリメトキシシラン)、及び接着付与剤(Evonik製、商品名:Dynasylan AMMO、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)を、有機重合体(A-3)に添加したこと以外は、実施例7と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例7と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0142】
(実施例10)
表3に記載の量の脱水剤及び接着付与剤を有機重合体(A-4)に添加した以外は、実施例8と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例8と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0143】
(実施例11)
ネオデカン酸、及び4-メチルピペリジンの使用量を、表3に記載の量に変えることと、L-プロリンを用いないことと、表3に記載の量の脱水剤、接着付与剤、及びパラトルエンスルホン酸ピリジニウム塩(東京化成株式会社製)を有機重合体(A-3)に添加したことと以外は、実施例9と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例9と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0144】
(比較例5)
L-プロリンを用いないことの他は、実施例9と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例9と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0145】
(比較例6)
ネオデカン酸、及び4-メチルピペリジンの使用量を、表3に記載の量に変えることの他は、比較例5と同様にして硬化性組成物を得た。また、比較例5と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0146】
(結果)
表3に示される通り、硬化触媒(B)として、成分(b1)、成分(b2)、及び成分(b3)を組み合わせて含有する実施例9~11の硬化性組成物は、成分(b1)、成分(b2)、の2種類しか含まない比較例5、及び比較例6の硬化性組成物と比べ、速硬化を示した。
【0147】
【0148】
(実施例12)
重合体(A-3)に対して、それぞれ表4に記載の量の膠質炭酸カルシウム(白石工業株式会社製、商品名:白艶華CCR)、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、商品名:ホワイトンSB)、可塑剤(BASF社製、商品名:Hexamoll DINCH)、顔料(石原産業株式会社製、商品名:タイペークR820)、チキソ性付与剤(ARKEMA社製、商品名:Crayvallac SL)、酸化防止剤(BASF社製、商品名:Irganox1010)、紫外線吸収剤(BASF社製、商品名:Tinuvin326)、及び光安定剤(BASF社製、商品名:Tinuvin770)を加え、スパチュラを用いて混合した後、混合物を3本ロールミルに3回通して分散させて主剤を得た。
【0149】
23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて、主剤を容量100mlのプラスチック容器に計量し、表4に記載の組成比になるように、L-アスコルビン酸(キシダ化学株式会社製)を主剤に添加し混合した。続いて、表4に記載の組成比になるように、脱水剤(Evonik製、商品名:Dynasylan VTMO、ビニルトリメトキシシラン)、接着性付与剤(Evonik製、商品名:Dynasylan AMMO、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、ネオデカン酸(東部ケミカル(株)製、商品名:ネオデカン酸(バーサティック10))、及び4-メチルピぺリジン(東京化成工業株式会社製)を主剤に添加して混合し硬化性組成物を得た。
【0150】
(皮張り時間(硬化性))
硬化性組成物をスパチュラで触り、スパチュラに混合物が付着しなくなった時間を皮張り時間として、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0151】
(実施例13)
ネオデカン酸、及び4-メチルピペリジンの使用量を、表4に記載の量に変えることと、L-アスコルビン酸をL-プロリン(東京化成工業株式会社製)に変えることと以外は、実施例12と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例12と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0152】
(比較例7)
L-アスコルビン酸を用いないこと以外は、実施例12と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例12と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0153】
(比較例8)
L-プロリンを用いないこと以外は、実施例13と同様にして硬化性組成物を得た。また、実施例13と同様にして、硬化時間(硬化性)の測定を行った。
【0154】
(結果)
表4に示される通り、硬化触媒(B)として、成分(b1)、成分(b2)、及び成分(b3)を組み合わせて含有する実施例12の硬化性組成物は、成分(b1)、及び成分(b2)しか含まない比較例7の硬化性組成物と比べ、速硬化を示した。
また、硬化触媒(B)として、成分(b1)、成分(b2)、及び成分(b3)を組み合わせて含有する実施例13の硬化性組成物は、成分(b1)、及び成分(b2)しか含まない比較例8の硬化性組成物と比べ、速硬化を示した。
【0155】