(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150232
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】冷凍パン生地の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 8/02 20060101AFI20231005BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20231005BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A21D8/02
A21D13/00
A21D10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059227
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 志之和
(72)【発明者】
【氏名】松下 耕基
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK08
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK47
4B032DK55
4B032DK58
4B032DL01
4B032DL20
4B032DP13
4B032DP25
4B032DP26
4B032DP33
4B032DP38
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】ドライイーストを使用した冷凍パン生地の製造において、生イーストを使用した冷凍パン生地の製造方法と同程度に簡便で、且つ、ボリュームの大きなパンを安定して得ることができる、冷凍して用いるためのパン生地の製造方法を提供すること。
【解決手段】パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、水の含有量が50~100重量部である冷凍して用いるためのパン生地の製造方法であって、穀粉、並びに、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、食塩1.5~2.3重量部、冷凍耐性を有するドライイースト2~5重量部(乾燥重量)、及び、水24~55重量部を含む材料混合物を、生地の捏上げ温度が8~22℃になるように、低速で1~5分間の条件で1次ミキシングする工程と、1次ミキシング後の材料混合物に、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、水10~90重量部を添加して、生地の捏上げ温度が16~26℃になるように、中速及び/又は高速で5~13分間の条件で2次ミキシングする工程と、2次ミキシング後の材料混合物を2~25℃で、10~40分間フロア発酵する工程を含む、冷凍して用いるためのパン生地の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、水の含有量が50~100重量部である冷凍して用いるためのパン生地の製造方法であって、
穀粉、並びに、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、食塩1.5~2.3重量部、冷凍耐性を有するドライイースト2~5重量部(乾燥重量)、及び、水24~55重量部を含む材料混合物を、生地の捏上げ温度が8~22℃になるように、低速で1~5分間の条件で1次ミキシングする工程と、
1次ミキシング後の材料混合物に、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、水10~90重量部を添加して、生地の捏上げ温度が16~26℃になるように、中速及び/又は高速で5~13分間の条件で2次ミキシングする工程と、
2次ミキシング後の材料混合物を2~25℃で、10~40分間フロア発酵する工程を含む、冷凍して用いるためのパン生地の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍して用いるためのパン生地を、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法で得られた冷凍して用いるためのパン生地。
【請求項4】
請求項2に記載の製造方法で得られた冷凍パン生地。
【請求項5】
請求項4に記載の冷凍パン生地が、解凍後に最終発酵され、その後加熱調理されたパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライイーストを使用した冷凍パン生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製パン用のイーストには、大きく「生イースト」と「ドライイースト」があり、用途や目的に応じて使い分けられている。ドライイーストは、賞味期限が生イーストと比較して長く保存性に優れているという利点がある一方で、そのままでは生イーストに比べて、生地材料のミキシング時に均一分散性が劣るため、事前に水に懸濁してから使用する必要がある。特に、捏上げ温度を低くする必要のある冷凍パン生地では、仕込み水に氷水を用いて生地の捏上げ温度を調整するが、20℃以下の冷水を用いてドライイーストを懸濁した場合、イーストが冷水による障害を受けて死滅し、パン生地の発酵力が低下したり、死滅したイーストから溶出するグルタチオンの影響で生地がダレて、パンのボリュームが低下するといった問題が生じる。
【0003】
そこで、ベーカリーではドライイーストを懸濁する水や生地の温度調節を随時行っているが、手間がかかるし、パンの品質を安定させることも困難である。また、イーストの発酵力低下を補うためにドライイーストの添加量を増やすとグルタチオンの溶出量も増えてしまうし、イースト発酵臭も過剰に生成され、パンのボリュームもでない。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、例えば、特許文献1には、特定量の水分と再水和調節剤を含む、低温で再水和しても活性を失わない乾燥酵母組成物が開示されている。しかしながら、水の添加のタイミングやその温度に着目していないため、この乾燥酵母組成物を使用して作製した冷凍パン生地を焼成して得られるパンのボリュームは満足のいくレベルではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ドライイーストを使用した冷凍パン生地の製造において、生イーストを使用した冷凍パン生地の製造方法と同程度に簡便で、且つ、ボリュームの大きなパンを安定して得ることができる、冷凍して用いるためのパン生地の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、穀粉、食塩、冷凍耐性を有するドライイースト、及び水を夫々特定量含む材料混合物を、生地の捏上げ温度が特定の温度になるように特定の条件で1次ミキシングし、1次ミキシング後の材料混合物に、特定量の水を添加して、生地の捏上げ温度が特定の温度になるように、特定の条件で2次ミキシングし、得られた2次ミキシング後の材料混合物を、特定の温度で特定の時間フロア発酵して得られた冷凍して用いるためのパン生地を冷凍することで、生イーストを使用した冷凍パン生地と同程度に簡便に冷凍パン生地を製造でき、且つ、これを解凍後、最終発酵して加熱調理することでボリュームの大きなパンを安定して得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、水の含有量が50~100重量部である冷凍して用いるためのパン生地の製造方法であって、穀粉、並びに、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、食塩1.5~2.3重量部、冷凍耐性を有するドライイースト2~5重量部(乾燥重量)、及び、水24~55重量部を含む材料混合物を、生地の捏上げ温度が8~22℃になるように、低速で1~5分間の条件で1次ミキシングする工程と、1次ミキシング後の材料混合物に、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、水10~90重量部を添加して、生地の捏上げ温度が16~26℃になるように、中速及び/又は高速で5~13分間の条件で2次ミキシングする工程と、2次ミキシング後の材料混合物を2~25℃で、10~40分間フロア発酵する工程を含む、冷凍して用いるためのパン生地の製造方法に関する。本発明の第二は、前記冷凍して用いるためのパン生地を、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法に関する。本発明の第三は、前記製造方法で得られた冷凍して用いるためのパン生地に関する。本発明の第四は、前記製造方法で得られた冷凍パン生地に関する。本発明の第五は、前記冷凍パン生地が、解凍後に最終発酵され、その後加熱調理されたパンに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、ドライイーストを使用した冷凍パン生地の製造において、生イーストを使用した冷凍パン生地の製造方法と同程度に簡便で、且つ、ボリュームの大きなパンを安定して得ることができる、冷凍して用いるためのパン生地の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明の冷凍して用いるためのパン生地の製造方法は、穀粉、食塩、冷凍耐性を有するドライイースト、及び水を夫々特定量含む材料混合物を、生地の捏上げ温度が特定の温度になるように特定の条件で1次ミキシングし、1次ミキシング後の材料混合物に、特定量の水を添加して、生地の捏上げ温度が特定の温度になるように、特定の条件で2次ミキシングし、得られた2次ミキシング後の材料混合物を、特定の温度で特定の時間フロア発酵して得られた冷凍して用いるためのパン生地を冷凍して、冷凍パン生地を作製するものである。製造された冷凍パン生地を解凍後、最終発酵してから加熱調理することで、パンを製造することができる。
【0011】
前記パン生地は、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、水の含有量が50~100重量部であり、パンの種類としては、ハード系のパン、非ハード系のパン及び層状膨化系のパンが挙げられる。
【0012】
前記ハード系のパンとは、穀粉、水、食塩、パン酵母を必須材料とし、油脂や糖類等を多くは含まないリーンなタイプのパンを指し、クラストがしっかりとし、硬い食感を持ち、クラムはキメが粗く、モチモチとした食感が特徴のパンである。ハード系パンの具体例としては、チャバタ、フランスパン、ソフトフランスパン、パンペイザン等が挙げられる。
【0013】
また、前記非ハード系のパンとは、穀粉、水、食塩、パン酵母、油脂、及び、糖類を必須材料とするリッチなタイプのパンを指し、しっとりさともっちりさがあり、ソフトな食感が特徴のパンである。非ハード系パンの具体例としては、食パン、菓子パン、ブリオッシュ、コッペパン、ロールパン等が挙げられる。
【0014】
更に、前記層状膨化系のパンとは、穀粉、水、食塩、パン酵母、油脂、及び、糖類を必須材料とする、油脂を折り込んで作られるパンを指し、サックリとした食感が特徴のパンである。層状膨化系のパンの具体例としては、クロワッサン、デニッシュ、デニッシュブレッド、パイ、クローネ等が挙げられる。
【0015】
前記穀粉は、穀物を挽いて粉末状にしたものであり、パン類の製造に通常用いられるものであれば、その由来や精製度合いに特に制限なく用いることができる。穀物の由来としては、小麦、大麦、ライ麦、ソバ、コメ、とうもろこし等が例示できる。加熱調理して得られるパンの風味や食感の観点から、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉が好ましく、小麦粉がより好ましい。特に、小麦粉をパン生地に含まれる穀粉全体中70重量%以上含むことが好ましい。小麦粉としては、強力粉、準強力粉、超強力粉、中力粉、薄力粉等を用いることができる。
【0016】
前記穀粉は、1次ミキシング工程のみならず、1次ミキシング工程及び2次ミキシング工程に分けて添加できるが、冷凍パン生地作製時の簡便性の向上のため、前記穀粉は1次ミキシング工程でできるだけ多く添加した方が好ましく、全量添加することがより好ましい。
【0017】
前記食塩は、例えば、精製塩、上質塩、内地白塩、原塩、粉砕塩等が挙げられ、当該分野で使用される食塩であれば特に限定されない。
【0018】
前記食塩の含有量は、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、1.5~2.3重量部が好ましく、1.5~2重量部がより好ましく、1.5~1.8重量部が更に好ましい。食塩の含有量が1.5重量部より少ないと、パンの味が乏しくなる場合がある。また、2.3重量部より多いと、パンの塩味が濃過ぎて食せない場合がある。
【0019】
前記食塩は、1次ミキシング工程のみならず、1次ミキシング工程及び2次ミキシング工程に分けて添加できるが、冷凍パン生地作製時の生地の伸展性を良好にするためには、前記食塩は1次ミキシング工程でできるだけ多く添加した方が好ましく、全量添加することがより好ましい。
【0020】
前記冷凍耐性を有するドライイーストは、穀粉100重量部に対して、該ドライイースト2重量部、蔗糖10重量部、食塩0.5重量部、及び、水60重量部を用いてパン生地を調製し、当該パン生地を20gに分割後、30℃でフロアタイムを90分間とり、次いで-20℃で4週間冷凍保存後、25℃で30分間解凍した生地からのガス発生量(ml)を、ファーモグラフ(アトー社製)を用いて38℃で120分間測定し、30ml以上になるドライイーストのことをいう。具体的には、(株)カネカ製「カネカインスタントドライイーストG」等が例示できる。尚、前記ドライイーストは、生イーストを乾燥させ顆粒状にしたもの、及び顆粒状にしたドライイーストを更に特殊処理して得られる細粒状のインスタントドライイーストの両方を含む。
【0021】
前記冷凍耐性を有するドライイーストの含有量は、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、2~5重量部(乾燥重量)であることが好ましく、2~4重量部がより好ましく、2~3重量部が更に好ましい。ドライイーストの含有量が2重量部より少ないと、発酵に時間がかかり生産効率が悪い場合がある。また、5重量部より多いと、パン酵母自体の好ましくない風味がパンに付与される場合がある。
【0022】
前記冷凍耐性を有するドライイーストは、1次ミキシング工程のみならず、1次ミキシング工程及び2次ミキシング工程に分けて添加できるが、パンのボリュームを大きくするためには、1次ミキシング工程でできるだけ多く添加した方が好ましく、全量添加することがより好ましい。
【0023】
前記水の含有量は、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、50~100重量部であることが好ましく、50~90重量部がより好ましく、60~80重量部が更に好ましい。水の含有量が50重量部より少ないと、パンとしての好ましい食感が得られない場合がある。また、100重量部より多いと、パン生地がベタつきやすくなる場合がある。尚、前記水の含有量は、材料の一つとして添加される水の量と、水以外の材料に由来して添加される水の量の合計量である。
【0024】
前記水は、1次ミキシング工程、及び、2次ミキシング工程で夫々添加される。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量(材料の一つとして添加される水の量と、水以外の材料に由来して添加される水の量の合計量)は、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、24~55重量部であることが好ましく、24~45重量部がより好ましく、24~35重量部が更に好ましい。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量が24重量部より少ないと、ドライイーストの復水が不十分になる場合がある。また、55重量部より多いと、パン生地がベタつきやすくなる場合や、加熱調理後のパンのボリュームが小さくなる場合がある。また、2次ミキシング工程で添加される水の量(材料の一つとして添加される水の量と、水以外の材料に由来して添加される水の量の合計量)は、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、10~90重量部であることが好ましく、20~70重量部がより好ましく、30~60重量部が更に好ましく、30~50重量部が特に好ましい。2次ミキシング工程で添加される水の量が上記範囲を外れると、生地の捏上げ温度を適切な範囲内に調整することが困難になる場合がある。
【0025】
前記冷凍して用いるためのパン生地は、本発明の効果を損なわない範囲で、糖類、油脂、加工澱粉、増粘剤、乳化剤、酸化剤、及び、酵素等を添加することができる。
【0026】
前記糖類は、例えば、上白糖やグラニュー糖を含む砂糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、異性化糖、オリゴ糖、水あめ、糖アルコール類等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。前記糖類は、粉末状であることが好ましい。呈する甘みの点から、上白糖やグラニュー糖を用いることがより好ましい。
【0027】
ハード系のパンにおける糖類の含有量は、食感の観点からは少ないほど良く、前記パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下が更に好ましく、含有しない(0重量部である)ことが特に好ましい。また、非ハード系のパンにける糖類の含有量は、食感やボリュームの観点から、前記パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して糖類を3.5~30重量部含有することが好ましい。更に、層状膨化系のパンにおける糖類の含有量は、食感や風味の観点から、前記パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して糖類を3.5~30重量部含有することが好ましい。
【0028】
前記糖類は、1次ミキシング工程、及び/又は、2次ミキシング工程で添加することができるが、作業性の観点から1次ミキシング工程で添加することが好ましい。
【0029】
前記油脂は、食用であれば特に限定はないが、例えば、コーン油、サフラワー油、胡麻油、綿実油、ひまわり油、菜種油、大豆油、米糠油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、シア脂等の植物油や、乳脂、魚油、牛脂、豚脂等の動物油が挙げられ、また、これらの油脂をエステル交換したものや、硬化、分別したもの等、通常食用に供されるすべての油脂類を用いることができ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
また、油脂の形態としては、融解した前記油脂に、必要に応じて乳化剤や香料等の油溶性成分を添加してから混合して得た油脂組成物を急冷捏和して得られるショートニング;融解した前記油脂に、必要に応じて乳化剤や香料等の油溶性成分を添加してから混合して得た油脂組成物へ必要に応じて水溶性成分が溶解した水溶液を添加した後、急冷捏和して得られるマーガリン、ファットスプレッド等の油中水型乳化油脂組成物;及びタンパク質等の水溶性成分が溶解した水溶液に、前記油脂や必要に応じて乳化剤や香料等の油溶性成分を添加した後、ホモジナイズして得られる水中油型乳化油脂組成物が挙げられ、これらの何れも使用できる。
【0031】
ハード系のパンにおける油脂の含有量は、食感の観点から、前記パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下が更に好ましく、含有しない(0重量部である)ことが特に好ましい。また、非ハード系のパンにおける油脂の含有量は、食感やボリュームの観点から、前記パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して4~30重量部含有することが好ましい。更に、層状膨化系のパンにおける油脂の含有量は、食感や風味の観点から、前記パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して30~100重量部含有することが好ましい。
【0032】
前記油脂は、1次ミキシング工程、及び/又は、2次ミキシング工程で添加することができるが、作業性の観点から2次ミキシング工程で添加することが好ましい。
【0033】
前記加工澱粉は、一般的な化学修飾が施された澱粉をいい、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉、油脂加工澱粉、酵素処理澱粉等が例示される。
【0034】
前記増粘剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、グアガム、タラガム等が例示できる。
【0035】
前記乳化剤としては、具体的にはグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、シュガーエステル及びレシチン等が挙げられる。尚、前記有機酸モノグリセリドは、脂肪酸モノグリセリドに更に有機酸がエステル結合したモノグリセリド誘導体のことであり、該有機酸としては、酢酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸、乳酸等が挙げられる。
【0036】
前記酸化剤としては、ジスルフィド結合を増加させる作用を有する添加剤を指し、アスコルビン酸、シスチン、臭素酸カリウム及び酸化酵素等が例示できる。また、前記酸化酵素としては、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、アルドースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ等が例示できる。
【0037】
前記酵素としては、キシラナーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ等が例示できる。
【0038】
本発明の冷凍して用いるためのパン生地は、1次ミキシング工程、2次ミキシング工程、及びフロア発酵工程を経て製造することができる。更に冷凍工程を経ることにより冷凍パン生地を得ることができる。各工程の詳細を以下に説明するが、冷凍して用いるためのパン生地を製造する方法は以下の記載に限定されるものではない。
【0039】
(1次ミキシング工程(工程a1))
まず、前述した1次ミキシング工程で添加される各材料を含む材料混合物を1次ミキシングして、1次ミキシング後の材料混合物を得る。
【0040】
前記1次ミキシングは、低速のみでも良いし、更に中速でミキシングしても良い。その条件は、低速で1~5分間が好ましく、低速で2~5分間がより好ましい。グルテン構造の形成を早める観点から、低速でのミキシングの後に、中速で1~2分間ミキシングすることが好ましい。
【0041】
尚、本発明において、低速とは、1.1~2.5s-1のミキシング速度と定義し、好ましくは1.1~2.0s-1である。また、中速とは、低速以上の速度であって、かつ1.8~4.7s-1のミキシング速度と定義する。好ましくは、2.6~4.7s-1である。前記低速と前記中速は、1.8~2.5s-1の間にある同じ速度であってもよい。
【0042】
1次ミキシングのミキシング速度が遅かったり、ミキシング時間が短いと、材料の分散性が悪く、パン生地がベタつきやすくなったり、パンの好ましい食感が損なわれる場合がある。逆に1次ミキシングのミキシング速度が速かったり、ミキシング時間が長いと、生地の捏上げ温度が高くなり過ぎる場合がある。
【0043】
前記1次ミキシング工程では、生地の捏上げ温度が8~22℃になるようにすることが好ましく、8~20℃がより好ましく、10~16℃が更に好ましい。捏上げ温度が8℃より低いとイーストが死滅して、加熱調理後のパンのボリュームが小さくなる場合がある。22℃より高いと、発酵が進み過ぎて、冷凍保存時にパン生地が劣化しやすくなり、加熱調理後のパンのボリュームが小さくなる場合がある。
【0044】
尚、1次ミキシング工程で材料の一つとして添加される水の温度を好適には0~10℃にしておくことで、1次ミキシング後の生地の捏上げ温度を所望の温度に容易に調整することができる。前記1次ミキシング工程で材料の一つとして添加される水の温度は、捏上げ温度の調整の容易さの観点から、1~7℃がより好ましく、2~5℃が更に好ましい。
【0045】
(2次ミキシング工程(工程a2))
工程a1で得られた1次ミキシング後の材料混合物に、前述した2次ミキシング工程で添加される各材料を添加して、2次ミキシングを行い、2次ミキシング後の材料混合物を得る。
【0046】
前記2次ミキシングは、中速及び/又は高速で5~13分間が好ましく、5~10分間がより好ましく、7~10分間が更に好ましい。捏上げ温度の上昇を抑制する観点から、中速及び/又は高速でのミキシングの前に、低速で1~5分間ミキシングすることが好ましい。
【0047】
尚、低速と中速の定義は上記と同じである。また、高速は中速以上の速度であって、且つ3.3~7.3s-1のミキシング速度と定義する。好ましくは4.1~7.3s-1である。
【0048】
また、中速と高速は、3.3~4.7s-1の間にある同じ速度であってもよい。この時、中速と高速は区別されず、同じ速度域でミキシングを続けることになる。
【0049】
2次ミキシングのミキシング速度が遅かったり、ミキシング時間が短いと、材料の分散性が悪く、出来上がったパン生地が不均一な状態となって、できたパンの品質が低下する場合がある。逆に2次ミキシングのミキシング速度が速かったり、ミキシング時間が長いと、パン生地がダレてパン作製時の作業性が悪くなったり、できたパンのボリュームが低下する場合がある。
【0050】
前記2次ミキシング工程では、生地の捏上げ温度が16~26℃になるようにすることが好ましく、16~24℃がより好ましく、18~22℃が更に好ましい。捏上げ温度が16℃より低いと良好なグルテンネットワークの形成がされず、パン生地がベタついたり、パン生地の伸展性が低下して、冷凍パン生地の作製に手間がかかる場合がある。また26℃より高いと、フロア発酵時に発酵が進み過ぎて、冷凍保存時にパン生地が劣化しやすくなり、加熱調理後のパンのボリュームが小さくなる場合がある。
【0051】
尚、2次ミキシング工程で材料の一つとして添加される水の温度を0~20℃にしておくことで、2次ミキシング後の生地の捏上げ温度を所望の温度に容易に調整することができる。前記2次ミキシング工程で材料の一つとして添加される水の温度は、捏上げ温度の調整の容易さの観点から、2~18℃がより好ましく、3~15℃が更に好ましく、3~10℃が特に好ましい。
【0052】
(フロア発酵工程(工程a3))
工程a2で得られた2次ミキシング後の材料混合物をフロア発酵して、冷凍して用いるためのパン生地を得る。前記フロア発酵の条件は、2~25℃で、10~40分間であることが好ましく、5~20℃で10~30分間がより好ましく、10~20℃で10~20分間が更に好ましい。発酵温度が2℃より低かったり、発酵時間が10分間より短いと、発酵が不十分となる場合がある。また、発酵温度が25℃より高かったり、発酵時間が40分間より長いと、発酵が過剰となり、加熱調理後のパンのボリュームが小さくなる場合がある。
【0053】
(冷凍工程(工程a4))
前記工程a3後、冷凍して用いるためのパン生地は、冷凍工程を経て、冷凍パン生地を製造することができる。前記冷凍の条件は、-15~-50℃であることが好ましく、-20~-50℃がより好ましく、-35~-50℃が更に好ましい。冷凍温度が-15℃より高いとパン生地が十分に凍結しない場合がある。また、-50℃より低いとパン生地の凍結効率が頭打ちになる場合がある。冷凍して用いるためのパン生地は、冷凍する前に、通常の冷凍パン生地と同様に、所定の大きさに分割し、所定の形状に成形してもよい。
【0054】
前記工程a1~工程a3を実施することにより、生イーストを使用した冷凍パン生地の製造方法と同程度に簡便に冷凍して用いるためのパン生地が製造され、更に冷凍工程(工程a4)を経ることにより冷凍パン生地を得ることができる。そして、該冷凍パン生地を解凍後に最終発酵し、その後加熱調理することで、ボリュームの大きなパンを安定して得ることができる。
【0055】
また、製造された冷凍パン生地を冷凍保存することができる。冷凍保存の条件としては、例えば、-15~-40℃、14~150日間であってよい。
【0056】
前記冷凍パン生地の解凍条件は、パンを作製するための通常の条件であって良く、例えば5~25℃で、60~180分間が好ましく、10~25℃で、120~180分間がより好ましく、15~20℃で、120~180分間が更に好ましい。解凍温度が5℃より低かったり、解凍時間が60分間より短いと、パン生地の解凍が不十分になる場合がある。また、解凍温度が25℃より高かったり、解凍時間が180分間より長いと、発酵が進み過ぎてパンのボリュームが小さくなる場合がある。冷凍工程において、冷凍保存する温度よりも低温でパン生地を、例えば急速冷凍機等を用いて冷凍させてから冷凍保存してもよい。
【0057】
前記最終発酵の条件は、パンを作製するための通常の条件であって良く、例えば25~38℃で、30~70分間が好ましく、30~38℃で、40~70分間がより好ましく、35~38℃で、40~70分間が更に好ましい。発酵温度が25℃より低かったり、発酵時間が30分間より短いと、発酵が不十分となる場合がある。また、発酵温度が38℃より高かったり、発酵時間が70分間より長いと、パン生地が発酵し過ぎて、できたパンのボリュームが低下したり、発酵臭が強く感じられる場合がある。
【0058】
前記加熱調理とは、焼成、蒸し、油ちょうを含む。このうち焼成が好ましい。加熱調理の条件は、パンを作製するための通常の条件であって良い。
【実施例0059】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0060】
実施例、比較例及び参考例で使用した材料は以下の通りである。
1)日本製粉(株)製「ミリオン」(水分含量:14.5%)
2)日本精糖(株)製「上白糖P」(水分含量:0.7%)
3)財団法人塩事業センター製「精製塩」(水分含量:0%)
4)(株)カネカ製「カネカインスタントドライイーストG」(水分含量:9%)
5)(株)カネカ製「カネカイーストGA」(水分含量:65%)
6)よつ葉乳業(株)製「脱脂粉乳」(水分含量:4%)
7)扶桑化学工業(株)製「ビタミンC TypeSS」(水分含量:0%)
8)(株)カネカ製「エバーライトG」(水分含量:0%)
9)キユーピータマゴ(株)製「殺菌液全卵」(水分含量:76%)
【0061】
<冷凍パン生地作製時の簡便性の評価>
実施例及び比較例で得た冷凍パン生地作製時の簡便性を、以下の基準で生イーストを使用して得た冷凍パン生地(参考例)と比較して評価した。
5点:参考例と同等で、作製が非常に簡便である
4点:参考例よりも僅かに劣るが、作製が簡便である
3点:参考例よりも劣り、作製に若干手間がかかるが、生産性においては問題ないレベルである
2点:参考例よりも悪く、作製に手間がかかり煩雑である
1点:参考例よりも非常に悪く、作製に大変手間がかかり非常に煩雑である
【0062】
<パンの比容積の測定方法>
実施例、比較例及び参考例で作製したパンを25℃で24時間保存した後に、当該パンの重量と体積をレーザー体積計「WinVM200」(アステックス社製)で測定した。得られた体積を重量で割ることによりパンの比容積(cm3/g)を算出した。
【0063】
<パンのボリュームの評価方法>
実施例及び比較例で作製した冷凍パン生地を-20℃で60日間保存後、解凍し、最終発酵してから加熱調理して得られたパンのボリューム(比容積)を、生イーストを使用して作製したパン(参考例)のボリューム(比容積)と比較して以下の基準で評価した。
5点:参考例のパンの比容積に比べて、比容積が95%以上である
4点:参考例のパンの比容積に比べて、比容積が90%以上95%未満である
3点:参考例のパンの比容積に比べて、比容積が85%以上90%未満である
2点:参考例のパンの比容積に比べて、比容積が75%以上85%未満である
1点:参考例のパンの比容積に比べて、比容積が75%未満である
【0064】
<総合評価>
冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、パンのボリュームの各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、パンのボリュームが4点又は5点であり、少なくともどちらか一方が5点であるもの
B:冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、パンのボリュームがどちらも4点であるもの、又は、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、パンのボリュームが3点以上5点以下であり、どちらか一方が3点であるもの
C:冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、パンのボリュームがどちらも3点であるもの
D:冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、パンのボリュームが2点以上5点以下であり、少なくともどちらか一方が2点であるもの
E:冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、パンのボリュームが少なくともどちらか一方が1点であるもの
【0065】
(実施例1) 冷凍パン生地及びパンの作製
表1に従って、ミキサーボウルに強力粉、砂糖、食塩、ドライイースト、脱脂粉乳、ビタミンC、5℃の水を投入後、縦型ミキサー「HPI-20M」(関東混合機工業社製)を使用し、低速で3分間1次ミキシングした。次いで全卵と5℃の水を投入し、低速で2分間、高速で5分間ミキシング後、油脂を添加して低速で3分間、高速で2分間ミキシングし、捏上げ後の温度が26℃の2次ミキシング後の材料混合物を得た。得られた2次ミキシング後の材料混合物を、恒温槽「INCUBATOR IS-81」(ヤマト科学株式会社製)を使用し、20℃で30分間静置し冷凍して用いるためのパン生地を得た。冷凍して用いるためのパン生地を70gに分割し、室温(20℃)で5分間静置後、各ローラーの隙間間隔を上段から順に夫々12mm、6mm、2mmに設定した3段モルダー「FM31Z型」(フジサワ・マルゼン株式会社製)を通過させてガス抜きを行った後、パン生地を棒状に巻いて、高さ20mmの展厚板を通して棒状の成形後のパン生地を得た。成形後のパン生地を天板に並べ、急速冷凍機器「ブラストチラー&ショックフリーザーHBC-12B3」(ホシザキ株式会社製)を使用し、-30℃で40分間急速冷凍して冷凍パン生地を作製し、-20℃で60日間保存した。冷凍保存した冷凍パン生地を天板に並べ、発酵機「メイシャス 上下2室別制御ドゥコンディショナー」(戸倉商事株式会社製)を使用し、20℃、湿度70%で120分間解凍した後、38℃、湿度75%で60分間発酵して発酵後のパン生地を得た。発酵後のパン生地をデッキオーブン「PrinceIII」(フジサワ・マルゼン株式会社製)を使用し、上火200℃・下火200℃で11分間焼成しロールパンを得た。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量、2次ミキシング工程で添加された水の量、パン生地の水の含有量、パン生地作製時の1次ミキシング後及び2次ミキシング後の生地の捏上げ温度、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、得られたパンのボリュームの評価結果を表1に示した。
【0066】
【0067】
(実施例2~3、比較例1) 冷凍パン生地及びパンの作製
表1に従って、実施例1の1次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水:20重量部と、2次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水:32重量部を夫々、10重量部と42重量部(実施例2)、38重量部と14重量部(実施例3)、又は、45重量部と7重量部(比較例1)に変更した以外は、実施例1と同様にして冷凍パン生地を作製し、冷凍保存後に解凍して、最終発酵を行った後に焼成してロールパンを得た。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量、2次ミキシング工程で添加された水の量、パン生地の水の含有量、パン生地作製時の1次ミキシング後及び2次ミキシング後の生地の捏上げ温度、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、得られたパンのボリュームの評価結果を表1に示した。
【0068】
(参考例) 冷凍パン生地及びパンの作製(生イースト使用)
表1に従って、ミキサーボウルに強力粉、砂糖、食塩、生イースト、脱脂粉乳、ビタミンC、全卵、2℃の水を投入後、縦型ミキサー「HPI-20M」(関東混合機工業社製)を使用し、低速で2分間、高速で9分間ミキシングした。次いで油脂を添加して低速で3分間、高速で2分間ミキシングし、捏上げ後の温度が21℃のミキシング後の材料混合物を得た。得られたミキシング後の材料混合物を実施例1と同様に、フロア発酵してから成形し、冷凍して冷凍パン生地を作製し、これを冷凍保存後に解凍して、最終発酵を行った後に焼成しロールパンを得た。ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量、パン生地の水の含有量、パン生地作製時のミキシング後の生地の捏上げ温度、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、得られたパンのボリュームの評価結果を表1に示したように、実施例1~3及び比較例1と比較検討した。
【0069】
表1から明らかなように、1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量が、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、24~55重量部である冷凍パン生地(実施例1~3)は、何れも冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、できたパンのボリュームの評価は良好な結果であった。一方、パン生地に含まれる穀粉100重量部に対して、1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量が59.9重量部と多い冷凍パン生地(比較例1)は、できたパンのボリュームの評価が悪く、総合評価がDであった。
【0070】
(実施例4) 冷凍パン生地及びパンの作製
表2に従って、2次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水の温度:5℃を0℃に、2次ミキシング工程の高速でのミキシング時間:7分間を12分間に変更した以外は、実施例1と同様にして冷凍パン生地を作製し、冷凍保存後に解凍して、最終発酵を行った後に焼成してロールパンを得た。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量、2次ミキシング工程で添加された水の量、パン生地の水の含有量、パン生地作製時の1次ミキシング後及び2次ミキシング後の生地の捏上げ温度、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、得られたパンのボリュームの評価結果を表2に示した。
【0071】
【0072】
(実施例5) 冷凍パン生地及びパンの作製
表2に従って、1次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水:20重量部を15重量部に、2次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水:32重量部を37重量部に、1次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水の温度:5℃を2℃に、2次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水の温度:5℃を0℃に、2次ミキシング工程の高速でのミキシング時間:7分間を12.5分間に変更した以外は、実施例1と同様にして冷凍パン生地を作製し、冷凍保存後に解凍して、最終発酵を行った後に焼成してロールパンを得た。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量、2次ミキシング工程で添加された水の量、パン生地の水の含有量、パン生地作製時の1次ミキシング後及び2次ミキシング後の生地の捏上げ温度、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、得られたパンのボリュームの評価結果を表2に示した。
【0073】
(比較例2) 冷凍パン生地及びパンの作製
表2に従って、1次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水:20重量部を10重量部に、2次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水:32重量部を42重量部に、1次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水の温度:5℃を20℃に、2次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水の温度:5℃を0℃に変更した以外は、実施例1と同様にして冷凍パン生地を作製し、冷凍保存後に解凍して、最終発酵を行った後に焼成してロールパンを得た。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量、2次ミキシング工程で添加された水の量、パン生地の水の含有量、パン生地作製時の1次ミキシング後及び2次ミキシング後の生地の捏上げ温度、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、得られたパンのボリュームの評価結果を表2に示した。
【0074】
(比較例3) 冷凍パン生地及びパンの作製
表2に従って、1次ミキシング工程で材料の一つとして添加された水の温度:5℃を20℃に変更した以外は、実施例1と同様にして冷凍パン生地を作製し、冷凍保存後に解凍して、最終発酵を行った後に焼成してロールパンを得た。1次ミキシング工程の材料混合物に含まれる水の量、2次ミキシング工程で添加された水の量、パン生地の水の含有量、パン生地作製時の1次ミキシング後及び2次ミキシング後の生地の捏上げ温度、冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、得られたパンのボリュームの評価結果を表2に示した。
【0075】
表2から明らかなように、2次ミキシング後の生地の捏上げ温度が16~26℃の範囲にある冷凍パン生地(実施例1、4~5)は、何れも冷凍パン生地作製時の簡便性、及び、できたパンのボリュームの評価は良好な結果であった。一方、2次ミキシング後の生地の捏上げ温度が15℃と低い冷凍パン生地(比較例2)は、冷凍パン生地作製時の簡便性の評価が悪く、総合評価がDであった。また、2次ミキシング後の生地の捏上げ温度が28℃と高い冷凍パン生地(比較例3)は、できたパンのボリュームの評価が悪く、総合評価がDであった。