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特開2023-150194眼科撮影システムおよび固視標アタッチメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150194
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】眼科撮影システムおよび固視標アタッチメント
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059171
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】福地 成樹
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐二
(72)【発明者】
【氏名】市川 明
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB12
4C316FA04
4C316FC07
(57)【要約】
【課題】 眼底の周辺領域を簡易に撮影すること。
【解決手段】 対物光学系と、前記対物光学系を介して被検眼の眼底を撮影するための撮影光学系と、眼底の中心領域を撮影するために、前記対物光学系を介して被検眼に対して第1固視標を呈示する第1固視標呈示部と、前記中心領域と連続する周辺領域を撮影するために、前記撮影光学系の光軸に対して所定の位置関係で配置される複数の第2固視標を、前記対物光学系を介さずに被検眼に対して呈示する第2固視標呈示部と、を備える眼科撮影システム。
【選択図】 図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物光学系と、
前記対物光学系を介して被検眼の眼底を撮影するための撮影光学系と、
眼底の中心領域を撮影するために、前記対物光学系を介して被検眼に対して第1固視標を呈示する第1固視標呈示部と、
前記中心領域と連続する周辺領域を撮影するために、前記撮影光学系の光軸に対して所定の位置関係で配置される複数の第2固視標を、前記対物光学系を介さずに被検眼に対して呈示する第2固視標呈示部と、を備える眼科撮影システム。
【請求項2】
前記対物光学系、前記撮影光学系、および、前記第1固視標呈示部、を収容する筐体を有し、
前記第2固視標呈示部は、前記筐体における検査窓の周囲に着脱可能な固視標アタッチメントである、請求項1記載の眼科撮影システム。
【請求項3】
前記固視標アタッチメントは、前記筐体における検査窓の周囲に装着するための装着機構を有し、前記装着機構よりも被検眼に近い位置に、複数の前記第2固視標が形成される、請求項2記載の眼科撮影システム。
【請求項4】
複数の前記第2固視標は互いに異なる色で呈示される、請求項3記載の眼科撮影システム。
【請求項5】
眼科撮影装置の筐体における検査窓の周囲に着脱可能な固視標アタッチメントであって、
前記眼科撮影装置は、
対物光学系と、
前記対物光学系を介して被検眼の眼底を撮影するための撮影光学系と、
被検眼の中心領域を撮影するために、前記対物光学系を介して被検眼に対して第1固視標を呈示する第1固視標呈示部と、を前記筐体に収容し、
前記固視標アタッチメントは、前記検査窓の周囲に装着されることによって、前記撮影光学系の光軸に対して所定の位置関係で配置される複数の第2固視標を、前記対物光学系を介さずに被検眼に対して呈示する、ことを特徴とする固視標アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科撮影システムおよび固視標アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼底における周辺領域と、中心領域とを、ワンショットで撮影する装置が注目されている。
【0003】
また、眼底撮影装置の技術分野では、内部固視灯の呈示位置を変更し、撮影光軸に対して固視光軸を傾斜させることによって、周辺撮影を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-25255号公報
【特許文献2】特開2011-97998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装置のように、眼底の周辺領域と中心領域とがワンショットで撮影できる装置は、光学系が大型化しやすく、高価になりやすい。
【0006】
また、内部固視灯を制御し、撮影光軸に対して固視光軸を傾斜させることによって周辺撮影を行う場合、内部固視灯は、対物光学系を介して呈示されるため、周辺撮影できる範囲については、対物光学系による制約が大きい。
【0007】
本件発明は、上記技術課題の少なくとも1つを解決し、眼底の周辺領域を簡易に撮影する眼底撮影システムおよび固視標アタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
本開示の第1態様に係る眼科撮影システムは、対物光学系と、前記対物光学系を介して被検眼に照射される測定光を前記被検眼上で走査する走査部と、前記測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する検出部と、を有するOCT光学系と、被検眼の中心領域を撮影するために、前記対物光学系を介して第1固視標を呈示する第1固視標呈示部と、前記中心領域と連続する周辺領域を撮影するために、前記対物光学系を介さずに第2固視標を呈示する第2固視標呈示部と、前記OCT光学系を介して被検眼のOCTデータを取得する撮影制御手段と、前記第1固視標が固視された状態で撮影される第1OCTデータと、前記第2固視標が固視された状態で撮影される第2OCTデータと、を合成することによって、広域OCTデータを生成する画像処理手段と、を備える。
【0010】
本開示の第2態様に係る眼科撮影システムは、対物光学系と、前記対物光学系を介して被検眼の眼底を撮影するための撮影光学系と、眼底の中心領域を撮影するために、前記対物光学系を介して被検眼に対して第1固視標を呈示する第1固視標呈示部と、前記中心領域と連続する周辺領域を撮影するために、前記撮影光学系の光軸に対して所定の位置関係で配置される複数の第2固視標を、前記対物光学系を介さずに被検眼に対して呈示する第2固視標呈示部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、眼底の周辺部を簡易に撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る眼底撮影システムのうち、眼底撮影装置の概略構成を示した図である。
図2】実施例に係る眼底撮影装置の光学系を示す図である。
図3A】実施例に係る眼底撮影システムの部分拡大図であって、固視標アタッチメントが筐体に装着された状態を示した図である。
図3B】固視標アタッチメントの斜視図である。
図3C】固視標アタッチメントを被検眼側から視た正面図である。
図4】広角画像および広角画像を介して設定されるスキャンラインを示す図である。
図5】広域OCTデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「概要」
以下、本開示における実施形態を説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。また、各実施形態の一部または全部は、他の実施形態において利用され得る。本開示の例示的な実施形態として、眼科撮影システムを説明する。
【0014】
実施形態に係る眼科撮影システムは、2種類の固視標を利用して、被検眼の眼底を撮影する。例えば、眼科撮影システムは、対物光学系と、撮影光学系と、第1固視標呈示部と、第2固視標呈示部と、を備えていてもよい。追加的に、眼科撮影システムは、筐体、撮影制御部、および、画像処理部、のうち少なくともいずれかを有していてもよい。筐体は、対物光学系、撮影光学系、および、第1固視標呈示部、を収容する。
【0015】
対物光学系は、撮影光学系から被検眼に対して照射される光を眼底に導くために利用される。装置がワンショットで撮影可能な最大の範囲(画角)は、対物光学系の設計に基づいて定められる。
【0016】
撮影光学系は、対物光学系を介して被検眼の眼底を撮影するために利用される。撮影光学系は、眼底のOCTデータを撮影するOCT光学系であってもよいし、眼底の正面画像を撮影する正面撮影光学系であってもよいし、OCT光学系と正面撮影光学系との両方を備える複合装置であってもよい。正面撮影光学系としては、走査型の光学系であっても良いし、非走査型の光学系であっても良い。
【0017】
第1固視標呈示部は、装置の筐体内部に配置されており、固視を誘導する、いわゆる内部固視灯である。第1固視標呈示部は、眼底の中心領域を撮影するために利用される。第1固視標呈示部は、対物光学系を介して被検眼に対して第1固視標を呈示する。第1固視標呈示部は、第1固視標の呈示位置を変更可能であってもよい。
【0018】
第2固視標呈示部は、上述の中心領域と連続する周辺領域を撮影するために、撮影光学系の光軸に対して所定の位置関係で配置される複数の第2固視標を、対物光学系を介さずに呈示する。第1固視標の呈示位置において取得され得る眼底画像の撮影範囲と、連続した(換言すれば一部重複する)撮影範囲が撮影される位置に、第2固視標の呈示位置は定められている。
【0019】
特に断りが無い限り、本実施形態において、第2固視標呈示部は、第2固視標を、反対眼ではなく被検眼に呈示する。本実施形態では、第1固視標および第2固視標のいずれかが、被検眼によって択一的に固視された状態で、眼底が撮影される。
【0020】
なお、本実施形態における眼底の中心領域としては、例えば、少なくとも眼底の黄斑部及び乳頭部を含む領域であってもよく、眼底周辺領域としては、眼底中心部の両端部よりも外側の領域であってもよい。もちろんこれに限定されず、例えば、眼底中心領域は、少なくとも眼底の黄斑部を含む領域であって、眼底周辺部は、眼底中心部の両端部よりも外側の領域であってもよい。
【0021】
<固視標アタッチメント>
第2固視標呈示部は、筐体における検査窓の周囲に着脱可能な固視標アタッチメントであってもよい。固視標アタッチメントは、検査窓の周囲に装着するための装着機構を有していてもよい。更に、第2固視標呈示部は、装着機構よりも被検眼に近い位置に、複数の前記第2固視標が形成されていてもよい。
【0022】
第2固視標呈示部において、複数の第2固視標は、異なる色で着色されていてもよい。所望の第2固視標の色を、検者が被検者に伝えることで、所望の第2固視標に対する固視誘導を行うことができる。この場合、固視標アタッチメントには、固視光束を発する光源および電源が不要となる。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、固視標アタッチメントは、固視光束を発する光源を有していてもよい。電源は外部電源であっても良いし、内臓電源(例えば、電池)であっても良い。
【0023】
本実施形態では、固視標アタッチメントを装着することによって、装置本体の光学系が広角撮影に対応していなかったとしても、眼底周辺部のOCTデータを簡易に撮影できる。特に、眼底OCTでは、対物光学系に対して前眼部アタッチメント(アダプタ)を装着することによって、前眼部OCTを撮影装置が普及している。そこで、装置筐体側に形成された他のアタッチメントのための着脱機構をそのまま利用して、固視標アタッチメントが着脱されることが好ましい。これによって、装置自体の改造を伴うことなく、眼底周辺部のOCTデータを撮影する機能を、既存の装置に簡単に追加しやすい。
【0024】
また、反対眼ではなく被検眼に対して、予め定められた位置関係で固視標が呈示されるので、固視誘導の再現性が高いと考えられる。
【0025】
<OCT光学系>
ここで、撮影光学系が、OCT光学系である場合について説明する。OCT光学系は、スペクトラルドメイン式OCT(SD―OCT)であってもよいし、波長掃引式OCT(SS―OCT)であってもよいし、タイムドメイン式OCT(TD-OCT)であってもよい。
【0026】
本実施形態において、OCT光学系は、走査部と、検出部と、を有していても良い。走査部は、対物光学系を介して被検眼に照射される測定光を被検眼上で走査する。検出部は、測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する。
【0027】
撮影制御部は、OCT光学系を介して被検眼のOCTデータを取得する。本実施形態において、撮影制御手段は、第1固視標が呈示された状態でOCTデータの撮影を実行する。その結果、第1OCTデータが取得される。同様に、第2固視標が呈示された状態でOCTデータの撮影を実行することによって、第2OCTデータを取得する。それぞれのOCTデータと共に、それぞれのOCTデータにおける撮影位置(スキャン位置)を示す情報(以下、撮影位置情報)が、それぞれのOCTデータと対応付けて取得されても良い。撮影位置情報は、少なくとも第1OCTデータと第2OCTデータとの間における相対的な位置関係を特定するものであってもよい。
【0028】
例えば、それぞれの撮影で使用された固視標の呈示位置を特定する情報であってもよい。また、撮影位置情報は、それぞれのOCTデータにおける眼底上の撮影位置を示す情報であってもよい。眼底上の撮影位置は、例えば、眼底正面画像において、OCTデータの撮影位置を特定する情報であっても良い。
【0029】
<広域OCTデータの生成>
本実施形態において、画像処理部は、第1OCTデータと、第2OCTデータと、を合成することによって、広域OCTデータを生成してもよい。画像処理部は、第1OCTデータと第2OCTデータとの合成処理として、第1OCTデータと第2OCTデータとの間の重複領域を用いたマッチング処理によって、第1OCTデータと第2OCTデータの位置関係を規定してデータ合成を行ってもよい。また、事前に取得されている撮影位置情報を利用して、第1OCTデータと第2OCTデータの位置関係を規定してデータ合成が行われてもよい。この場合、マッチング処理が併用されてもよい。重複領域がある場合は、ノイズ・アーチファクトが少ない側の信号を採用しても良い。また接続部で急激な変化が生じないように、接続部で各種スムーズ化等の処理がなされても良い。
【0030】
撮影制御部は、第1OCTデータと、第2OCTデータと、が共通の横断面の連続する領域に関して取得されるように、眼球の動きを追跡しつつ走査部を制御してもよい(アイトラッキング)。この場合、第1OCTデータは、第1固視標が固視された状態で取得されるBスキャンデータであり、更に、第2OCTデータは、第2固視標が固視された状態で取得されるBスキャンデータであってもよい。例えば、最初に、第2OCTデータを取得し、更に、第2OCTデータと共に第2OCTデータの取得時における観察画像を記憶する。次に、第1OCTデータを取得する。その際の観察画像とあらかじめ第2OCTデータの取得時に得られた観察画像(眼底正面画像)との位置ズレに基づいて走査部を制御し、第1OCTデータを取得しても良い。なお、ここでは、第2OCTデータ⇒第1OCTデータの順にOCTデータを取得した。この場合は、第1OCTデータを取得する場合に、第2OCTデータと共通の横断面に関して第1OCTデータが取得されるように、第1固視標の呈示位置を調整してもよい。これにより、より適切に、第1OCTデータと、第2OCTデータと、が共通の横断面の連続する領域に関して取得されやすくなる。但し、各OCTデータの取得順序は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0031】
<広域眼底画像を用いたプランニング>
本実施形態において、撮影制御部は、例えば、広域眼底正面画像を介して、第1OCTデータと、第2OCTデータと、の取得位置が設定されてもよい。広域眼底正面画像は、第1OCTデータと、第2OCTデータと、の取得位置を含む程度に、OCT光学系の画角と比べて広角な画像であっても良い。広域眼底正面画像は、複数の眼底画像を合成したパノラマ画像であっても良いし、一回的に撮影した画像であってもよい。また、例えば、広域眼底正面画像は、眼科撮影システムとは別体の装置によって撮影されてもよい。
【0032】
第1OCTデータと、第2OCTデータと、の取得位置は、手動で設定されてもよい。この場合、各OCTデータの取得位置が、広域眼底正面画像を介して指定されても良い。OCT光学系の画角に相当する広域眼底正面画像の中心領域(以下、第1領域という)は、第1OCTデータを取得可能な領域となり、中心領域における外縁の近傍領域、および、OCT光学系の画角に対する広角領域(以下、まとめて第2領域という)は、第2OCTデータを取得可能な領域となる。ここで、指定されたOCTデータの取得位置については、第1領域のみである場合、第2領域のみである場合、第1領域と第2領域とにまたがる場合、があり得る。これに対し、撮影制御部は、第1OCTデータ、第2OCTデータ、および、それら両方のうち、いずれかの取得動作が、広域眼底正面画像に設定されるOCTデータの取得位置に応じて選択的に実行されてもよい。なお、本実施形態において、例えば、撮影制御部は、OCTデータの取得位置と共に、スキャンパターンの指定を受け付けてもよい。
【0033】
<実施例>
以下、図面を参照しつつ、実施例に係る眼科撮影システムを説明する。本実施例に係る眼科撮影システム1は、少なくとも、撮影装置100(図1,3A参照)と、固視標アタッチメント200(図3A図3C参照)と、を有する。
【0034】
本実施例では、撮影装置100自身が、撮影した画像を処理する。つまり、本実施例の撮影装置100は、眼底画像を処理するコンピュータとして機能する。但し、コンピュータとして機能するデバイスは、撮影装置100に限定されない。例えば、撮影装置100によって撮影された被検眼の画像データを取得することが可能なパーソナルコンピュータ、サーバ等が、被検眼の画像を処理するコンピュータとして機能してもよい。また、複数のデバイスの制御部が、協働して画像処理を実行してもよい。
【0035】
図1に示すように、実施例に係る撮影装置100は、光学ユニット100Aと制御ユニット100Bを備える。光学ユニット100Aにおいて、各種の光学系(図2参照)が筐体110に格納されている。制御ユニット100Bは、プロセッサ(CPU)70および記憶装置(メモリ)75を備える。プロセッサ70は、撮影装置100の制御を司る制御部である。記憶装置75には、眼底画像処理プログラムが記憶されている。制御ユニット100Bには、操作部85およびモニタ90が接続されている。操作部85は、マウスおよびタッチパネル等のポインティングデバイスであってもよいし、その他のユーザインターフェースであってもよい。モニタ90は、撮影された眼底画像等の各種画像を表示させることができる。制御ユニット100Bとして、パーソナルコンピュータ(PC)等が使用されてもよい。また、光学ユニット100Aと制御ユニット100Bは、同一の筐体に収容されてもよいし、別々の筐体に収容されてもよい。
【0036】
固視標アタッチメント200は、筐体110における検査窓の周囲に着脱可能である。固視標アタッチメント200が撮影装置100に装着されることによって、内部固視標とは異なる位置に配置される固視標を、撮影装置100に対して追加する。固視標ユニット200の詳細については、後述する。
【0037】
次に、図2を参照して、撮影装置100における光学系を説明する。本実施例の撮影装置100は、OCT光学系10と、正面撮影光学系50と、を有する。本実施例のOCT光学系10と、正面撮影光学系50とは、ダイクロイックミラー23によって、波長選択的に光路が結合/分岐される。本実施例のOCT光学系10と正面撮影光学系50とは、少なくとも対物光学系25を共用する。図2において、対物光学系25はレンズ系として示している。最も被験者側のレンズ面が検査窓を兼用している。本実施例では、正面撮影光学系50によって、観察画像が取得される。また、本実施例において、正面撮影光学系50は、指標投影光学系を兼用する。すなわち、正面撮影光学系50は、内部固視標を呈示する固視系としても利用される。
【0038】
以下では、一例として、SD-OCTが適用されたものとして、OCT光学系10を説明する。図2に示すように、実施例に係るOCT光学系10は、OCT光源11、光分割器13、検出器15、参照光学系17、および、導光光学系20、を備えている。なお、本実施例において図示および説明を省略するが、OCT光学系10は、光路長調整部、偏光調整部、および、フォーカス調整部等の各種の調整部を有していてもよい。
【0039】
SD-OCTにおいて、OCT光源11は、低コヒーレント光を発する。OCT光源11から出射された光は、光分割器120によって、測定光と参照光とに分割される。本実施例において、光分割器13は、カップラ(スプリッタ)が利用される。測定光は、導光光学系20を介して被検眼の眼底へ導かれ、参照光は、参照光学系17へ導かれる。
【0040】
図2に示す参照光学系17は、反射光学系が用いられるが、必ずしもこれに限られるものではなく、透過光学系によって形成されてもよい。本実施例では、参照光学系17において、参照光は、図示なきミラーによって折り返され、光分割器13によって、測定光の戻り光と合波された状態で、検出器15へ入射する。
【0041】
SD-OCTにおいて、検出器15は、スペクトロメータ(分光検出器)である。検出器15は、戻り光と参照光とのスペクトル干渉信号を出力する。戻り光と、参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて、眼底のOCTデータが取得される。
【0042】
本実施例では、光分割器13と被検眼Eとの間に配置される光学系を、導光光学系20と称する。導光光学系20には、走査部(光スキャナ)21、ダイクロイックミラー23、対物光学系25、が配置されている。
【0043】
走査部21は、OCTデータの取得位置を、眼底上で変更するために利用される。走査部21は、測定光を、眼底(被検物)上で二次元的(XY方向)に走査させるために利用されてもよい。本実施例において、走査部21は、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含んでいる。一例として、以下の説明では、X方向に走査するためのXガルバノミラーと、Y方向に走査するためのYガルバノミラーと、を有していてもよい。
【0044】
対物光学系25は、測定光の旋回点を形成し、旋回点を介して測定光を被検眼の眼底へ導く。対物光学系25に関して、走査部21は、被検眼の瞳と共役な位置に配置される。これにより、測定光は、走査部21の駆動量に応じて、瞳上の一点を旋回点として旋回される。
【0045】
なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではなく、「略共役」を含むものとする。即ち、眼底画像の利用目的(例えば、観察、解析等)との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からズレて配置される場合も、本開示における「共役」に含まれる。
【0046】
<正面撮影光学系>
正面撮影光学系50は、被検眼の眼底の正面画像を取得するために利用される。本実施例における正面撮影光学系50は、走査型の光学系(SLO光学系:Scanning Light Ophthalmoscope光学系)である。特に、眼底上でスポット状の光束を2次元的に走査する、2次元スキャンタイプのSLO光学系が、正面撮影光学系50として適用された場合を説明する。
【0047】
本実施例において、正面撮影光学系50は、正面画像として観察画像を取得する観察光学系を兼用する。観察画像は、動画像であり、リアルタイムにモニタ90へ表示されてもよい。また、所定のトリガ(例えばレリーズ信号)に基づいて取得される正面画像が、撮影画像として記憶装置75へ保存されてもよい。
【0048】
正面撮影光学系50は、第2光源51、ビームスプリッタ53、走査部55、ダイクロイックミラー23、対物光学系25、および、検出器(受光素子)57、を有する。第2光源51は、第2光として、赤外光および可視光を出射してもよい。赤外光は、観察画像を取得する際に、出射されてもよい。可視光は、例えば、固視を誘導するために利用される。第2光は、ビームスプリッタ53、走査部55、ダイクロイックミラー23、対物光学系25、を順に通過し、被検眼の眼底に導かれる。
【0049】
ビームスプリッタ53は、穴開きミラーであってもよいし、ハーフミラーであってもよい。
【0050】
走査部55は、第2光を、眼底上でXY方向に走査させるためのデバイスである。本実施例では、眼底上で第2光をラスタースキャンするために、走査部55が利用される。本実施例において、走査部55は、高速に駆動する主走査用光スキャナと、副走査用光スキャナと、を含む。主走査用光スキャナには、例えば、レゾナントスキャナや、ポリゴンミラーが利用されてもよい。副走査用光スキャナには、例えば、ガルバノミラー等が利用されてもよい。
【0051】
走査部55は、対物光学系25に関して、被検眼の瞳と共役な位置に配置される。これにより、被検眼の瞳には、第2光の旋回点が形成され、第2光は旋回点を中心として旋回される。
【0052】
第2光の眼底反射光は、投光時の経路を遡って、ビームスプリッタ53へ導かれる。本実施例では、ビームスプリッタ53によって反射された光が、検出器57によって受光される。2次元スキャンタイプのSLO光学系において、検出器57は点受光素子であってもよい。また、検出器57とビームスプリッタ53との間の眼底共役位置には、図示なき共焦点絞りが配置されていてもよい。
【0053】
検出器57からの受光信号は、プロセッサ70へと入力される。検出器57からの受光信号に基づいて眼底の正面画像が生成され、取得される。
【0054】
前述の通り、正面撮影光学系50は、対物光学系25を介して内部固視標を呈示する内部固視系としても利用される。内部固視標の呈示位置は、変更可能である。例えば、予め定められた複数の呈示位置の中からいずれかが選択されてもよい。具体例として、本実施例では、黄斑-乳頭の中間点、乳頭中心、および、それらの周辺6か所、のそれぞれに対して撮影光軸が配置されるように、呈示位置が変更される。なお、正面撮影光学系50によって内部固視標を呈示できる範囲については、画角の範囲に留まる。なお、本実施例において、OCT光学系10および正面撮影光学系50の画角は、およそ60°程度であるものとする。画角は、ワンショットでの撮影範囲を示している。本実施例における画角は、瞳における光線の照射範囲を示している。
【0055】
<固視標アタッチメント>
これに対し、本実施例では、図3Aに示すように、固視標アタッチメント200が装着されることによって、内部固視標を使って撮影光軸が最大限周辺側に配置された場合よりも、更に周辺側を撮影することが可能となる。本実施例では、画角90°相当の周辺領域が撮影可能となる。
【0056】
ここで、図3Aから図3Cを参照し、実施例における固視標アタッチメント200を詳細に説明する。図3Aは、筐体110に対する固視標アタッチメント200の装着状態を示しており、図3Bは、固視標アタッチメント200の斜視図であり、図3Cは、固視標アタッチメント200を被検眼側から視た正面図である。
【0057】
筐体110に対する固視標アタッチメント200の装着状態を示す。固視標アタッチメント200は、筒状に形成された部材である。すなわち、図3Bとして示した本実施例の固視標アタッチメント200は、対物光学系25から被検眼に対して照射される光束に干渉しない。筒の一端に、第2固視標201~208が配置されており、他端に装着機構210が配置されている。
【0058】
装着機構210は、検査窓の周囲に装着するために利用される。本実施例では、装着機構210としてマグネットが利用されており、磁力によって、筐体110に装着される。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、種々の機構が装着機構として利用され得る。
【0059】
図3Cに示すように、固視標アタッチメント200において、複数の第2固視標201~208は、所定の作動距離に配置された被検眼を、OCT光学系10および正面撮影光学系50の光軸に対して40°以上傾斜させる位置に配置される。好ましくは、45°以上、55°以下の範囲で傾斜させる位置に配置されてもよい。これにより、本実施例では、画角110°相当の周辺領域が撮影可能となる。なお、本実施例では、固視標アタッチメント200の着脱に関わらず、作動距離は略一定となる。
【0060】
ここで、OCT光学系10および正面撮影光学系50の光軸に対して第2固視標201~208による固視軸がなす角度は、被検眼が第2固視標201~208のいずれかを固視した状態で、正面撮影光学系50の撮影範囲に中心窩が含まれる範囲で設定されることが好ましい。第2固視標201~208が固視された状態で得られる眼底正面画像に中心窩が含まれていることで、中心窩の通過するスキャンラインに沿って、眼底周辺部に対するBスキャンを実施しやすくなる。
【0061】
被検眼側から見たときの複数の第2固視標201~208の配置を、一例として、図3Cに示す。複数の第2固視標201~208は、OCT光学系10および正面撮影光学系50の光軸の周りに45°間隔で配置される。また、それぞれの第2固視標201~208は、互いに異なる色で呈示される。本実施例における第2固視標の位置、および色を、以下に示す。第2固視標201~208は、固視標アタッチメント200の先端部に対する着色や印刷によって実現されても良い。また、それぞれの色を発する光源によって実現されても良いし、他の構成で実現されてもよい。
0度(3時):白
45度:赤
90度(12時):黄
135度:青
180度(9時):白
225度:橙
270度(6時):白
315度:緑
【0062】
図3Cに示すように、第2固視標201~208は、固視標アタッチメント200の一端に形成された傾斜面に配置されている。これにより、それぞれの第2固視標201~208を固視しやすい。
【0063】
<動作説明>
次に、図4図5を参照して、眼科撮影システム1における動作を、説明する。以下の説明において、眼科撮影システム1は、内部固視標および第2固視標201~208をそれぞれ利用して、第1OCTデータおよび第2OCTデータをそれぞれ取得し、第1OCTデータおよび第2OCTデータから広域OCTデータを生成する。
【0064】
<スキャンラインの設定>
まず、本実施例では、予め取得された広域眼底正面画像WFを利用して、スキャンラインが設定される。説明の便宜上、広域眼底正面画像WFは、眼科撮影システム1とは別体の装置によって撮影されたものとする。この場合、所望の眼底周辺部が広域眼底正面画像WFに含まれるように内部固視標を利用して、固視が誘導されていてもよい。広域眼底正面画像WFの画角、および、撮影時の内部固視標の呈示位置、は、広域眼底正面画像WFと対応づけて取得されていてもよい。
【0065】
本実施例では、眼底周辺部から中心窩を通過するスキャンラインが設定される。図4では、点Psから点Peを結ぶ直線として、キャンラインが設定される。
【0066】
<固視標アタッチメントの装着>
本実施例では、眼底周辺部の撮影が先に行われる。検者は、固視標アタッチメント200を撮影ユニット100Aに装着する。この場合、スキャンラインの通過位置に応じて、固視標アタッチメント200の装着を誘導する情報を、モニタ90等に出力してもよい。本実施例において、眼底周辺部のOCTデータを撮影する場合は、内部固視標が呈示されないように装置の状態が設定される。例えば、固視標アタッチメント200の装着を検出することによって、内部固視標が呈示されないように設定されてもよい。
【0067】
<周辺部の撮影>
固視標アタッチメント200の装着後、被検眼に対して撮影ユニット100Aのアライメントが行われる際に、検者は、いずれかの第2固視標を注視するように被検者に対して声がけする。例えば、図3Cの例であれば、270度(6時)の位置にある第2固視標205を注視するように声がけする。その際、固視標の色を伝えることで、スムーズな固視誘導が可能となる。
【0068】
プロセッサ71は、眼底正面画像を観察画像として随時取得すると共に、観察画像と広域眼底正面画像とマッチングする。広域眼底正面画像におけるスキャンラインの位置情報と、観察画像と広域眼底正面画像との変位に基づいて、観察画像におけるスキャンラインの位置情報を求め、該位置情報に応じて走査部21を制御することによって、スキャンライン上で測定光を走査させる。これによって、スキャンラインを正確に走査して、眼底周辺部におけるOCTデータを撮影できる。本実施例では、図4に示した区間B1で走査が行われ、その結果、図5における断層画像C1が取得される。
【0069】
<眼底中心部の撮影>
次に、周辺部のOCTデータの延長線上にある眼底中心部のOCTデータが撮影される。この場合、内部固視標が呈示されるように装置の状態が設定される。また、眼底周辺部におけるOCTデータの撮影後に、固視標アタッチメント200の装着を誘導する情報を、モニタ90等に出力してもよい。
【0070】
固視標アタッチメント200の装着後、被検眼に対して撮影ユニット100Aのアライメントが行われる。周辺撮影時と同様に、プロセッサ71は、広域眼底正面画像におけるスキャンラインの位置情報と、観察画像と広域眼底正面画像との変位に基づいて、観察画像におけるスキャンラインの位置情報を求め、該位置情報に応じて走査部21を制御することによって、スキャンライン上で測定光を走査させる。図4,5の例では、内部固視標の呈示位置を変更して、3回に分けて中心部をスキャンしている。但し、内部固視標の呈示位置を変更しないで、一度にスキャンしても良い。本実施例では、図4に示した区間B2,B3,B4のそれぞれで走査が行われ、その結果、図5における断層画像C2,C3,C4が取得される。
【0071】
<広域OCTデータの生成>
本実施形態において、プロセッサ71は、設定したスキャンラインについて撮影された各OCTデータ(断層画像C1~C4)を位置合わせし、更に、合成(コラージュ)することによって、広域OCTデータを生成する。位置合わせについては、位相限定相関法、正規化相互相関等の既知の方法を利用しうる。また、走査方向の位置合わせについては、各OCTデータと同時に取得された観察画像間の変位情報を利用し、深さ方向の位置合わせについては、OCTデータ間の変位情報を利用してもよい。これにより、走査方向に関しては特徴が乏しいOCTデータ間の位置合わせが好適に行われる。
【符号の説明】
【0072】
10 OCT光学系
50 正面撮影光学系(第1固視標呈示部)
100B 制御ユニット
200 固視標アタッチメント(第2固視標呈示部)

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5