(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150245
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】くぐり戸明示装置及びそれを備えた防火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 2/06 20060101AFI20231005BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20231005BHJP
A62B 3/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A62C2/06 501
E06B5/16
A62B3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059250
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 伯公
【テーマコード(参考)】
2E184
2E239
【Fターム(参考)】
2E184AA01
2E184GG12
2E184GG14
2E239CA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】火災発生時、避難する人にくぐり戸の位置を案内できるようにする。
【解決手段】随時閉鎖式の防火戸(2)と共に設けられるくぐり戸(4)自体か、その近傍位置に設けられて、前記防火戸(2)が閉鎖した際に作動して、前記くぐり戸(4)の位置を光及び/又は音によって明示する明示手段(5a、5b)を有することを特徴とするくぐり戸明示装置(5)である。また、そのくぐり戸明示装置(5)を備えることを特徴とする防火設備(1)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火戸と共に設けられるくぐり戸自体か、その近傍位置に設けられて、前記防火戸が閉鎖した際に作動して、前記くぐり戸の位置を光及び/又は音によって明示する明示手段を有することを特徴とするくぐり戸明示装置。
【請求項2】
前記明示手段は、火災感知器の火災感知に基づく信号を受けて作動するか、前記防火戸の閉鎖動作又は前記防火戸の自動閉鎖装置の作動に基づく信号を受けて作動するか、又は、前記防火戸の閉鎖動作に機械的に連動して作動するものであることを特徴とする請求項1に記載のくぐり戸明示装置。
【請求項3】
前記明示手段は、前記くぐり戸に光を照射して、その位置を明示するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のくぐり戸明示装置。
【請求項4】
前記明示手段は、音声メッセージを発生して、前記くぐり戸の位置を明示するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のくぐり戸明示装置。
【請求項5】
前記音声メッセージは、前記くぐり戸自体か、その近傍位置に設けられる避難口誘導灯又は誘導標識との位置関係によって、前記くぐり戸の位置を案内するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のくぐり戸明示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のくぐり戸明示装置を備えることを特徴とする防火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防火戸と共に設けられるくぐり戸を明示する明示装置及びそれを備えた防火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内等には、防火区画を画定する防火戸が設けられることがある。防火戸は、防火扉、防火ドア、防火シャッター等と称されるものも含めて、その設置基準(次に説明するくぐり戸の設置基準を含む)が関係法令等で規定されており、火災の拡大を防止するために、防火区画の開口部等に設けられる。防火戸には、常時閉鎖式のものと随時閉鎖式のものがあるが、随時閉鎖式のものの場合、くぐり戸が防火戸自体か、その近傍位置に設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
くぐり戸は、火災発生時、防火戸が火災感知器の火災感知に基づいて閉鎖した際の避難経路を確保するために設けられるものである。しかしながら、実際の火災発生の場面において、避難する人は、防火戸が閉鎖していると、パニックに陥ってしまい、くぐり戸があっても、その存在や位置が分からないことがあり得ると考えられる。また、煙や停電の影響で周囲が暗く、くぐり戸の存在が分からないことがあり得ると考えられる。
【0005】
この発明は、前記の事情に鑑み、火災発生時、避難する人にくぐり戸の位置を案内できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、防火戸と共に設けられるくぐり戸自体か、その近傍位置に設けられて、前記防火戸が閉鎖した際に作動して、前記くぐり戸の位置を光及び/又は音によって明示する明示手段を有することを特徴とするくぐり戸明示装置、である。
【0007】
また、この発明は、前記くぐり戸明示装置を備えたことを特徴とする防火設備、である。
【0008】
ここで、この発明において、前記明示手段は、火災感知器の火災感知に基づく信号を受けて作動するか、前記防火戸の閉鎖動作又は前記防火戸の自動閉鎖装置の作動に基づく信号を受けて作動するか、又は、前記防火戸の閉鎖動作に機械的に連動して作動するものとすることができる。また、前記明示手段は、前記くぐり戸に光を照射して、その位置を明示するものとすることができる。また、前記明示手段は、音声メッセージを発生して、前記くぐり戸の位置を明示するものとすることができる。また、前記音声メッセージは、前記くぐり戸自体か、その近傍位置に設けられる避難口誘導灯又は誘導標識との位置関係によって、前記くぐり戸の位置を案内するものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、火災発生時、くぐり戸の位置を光及び/又は音によって明示することができ、避難する人にその案内をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施形態の一例を示したものであり、防火設備を構成する随時閉鎖式の防火戸、自動閉鎖装置、くぐり戸及びくぐり戸明示装置を自動火災報知設備の火災感知器と共に示した説明図である。なお、防火戸は、閉鎖した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明のくぐり戸明示装置及び防火設備の実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[防火設備]
建物TM内には、火災発生時、防火区画を画定し、火災の拡大を防ぐためのものとして、防火設備1が設けられる。防火設備1は、各構成部分の詳細は後記でそれぞれ説明するが、防火戸2と、自動閉鎖装置3と、くぐり戸4と、くぐり戸明示装置5を備える。
【0013】
[防火戸]
防火戸2は、随時閉鎖式のものであり、常時は防火区画の通口等の開口部を開放しつつ、火災発生時は火災感知器(煙感知器等)15の火災感知に基づいて自動的に閉鎖するものとして設けられる(
図1は防火戸2が閉鎖した状態を示している)。
【0014】
なお、防火戸2の開閉方式については、図示の例の場合、開き戸式に開閉するものを示しているが、その他にも、引き戸式、折れ戸式等、種々の開閉方式のものを用いることもできるし、種々の開閉方式のシャッターを用いることもできる。また、防火戸2の閉鎖駆動機構については、防火戸2の開閉方式に対応して適宜選択することができ、開き戸式のものであれば、例えば、矢印2A方向に閉鎖駆動するドアチェックアームやヒンジクローザ等とすることができる(図示の例はヒンジクローザとする場合を想定して示している)。
【0015】
[自動閉鎖装置]
自動閉鎖装置3は、常時は防火戸2を開放状態に維持しつつ、火災発生時は火災感知器15の火災感知に基づく自動火災報知設備側からの信号を受けて作動して、防火戸2の開放状態の維持機構を解除するように構成される。自動閉鎖装置3としては、例えば、ラッチ式の電磁レリーズとすることができる。
【0016】
その場合、自動閉鎖装置3を建物TMの壁面等の構造物側(例えば、図示の例のように防火戸2の戸袋TB内の壁面等)に設けると共に、ラッチ式の電磁レリーズである自動閉鎖装置3と協働するフック部材2aを防火戸2側に設け、常時は、自動閉鎖装置3がフック部材の掛け止め状態を維持して、防火戸2の開放状態を維持する一方、火災時は、火災感知器15の火災感知に基づく連動信号を受けて、自動閉鎖装置3が作動して、フック部材2aの掛け止め状態を解除し、防火戸2を開放して、その閉鎖駆動機構によって閉鎖させるものとすることができる。
【0017】
なお、自動閉鎖装置3としては、ラッチとフックによる掛け止め構造とするのに代えて、レリーズ側を電磁石とする、磁力による吸着構造によるものとすることもできる。また、火災感知器15の火災感知に基づく信号を受けて解除作動するものとするのに代えて、温度ヒューズ式のものとすることもできる。すなわち、火災発生時、所定温度の熱によって温度ヒューズが切れることにより、自動閉鎖装置3が機械的に解除作動するものとすることもできる。
【0018】
[くぐり戸]
くぐり戸4は、火災発生時、防火戸2が閉鎖した際の避難経路を確保するために設けられるものである。図示の例の場合、防火戸2自体に設けられるものとしており、防火戸2自体に設けられる避難用の開口部を常時閉鎖しつつ、手動で開放可能なものとして、火災発生時、防火戸2が閉鎖したとしても、適宜、避難用の開口部を開放可能に設けられるものとしている。
【0019】
なお、くぐり戸4は、防火戸2自体に設けられるものとするのに代えて、その近傍位置に設けられるものとすることもできる。例えば、防火戸2をシャッターとする場合等、防火戸2自体にくぐり戸4を設けることができない場合には、防火戸2によって開閉される通口等の開口部が設けられる壁に、その開口部に隣接して設けられるものとすることができる。また、図示の例の場合、くぐり戸4を開き戸式に開閉するものとする場合を想定して示しているが、他の開閉方式によって開閉するものとしてもよい。
【0020】
[くぐり戸明示装置]
そして、この発明の防火設備1には、火災発生時、防火戸2が閉鎖する際に作動して、くぐり戸4の位置を光や音によって明示する明示手段(例えば、後記で説明するライト5aやスピーカ5b)を有するくぐり戸明示装置5が設けられる。
【0021】
これにより、防火設備1においては、火災発生時、くぐり戸4の位置を光や音によって明示することができ、避難する人にその案内をすることができる。
【0022】
なお、くぐり戸明示装置5の設置位置については、図示の例の場合、防火戸2の近傍位置(防火戸2の戸袋TBの上方)に設けられるものとしているが、防火戸2自体に設けられるものとすることもできる。また、光や音による明示手段については、光と音の両方を発生するものとしてもよいし、光と音のいずれかを発生するものとしてもよい。
【0023】
・起動方法の具体例
くぐり戸明示装置5は、常時は作動しておらず、火災発生時、防火戸2が閉鎖する際に作動するものとして設けられる。その起動方法については、自動閉鎖装置3と同様、火災感知器15の火災感知に基づく自動火災報知設備側からの連動信号を受けて作動するものとすることができる。また、火災感知器15の火災感知に代えて、自動閉鎖装置3が作動したことに基づく自動火災報知設備側からの連動信号を受けて作動するものとすることができる。
【0024】
なお、くぐり戸明示装置5を連動信号の送受信によって作動するものとする場合、自動閉鎖装置3に連動信号の出力機能を持たせて、自動閉鎖装置3が作動した際に連動信号をくぐり戸明示装置5に送り、その連動信号を受けてくぐり戸明示装置5が作動するものとすることもできる。また、防火戸2の閉鎖動作を検出するセンサを別途設け、そのセンサの検出信号を受けてくぐり戸明示装置5が作動するものとしてもよい。
【0025】
また、そのような連動信号の送受信によってくぐり戸明示装置5が作動するものとするのに代えて、自動閉鎖装置3が作動して防火戸2が閉鎖する際の閉鎖動作に機械的に連動してオン作動するスイッチ手段(磁力や電波強度の変化を捉える等の非接触でオン作動するものを含む)を設け、そのスイッチ手段のオン作動によりくぐり戸明示装置5が作動するものとすることもできる。これにより、例えば、自動閉鎖装置3を手動で強制的に解除して防火戸2を閉鎖した場合であっても、くぐり戸明示装置5を作動させることができる。
【0026】
・明示手段の具体例
・・光による明示手段
くぐり戸明示装置5における光による明示手段としては、閉鎖状態にあるくぐり戸4に光を照射するライト5aとすることができる。ライト5aは、くぐり戸4を全体的に照射するものとしてもよいし、特定の部分(例えば、ドアハンドル4aの部分等)を集中的に照射するものとしてもよい。また、くぐり戸4に光による文字を照射するものとしてもよい。
【0027】
その他、光による明示手段としては、ケミカルライトとすることもできる。
【0028】
・・音による明示手段
くぐり戸明示装置5における音による明示手段としては、音声メッセージを発生するスピーカ5bとすることができる。音声メッセージは、例えば、単にくぐり戸4があることをアナウンスするものとしてもよいし、目印になり易い他の部分(例えば、防火戸2自体か、その近傍位置に設けられる避難口誘導灯6や誘導標識等)との位置関係によって位置を示しつつ、くぐり戸4があることをアナウンスするものとしてもよい。さらに、くぐり戸4の開き方や避難方向等もアナウンスするものとしてもよい。また、防火戸2が閉鎖した場合は、周囲の雰囲気が通常と異なり混乱する要因となるため、防火戸2が閉鎖していて通常の状態とは違うことをアナウンスするものとしてもよい。
【0029】
・電源
くぐり戸明示装置5の電源については、自動閉鎖装置3等と共に、外部電源を使用するものとすることができる。
【0030】
なお、くぐり戸明示装置5を、電池電源を内蔵するものとして、内部電源を使用するものとしてもよい。その場合、火災発生時、連動信号の送受信によって作動するものとはせずに、防火戸2の閉鎖動作に機械的に連動して作動するものとすることができる。そのようにすれば、火災感知器15を備える自動火災報知設備側や自動閉鎖装置3側との配線の接続を省略することができる。また、併せて、自動閉鎖装置3を温度ヒューズ式のものとしていれば、火災発生によって、外部電源が失われたとしても、防火戸2の閉鎖動作に機械的に連動させて、くぐり戸明示装置5を自動的に作動させることができる。
【0031】
[構成の変更例]
以上、この発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含むものである。
【0032】
例えば、くぐり戸明示装置5の設置位置については、図示の例のように防火戸2の戸袋TBが設けられる壁に設けられるものとするのに代えて、防火戸2によって閉鎖される開口部が設けられる壁に設けられるものとしてもよい。
【0033】
また、くぐり戸明示装置5をくぐり戸自体に設けて、くぐり戸4の表面で発光するようにしたり、発音させたりすることができる。
【0034】
また、くぐり戸明示装置5は、作動要因を防火戸2の閉鎖によるものとしたときに、作動するまでの時間を遅延させてもよい。防火戸2は、手動で閉鎖できるようになっており、特にフェイルセーフの考えから軽い力で閉鎖でき、人や物がぶつかったときに閉鎖する可能性がある。そのため、防火戸2が間違って閉鎖されたときに、くぐり戸明示装置5を遅延させれば、周囲の人々を驚かせることがない。また、くぐり戸明示装置5の電源が電池である場合に電池の消費を抑えることができる。また、くぐり戸明示装置5は、作動停止スイッチを設けたり、遅延させた上でさらに、遅延延長スイッチや遅延解除スイッチを設けたりすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1:防火設備 2:防火戸 3:自動閉鎖装置 3a:フック部材
4:くぐり戸 4a:ドアハンドル 5:くぐり戸明示装置 5a:ライト
5b:スピーカ 6:避難口誘導灯 15:火災感知器
TM:建物 TB:戸袋