(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150185
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231005BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059152
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 育久
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
【テーマコード(参考)】
2G084
5F131
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB05
2G084BB11
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084FF06
2G084FF15
2G084FF39
5F131AA02
5F131BA04
5F131CA04
5F131CA70
5F131EA03
5F131EB14
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】対象物の吸着を妨げることなく、プラズマの発生効率を高める。
【解決手段】ウエハ載置台10は、セラミックプレート20と、導電性基材30とを備える。セラミックプレート20は、ウエハ載置面21aを有するプレート中央部21の外周に、フォーカスリング載置面25aを有するプレート環状部25を備える。導電性基材30は、セラミックプレート20の下面に設けられ、高周波ソース電極として用いられる。プレート環状部25には、フォーカスリング載置面25aから同じ高さに、フォーカスリング吸着用電極26と、バイアス用高周波が供給されるフォーカスリング側高周波バイアス電極27とが埋設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形のウエハ載置面を有するプレート中央部の外側に、環状のフォーカスリング載置面を有するプレート環状部を備えたセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられ、高周波ソース電極として用いられる導電性基材と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記プレート環状部には、前記フォーカスリング載置面から同じ高さに、フォーカスリング吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるフォーカスリング側高周波バイアス電極とが埋設されている、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記フォーカスリング吸着用電極と前記フォーカスリング側高周波バイアス電極とは、平面視で前記フォーカスリング載置面の内周側と外周側とに分かれて配置されている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記フォーカスリング吸着用電極と前記フォーカスリング側高周波バイアス電極とは、平面視で前記フォーカスリング載置面に互い違いになるように配置されている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記プレート中央部には、前記ウエハ載置面に近い側から順に、ウエハ吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるウエハ側高周波バイアス電極とが埋設されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記プレート中央部には、前記ウエハ載置面から同じ高さに、ウエハ吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるウエハ側高周波バイアス電極とが埋設されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記ウエハ吸着用電極の面積に対する前記ウエハ側高周波バイアス電極の面積の割合は0.8以上1.2以下である、
請求項5に記載のウエハ載置台。
【請求項7】
前記ウエハ吸着用電極と前記ウエハ側高周波バイアス電極とは、平面視で前記ウエハ載置面に互い違いになるように配置されている、
請求項5又は6に記載のウエハ載置台。
【請求項8】
円形のウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられ、高周波ソース電極として用いられる導電性基材と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記セラミックプレートには、前記ウエハ載置面から同じ高さに、ウエハ吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるウエハ側高周波バイアス電極とが埋設されている、
ウエハ載置台。
【請求項9】
前記ウエハ吸着用電極の面積に対する前記ウエハ側高周波バイアス電極の面積の割合は0.8以上1.2以下である、
請求項8に記載のウエハ載置台。
【請求項10】
前記セラミックプレートには、平面視で前記ウエハ吸着用電極と前記ウエハ側高周波バイアス電極とが互い違いになるように配置されている、
請求項8又は9に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うためにウエハ載置台が用いられる。例えば、特許文献1に開示されたウエハ載置台は、セラミック基材と冷却基材とを備え、セラミック基材は、円形のウエハ載置面を備えた中央部と、前記中央部の外周側に環状のフォーカスリング載置面を備えた外周部とを有している。ウエハ載置面に載置されるウエハは、セラミック基材の中央部に埋設されたウエハ吸着用電極に直流電圧が印加されることによりウエハ載置面に静電吸着される。フォーカスリング載置面に載置されるフォーカスリングは、セラミック基材の外周部に埋設されたフォーカスリング吸着用電極に直流電圧が印加されることによりフォーカスリング載置面に静電吸着される。冷却基材には、プラズマを生成させるためのソース用の高周波を発生する第1高周波電源と、ウエハにイオンを引き込むためのバイアス用の高周波を発生する第2高周波電源とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のウエハ載置台において、中央部にウエハ載置面に近い側からウエハ吸着用電極とウエハ側バイアス用電極を埋設し、外周部にフォーカスリング載置面に近い側からフォーカスリング吸着用電極とフォーカスリング側バイアス用電極を埋設し、冷却基材にソース用の高周波電源を接続することが考えられる。ウエハ側バイアス用電極は、ウエハにイオンを引き込むための高周波電極であり、フォーカスリング側バイアス用電極は、フォーカスリングにイオンを引き込むための高周波電極である。ウエハ上方やフォーカスリング上方に発生するプラズマは、バイアス用電極と載置面との間のセラミック誘電層の静電容量C(C=ε・S/d(C:静電容量[F]、ε:誘電率[F/m]、S:電極面積[m2]、d:誘電層厚さ[m]))が高いほど、効率よく発生する。しかしながら、バイアス電極が吸着用電極の下側に配置されると、誘電層厚さが厚くなり、それに伴って静電容量が小さくなり、プラズマの発生効率が低下してしまう。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、対象物の吸着を妨げることなく、プラズマの発生効率を高めることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の第1のウエハ載置台は、
円形のウエハ載置面を有するプレート中央部の外側に、環状のフォーカスリング載置面を有するプレート環状部を備えたセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられ、高周波ソース電極として用いられる導電性基材と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記プレート環状部には、前記フォーカスリング載置面から同じ高さに、フォーカスリング吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるフォーカスリング側高周波バイアス電極とが埋設されている、
ものである。
【0007】
このウエハ載置台では、フォーカスリング側高周波バイアス電極をフォーカスリング吸着用電極の下側ではなくフォーカスリング吸着用電極と同じ高さに配置している。そのため、フォーカスリング側高周波バイアス電極とフォーカスリング載置面との間の距離(上述した誘電層厚さに相当)が短くなり、その間の静電容量が大きくなり、フォーカスリング上方でのプラズマの発生効率が高くなる。また、フォーカスリング吸着用電極とフォーカスリング載置面との距離も短いため、フォーカスリングをフォーカスリング載置面に吸着するのに支障は生じない。したがって、フォーカスリング(対象物)の吸着を妨げることなく、フォーカスリング上方でのプラズマ発生効率を高めることができる。
【0008】
なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、ウエハ載置台の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0009】
[2]上述した第1のウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記フォーカスリング吸着用電極と前記フォーカスリング側高周波バイアス電極とは、平面視で前記フォーカスリング載置面の内周側と外周側とに分かれて配置されていてもよい。こうすれば、フォーカスリング吸着用電極とフォーカスリング側高周波バイアス電極とを比較的容易に形成することができる。
【0010】
[3]上述した第1のウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記フォーカスリング吸着用電極と前記フォーカスリング側高周波バイアス電極とは、平面視で前記フォーカスリング載置面に互い違いになるように配置されていてもよい。こうすれば、フォーカスリング載置面へのフォーカスリングの吸着とフォーカスリングの上方でのプラズマの発生とをバランスよく行うことができる。
【0011】
[4]上述した第1のウエハ載置台(前記[1]~[3]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記プレート中央部には、前記ウエハ載置面に近い側から順に、ウエハ吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるウエハ側高周波バイアス電極とが埋設されていてもよい。こうすれば、ウエハ吸着用電極とウエハ側高周波バイアス電極とは別の高さ(別の段)に設けられるため、それぞれの電極を平面視でウエハ載置面のほぼ全面に設けることができる。これにより、ウエハの吸着力を十分大きくすることができると共に、ウエハの上方にほぼ均一にプラズマを発生させることができる。
【0012】
[5]上述した第1のウエハ載置台(前記[1]~[4]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記プレート中央部には、前記ウエハ載置面から同じ高さに、ウエハ吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるウエハ側高周波バイアス電極とが埋設されていてもよい。こうすれば、ウエハ吸着用電極とウエハ側高周波バイアス電極とは同じ高さ(同じ段)に設けられているため、ウエハ吸着用電極やウエハ側高周波バイアス電極からウエハ載置面までの距離を小さくすることができる。これにより、ウエハ(対象物)の吸着を妨げることなく、ウエハ上方でのプラズマ発生効率を高めることができる。
【0013】
[6]上述したウエハ載置台(前記[5]に記載のウエハ載置台)において、前記ウエハ吸着用電極の面積に対する前記ウエハ側高周波バイアス電極の面積の割合は0.8以上1.2以下であってもよい。こうすれば、ウエハ載置面へのウエハの吸着とウエハ上方でのプラズマの発生とをバランスよく行うことができる。
【0014】
[7]上述したウエハ載置台(前記[5]又は[6]に記載のウエハ載置台)において、前記ウエハ吸着用電極と前記ウエハ側高周波バイアス電極とは、平面視で前記ウエハ載置面に互い違いになるように配置されていてもよい。こうしても、ウエハ載置面へのウエハの吸着とウエハ上方でのプラズマの発生とをバランスよく行うことができる。
【0015】
[8]本発明の第2のウエハ載置台は、
円形のウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられ、高周波ソース電極として用いられる導電性基材と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記セラミックプレートには、前記ウエハ載置面から同じ高さに、ウエハ吸着用電極と、バイアス用高周波が供給されるウエハ側高周波バイアス電極とが埋設されている、
ものである。
【0016】
このウエハ載置台では、ウエハ側高周波バイアス電極をウエハ吸着用電極の下側ではなくウエハ吸着用電極と同じ高さに配置している。そのため、ウエハ側高周波バイアス電極とウエハ載置面との間の距離(上述した誘電層厚さに相当)が短くなり、その間の静電容量が大きくなり、ウエハ上方でのプラズマの発生効率が高くなる。また、ウエハ吸着用電極とウエハ載置面との距離も短いため、ウエハをウエハ載置面に吸着するのに支障は生じない。したがって、ウエハ(対象物)の吸着を妨げることなく、ウエハ上方でのプラズマ発生効率を高めることができる。
【0017】
[9]上述した第2のウエハ載置台(前記[8]に記載のウエハ載置台)において、前記ウエハ吸着用電極の面積に対する前記ウエハ側高周波バイアス電極の面積の割合は0.8以上1.2以下であってもよい。こうすれば、ウエハ載置面へのウエハの吸着とウエハ上方でのプラズマの発生とをバランスよく行うことができる。
【0018】
[10]上述した第2のウエハ載置台(前記[8]又は[9]に記載のウエハ載置台)において、前記セラミックプレートには、平面視で前記ウエハ吸着用電極と前記ウエハ側高周波バイアス電極とが互い違いになるように配置されていてもよい。こうすれば、ウエハ載置面へのウエハの吸着とウエハ上方でのプラズマの発生とをバランスよく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】電極222と電極223の配置を示す説明図(水平断面図)。
【
図6】電極322と電極323の配置を示す説明図(水平断面図)。
【
図7】電極226と電極27の配置を示す説明図(水平断面図)。
【
図8】電極26,26’と電極27の配置を示す説明図(水平断面部分拡大図)。
【
図9】電極26,26’と電極27,27’の配置を示す説明図(水平断面部分拡大図)。
【
図10】内歯26aを備えた電極26と外歯27aを備えた電極27の配置を示す説明図(水平断面部分拡大図)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は
図1のB-B断面図である。
【0021】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ(図示せず)の内部に固定されて使用される。ウエハ載置台10は、セラミックプレート20と、導電性基材30と、金属接合層40とを備えている。
【0022】
セラミックプレート20は、全体形状が円形であり、円形のウエハ載置面21aを有するプレート中央部21の外側に、環状のフォーカスリング載置面25aを有するプレート環状部25を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面21aには、ウエハWが載置され、FR載置面25aには、フォーカスリング78が載置される。セラミックプレート20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面25aは、ウエハ載置面21aに対して一段低くなっている。セラミックプレート20の外径は、特に限定するものではないが、例えば250mm以上350mm以下である。
【0023】
プレート中央部21には、ウエハ載置面21aから同じ高さに、ウエハ吸着用電極22とウエハ側高周波バイアス電極23とが埋設されている。これらの電極22,23は、例えばW、Mo、Ru、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。これらの電極22,23の形状は、特に限定されるものではなく、例えばメッシュ状であってもよいし、リボン状であってもよい。
【0024】
ウエハ吸着用電極22は、単極型の静電電極であり、
図2に示すように平面視で渦巻状に設けられている。プレート中央部21のうちウエハ吸着用電極22よりも上側の層は誘電体層として機能する。プレート中央部21のうちウエハ吸着用電極22の上面からウエハ載置面22aまでの厚みは1mm以下が好ましい。ウエハ吸着用電極22には、ウエハ吸着用電源52が給電部材54を介して接続されている。給電部材54は、金属接合層40及び導電性基材30とは電気的に絶縁されている。
【0025】
ウエハ側高周波バイアス電極23は、バイアス用高周波が供給される電極であり、
図2に示すように平面視で渦巻状に形成されている。バイアス用高周波は、高周波ソース電極として利用される導電性基材30に供給されるソース用高周波よりも周波数が低い。例えば、バイアス用高周波は数100kHzであり、ソース用高周波は数10MHzから数100MHzである。ウエハ吸着用電極22とウエハ側高周波バイアス電極23とは、平面視で直径方向に見たときに間隔を空けて互い違いになるように配置されている。プレート中央部21における、ウエハ吸着用電極22の面積に対するウエハ側高周波バイアス電極23の面積の割合は、0.8以上1.2以下であることが好ましい。ウエハ側高周波バイアス電極23には、バイアス用高周波電源62が給電部材64を介して接続されている。給電部材64は、金属接合層40及び導電性基材30とは電気的に絶縁されている。
【0026】
プレート環状部25には、FR載置面25aから同じ高さに、FR吸着用電極26とFR側高周波バイアス電極27とが埋設されている。これらの電極26,27は、例えばW、Mo、Ru、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。これらの電極26,28の形状は、特に限定されるものではなく、例えばメッシュ状であってもよいし、リボン状であってもよい。
【0027】
FR吸着用電極26は、単極型の静電電極であり、
図3に示すように平面視でプレート環状部25の外周側に円環状に形成されている。なお、
図3の境界線BLは、便宜上、プレート中央部21とプレート環状部25との境界を示したものである。セラミックプレート20のうちFR吸着用電極26の上面からFR載置面25aまでの厚みは1mm以下が好ましい。FR吸着用電極26には、FR吸着用電源56が給電部材58を介して接続されている。給電部材58は、金属接合層40及び導電性基材30とは電気的に絶縁されている。
【0028】
FR側高周波バイアス電極27は、バイアス用高周波が供給される電極であり、
図3に示すように平面視でプレート環状部25の内周側に円環状に形成されている。FR吸着用電極26とFR側高周波バイアス電極27とは、平面視で環状の間隔を空けて埋設されている。FR側高周波バイアス電極27には、バイアス用高周波電源62が給電部材64を介して接続されている。給電部材64は、金属接合層40及び導電性基材30とは電気的に絶縁されている。
【0029】
導電性基材30は、全体形状が円形であり、セラミックプレート20の下面に金属接合層40を介して接合されている。導電性基材30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路32を備えている。冷媒流路32は、平面視でセラミックプレート20の全面に冷媒が行き渡るように、一端から他端まで一筆書きの要領で形成されている。冷媒流路32の一端と他端は、図示しない冷媒循環装置に接続されている。冷媒循環装置は、温度調節機能を有する循環ポンプであり、所望の温度に調節された冷媒を冷媒流路32の一端へ導入し、冷媒流路32の他端から排出された冷媒を所望の温度に調節したあと再び冷媒流路32の一端へ導入する。冷媒流路32を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。導電性基材30は、金属を含有する導電材料で作製されている。導電材料としては、例えば、複合材料や金属などが挙げられる。複合材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。金属としては、Moが挙げられる。導電性基材30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。導電性基材30は、プラズマを発生させるためのソース用高周波電源60に接続されている。
【0030】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と導電性基材30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0031】
ウエハ載置面21aは、図示しないが、外周縁に沿って設けられた環状のシールバンドと、そのシールバンドの内側の面に多数設けられた扁平な円柱状の小突起とを有している。シールバンドの頂面と小突起の頂面とは同じ高さ(例えば数μmから数10μm)であり、ウエハWはこれらの頂面に接触した状態で支持される。ウエハ載置台10は、バックサイドガス(Heガスなどの熱伝導ガス)をウエハWの下面に供給するためのガス通路(図示せず)を有する。ガス通路は、導電性基材30、金属接合層40及びセラミックプレート20のプレート中央部21を上下方向に貫通するように設けられている。
【0032】
次に、ウエハ載置台10の使用例について
図1を用いて説明する。ウエハ載置台10は、半導体プロセス用のチャンバ(図示せず)の内部に固定される。チャンバの天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバの内部へ放出するシャワーヘッドが配置されている。
【0033】
ウエハ載置台10のFR載置面25aには、フォーカスリング78が載置され、ウエハ載置面21aには、ウエハWが載置される。フォーカスリング78は、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極22にウエハ吸着用電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面21aに吸着させる。それと共に、FR吸着用電極26にFR吸着用電源56の直流電圧を印加してフォーカスリング78をFR載置面25aに吸着させる。そして、チャンバの内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッドからプロセスガスを供給しながら、導電性基材30にソース用高周波電源60からのソース用高周波電圧を印加する。それと共に、ウエハ側及びFR側高周波バイアス電極23,27にバイアス用高周波電源62からのバイアス用高周波電圧を印加する。すると、ソース用高周波電圧が印加された導電性基材30(それと同電位の金属接合層40)とシャワーヘッドとの間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。ソース用高周波電圧は、プラズマを生成するために印加されるものであり、バイアス用高周波電圧は、ウエハWやフォーカスリング78にイオンを引き込むために印加されるものである。
【0034】
ウエハ側高周波バイアス電極23とウエハ載置面21aとの間の距離が長い(つまり誘電層厚さが厚い)と、その間の静電容量Cが小さくなる。
【0035】
これに対して、本実施形態では、ウエハ側高周波バイアス電極23をウエハ吸着用電極22の下側ではなく同じ高さに配置している。そのため、ウエハ側高周波バイアス電極23とウエハ載置面21aとの間の距離が短くなり、その間の静電容量Cが大きくなり、ウエハWの上方でのプラズマの発生効率が高くなる。また、ウエハ吸着用電極22とウエハ載置面21aとの距離も短いため、ウエハWをウエハ載置面21aに吸着するのに支障は生じない。
【0036】
加えて、FR側高周波バイアス電極27をFR吸着用電極26の下側ではなく同じ高さに配置している。そのため、FR側高周波バイアス電極27とFR載置面25aとの間の距離が短くなり、その間の静電容量Cが大きくなり、フォーカスリング78の上方でのプラズマの発生効率が高くなる。また、FR吸着用電極26とFR載置面25aとの距離も短いため、フォーカスリング78をFR載置面25aに吸着するのに支障は生じない。
【0037】
なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング78も消耗するが、フォーカスリング78はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング78の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0038】
以上説明したウエハ載置台10によれば、ウエハWの吸着を妨げることなく、ウエハWの上方でのプラズマ発生効率を高めることができるし、フォーカスリング78の吸着を妨げることなく、フォーカスリング78の上方でのプラズマ発生効率を高めることができる。
【0039】
また、ウエハ吸着用電極22の面積に対するウエハ側高周波バイアス電極23の面積の割合は、0.8以上1.2以下とするのが好ましい。こうすれば、ウエハ載置面21aへのウエハWの吸着とウエハWの上方でのプラズマの発生とをバランスよく行うことができる。
【0040】
更に、プレート中央部21には、平面視でウエハ吸着用電極22とウエハ側高周波バイアス電極23とが互い違いになるように配置されている。そのため、ウエハ載置面21aへのウエハWの吸着とウエハWの上方でのプラズマの発生とを一層バランスよく行うことができる。
【0041】
更にまた、FR吸着用電極26とFR側高周波バイアス電極27とは、平面視でFR載置面25aの内周側と外周側とに分かれて配置されている。そのため、FR吸着用電極26とFR側高周波バイアス電極27とを比較的容易に形成することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0043】
上述した実施形態では、プレート中央部21に、ウエハ吸着用電極22とウエハ側高周波バイアス電極23とを同じ高さに埋設したが、特にこれに限定されない。例えば、
図4に示すウエハ載置台110のように、ウエハ載置面21aに近い側から順に、ウエハ吸着用電極122と、ウエハ側高周波バイアス電極123とがプレート中央部21に埋設されていてもよい。
図4では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。両電極122,123の形状は、特に限定されるものではなく、例えば円板であってもよいし円形メッシュであってもよい。両電極122,123は、ウエハ載置面21aに略平行に埋設されている。ウエハ載置台110では、ウエハ吸着用電極22とウエハ側高周波バイアス電極23とは別の高さ(別の段)に設けられるため、それぞれの電極22,23を平面視でウエハ載置面21aのほぼ全面に設けることができる。これにより、ウエハWの吸着力を十分大きくすることができると共に、ウエハWの上方にほぼ均一にプラズマを発生させることができる。
【0044】
上述した実施形態では、セラミックプレート20のプレート中央部21の同じ高さに、渦巻状のウエハ吸着用電極22と渦巻状のウエハ側高周波バイアス電極23とを、平面視で互い違いになるように設けたが、特にこれに限定されない。例えば、
図5に示すように、セラミックプレート20のプレート中央部21の同じ高さに、櫛歯状のウエハ吸着用電極222と櫛歯状のウエハ側高周波バイアス電極223とを、平面視で直径方向に見たときに互い違いになるように(つまり一方の歯が他方の2本の歯の間に入るように)設けてもよい。
【0045】
あるいは、
図6に示すように、セラミックプレート20のプレート中央部21の同じ高さに、中心の円板から放射状に複数の外歯が延びる形状のウエハ吸着用電極322と、外周に沿う円環からウエハ吸着用電極322の外歯同士の間に内歯が入り込む形状のウエハ側高周波バイアス電極323とを、平面視で円周方向に見たときに互い違いになるように設けてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、セラミックプレート20のプレート環状部25の同じ高さに、円環状のFR吸着用電極26と円環状のFR側高周波バイアス電極27とを、平面視で外周側と内周側に配置したが、特にこれに限定されない。例えば、FR吸着用電極26を内周側に、FR側高周波バイアス電極27を外周側に配置してもよい。
【0047】
あるいは、単極型のFR吸着用電極26の代わりに、
図7に示すように、双極型のFR吸着用電極226を配置してもよい。
図7では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。FR吸着用電極226は、一対の半円形電極226a,226bを間隔を空けて対向するように配置したものである。
【0048】
上述した実施形態において、
図8に示すように、同心円である円環状のFR吸着用電極26と、円環状のFR側高周波バイアス電極27と、円環状のFR吸着用電極26’とを半径方向に交互に配置してもよい。あるいは、
図9に示すように、同心円である円環状のFR吸着用電極26と、円環状のFR側高周波バイアス電極27と、円環状のFR吸着用電極26’と、円環状のFR側高周波バイアス電極27’とを半径方向に交互に配置してもよい。
図8及び
図9では、平面視で半径方向にみたとき、FR吸着用電極とFR側高周波バイアス電極とが互い違いになっている。こうすることにより、FR載置面25aへのフォーカスリング78の吸着とフォーカスリング78の上方でのプラズマの発生とを更にバランスよく行うことができる。
【0049】
上述した実施形態において、
図10に示すように、円環状のFR吸着用電極26に複数の内歯26aを設け、円環状のFR側高周波バイアス電極27に複数の外歯27aを設け、内歯26a同士の間に外歯27aを隙間をもって配置し、外歯27a同士の間に内歯26aを隙間をもって配置してもよい。
図10では、平面視で円周方向にみたとき、FR吸着用電極26とFR側高周波バイアス電極27とは互い違いになっている。こうしても、FR載置面25aへのフォーカスリング78の吸着とフォーカスリング78の上方でのプラズマの発生とを更にバランスよく行うことができる。
【0050】
上述した実施形態では、ウエハ吸着用電源52とFR吸着用電源56とを別々に用意したが、一つの直流電源をウエハ吸着用とFR吸着用の両方に共通の電源として用いるようにしてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、バイアス用高周波電源62をウエハ側とFR側の両方に共通の電源として用いたが、ウエハ側バイアス用高周波電源とFR側バイアス用高周波電源とを別々に用意してもよい。
【0052】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と導電性基材30とを金属接合層40で接合したが、特にこれに限定されない。例えば、金属接合層40の代わりに、樹脂接合層を用いてもよい。
【0053】
上述した実施形態において、プレート中央部21にヒータ電極(抵抗発熱体)を設けてもよいし、プレート環状部25にヒータ電極(抵抗発熱体)を設けてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、プレート中央部21とプレート環状部25とが一体になったセラミックプレート20を採用したが、プレート中央部21とプレート環状部25とは別体であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 ウエハ載置台、20 セラミックプレート、21 プレート中央部、21a ウエハ載置面、22 ウエハ吸着用電極、22a ウエハ載置面、23 ウエハ側高周波バイアス電極、25 プレート環状部、25a FR載置面、26,26’ FR吸着用電極、26a 内歯、27,27’ FR側高周波バイアス電極、27a 外歯、30 導電性基材、32 冷媒流路、40 金属接合層、52 ウエハ吸着用電源、54 給電部材、56 FR吸着用電源、58 給電部材、60 ソース用高周波電源、62 バイアス用高周波電源、64 給電部材、78 フォーカスリング、110 ウエハ載置台、122 ウエハ吸着用電極、123 ウエハ側高周波バイアス電極、222 ウエハ吸着用電極、223 ウエハ側高周波バイアス電極、226 FR吸着用電極、226a 半円形電極、227 FR側高周波バイアス電極、322 ウエハ吸着用電極、323 ウエハ側高周波バイアス電極。