(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150200
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ターンシグナルスイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/06 20060101AFI20231005BHJP
B62J 6/055 20200101ALI20231005BHJP
B62J 6/16 20200101ALI20231005BHJP
B62J 6/26 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
H01H25/06 A
B62J6/055
B62J6/16
B62J6/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059178
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】永田 一希
【テーマコード(参考)】
5G031
【Fターム(参考)】
5G031AS23H
5G031AS52H
5G031AS52J
5G031AS52K
5G031FS32K
5G031GS21
5G031HU02
5G031HU34
5G031KS15
5G031KS57
(57)【要約】
【課題】ターンシグナルの点滅とは異なる機能を即座に実行できるとともに、誤操作を防ぐことができるターンシグナルスイッチ装置を提供する。
【解決手段】ターンシグナルスイッチ装置14は、ハンドルバー11の延伸方向(揺動方向)に沿った揺動操作、押し込み方向への操作、並びに、揺動方向に垂直且つ車両の上方へ向けた方向(上昇方向)への操作が可能に構成された操作ノブ15を備え、操作ノブ15が揺動操作されると、揺動操作の方向に対応する側のターンシグナルが点滅し、操作ノブ15が上昇方向に操作されると、ターンシグナルは、揺動操作によるターンシグナルの点滅とは異なる点灯形態を実行し、操作ノブ15は、揺動方向、押し込み方向、又は上昇方向に操作された後に、操作ノブ15の非操作時に操作ノブ15が保持される中立位置へ復帰する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の操作方向に沿った揺動操作、押し込み方向への操作、並びに、前記第1の操作方向及び押し込み方向のいずれとも異なる第2の操作方向への操作が可能に構成された操作ノブを備え、
前記操作ノブが揺動操作されると、前記揺動操作の方向に対応する側のターンシグナルが点滅し、
前記操作ノブが前記第2の操作方向に操作されると、前記ターンシグナルは、前記揺動操作による前記ターンシグナルの点滅とは異なる点灯形態を実行し、
前記操作ノブは、前記第1の操作方向、前記押し込み方向、又は前記第2の操作方向に操作された後に、前記操作ノブの非操作時に前記操作ノブが保持される中立位置へ復帰する、ターンシグナルスイッチ装置。
【請求項2】
前記第2の操作方向は、前記第1の操作方向に対して垂直な方向である、請求項1に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項3】
前記操作ノブが前記第1の操作方向に関して前記中立位置にあるときに、前記操作ノブの前記第2の操作方向への操作が可能となる、請求項1に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項4】
車両のハンドルバーに取り付けられるスイッチハウジングを備え、
前記操作ノブは前記スイッチハウジングから突出するように配置され、
前記第2の操作方向は前記ハンドルバーに近付く方向である、請求項1に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項5】
前記操作ノブは前記ハンドルバーよりも下方に位置し、前記第2の操作方向は前記操作ノブを上昇させる方向である、請求項4に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項6】
車両の右側における前記ターンシグナルを点滅させる際に押圧が必要な第1の導通部と、前記車両の左側における前記ターンシグナルを点滅させる際に押圧が必要な第2の導通部と、前記ターンシグナルの点滅をキャンセルさせる際に押圧が必要な第3の導通部と、前記揺動操作による前記ターンシグナルの点滅とは異なる点灯形態を実行する際に押圧が必要な第4の導通部とをさらに有し、
前記操作ノブが前記第1の操作方向に沿って前記車両の右側に揺動操作された際には前記第1の導通部が押圧され、
前記操作ノブが前記第1の操作方向に沿って前記車両の左側に揺動操作された際には前記第2の導通部が押圧され、
前記操作ノブが押し込み操作された際には前記第3の導通部が押圧され、
前記操作ノブが前記第2の操作方向に操作された際には前記第4の導通部が押圧される、請求項1に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項7】
前記第2の操作方向への操作入力を、前記押し込み方向の入力へ変換させる変換機構をさらに有し、前記第1の導通部、前記第2の導通部、前記第3の導通部、及び前記第4の導通部は、同一の基板に設けられている、請求項6に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項8】
前記スイッチハウジングの壁部には貫通穴が設けられ、
前記操作ノブは前記操作ノブから延出するアクチュエータを有し、
前記アクチュエータは前記貫通穴を挿通するように配置され、
前記貫通穴は、前記第1の操作方向に沿うように開口する第1の開口部と、前記第2の操作方向に沿うように開口する第2の開口部とを有し、
前記第1の開口部と前記第2の開口部とは交差するように設けられる、請求項4に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項9】
前記第1の開口部と前記第2の開口部の接続箇所はR形状に成形される、請求項8に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項10】
前記第1の開口部と前記第2の開口部の接続箇所は斜辺をなすように成形される、請求項8に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【請求項11】
前記ターンシグナルの点滅とは異なる機能は、車両の両側の前記ターンシグナルを同時に点滅させるハザード機能である、請求項1に記載のターンシグナルスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンシグナルスイッチ装置に関し、特に、ターンシグナルの点滅以外の機能も実行可能なターンシグナルスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のハンドルバーに取り付けられるスイッチハウジングには、ターンシグナルスイッチが配置される。ターンシグナルスイッチは、通常、ハンドルバーの延伸方向と略平行に揺動操作可能な操作ノブを有し、運転手の指による操作ノブの揺動操作に応じ、操作方向に対応する側の車両のターンシグナルを点滅させる。また、操作ノブは押し込み操作も可能に構成され、押し込み操作に応じてターンシグナルの点滅をキャンセルする。
【0003】
ところで、二輪車等においても、車両の両側のターンシグナルを同時に点滅させるハザード機能を実行するためのハザードスイッチの設定に対する需要が高まり、スイッチハウジングへ新たにハザードスイッチを設置することがある。一方、近年の小型化、軽量化のニーズに応えてスイッチハウジングも小型化している。また、運転モード切り替えのためのスイッチやトラクションコントロールのオンオフのためのスイッチをスイッチハウジングへ配置することも求められている。したがって、スイッチハウジングにおいてハザードスイッチの設置場所を確保するのは困難である。
【0004】
そこで、スイッチハウジングへハザードスイッチを設置することなく、ターンシグナルスイッチの操作ノブの操作にハザード機能のオン/オフ操作を割り当てることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、操作ノブの複数回の押し込み操作や操作ノブの所定の時間に亘る継続的な押し込み操作がハザード機能のオン/オフ操作として設定されているため、ハザード機能を実行するためには一定の時間を要し、運転手がハザード機能を即座に実行したいときに、その要望に応えられないという問題がある。
【0007】
また、ハザード機能のオン/オフ操作とターンシグナルの点滅のキャンセルの両方を操作ノブの押し込み操作で実現するため、誤操作が起きやすいという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、ターンシグナルの点滅とは異なる機能を即座に実行できるとともに、誤操作を防ぐことができるターンシグナルスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のターンシグナルスイッチ装置は、第1の操作方向に沿った揺動操作、押し込み方向への操作、並びに、前記第1の操作方向及び押し込み方向のいずれとも異なる第2の操作方向への操作が可能に構成された操作ノブを備え、前記操作ノブが揺動操作されると、前記揺動操作の方向に対応する側のターンシグナルが点滅し、前記操作ノブが前記第2の操作方向に操作されると、前記ターンシグナルは、前記揺動操作による前記ターンシグナルの点滅とは異なる点灯形態を実行し、前記操作ノブは、前記第1の操作方向、前記押し込み方向、又は前記第2の操作方向に操作された後に、前記操作ノブの非操作時に前記操作ノブが保持される中立位置へ復帰する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作ノブが第2の操作方向に操作されると、ターンシグナルは操作ノブの揺動操作によるターンシグナルの点滅とは異なる点灯形態を実行するため、運転手は、操作ノブの複数回の押し込み操作や操作ノブの所定の時間に亘る継続的な押し込み操作を行うことなく操作ノブを第2の操作方向に操作するだけで、操作ノブの揺動操作によるターンシグナルの点滅とは異なるターンシグナルの点灯形態を即座に実行できる。また、第1の操作方向及び押し込み方向のいずれとも異なる第2の操作方向に操作ノブが操作されると操作ノブの揺動操作によるターンシグナルの点滅とは異なるターンシグナルの点灯形態を実行するため、当該機能を実行させようとしてターンシグナルの点滅やそのキャンセルを行ってしまうという誤操作を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るターンシグナルスイッチ装置が配置されるスイッチハウジングの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るターンシグナルスイッチ装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】ターンシグナルスイッチ装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図4】ターンシグナルスイッチ装置の構成を概略的に示す側面図である。
【
図5】ターンシグナルスイッチ装置が有する回路基板の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図6】操作ノブの揺動操作について説明する図である。
【
図7】操作ノブの押し込み操作について説明する図である。
【
図8】操作ノブの上昇操作について説明する図である。
【
図9】スイッチハウジングのフロントハウジングを車両後方から眺めた図である。
【
図10】操作ノブの操作方向の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るターンシグナルスイッチ装置の一部であるスイッチハウジングの構成を概略的に示す斜視図である。なお、以降の
図1乃至
図5、
図9、
図10において、図中のX方向はハンドルバー11の軸線に沿った方向を示し、図中のY方向はX方向に直交する。なお、本実施の形態では、Y方向がハンドルバー11を備える車両の上下方向を示す。また、図中のZ方向は、X方向およびY方向に直交する方向であり、本実施の形態では車両の前後方向に相当する。
【0014】
図1(A)において、ケース状のスイッチハウジング10は、車両の進行方向に関して運転手側に配置されるフロントハウジング12と、車両の進行方向に関して運転手と反対側に配置されるリアハウジング13とを有する。フロントハウジング12とリアハウジング13はビス(図示しない)によって互いに締結されることにより、二輪車等の車両(図示しない)のハンドルバー11を挟み込んで該ハンドルバー11に固定される。また、フロントハウジング12からターンシグナルスイッチ装置14の操作ノブ15が車両後方へ向けて突出する。なお、スイッチハウジング10はターンシグナルスイッチ装置14の構成要素であってもよく、この場合、操作ノブ15はスイッチハウジング10に組付けられるとも言える。
【0015】
操作ノブ15は、ハンドルバー11の延伸方向(以下、「揺動方向」という。)(第1の操作方向)に沿って揺動操作が可能且つ車両前方へ押し込み操作が可能に構成される。また、操作ノブ15は、揺動方向や操作ノブ15の押し込み方向とは異なる、揺動方向に垂直且つ車両の上方へ向けた方向(以下、「上昇方向」という。)(第2の操作方向)へ操作可能に構成される(
図1(B))。なお、操作ノブ15の上昇方向は、車両の上下方向と正確には一致しないが、以降、上昇方向への操作を「上昇操作」と称する。また、操作ノブ15はハンドルバー11の中心軸16よりも下方に位置し、操作ノブ15を上昇操作すると、操作ノブ15はハンドルバー11の中心軸16に近付く。
【0016】
なお、以降の各図において、操作ノブ15の揺動方向への操作を黒塗りの矢印で示し、操作ノブ15の押し込み操作をハッチング付きの矢印で示し、操作ノブ15の上昇操作を白抜きの矢印で示す。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に係るターンシグナルスイッチ装置14の構成を概略的に示す斜視図であり、
図3は、ターンシグナルスイッチ装置14の構成を概略的に示す平面図であり、
図4は、ターンシグナルスイッチ装置14の構成を概略的に示す側面図である。ターンシグナルスイッチ装置14はフロントハウジング12とリアハウジング13に挟み込まれることによってスイッチハウジング10に覆われるが、
図2乃至
図4では、スイッチハウジング10の図示が省略される。
【0018】
図2乃至
図4において、ターンシグナルスイッチ装置14は、操作ノブ15と、操作ノブ15に組付けられるスライド部17と、スライド部17を保持するホルダ18を有する。さらに、ターンシグナルスイッチ装置14は、4つの接点スイッチ19~22を有する回路基板23と、各接点スイッチ19~22に対応する4つのプッシュロッド24~27と、を有する。なお、スライド部17と、ホルダ18と、プッシュロッド24~27とを総じてアクチュエータと称することがある。本実施の形態におけるアクチュエータは、操作ノブ15に対して入力された操作を接点スイッチ19~22に伝達する。
【0019】
ホルダ18はスライド部17をZ方向(車両前方)へスライド可能に保持する。また、ホルダ18はY方向と略平行に突出する円柱状の回転軸18aを有し、スイッチハウジング10によって回転軸18a回りに回転可能に保持される。なお、ホルダ18は車両前方へは移動しない。
【0020】
また、スライド部17はX方向に突出する円柱状の回転軸17aを有し、ホルダ18によって回転軸17a回りに回転可能に保持される。一方、操作ノブ15が後述するように揺動操作されると、後述するように、スライド部17とホルダ18はともに揺動する。
【0021】
さらに、
図11に示すように、ターンシグナルスイッチ装置14では、ホルダ18と回路基板23の間にケース33が介在し、ケース33はスイッチハウジング10に対して固定される。また、ホルダ18とケース33との間に、車両の前方向へ突出する付勢ロッド28が設けられている。なお、ホルダ18と付勢ロッド28の間にはスライド部17が介在する。また、
図2乃至
図4では、理解を容易にするために、ケース33の図示が省略されている。
【0022】
付勢ロッド28は内部にバネ34を有し、付勢ロッド28の車両前方側の端部はケース33の摺動面33aに当接する。摺動面33aは車両前方へ向けて凹む、断面半球状の凹面であり、操作ノブ15が後述する中立位置に位置する際、付勢ロッド28の先端が嵌合する中立凹部33bを有する。また、接点スイッチ19~22は、いわゆるラバーコンタクトスイッチによって構成される。
【0023】
後述するように、操作ノブ15の揺動操作又は押し込み操作が行われる際に付勢ロッド28のバネ34や各接点スイッチ19~22が圧縮されると、バネ34や各接点スイッチ19~22の復元力に起因してホルダ18とともに操作ノブ15を車両後方へ押し戻す付勢力が発生する。この付勢力により、運転手による操作ノブ15の揺動操作又は押し込み操作が解除されると、操作ノブ15は車両後方へ移動して揺動操作又は押し込み操作が行われる前の位置に復帰する。
【0024】
具体的には、操作ノブ15の押し込み操作が行われると、スライド部17が車両前方へスライドして付勢ロッド28のバネ34だけでなく接点スイッチ21も圧縮されて付勢ロッド28及び接点スイッチ21が付勢力を発生する。一方、ホルダ18は車両前方へ移動せず、また、揺動もしないため、接点スイッチ20,21は圧縮されず、付勢力を発生しない。そして、ホルダ18の回転軸18aは付勢ロッド28の接点スイッチ21が付勢力の作用方向上に存在する一方、作用方向が回転軸18aに対してオフセットする接点スイッチ20,21の付勢力が発生しないため、回転軸18a回りのモーメントが発生しない。その結果、ホルダ18は回転軸18a回りに回転することなく車両後方へ向けてそのまま押し戻されて、ホルダ18とともに操作ノブ15は押し込み操作前の位置へ復帰する。
【0025】
一方、操作ノブ15の揺動操作が行われると、ホルダ18の揺動によって接点スイッチ19,20のうち、揺動操作の方向に対応する側の接点スイッチのみが圧縮されるため、当該接点スイッチのみが付勢力を発生させる。操作ノブ15の揺動操作が解除される際に、この付勢力は回転軸18a回りのモーメントを発生させてホルダ18を回転軸18a回りに回転させる。そして、ホルダ18とともに回転する付勢ロッド28の先端が摺動面33aの中立凹部33bに嵌合すると、ホルダ18の回転が止まり、操作ノブ15が中立位置に復帰する。このような、操作ノブ15の押し込み操作前の位置への復帰や中立位置への復帰を、本実施の形態ではオートリターン機能と称する。
【0026】
回路基板23は、スライド部17やホルダ18よりも車両前方に配置され、小型化や部品点数削減を達成するために、
図5に示すように、4つの接点スイッチ19~22を有する。各接点スイッチ19~22は、同一の回路基板23における車両後方側の配置面23aへスライド部17やホルダ18と対向するように配置される。なお、各接点スイッチ19~22を、例えば、マイクロスイッチで構成することにより、配置面23aにおいて同一方向を指向しないように配置してもよい。さらに、各接点スイッチ19~22を同一の回路基板23に配置せず、個別のターンシグナルスイッチ装置14の構成要素やスイッチハウジング10の各部に配置してもよい。
【0027】
配置面23aにおいて、接点スイッチ19は車両左方側に配置され、接点スイッチ20は接点スイッチ19よりも車両右方側に配置され、接点スイッチ21は接点スイッチ19と接点スイッチ20の間に挟まれるように配置され、接点スイッチ22は接点スイッチ21の下方に配置される。各接点スイッチ19~22の機能については後述する。
【0028】
回路基板23と、スライド部17やホルダ18との間には4つのプッシュロッド24~27がZ方向に沿って延伸するように配置される。具体的には、プッシュロッド24が、接点スイッチ19とホルダ18の左方に突出するフランジ18bの間に配置される。また、プッシュロッド25が、接点スイッチ20とホルダ18の右方に突出するフランジ18cの間に配置され、プッシュロッド26が、接点スイッチ21とスライド部17の車両前方側の端部17bの間に配置され、プッシュロッド27が、接点スイッチ22とホルダ18の間に配置される。さらに、プッシュロッド27の車両後方側の端部には斜面27aが形成され、該斜面27aとスライド部17から車両前方へ突出するフランジ17cの間には、Y方向と略平行に延伸するように配置される中間ロッド29が配置される。プッシュロッド27の斜面27aは上部が車両前方へ向けて傾斜するように形成される。
【0029】
各接点スイッチ19~22は車両の制御手段、例えば、ECU(図示しない)に接続され、各接点スイッチ19~22が各プッシュロッド24~27によって車両前方へ押圧されると、各接点スイッチ19~22は押圧された旨を伝える信号(以下、「押圧信号」という。)をECUへ送信する。また、ECUは車両の左右両側にそれぞれ配置されたターンシグナル(図示しない)と接続され、各接点スイッチ19~22から送信された押圧信号に応じて、各ターンシグナルの点灯、消灯を制御する。
【0030】
図6は、操作ノブ15の揺動操作について説明する図である。
図6では、スイッチハウジング10やハンドルバー11の図示が省略されてターンシグナルスイッチ装置14のみが示される。また、
図6は、ターンシグナルスイッチ装置14を車両の上方から眺めた場合を示し、図の左方向が車両の前方向に該当し、図の右方向が車両の後方向に該当し、図の上方向が車両の右方向に該当し、図の下方向が車両の左方向に該当する。
【0031】
図6において、上述したように、ホルダ18は、スイッチハウジング10によって回転軸18a回りに回転可能に保持される。しかしながら、スライド部17は、ホルダ18に対して回転軸18a回りに回転不可能に保持され、回転軸18a回りにホルダ18と一体的に回転する。そして、回転軸18aは車両の上下方向と略平行に突出する。したがって、スライド部17及びホルダ18は車両の左右方向に揺動可能であり、車両の左右方向はハンドルバー11の延伸方向と略平行であるため、スライド部17及びホルダ18はハンドルバー11の延伸方向に沿って揺動可能となり、これにより、スライド部17と一体化している操作ノブ15が揺動方向に揺動可能となる。また、ターンシグナルスイッチ装置14は、操作ノブ15が左右方向のいずれにも揺動操作されていないとき(非操作時)、操作ノブ15を中立位置に戻す、上述したオートリターン機能を有する。なお、操作ノブ15の中立位置とは、操作ノブ15の非操作時に当該操作ノブ15が保持される位置である。
【0032】
ターンシグナルスイッチ装置14において、操作ノブ15が中立位置にある場合、ホルダ18の左右のフランジ18b,18cのいずれもが車両前方に移動しないため、各フランジ18b,18cはプッシュロッド24、25を車両前方に移動させず、プッシュロッド24、25のいずれも接点スイッチ19,20を押圧しない(
図6(A))。
【0033】
操作ノブ15が右方向に揺動操作された場合、回転軸18a回りに回転するホルダ18のフランジ18cが車両前方に移動してプッシュロッド25を車両前方に移動させる(
図6(B))。これにより、接点スイッチ20(第1の導通部)がプッシュロッド25によって押圧され、押圧信号をECUに送信する。ECUは接点スイッチ20から押圧信号を受信すると、車両の右側のターンシグナルを点滅させる。
【0034】
一方、操作ノブ15が左方向に揺動操作された場合、回転軸18a回りに回転するホルダ18のフランジ18bが車両前方に移動してプッシュロッド24を車両前方に移動させる(
図6(C))。これにより、接点スイッチ19(第2の導通部)がプッシュロッド24によって押圧され、押圧信号をECUに送信する。ECUは接点スイッチ19から押圧信号を受信すると、車両の左側のターンシグナルを点滅させる。
【0035】
すなわち、操作ノブ15は揺動操作される方向に対応する側のターンシグナルを点滅させる。なお、操作ノブ15の左右方向への揺動操作が解除されると、上述したオートリターン機能によって操作ノブ15は中立位置へ復帰する。
【0036】
図7は、操作ノブ15の押し込み操作について説明する図である。
図7でも、ターンシグナルスイッチ装置14を車両の上方から眺めた場合が示され、
図7の上下方向や左右方向は、
図6の上下方向や左右方向と同じである。
【0037】
図7において、上述したように、ホルダ18はスライド部17を車両の前後方向へスライド可能に保持するため、スライド部17と一体化している操作ノブ15の車両前方への押し込み操作が可能となる。
【0038】
ターンシグナルスイッチ装置14において、操作ノブ15が車両前方へ押し込み操作されていない場合、スライド部17は車両前方へ移動しないため、スライド部17はプッシュロッド26を車両前方に移動させず、プッシュロッド26は接点スイッチ21を押圧しない(
図7(A))。
【0039】
操作ノブ15が車両前方へ押し込み操作された場合、スライド部17が車両前方に移動してプッシュロッド26を車両前方に移動させる(
図7(B))。これにより、接点スイッチ21(第3の導通部)がプッシュロッド26によって押圧され、押圧信号をECUに送信する。ECUは接点スイッチ21から押圧信号を受信すると、車両のターンシグナルの点滅をキャンセルする。
【0040】
また、操作ノブ15の車両前方への押し込み操作が解除されると、上述したオートリターン機能によって操作ノブ15は押し込み操作が行われる前の位置に復帰する。
【0041】
図8は、操作ノブ15の上昇操作について説明する図である。
図8でも、ターンシグナルスイッチ装置14のみが示されるが、ターンシグナルスイッチ装置14を車両の上方から眺めた場合ではなく、ターンシグナルスイッチ装置14を車両の左方から眺めた場合が示される。また、
図8において、図の左方向が車両の前方向に該当し、図の右方向が車両の後方向に該当し、図の上方向が車両の上方向に該当し、図の下方向が車両の下方向に該当する。
【0042】
図8において、スライド部17は、ホルダ18によって回転軸17a回りに回転可能に保持される。一方、ホルダ18は、スイッチハウジング10に対して回転軸17a回りに回転不可能に保持される。そして、回転軸17aは車両の左右方向と略平行に突出する。したがって、スライド部17は車両の上下方向に揺動可能であり、これにより、スライド部17と一体化している操作ノブ15が車両の上下方向に揺動可能となる。なお、操作ノブ15が上昇操作されると、回転軸17aに関して操作ノブ15とは反対側(車両前方)に位置するスライド部17のフランジ17cは、スライド部17の回転軸17a回りの回転によって車両の下方向へ移動する。
【0043】
ターンシグナルスイッチ装置14において、操作ノブ15が上昇操作されていない場合、スライド部17は回転軸17a回りに回転しないため、スライド部17のフランジ17cは車両の下方向へ移動しない。したがって、フランジ17cは中間ロッド29を車両下方に移動させず、中間ロッド29がプッシュロッド27の斜面27aを車両下方に押圧しない。これにより、プッシュロッド27は車両前方に移動せず、プッシュロッド27は接点スイッチ22を押圧しない(
図8(A))。
【0044】
操作ノブ15が上昇操作された場合、スライド部17は回転軸17a回りに回転し、スライド部17のフランジ17cが車両の下方向へ移動する。これにより、フランジ17cは中間ロッド29を車両下方に移動させ、中間ロッド29がプッシュロッド27の斜面27aを車両下方に押圧する。ここで、上述したように、斜面27aは上部が車両前方へ向けて傾斜するように形成されているため、中間ロッド29が斜面27aを車両下方に押圧すると、中間ロッド29の車両下方への移動に伴い、斜面27aが車両前方に移動して、結果、プッシュロッド27が車両前方に移動する(
図8(B))。これにより、接点スイッチ22(第4の導通部)がプッシュロッド27によって押圧され、押圧信号をECUに送信する。ECUは接点スイッチ22から押圧信号を受信すると、ハザード機能を実行して車両の両側のターンシグナルを同時に点滅させる。なお、接点スイッチ22の押圧に対応する機能はハザード機能に限られず、接点スイッチ20や接点スイッチ19の押圧に対応するターンシグナルの点滅とは異なるターンシグナルの点灯機能や点滅機能であればよい。
【0045】
また、操作ノブ15の上昇操作が解除されると、押圧によって圧縮されていた接点スイッチ22の付勢力は回転軸17a回りのモーメントを発生させてスライド部17を回転軸17a回りに回転させる。これにより、操作ノブ15は車両下方へ移動して上昇操作が行われる前の位置に復帰する。なお、ターンシグナルスイッチ装置14のスライド部17のフランジ17c、プッシュロッド27の斜面27aや中間ロッド29は、操作ノブ15の上昇操作をプッシュロッド27の車両前方への移動(押し込み方向と平行な移動)に変換する変換機構を構成する。
【0046】
図9は、スイッチハウジング10のフロントハウジング12を車両後方から眺めた図である。フロントハウジング12は、その壁部にスイッチハウジング10に内蔵されるターンシグナルスイッチ装置14のスライド部17を車両後方へ向けて突出させるための貫通穴32を車両後方側の壁部に有し、スライド部17は貫通穴32を挿通してスイッチハウジング10の外部(車両後方)へ向けて突出する。なお、スライド部17の車両後方側の端部には操作ノブ15が設けられる。貫通穴32は、揺動方向に沿うように開口する揺動開口部32a(第1の開口部)と、揺動方向に垂直な方向に沿うように開口する上昇開口部32b(第2の開口部)とを有し、揺動開口部32aと上昇開口部32bは交差するように配置される(
図9(A))。
【0047】
上述したように、ターンシグナルスイッチ装置14は操作ノブ15が揺動方向に揺動可能となるように構成されるが、操作ノブ15が揺動方向に揺動する際、操作ノブ15は揺動開口部32aによってガイドされる。
【0048】
また、ターンシグナルスイッチ装置14は操作ノブ15が車両の上下方向に揺動可能となるように構成されるが、操作ノブ15が車両の上下方向に揺動する際、操作ノブ15は上昇開口部32bによってガイドされる。ここで、上昇開口部32bは揺動開口部32aよりも上方にのみ形成され、揺動開口部32aよりも下方には形成されない。したがって、操作ノブ15が揺動方向に垂直な方向に操作される際、操作ノブ15は車両の下方へ移動することができず、車両の上方へのみ移動可能である。これにより、操作ノブ15は車両の上下方向に関して上昇操作のみが許容される。
【0049】
さらに、上昇開口部32bは、揺動開口部32aと操作ノブ15が中立位置となる箇所において交差する。したがって、操作ノブ15は揺動方向に関して中立位置にある場合のみ、上昇操作が許容される。
【0050】
また、操作ノブ15の揺動方向の操作から上昇操作へ円滑に移行できるように、揺動開口部32aと上昇開口部32bの接続箇所はR形状に成形されてもよく(
図9(B))、揺動開口部32aと上昇開口部32bの接続箇所は斜辺をなすように成形されてもよい(
図9(C))。
【0051】
本実施の形態によれば、ターンシグナルスイッチ装置14において、操作ノブ15は揺動方向や操作ノブ15の押し込み方向とは異なる上昇方向への操作が可能に構成される。操作ノブ15が上昇方向に操作されると、ターンシグナルの点滅とは異なる機能であるハザード機能を実行するため、運転手は、操作ノブ15の複数回の押し込み操作や操作ノブ15の所定の時間に亘る継続的な押し込み操作を行うことなく操作ノブ15を上昇方向に操作するだけでハザード機能を即座に実行できる。
【0052】
また、揺動方向及び押し込み方向のいずれとも異なる上昇方向に操作ノブ15が操作されるとハザード機能を実行するため、ハザード機能を実行させようとしてターンシグナルの点滅やそのキャンセルを行ってしまうという誤操作を防ぐことができる。
【0053】
ところで、操作ノブ15はハンドルバー11の中心軸16よりも下方に位置するため、運転手がハンドルバー11を握る手の指で操作ノブ15を揺動方向に沿って揺動操作する際、不用意に操作ノブ15へ下方への荷重をかけるおそれがある。しかしながら、本実施の形態では、上述したように、操作ノブ15の車両の下方への移動が許容されず、ハザード機能を実行するためには操作ノブ15をハンドルバー11に近づけるように上昇操作する必要があるため、運転手がターンシグナルを点滅させるために操作ノブ15を揺動操作する際、誤ってハザード機能を実行させてしまうという誤操作も防ぐことができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0055】
例えば、操作ノブ15の上昇方向は揺動方向に対して垂直であるが、操作ノブ15の上昇方向は揺動方向に対して必ずしも垂直である必要はなく、車両の上方へ向けた方向であって、揺動方向と異なる方向であればよい。例えば、
図10に示すように、実線で示す操作ノブ15の上昇方向D
1が揺動方向に対して垂直な方向D
2に対して所定の角度θほど傾いていてもよく、例えば、所定の角度θは5°以上である。この場合、操作ノブ15の操作性向上の観点から、上昇方向D
1はハンドルバー11を握る運転手の手に近付くように揺動方向の垂直方向D
2に対して傾斜するのが好ましい。
【0056】
また、本実施の形態では、操作ノブ15が揺動方向や押し込み方向とは異なる上昇方向へ操作されると、ハザード機能が実行されたが、操作ノブ15が上昇方向へ操作されたときに実行される機能はハザード機能に限られず、例えば、車両のヘッドライトの光軸の向きを変更するディマー機能であってもよい。
【0057】
さらに、本発明が適用される車両は二輪車に限られず、二輪車以外の鞍乗り型車両にも適用可能である。なお、鞍乗り型車両とは、乗員が車体に跨って乗車する車両全般を含み、二輪車(自動二輪車や原動機付き自転車を含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)に分類される三輪車両や四輪車両を含む車両である。また、本発明は、車両ではなくてもハンドルバーを備える乗り物にも適用可能であり、例えば、スノーモービルや船舶にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 スイッチハウジング
11 ハンドルバー
12 フロントハウジング
14 ターンシグナルスイッチ装置
15 操作ノブ
17 スライド部
17c フランジ
18 ホルダ
19~22 接点スイッチ
23 回路基板
23a 配置面
27 プッシュロッド
27a 斜面
29 中間ロッド
32 貫通穴
32a 揺動開口部
32b 上昇開口部
33 ケース
34 バネ