(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150215
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】無人搬送台車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B61B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059203
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 信也
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA01
3D101BB16
3D101BB23
3D101BB24
(57)【要約】
【課題】走行中の振動や騒音を低減することが可能な無人搬送台車を提供する。
【解決手段】本発明の無人搬送台車1は、前後方向に長手の台車本体2と、台車本体2の前後方向中間部に、前後方向に直交する左右方向に間隔s1を存して配置される左右一対の駆動輪3,3と、台車本体2の駆動輪3,3の前側に設けられる左右一対の前従動輪5,5と、台車本体2の駆動輪3,3の後側に設けられる単一の後従動輪6と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に長手の台車本体と、
前記台車本体の前後方向中間部に、前後方向に直交する左右方向に間隔を存して配置される左右一対の駆動輪と、
前記台車本体の駆動輪の前側に設けられる左右一対の前従動輪と、
前記台車本体の駆動輪の後側に設けられる単一の後従動輪と、
を備える無人搬送台車。
【請求項2】
前記駆動輪を走行面に付勢するスプリングと、前記スプリングの変位を制限するストッパと、を備えることを特徴とする請求項1記載の無人搬送台車。
【請求項3】
前記ストッパは、前記スプリングよりも減衰係数が高いゴム材で形成されることを特徴とする請求項2記載の無人搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通販倉庫、サプライチェーン物流センタ、空港荷物システムおよび多品種製造設備などにおいて、従来、大規模なクロスベルトソータやスラットコンベヤによるソータを有するコンベヤシステムが多用されてきた。商品が多様化しかつ多くの場所から注文が来るeコマースなどに対応するには、設備のレイアウト変更が日常的に行われるようになってきて、設備が固定的になっているコンベヤシステムでは対応が困難になっている場合がある。できるだけフレキシビリティに富んだ設備として、無人搬送台車は、例えば、倉庫や物流センタにおいて、積載場所での搬送物の積載、積載した搬送物の荷下ろし場所までの搬送や、荷下ろし場所での搬送物の荷下ろしなどを行うためのソーティングロボットの走行部として利用されだしている。このような利用での無人搬送台車は、一方向に進むものの、発進や加速、転回などできるだけ急いで行うことで、ワークを単位時間にいかに運べるかのタクトを稼ぐことができる。下記特許文献1(以下「従来例」ともいう)に開示された無人搬送台車は、前後方向に長手の車体(台車本体)と、台車本体の前後方向中間部に、前後方向に直交する左右方向に間隔を存して配置される一対の駆動輪と、駆動輪の前側に設けられる左右一対の前従動輪と、駆動輪の後側に設けられる左右一対の後従動輪と、を備える。
【0003】
なお、台車本体の前後方向中間部に左右一対の固定キャスタである従動輪を設けると共に、従動輪の前側及び後側に夫々駆動操舵輪を設けたものも知られている(例えば、特許文献2の
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-286337号公報
【特許文献2】特許第5481994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通販倉庫、サプライチェーン物流センタ、空港荷物システムおよび多品種製造設備などにおける搬送物の搬送時間を短縮する方法の1つとして、無人搬送台車の走行スピードを速くする方法がある。然し、上記従来例の無人搬送台車は、走行スピードを速くすると、走行中の振動や騒音が大きくなるという問題がある。これは、かかる無人搬送台車が走行する床面は必ずしも平らではなく、むしろ床面に凹凸があることが多く、いくら4輪や6輪の設置レベルをそろえてもどうしても浮く車輪が発生する。そしてその状態で走行し、例えば4輪の内前後2輪の駆動輪の車輪設置線を軸として、左右の2輪のうち、走行中(特に加速時)に走行面に対して軽い接地となる左右の従動輪が交互に走行面から浮くことで、走行面に接地する残りの3つの従動輪がなす三角形の重心、あるいは1つの従動輪と駆動輪とがなす三角形の重心が移り変わり、無人搬送台車の姿勢が不安定になることに起因するものと推測される。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、走行中の振動や騒音を低減することが可能な無人搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無人搬送台車は、前後方向に長手の台車本体と、前記台車本体の前後方向中間部に、前後方向に直交する左右方向に間隔を存して配置される左右一対の駆動輪と、前記台車本体の駆動輪の前側に設けられる左右一対の前従動輪と、前記台車本体の駆動輪の後側に設けられる単一の後従動輪と、を備えるものである。
【0008】
本発明において、前記駆動輪を走行面に付勢するスプリングと、前記スプリングの変位を制限するストッパと、を備えることが好ましい。この場合、前記ストッパは、前記スプリングよりも減衰係数が高いゴム材で形成され得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動輪の前側に左右一対の前従動輪を設けると共に駆動輪の後側に単一の後従動輪を設けることで、走行中は3つの従動輪が常時走行面に接地するため、無人走行台車の姿勢を安定に保つことができ、結果として、走行中の振動や騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1による無人搬送台車の模式側面図である。
【
図2】実施の形態1による無人搬送台車の模式平面図である。
【
図3】実施の形態2による無人搬送台車の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。各図においては、作図の都合上、一部の構成要素の図示が省略されている場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による無人搬送台車1を模式的に示す側面図である。
図2は、実施の形態1による無人搬送台車1を模式的に示す平面図である。無人搬送台車1は、図外のコンピュータにより自動運転される自動運転台車である。
【0013】
無人搬送台車1は、一方向に長手の金属製(例えばアルミニウム製やステンレス製)の台車本体2を備える。以下においては、台車本体2の長手方向を前後方向、台車本体2の高さ方向を上下方向、これら前後方向及び上下方向に直交する台車本体2の幅方向を左右方向とする。また、図中に矢印で示す台車本体2の走行方向を前方とする。
【0014】
台車本体2は、左右一対の第1のフレーム21と、第2のフレーム22とを備える。各第1のフレーム21は、後述する駆動輪3を保持する平坦な中央部21aを有する。中央部21aの前端には、略垂直なアーム部21bが一体に設けられている。アーム部21bの下部は、左右方向にのびる連結軸21cを介して、第2のフレーム22から分岐して設けられるアーム連結部22aに揺動可能に連結されている。中央部21aの後端には、後述するスプリング7を支持する側面視逆L字状の支持部21dが一体に設けられている。支持部21dと第2のフレーム22との間には、後述するスプリング7が縮設されている。また、第2のフレーム22の下面には、後述する前従動輪5,5及び後従動輪6が夫々取り付けられている。第2のフレーム22の上面には、複数(本実施形態では4つ)の支持部23が垂設され、これら複数の支持部23で天板24が支持されている。
【0015】
天板24の上には、図示省略するが、ソーティングロボットのキャリー部としてのベルトコンベアが設置される。ベルトコンベアとしては、積載場所での搬送物の積載や、荷下ろし場所での搬送物の荷下ろしを行うことが可能な公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0016】
本実施形態では、無人搬送台車1が5つの走行輪を持つように構成されている。即ち、台車本体2の前後方向中間部には、前後方向にのびる中心線C1に対して左右対称に配置される一対の操舵機構付き駆動輪(以下「駆動輪」という)3,3が設けられている。操舵機構としては、例えば左右の駆動輪3,3の回転軸は中心線C1に対して直交するよう固定され、左右の駆動輪3,3同士の回動速度に差を有したり回動方向を変更したりすればよいため、図示及び説明を省略する。駆動輪3,3は、駆動手段4,4により独立して正転方向(
図1中の時計回り)または逆転方向(
図1中の反時計回り)に回転駆動される。駆動手段4,4は、サーボモータなどのモータで構成される。駆動手段4,4により駆動輪3,3を互いに逆方向に回転させることで、無人搬送台車1を駆動輪3,3間の中心Cp回りに回転(旋回)させることができる。駆動輪3,3の間隔s1は、無人搬送台車1を回転させたときの無人搬送台車1外縁の回転軌跡の内側に駆動輪3,3が位置するように設定される。駆動輪3,3を前後方向中間部に配置することで、重量物である駆動手段4,4と駆動輪3,3を支持する第1のフレーム21が回転中心に近い場所に位置し、無人搬送台車1の全体フレームの前後重量もほぼ同様に配分された機構であるため、回転時のモーメントを可及的に小さくすることができ、結果として、無人搬送台車1の回転時の制動性を向上させることができる。また、両駆動輪3,3を同期させて正転方向に回転させることで、無人搬送台車1を前方に直進させることができる。
【0017】
台車本体2の駆動輪3,3の前側には、駆動輪3,3の間隔s1よりも小さい間隔s2で中心線C1に対して左右対称に配置される一対の前従動輪5,5が設けられている。前従動輪5,5の間隔s2は、走行面(例えば、通販倉庫やサプライチェーン物流センタの床面)Srに貼付される指標を踏まないように設定され、具体的には、駆動輪3,3の間隔s1の1/2~1/3の範囲に設定される。前従動輪5,5は自在キャスタと同じように、無人搬送台車1の本体フレームに取り付けられる部分を回転軸として車輪を支持する軸を支持するアームが360度自由に回動軸支されている。このため、駆動輪3,3を互いに逆方向に回転させることで、無人搬送台車1を駆動輪3,3間の中心Cp回りに回転(旋回)させる際に、前従動輪5,5はその回転に倣ってアームの方向を従動されて台車全体の旋回を助ける。
【0018】
台車本体2の駆動輪3,3の後側には、中心線C1上に配置される単一の後従動輪6が設けられている。台車本体2の左右方向にのびる中心線C2と前従動輪5,5との間の距離d1と、中心線C2と後従動輪6との間の距離d2とは同等に設定されている。すなわち、前従動輪5,5と後従動輪6とが二等辺三角形をなすように配置される。また、前従動輪5,5及び後従動輪6は、例えば、自在キャスタで夫々構成される。後従動輪6も、前従動輪5,5と同様に、無人搬送台車1の本体フレームに取り付けられる部分を回転軸として車輪を支持する軸を支持するアームが360度自由に回動軸支されている。このため、駆動輪3,3を互いに逆方向に回転させることで、無人搬送台車1を駆動輪3,3間の中心Cp回りに回転(旋回)させる際に、後従動輪6はその回転に倣ってアームの方向を従動されて台車全体の旋回を助ける。
【0019】
両駆動輪3,3は、コイルバネとしてのスプリング7により走行面Srに夫々付勢されている。軸支される第1のフレーム21と後ろ側に位置するスプリング(コイルスプリング)7は、両駆動輪3,3を加速時などに地面に押し付けるための付勢の役割と、地面の不整に対する駆動輪3,3の追随のための付勢の役割を有するが、それぞれの役割をするためのスプリング7のばね定数は異なっていて、地面の不整に対する駆動輪3,3の追随のための付勢の役割が支配的になってしまう。そのため、加速時にはスプリング7が沈み込んで台車本体2が後ろに傾き、重心移動が激しくなるのが常である。第1のフレーム21の中央部21aの上面には、板状のストッパ8が第2のフレーム22との間に所定の隙間Spを存して設けられている。隙間Spは、スプリング7のストローク長などを考慮して適宜設定することができる。スプリング7が当該隙間Spに相当する長さだけ変位する(縮む)と、ストッパ8が第2のフレーム22の下面に当接することで、スプリング7の更なる変位(縮み)、即ち、駆動輪3,3の下方への相対的な移動が制限される。この場合、ストッパ8をスプリング7よりも減衰係数が高いゴム材(例えば、ニトリルゴム)で形成し得る。これによれば、ストッパ8が第2のフレーム22に当接した後は、スプリング7の変位がストッパ8の減衰係数に従うこととなる。このため、スプリング7の変位が大きく跳ね返って反動が大きくなる場合にゴム材であるストッパ8がその反動を吸収してくれることで、結果として、オイルのオリフィスの出入り抵抗によりばねの反動を防ぐショックアブソーバと同様の効果を、低コストで得ることができる。なお、ストッパ8を設ける位置は、第1のフレーム21の中央部21aに限定されず、中央部21aと対峙する第2のフレーム22の下面に設けてもよい。また、ストッパ8の形状は、駆動輪3,3の相対的な移動を制限できるものであれば特に限定されず、ブロック状や柱状であってもよい。
【0020】
本実施の形態によれば、無人搬送台車1の走行中、特に、前従動輪5,5が走行面Srに対して軽い接地となる加速時に、前従動輪5,5と後従動輪6とが常時走行面Srに接地する。即ち、走行中は3つの従動輪5,5,6が常時走行面Srに接地するため、上記従来例のように左右の前従動輪5,5が交互に走行面Srから浮くことがない。従って、無人走行台車1の姿勢を安定に保つことができるため、走行中の振動や騒音を低減することができる。また、さらに台車本体2の駆動輪3,3の後側には、単一の後従動輪6が台車本体2の左右方向にのびる中心線C2と前従動輪5,5との間の距離d1と、中心線C2と後従動輪6との間の距離d2とは同等に設定されて位置されている。その結果、かなり駆動輪3,3と離れて後ろに位置する後従動輪6は、駆動輪3が第1のフレーム21の後ろ側にあるスプリング7を加速時に沈めて台車本体2の重心を大きく移動させてしまうことを、その距離に応じたモーメントで防止してくれる。これにより、振動もなく無人搬送台車1は加速できる。
【0021】
ここで、本実施の形態とは前後の従動輪の配置が逆である点で相違する比較例について検討する。本比較例では、駆動輪の前側に単一の前従動輪が設けられると共に駆動輪の後側に左右一対の後従動輪が設けられる。本比較例によれば、本実施の形態と同様に、走行中、3つの従動輪が常時走行面に接地するため、従動輪の走行面からの浮きは確認されず、走行中の振動や騒音を低減することができるものの、減速して停止する際に、無人搬送台車が所定の停止位置をオーバーすることが確認された。また、前従動輪が左右方向にずれた状態、つまり前従動輪の回転軸を支持する360度振れ回るアームの向きが進行方向でない向きで停止するため、走行を再開する際に前従動輪の左右方向の位置ずれを修正する必要がある。
【0022】
それに対して、本実施の形態によれば、減速して停止する際に、無人搬送台車1の前側に作用する力を2つの前従動輪5,5で受けることができる。この場合、自在キャスタである前従動輪5は沈み込まず両輪でストップパワーにて前側に掛かるモーメントを2つの前従動輪で受け止めつつあまり重心が前に移動することがないから、つんのめることなくストップパワーが良好に掛かり、前従動輪が一つの場合には触れ回る車輪の回転軸を支持するアームにもかしいだ形の力が加わらないので進行方向を向いたままにできる。従って、無人搬送台車1を所定の停止位置に停止させることができる。しかも、前従動輪5,5の回転軸を支持するアームが進行方向から左右方向にずれることがないため、走行を再開する際に、前従動輪5,5の左右方向の位置ずれを修正する必要もない。
【0023】
また、本実施の形態によれば、無人搬送台車1の旋回時に外側の駆動輪3に力が加わったとしても、当該駆動輪3を付勢するスプリング7の変位がストッパ8により抑制されるため、無人搬送台車1の傾きを抑制することができる。
【0024】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2による無人搬送台車10の模式平面図である。本実施形態では、後従動輪6が、中心線C1から左側または右側(
図3では左側)にオフセットさせて配置されている。この場合、後従動輪6の中心線C1からのオフセット量Aoは、中心線C1から駆動輪3までの距離d3の1/2~1/3の範囲内で、且つ、後従動輪6が前従動輪5の左右方向内側に位置する範囲内に設定される。本実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、無人搬送台車10の走行中、3つの従動輪5,5,6が常時走行面Srに接地する。但し、本実施の形態と比較して、上記実施の形態1の如く後従動輪6が中心線C1上に位置する無人搬送台車1の方が走行中の姿勢がより安定するため、走行中の振動や騒音をより低減することができると共に、減速時により優れた制動性が得られる。
【符号の説明】
【0025】
1,10 無人搬送台車、 2 台車本体、 3 駆動輪、 5 前従動輪、 6 後従動輪、 7 スプリング、 8 ストッパ、Sr 走行面