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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150208
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F25B49/02 510K
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059195
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 潤己
(72)【発明者】
【氏名】池辺 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】花崎 友哉
(57)【要約】
【課題】フォーミング現象を精度よく推定できる冷凍装置を提供する。
【解決手段】冷凍装置は、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、アキュムレータ(24)の温度、アキュムレータ(24)の周囲温度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量、アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度のうちの少なくとも1つを示す指標を用いて、アキュムレータ(24)内のフォーミング現象の発生を判定する制御部(C)を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)およびアキュムレータ(24)を有し、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、
前記アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、
前記アキュムレータ(24)の温度、該アキュムレータ(24)の周囲温度、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量、前記アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度のうちの少なくとも1つを示す指標を用いて、前記アキュムレータ(24)内のフォーミング現象の発生を判定する制御部(C)とを備えている
冷凍装置。
【請求項2】
前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、前記指標とに基づく関係式に基づいて前記フォーミング現象の発生を判定する
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記関係式は、機械学習によって決定される
請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度と、該アキュムレータ(24)の周囲温度とに基づいて、前記アキュムレータ(24)の温度を求める
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記制御部(C)は、前記フォーミング現象の判定結果に基づいて前記冷媒回路(11)を制御する
請求項1~4のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)の液面高さと、前記フォーミング現象の判定結果とに基づいて前記冷媒回路(11)を制御する
請求項5に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍サイクルを行う冷凍装置が知られている。特許文献1に開示された冷凍装置の冷媒回路には、圧縮機の吸入側にアキュムレータが設けられる。この冷凍装置では、圧縮機の起動時やデフロスト運転の終了時において、冷媒回路の高圧圧力の冷媒をアキュムレータに導入する。これにより、アキュムレータの内圧が上昇するので、アキュムレータ内の液冷媒が気泡となる現象(フォーミング現象)を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-166183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したフォーミング現象は、必ずしもアキュムレータの内圧の影響のみならず、他の物理量の影響も受けて生じうる。このため、特許文献1の冷凍装置では、フォーミング現象が生じていないにも拘わらず、フォーミング現象を抑制する制御を実行することがあり、冷凍装置の効率が低下する可能性がある。加えて、フォーミング現象が生じているにも拘わらず、フォーミング現象を抑制する制御が実行できないこともあり、フォーミング現象に起因して圧縮機で液冷媒を圧縮したり、圧縮機内の油の濃度が低下したりすることがあった。
【0005】
本開示の目的は、フォーミング現象を精度よく推定できる冷凍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、冷凍装置を対象とし、
圧縮機(21)およびアキュムレータ(24)を有し、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、
前記アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、
前記アキュムレータ(24)の温度、該アキュムレータ(24)の周囲温度、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量、前記アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度のうちの少なくとも1つを示す指標を用いて、前記アキュムレータ(24)内のフォーミング現象の発生を判定する制御部(C)とを備えている。
【0007】
第1の態様では、制御部(C)が、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、他の指標とを用いて、アキュムレータ(24)内のフォーミング現象の発生を判定する。他の指標は、アキュムレータ(24)の温度、アキュムレータ(24)の周囲温度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度のうちの少なくとも1つを含む。これらに基づきフォーミング現象の発生を判定することで、フォーミング現象の発生を精度よく判定できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、前記指標とに基づく関係式に基づいて前記フォーミング現象の発生を判定する。
【0009】
第2の態様では、制御部(C)は、上記の関係式を用いることで、フォーミング現象の発生を精度よく判定できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記関係式は、機械学習によって決定される。
【0011】
第3の態様では、制御部(C)が、機械学習により決定された関係式を用いることで、フォーミング現象の発生をさらに精度よく判定できる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度と該アキュムレータ(24)の周囲温度とに基づいて、前記アキュムレータ(24)の温度を求める。
【0013】
第4の態様では、温度センサなどを用いなくても、アキュムレータ(24)の温度を推定できる。
【0014】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記制御部(C)は、前記フォーミング現象の判定結果に基づいて前記冷媒回路(11)を制御する。
【0015】
第5の態様では、制御部(C)がフォーミング現象の判定結果に基づいて冷媒回路(11)を制御することで、フォーミング現象の発生を速やかに解消できる。
【0016】
第6の態様は、第5の態様において、前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)の液面高さと、前記フォーミング現象の判定結果とに基づいて前記冷媒回路(11)を制御する。
【0017】
アキュムレータ(24)の液面高さは、圧縮機(21)に戻る液冷媒の量に影響を与える。第6の態様の制御部(C)は、フォーミング現象の判定結果に加えてアキュムレータ(24)内の液冷媒の高さを制御指標として冷媒回路(11)を制御する。このため、圧縮機(21)に液冷媒が戻りやすい運転条件下において、このことを抑制する制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る空気調和装置の配管系統図である。
図2図2は、空気調和装置の主要機器を示すブロック図である。
図3図3は、アキュムレータおよび圧縮機を拡大した概略構成図である。
図4図4は、フォーミング現象を判定する制御のフローチャートである。
図5図5は、フォーミング現象の判定結果を用いた冷媒回路の制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0020】
《実施形態》
(1)空気調和装置の概要
空気調和装置(10)は、本開示の冷凍装置の一例である。図1は、空気調和装置(10)の配管系統図である。空気調和装置(10)は、対象空間の空気の温度を調節する。本例の対象空間は、ビルなどの室内空間である。空気調和装置(10)は、対象空間の冷房および暖房を行う。本例の空気調和装置(10)は、1つの熱源ユニット(20)と、複数の利用ユニット(40)と、連絡配管(12)と、制御部(C)とを有する。複数の利用ユニット(40)と熱源ユニット(20)とは、連絡配管(12)を介して互いに接続される。この接続により、閉回路である冷媒回路(11)が構成される。
【0021】
冷媒回路(11)は、熱源ユニット(20)に設けられる熱源回路(20a)と、各利用ユニット(40)にそれぞれ設けられる利用回路(40a)とを含む。連絡配管(12)は、第1連絡配管(13)と第2連絡配管(14)とを含む。
【0022】
第1連絡配管(13)は、液連絡配管である。第1連絡配管(13)は、第1主管(13a)と、第1主管(13a)から分岐する複数の第1分岐管(13b)とを含む。第1主管(13a)の一端は、液閉鎖弁である第1閉鎖弁(15)を介して熱源回路(20a)に接続する。複数の第1分岐管(13b)のそれぞれの一端は、第1主管(13a)と接続する。複数の第1分岐管(13b)のそれぞれの他端は、対応する利用回路(40a)に接続する。
【0023】
第2連絡配管(14)は、ガス連絡配管である。第2連絡配管(14)は、第2主管(14a)と、第2主管(14a)から分岐する複数の第2分岐管(14b)とを含む。第2主管(14a)の一端は、ガス閉鎖弁である第2閉鎖弁(16)を介して熱源ユニット(20)に接続する。複数の第2分岐管(14b)のそれぞれの一端は、第2主管(14a)と接続する。複数の第2分岐管(14b)のそれぞれの他端は、対応する利用ユニット(40)に接続する。
【0024】
(1-1)熱源ユニット
熱源ユニット(20)は、室外に配置される室外ユニットである。熱源ユニット(20)は、例えばビルなどの屋上や地上に配置される。
【0025】
熱源ユニット(20)は、圧縮機(21)、熱源熱交換器(22)、熱源ファン(23)、およびアキュムレータ(24)を有する。熱源ユニット(20)は、冷媒の流路を切り換える四方切換弁(25)と、熱源膨張弁(26)とを有する。
【0026】
圧縮機(21)は、吸入した冷媒を圧縮する。圧縮機(21)は、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(21)は、スクロール型の回転式圧縮機である。圧縮機(21)は、揺動ピストン式、ローリングピストン式、スクリュー式などの他の回転式圧縮機でああってもよい。圧縮機(21)は、インバータ装置により運転周波数(回転数)が可変に構成される。
【0027】
熱源熱交換器(22)は、室外熱交換器である。熱源熱交換器(22)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。熱源熱交換器(22)は、その内部を流れる冷媒と室外空気とを熱交換させる。熱源熱交換器(22)は、本開示の放熱器および蒸発器として機能する。
【0028】
熱源ファン(23)は、室外において熱源熱交換器(22)の近傍に配置される。熱源ファン(23)は、熱源熱交換器(22)を通過する空気を搬送する。
【0029】
四方切換弁(25)は、切換機構の一例である。四方切換弁(25)は、冷房サイクルである第1冷凍サイクルと、暖房サイクルである第2冷凍サイクルとを切り換えるように、冷媒回路(11)の流路を変更する。四方切換弁(25)は、第1ポート(P1)、第2ポート(P2)、第3ポート(P3)、および第4ポート(P4)を有する。四方切換弁(25)の第1ポート(P1)は、圧縮機(21)の吐出部と繋がる。四方切換弁(25)の第2ポート(P2)は、アキュムレータ(24)を介して圧縮機(21)の吸入部と繋がる。四方切換弁(25)の第3ポート(P3)は、第2閉鎖弁(16)を介して第2連絡配管(14)と繋がる。四方切換弁(25)の第4ポート(P4)は、熱源熱交換器(22)のガス端と繋がる。
【0030】
四方切換弁(25)は、第1状態と第2状態とに切り換わる。第1状態(図1の実線で示す状態)の四方切換弁(25)は、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とを連通し且つ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とを連通する。第2状態(図1の破線で示す状態)の四方切換弁(25)は、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とを連通し、第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とを連通する。
【0031】
アキュムレータ(24)は、冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離する。アキュムレータ(24)は、中空の円筒状の容器である。アキュムレータ(24)には、戻し管(65)が接続される。戻し管(65)には、第1開閉弁(66)が設けられる。第1開閉弁(66)は、電磁開閉弁であるが、開度が調節可能な電動弁であってもよい。
【0032】
熱源膨張弁(26)は、冷媒を減圧する。熱源膨張弁(26)は、室外膨張弁である。熱源膨張弁(26)は、熱源回路(20a)において、第1閉鎖弁(15)と熱源熱交換器(22)の間に配置される。熱源膨張弁(26)は、開度が調節可能な電子膨張弁である。熱源膨張弁(26)は、本開示の減圧弁として機能する。
【0033】
熱源ユニット(20)は、油戻し機構を有する。油戻し機構は、油分離器(31)と、油管(32)と、第2開閉弁(33)と、キャピラリーチューブ(34)とを有する。油分離器(31)は、圧縮機(21)の吐出部に設けられる。油分離器(31)は、圧縮機(21)から吐出された冷媒中から油を分離する。油管(32)は、その流入端が油分離器(31)に接続し、その流出端が圧縮機(21)の吸入管(64)と連通する。第2開閉弁(33)は、油管(32)に設けられる。第2開閉弁(33)は、電磁開閉弁であるが、開度が調節可能な電動弁であってもよい。キャピラリーチューブ(34)は、油管(32)に設けられる。キャピラリーチューブ(34)は、減圧部の一例である。減圧部は、開度が調節可能な電動弁(膨張弁)であってもよい。
【0034】
熱源ユニット(20)は、制御部(C)に含まれる第1制御装置(C1)を有する。
【0035】
(1-2)利用ユニット
利用ユニット(40)は、ビルなどの室内に設置される室内ユニットである。利用ユニット(40)は、利用膨張弁(41)、利用熱交換器(42)、および利用ファン(43)を有する。
【0036】
利用膨張弁(41)は、冷媒を減圧する。利用膨張弁(41)は、室内膨張弁である。利用膨張弁(41)は、利用回路(40a)における利用熱交換器(42)の液側の流路に配置される。利用膨張弁(41)は、開度が調節可能な電子膨張弁である。利用膨張弁(41)は、本開示の減圧弁として機能する。
【0037】
利用熱交換器(42)は、室内熱交換器である。利用熱交換器(42)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。利用熱交換器(42)は、その内部を流れる冷媒と室内空気とを熱交換させる。利用熱交換器(42)は、本開示の蒸発器および放熱器として機能する。
【0038】
利用ファン(43)は、室内において利用熱交換器(42)の近傍に配置される。利用ファン(43)は、利用熱交換器(42)を通過する空気を搬送する。
【0039】
利用ユニット(40)は、制御部(C)に含まれる第2制御装置(C2)を有する。各利用ユニット(40)の第2制御装置(C2)と、第1制御装置(C1)とは、第1通信線(W1)を介して互いに接続される。第1通信線(W1)は、有線または無線である。
【0040】
(1-3)圧縮機の詳細
図3に示すように、圧縮機(21)は、ケーシング(50)と、ケーシング(50)の内部に収容される電動機(51)および圧縮機構(52)を有する。圧縮機(21)は、電動機(51)と圧縮機構(52)とを連結する回転軸(53)を有する。ケーシング(50)は、中空の縦長の容器である。ケーシング(50)の内部は、圧縮機構(52)から圧縮された吐出冷媒が満たされる。圧縮機(21)は、いわゆる高圧ドーム型である。ケーシング(50)の内部には、吐出冷媒が流れる内部流路(54)が形成される。ケーシング(50)の外部は、外気雰囲気となる。
【0041】
電動機(51)は、ステータ(51a)とロータ(51b)とを有する。ステータ(51a)は、ケーシング(50)の内周面に固定される。ステータ(51a)は、ステータコアと、ステータコアに巻回されるコイルとを有する(図示省略)。ロータ(51b)は、ステータ(51a)の内部に配置され、回転軸(53)と連結する。電動機(51)では、コイルが通電することで回転磁界が形成される。この回転磁界によりロータ(51b)および回転軸(53)が回転する。
【0042】
圧縮機構(52)は、回転軸(53)によって駆動される。圧縮機構(52)は、その内部の圧縮室において冷媒を圧縮する。圧縮機構(52)には、圧縮室で圧縮した冷媒が吐出される吐出ポート(52a)が形成される。
【0043】
ケーシング(50)の胴部(50a)には、吐出管(55)が接続される。吐出管(55)の入口端はケーシング(50)の内部に連通し、吐出管(55)の出口端は冷媒回路(11)の高圧ガスラインと繋がる。
【0044】
ケーシング(50)の内部には、圧縮機構(52)の吐出ポート(52a)から吐出管(55)までの間に内部流路(54)が形成される。圧縮機構(52)の吐出ポート(52a)から吐出された冷媒は、内部流路(54)を通過して吐出管(55)に送られる。
【0045】
ケーシング(50)の底部には、油貯まり部(56)が形成される。油貯まり部(56)には、冷凍機油が貯まる。冷凍機油は、回転軸(53)に形成された油通路を介して圧縮機構(52)や軸受け(図示省略)に供給される。
【0046】
(1-4)アキュムレータの詳細
図3に示すように、アキュムレータ(24)の内部には、ガス貯留部(61)と液貯留部(62)とが形成される。ガス貯留部(61)は、アキュムレータ(24)の内部空間の上部に位置し、液貯留部(62)は、アキュムレータ(24)の内部空間の下部あるいは底部に位置する。アキュムレータ(24)には、流入管(63)と吸入管(64)と戻し管(65)とが接続する。
【0047】
流入管(63)は、蒸発器を通過した冷媒が流れる。流入管(63)は、アキュムレータ(24)の頂部を貫通する。流入管(63)の流入端は、冷媒回路(11)の低圧ガスラインと繋がる。厳密には、流入管(63)の流入端は、四方切換弁(25)の第2ポート(P2)と繋がる。流入管(63)の流出端は、アキュムレータ(24)の上部に位置し、ガス貯留部(61)と連通する。
【0048】
吸入管(64)は、アキュムレータ(24)で分離された後のガス冷媒が流出する。吸入管(64)は、アキュムレータ(24)の底部を貫通する。吸入管(64)の流入端は、アキュムレータ(24)の上部に位置し、ガス貯留部(61)と連通する。吸入管(64)の流出端は、圧縮機(21)の圧縮機構(52)の吸入ポート(図示省略)と直に繋がる。
【0049】
戻し管(65)は、アキュムレータ(24)内の液冷媒を吸入管(64)に送る。戻し管(65)は、戻し流路(65)の一例である。戻し管(65)は、アキュムレータ(24)で分離された後の液冷媒が流れる。加えて、戻し管(65)は、アキュムレータ(24)に残る冷凍機油が流れる。戻し管(65)の流入端は、アキュムレータ(24)の底部に位置し、液貯留部(62)と連通する。戻し管(65)の流入端は、アキュムレータ(24)の底部に開口していなくてもよく、底部よりも上方に位置してもよい。戻し管(65)の流出端は吸入管(64)の中途部に接続する。戻し管(65)には、上述した第1開閉弁(66)が設けられる。
【0050】
吸入管(64)は、戻し管(65)の接続部よりも上流側の第1吸入路(64a)と、戻し管(65)の接続部よりも下流側の第2吸入路(64b)とを含む。
【0051】
(1-5)センサ
図2および図3に示すように、空気調和装置(10)は、複数のセンサを備える。複数のセンサは、吐出温度センサ(71)と、吐出圧力センサ(72)と、吸入圧力センサ(73)と、吸入温度センサ(74)、外気温度センサ(75)とを備える。
【0052】
本実施形態の吐出温度センサ(71)は、吐出管(55)に設けられる。吐出温度センサ(71)は、圧縮機(21)から吐出される冷媒の温度を検出する。厳密には、吐出温度センサ(71)は、圧縮機構(52)から吐出される冷媒の温度を検出する。
【0053】
吐出圧力センサ(72)は、冷媒回路(11)の高圧ガスラインの圧力(高圧圧力)を検出する。吐出圧力センサ(72)は、例えば吐出管(55)に設けられ、吐出冷媒の圧力を検出する。
【0054】
吸入圧力センサ(73)は、冷媒回路(11)の低圧ガスラインの圧力(低圧圧力)を検出する。吸入圧力センサ(73)は、流入管(63)に設けられる。吸入圧力センサ(73)は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の圧力を検出する。本質的には、吸入圧力センサ(73)は、アキュムレータ(24)内の冷媒の圧力を検出する。吸入圧力センサ(73)は、低圧ガスラインのうちアキュムレータ(24)の下流側に設けられてもよい。
【0055】
吸入温度センサ(74)は、流入管(63)に設けられる。吸入温度センサ(74)は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度を検出する。本質的には、吸入温度センサ(74)は、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度を検出する。
【0056】
外気温度センサ(75)は、室外空気の温度を検出する。本質的には、外気温度センサ(75)は、アキュムレータ(24)の周囲の空気の温度を検出する。
【0057】
図2に示すように、空気調和装置(10)は、圧縮機(21)の回転数を計測する回転数検知部(76)を備える。回転数検知部(76)は、例えば電動機(51)の電流値や回転数を計測し、圧縮機(21)の回転数を求める。この回転数により、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量を求めることができる。
【0058】
図2に示すように、空気調和装置(10)は、アキュムレータ(24)内に貯まった液冷媒の高さを検知する液面高さ検知部(77)を備える。液面高さ検知部(77)は、静電容量式、超音波式、フロート式などのレベル計であり、アキュムレータ(24)の内部に配置される。液面高さ検知部(77)の構成を省略し、制御部(C)が物理量に基づいて液面高さを推定してもよい。液面高さを推定する物理量としては、圧縮機(21)の吐出冷媒の温度、高圧圧力、低圧圧力、圧縮機(21)の吸入冷媒の乾き度、圧縮機(21)の回転数、アキュムレータ(24)から吸入管(64)に流出するガス冷媒の流量、アキュムレータ(24)から戻し管(65)に流出する液冷媒の流量などが挙げられる。
【0059】
(1-6)制御部
制御部(C)は、空気調和装置(10)の動作を制御する。制御部(C)は、第1制御装置(C1)と第2制御装置(C2)とを含む。第1制御装置(C1)および第2制御装置(C2)のそれぞれは、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0060】
第1制御装置(C1)は、熱源ユニット(20)側の熱源制御部である。第1制御装置(C1)は、圧縮機(21)、熱源ファン(23)、四方切換弁(25)、熱源膨張弁(26)、第1開閉弁(66)、および第2開閉弁(33)を制御する。具体的には、第1制御装置(C1)は、圧縮機(21)の運転および停止と、圧縮機(21)の回転数と、熱源ファン(23)の運転および停止と、熱源ファン(23)の回転数と、四方切換弁(25)の流路の連通状態と、熱源膨張弁(26)の開度と、第1開閉弁(66)の開閉状態と、第2開閉弁(33)の開閉状態とを制御する。
【0061】
第2制御装置(C2)は、利用ユニット(40)側の利用制御部である。第2制御装置(C2)は、利用ファン(43)および利用膨張弁(41)を制御する。第2制御装置(C2)は、利用ファン(43)の回転数と、利用膨張弁(41)の開度とを制御する。
【0062】
制御部(C)は、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、他の指標とを用いてアキュムレータ(24)内のフォーミング現象の発生を判定する。
【0063】
本例では、吐出温度センサ(71)が、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度を検出し、この検出値をアキュムレータ(24)内の冷媒の温度としている。本例では、吸入圧力センサ(73)がアキュムレータ(24)に流入する冷媒の圧力を検出し、この検出値をアキュムレータ(24)内の冷媒の圧力としている。
【0064】
本例では、制御部(C)は、他の指標として、アキュムレータ(24)の温度、アキュムレータ(24)の周囲温度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量の全てを用いる。
【0065】
「フォーミング現象」は、アキュムレータ(24)内の液冷媒がガス化して気泡となる現象である。この気泡が冷媒とともに圧縮機(21)に吸入されると、圧縮機(21)で液冷媒を圧縮する液圧縮が行われたり、圧縮機(21)内の油貯まり部(56)の油が希釈されたりする。したがって、フォーミング現象の発生を判定できれば、液圧縮や、油貯まり部(56)の油の希釈を抑制できる。
【0066】
制御部(C)は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度と、アキュムレータ(24)の周囲温度とに基づいて、アキュムレータ(24)の温度を求める。アキュムレータ(24)の温度は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度と、アキュムレータ(24)の周囲温度(外気温度)との影響を受ける。このため、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度と、アキュムレータ(24)の周囲温度とをパラメータとする関係式を用いることで、アキュムレータ(24)の温度を推定できる。関係式は、両者の温度の過去のデータから得られた回帰式を用いることができる。回帰式は、両者の温度を変数とする回帰式を機械学習によって決定してもよい。
【0067】
(1-7)記憶部
制御部(C)は、記憶部(M)を有する。記憶部(M)は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などで構成される。本実施形態の記憶部(M)は、第1制御装置(C1)に設けられる。
【0068】
記憶部(M)は、フォーミング現象の発生の有無を判定するためのデータを記憶する。このデータは、関係式(厳密には、回帰式)を含んでいる。フォーミング現象の発生を判定するための回帰式は、ディープラーニング等を用いた機械学習によって決定される。具体的には、製造メーカなどの作業者は、既存の複数の空気調和装置の運転データを取得する。回帰式は、この運転データを入力値として機械学習によって得られる。厳密には、詳細は後述する回帰式の回帰係数が、機械学習によって取得される。得られた回帰式は、空気調和装置(10)の製造段階において、記憶部(M)に記憶される。記憶部(M)に記憶される回帰式の切片が機械学習によって取得されてもよい。
【0069】
記憶部(M)は、アキュムレータ(24)の温度を推定するための回帰式をさらに記憶する。
【0070】
(2)運転動作
空気調和装置(10)の運転動作について図1を参照しながら説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。図1では、冷房運転時の冷媒の流れを実線矢印で示し、暖房運転時の冷媒の流れを破線矢印で示している。
【0071】
(2-1)冷房運転
冷房運転では、第1制御装置(C1)が圧縮機(21)および熱源ファン(23)を運転させ、四方切換弁(25)を第1状態とし、熱源膨張弁(26)を全開とする。第2制御装置(C2)が利用ファン(43)を運転させ、利用膨張弁(41)を所定開度に調節する。
【0072】
冷房運転時の冷媒回路(11)は、第1冷凍サイクルを行う。第1冷凍サイクルでは、熱源熱交換器(22)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、利用熱交換器(42)が蒸発器として機能する。
【0073】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、熱源熱交換器(22)を流れる。熱源熱交換器(22)では、冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。熱源熱交換器(22)で凝縮した冷媒は、第1連絡配管(13)を流れ、各利用回路(40a)に分流する。各利用回路(40a)では、冷媒が利用膨張弁(41)で減圧された後、利用熱交換器(42)を流れる。利用熱交換器(42)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。各利用熱交換器(42)で蒸発した冷媒は、第2連絡配管(14)で合流した後、アキュムレータ(24)を通過し、圧縮機(21)に吸入される。
【0074】
(2-2)暖房運転
暖房運転では、第1制御装置(C1)が圧縮機(21)および熱源ファン(23)を運転させ、四方切換弁(25)を第2状態とし、熱源膨張弁(26)を所定開度に調節する。第2制御装置(C2)が利用ファン(43)を運転させ、利用膨張弁(41)を所定開度に調節する。
【0075】
暖房運転時の冷媒回路(11)は、第2冷凍サイクルを行う。第2冷凍サイクルでは、利用熱交換器(42)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、熱源熱交換器(22)が蒸発器として機能する。
【0076】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、第2連絡配管(14)を流れ、各利用回路(40a)に分流する。各利用回路(40a)では、冷媒が利用熱交換器(42)を流れる。利用熱交換器(42)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。各利用熱交換器(42)で凝縮した冷媒は、各利用膨張弁(41)で減圧されたのち、第1連絡配管(13)で合流する。第1連絡配管(13)の冷媒は、熱源膨張弁(26)で減圧された後、熱源熱交換器(22)を流れる。熱源熱交換器(22)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。熱源熱交換器(22)で蒸発した冷媒は、アキュムレータ(24)を通過し、圧縮機(21)に吸入される。
【0077】
(3)フォーミング現象の発生を判定する制御
制御部(C)は、所定のタイミングにおいて、フォーミング現象の発生を判定する。この制御について図4を参照しながら説明する。
【0078】
(3-1)判定制御の概要
ステップS11では、制御部(C)は、アキュムレータ(24)内の冷媒温度T1を取得する。具体的には、制御部(C)は、吸入温度センサ(74)で検出した冷媒の温度をT1として取得する。
【0079】
ステップS12では、制御部(C)は、アキュムレータ(24)内の冷媒圧力P1を取得する。具体的には、制御部(C)は、吸入圧力センサ(73)で検出した冷媒の圧力をP2として取得する。
【0080】
ステップS13では、制御部(C)は、アキュムレータ(24)の周囲温度T2を取得する。具体的には、制御部(C)は、外気温度センサ(75)で検出した外気温度をT2として取得する。
【0081】
ステップS14では、制御部(C)は、アキュムレータ(24)の温度T2を取得する。制御部(C)は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度T1と、アキュムレータ(24)の周囲温度T2とに基づき、アキュムレータ(24)の温度T3を推定する。
【0082】
ステップS15では、制御部(C)は、圧縮機(21)の回転数を取得する。具体的には、制御部(C)は、回転数検知部(76)によって検出された圧縮機(21)の回転数を取得する。
【0083】
ステップS16では、制御部(C)は、アキュムレータ(24)の液面高さを取得する。具体的には、制御部(C)は、液面高さ検知部(77)によって検出された液面高さを取得する。
【0084】
なお、ステップS11~ステップS16までの順序は単なる例示であり、これらの順序を入れ替えてもよい。
【0085】
ステップS17では、制御部(C)は、ステップS11~ステップS16で取得したパラメータと、記憶部(M)に記憶された関係式を用いて、フォーミング現象の判定値を算出する。
【0086】
ステップS18では、制御部(C)は、ステップS17で得た判定値が、所定値よりも高いか否かを判定する。判定値が所定値より大きい場合、処理はステップS19に移行する。ステップS19では、制御部(C)はフォーミング現象が発生したと判定する。判定値が所定値以下である場合、処理はステップS20に移行する。ステップS20では、制御部(C)はフォーミング現象が発生していないと判定する。
【0087】
(3-2)判定値の算出方法
ステップS17の判定値の算出方法について詳細に説明する。
【0088】
制御部(C)は、以下の(1)式で表す回帰式に基づいて判定値を算出する。
【0089】
判定値=α1×第1減圧度+α2×第2減圧度+α3×ΔT+α4×冷媒密度
+α5×(圧縮機の回転数)+α6×液面高さ・・・・(1)式
第1減圧度、第2減圧度、ΔT、冷媒密度、回転数、および液面高さは、判定値を求めるためのパラメータである。α1、α2、α3、α4、α5、およびα6は回帰係数であり、上述のように機械学習によって予め決定される。
【0090】
第1減圧度は、アキュムレータ(24)の内圧の減少変化の度合いを示す指標であり、以下の(2)式で求められる。
【0091】
第1減圧度=(P1t-1-P1t)/(P1t-1)・・・(2)式
ここで、P1tは、現在におけるアキュムレータ(24)内の圧力P1であり、P1t-1は、現在よりも所定時間t前に取得した過去のアキュムレータ(24)内の圧力P1である。つまり、第1減圧度は、t時間前から現在までの圧力P1の減少変化の割合を示す指標である。アキュムレータ(24)の内圧が減少すると、この内圧がアキュムレータ(24)内の冷媒の飽和圧力(飽和蒸気圧)以下になることでフォーミング現象が発生する。したがって、第1減圧度は、フォーミング現象の発生を判定する指標となる。
【0092】
第2減圧度は、アキュムレータ(24)内の冷媒の飽和圧力Psに対してアキュムレータ(24)の内圧がどれだけ低くなっているかの割合を示す指標であり、以下の(3)式で求められる。
【0093】
第2減圧度=(Ps-P1)/(Ps)・・・(3)式
ここで、Psはアキュムレータ(24)内の冷媒の温度T1に相当する飽和圧力である。上述したように、アキュムレータ(24)の内圧がアキュムレータ(24)内の冷媒の飽和圧力以下になることでフォーミング現象が発生する。したがって、第2減圧度は、フォーミング現象の発生を判定する指標となる。
【0094】
ΔTは、アキュムレータ(24)内の冷媒が加熱される影響を示す指標であり、以下の(4)式で求められる。
【0095】
ΔT=T1-T3・・・(4)式
ここで、T1は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度であり、T3は、アキュムレータ(24)の温度である。ΔTが高いほど、アキュムレータ(24)内に流入する冷媒によりアキュムレータ(24)内に貯まった液冷媒が加熱されやすく、フォーミング現象が発生しやすくなる。したがって、ΔTは、フォーミング現象の発生を判定する指標となる。
【0096】
冷媒密度は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度である。制御部(C)は、アキュムレータ(24)内に流入する冷媒の温度T1と、この冷媒の圧力P1とに基づいて冷媒密度を求める。本例の制御部(C)は、アキュムレータ(24)内の冷媒をガス単相冷媒とみなして、温度T1および圧力P1に基づき冷媒密度を推定する。
【0097】
アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度が高くなると、この冷媒によりアキュムレータ(24)内に作用する動圧が高くなり、液冷媒の液面が乱れやすくなる。これにより、フォーミング現象が発生やすくなる。したがって、冷媒密度は、フォーミング現象の発生を判定する指標となる。
【0098】
圧縮機(21)の回転数は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量を示す指標である。圧縮機(21)の回転数は、回転数検知部(76)によって検出される。ここでいう冷媒の流量は、厳密には質量流量である。アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量が大きくなると、アキュムレータ(24)内に作用する動圧が高くなり、液冷媒の液面が乱れやすくなる。したがって、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量、あるいは圧縮機(21)の回転数は、フォーミング現象の発生を判定する指標となる。
【0099】
液面高さは、アキュムレータ(24)内の液冷媒の液面高さであり、液面高さ検知部(77)によって検出される、あるいは制御部(C)によって推定される。液面高さが大きくなると、液冷媒のエネルギー量が増大するので、フォーミング現象が発生しやすくなると想定できる。したがって、液面高さは、フォーミング現象の発生を判定する指標となる。
【0100】
以上のように、(1)式の各パラメータは、それぞれフォーミング現象の発生に影響を与える指標である。したがって、(1)式により得た判定値を用いることで、フォーミング現象を精度よく判定できる。
【0101】
(4)フォーミング現象の判定値に基づく制御例
制御部(C)は、フォーミング現象の判定結果に基づいて冷媒回路(11)を制御する。この制御例について、図5を参照しながら説明する。
【0102】
制御部(C)は、上述した冷房運転や暖房運転において、図5に示す制御を行う。ステップS31において、制御部(C)はアキュムレータ(24)の液面高さを取得する。ステップS32において液面高さが所定値より高い場合、処理はステップS33に移行する。ステップS33では、制御部(C)は、上述したフォーミング現象の判定制御を行う。ステップS34においてフォーミング現象が発生したと判断された場合、処理はステップS35に移行する。ステップ35では、制御部(C)が圧縮機(21)の回転数を下げる。圧縮機(21)の回転数が下がると、アキュムレータ(24)の内圧が高くなる。これにより、アキュムレータ(24)内の液冷媒がガス化するのを抑制でき、フォーミング現象の発生を抑制できる。
【0103】
以上のように、制御部(C)は、アキュムレータ(24)の液面高さが高い場合に、フォーミング現象の判定制御を行う。アキュムレータ(24)の液面高さが低いのであれば、フォーミング現象が発生したとしても、圧縮機(21)での液圧縮や、油貯まり部(56)の油の希釈の影響が小さく、通常の運転に支障がないからである。
【0104】
制御部(C)は、液面高さが高くてもフォーミング現象が発生しない場合には、フォーミング現象の発生を抑制する制御を行わない。これにより、過剰な制御により、空気調和装置(10)の通常の運転が実行でなくなるのを回避できる。
【0105】
制御部(C)は、液面高さが高く且つフォーミング現象が発生すると判定されたときに、フォーミング現象の発生を抑制する制御を行う。これにより、圧縮機(21)での液圧縮や、油貯まり部(56)の油の希釈を確実に回避でき、空気調和装置(10)の信頼性を向上できる。
【0106】
(5)実施形態の効果
(5-1)
制御部(C)は、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、他の指標とを用いて、フォーミング現象の発生を判定する。他の指標は、アキュムレータ(24)の温度、該アキュムレータ(24)の周囲温度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量を含む。
【0107】
これらの指標はいずれもフォーミング現象の発生に影響を与える指標である。特に、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力は、フォーミング現象の発生の寄与率が高い。このため、これらをパラメータとして用いることで、フォーミング現象の発生を精度よく判定できる。
【0108】
(5-2)
制御部(C)は、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、前記指標とに基づく関係式に基づいてフォーミング現象の発生を判定する。この関係式は、機械学習によって決定される。具体的には、上記(1)式の回帰係数α1~α6を機械学習によって決定している。このようにして得た回帰式を用いることで、フォーミング現象を精度よく判定できる。
【0109】
(5-3)
制御部(C)は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度T1と、アキュムレータ(24)の周囲温度T2とに基づいて、アキュムレータ(24)の温度T3を求める。このため、アキュムレータ(24)の温度を検知するためのセンサが不要となり、部品点数を削減できる。
【0110】
なお、空気調和装置(10)は、アキュムレータ(24)の温度を検出する温度センサを有してもよい。
【0111】
(5-4)
制御部(C)は、フォーミング現象の判定結果に基づいて冷媒回路(11)を制御する。これにより、フォーミング現象が発生しやすい状況下において、冷媒回路(11)の制御によりフォーミング現象の発生を速やかに抑制できる。特に、制御部(C)は、アキュムレータ(24)の液面高さと、フォーミング現象の判定結果とに基づいて冷媒回路(11)を制御する。このため、上述したように、アキュムレータ(24)の液面高さが低いに拘わらず過剰な制御を行うことを抑制できる。アキュムレータ(24)の液面高さが高く且つフォーミング現象が発生しやすい状況下において、フォーミング現象の発生を確実に抑制できる。
【0112】
(6)変形例
上述した実施形態においては、以下のような変形例の構成としてもよい。
【0113】
(6-1)変形例1
制御部(C)は、フォーミング現象の発生を判定するための指標として、アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度を用いてもよい。アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度は、アキュムレータ(24)内に貯まった液冷媒における、冷媒と油の総量に対する冷媒の割合である。冷媒中に含まれる油が多くなると、冷媒の表面張力が大きくなり、液冷媒中で気泡が発生しにくくなると推測できる。したがって、アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度は、フォーミング現象の発生を判断する指標となる。この場合、上記(1)式に、アキュムレータ(24)内の冷媒濃度に、回帰係数α7を乗じた値を加える。回帰係数α7は、機械学習によって決定するのが好ましい。
【0114】
(6-2)
制御部(C)は、図6に示すステップS35に替わって、減圧弁(26,41)の開度を大きくしてもよい。具体的には、例えば冷房運転であれば、制御部(C)は、熱源膨張弁(26)の開度を大きくする。暖房運転であれば、制御部(C)は、利用膨張弁(41)の開度を大きくする。これにより、冷媒回路(11)の低圧圧力が増大するので、アキュムレータ(24)の内圧が高くなる。これにより、アキュムレータ(24)内の液冷媒がガス化するのを抑制でき、フォーミング現象の発生を抑制できる。
(7)その他の実施形態
本開示の冷凍装置は、空気調和装置でなくてもよく、冷凍サイクルを行う装置であれば、他の装置であってもよい。他の装置としては、冷蔵庫や冷凍庫などの空気を冷却する冷却装置、海上コンテナやトレーラの庫内を冷却する輸送用冷凍装置、温水を生成する給湯装置などがある。
【0115】
空気調和装置(10)は、複数の熱源ユニット(20)を備えた方式であってもよい。この場合、複数の熱源ユニット(20)は、それぞれアキュムレータ(24)を備える。制御部(C)は、各アキュムレータ(24)においてフォーミング現象の発生を判定する。
【0116】
制御部(C)は、アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力に加えて、アキュムレータ(24)の温度、アキュムレータ(24)の周囲温度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量、アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度のうちの少なくとも1つを示す指標を用いてフォーミング現象の発生を判定すればよい。
【0117】
記憶部(M)に記憶される関係式は、必ずしも機械学習によって決定されるものでなくてもよく、実測データに基づき経験的に求められた式であってもよい。
【0118】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態の要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0119】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上に説明したように、本開示は、冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0121】
10 空気調和装置(冷凍装置)
11 冷媒回路
21 圧縮機
24 アキュムレータ
C 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)およびアキュムレータ(24)を有し、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、
前記アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、
前記アキュムレータ(24)の温度、該アキュムレータ(24)の周囲温度、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の密度、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の流量、前記アキュムレータ(24)内の冷媒の濃度のうちの少なくとも1つを示す指標を用いて、前記アキュムレータ(24)内のフォーミング現象の発生を判定する制御部(C)とを備え
前記制御部(C)は、
前記アキュムレータ(24)の液面高さが所定値より高く、且つ前記フォーミング現象が発生したと判定されたときに、該フォーミング現象の発生を抑制するように前記冷媒回路(11)を制御し、
前記アキュムレータ(24)の液面高さが所定値より低いと判定されたときには、前記フォーミング現象の発生を抑制するように前記冷媒回路(11)を制御しない
冷凍装置。
【請求項2】
前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)内の冷媒の温度および圧力と、前記指標とに基づく関係式に基づいて前記フォーミング現象の発生を判定する
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記関係式は、機械学習によって決定される
請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記制御部(C)は、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の温度と、該アキュムレータ(24)の周囲温度とに基づいて、前記アキュムレータ(24)の温度を求める
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍装置。