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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150242
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】自動車用発電蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/18 20060101AFI20231005BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K7/18 A
H02K7/116
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059243
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】522130302
【氏名又は名称】山田 留美子
(74)【代理人】
【識別番号】100190160
【弁理士】
【氏名又は名称】隅田 俊隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 留美子
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607BB02
5H607BB05
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC07
5H607DD19
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】
自動車の車両本体に搭載可能であるとともに、車輪の回転を複数の発電機に伝達させて効率良く発電し蓄電が可能な自動車用発電蓄電装置を提供すること。
【解決手段】
自動車の非駆動輪R1の軸Sの回転運動を複数の発電モータ120に伝達させる回転伝達部110を備える。回転伝達部110は、軸Sと連動して回転する第一ギア111と、第一ギア111よりも少ない歯数を有して第一ギア111の回転運動が伝達される第二ギア112と、第一ギア111よりも多い歯数を有して第二ギア112と連動して回転する第三ギア113と、第三ギア113の回転運動が伝達されるモータギアとを備え、1つの非駆動輪の回転運動から複数の発電モータ120を高回転で駆動させる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の動力が伝達される駆動輪と、該駆動輪に追動する非駆動輪とを有する自動車に搭載可能な自動車用発電蓄電装置であって、
複数の発電モータと、前記非駆動輪と前記発電モータとの間に介在され、前記非駆動輪の回転運動を伝達して前記複数の発電モータを駆動させる回転伝達部とを備えた発電ユニットと、該発電ユニットで発電された電気を蓄電する蓄電ユニットとを備えており、
該回転伝達部は、前記非駆動輪と連動して回転する第一ギアと、
該第一ギアよりも少ない歯数を有して前記第一ギアの回転運動が伝達される第二ギアと、
該第二ギアと同一軸上に固定され、前記第一ギアよりも多い歯数を有する第三ギアと、
前記複数の発電モータのモータ軸上にそれぞれ固定され、前記第三ギアの回転運動が伝達されて前記モータ軸を回転させるモータギアと、を備えることを特徴とする自動車用発電蓄電装置。
【請求項2】
前記回転伝達部は、下方に各ギア間を潤滑する潤滑油が受容されるオイルパンを備えることを特徴とする請求項1記載の自動車用発電蓄電装置。
【請求項3】
前記発電ユニットは、前記自動車の走行風を受けて回転するファンと、該ファンと同一軸上に固定されるファンギアと、該ファンギアの回転運動が伝達されるモータギアを有する発電モータとを備える風力発電部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車用発電蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電ユニットは、カートリッジ式蓄電池を備えることを特徴とする請求項1記載の自動車用発電蓄電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に適用可能な発電装置に関し、特には、駆動力が掛からない車輪の回転を利用して発電させる自動車用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の動力源には、従来のガソリン等を燃料とする内燃機関に代わって電動モータが広く用いられている。こうした電気自動車では、電動モータに加えて、ヘッドライト等の保安部品やエアコンやオーディオ等の電装部品に電気が多用されていることから、全体として非常に多くの電気を消費することとなる。そこで、減速時の運動エネルギーを電気として回収する回生ブレーキを搭載して、発電された電気を蓄電池に補充することが行われているが、これに加えて、自動車の各部における運動エネルギーを効率良く電気に変換して蓄電可能とする発電装置が求められている。
【0003】
このような要望に応える発電装置としては、例えば、発電機と、蓄電池と、DC/ACインバーターと、かさ歯車とを備えた発電装置本体を牽引車両に搭載し、走行時に牽引車両の車輪の回転動力をかさ歯車を介して発電機を回転させて発電し蓄電池に蓄電する発電装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、電気自動車の走行中は、非駆動輪の回転による回転エネルギーから発電機により変換された電気エネルギーを蓄電池に蓄電する電気自動車用発電装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発電装置によれば、走行時の車輪の回転を利用して発電が可能である。また、特許文献2記載の電気自動車用発電装置によれば、電気自動車の走行による非動力輪の車軸の回転によって発電した電気エネルギーを蓄電池に補充できるので長く継続走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-78221号公報
【特許文献2】実用新案登録第170663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発電装置は、牽引車両に搭載される構成を採用するものであるため、発電及び電力使用の際には常に牽引車両を帯同させる必要がある。また、特許文献2記載の発電装置は、1つの非駆動輪に対して1つの発電機しか組み合わされないので、発電量に改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、自動車の車両本体に搭載可能であるとともに、非駆動輪の回転運動を複数の発電機に伝達させて効率良く発電し蓄電が可能な自動車用発電蓄電装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、原動機の動力が伝達される駆動輪と、該駆動輪に追動して回転する非駆動輪とを有する自動車に搭載可能な自動車用発電蓄電装置であって、複数の発電モータと、前記非駆動輪と前記発電モータとの間に介在され、前記非駆動輪の回転運動を伝達して前記複数の発電モータを駆動させる回転伝達部とを備えた発電ユニットと、該発電ユニットで発電された電気を蓄電する蓄電ユニットとを備えており、該回転伝達部は、前記非駆動輪と連動して回転する第一ギアと、該第一ギアよりも少ない歯数を有して前記第一ギアの回転運動が伝達される第二ギアと、該第二ギアと同一軸上に固定され、前記第一ギアよりも多い歯数を有する第三ギアと、前記複数の発電モータのモータ軸上にそれぞれ固定され、前記第三ギアの回転運動が伝達されて前記モータ軸を回転させるモータギアと、を備えることを特徴とする自動車用発電蓄電装置、である。
【0009】
すなわち、本発明にかかる自動車用発電蓄電装置は、自動車における非駆動輪の回転運動を用いて発電モータを駆動させ、これにより得られる電気を蓄電池に蓄電させるものである。そして、非駆動輪の回転運動を、複数の発電モータに伝達することにより高効率で発電できるようにしている。非駆動輪の回転運動は、回転伝達部によって発電モータへと伝達される。回転伝達部は、非駆動輪と連動して回転する第一ギア、第一ギアよりも少ない歯数を有して第一ギアの回転運動が伝達される第二ギア、第一ギアよりも多い歯数を有して第二ギアと連動して回転する第三ギア、第二ギアの歯数以下の歯数を有して第三ギアの回転運動が伝達されるモータギアを備えている。このような各ギアの構成によって、非駆動輪の回転数がモータギアに至るまでの間に増大されるので、発電モータを高回転で駆動させることができる。また、第三ギアの回転運動が複数のモータギアに同時に伝達されるので、1つの非駆動輪で複数の発電モータを駆動させることができる。さらに、上記のように構成される回転伝達部を備えることで、発電ユニットをコンパクトにすることができるので、サスペンションやブレーキ等の各種装置が配置されて設置スペースが限られる非駆動輪近傍に設置が容易となる。
【0010】
また、前記回転伝達部は、下方に各ギア間を潤滑する潤滑油が受容されるオイルパンを備えてもよい。
【0011】
回転伝達部は、複数のギアが咬合して構成されることから、これらの間に生じる摩擦によって非駆動輪の回転運動の伝達が阻害されたり、ギアが破損したりするおそれがある。そこで、オイルパンを設けて各ギア間に潤滑油を行き渡らせるようにすれば、非駆動輪の回転運動の伝達ロス及びギアの損傷を防止することができる。
【0012】
また、前記発電ユニットは、前記自動車の走行風を受けて回転するファンと、該ファンと同一軸上に固定されるファンギアと、該ファンギアの回転運動が伝達されるモータギアを有する発電モータとを備える風力発電部をさらに備えてもよい。
【0013】
こうすることで、上記回転伝達部による発電に加えて、自動車走行中に受ける走行風を用いた発電を行えるようになる。すなわち、走行風を受けて回転するファンと連動するファンギアの回転運動を発電モータのモータギアへと伝達して発電モータを駆動させて発電できるようにしている。これにより、非駆動輪の回転運動と、走行風で回転するファンの回転運動との両方を利用した発電が可能となるので、さらに多くの発電が可能となる。
【0014】
また、前記蓄電ユニットは、カートリッジ式蓄電池を備えてもよい。
【0015】
蓄電ユニットにカートリッジ式蓄電池を備えることで、発電ユニットで発電された電気をカートリッジ式蓄電池に蓄電し、これを取り外して他の自動車の補助電源として利用したり、家庭での非常用電源等の自動車以外で利用したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動車用発電蓄電装置によれば、非駆動輪の回転運動が回転伝達部によって複数の発電モータに伝達され駆動されることによって多くの電気を発電し、蓄電することができる。また、非駆動輪の回転数は、回転伝達部を構成する各ギアの歯数差によって増大されるので、発電モータを高回転で駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置の概略側面図である。
図2】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置の概略平面図である。
図3】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】実施例2に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5】実施例3に係る自動車用発電蓄電装置の概略平面図である。
図6】実施例3に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、エンジン、モータ等の原動機の動力を受ける駆動輪と、駆動輪に追動する非駆動輪とを備える自動車や、自動車に接続される牽引車両に適用可能であり、非駆動輪の回転運動を活用して発電を行い、これにより得られる電気の蓄電を行うことができる自動車用発電蓄電装置である。
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例0020】
図1及び図2には、実施例1に係る自動車用発電蓄電装置が示されている。自動車用発電蓄電装置は、原動機Pによって前輪Fが駆動される前輪駆動式の自動車Cに搭載されており、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備える。
【0021】
発電ユニット100は、原動機Pの動力が伝達されず、前輪Fの駆動に追動して回転する左右の後輪R1、R2近くにそれぞれ1つずつ配置されている。一方、蓄電ユニット200は、発電ユニット100と電気的に接続されており、発電ユニット100にて発電された電気が送電されて蓄電できるようになっている。また、蓄電ユニット200は、原動機Pと電気的に接続されて、蓄電されている電気を原動機Pに送電できるようになっている。
【0022】
図3には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。図3における発電ユニット100は、左後輪R1近傍に配置されるものであるが、右後輪R2近傍に配置される発電ユニット100も同様に構成される。よって、ここでは右後輪R2側に配置される発電ユニット100の説明は省略する。発電ユニット100は、回転伝達部110と、6つの発電モータ120とを備える。図3(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、中間ギア114と、モータギア115とを備える。
【0023】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転運動が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0024】
第二ギア112は、第一ギア111と咬合して第一ギア111の回転が伝達されるものである。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は軸Sよりも上方位置に配置される。
【0025】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数が多い大径のギアに構成される。さらに、第三ギア113には、第三ギア113と同一歯数で同径のギアに形成されるとともに、ギア軸112aと同じ高さ位置に配置される中間ギア115が咬合される。
【0026】
モータギア114は、後に詳述する6つの発電モータ120のそれぞれのモータ軸114a上に固定されるギアである。6つのモータギア114のうちの3つは第三ギア113と咬合しており、そのうち2つがギア軸112aよりも上方で咬合し、1つがギア軸112aよりも下方位置で咬合している。また、残りの3つは中間ギア115と咬合しており、そのうち1つがギア軸115aより上方位置で咬合し、2つが下方位置で咬合している。
【0027】
6つの発電モータ120は、いずれも電磁誘導によって機械的エネルギー(運動)を電気エネルギーに変換するものであり、モータ軸114aを回転させることによって電気を生じるものである。6つの発電モータ120は、発電ユニット100内部の上方及び下方にそれぞれ3つずつ配置され、蓄電ユニット200と電気的に接続されている。
【0028】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1の回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これに咬合する第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径ギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112の回転と同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに第三ギア113の回転に連動して、中間ギア115が回転する。中間ギア115の回転数は、第二ギア112及び第三ギア113の回転数と同じである。最後に、第三ギア113と中間ギア115の回転運動は、これらと咬合する6つのモータギア114に伝達される。モータギア114は、それらよりも大径の第三ギア113及び中間ギア115の外周上で高速で回転され、この回転運動によってモータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。こうして発電された電気は、蓄電ユニット200に送られて蓄電され、原動機や電装部品に供給されることとなる。
【0029】
このように、左後輪R1の回転運動は、回転伝達部110によって発電モータ120へと伝達されて、発電に供されることとなる。このとき、左後輪R1の回転数は、モータギア114で増大されて6つの発電モータ120のモータ軸114aを高回転させるので、6つの発電モータ120において多くの電気が効率よく発電されることとなる。
【0030】
また、回転伝達部110の下方には、図示しないオイルパンが設けられている。オイルパンには、潤滑油が受容されており、この潤滑油に第一ギア111、第三ギア113及び中間ギア115の下部が浸漬されるようになっている。これにより、第一ギア111、第三ギア113及び中間ギア115が潤滑されるのはもちろん、これらのギアの回転によって潤滑油が掻き揚げられて、潤滑油に浸漬されていない第二ギア112及びモータギア114へも潤滑油が行き渡るようになる。こうすることで、各ギア間で生じる摩擦を低減させることができるので、回転運動の伝達をスムースに行えるようになる。
【0031】
蓄電ユニット200は、自動車Cのシャシーの中央に固定されるリチウムイオンバッテリからなるメインバッテリ210と、自動車Cの後方のトランクルームに配置され、リチウムイオンバッテリからなるカートリッジバッテリ220とから構成される。メインバッテリ210は、発電ユニット100の発電モータ120と電気的に接続されており、発電モータ120から送電される電気を蓄電することができる。そして、自動車Cの原動機Pや図示しない各種電装部品とも電気的に接続されていて、これらに対して蓄電された電気を供給できるようになっている。
【0032】
カートリッジバッテリ220は、発電ユニット100と電気的に接続される図示しないバッテリ接続部と着脱自在に接続されており、発電ユニット100で発電された電気の一部が送電され、蓄電されるようになっている。カートリッジバッテリ220は、自動車Cへの電力供給に用いることはもちろん、取り外して自動車C以外で使用することができる。例えば、他の自動車に補助的に電力供給する補助バッテリとして用いたり、家庭での非常用電源や屋外レジャーでの電源として用いたりすることができる。
【実施例0033】
実施例2に係る装置1もまた、実施例1に係る装置1と同様に、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備えるが、発電ユニット100の構成のみが実施例1と相違する。よって、ここでは実施例1との相違点である発電ユニット100の構成について詳述し、その他の構成については説明を省略する。
【0034】
図4には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。図4における発電ユニット100は、左後輪R1近傍に配置されるものであるが、右後輪R2近傍に配置される発電ユニット100も同様に構成される。発電ユニット100は、回転伝達部110と、3つの発電モータ120とを備える。図4(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、第一中間ギア116と、第二中間ギア117を備える。
【0035】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0036】
第二ギア112は、第一ギア111と咬合して第一ギア111の回転運動が伝達されるものである。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は、軸Sの上方に配置される。
【0037】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数が多い大径のギアに構成される。第三ギア113には、第二ギア112と同一の歯数と径に形成されてギア軸112aより上方の高さ位置に配置される第一中間ギア116が咬合される。また、第一中間ギア116のギア軸116a上には、第三ギア113よりも歯数が多い大径のギアに構成される第二中間ギア117が固定されている。
【0038】
モータギア114は、3つの発電モータ120の3つのモータ軸114aのそれぞれに固定されるギアである。3つのモータギア114のそれぞれは第二中間ギア117に咬合されており、そのうちの2つがギア軸116aよりも上方で咬合し、1つがギア軸116aよりも下方位置で咬合している。
【0039】
3つの発電モータ120は、いずれも電磁誘導によって機械的エネルギー(運動)を電気エネルギーに変換するものであり、モータ軸114aを回転させることによって電気を生じるものである。3つの発電モータ120は、そのうちの2つが発電ユニット100の上部に配置され、残りの1つが発電ユニット100の下部に配置される。
【0040】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1の回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これを咬合する第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111の歯数より少ない小径のギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112が回転するのと同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに、第三ギア113の回転に連動して、第一中間ギア116と第二中間ギア117も回転する。最後に、第二中間ギア117の回転運動は、これと咬合する3つのモータギア114に伝達される。モータギア114の回転運動によって、モータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0041】
さらに、発電ユニット100の底部には、フィン131と、フィンギア132と、モータギア114と、発電モータ120とを備えてなる風力発電部130が設けられている。フィン131は、自動車Cの車体底面を通過する走行風を受けることができるように、発電ユニット100の外部底面に配置され、その上部にはフィンギア132が設けられている。すなわち、フィン131の回転に連動してフィンギア132が回転するようになっている。フィンギア132の回転運動は、これに咬合するモータギア114に伝達される。これによって、モータギア114がフィンギア132の回転運動と連動してモータ軸114aを回転させ、発電モータ120が駆動されることとなる。なお、発電モータ120で発電された電気は、回転伝達部110における発電モータ120と同様に、蓄電ユニット200に送られて蓄電されることとなる。
【0042】
実施例2に係る装置1によれば、風力発電部130をさらに備えることにより、後輪R1の回転運動を用いた発電に加えて、走行風によるフィンの回転運動を用いた発電を行うことが可能となる。
【実施例0043】
実施例3に係る装置1もまた、実施例1に係る装置1と同様に、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備えるが、発電ユニット100の構成が実施例1と相違する。よって、ここでは実施例1との相違点である発電ユニット100の構成について詳述し、その他の構成については説明を省略する。
【0044】
図5には、実施例3に係る装置1が示されている。装置1は、原動機Pによって前輪Fが駆動される前輪駆動式の自動車Cに搭載されており、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備える。発電ユニット100は、原動機Pの動力が伝達されず、前輪Fの駆動に追動して回転する左後輪R1、右後輪R2の間に1つ配置されている。
【0045】
図6には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。発電ユニット100は、回転伝達部110及び4つの発電モータ120と風力発電部130とを左右に一組ずつ備える。以下、左後輪R1側に配置される回転伝達部110、発電モータ120及び風力発電部130について説明し、右後輪R2側については説明を省略する。
【0046】
図6(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、第一中間ギア116と、第二中間ギア117とを備える。
【0047】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S1上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0048】
第二ギア112は、第一ギア111と同じ歯数で構成される第一中間ギア116を介して第一ギア111の回転運動が伝達される。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数の少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は、第一中間ギア116のギア軸116aよりも上方に配置される。
【0049】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数の多い大径のギアに構成される。また、第三ギア113には、第三ギア113と同一歯数で同径のギアに形成され、ギア軸112aと同じ高さ位置にギア軸117aを有する第二中間ギア117が咬合される。
【0050】
モータギア114は、後に詳述する4つの発電モータ120のそれぞれのモータ軸114a上に固定されるギアである。4つのモータギア114のうちの2つは第三ギア113と咬合しており、それぞれギア軸113aよりも上方位置と下方位置で咬合している。また、残りの2つは第二中間ギア117とギア軸114aより上方位置で咬合している。
【0051】
さらに、発電ユニット100の前方(自動車Cの前進方向側)には、フィン131と、フィンギア132と、モータギア114と、発電モータ120とを備えてなる風力発電部130が設けられている。フィン131は、自動車正面からの走行風を受けることができるように、自動車Cの前方側となる位置に配置されており、フィンギア132のギア軸132aの一端に固定されている。また、フィン131が収まるハウジング部分の側面及び背面には、正面からの走行風を側方に通過させるための通気孔130aが設けられている。
【0052】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1に接続される軸S1の回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これと咬合する第一中間ギア116を介して第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111よりも小径のギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112の回転と同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに第三ギア113の回転に連動して、第二中間ギア117も回転する。第二中間ギア117の回転数は、第三ギア113の回転数と同じである。最後に、第三ギア113及び第二中間ギア117の回転運動が、これらと咬合する4つのモータギア114に伝達される。モータギア114の回転運動によって、これが固定されるモータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0053】
さらに、走行風を受けてフィン131が回転すると、これと連動してフィンギア132が回転する。フィンギア132の回転運動は、これに咬合するモータギア114に伝達されるため、モータギア114の回転と連動してモータ軸114aが回転し、発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0054】
実施例3に係る装置1によれば、1つの発電ユニット100の中に、左後輪R1と右後輪R2の両方に接続される回転伝達部110及び発電モータ120と、二組の風力発電部130とを備えるので、多くの電気を発電することが可能となる。また、発電ユニット100を1つ搭載すれば、左後輪R1と右後輪R2の両方による発電ができるので、自動車Cへの配置や取付作業も容易に行うことができる。
【0055】
本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【0056】
例えば、各ギアの歯数や径の大きさ、配置及び組み合わせや、発電モータ120、風力発電部130の設置数は、実施例1乃至実施例3に限定されず適宜設定することができる。また、複数の発電モータ120に発電量が異なる発電モータを用いても良い。さらに、実施例1乃至実施例3における発電ユニット100は、後輪が非駆動輪となっている自動車Cに搭載されているが、前輪を非駆動輪とする自動車に搭載してもよいし、回転伝達部110に接続される非駆動輪の軸Sに、既知の駆動系装置や制動系装置等が設けられてもよい。
【0057】
また、蓄電ユニット200には、リチウムイオンバッテリを用いているが、これに限定されるものではなく、蓄電放電を繰り返し行うことができる他の種類のバッテリを用いてもよい。さらに、カートリッジ式蓄電池220は、複数個備えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 発電ユニット
110 回転伝達部
111 第一ギア
112 第二ギア
113 第三ギア
114 モータギア
120 発電モータ
130 風力発電部
131 ファン
132 ファンギア
200 蓄電ユニット

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に適用可能な発電装置に関し、特には、駆動力が掛からない車輪の回転を利用して発電させる自動車用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の動力源には、従来のガソリン等を燃料とする内燃機関に代わって電動モータが広く用いられている。こうした電気自動車では、電動モータに加えて、ヘッドライト等の保安部品やエアコンやオーディオ等の電装部品に電気が多用されていることから、全体として非常に多くの電気を消費することとなる。そこで、減速時の運動エネルギーを電気として回収する回生ブレーキを搭載して、発電された電気を蓄電池に補充することが行われているが、これに加えて、自動車の各部における運動エネルギーを効率良く電気に変換して蓄電可能とする発電装置が求められている。
【0003】
このような要望に応える発電装置としては、例えば、発電機と、蓄電池と、DC/ACインバーターと、かさ歯車とを備えた発電装置本体を牽引車両に搭載し、走行時に牽引車両の車輪の回転動力をかさ歯車を介して発電機を回転させて発電し蓄電池に蓄電する発電装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、電気自動車の走行中は、非駆動輪の回転による回転エネルギーから発電機により変換された電気エネルギーを蓄電池に蓄電する電気自動車用発電装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発電装置によれば、走行時の車輪の回転を利用して発電が可能である。また、特許文献2記載の電気自動車用発電装置によれば、電気自動車の走行による非動力輪の車軸の回転によって発電した電気エネルギーを蓄電池に補充できるので長く継続走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-78221号公報
【特許文献2】実用新案登録第170663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発電装置は、牽引車両に搭載される構成を採用するものであるため、発電及び電力使用の際には常に牽引車両を帯同させる必要がある。また、特許文献2記載の発電装置は、1つの非駆動輪に対して1つの発電機しか組み合わされないので、発電量に改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、自動車の車両本体に搭載可能であるとともに、非駆動輪の回転運動を複数の発電機に伝達させて効率良く発電し蓄電が可能な自動車用発電蓄電装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、原動機の動力が伝達される駆動輪と、該駆動輪に追動して回転する非駆動輪とを有する自動車に搭載可能な自動車用発電蓄電装置であって、複数の発電モータと、前記非駆動輪と前記発電モータとの間に介在され、前記非駆動輪の回転運動を伝達して前記複数の発電モータを駆動させる回転伝達部とを備えた発電ユニットと、該発電ユニットで発電された電気を蓄電する蓄電ユニットとを備えており、該回転伝達部は、前記非駆動輪と連動して回転する第一ギアと、該第一ギアよりも少ない歯数を有して前記第一ギアの回転運動が伝達される第二ギアと、該第二ギアと同一軸上に固定され、前記第一ギアよりも多い歯数を有する第三ギアと、前記複数の発電モータのモータ軸上にそれぞれ固定され、前記第三ギアの回転運動が伝達されて前記モータ軸を回転させるモータギアと、を備えることを特徴とする自動車用発電蓄電装置、である。
【0009】
すなわち、本発明にかかる自動車用発電蓄電装置は、自動車における非駆動輪の回転運動を用いて発電モータを駆動させ、これにより得られる電気を蓄電池に蓄電させるものである。そして、非駆動輪の回転運動を、複数の発電モータに伝達することにより高効率で発電できるようにしている。非駆動輪の回転運動は、回転伝達部によって発電モータへと伝達される。回転伝達部は、非駆動輪と連動して回転する第一ギア、第一ギアよりも少ない歯数を有して第一ギアの回転運動が伝達される第二ギア、第一ギアよりも多い歯数を有して第二ギアと連動して回転する第三ギア、第二ギアの歯数以下の歯数を有して第三ギアの回転運動が伝達されるモータギアを備えている。このような各ギアの構成によって、非駆動輪の回転数がモータギアに至るまでの間に増大されるので、発電モータを高回転で駆動させることができる。また、第三ギアの回転運動が複数のモータギアに同時に伝達されるので、1つの非駆動輪で複数の発電モータを駆動させることができる。さらに、上記のように構成される回転伝達部を備えることで、発電ユニットをコンパクトにすることができるので、サスペンションやブレーキ等の各種装置が配置されて設置スペースが限られる非駆動輪近傍に設置が容易となる。
【0010】
また、前記回転伝達部は、下方に各ギア間を潤滑する潤滑油が受容されるオイルパンを備えてもよい。
【0011】
回転伝達部は、複数のギアが咬合して構成されることから、これらの間に生じる摩擦によって非駆動輪の回転運動の伝達が阻害されたり、ギアが破損したりするおそれがある。そこで、オイルパンを設けて各ギア間に潤滑油を行き渡らせるようにすれば、非駆動輪の回転運動の伝達ロス及びギアの損傷を防止することができる。
【0012】
また、前記発電ユニットは、前記自動車の走行風を受けて回転するファンと、該ファンと同一軸上に固定されるファンギアと、該ファンギアの回転運動が伝達されるモータギアを有する発電モータとを備える風力発電部をさらに備えてもよい。
【0013】
こうすることで、上記回転伝達部による発電に加えて、自動車走行中に受ける走行風を用いた発電を行えるようになる。すなわち、走行風を受けて回転するファンと連動するファンギアの回転運動を発電モータのモータギアへと伝達して発電モータを駆動させて発電できるようにしている。これにより、非駆動輪の回転運動と、走行風で回転するファンの回転運動との両方を利用した発電が可能となるので、さらに多くの発電が可能となる。
【0014】
また、前記蓄電ユニットは、カートリッジ式蓄電池を備えてもよい。
【0015】
蓄電ユニットにカートリッジ式蓄電池を備えることで、発電ユニットで発電された電気をカートリッジ式蓄電池に蓄電し、これを取り外して他の自動車の補助電源として利用したり、家庭での非常用電源等の自動車以外で利用したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動車用発電蓄電装置によれば、非駆動輪の回転運動が回転伝達部によって複数の発電モータに伝達され駆動されることによって多くの電気を発電し、蓄電することができる。また、非駆動輪の回転数は、回転伝達部を構成する各ギアの歯数差によって増大されるので、発電モータを高回転で駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置の概略側面図である。
図2】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置の概略平面図である。
図3】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】実施例2に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5】実施例3に係る自動車用発電蓄電装置の概略平面図である。
図6】実施例3に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、エンジン、モータ等の原動機の動力を受ける駆動輪と、駆動輪に追動する非駆動輪とを備える自動車や、自動車に接続される牽引車両に適用可能であり、非駆動輪の回転運動を活用して発電を行い、これにより得られる電気の蓄電を行うことができる自動車用発電蓄電装置である。
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例0020】
図1及び図2には、実施例1に係る自動車用発電蓄電装置が示されている。自動車用発電蓄電装置は、原動機Pによって前輪Fが駆動される前輪駆動式の自動車Cに搭載されており、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備える。
【0021】
発電ユニット100は、原動機Pの動力が伝達されず、前輪Fの駆動に追動して回転する左右の後輪R1、R2近くにそれぞれ1つずつ配置されている。一方、蓄電ユニット200は、発電ユニット100と電気的に接続されており、発電ユニット100にて発電された電気が送電されて蓄電できるようになっている。また、蓄電ユニット200は、原動機Pと電気的に接続されて、蓄電されている電気を原動機Pに送電できるようになっている。
【0022】
図3には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。図3における発電ユニット100は、左後輪R1近傍に配置されるものであるが、右後輪R2近傍に配置される発電ユニット100も同様に構成される。よって、ここでは右後輪R2側に配置される発電ユニット100の説明は省略する。発電ユニット100は、回転伝達部110と、6つの発電モータ120とを備える。図3(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、中間ギア115とを備える。
【0023】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転運動が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0024】
第二ギア112は、第一ギア111と咬合して第一ギア111の回転が伝達されるものである。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は軸Sよりも上方位置に配置される。
【0025】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数が多い大径のギアに構成される。さらに、第三ギア113には、第三ギア113と同一歯数で同径のギアに形成されるとともに、ギア軸112aと同じ高さ位置に配置される中間ギア115が咬合される。
【0026】
モータギア114は、後に詳述する6つの発電モータ120のそれぞれのモータ軸114a上に固定されるギアである。6つのモータギア114のうちの3つは第三ギア113と咬合しており、そのうち2つがギア軸112aよりも上方で咬合し、1つがギア軸112aよりも下方位置で咬合している。また、残りの3つは中間ギア115と咬合しており、そのうち1つがギア軸115aより上方位置で咬合し、2つが下方位置で咬合している。
【0027】
6つの発電モータ120は、いずれも電磁誘導によって機械的エネルギー(運動)を電気エネルギーに変換するものであり、モータ軸114aを回転させることによって電気を生じるものである。6つの発電モータ120は、発電ユニット100内部の上方及び下方にそれぞれ3つずつ配置され、蓄電ユニット200と電気的に接続されている。
【0028】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1の回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これに咬合する第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径ギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112の回転と同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに第三ギア113の回転に連動して、中間ギア115が回転する。中間ギア115の回転数は、第二ギア112及び第三ギア113の回転数と同じである。最後に、第三ギア113と中間ギア115の回転運動は、これらと咬合する6つのモータギア114に伝達される。モータギア114は、それらよりも大径の第三ギア113及び中間ギア115の外周上で高速で回転され、この回転運動によってモータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。こうして発電された電気は、蓄電ユニット200に送られて蓄電され、原動機や電装部品に供給されることとなる。
【0029】
このように、左後輪R1の回転運動は、回転伝達部110によって発電モータ120へと伝達されて、発電に供されることとなる。このとき、左後輪R1の回転数は、モータギア114で増大されて6つの発電モータ120のモータ軸114aを高回転させるので、6つの発電モータ120において多くの電気が効率よく発電されることとなる。
【0030】
また、回転伝達部110の下方には、図示しないオイルパンが設けられている。オイルパンには、潤滑油が受容されており、この潤滑油に第一ギア111、第三ギア113及び中間ギア115の下部が浸漬されるようになっている。これにより、第一ギア111、第三ギア113及び中間ギア115が潤滑されるのはもちろん、これらのギアの回転によって潤滑油が掻き揚げられて、潤滑油に浸漬されていない第二ギア112及びモータギア114へも潤滑油が行き渡るようになる。こうすることで、各ギア間で生じる摩擦を低減させることができるので、回転運動の伝達をスムースに行えるようになる。
【0031】
蓄電ユニット200は、自動車Cのシャシーの中央に固定されるリチウムイオンバッテリからなるメインバッテリ210と、自動車Cの後方のトランクルームに配置され、リチウムイオンバッテリからなるカートリッジバッテリ220とから構成される。メインバッテリ210は、発電ユニット100の発電モータ120と電気的に接続されており、発電モータ120から送電される電気を蓄電することができる。そして、自動車Cの原動機Pや図示しない各種電装部品とも電気的に接続されていて、これらに対して蓄電された電気を供給できるようになっている。
【0032】
カートリッジバッテリ220は、発電ユニット100と電気的に接続される図示しないバッテリ接続部と着脱自在に接続されており、発電ユニット100で発電された電気の一部が送電され、蓄電されるようになっている。カートリッジバッテリ220は、自動車Cへの電力供給に用いることはもちろん、取り外して自動車C以外で使用することができる。例えば、他の自動車に補助的に電力供給する補助バッテリとして用いたり、家庭での非常用電源や屋外レジャーでの電源として用いたりすることができる。
【実施例0033】
実施例2に係る装置1もまた、実施例1に係る装置1と同様に、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備えるが、発電ユニット100の構成のみが実施例1と相違する。よって、ここでは実施例1との相違点である発電ユニット100の構成について詳述し、その他の構成については説明を省略する。
【0034】
図4には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。図4における発電ユニット100は、左後輪R1近傍に配置されるものであるが、右後輪R2近傍に配置される発電ユニット100も同様に構成される。発電ユニット100は、回転伝達部110と、3つの発電モータ120とを備える。図4(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、第一中間ギア116と、第二中間ギア117を備える。
【0035】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0036】
第二ギア112は、第一ギア111と咬合して第一ギア111の回転運動が伝達されるものである。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は、軸Sの上方に配置される。
【0037】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数が多い大径のギアに構成される。第三ギア113には、第二ギア112と同一の歯数と径に形成されてギア軸112aより上方の高さ位置に配置される第一中間ギア116が咬合される。また、第一中間ギア116のギア軸116a上には、第三ギア113よりも歯数が多い大径のギアに構成される第二中間ギア117が固定されている。
【0038】
モータギア114は、3つの発電モータ120の3つのモータ軸114aのそれぞれに固定されるギアである。3つのモータギア114のそれぞれは第二中間ギア117に咬合されており、そのうちの2つがギア軸116aよりも上方で咬合し、1つがギア軸116aよりも下方位置で咬合している。
【0039】
3つの発電モータ120は、いずれも電磁誘導によって機械的エネルギー(運動)を電気エネルギーに変換するものであり、モータ軸114aを回転させることによって電気を生じるものである。3つの発電モータ120は、そのうちの2つが発電ユニット100の上部に配置され、残りの1つが発電ユニット100の下部に配置される。
【0040】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1の回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これを咬合する第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111の歯数より少ない小径のギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112が回転するのと同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに、第三ギア113の回転に連動して、第一中間ギア116と第二中間ギア117も回転する。最後に、第二中間ギア117の回転運動は、これと咬合する3つのモータギア114に伝達される。モータギア114の回転運動によって、モータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0041】
さらに、発電ユニット100の底部には、フィン131と、フィンギア132と、モータギア114と、発電モータ120とを備えてなる風力発電部130が設けられている。フィン131は、自動車Cの車体底面を通過する走行風を受けることができるように、発電ユニット100の外部底面に配置され、その上部にはフィンギア132が設けられている。すなわち、フィン131の回転に連動してフィンギア132が回転するようになっている。フィンギア132の回転運動は、これに咬合するモータギア114に伝達される。これによって、モータギア114がフィンギア132の回転運動と連動してモータ軸114aを回転させ、発電モータ120が駆動されることとなる。なお、発電モータ120で発電された電気は、回転伝達部110における発電モータ120と同様に、蓄電ユニット200に送られて蓄電されることとなる。
【0042】
実施例2に係る装置1によれば、風力発電部130をさらに備えることにより、後輪R1の回転運動を用いた発電に加えて、走行風によるフィンの回転運動を用いた発電を行うことが可能となる。
【実施例0043】
実施例3に係る装置1もまた、実施例1に係る装置1と同様に、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備えるが、発電ユニット100の構成が実施例1と相違する。よって、ここでは実施例1との相違点である発電ユニット100の構成について詳述し、その他の構成については説明を省略する。
【0044】
図5には、実施例3に係る装置1が示されている。装置1は、原動機Pによって前輪Fが駆動される前輪駆動式の自動車Cに搭載されており、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備える。発電ユニット100は、原動機Pの動力が伝達されず、前輪Fの駆動に追動して回転する左後輪R1、右後輪R2の間に1つ配置されている。
【0045】
図6には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。発電ユニット100は、回転伝達部110及び4つの発電モータ120と風力発電部130とを左右に一組ずつ備える。以下、左後輪R1側に配置される回転伝達部110、発電モータ120及び風力発電部130について説明し、右後輪R2側については説明を省略する。
【0046】
図6(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、第一中間ギア116と、第二中間ギア117とを備える。
【0047】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0048】
第二ギア112は、第一ギア111と同じ歯数で構成される第一中間ギア116を介して第一ギア111の回転運動が伝達される。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数の少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は、第一中間ギア116のギア軸よりも上方に配置される。
【0049】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数の多い大径のギアに構成される。また、第三ギア113には、第三ギア113と同一歯数で同径のギアに形成され、ギア軸112aと同じ高さ位置にギア軸117aを有する第二中間ギア117が咬合される。
【0050】
モータギア114は、後に詳述する4つの発電モータ120のそれぞれのモータ軸114a上に固定されるギアである。4つのモータギア114のうちの2つは第三ギア113と咬合しており、それぞれギア軸113aよりも上方位置と下方位置で咬合している。また、残りの2つは第二中間ギア117とギア軸114aより上方位置で咬合している。
【0051】
さらに、発電ユニット100の前方(自動車Cの前進方向側)には、フィン131と、フィンギア132と、モータギア114と、発電モータ120とを備えてなる風力発電部130が設けられている。フィン131は、自動車正面からの走行風を受けることができるように、自動車Cの前方側となる位置に配置されており、フィンギア132のギア軸132aの一端に固定されている。また、フィン131が収まるハウジング部分の側面及び背面には、正面からの走行風を側方に通過させるための通気孔130aが設けられている。
【0052】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1に接続される軸Sの回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これと咬合する第一中間ギア116を介して第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111よりも小径のギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112の回転と同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに第三ギア113の回転に連動して、第二中間ギア117も回転する。第二中間ギア117の回転数は、第三ギア113の回転数と同じである。最後に、第三ギア113及び第二中間ギア117の回転運動が、これらと咬合する4つのモータギア114に伝達される。モータギア114の回転運動によって、これが固定されるモータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0053】
さらに、走行風を受けてフィン131が回転すると、これと連動してフィンギア132が回転する。フィンギア132の回転運動は、これに咬合するモータギア114に伝達されるため、モータギア114の回転と連動してモータ軸114aが回転し、発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0054】
実施例3に係る装置1によれば、1つの発電ユニット100の中に、左後輪R1と右後輪R2の両方に接続される回転伝達部110及び発電モータ120と、二組の風力発電部130とを備えるので、多くの電気を発電することが可能となる。また、発電ユニット100を1つ搭載すれば、左後輪R1と右後輪R2の両方による発電ができるので、自動車Cへの配置や取付作業も容易に行うことができる。
【0055】
本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【0056】
例えば、各ギアの歯数や径の大きさ、配置及び組み合わせや、発電モータ120、風力発電部130の設置数は、実施例1乃至実施例3に限定されず適宜設定することができる。また、複数の発電モータ120に発電量が異なる発電モータを用いても良い。さらに、実施例1乃至実施例3における発電ユニット100は、後輪が非駆動輪となっている自動車Cに搭載されているが、前輪を非駆動輪とする自動車に搭載してもよいし、回転伝達部110に接続される非駆動輪の軸Sに、既知の駆動系装置や制動系装置等が設けられてもよい。
【0057】
また、蓄電ユニット200には、リチウムイオンバッテリを用いているが、これに限定されるものではなく、蓄電放電を繰り返し行うことができる他の種類のバッテリを用いてもよい。さらに、カートリッジ式蓄電池220は、複数個備えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 発電ユニット
110 回転伝達部
111 第一ギア
112 第二ギア
113 第三ギア
114 モータギア
120 発電モータ
130 風力発電部
131 ファン
132 ファンギア
200 蓄電ユニット
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の動力が伝達される駆動輪と、該駆動輪に追動する少なくとも1つの非駆動輪とを有する自動車に搭載可能な自動車用発電蓄電装置であって、
複数の発電モータと、前記非駆動輪の1つと前記複数の発電モータとの間に介在され、前記1つの非駆動輪の回転運動を前記複数の発電モータに伝達して駆動させる回転伝達部とを有する発電ユニットと、該発電ユニットで発電された電気を蓄電する蓄電ユニットとを備えており、
該回転伝達部は、前記非駆動輪と同一軸上に固定されて前記1つの非駆動輪と連動して回転する第一ギアと、
該第一ギアよりも少ない歯数を有し、前記第一ギアと咬合して前記第一ギアの回転運動が伝達される第二ギアと、
記第一ギアよりも多い歯数を有し、前記第二ギアと同一軸上に固定されて前記第二ギアと連動して回転する第三ギアと、
前記複数の発電モータのそれぞれのモータ軸上に固定され前記第三ギアの回転運動を前記モータ軸に伝達させるモータギアと、
を備えることを特徴とする自動車用発電蓄電装置。
【請求項2】
前記回転伝達部は、下方に各ギア間を潤滑する潤滑油が受容されるオイルパンを備えることを特徴とする請求項1記載の自動車用発電蓄電装置。
【請求項3】
前記発電ユニットは、風力発電モータと、前記自動車の走行風を受けて回転するファンと、該ファンと同一軸上に固定されて前記ファンと連動して回転するファンギアと、該ファンギアの回転運動を前記風力発電モータのモータ軸に伝達させるモータギアとを有する風力発電部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車用発電蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電ユニットは、カートリッジ式蓄電池を備えることを特徴とする請求項1記載の自動車用発電蓄電装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に適用可能な発電装置に関し、特には、駆動力が掛からない車輪の回転を利用して発電させる自動車用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の動力源には、従来のガソリン等を燃料とする内燃機関に代わって電動モータが広く用いられている。こうした電気自動車では、電動モータに加えて、ヘッドライト等の保安部品やエアコンやオーディオ等の電装部品に電気が多用されていることから、全体として非常に多くの電気を消費することとなる。そこで、減速時の運動エネルギーを電気として回収する回生ブレーキを搭載して、発電された電気を蓄電池に補充することが行われているが、これに加えて、自動車の各部における運動エネルギーを効率良く電気に変換して蓄電可能とする発電装置が求められている。
【0003】
このような要望に応える発電装置としては、例えば、発電機と、蓄電池と、DC/ACインバーターと、かさ歯車とを備えた発電装置本体を牽引車両に搭載し、走行時に牽引車両の車輪の回転動力をかさ歯車を介して発電機を回転させて発電し蓄電池に蓄電する発電装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、電気自動車の走行中は、非駆動輪の回転による回転エネルギーから発電機により変換された電気エネルギーを蓄電池に蓄電する電気自動車用発電装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発電装置によれば、走行時の車輪の回転を利用して発電が可能である。また、特許文献2記載の電気自動車用発電装置によれば、電気自動車の走行による非動力輪の車軸の回転によって発電した電気エネルギーを蓄電池に補充できるので長く継続走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-78221号公報
【特許文献2】実用新案登録第170663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発電装置は、牽引車両に搭載される構成を採用するものであるため、発電及び電力使用の際には常に牽引車両を帯同させる必要がある。また、特許文献2記載の発電装置は、1つの非駆動輪に対して1つの発電機しか組み合わされないので、発電量に改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、自動車の車両本体に搭載可能であるとともに、非駆動輪の回転運動を複数の発電機に伝達させて効率良く発電し蓄電が可能な自動車用発電蓄電装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、原動機の動力が伝達される駆動輪と、該駆動輪に追動する少なくとも1つの非駆動輪とを有する自動車に搭載可能な自動車用発電蓄電装置であって、複数の発電モータと、前記非駆動輪の1つと前記複数の発電モータとの間に介在され、前記1つの非駆動輪の回転運動を前記複数の発電モータに伝達して駆動させる回転伝達部とを有する発電ユニットと、該発電ユニットで発電された電気を蓄電する蓄電ユニットとを備えており、該回転伝達部は、前記非駆動輪と同一軸上に固定されて前記非駆動輪と連動して回転する第一ギアと、該第一ギアよりも少ない歯数を有し、前記第一ギアと咬合して前記第一ギアの回転運動が伝達される第二ギアと、前記第一ギアよりも多い歯数を有し、前記第二ギアと同一軸上に固定されて前記第二ギアと連動して回転する第三ギアと、前記複数の発電モータのそれぞれのモータ軸上に固定され、前記第三ギアの回転運動を前記モータ軸に伝達させるモータギアと、を備えることを特徴とする自動車用発電蓄電装置、である。
【0009】
すなわち、本発明にかかる自動車用発電蓄電装置は、自動車における非駆動輪の回転運動を用いて発電モータを駆動させ、これにより得られる電気を蓄電池に蓄電させるものである。そして、非駆動輪の回転運動を、複数の発電モータに伝達することにより高効率で発電できるようにしている。非駆動輪の回転運動は、回転伝達部によって発電モータへと伝達される。回転伝達部は、非駆動輪と連動して回転する第一ギア、第一ギアよりも少ない歯数を有して第一ギアの回転運動が伝達される第二ギア、第一ギアよりも多い歯数を有して第二ギアと連動して回転する第三ギア、第二ギアの歯数以下の歯数を有して第三ギアの回転運動が伝達されるモータギアを備えている。このような各ギアの構成によって、非駆動輪の回転数がモータギアに至るまでの間に増大されるので、発電モータを高回転で駆動させることができる。また、第三ギアの回転運動が複数のモータギアに同時に伝達されるので、1つの非駆動輪で複数の発電モータを駆動させることができる。さらに、上記のように構成される回転伝達部を備えることで、発電ユニットをコンパクトにすることができるので、サスペンションやブレーキ等の各種装置が配置されて設置スペースが限られる非駆動輪近傍に設置が容易となる。
【0010】
また、前記回転伝達部は、下方に各ギア間を潤滑する潤滑油が受容されるオイルパンを備えてもよい。
【0011】
回転伝達部は、複数のギアが咬合して構成されることから、これらの間に生じる摩擦によって非駆動輪の回転運動の伝達が阻害されたり、ギアが破損したりするおそれがある。そこで、オイルパンを設けて各ギア間に潤滑油を行き渡らせるようにすれば、非駆動輪の回転運動の伝達ロス及びギアの損傷を防止することができる。
【0012】
また、前記発電ユニットは、風力発電モータと、前記自動車の走行風を受けて回転するファンと、該ファンと同一軸上に固定されて前記ファンと連動して回転するファンギアと、該ファンギアの回転運動を前記風力発電モータのモータ軸に伝達させるモータギアとを有する風力発電部をさらに備えてもよい。
【0013】
こうすることで、上記回転伝達部による発電に加えて、自動車走行中に受ける走行風を用いた発電を行えるようになる。すなわち、走行風を受けて回転するファンと連動するファンギアの回転運動を発電モータのモータギアへと伝達して発電モータを駆動させて発電できるようにしている。これにより、非駆動輪の回転運動と、走行風で回転するファンの回転運動との両方を利用した発電が可能となるので、さらに多くの発電が可能となる。
【0014】
また、前記蓄電ユニットは、カートリッジ式蓄電池を備えてもよい。
【0015】
蓄電ユニットにカートリッジ式蓄電池を備えることで、発電ユニットで発電された電気をカートリッジ式蓄電池に蓄電し、これを取り外して他の自動車の補助電源として利用したり、家庭での非常用電源等の自動車以外で利用したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動車用発電蓄電装置によれば、非駆動輪の回転運動が回転伝達部によって複数の発電モータに伝達され駆動されることによって多くの電気を発電し、蓄電することができる。また、非駆動輪の回転数は、回転伝達部を構成する各ギアの歯数差によって増大されるので、発電モータを高回転で駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置の概略側面図である。
図2】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置の概略平面図である。
図3】実施例1に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】実施例2に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5】実施例3に係る自動車用発電蓄電装置の概略平面図である。
図6】実施例3に係る自動車用発電蓄電装置を構成する発電ユニットの内部機構を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、エンジン、モータ等の原動機の動力を受ける駆動輪と、駆動輪に追動する非駆動輪とを備える自動車や、自動車に接続される牽引車両に適用可能であり、非駆動輪の回転運動を活用して発電を行い、これにより得られる電気の蓄電を行うことができる自動車用発電蓄電装置である。
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例0020】
図1及び図2には、実施例1に係る自動車用発電蓄電装置が示されている。自動車用発電蓄電装置は、原動機Pによって前輪Fが駆動される前輪駆動式の自動車Cに搭載されており、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備える。
【0021】
発電ユニット100は、原動機Pの動力が伝達されず、前輪Fの駆動に追動して回転する左右の後輪R1、R2近くにそれぞれ1つずつ配置されている。一方、蓄電ユニット200は、発電ユニット100と電気的に接続されており、発電ユニット100にて発電された電気が送電されて蓄電できるようになっている。また、蓄電ユニット200は、原動機Pと電気的に接続されて、蓄電されている電気を原動機Pに送電できるようになっている。
【0022】
図3には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。図3における発電ユニット100は、左後輪R1近傍に配置されるものであるが、右後輪R2近傍に配置される発電ユニット100も同様に構成される。よって、ここでは右後輪R2側に配置される発電ユニット100の説明は省略する。発電ユニット100は、回転伝達部110と、6つの発電モータ120とを備える。図3(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、中間ギア115とを備える。
【0023】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転運動が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0024】
第二ギア112は、第一ギア111と咬合して第一ギア111の回転が伝達されるものである。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は軸Sよりも上方位置に配置される。
【0025】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数が多い大径のギアに構成される。さらに、第三ギア113には、第三ギア113と同一歯数で同径のギアに形成されるとともに、ギア軸112aと同じ高さ位置に配置される中間ギア115が咬合される。
【0026】
モータギア114は、後に詳述する6つの発電モータ120のそれぞれのモータ軸114a上に固定されるギアである。6つのモータギア114のうちの3つは第三ギア113と咬合しており、そのうち2つがギア軸112aよりも上方で咬合し、1つがギア軸112aよりも下方位置で咬合している。また、残りの3つは中間ギア115と咬合しており、そのうち1つがギア軸115aより上方位置で咬合し、2つが下方位置で咬合している。
【0027】
6つの発電モータ120は、いずれも電磁誘導によって機械的エネルギー(運動)を電気エネルギーに変換するものであり、モータ軸114aを回転させることによって電気を生じるものである。6つの発電モータ120は、発電ユニット100内部の上方及び下方にそれぞれ3つずつ配置され、蓄電ユニット200と電気的に接続されている。
【0028】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1の回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これに咬合する第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径ギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112の回転と同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに第三ギア113の回転に連動して、中間ギア115が回転する。中間ギア115の回転数は、第二ギア112及び第三ギア113の回転数と同じである。最後に、第三ギア113と中間ギア115の回転運動は、これらと咬合する6つのモータギア114に伝達される。モータギア114は、それらよりも大径の第三ギア113及び中間ギア115の外周上で高速で回転され、この回転運動によってモータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。こうして発電された電気は、蓄電ユニット200に送られて蓄電され、原動機や電装部品に供給されることとなる。
【0029】
このように、左後輪R1の回転運動は、回転伝達部110によって発電モータ120へと伝達されて、発電に供されることとなる。このとき、左後輪R1の回転数は、モータギア114で増大されて6つの発電モータ120のモータ軸114aを高回転させるので、6つの発電モータ120において多くの電気が効率よく発電されることとなる。
【0030】
また、回転伝達部110の下方には、図示しないオイルパンが設けられている。オイルパンには、潤滑油が受容されており、この潤滑油に第一ギア111、第三ギア113及び中間ギア115の下部が浸漬されるようになっている。これにより、第一ギア111、第三ギア113及び中間ギア115が潤滑されるのはもちろん、これらのギアの回転によって潤滑油が掻き揚げられて、潤滑油に浸漬されていない第二ギア112及びモータギア114へも潤滑油が行き渡るようになる。こうすることで、各ギア間で生じる摩擦を低減させることができるので、回転運動の伝達をスムースに行えるようになる。
【0031】
蓄電ユニット200は、自動車Cのシャシーの中央に固定されるリチウムイオンバッテリからなるメインバッテリ210と、自動車Cの後方のトランクルームに配置され、リチウムイオンバッテリからなるカートリッジバッテリ220とから構成される。メインバッテリ210は、発電ユニット100の発電モータ120と電気的に接続されており、発電モータ120から送電される電気を蓄電することができる。そして、自動車Cの原動機Pや図示しない各種電装部品とも電気的に接続されていて、これらに対して蓄電された電気を供給できるようになっている。
【0032】
カートリッジバッテリ220は、発電ユニット100と電気的に接続される図示しないバッテリ接続部と着脱自在に接続されており、発電ユニット100で発電された電気の一部が送電され、蓄電されるようになっている。カートリッジバッテリ220は、自動車Cへの電力供給に用いることはもちろん、取り外して自動車C以外で使用することができる。例えば、他の自動車に補助的に電力供給する補助バッテリとして用いたり、家庭での非常用電源や屋外レジャーでの電源として用いたりすることができる。
【実施例0033】
実施例2に係る装置1もまた、実施例1に係る装置1と同様に、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備えるが、発電ユニット100の構成のみが実施例1と相違する。よって、ここでは実施例1との相違点である発電ユニット100の構成について詳述し、その他の構成については説明を省略する。
【0034】
図4には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。図4における発電ユニット100は、左後輪R1近傍に配置されるものであるが、右後輪R2近傍に配置される発電ユニット100も同様に構成される。発電ユニット100は、回転伝達部110と、3つの発電モータ120とを備える。図4(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、第一中間ギア116と、第二中間ギア117を備える。
【0035】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0036】
第二ギア112は、第一ギア111と咬合して第一ギア111の回転運動が伝達されるものである。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数が少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は、軸Sの上方に配置される。
【0037】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数が多い大径のギアに構成される。第三ギア113には、第二ギア112と同一の歯数と径に形成されてギア軸112aより上方の高さ位置に配置される第一中間ギア116が咬合される。また、第一中間ギア116のギア軸116a上には、第三ギア113よりも歯数が多い大径のギアに構成される第二中間ギア117が固定されている。
【0038】
モータギア114は、3つの発電モータ120の3つのモータ軸114aのそれぞれに固定されるギアである。3つのモータギア114のそれぞれは第二中間ギア117に咬合されており、そのうちの2つがギア軸116aよりも上方で咬合し、1つがギア軸116aよりも下方位置で咬合している。
【0039】
3つの発電モータ120は、いずれも電磁誘導によって機械的エネルギー(運動)を電気エネルギーに変換するものであり、モータ軸114aを回転させることによって電気を生じるものである。3つの発電モータ120は、そのうちの2つが発電ユニット100の上部に配置され、残りの1つが発電ユニット100の下部に配置される。
【0040】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1の回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これを咬合する第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111の歯数より少ない小径のギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112が回転するのと同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに、第三ギア113の回転に連動して、第一中間ギア116と第二中間ギア117も回転する。最後に、第二中間ギア117の回転運動は、これと咬合する3つのモータギア114に伝達される。モータギア114の回転運動によって、モータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0041】
さらに、発電ユニット100の底部には、ファン131と、ファンギア132と、モータギア114と、風力発電モータ120とを備えてなる風力発電部130が設けられている。ファン131は、自動車Cの車体底面を通過する走行風を受けることができるように、発電ユニット100の外部底面に配置され、その上部にはファンギア132が設けられている。すなわち、ファン131の回転に連動してファンギア132が回転するようになっている。ファンギア132の回転運動は、これに咬合するモータギア114に伝達される。これによって、モータギア114がファンギア132の回転運動と連動してモータ軸114aを回転させ、発電モータ120が駆動されることとなる。なお、風力発電モータ120で発電された電気は、回転伝達部110における発電モータ120と同様に、蓄電ユニット200に送られて蓄電されることとなる。
【0042】
実施例2に係る装置1によれば、風力発電部130をさらに備えることにより、後輪R1の回転運動を用いた発電に加えて、走行風によるファンの回転運動を用いた発電を行うことが可能となる。
【実施例0043】
実施例3に係る装置1もまた、実施例1に係る装置1と同様に、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備えるが、発電ユニット100の構成が実施例1と相違する。よって、ここでは実施例1との相違点である発電ユニット100の構成について詳述し、その他の構成については説明を省略する。
【0044】
図5には、実施例3に係る装置1が示されている。装置1は、原動機Pによって前輪Fが駆動される前輪駆動式の自動車Cに搭載されており、発電ユニット100と、蓄電ユニット200とを備える。発電ユニット100は、原動機Pの動力が伝達されず、前輪Fの駆動に追動して回転する左後輪R1、右後輪R2の間に1つ配置されている。
【0045】
図6には、発電ユニット100の内部機構が説明されている。発電ユニット100は、回転伝達部110及び4つの発電モータ120と風力発電部130とを左右に一組ずつ備える。以下、左後輪R1側に配置される回転伝達部110、発電モータ120及び風力発電部130について説明し、右後輪R2側については説明を省略する。
【0046】
図6(a)に示すように、回転伝達部110は、第一ギア111と、第二ギア112と、第三ギア113と、モータギア114と、第一中間ギア116と、第二中間ギア117とを備える。
【0047】
第一ギア111は、左後輪R1と連動して回転する軸S上に固定される。すなわち、第一ギア111は、左後輪R1の回転に連動して回転するようになっている。ここで、左後輪R1と回転伝達部110との間には、左後輪R1がサスペンションの動きによって上下しても左後輪R1の回転が第一ギア111に確実に伝達されるように、図示しないジョイントが設けられている。
【0048】
第二ギア112は、第一ギア111と同じ歯数で構成される第一中間ギア116を介して第一ギア111の回転運動が伝達される。第二ギア112は、第一ギア111よりも歯数の少ない小径のギアに構成される。また、第二ギア112は、第一中間ギア116のギア軸よりも上方に配置される。
【0049】
第三ギア113は、第二ギア112のギア軸112a上に固定されており、第一ギア111よりも歯数の多い大径のギアに構成される。また、第三ギア113には、第三ギア113と同一歯数で同径のギアに形成され、ギア軸112aと同じ高さ位置にギア軸117aを有する第二中間ギア117が咬合される。
【0050】
モータギア114は、後に詳述する4つの発電モータ120のそれぞれのモータ軸114a上に固定されるギアである。4つのモータギア114のうちの2つは第三ギア113と咬合しており、それぞれギア軸113aよりも上方位置と下方位置で咬合している。また、残りの2つは第二中間ギア117とギア軸117aより上方位置で咬合している。
【0051】
さらに、発電ユニット100の前方(自動車Cの前進方向側)には、ファン131と、ファンギア132と、モータギア114と、風力発電モータ120とを備えてなる風力発電部130が設けられている。ファン131は、自動車正面からの走行風を受けることができるように、自動車Cの前方側となる位置に配置されており、ファンギア132のギア軸132aの一端に固定されている。また、ファン131が収まるハウジング部分の側面及び背面には、正面からの走行風を側方に通過させるための通気孔130aが設けられている。
【0052】
発電ユニット100では、次のようにして発電が行われる。まず、左後輪R1に接続される軸Sの回転に連動して第一ギア111が回転する。第一ギア111の回転数は、左後輪R1の回転数と同じである。第一ギア111の回転運動は、これと咬合する第一中間ギア116を介して第二ギア112へと伝達されて第二ギア112を回転させる。第二ギア112は、第一ギア111よりも小径のギアであるため、その回転数は第一ギア111よりも高回転となる。つまり、第一ギア111が1回転するまでに第二ギア112は複数回転することとなる。第二ギア112の回転と同時に、ギア軸112a上に固定される第三ギア113が回転する。第三ギア113の回転数は、第二ギア112の回転数と同じである。さらに第三ギア113の回転に連動して、第二中間ギア117も回転する。第二中間ギア117の回転数は、第三ギア113の回転数と同じである。最後に、第三ギア113及び第二中間ギア117の回転運動が、これらと咬合する4つのモータギア114に伝達される。モータギア114の回転運動によって、これが固定されるモータ軸114aが回転されて発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0053】
さらに、走行風を受けてファン131が回転すると、これと連動してファンギア132が回転する。ファンギア132の回転運動は、これに咬合するモータギア114に伝達されるため、モータギア114の回転と連動してモータ軸114aが回転し、風力発電モータ120による発電が行われることとなる。
【0054】
実施例3に係る装置1によれば、1つの発電ユニット100の中に、左後輪R1と右後輪R2の両方に接続される回転伝達部110及び発電モータ120と、二組の風力発電部130とを備えるので、多くの電気を発電することが可能となる。また、発電ユニット100を1つ搭載すれば、左後輪R1と右後輪R2の両方による発電ができるので、自動車Cへの配置や取付作業も容易に行うことができる。
【0055】
本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【0056】
例えば、各ギアの歯数や径の大きさ、配置及び組み合わせや、発電モータ120、風力発電部130の設置数は、実施例1乃至実施例3に限定されず適宜設定することができる。また、複数の発電モータ120に発電量が異なる発電モータを用いても良い。さらに、実施例1乃至実施例3における発電ユニット100は、後輪が非駆動輪となっている自動車Cに搭載されているが、前輪を非駆動輪とする自動車に搭載してもよいし、回転伝達部110に接続される非駆動輪の軸Sに、既知の駆動系装置や制動系装置等が設けられてもよい。
【0057】
また、蓄電ユニット200には、リチウムイオンバッテリを用いているが、これに限定されるものではなく、蓄電放電を繰り返し行うことができる他の種類のバッテリを用いてもよい。さらに、カートリッジ式蓄電池220は、複数個備えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 発電ユニット
110 回転伝達部
111 第一ギア
112 第二ギア
113 第三ギア
114 モータギア
120 発電モータ、風力発電モータ
130 風力発電部
131 ファン
132 ファンギア
200 蓄電ユニット