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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150238
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】断熱ボード
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20231005BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20231005BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231005BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B32B7/027
B32B15/08 D
F16L59/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059237
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】596105644
【氏名又は名称】株式会社東北イノアック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲尭
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC01
3H036AE13
4F100AB01B
4F100AB01C
4F100AB10A
4F100AB33A
4F100AG00E
4F100AK04
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK41E
4F100AK51A
4F100AK53D
4F100AK53E
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA01A
4F100CA08A
4F100CA13D
4F100CA13E
4F100CA18A
4F100DG12E
4F100DJ01A
4F100DJ02A
4F100EH46D
4F100EH46E
4F100GB07
4F100JA13A
4F100JD10B
4F100JD10C
4F100JJ01
4F100JJ02
4F100JJ07
4F100JL10D
4F100JL10E
4F100JN06B
4F100JN06C
(57)【要約】
【課題】難燃性が良好で、面材に対する着色有無の自由度を有する新規な断熱ボードの提供を目的とする。
【解決手段】芯材11の少なくとも片面に面材21が積層された断熱ボード10において、芯材11は、TG-DTA測定により、空気環境下、昇温速度30℃/minで昇温した場合の300℃における重量減少率が10%以下の合成樹脂発泡体であり、面材21は、波長800~2500nmにおける近赤外日射反射率が70%以上である。芯材11は、独立気泡構造の合成樹脂発泡体が好ましく、芯材11は、密度20kg/m以上が好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の少なくとも片面に面材が積層された断熱ボードにおいて、
前記芯材は、TG-DTA測定により、空気環境下、昇温速度30℃/minで昇温した場合の300℃における重量減少率が10%以下の合成樹脂発泡体であり、
前記面材は、波長800~2500nmにおける近赤外日射反射率が70%以上であることを特徴とする断熱ボード。
【請求項2】
前記芯材は、独立気泡構造の合成樹脂発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の断熱ボード。
【請求項3】
前記芯材は、密度20kg/m以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱ボード。
【請求項4】
前記面材は、金属製であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の断熱ボード。
【請求項5】
前記面材は、表面に着色層を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の断熱ボード。
【請求項6】
前記芯材と前記面材との間に中間材を有することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の断熱ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
建材などに用いられる断熱ボードとして、ポリイソシアヌレート発泡体の少なくとも片面にアルミニウム層が積層されたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-321882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ポリイソシアヌレート発泡体にアルミニウム層が積層された従来の断熱ボードは、アルミニウム層を、その表面が着色塗装されたものにすると、難燃性試験に関するコーンカロメータ試験時に、ポリイソシアヌレート発泡体が膨張して良好な難燃結果が得られなくなる。
従って、従来の断熱ボードは、ポリイソシアヌレート発泡体に積層される面材に着色有無の自由度がなく、装飾性などの要求に応えられない問題があった。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、難燃性が良好で、面材に対する着色有無の自由度を有する新規な断熱ボードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、芯材の少なくとも片面に面材が積層された断熱ボードにおいて、前記芯材は、TG-DTA測定により、空気環境下、昇温速度30℃/minで昇温した場合の300℃における重量減少率が10%以下の合成樹脂発泡体であり、前記面材は、波長800~2500nmにおける近赤外日射反射率が70%以上であることを特徴とする断熱ボードである。
【0007】
第2の手段は、第1の手段において、前記芯材は、独立気泡構造の合成樹脂発泡体であることを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第1又は第2の手段において、前記芯材は、密度20kg/m以上であることを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第1から3の何れか一の手段において、前記面材は、金属製であることを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第1から4の何れか一の手段において、前記面材は、表面に着色層を有することを特徴とする。
【0011】
第6の手段は、第1から5の何れか一の手段において、前記芯材と前記面材との間に中間材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、難燃性が良好で、面材に対する着色有無の自由度を有する新規な断熱ボードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る断熱ボードの断面図である。
図2】各実施例について構成と熱伝導率及び発熱性試験の測定結果を示す表である。
図3】他の実施例について構成と熱伝導率及び発熱性試験の測定結果を示す表である。
図4】他の実施例と各比較例について構成と熱伝導率及び発熱性試験の測定結果を示す表である。
図5】各実施例における芯材の配合を示す表である。
図6】他の実施例と各比較例における芯材の配合を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す本発明の一実施形態に係る断熱ボード10は、芯材11の一側に中間材15と表面材21が積層され、他側に裏面材31が積層されて各部材が接着一体化されている。
【0015】
芯材11は、TG-DTA測定(熱重量・示差熱同時測定)により、空気環境下、昇温速度30℃/minで昇温した場合の300℃における重量減少率10%以下が好ましく、9%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい合成樹脂発泡体で構成されている。
TG-DTA測定による重量減少率を、前記範囲とすることにより、断熱ボードの発熱性試験時に芯材が熱分解するのを抑え、良好な難燃性結果が得られる。
【0016】
TG-DTA測定の方法は、合成樹脂発泡体のサンプルを、空気環境下、昇温速度30℃/minで30℃から400℃まで昇温させて行う。300℃における重量減少率は、次式で算出する。
300℃における重量減少率(%)=(TG-DTA測定前のサンプル重量-300℃におけるサンプル重量)÷TG-DTA測定前のサンプル重量×100
【0017】
芯材11を構成する合成樹脂発泡体としては、断熱性に優れる独率気泡構造の合成樹脂発泡体が好ましい。独率気泡構造の合成樹脂発泡体としては、硬質ポリウレタン発泡体やポリイソシアヌレート発泡体などが好ましい。ポリイソシアヌレート発泡体は、難燃性にも優れるため、芯材11の構成材として好適なものである。芯材11の厚みは適宜設定されるが、例として10~200mmを挙げる。なお、独率気泡構造の合成樹脂発泡体は、JIS K 7138(2006年)圧力変化法(ピクノメータ法)に基づいて測定される独率気泡率が、80%以上であるのが好ましい。
【0018】
ポリイソシアヌレート発泡体は、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、ポリイソシアネート、助剤等を含むポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物から発泡形成されるものである。ポリイソシアヌレート発泡体は、特定の触媒を使用し、ポリイソシアネートを過剰に配合する点で硬質ポリウレタン発泡体とは相違する。
【0019】
ポリイソシアヌレート発泡体の密度は、20kg/m以上が好ましい。密度の上限は、100kg/m以下が好ましく、80kg/m以下がより好ましく、60kg/m以下がさらに好ましい。この範囲よりも密度が小さいものは、発泡体の強度が弱く、密度が大きいものは、単位面積当たりの重量が重くなり、作業性が悪くなる。
【0020】
ポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物を構成する成分について説明する。
ポリオールは、水酸基の平均官能基数が1.0を超えるものであり、水酸基の平均官能基数の好ましい範囲として、1.5~5.0、1.8~4.5、2~4.0を例示できる。
ポリオールは、ポリイソシアヌレート発泡体用として公知のものを使用することができ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を併用してもよい。
【0021】
ポリエーテルポリオールの例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0022】
ポリエステルポリオールの例として、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
【0023】
ポリエーテルエステルポリオールの例として、ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
ポリオールの配合比(重量%)は、発泡剤を除くポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物の配合量100重量%中に3~30重量%が好ましく、より好ましくは5~20重量%であり、さらに好ましく7~15重量%である。
【0024】
発泡剤は、化学発泡剤である水、あるいは物理発泡剤であるペンタンなどの炭化水素、ハイドロフルオロオレフィンを、単独または組み合わせて使用できる。発泡剤として水を使用する場合、ポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって組成物の発泡がなされる。発泡剤の量は適宜とされる。
発泡剤の配合比(重量%)は、発泡剤を除くポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物の配合量100重量%中に1~15重量%が好ましく、より好ましくは3~13重量%であり、さらに好ましく5~11重量%である。
【0025】
触媒は、三量化触媒単独あるいは三量化触媒とウレタン化触媒を併用することができる。
三量化触媒の例として、1)酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム等の金属酸化物類;2)メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、プロポキシナトリウム、ブトキシナトリウム等のアルコキシド類;3)酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム、カプリル酸カリウム、シュウ酸鉄等の有機金属塩類;4)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、N,N′,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類;5)エチレンイミンの誘導体;6)アルカリ金属、アルミニウム、遷移金属類のアセチルアセトンのキレート類、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの三量化触媒は、単独、又は2種以上を混合して使用することができる。それらのなかでも、有機金属塩類や4級アンモニウム塩を使用することがより好ましい。有機金属塩類として好適には、酢酸カリウムとオクチル酸カリウムの組み合わせが挙げられる。
【0026】
ウレタン化触媒の例として、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン等のアミン触媒、スタナスオクトエート等のスズ系触媒、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。
【0027】
触媒の好ましい配合比(重量%)は、発泡剤を除くポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物の配合量100重量%中に0.01~5重量%が好ましく、0.03~4重量%がより好ましく、0.05~3重量%がさらに好ましい。
【0028】
整泡剤は、公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤等を挙げることができる。整泡剤の配合比(重量%)は、発泡剤を除くポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物の配合量100重量%中に0.1~9重量%が好ましく、0.3~7重量%がより好ましく、0.5~5重量%がさらに好ましい。
【0029】
ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの例として、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。ポリイソシアネートは、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ポリイソシアネートの量は、イソシアネートインデックスが300~1200となるようにするのが好ましく、400~1000となるようにするのがより好ましく、さらに好ましくは600~900である。イソシアネートインデックスが300未満の場合には、ポリイソシアヌレート発泡体が燃えやすく熱収縮しやすくなり、それに対して1200より大の場合には、ポリイソシアヌレート発泡体がもろくなり、圧縮強度や曲げ物性などが低下して構造体として好ましくない。イソシアネートインデックスの定義は、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[(ポリイソシアネート重量部/ポリイソシアネートのNCO当量)/(活性水素成分重量/活性水素当量)×100]で計算される。
【0031】
助剤としては、難燃剤や着色剤等を挙げることができる。難燃剤としては、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、あるいはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤等を挙げることができる。難燃剤の配合比(重量%)は、発泡剤を除くポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物の配合量100重量%中に0.3~7重量%が好ましく、0.5~6重量%が好ましく、1~5重量%がさらに好ましい。
着色剤としては、顔料、染料、カーボン等を挙げる。
【0032】
ポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物は、公知の発泡装置で混合されることにより、反応して発泡し、ポリイソシアヌレート発泡体を形成する。
なお、合成樹脂発泡体が硬質ポリウレタン発泡体の場合は、硬質ポリウレタン発泡体用組成物が公知の発泡装置で混合されることにより、反応して発泡し、硬質ポリウレタン発泡体を形成する。
【0033】
中間材15は、断熱ボード10の物性向上のために適宜設けられる部材であり、設けないこともある。中間材15としては、中間材のみをコーンカロリーメータを用いる発熱性試験(ISO5660準拠)で測定した発熱量が1.5MJ/m以下が好ましく、より好ましくは1.0MJ/mであり、さらに好ましくは0.7MJ/m以下の材質であり、例えば金属箔、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維クロス材、樹脂、織布、不織布それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0034】
表面材21は、金属製、難燃性が付与された紙類等を含む面材で構成される。金属製の表面材としては、金属箔、金属板、金属箔に樹脂層表面が積層されたもの等が挙げられる。表面材21は、表面に着色層23を有するものでもよく、波長800~2500nmにおける近赤外日射反射率が70%以上であるのが好ましく、75%以上がより好ましく、さらに80%以上が好ましく、特に82%以上が好ましい。近赤外日射反射率は、表面材21の表面に対し、または着色層23が存在する場合には着色層23の表面に対して測定される値である。近赤外日射反射率の測定は、分光光度計を用いて波長800~2500nmの近赤外日射反射率が測定され、JIS K5602にしたがって算出された値である。
波長800~2500nmの近赤外日射反射率を前記範囲の表面材21とすることにより、断熱ボード10に熱が籠もりにくくなり、難燃性が向上する。
【0035】
金属箔や金属板は、材質が限定されるものではなく、例えばアルミニウム、銅、黄銅、ステンレス、錫、鉄(鋼)、ニッケル等を挙げることができる。アルミニウム箔は、扱い易く安価なため、好適な金属や金属板である。金属箔や金属板の厚みは6~100μmが好ましい。金属箔や金属板が厚すぎると断熱ボード10が重くなり、扱い難くなる。
【0036】
難燃性が付与された紙類は、不燃紙または難燃紙が好ましい。不燃紙は、水酸化アルミニウムや炭酸カルシウムが含浸あるいは充填されたもの、例えば、水酸化アルミニウム紙、炭酸カルシウム紙等が挙げられる。難燃紙は、難燃剤が配合されたものや難燃剤が塗布されたものが挙げられる。なお、不燃紙と難燃紙の両方を含めて「不燃紙」あるいは「難燃紙」と称されることもある。
【0037】
着色層23は、樹脂の塗装膜が好ましい。着色層23の色としては、特に限定されず、例えば、白、水色、黄色、緑色、銀色等が挙げられる。特に反射率の高い白色は好ましい色である。なお、着色層23に変えて、無色透明な塗膜層としてもよい。
【0038】
裏面材31は、金属箔、金属板、難燃性が付与された紙類等を含む面材で構成され、適宜設けられる部材であり、設けられない場合もある。
【0039】
断熱ボード10における芯材11、中間材15、表面材21及び裏面材31は、接着によって一体化されている。接着は、芯材11の発泡形成時に芯材11に積層し、芯材11の発泡成形時の接着性によって行ってもよい。あるいは、各部材の対向する少なくとも一方の積層面に接着剤を塗布して各部材を積層し、接着剤を硬化させてもよい。接着剤の塗布方法は、限定されるものではなく、例えばラミネートやスプレーによる塗布、ロールコーターによる塗布等を挙げる。中間材15と表面材21をラミネートしたものを準備し、裏面材31と合わせて芯材11の発泡成形時の接着性によって一体化する方法を用いてもよい。接着剤としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等を挙げることができる。
【0040】
本発明の断熱ボード10は、難燃性が準不燃以上で合格するものである。
断熱ボード10の難燃性は、コーンカロリーメータを用いる発熱性試験(ISO5660準拠)の測定結果によって判定される。
コーンカロリーメータを用いる発熱性試験は、輻射電気ヒーターによって50kW/mをサンプルに照射して加熱し、発熱量等を測定して次の評価要件にしたがって難燃性を評価する試験である。
【0041】
コーンカロリーメータを用いる発熱性試験の結果に対する評価要件には、次の評価要件(1)~(4)がある。
(1)総発熱量が8MJ/m以下であること
(2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂・穴がないこと
(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないこと
(4)スパークがリークしないこと
があり、評価要件(1)~(3)を満たすことができる以下の継続時間によって、不燃、準不燃、難燃に区分される。
なお、(4)の「スパークがリーク」とは、プラグ間のスパークが試験体に取られた現象をいい、(4)を満たさない場合には判定不能になる。
【0042】
不燃の合格基準は、加熱開始後1200秒(20分)間の継続時間において、(1)~(3)の全てを満たすことである。
準不燃の合格基準は、加熱開始後600秒(10分)間の継続時間において、(1)~(3)の全てを満たすことである。
難燃の基準は、加熱開始後300秒(5分)間の継続時間において、(1)~(3)の全てを満たすことである。
【実施例0043】
図2図6に示す各実施例と各比較例の断熱ボードを以下のようにして作製した。
下型と上型で構成されるモールド(発泡成形型)を用い、下型のキャビティの底面に表面材(一部の例では、さらに中間材)を載置し、上型の型面には裏面材を配置し、15℃に温調したポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物を5000rpmのプロペラ攪拌機で10秒撹拌してキャビティに所要量注入し、発泡させることにより、芯材(ポリイソシアヌレート発泡体)に各部材が接着された断熱ボードを作製した。なお、中間材を使用する例については、モールドに載置する前に、表面材の裏面に中間材を接着剤によって接着しておいた。使用した接着剤は、ポリエステル系樹脂、塗布量10g/mである。
【0044】
モールドのキャビティは、300mm×300mmの平面寸法を有し、厚み(深さ)を15mm、20mm、50mmの三種類用意し、図2及び図3における各実施例及び各比較例における芯材の厚みとほぼ等しいモールドの厚み(深さ)を有するモールドを用いた。
キャビティへのポリイソシアヌレート発泡体形成用組成物の注入量は、図2及び図3に示す芯材(ポリイソシアヌレート発泡体)の密度となるように調整した。
【0045】
使用した構成材料について説明する。
・表面材
実施例1~4、7~16及び比較例1~4については、厚さ20μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)の表面に着色層として白色のアクリル樹脂塗膜(アスペンラッカースプレー:アサヒペン製)を有し、800~2500nmの近赤外日射反射率が85.2%のアルミニウム箔を用いた。
実施例5については、厚さ20μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)の表面に着色層として白色のエポキシ樹脂塗膜(水性2液型エポキシ強力防水塗料:アサヒペン製)を有し、800~2500nmの近赤外日射反射率が84.3%のアルミニウム箔を用いた。
実施例6については、厚さ20μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)の表面に着色層として緑色のアクリル樹脂塗膜(アスペンラッカースプレー:アサヒペン製)を有し、800~2500nmの近赤外日射反射率が81.6%のアルミニウム箔を用いた。
実施例17については、厚さ7μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)の表面に着色層として青色のアクリル樹脂塗膜(アスペンラッカースプレー:アサヒペン製)を有し、800~2500nmの近赤外日射反射率が76.8%のアルミニウム箔を用いた。
実施例18については、厚さ350μmの鋼板の表面に着色層として白色のアクリル樹脂塗膜(アスペンラッカースプレー:アサヒペン製)を有し、800~2500nm)の近赤外日射反射率が82.7%の鋼板を用いた。
実施例19については、着色層の無い厚さ20μm、800~2500nmの近赤外日射反射率が91.2%のアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)を用いた。
【0046】
比較例5については、厚さ20μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)の表面に着色層として、灰色のアクリル樹脂塗膜(アスペンラッカースプレー:アサヒペン製)を有し、800~2500nmの近赤外日射反射率が68.5%のアルミニウム箔を用いた。
なお、表面材の近赤外日射反射率の測定は、分光光度計を用いて波長800~2500nmの近赤外日射反射率を測定し、JIS K5602にしたがって算出した。
【0047】
・中間材
中間材は、実施例2、17についてはエポキシ樹脂をラミネートしたものを用い、実施例3についてはガラス織布にポリエステル樹脂が塗布されたもの(株式会社サンヨーバリヤ製)を用い、他の例は中間材を用いなかった。中間材の発熱量は、コーンカロリーメータを用いる発熱性試験(ISO5660準拠)により測定した。
【0048】
・裏面材
裏面材は、実施例4、実施例15、実施例17については、ポリエチレンフィルム50μmとクラフト紙120g/mを貼り合わせた面材(新東海製紙株式会社製)を用い、他の例については、厚さ35μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製)を用いた。
【0049】
各実施例及び各比較例のポリイソシアネート発泡体形成用組成物は、以下の原料を用いて図5及び図6に示す配合とした。図5及び図6における配合比は、ポリイソシアネート発泡体形成用組成物から発泡剤を除いた配合量の合計100重量%中における比率(%)である。
【0050】
・ポリエステルポリオール:p-フタル酸ポリエステルポリオール、水酸基価:250mgKOH/g、品名;RFK-505、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製
・ポリエーテルポリオール:ジエチレングリコール:水酸基価1057mgKOH/g
・ポリイソシアネート:ポリメリックMDI、NCO%;31.3、品名;ミリオネートMR-200、東ソー株式会社製
・触媒1:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、水酸基価213mgKOH/g、品名;ルベアックDMP-30、ナカライテスク株式会社製
・触媒2:オクチル酸カリウム溶液、水酸基価271mgKOH/g
・触媒3:酢酸カリウム溶液、水酸基価270mgKOH/g
・整泡剤:シリコーン系、品名;SH-193 東レ・ダウコーニング社製
・難燃剤:トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)、品名;レバガードPP、LANXESS社製
・発泡剤:シクロペンタン
【0051】
各実施例及び各比較例の芯材(ポリイソシアヌレート発泡体)について、TG-DTA、密度、厚さ、独泡率の測定を行った。
TG-DTAの測定は、各実施例及び各比較例の断熱ボードから、表面材、中間材及び裏面材を含まないように、ポリイソシアヌレート発泡体の中心部を厚み10mmで切り出してサンプルを作成し、空気環境下、昇温速度30℃/minで30℃から400℃まで昇温させて行う。300℃における重量減少率を、次式で算出した。
300℃における重量減少率(%)=(TG-DTA測定前のサンプル重量-300℃におけるサンプル重量)÷TG-DTA測定前のサンプル重量×100
【0052】
芯材の密度の測定は、JIS K 7222に基づいて行った。
芯材の厚さは、各実施例及び各比較例の断熱ボードの厚みを測定し、表面材と裏面材及び中間材の厚みを減算して求めた。
芯材の独泡率は、JIS K 7138(2006年)圧力変化法(ピクノメータ法)によって求めた。
【0053】
また、各実施例及び各比較例の断熱ボードについて、熱伝導率の測定と発熱性試験を行った。
熱伝導率の測定は、JIS A 1412に基づいて行った。
発熱性試験は、株式会社東洋精機製作所製コーンカロリーメータC4を用い、ISO5660に準拠して行った。
発熱性試験の結果及び評価を図2図4に示す。表中の「リーク時間」における「なし」はリークを生じなかったことを示し、時間が記入されている場合はリークを生じるまでの加熱時間を示す。
結果は、発熱性試験によって得られた加熱開始後5分間、10分間、20分間の総発熱量について、各時間において前記評価要件を満たす場合に「〇」とし、満たさない場合に「×」とした。
評価は、加熱開始後20分間の不燃合格基準を満たした場合に「不燃相当」とし、「5分」、「10分」及び「20分」の何れの合格基準も満たさない場合に「不合格」とし、発熱試験中にスパークがリークして評価要件(4)を満たさない場合「判定不能」とした。
【0054】
・実施例1~実施例19
実施例1~実施例19は、表面材の近赤外日射反射率(800~2500nm)が、76.8~91.2%、芯材(ポリイソシアヌレート発泡体)のTG-DTA(300℃)の測定結果(重量減少率)が2~9%であり、発熱性試験の評価が実施例17は準不燃相当、そのほかの全ての実施例について「不燃相当」であった。
【0055】
・比較例1~4
比較例1~4は、表面材の近赤外日射反射率(800~2500nm)が、85.2%、芯材(ポリイソシアヌレート発泡体)のTG-DTA(300℃)の測定結果(重量減少率)が12%~15%の例である。
比較例1、3、4では、発熱性試験中にリークが発生し、「判定不能」であった。また、比較例2は、リークを生じなかったが、不燃判定が「不合格」となった。
比較例1~4は、TG-DTA(300℃)の測定結果の値(重量減少率)が高いため、発熱性試験中に芯材(ポリイソシアヌレート発泡体)の熱分解が発生し、「判定不能」あるいは「不合格」になった。
【0056】
・比較例5
比較例5は、表面材の近赤外日射反射率(800~2500nm)が、68.5%、芯材(ポリイソシアヌレート発泡体)のTG-DTA(300℃)の測定結果(重量減少率)が2%の例である。比較例5は、表面材の近赤外日射反射率(800~2500nm)が低い値であるため、照射光による熱が断熱ボード内に進入し易く、断熱ボード内に熱が蓄積されやすいことから、発熱性試験中にリークが発生し、「判定不能」になった。
【0057】
このように、本発明の断熱ボードは、難燃性(発熱性試験結果)が良好で、面材に対する着色有無の自由度を有し、建材等に好適な新規な断熱ボードである。
なお、本発明は実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 断熱ボード
11 芯材
15 中間材
21 表面材
23 着色層
31 裏面材
図1
図2
図3
図4
図5
図6