(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150262
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】キャスタブル耐火物
(51)【国際特許分類】
C04B 35/66 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
C04B35/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059280
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100195877
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】茅原 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】浅川(木村) 由美
(57)【要約】
【課題】 特殊な処理をする必要がなく、製造後の経過時間とともに硬化時間が大きく変化することがなく、偽凝結を防ぎ、硬化時間の温度依存性を低減させることができるキャスタブル耐火物を提供すること。
【解決手段】 キャスタブル耐火物は、主原料として耐火原料とシリカフュームとアルミナセメントとを含み、副原料としてポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物を含み、シリカフュームとアルミナセメントの含有量は主原料の合計質量に対してそれぞれ1~10質量部、1~10質量部であり、アルミナセメントはCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、12CaO・7Al2O3及びAl2O3を含み、CaO・2Al2O3と12CaO・7Al2O3の含有量はアルミナセメントの合計質量に対してそれぞれ10~30質量部、3質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、ポリアクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、ポリメタクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料として耐火原料とシリカフュームとアルミナセメントとを含み、
副原料としてポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物を含み、
前記シリカフュームと前記アルミナセメントの含有量は前記主原料の合計質量に対してそれぞれ1~10質量部、1~10質量部であり、
前記アルミナセメントはCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、12CaO・7Al2O3及びAl2O3を含み、
前記CaO・2Al2O3と前記12CaO・7Al2O3の含有量は前記アルミナセメントの合計質量に対してそれぞれ10~30質量部、3質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、
前記ポリアクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、
前記ポリメタクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることを特徴とするキャスタブル耐火物。
【請求項2】
請求項1に記載のキャスタブル耐火物において、
前記副原料としてリグニンスルホン酸系化合物をさらに含み、
前記リグニンスルホン酸系化合物の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることを特徴とするキャスタブル耐火物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャスタブル耐火物において、
前記副原料としてポリエーテル化合物をさらに含み、
前記ポリエーテル化合物の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることを特徴とするキャスタブル耐火物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のキャスタブル耐火物において、
前記副原料として水酸化カルシウムをさらに含み、
前記水酸化カルシウムの含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることを特徴とするキャスタブル耐火物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はキャスタブル耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
キャスタブル耐火物は、水等で混練して型枠に流し込み、硬化させて成形体を得ることができる耐火物である。キャスタブル耐火物は、れんが施工と比較して施工の機械化、省力化が容易なため、鉄鋼生産設備を始め幅広い用途に使用されている。
【0003】
特許文献1は、キャスタブル耐火物等に使用されるアルミナセメントの耐火度、強度及び収縮の諸特性を向上させることを目的として、CaO・2Al2O3(CA2)が2~92重量%、12CaO・7Al2O3(C12A7)が2~35重量%、CaO・Al2O3(CA)が1~95重量%である組成物、又はこの組成物に微粉アルミナを添加した組成物中の全Al2O3成分含有量が70~90重量%である配合組成物100重量部に対し、スルホン酸系アニオン界面活性剤を0.05~2.5重量部及び凝結遅延剤を0.1~2.5重量部添加混合してなるアルミナセメント組成物を開示する。
【0004】
一方、施工したキャスタブル耐火物の硬化時間は気温に影響を受ける。また、キャスタブル耐火物を製造してから時間が経過するに従い、吸湿等の経時変化により流動性や硬化時間が当初設計値から乖離することがある。したがって、施工時の気温や経時変化の予測に応じて硬化調整剤(促進剤、遅延剤)を適正に添加するための施工時の管理作業が追加的に必要となる。このような煩雑な管理作業を省力化すべく、硬化時間が気温に影響されにくく、経時変化を生じにくいキャスタブル耐火物が求められている。
【0005】
特許文献2は、硬化剤の季節配合や添加量の調整等を不要とすることを目的として、不定形耐火物の硬化時間調整用成分が水溶性高分子中に含まれる硬化調整剤を開示する。
【0006】
特許文献3は、経時変化の防止を目的として、疎水性シリカ超微粉でコーティングしたリン酸ソーダを添加した不定形耐火物を開示する。
【0007】
また、特許文献4は、流し込み充填される不定形耐火物を簡便な施工で、均一かつ高い強度特性を有し、さらには耐熱性にも優れる施工体を得ることを目的として、分散剤が縮合リン酸塩系、ポリアクリル酸系又はポリカルボン酸系である不定形耐火物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭55-121934号公報
【特許文献2】特開2000-191378号公報
【特許文献3】特開平2-149472号公報
【特許文献4】特開2014-214033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、アルミナセメント中の鉱物組成を調整して強度等を向上させているが、硬化時間の温度依存性等に関する課題の認識はない。
【0010】
特許文献2は、硬化時間が気温に影響されにくい理由を、混練温度が高い夏期は、水溶性高分子の溶出が速いためにより多くの硬化時間調整成分が溶出することで耐火物の硬化が通常よりも遅延するように作用し、一方、冬期は、水溶性高分子の溶出が遅く硬化時間調整成分の溶出も抑制されるために、硬化時間を遅くするようなことがないと説明する。しかし、調整剤成分を含む水溶性高分子は保管中に吸湿して反応するため、溶出速度が変化し、狙い通りの硬化時間調整ができないことがある。
【0011】
特許文献3は、経時変化防止に一定の効果が得られる。しかし、リン酸塩が疎水性シリカでコーティングされているため、混練時にリン酸塩が溶出する速度が遅くなり、分散剤としての効果が減殺されることがある。
【0012】
特許文献4は、シリカフュームを7.5質量%含む(実施例1~10)。しかし、シリカフュームを含むキャスタブル耐火物にポリカルボン酸やポリアクリル酸を添加すると、水と練り混ぜたとき一時的に流動性を失いこわばること、つまり、偽凝結が生じることがある。偽凝結すると、流動性が低下し混練時間が長くなる。また、偽凝結を防ぐために混練水を過剰に添加し、キャスタブル耐火物の品質を低下させることがある。
【0013】
本開示は、上記実状を鑑みてなされたものであり、特許文献2、3のような特殊な処理をする必要がなく、製造後の経過時間とともに硬化時間が大きく変化することがなく、偽凝結による流動性の低下を抑制して混練時間を短縮し、偽凝結を防ぎ、硬化時間の温度依存性を低減させることができるキャスタブル耐火物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一の態様は、
主原料として耐火原料とシリカフュームとアルミナセメントとを含み、
副原料としてポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物を含み、
前記シリカフュームと前記アルミナセメントの含有量は前記主原料の合計質量に対してそれぞれ1~10質量部、1~10質量部であり、
前記アルミナセメントはCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、12CaO・7Al2O3及びAl2O3を含み、
前記CaO・2Al2O3と前記12CaO・7Al2O3の含有量は前記アルミナセメントの合計質量に対してそれぞれ10~30質量部、3質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、
前記ポリアクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、
前記ポリメタクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることを特徴とするキャスタブル耐火物に関する。
【0015】
本開示の一の態様のキャスタブル耐火物は、特許文献2、3のような特殊な処理をする必要がなく、製造後の経過時間とともに硬化時間が大きく変化することがなく、偽凝結を防ぎ、硬化時間の温度依存性を低減させることができる。
【0016】
本開示の一の態様では、
前記副原料としてリグニンスルホン酸系化合物をさらに含み、
前記リグニンスルホン酸系化合物の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることが好ましい。リグニンスルホン酸系化合物を含むと、温度依存性低減効果が一層向上する。
【0017】
本開示の一の態様では、
前記副原料としてポリエーテル化合物をさらに含み、
前記ポリエーテル化合物の含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることが好ましい。ポリエーテル化合物を含むと、混練時に巻き込んだ泡を減少させ、流動性が向上する。
【0018】
本開示の一の態様では、
前記副原料として水酸化カルシウムをさらに含み、
前記水酸化カルシウムの含有量は前記主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることが好ましい。水酸化カルシウムを含むと、分散効果を増大させるとともに偽凝結が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
【0020】
本実施形態のキャスタブル耐火物は、主原料として耐火原料とシリカフュームとアルミナセメントとを含み、副原料としてポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物を含み、シリカフュームとアルミナセメントの含有量は主原料の合計質量に対してそれぞれ1~10質量部、1~10質量部であり、アルミナセメントはCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、12CaO・7Al2O3及びAl2O3を含み、CaO・2Al2O3と12CaO・7Al2O3の含有量はアルミナセメントの合計質量に対してそれぞれ10~30質量部、3質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、ポリアクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、ポリメタクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)である。
【0021】
本実施形態のキャスタブル耐火物は、特許文献2、3のような特殊な処理をする必要がなく、製造後の経過時間とともに硬化時間が大きく変化することがなく、偽凝結を防ぎ、硬化時間の温度依存性を低減させることができる。
【0022】
<耐火原料>
本実施形態のキャスタブル耐火物に主原料として含まれる耐火原料は特に制限はなく、例えば、アルミナ原料、マグネシア原料、スピネル原料、シリカ原料、炭化けい素原料等、公知のものから1種又は2種以上を目的に応じて選択し、適宜粒度を調整して使用することができる。
【0023】
<シリカフューム>
本実施形態のキャスタブル耐火物に主原料として含まれるシリカフュームの含有量は主原料の合計質量に対して1~10質量部であり、好ましくは3~8質量部である。シリカフュームは、例えば、金属シリコン、フェロシリコン等を製造する際の排ガス等から捕集されるシリカ主成分の非晶質球状超微粒子である。シリカフュームを併用することにより、混練物の流動性と硬化体の強度の向上を図ることができる。シリカフュームの含有量が主原料の合計質量に対して1質量部未満では流動性向上効果が得られず、10質量部を超えると粉体凝集性が強すぎ、混練が困難になることがある。
【0024】
<アルミナセメント>
本実施形態のキャスタブル耐火物に主原料として含まれるアルミナセメントの含有量は主原料の合計質量に対して1~10質量部であり、好ましくは3~9質量部である。アルミナセメントとして、水硬性カルシウムアルミネートを主体とする市販の耐火物用アルミナセメントが例示される。アルミナセメントはCaO・Al2O3(CA)、CaO・2Al2O3(CA2)、12CaO・7Al2O3(C12A7)及びAl2O3を含み、カルシウムやアルミニウム系の非晶質を含んでもよい。アルミナセメントの含有量が主原料の合計質量に対して1質量部未満では強度が発現せず、10質量部を超えると硬化時間が速くなりすぎることがある。
【0025】
CaO・2Al2O3(CA2)と12CaO・7Al2O3(C12A7)の含有量はアルミナセメントの合計質量に対してそれぞれ10~30質量部、3質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、好ましくは12~24質量部、0.5~2.5質量部であり、より好ましくは14~21質量部、1~2質量部である。CA2とC12A7の含有量をアルミナセメントの合計質量に対してそれぞれ10~30質量部、3質量部以下(ゼロ質量部を除く)に調整することにより、硬化時間の温度依存性が低減する。その理由は明らかではないが、硬化遅延作用のあるCA2と硬化促進作用のあるC12A7を併用することにより、低温における硬化遅れと高温における急結の両方を緩和することが考えられる。アルミナセメント中のCA2とC12A7の含有量の調整は、セメントメーカーが予め行った市販品を使用してもよいし、キャスタブル耐火物の製造時に2種以上のセメントをブレンドしてもよい。CA2とC12A7の存在比は、JIS K0131に規定されたリートベルト法により定量することができる。
【0026】
<ポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物>
本実施形態のキャスタブル耐火物に副原料として含まれるポリアクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、ポリメタクリル酸系化合物の、含まれる場合の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であり、好ましくは0.05~0.8質量部であり、より好ましくは0.1~0.4質量部である。ポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物は、リン酸塩と異なり、経時変化の抑制効果、硬化時間の温度依存性低減効果を有する。ポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物の含有量が主原料の合計質量に対して1質量部を超えると混練物の粘性が増大する。ポリアクリル酸系化合物又はポリメタクリル酸系化合物は、塩の形態でもよい。塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が好ましい。
【0027】
<リグニンスルホン酸系化合物>
本実施形態のキャスタブル耐火物は、副原料としてリグニンスルホン酸系化合物をさらに含み、リグニンスルホン酸系化合物の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.03~0.4質量部である。リグニンスルホン酸系化合物を含むと、温度依存性低減効果が一層向上する。リグニンスルホン酸系化合物は、塩の形態でもよい。塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が好ましい。
【0028】
<ポリエーテル化合物>
本実施形態のキャスタブル耐火物は、副原料としてポリエーテル化合物をさらに含み、ポリエーテル化合物の含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.02~0.4質量部である。ポリエーテル化合物を含むと、混練時に巻き込んだ泡を減少させ、流動性が向上する。
【0029】
<水酸化カルシウム>
本実施形態のキャスタブル耐火物は、副原料として水酸化カルシウムをさらに含み、水酸化カルシウムの含有量は主原料の合計質量に対して1質量部以下(ゼロ質量部を除く)であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.02~0.4質量部である。水酸化カルシウムを含むと、分散効果を増大させるとともに偽凝結が抑制される。水酸化カルシウムの含有量が主原料の合計質量に対して0.5質量部以下であると、分散効果と偽凝結抑制効果がより向上する。
【実施例0030】
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。
【0031】
[実験方法]
準備したキャスタブル耐火物試料の配合を表1に示す。
【表1】
【0032】
実施例1~4は、アルミナセメントに含まれるCaO・2Al2O3(CA2)と12CaO・7Al2O3(C12A7)の含有量を本開示の範囲内で変化させた。実施例5~7は、副原料のポリメタクリル酸系化合物の含有量を本開示の範囲内で変化させた。実施例8~10は副原料としてリグニンスルホン酸系化合物をさらに含有させ、含有量を本開示の範囲内で変化させた。実施例11~14は、副原料としてポリエーテル化合物をさらに含有させ、含有量を本開示の範囲内で変化させた。実施例15~19は、副原料として水酸化カルシウムをさらに含有させ、含有量を本開示の範囲内で変化させた。一方、比較例1は、従来のキャスタブル耐火物であり、副原料としてトリポリリン酸ナトリウムを含む。比較例2は、副原料としてポリメタクリル酸系化合物を含むが、アルミナセメント中の鉱物含有量が本開示のC12A7の含有量の範囲を満たさない。
【0033】
準備した試料に以下の測定、評価を行った。
【0034】
<経時変化>
35℃-相対湿度80%の雰囲気に試料を7日間ばく露した後、所定水分を加えて混練し、2時間後の振動フロー値を測定し、以下の判定条件で試料の経時変化を評価した。
150mm以上:良(〇)、150mm未満:可(△)、測定不能:不可(×)
【0035】
ここで、振動フロー値は以下の方法で測定した。振動テーブル上にJIS R2521に記載されているフローコーンを静置し、フローコーン内に混練物を充てんし、フローコーンを上方に取り去った後、振動加速度5Gで5秒間加振し、混練物が広がった最大径と、これに直角方向の径とをノギスで測定し、両者の平均値を振動フロー値とした。振動フロー値が高いほど流動性が高く、経時変化が小さい。
【0036】
<偽凝結>
試料に所定水分を加えて混練し、混練物が流動性を得るまでに要した混練時間を測定し、以下の判定条件で試料の偽凝結を評価した。混練物が流動性を得るまでに要した混練時間は、偽凝結が起きると長くなるため、短いほど偽凝結を防ぐことができるといえる。
5分以内:優(◎)、5超~6分:良(〇)、6超~7分:可(△)、7分超:不可(×)
【0037】
<温度依存性>
試料に所定水分を加えて混練し、5℃と35℃で保持した混練物の硬化時間を測定し、以下の判定条件で試料の温度依存性を評価した。
2時間を超え12時間未満:優(◎)
12時間以上17時間未満:良(〇)
2時間以下又は17時間以上24時間未満:可(△)
24時間以上:不可(×)
【0038】
<総合評価>
総合評価は、各項目の評価について優(◎):5点、良(〇):3点、可(△):0点、不可(×):-5点に設定し、各例の合計得点を計算した。合計得点が高いほどキャスタブル耐火物として優れる。
【0039】
[測定、評価結果]
表2に実施例1~19、比較例1~2の測定、評価結果を示す。
【表2】
【0040】
実施例1~4は、比較例1に対して硬化が早くなる傾向が見られ、また、5℃で硬化時間が優(◎)であり、温度依存性が低減した。また、比較例2に対して偽凝結と5℃で硬化時間が改善した。ポリアクリル酸ナトリウム又はポリメタクリル酸ナトリウムと、CA2とC12A7を本開示の範囲で含むためと考えられる。
【0041】
実施例5~7は、温度依存性が低減する傾向が見られた。また、実施例1~4に対して経時変化が改善する傾向が見られた。実施例6は、温度依存性低減効果がより優れる結果となった。副原料のポリメタクリル酸系化合物を本開示の範囲で含むためと考えられる。
【0042】
実施例8~10は、比較例1に対して温度依存性が低減し、実施例1~4に対して経時変化が改善する傾向が見られたた。実施例9は、温度依存性低減効果がより優れる結果となった。副原料のリグニンスルホン酸ナトリウムを本開示の範囲で含むためと考えられる。
【0043】
実施例11~14は、比較例1や実施例1~4に対して硬化が早くなる傾向が見られ、経時変化が改善した。また、比較例2に対して偽凝結が改善した。副原料のポリエーテル化合物を本開示の範囲で含むことにより、混練時に巻き込んだ泡を減少させたためと考えられる。
【0044】
実施例15~19は、比較例1や実施例1~4に対して硬化が早くなる傾向が見られ、経時変化が改善した。また、比較例2に対して偽凝結が改善した。副原料の水酸化カルシウムを本開示の範囲で含むためと考えられる。
【0045】
実施例は比較例に対して経時変化の抑制、偽凝結の抑制、温度依存性の低減に優れており、本開示によって課題が解決されることを理解できる。
【0046】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。