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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150225
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】履帯
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/088 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B62D55/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059217
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 香保里
(57)【要約】
【課題】隣接するトラックリンクの間に、トラックリンクを損耗させる異物の侵入を防止した履帯を提供する。
【解決手段】作業機械の履帯は、トラックリンク(15A)のリンクベースに、履帯の内周面側のトラックリンク(15A、15B)の間の隙間を覆うカバー(40A)を有し、カバー(40A)は、トラックリンク(15A、15B)が相対的に回動した際に、トラックリンク(15B)の接続ボス(24B)に接する状態と、接続ボス(24B)から離間する状態との間で弾性変形を起こすように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトラックリンクと、前記複数のトラックリンクが無端環状に連結されるように前記複数のトラックリンクのうちの隣接するトラックリンクを相対的に回動可能に連結する複数の連結ピンとを含み、作業機械の駆動輪及び従動輪に巻回される作業機械の履帯であって、
前記複数のトラックリンクは、互いに隣接する第1のトラックリンク及び第2のトラックリンクを含み、
前記第1のトラックリンクは、
板状の第1のリンクベースと、
前記第1のリンクベースから前記第2のトラックリンクに向けて突出し、且つ前記履帯の幅方向に延びる第1の貫通孔を有する第1のボスと、を含み、
前記第2のトラックリンクは、
板状の第2のリンクベースと、
前記第2のリンクベースから前記第1のトラックリンクに向けて突出し、前記幅方向の両側から前記第1のボスを挟むように所定の間隔を隔てて配置され、前記第1のボスの前記第1の貫通孔に連通して前記連結ピンを受け入れる第2の貫通孔を有する一対の第2のボスと、を含み、
前記第1のトラックリンクの前記第1のリンクベースには、前記履帯の内周面側の前記第1のトラックリンクと前記第2のトラックリンクとの間の隙間を覆うカバーが設けられ、
前記カバーは、前記第1のトラックリンクと前記第2のトラックリンクとが相対的に回動した際に、前記第2のトラックリンクの前記第2のボスに接する状態と、前記第2のボスから離間する状態との間で弾性変形を起こすように構成されていることを特徴とする履帯。
【請求項2】
請求項1に記載の履帯において、
前記カバーは、前記履帯が前記駆動輪及び前記従動輪に巻回された状態で周回移動を行う過程において、前記第1のトラックリンクと前記第2のボスとの間の最小隙間より小さい隙間を隔てて前記第2のボスから離間した状態と、前記第2のボスに接触した状態との間で弾性変形を起こすように構成されていることを特徴とする履帯。
【請求項3】
請求項1に記載の履帯において、
前記第1のトラックリンクの前記第1のリンクベースは、前記履帯の内周面をなす内側表面を有し、
前記第2のトラックリンクの前記第2のリンクベースは、前記履帯の内周面をなす内側表面を有し、
前記第1のリンクベースの前記内側表面と、前記カバーにおける前記履帯の内周面側の端面と、前記第2のリンクベースの前記内側表面とは、面一であることを特徴とする履帯。
【請求項4】
請求項3に記載の履帯において、
前記複数の第2のボスの各々は、前記第1のトラックリンクに対面し、前記履帯の幅方向を軸方向とする円筒形状となるように湾曲した表面を有し、
前記カバーは、前記第2のボスの前記湾曲した側面に対面し、当該側面に沿って湾曲した表面を有することを特徴とする履帯。
【請求項5】
請求項1に記載の履帯において、
前記カバーは、弾性係数が前記トラックリンク以下の素材で構成されていることを特徴とする履帯。
【請求項6】
請求項1に記載の履帯において、
前記カバーは、前記第1のリンクベースに対して脱着可能なように取付けられていることを特徴とする履帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履帯及び履帯を備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、左右一対のクローラを備える作業機械が知られている。クローラは、作業機械の進退方向に離間して配置された駆動輪及び従動輪と、駆動輪及び従動輪に巻回された履帯とを有する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
履帯は、複数のトラックリンクと、隣接するトラックリンクを相対的に回動可能に連結する複数の連結ピンとによって、無端環状に構成されている。そのため、隣接するトラックリンクの間には、履帯の内周面側から異物(例えば、砂利など)が侵入することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3-80157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、隣接するトラックリンクの最小隙間より小さい異物は、履帯の外周面側に排出される。一方、隣接するトラックリンクの最小隙間より大きい異物は、隣接するトラックリンクの間に留まる。そのため、クローラの駆動時にトラックリンクと異物とが摺接して、トラックリンクの摩耗や損傷が発生するという課題がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣接するトラックリンクの間に、トラックリンクを損耗させる異物の侵入を防止した履帯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のトラックリンクと、前記複数のトラックリンクが無端環状に連結されるように前記複数のトラックリンクのうちの隣接するトラックリンクを相対的に回動可能に連結する複数の連結ピンとを含み、作業機械の駆動輪及び従動輪に巻回される作業機械の履帯であって、前記複数のトラックリンクは、互いに隣接する第1のトラックリンク及び第2のトラックリンクを含み、前記第1のトラックリンクは、板状の第1のリンクベースと、前記第1のリンクベースから前記第2のトラックリンクに向けて突出し、且つ前記履帯の幅方向に延びる第1の貫通孔を有する第1のボスと、を含み、前記第2のトラックリンクは、板状の第2のリンクベースと、前記第2のリンクベースから前記第1のトラックリンクに向けて突出し、前記幅方向の両側から前記第1のボスを挟むように所定の間隔を隔てて配置され、前記第1のボスの前記第1の貫通孔に連通して前記連結ピンを受け入れる第2の貫通孔を有する一対の第2のボスと、を含み、前記第1のトラックリンクの前記第1のリンクベースには、前記履帯の内周面側の前記第1のトラックリンクと前記第2のトラックリンクとの間の隙間を覆うカバーが設けられ、前記カバーは、前記第1のトラックリンクと前記第2のトラックリンクとが相対的に回動した際に、前記第2のトラックリンクの前記第2のボスに接する状態と、前記第2のボスから離間する状態との間で弾性変形を起こすように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、隣接するトラックリンクの間に、トラックリンクを損耗させる異物の侵入を防止することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】油圧ショベルの側面図である。
図2】クローラの側面図である。
図3】クローラの要部拡大図である。
図4】隣接するトラックリンクの平面図である。
図5】カバーの形状を示す図である。
図6図4のVI-VIにおける断面図である。
図7】履帯の挙動に対応するカバーの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、クレーン、ダンプトラック等でもよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。
【0012】
下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ10を備える。そして、走行モータ(図示省略)の駆動により、左右一対のクローラ10が独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。
【0013】
上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機4(作業装置)と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ(運転席)7と、旋回フレーム5の後部に配置されたカウンタウェイト6とを主に備える。
【0014】
フロント作業機4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に回動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に回動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4aを駆動させるブームシリンダ4dと、アーム4bを駆動させるアームシリンダ4eと、バケット4cを駆動させるバケットシリンダ4fとを含む。カウンタウェイト6は、フロント作業機4との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0015】
キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。そして、キャブ7の内部空間には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータにより操作される操作装置が配置されている。操作装置は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機4が動作する。
【0016】
図2は、クローラ10の側面図である。なお、図2には左側のクローラ10を図示するが、右側のクローラ10の構成も同様である。図2に示すように、クローラ10は、駆動輪11と、従動輪12と、無端環状の履帯13と、複数のガイドローラ14とで構成されている。
【0017】
駆動輪11及び従動輪12は、前後方向に離間した位置において、下部走行体2に回転可能に支持されている。駆動輪11は、走行モータの駆動力が伝達されることによって、油圧ショベル1を前進させる正回転と、油圧ショベル1を後退させる逆回転とが可能である。また、駆動輪11は、回転中心から放射状に延びる複数の突起11aと、隣接する突起11aの間に形成された複数の係合凹部11bとを備える。図示は省略するが、従動輪12も同様の構成である。
【0018】
履帯13は、複数のトラックリンク15と、隣接するトラックリンク15を相対的に回動可能に連結する複数の連結ピン16とで無端環状に構成される。すなわち、連結ピン16は、複数のトラックリンク15が無端環状に連結されるように、複数のトラックリンク15のうちの隣接するトラックリンク15を相対的に回動可能に連結する。そして、無端環状の履帯13は、駆動輪11及び従動輪12に巻回されている。複数のトラックリンク15それぞれには、履帯13の内周面側に突出する係合突起21が形成されている。
【0019】
履帯13は、回転する駆動輪11の係合凹部11bに、複数のトラックリンク15それぞれの係合突起21が順次係合することによって回転する。また、履帯13は、従動輪12の係合凹部に、複数のトラックリンク15それぞれの係合突起21が順次係合することによって、従動輪12を回転させる。さらに、複数のガイドローラ14は、履帯13の内周面に分散配置されて、回転する履帯13をガイドする。
【0020】
すなわち、複数のトラックリンク15は、駆動輪11及び従動輪12の間において、油圧ショベル1の進退方向に直線的に移動する。このとき、隣接するトラックリンク15は、平行になる。また、複数のトラックリンク15は、駆動輪11及び従動輪12の係合凹部に係合突起21を係合させて、駆動輪11及び従動輪12の外周面に沿って円弧状に移動する。このとき、隣接するトラックリンク15は、連結ピン16を中心として、履帯13の内周面側に相対的に回動する。
【0021】
図3は、クローラ10の要部拡大図である。図4は、互いに隣接するトラックリンク15A、15Bの平面図である。なお、図3では、複数のトラックリンク15及びその構成要素を、参照番号の末尾にA、B、C、Dを付与して区別するが、これらの構成は共通する。また、図3は、クローラ10の下側(地面に設置する側)に位置するトラックリンク15A~15Dを示しているが、クローラ10の上側に位置するトラックリンク15は上下が反転する。トラックリンク15Aは第1のトラックリンクの一例であり、トラックリンク15Bは第2のトラックリンクの一例である。
【0022】
図3に示すように、トラックリンク15Aは、リンクベース20A(第1のリンクベース)と、係合突起21Aと、複数の接続ボス22A、23A、24A、25A、26A、27A(第1のボス)とで構成される。以下、油圧ショベル1の進退方向を「前後方向」とし、リンクベース20Aの幅方向を「左右方向」とし、履帯13の内周面側を「上方向」とし、履帯13の外周面側を「下方向」とする。但し、前述した方向の関係は相対的なものであって、これに限定されない。
【0023】
リンクベース20Aは、概ね直方体形状の外形を呈する板状の部材である。係合突起21Aは、リンクベース20Aの上面(すなわち、履帯13の内周面側の面)から上方に突出する。接続ボス22A~27Aは、リンクベース20Aから油圧ショベル1の進退方向に突出している。また、接続ボス22A~27Aは、リンクベース20Aの幅方向に離間して配置されている。
【0024】
より詳細には、接続ボス22A~24Aは、リンクベース20Aの前端面から前方に突出している。また、接続ボス22A~24Aには、リンクベース20Aの幅方向に貫通し且つ互いに一直線に並ぶ貫通孔28が形成されている。そして、接続ボス22A~24Aの突出端の外周面は、貫通孔28と同心の円弧形状に湾曲している。さらに、リンクベース20Aの幅方向において、接続ボス22A~24Aそれぞれに隣接する位置には、凹部30A、31A、32Aが形成されている。
【0025】
また、接続ボス25A~27Aは、リンクベース20Aの後端面から後方に突出している。また、接続ボス25A~27Aには、リンクベース20Aの幅方向に貫通し且つ互いに一直線に並ぶ貫通孔29(第1の貫通孔)が形成されている。そして、接続ボス25A~27Aの突出端の外周面は、貫通孔29と同心の円弧形状に湾曲している。さらに、リンクベース20Aの幅方向において、接続ボス25A~27Aそれぞれに隣接する位置には、凹部33A、34A、35Aが形成されている。
【0026】
凹部33A~35Aは、隣接するトラックリンク15B(第2のリンクベース)の接続ボス22B~24B(第2のボス)を受け入れ可能な幅に設定される。そのため、油圧ショベル1の進退方向にトラックリンク15A、15Bを並べると、トラックリンク15Aの接続ボス25A~27Aと、トラックリンク15Bの接続ボス22B~24Bとは、トラックリンク15A、15Bの幅方向において、互い違いに配置される。
【0027】
また、接続ボス22B~24Bが凹部33A~35Aに進入し、接続ボス25A~27Aが凹部30B~32Bに進入すると、接続ボス22B~24Bの貫通孔28(第2の貫通孔)と、接続ボス25A~27Aの貫通孔29とが連通する。そして、連通する貫通孔28、29に連結ピン16が挿通されることによって、隣接するトラックリンク15A、15Bが相対的に回動可能になる。
【0028】
すなわち、接続ボス25A~27Aは、リンクベース20Aからトラックリンク15Bに向けて突出している。また、接続ボス22B~24Bは、リンクベース20Bからトラックリンク15Aに向けて突出している。また、接続ボス22B~24Bの一部(図4の例では、一対の接続ボス22B、23B)は、幅方向から接続ボス25Aを挟むように所定の間隔を隔てて配置される。さらに、接続ボス22B~24Bの外周面(湾曲した側面の一例)は、トラックリンク15Aに対面し、且つ履帯13の幅方向を軸方向とする円筒形状になるように湾曲している。
【0029】
さらに、この状態において、凹部33A~35Aの奥壁と、接続ボス22B~24Bとは、所定の隙間を隔てて対面する。また、凹部30B~32Bの奥壁と、接続ボス25A~27Aとは、所定の間隔を隔てて対面する。そして、図4に示すように、トラックリンク15Aのリンクベース20Aには、履帯13の内周面側のトラックリンク15A、15Bの間の隙間(より詳細には、凹部33A~35Aと接続ボス22B~24Bとの間の隙間)を覆うカバー40Aが取り付けられる。また、トラックリンク15Bのリンクベース20Bには、履帯13の内周面側のトラックリンク15A、15Bの間の隙間(より詳細には、凹部30B~32Bと接続ボス25A~27Aとの間の隙間)を覆うカバー40Bが取り付けられる。
【0030】
より詳細には、カバー40Aは、履帯13の内周面側において、凹部33A~35Aそれぞれの奥壁に着脱可能に取り付けられて、接続ボス22B~24Bに向けて突出する。また、カバー40Bは、履帯13の内周面側において、凹部30B~32Bそれぞれの奥壁に着脱可能に取り付けられて、接続ボス25A~27Aに向けて突出する。これにより、履帯13の内周面側において、凹部33A~35Aと接続ボス22B~24Bとの間の隙間がカバー40Aによって覆われ、凹部30B~32Bと接続ボス25A~27Aとの間の隙間がカバー40Bによって覆われる。
【0031】
図5は、カバー40の形状を示す図である。なお、カバー40A、40Bの構成は共通するので、これらを総称して「カバー40」と表記する。カバー40は、弾性係数がトラックリンク15以下の素材で構成される。また、カバー40は、トラックリンク15と比較して、耐摩耗性が低い材料で構成される。トラックリンク15及びカバー40の素材の組み合わせは特に限定されないが、例えば、トラックリンク15が炭素鋼で構成され、カバー40がばね鋼で構成される。さらに、カバー40は、繰り返しの弾性変形が可能な強度を保持するために、中実にするのが望ましい。
【0032】
図5に示すように、カバー40は、基端面41、内側面42、外側面43、円弧面44、及び一対の側面45、46とで構成される六面体である。基端面41、内側面42、外側面43、及び一対の側面45、46は、平坦面である。一方、円弧面44は、接続ボス22~27の突出端の形状に沿う円弧形状の凹面である。円弧面44の曲率半径は、例えば、接続ボス24Bの外周面の曲率半径より大きい。
【0033】
基端面41は、凹部30~35の奥壁に当接する面である。内側面42及び外側面43は、基端面41の端部から基端面41と直交する方向に延設されている。また、内側面42及び外側面43は、互いに平行に延設されている。さらに、内側面42の突出量は、外側面43の突出量より大きい。
【0034】
円弧面44は、内側面42及び外側面43の突出端同士を円弧形状に接続する。すなわち、内側面42及び円弧面44の厚みは、内側面42の突出端(換言すれば、カバー40の先端)に近づくほど小さくなる。そして、カバー40は先細り形状である。
【0035】
一対の側面45、46は、基端面41の端部から基端面41と直交する方向に延設されている。また、一対の側面45、46は、内側面42及び外側面43と直交し、且つ互いに平行に延設されている。
【0036】
また、カバー40には、ボルト穴47と、ヘッド座48とが形成されている。ボルト穴47は、基端面41及び円弧面44の間において、カバー40を貫通する。ヘッド座48は、ボルト穴47の円弧面44側に形成されている。ヘッド座48は、ボルト穴47より直径が大きい凹部で、ボルトヘッド全体を収容可能な大きさに設定される。
【0037】
カバー40をリンクベース20に取り付けるボルト(図示省略)は、円弧面44側からボルト穴47に挿入される。これにより、ボルトの先端が基端面41から突出し、ボルトヘッドがヘッド座48に収容される。なお、図5には、ボルト穴47及びヘッド座48をカバー40の2箇所に設けた例が示されている。しかしながら、ボルト穴47及びヘッド座48の数は、カバー40の幅方向の寸法に応じて適宜設定される。
【0038】
図6は、図4のVI-VIにおける断面図である。図7は、履帯13の挙動に対応するカバー40の状態を示す図である。図6(A)に示すように、凹部35Aの奥壁は、第1面36A及び第2面37Aで構成されている。第1面36Aは、第2面37Aより履帯13の外周面側に位置する。第2面37Aは、第1面36Aより履帯13の内周面側に位置する。第1面36Aは、接続ボス24Bに沿う円弧形状の凹面である。第1面36Aは、第2面37Aより接続ボス24B側に突出している。換言すれば、第2面37Aは、第1面36Aより凹んでいる。すなわち、第1面36A及び第2面37Aの間には、段差が形成されている。
【0039】
また、第2面37Aには、ボルト穴38が形成されている。そして、図6(B)に示すように、カバー40Aの基端面41が第2面37Aに当接すると、ボルト穴38、47が連通する。すなわち、カバー40Aの基端面41を第2面37Aに当接させて、ボルト穴38、47にボルトを螺合することによって、カバー40Aがトラックリンク15Aに着脱可能に取り付けられる。
【0040】
接続ボス24Bの外周面と凹部35Aの奥壁との隙間は、第1面36Aの位置が第2面37Aの位置より小さくなる。また、接続ボス24Bの外周面と凹部35Aの奥壁との最小隙間G1は、連結ピン16の中心を通り、前後方向に延びる仮想線L1より履帯13の外周面側の隙間である。一方、カバー40Aの円弧面44は、仮想線L1より履帯13の内周面側において、接続ボス24Bの外周面に対面し、接続ボス24Bの外周面に沿って湾曲している。そして、カバー40Aの円弧面44と接続ボス24Bの外周面との最小隙間G2は、接続ボス24Bの外周面と凹部35Aの奥壁との最小隙間G1より小さく設定される。例えば、最小隙間G2は、最小隙間G1より5mm程度小さく設定される。
【0041】
そして、図6(B)に示すように、トラックリンク15Aが駆動輪11及び従動輪12の間を油圧ショベル1の進退方向に移動する過程において、カバー40Aの円弧面44と接続ボス24Bの外周面とは最小隙間G2を隔てて対面している。すなわち、このときの最小隙間G2は0より大きくなる。また、履帯13の内周面側において、トラックリンク15Aのリンクベース20Aの内側表面39Aと、トラックリンク15Aのカバー40Aの内側面42と、トラックリンク15Bのリンクベース20Bの内側表面39Bとは、直線L2に一致している(すなわち、面一である)。内側表面39A、39Bは、履帯13の内周面をなす面である。内側面42は、履帯13の内周面側の端面である。
【0042】
また、図7(A)に矢印で示すように、履帯13の内周面側からカバー40Aに対して外力Fが加わると、カバー40Aの先端が下向きに弾性変形して、接続ボス24Bの外周面に接触する。すなわち、このときの最小隙間G2は0になる。一方、外力Fがなくなると、カバー40Aの先端が弾性復帰して、図6(B)の状態に戻る。
【0043】
さらに、図7(B)に示すように、トラックリンク15Aが従動輪12の外周面に沿って移動する過程において、トラックリンク15A、15Bは、履帯13の内周面側におけるトラックリンク15A、15Bの角度を減じる向きに相対的に回動する。これにより、カバー40Aの先端が接続ボス24Bの外周面に接触する。すなわち、このときの最小隙間G2は0になる。なお、図7(B)の状態は、トラックリンク15Aが駆動輪11の外周面に沿って移動する過程でも生じる。
【0044】
すなわち、カバー40Aは、トラックリンク15A、15Bが相対的に回動した際に、トラックリンク15Bの接続ボス24Bに接する状態と、接続ボス24Bから離間する状態との間で弾性変形を起こすように構成されている。換言すれば、カバー40Aは、履帯13が駆動輪11及び従動輪12に巻回された状態で周回移動を行う過程において、トラックリンク15Aと接続ボス24Bとの最小隙間G1より小さい間隔G2を隔てて接続ボス24Bから離間した状態と、接続ボス24Bに接触した状態との間で弾性変形を起こすように構成されている。
【0045】
なお、前述の関係は、凹部35Aと接続ボス24Bとの間のカバー40Aに限定されず、図4の他の位置に配置されるカバー40A、40Bにも成立する。但し、図4の全ての位置にカバー40A、40Bを配置する必要はなく、必要(例えば、他の部品との干渉など)に応じて一部が省略されてもよい。
【0046】
上記の実施形態によれば、最小隙間G2を最小隙間G1未満に設定したので、最小隙間G1より大きい(すなわち、トラックリンク15A、15Bを損耗させる)異物がトラックリンク15A、15Bの間に侵入することを防止できる。これにより、トラックリンク15A、15Bを長寿命化することができる。
【0047】
なお、図6(B)の状態ではカバー40Aが接続ボス24Bに接触しないので、カバー40と接続ボス24Bとの間の摩耗を防止できる。また、トラックリンク15Bより弾性係数の高い素材でカバー40Aを構成することによって、図7に示すように、必要な時にカバー40Aを弾性変形させることができる。さらに、トラックリンク15Bより耐摩耗性が低い素材でカバー40Aを構成することによって、トラックリンク15Bより先にカバー40Aが摩耗する。そのため、カバー40Aを交換することによって履帯13をさらに長寿命化することができる。
【0048】
また、上記の実施形態によれば、第1面36A及び第2面37Aの間の段差でカバー40Aが支持される。これにより、カバー40Aがトラックリンク15Aに安定して支持される。なお、トラックリンク15Aに対するカバー40Aの取り付け方法は、ボルトによる締結に限定されない。
【0049】
さらに、上記の実施形態によれば、履帯13の内周面側において、トラックリンク15Aのリンクベース20Aの内側表面39Aと、トラックリンク15Aのカバー40Aの内側面42と、トラックリンク15Bのリンクベース20Bの内側表面39Bとが面一になっている。これにより、履帯13の回転がスムーズになる。
【0050】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業機
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
4d ブームシリンダ
4e アームシリンダ
4f バケットシリンダ
5 旋回フレーム
6 カウンタウェイト
7 キャブ
10 クローラ
11 駆動輪
11a 突起
11b 係合凹部
12 従動輪
13 履帯
14 ガイドローラ
15 トラックリンク
16 連結ピン
20 リンクベース
21 係合突起
22,23,24,25,26,27 接続ボス
28,29 貫通孔
30,31,32,33,34,35 凹部
36A 第1面
37A 第2面
38 ボルト穴
39A,39B 内側表面
40 カバー
41 基端面
42 内側面
43 外側面
44 円弧面
45,46 側面
47 ボルト穴
48 ヘッド座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7