(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150267
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】水洗大便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/28 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E03D1/28
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059286
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】土谷 匠
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】浦田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】村山 知里
(72)【発明者】
【氏名】松村 康一郎
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039EA02
2D039FC02
2D039FD00
(57)【要約】
【課題】単純な構成で大洗浄モード及び小洗浄モードを実行し、無駄水の発生を抑制することができる水洗大便器装置を提供する。
【解決手段】本発明は、水洗大便器装置(1)であって、ボウル部(2a)及び排水トラップ管路(2e)を備え、上部吐水口(2d)、及び下部吐水口(2b)が設けられた水洗便器本体と、上部吐水口、及び下部吐水口からの洗浄水の吐水を制御して、大洗浄モード、小洗浄モードを実行する洗浄制御装置と、を有し、洗浄制御装置は、大洗浄モードと小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路内でサイフォン現象を誘発するために実質的に同量の洗浄水を下部吐水口から吐出させる一方、下部吐水口からの吐水中におけるボウル部内の溜水の水位が大洗浄モードと小洗浄モードで異なるように、上部吐水口からの吐水を制御することを特徴としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大洗浄モード及び小洗浄モードを実行可能な水洗大便器装置であって、
ボウル部及びこのボウル部の下部に連通した排水トラップ管路を備え、上記ボウル部の溜水面よりも上方に上部吐水口が設けられ、溜水面よりも下方に下部吐水口が設けられた水洗便器本体と、
上記上部吐水口、及び上記下部吐水口からの洗浄水の吐水を制御して、大洗浄モード、及びこの大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードを実行する洗浄制御装置と、
を有し、
上記洗浄制御装置は、上記大洗浄モードと上記小洗浄モードにおいて、上記排水トラップ管路内でサイフォン現象を誘発するために実質的に同量の洗浄水を上記下部吐水口から吐出させる一方、上記下部吐水口からの吐水中における上記ボウル部内の溜水の水位が上記大洗浄モードと上記小洗浄モードで異なるように、上記上部吐水口からの吐水を制御することを特徴とする水洗大便器装置。
【請求項2】
上記洗浄制御装置は、上記大洗浄モード実行時においては、上記小洗浄モードの実行時よりも、上記下部吐水口からの吐水を開始させるまでの、上記上部吐水口からの吐水流量を多くし、又は吐水時間を長くすることにより、上記下部吐水口からの吐水を開始させる際の上記ボウル部内の溜水の水位が、上記大洗浄モードでは、上記小洗浄モードよりも高くなるようにする請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項3】
上記洗浄制御装置は、上記排水トラップ管路内でサイフォン現象が発生する前に、上記下部吐水口からの吐水を開始させる請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項4】
上記洗浄制御装置は、上記ボウル部内の溜水水位が、上記排水トラップ管路を越えて流出する洗浄水の流量と、上記上部吐水口から上記ボウル部内に流入する洗浄水の流量が等しくなる安定水位に到達する前に、上記下部吐水口からの吐水を開始させる請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項5】
上記洗浄制御装置は、上記大洗浄モード実行時においては、上記小洗浄モードの実行時よりも上記下部吐水口からの吐水を開始させた後における、上記上部吐水口からの吐水流量を多くし、又は吐水時間を長くすることにより、上記下部吐水口からの吐水が開始された後の上記ボウル部内の溜水の水位が、上記大洗浄モードでは、上記小洗浄モードよりも高くなるようにする請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項6】
上記洗浄制御装置は、少なくとも上記大洗浄モードの実行中において、上記下部吐水口からの吐水が開始される前は、上記ボウル部内の溜水の水位が上記排水トラップ管路の入口の上端よりも高くなるように、上記上部吐水口からの吐水を制御する請求項5記載の水洗大便器装置。
【請求項7】
上記洗浄制御装置は、上記大洗浄モードの実行時において、上記下部吐水口からサイフォン現象を誘発するための吐水が開始される前から、吐水が終了した後まで、上記上部吐水口からの吐水を継続させる請求項5記載の水洗大便器装置。
【請求項8】
さらに、洗浄水を貯留する洗浄水タンク本体と、この洗浄水タンク本体内の洗浄水の排水、停止を切り替える排水弁と、給水源から供給された洗浄水の吐水、止水を切り替える開閉弁と、を有し、上記洗浄制御装置は、上記排水弁を開弁させることにより上記下部吐水口から洗浄水を吐出させ、上記開閉弁を開弁させることにより上記上部吐水口から洗浄水を吐出させる請求項1乃至7の何れか1項に記載の水洗大便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器装置に関し、特に、大洗浄モード及び小洗浄モードを実行可能な水洗大便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-105821号公報(特許文献1)には、排水弁装置が記載されている。この排水弁装置は、水洗便器の貯水タンクの中に配置され、使用者の操作に応じて貯水タンク内の洗浄水を排出するように構成されている。即ち、使用者が大洗浄ボタンを押すことにより大洗浄が実行され、小洗浄ボタンを押すことにより、大洗浄よりも少量の洗浄水が貯水タンクから排出され、小洗浄が実行されるように構成されている。
【0003】
特開2016-31008号公報(特許文献2)には、水洗大便器が記載されている。この水洗大便器は、便器本体と、この便器本体に洗浄水を供給する給水機能部と、を備えている。給水機能部には、貯水タンク及びポンプが備えられており、貯水タンクに貯留された洗浄水が、ポンプにより加圧され、便器本体のジェット吐水口から吐出される。一方、便器本体のリム吐水口には給水源が直結されており、給水源の給水圧力により洗浄水がリム吐水口から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-105821号公報
【特許文献2】特開2016-31008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の排水弁装置においては、大洗浄モード(大洗浄)、及び小洗浄モード(小洗浄)を実行するために排水弁装置が複雑になるという問題がある。特許文献1記載の排水弁装置では、使用者による洗浄操作が、複数のリンク等の機構を介して排水弁に伝達される。即ち、使用者により大洗浄ボタンが押されたときと、小洗浄ボタンが押されたときで、リンクの回転角等が異なるように構成することで、排水弁の引き上げ量を変化させ大洗浄モードと小洗浄モードを実現している。このため、特許文献1記載の排水弁装置では、大洗浄モード、小洗浄モードを実現するために機構が複雑化するという問題がある。また、排水弁装置の機構が複雑になるため、長期間に亘って動作の信頼性を確保することが難しいという問題もある。
【0006】
一方、特許文献2記載の水洗大便器は、貯水タンクに貯留された洗浄水と、給水源から直接供給された洗浄水を使用してボウルを洗浄する便器であるが、大洗浄、小洗浄の2つの洗浄モードには対応していない。また、洗浄水量の異なる2つの洗浄モードを実現するために、単に給水源からの洗浄水量を変化させたとすれば、洗浄力が不十分であったり、無駄水が発生したりするという問題が発生する。
【0007】
従って、本発明は、単純な構成で大洗浄モード及び小洗浄モードを実行することができると共に、無駄水の発生を抑制することができる水洗大便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、大洗浄モード及び小洗浄モードを実行可能な水洗大便器装置であって、ボウル部及びこのボウル部の下部に連通した排水トラップ管路を備え、ボウル部の溜水面よりも上方に上部吐水口が設けられ、溜水面よりも下方に下部吐水口が設けられた水洗便器本体と、上部吐水口、及び下部吐水口からの洗浄水の吐水を制御して、大洗浄モード、及びこの大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードを実行する洗浄制御装置と、を有し、洗浄制御装置は、大洗浄モードと小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路内でサイフォン現象を誘発するために実質的に同量の洗浄水を下部吐水口から吐出させる一方、下部吐水口からの吐水中におけるボウル部内の溜水の水位が大洗浄モードと小洗浄モードで異なるように、上部吐水口からの吐水を制御することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、洗浄制御装置が、ボウル部の溜水面よりも上方の上部吐水口、及び溜水面よりも下方の下部吐水口からの洗浄水の吐水を制御して、大洗浄モード及び小洗浄モードを実行する。さらに、洗浄制御装置は、大洗浄モードと小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路内でサイフォン現象を誘発するために実質的に同量の洗浄水を下部吐水口から吐出させる一方、下部吐水口からの吐水中におけるボウル部内の溜水の水位が大洗浄モードと小洗浄モードで異なるように、上部吐水口からの吐水を制御する。
【0010】
このように構成された本発明によれば、洗浄制御装置が、大洗浄モードと小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路内でサイフォン現象を誘発するために実質的に同量の洗浄水を下部吐水口から吐出させるので、単純な構成で大洗浄モード及び小洗浄モードを実現することができる。また、上記のように構成された本発明によれば、上部吐水口からの吐水を制御して、下部吐水口からの吐水中におけるボウル部内の溜水の水位を大洗浄モードと小洗浄モードで異ならせているので、無駄水を抑制しながら大洗浄モード及び小洗浄モードを実現することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、洗浄制御装置は、大洗浄モード実行時においては、小洗浄モードの実行時よりも、下部吐水口からの吐水を開始させるまでの、上部吐水口からの吐水流量を多くし、又は吐水時間を長くすることにより、下部吐水口からの吐水を開始させる際のボウル部内の溜水の水位が、大洗浄モードでは、小洗浄モードよりも高くなるようにする。
【0012】
このように構成された本発明によれば、下部吐水口からの吐水を開始させる際に、ボウル部内の溜水の水位が、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも高くされている。このため、大洗浄モードでは、下部吐水口からの吐水により、より多くの洗浄水を排水トラップ管路内に送り込むことができ、下部吐水口からの吐水の量が実質的に小洗浄モードと同じであっても強いサイフォン現象を誘発することができ、洗浄力を高くすることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、洗浄制御装置は、排水トラップ管路内でサイフォン現象が発生する前に、下部吐水口からの吐水を開始させる。
【0014】
このように構成された本発明においては、排水トラップ管路内でサイフォン現象が発生する前に下部吐水口からの吐水を開始させるので、下部吐水口からの吐水によりサイフォン現象を誘発することができる。このため、サイフォン現象が発生する前に上部吐水口から多量の洗浄水が吐出され、無駄水が発生するのを抑制することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、洗浄制御装置は、ボウル部内の溜水水位が、排水トラップ管路を越えて流出する洗浄水の流量と、上部吐水口からボウル部内に流入する洗浄水の流量が等しくなる安定水位に到達する前に、下部吐水口からの吐水を開始させる。
【0016】
上部吐水口から洗浄水が流入すると、ボウル部内の水位が上昇し、ボウル部内の洗浄水が排水トラップ管路を越えて流出するようになる。排水トラップ管路を越えて流出する洗浄水の流量は次第に増加して、やがて上部吐水口から流入する洗浄水の流量と等しくなり、この状態でボウル部内の水位は安定水位になる。上記のように構成された本発明によれば、ボウル部内が安定水位に到達する前に、下部吐水口からの吐水が開始されるので、汚物の排出にあまり寄与せずにボウル部から排出される洗浄水の量を減じることができ、無駄水を抑制することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、洗浄制御装置は、小洗浄モード実行時においては、大洗浄モードの実行時よりも下部吐水口からの吐水を開始させた後における、上部吐水口からの吐水流量を少なくし、又は吐水時間を短くすることにより、下部吐水口からの吐水が開始された後のボウル部内の溜水の水位が、大洗浄モードでは、小洗浄モードよりも高くなるようにする。
【0018】
一般に、排水トラップ管路内でサイフォン現象が発生している状態で、ボウル部内に洗浄水を流入させると、ボウル部内の水位が上昇するので、排水トラップ管路内に空気が侵入しにくくなり、サイフォン現象の持続時間が長くなる。上記のように構成された本発明によれば、下部吐水口からの吐水が開始された後のボウル部内の溜水の水位が、大洗浄モードでは、小洗浄モードよりも高くされる。この結果、溜水の水位が高い大洗浄モードでは、サイフォン現象の持続時間が、小洗浄モードよりも長くなる。このため、大洗浄モードと小洗浄モードで実質的に同量の洗浄水を下部吐水口から吐出させながら、大洗浄モードではサイフォン現象の持続時間を長くすることができ、洗浄力を高くすることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、洗浄制御装置は、少なくとも大洗浄モードの実行中において、下部吐水口からの吐水が開始される前は、ボウル部内の溜水の水位が排水トラップ管路の入口の上端よりも高くなるように、上部吐水口からの吐水を制御する。
【0020】
このように構成された本発明によれば、下部吐水口からの吐水が開始される前は、溜水の水位が排水トラップ管路の入口の上端よりも高くなるように、上部吐水口からの吐水が行われるので、下部吐水口からの吐水によりサイフォン現象を誘発することができ、洗浄水量を抑制しながらサイフォン現象の持続時間を長くすることができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、洗浄制御装置は、大洗浄モードの実行時において、下部吐水口からサイフォン現象を誘発するための吐水が開始される前から、吐水が終了した後まで、上部吐水口からの吐水を継続させる。
【0022】
このように構成された本発明によれば、上部吐水口からの吐水が、サイフォン現象を誘発するための吐水が開始される前から、吐水が終了した後まで継続される。このため、上部吐水口からの吐水により、ボウル部の表面の洗浄、下部吐水口からの吐水により誘発されるサイフォン作用の補助、及びボウル部のリフィールを行うことができ、上部吐水口からの吐水を有効に洗浄に活用することができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、さらに、洗浄水を貯留する洗浄水タンク本体と、この洗浄水タンク本体内の洗浄水の排水、停止を切り替える排水弁と、給水源から供給された洗浄水の吐水、止水を切り替える開閉弁と、を有し、洗浄制御装置は、排水弁を開弁させることにより下部吐水口から洗浄水を吐出させ、開閉弁を開弁させることにより上部吐水口から洗浄水を吐出させる。
【0024】
このように構成された本発明においては、洗浄制御装置は、排水弁を開弁させて、洗浄水タンク本体内の洗浄水を下部吐水口から吐出させ、開閉弁を開弁させて給水源から供給された洗浄水を上部吐水口から吐出させる。このように構成された本発明によれば、大洗浄モード、小洗浄モードにおいて、実質的に同量の洗浄水が下部吐水口から吐出されるので、排水弁を開弁させる機構を単純化することができる。一方、給水源から供給された洗浄水の吐出タイミング、流量等は、開閉弁の制御により比較的簡単に変更することができ、容易に大洗浄モード、小洗浄モードを実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水洗大便器装置によれば、単純な構成で大洗浄モード及び小洗浄モードを実行することができると共に、無駄水の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の全断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の水洗便器装置による便器洗浄シーケンスの一例を示すタイムチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態の水洗便器装置により実行される大洗浄モード、小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路を通って流れる洗浄水の瞬間流量の時間的変化を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の水洗大便器装置による便器洗浄シーケンスの一例を示すタイムチャートである。
【
図7】本発明の第1実施形態の水洗便器装置により実行される大洗浄モード、小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路を通って流れる洗浄水の瞬間流量の時間的変化を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の第3実施形態による水洗大便器装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置全体を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の全断面図である。
図3は、本発明の第1実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
【0028】
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1は、水洗便器本体2と、その後部に載置された洗浄水タンク装置4から構成されている。本実施形態の水洗大便器装置1は、使用後に、洗浄水タンク装置4に設けられたレバーハンドル8の操作に基づいて、水洗便器本体2のボウル部2aの大洗浄又は小洗浄を実行することができるように構成されている。本実施形態に備えられている洗浄水タンク装置4は、レバーハンドル8の操作に基づいて、内部に貯留されている洗浄水、及び給水源である水道Cから供給された洗浄水を水洗便器本体2に供給し、これらの洗浄水によりボウル部2aを洗浄するように構成されている。
【0029】
また、変形例として、壁面に取り付けたリモコン装置(図示せず)を操作することにより、ボウル部2aの洗浄が行われるように本発明を構成することもできる。或いは、便座に設けられた人感センサ(図示せず)が使用者の離座を検知した後、所定時間経過することにより、ボウル部2aの洗浄が行われるように本発明を構成することもできる。この場合、人感センサ(図示せず)は便座に設けたり、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できる位置に設けたりすることができ、例えば、水洗便器本体2や洗浄水タンク装置4に設けることもできる。また、人感センサ(図示せず)は、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できるものであればよく、例えば、赤外線センサやマイクロ波センサを人感センサとして使用することができる。
【0030】
次に、
図2に示すように、洗浄水タンク装置4は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留する洗浄水タンク本体である貯水タンク10と、この貯水タンク10に設けられた排水口10aを開閉するための排水弁12と、この排水弁12を駆動する水圧駆動機構である排水弁水圧駆動部14と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置4は、水道Cから供給された洗浄水を水洗便器本体2に直接供給する開閉弁である吐水制御弁19を有する。
【0031】
ここで、貯水タンク10内に貯留され、排水弁12を開弁させることにより流出する洗浄水は、便器洗浄時において、水洗便器本体2のボウル部2aの溜水面Wよりも下方に設けられた下部吐水口であるゼット吐水口2bから吐出されるように構成されている。また、水道Cから供給され、吐水制御弁19を介して供給された洗浄水は、便器洗浄時において、ボウル部2aの溜水面Wよりも上方の、ボウル部2aのリム部2cに設けられた上部吐水口であるリム吐水口2dから吐出されるように構成されている。さらに、ボウル部2aの下部には、排水トラップ管路2eが連通されており、この排水トラップ管路2eの入口は、ゼット吐水口2bと対向するように向けられている。このため、本実施形態においては、ゼット吐水口2bからの吐水が行われると、排水トラップ管路2eが満水にされ、サイフォン現象が誘発される。
【0032】
次に、
図3を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1に備えられている洗浄水タンク装置4の構成を説明する。
図3は、本発明の第1実施形態の水洗大便器装置1に備えられている洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
【0033】
図3に示すように、本実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置4は、貯水タンク10と、この貯水タンク10の排水口10aを開閉する排水弁12と、この排水弁12を駆動する水圧駆動機構である排水弁水圧駆動部14と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置4は、リム吐水口2d(
図2)からの洗浄水の吐水、停止を制御する開閉弁である吐水制御弁19と、排水弁水圧駆動部14に洗浄水を供給する排水制御弁18と、これらの制御弁を制御するコントローラ28と、を有する。本実施形態においては、排水弁水圧駆動部14、及びコントローラ28が、洗浄制御装置として機能し、この洗浄制御装置は、リム吐水口2d、及びゼット吐水口2bからの洗浄水の吐水を制御して、大洗浄モード、及びこの大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードを実行する。
【0034】
貯水タンク10は、水洗便器本体2のゼット吐水口2b(
図2)に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗便器本体2へ排出するための排水口10aが形成されている。また、貯水タンク10内において、排水口10aの下流側にはオーバーフロー管10bが接続されている。このオーバーフロー管10bは、排水口10aの近傍から垂直に立ち上がり、貯水タンク10内に貯留されている洗浄水の止水水位L
1よりも上方まで延びている。従って、オーバーフロー管10bの上端から流入した洗浄水は、排水口10aをバイパスして、水洗便器本体2のゼット吐水口2bから直接流出する。
【0035】
排水弁12は、排水口10aを開閉するように配置された弁体であり、排水弁12が上方に引き上げられることにより開弁され、貯水タンク10内の洗浄水が水洗便器本体2に排出されて、ボウル部2a(
図2)の下部に設けられたゼット吐水口2bから吐出される。
【0036】
一方、水道Cから給水管32に供給された洗浄水は、止水栓32a、及び定流量弁32bを介して、給水管分岐部33に流入する。給水管分岐部33は、水道Cから供給された洗浄水を、第1分岐管33a、及び第2分岐管33bに分岐させる。さらに、第1分岐管33aには吐水制御弁19が設けられ、第2分岐管33bには排水制御弁18が設けられている。なお、止水栓32aは貯水タンク10の外側に配置されており、その下流側の、貯水タンク10内には定流量弁32bが接続され、定流量弁32bの下流側に給水管分岐部33が設けられている。
【0037】
止水栓32aは、メンテナンス時等に洗浄水タンク装置4への水の供給を停止させるために設けられており、通常は開栓された状態で使用される。定流量弁32bは、水道Cから供給された水を、所定流量で給水管分岐部33に流入させるために設けられており、水洗便器装置の設置環境に関わらず一定流量の水が洗浄水タンク装置4に供給されるように構成されている。
【0038】
一方、第1分岐管33aに設けられた吐水制御弁19は、第1分岐管33aから供給された水を、リム給水管25に流出させるように構成されている。リム給水管25は、水洗便器本体2のリム吐水口2d(
図2)に連通しており(
図3には図示省略)、リム給水管25に流入した洗浄水は、ボウル部を洗浄するためのリム洗浄水として、リム吐水口2dから吐出される。また、リム給水管25の途中には、バキュームブレーカ30bが設けられている。これにより、吐水制御弁19側が負圧になった際、水洗便器本体の側から吐水制御弁19に水が逆流するのを防止することができる。
【0039】
吐水制御弁19は、吐水弁本体部19aと、この吐水弁本体部19aの中に配置された主弁体19bと、電磁弁パイロット弁19cと、を備えている。また、吐水制御弁19には、吐水制御用電磁弁20bが接続されており、この吐水制御用電磁弁20bにより電磁弁パイロット弁19cが移動されるように構成されている。即ち、電磁弁パイロット弁19cは、吐水弁本体部19aに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉させるように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、吐水弁本体部19a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、吐水制御弁19の主弁体19bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体19bが閉弁される。これにより、吐水制御用電磁弁20bの作動に基づいて、吐水制御弁19の主弁体19bが開閉され、リム吐水口2d(
図2)への給水、停止が制御される。
【0040】
次に、第2分岐管33bに設けられた排水制御弁18は、第2分岐管33bから供給された水を、排水弁水圧駆動部14に流出させるように構成されている。また、排水制御弁18は、制御弁本体部18aと、この制御弁本体部18aの中に配置された主弁体18bと、電磁弁パイロット弁18cと、フロートパイロット弁18dと、を備えている。さらに、排水制御弁18には、排水制御用電磁弁20aと、制御弁フロート34が接続されている。
【0041】
排水制御用電磁弁20aは、コントローラ28から送られた信号に基づいて、排水制御弁18に内蔵された電磁弁パイロット弁18cを移動させ、パイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、制御弁本体部18a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、排水制御弁18の主弁体18bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体18bが閉弁される。これにより、排水制御用電磁弁20aの作動に基づいて、排水制御弁18の主弁体18bが開閉され、排水弁水圧駆動部14への給水、停止が制御される。なお、本実施形態においては排水制御用電磁弁20aとして、一旦通電を行うことにより、電磁弁パイロット弁18cが移動され、通電を停止してもその状態が維持される双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されている。このタイプの電磁弁では、反対方向にもう一度通電を行うと、電磁弁パイロット弁18cを元の位置に復帰させることができる。
【0042】
さらに、排水制御弁18には、制御弁フロート34も接続されており、この制御弁フロート34の動きに応じてフロートパイロット弁18dが移動されるように構成されている。即ち、制御弁フロート34は貯水タンク10内に配置されており、貯水タンク10の水位上昇と共に上昇して、アーム部34aを介してフロートパイロット弁18dを移動させる。貯水タンク10内の水位が止水水位L1まで上昇すると、フロートパイロット弁18dが制御弁本体部18aのパイロット弁口(図示せず)を閉弁させる。
【0043】
このように、フロートパイロット弁18dは、パイロット弁口(図示せず)を開閉することにより、制御弁本体部18a内に設けられた圧力室内の圧力を制御するように構成されている。この結果、フロートパイロット弁18dによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、及び電磁弁パイロット弁18cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)の両方が閉弁されると、制御弁本体部18a内の圧力室内の圧力が上昇し、主弁体18bが閉弁される。
【0044】
なお、洗浄水タンク装置4の待機状態においては、貯水タンク10は止水水位L1にされており、この状態では、フロートパイロット弁18dによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)は閉弁されている。従って、待機状態においては、排水制御用電磁弁20aの作動に基づいて、電磁弁パイロット弁18cを移動させることにより、パイロット弁口(図示せず)を開弁し、排水制御弁18の主弁体18bを開弁させることができる。
【0045】
具体的には、レバーハンドル8からの信号をコントローラ28が受信し、コントローラ28は排水制御用電磁弁20aに電気信号を送って、これを作動させ、排水制御弁18を開弁させる。排水制御弁18は、コントローラ28からの指示信号に基づいて、供給された洗浄水の、排水弁水圧駆動部14への供給、停止を制御する。本実施形態においては、排水制御弁18から流出した洗浄水は、全量が流入管23を通って排水弁水圧駆動部14に供給される。
【0046】
また、排水制御弁18と排水弁水圧駆動部14を接続する流入管23には、バキュームブレーカ30aが設けられている。このバキュームブレーカ30aにより、排水制御弁18側が負圧になった場合には、流入管23に外気が吸引され、排水弁水圧駆動部14側からの水の逆流が防止される。
【0047】
次に、排水弁水圧駆動部14は、水道Cから供給された洗浄水の給水圧を利用して、排水弁12を駆動するように構成されている。具体的には、排水弁水圧駆動部14は、排水制御弁18から供給された水が流入するシリンダ14aと、このシリンダ14a内に摺動可能に配置されたピストン14bと、シリンダ14aの下端から突出して排水弁12を駆動するロッド15と、を有する。さらに、シリンダ14aの内部にはスプリング14cが配置されており、ピストン14bを下方に向けて付勢していると共に、ピストン14bにはパッキン14eが取り付けられ、シリンダ14aの内壁面とピストン14bの間の水密性が確保されている。
【0048】
シリンダ14aは円筒形の部材であり、その軸線を鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン14bを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ14aの下端部には、流入管23が接続されており、排水制御弁18から流出した水がシリンダ14a内に流入するようになっている。このため、シリンダ14a内のピストン14bは、シリンダ14aに流入した水により、スプリング14cの付勢力に抗して押し上げられる。
【0049】
一方、シリンダ14aの上端部には流出孔が設けられ、流出管24は、この流出孔を介してシリンダ14aの内部と連通している。従って、シリンダ14a下部に接続された流入管23からシリンダ14a内に水が流入すると、ピストン14bは、シリンダ14aの下部から上方へ押し上げられる。そして、ピストン14bが、流出孔よりも上方まで押し上げられると、シリンダ14aに流入した水は流出孔から流出管24を通って流出する。即ち、流入管23と流出管24は、ピストン14bが上方に移動されると、シリンダ14aの内部を介して連通される。
【0050】
また、流出管24は途中で2つの管に分岐されており、下方に向けて分岐された第1下降管24bは、オーバーフロー管10bの上方で、下方に向けて開口している。また、もう一方の第2下降管24cは、概ね水平に延びた後、下方に向けて湾曲され、貯水タンク10内に水を流出させる。従って、シリンダ14aから流出した洗浄水の一部はオーバーフロー管10bの中に流入し、残りの洗浄水は貯水タンク10内に貯留される。
【0051】
ロッド15は、ピストン14bの下面に接続された棒状の部材であり、シリンダ14aの底面に形成された貫通孔14fを通って、シリンダ14aの中から下方に突出するように延びている。また、ロッド15の下端には排水弁12が接続されており、ロッド15は、ピストン14bと排水弁12を連結している。このため、シリンダ14aに水が流入してピストン14bが押し上げられると、ピストン14bに接続されたロッド15が排水弁12を上方に吊り上げ、排水弁12が開弁される。
【0052】
また、シリンダ14aの下方から突出するロッド15と、シリンダ14aの貫通孔14fの内壁との間には、隙間14dが設けられ、シリンダ14aに流入した水の一部は、この隙間14dから流出する。隙間14dから流出した水は、貯水タンク10内に流入する。なお、この隙間14dは比較的狭く、流路抵抗が大きいため、隙間14dから水が流出する状態であっても、流入管23からシリンダ14aに流入する水によりシリンダ14a内の圧力が上昇し、スプリング14cの付勢力に抗してピストン14bが押し上げられる。
【0053】
さらに、ロッド15の途中には、クラッチ機構22が設けられている。クラッチ機構22は、ロッド15と共に排水弁12が所定距離吊り上げられると、ロッド15を上部ロッド15aと下部ロッド15bに切り離すように構成されている。クラッチ機構22が切り離された状態では、下部ロッド15bは、ピストン14b及び上部ロッド15aの上部の動きに連動しなくなり、下部ロッド15bは排水弁12と共に、浮力に抵抗しながら重力により降下する。
【0054】
また、排水弁12の近傍には、排水弁フロート機構26が設けられている。この排水弁フロート機構26は、ロッド15が所定距離吊り上げられ、クラッチ機構22により下部ロッド15bが切り離された後、下部ロッド15bの及び排水弁12が降下して、排水口10aを閉弁させるのを遅延させるように構成されている。具体的には、排水弁フロート機構26は、フロート部26aと、このフロート部26aと連動した係合部26bと、を有する。
【0055】
係合部26bは、クラッチ機構22により切り離されて降下してきた下部ロッド15bと係合し、下部ロッド15b及び排水弁12が降下して、排水口10aに着座するのを阻止するように構成されている。次いで、貯水タンク10内の水位低下と共にフロート部26aが下降し、貯水タンク10内の水位が所定水位まで低下すると、フロート部26aが係合部26bを回動させて、係合部26bと下部ロッド15bの係合が解除される。係合が解除されることにより、下部ロッド15b及び排水弁12は降下して、排水口10aに着座する。これにより、排水弁12の閉弁が遅延され、適正量の洗浄水が、排水口10aから排出されるようになっている。
【0056】
コントローラ28は、回路基板を内蔵し、レバーハンドル8の操作に基づいて、排水制御用電磁弁20a、吐水制御用電磁弁20b等を制御するように構成されている。回路基板上には、マイクロプロセッサ、メモリー、インターフェイス回路等が設けられ、これらは便器洗浄を制御するためのソフトウェアによって作動する。
【0057】
次に、
図4及び
図5を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1の作用を説明する。
図4は、本発明の第1実施形態の水洗便器装置による便器洗浄シーケンスの一例を示すタイムチャートであり、上欄には小洗浄モードにおける便器洗浄を示し、下欄には大洗浄モードにおける便器洗浄を示している。また、各欄の上段にリム吐水口からの吐水流量、中段にゼット吐水口からの吐水流量、下段にボウル部内における溜水の水位を夫々示している。また、
図5は、大洗浄モード、小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路を通って流れる洗浄水の瞬間流量の時間的変化を模式的に示す図である。
【0058】
まず、
図4の上欄に示す小洗浄モードを実行した場合における便器洗浄シーケンスを説明する。
図4の時刻t
S0における便器洗浄の待機状態では、貯水タンク10内の水位が止水水位L
1にあり、排水制御用電磁弁20a、吐水制御用電磁弁20bへの通電は行われていない。この状態では、電磁弁パイロット弁19cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、電磁弁パイロット弁18cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、及びフロートパイロット弁18dによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)は何れも閉弁されている。これにより、排水制御弁18の主弁体18b、及び吐水制御弁19の主弁体19bは閉弁状態となる。
【0059】
次に、
図4の時刻t
S1において使用者が小洗浄を実行すべくレバーハンドル8を操作すると、小洗浄モードの便器洗浄を指示する信号がコントローラ28(
図3)に送られる。便器洗浄の指示信号を受信すると、コントローラ28は、吐水制御用電磁弁20bに通電を行い、吐水制御弁19の電磁弁パイロット弁19cを開弁させる。これにより、吐水制御弁19の圧力室内の圧力が低下し、主弁体19bが弁座から離座して開弁される。なお、本実施形態においては、吐水制御用電磁弁20bとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁19cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
【0060】
吐水制御弁19が開弁されると、給水管32から給水管分岐部33、第1分岐管33aを介して吐水制御弁19に供給された水道水は、吐水制御弁19を通ってリム給水管25内に流入する。リム給水管25に流入した洗浄水は、水洗便器本体のリム吐水口2d(
図2)から吐出される。リム吐水口2dから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの中で旋回しながら流下し、ボウル部2aの汚物受け面を洗浄する。このリム吐水口2dからの吐水は、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される前の「前リム」吐水として行われる。このように、「前リム」吐水が行われることにより、
図4の上欄の下段に示すように、ボウル部2a内の溜水の水位は、時刻t
S1から上昇し始める。
【0061】
吐水制御用電磁弁20bに通電を行った後、所定時間後の時刻tS2においてコントローラ28は、排水制御用電磁弁20aに通電を行い、電磁弁パイロット弁18cをパイロット弁口(図示せず)から離座させる。これにより、排水制御弁18の圧力室内の圧力が低下し、主弁体18bが弁座から離座して、開弁される。即ち、コントローラ28は、吐水制御弁19を開弁させた後、吐水制御弁19の開弁状態を維持したまま、排水制御弁18を開弁させる。なお、本実施形態においては、排水制御用電磁弁20aとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁18cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
【0062】
上述したように、排水制御弁18から流出した洗浄水は、流入管23を通って排水弁水圧駆動部14のシリンダ14aに流入し、流出管24から流出する。また、流入管23からシリンダ14aに流入した水の一部は、シリンダ14aの貫通孔14fの内壁とロッド15の間の隙間14dから流出し、この水は、貯水タンク10に流入する。一方、流出管24を通って流出した洗浄水の一部はオーバーフロー管10bの中に流入し、残りの洗浄水は貯水タンク10内に流入する。即ち、排水弁水圧駆動部14から流出した洗浄水の一部は貯水タンク10内に流入し、残りのオーバーフロー管10bの中に流入した洗浄水は、排水弁12をバイパスしてゼット吐水口2bから水洗便器本体内に流入する。
【0063】
一方、流入管23から排水弁水圧駆動部14のシリンダ14a内に流入した洗浄水は、ピストン14bを押し上げる。これにより、ピストン14bに連結されたロッド15及び排水弁12も引き上げられ、排水口10aが開弁される。これにより、貯水タンク10内に貯留されていた洗浄水は、排水口10aを通って流出し、「ゼット吐水」として、ボウル部2aの下部に設けられたゼット吐水口2b(
図2)から吐出される。ゼット吐水口2bから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの下部から延びる排水トラップ管路2eを満水にし、サイフォン現象を誘発する。サイフォン現象により、ボウル部2a内の溜水及び汚物が排水トラップ管路2eを通って排出される。
【0064】
図4の上欄の下段に示すように、時刻t
S2においてゼット吐水が開始されることにより、ボウル部2a内の溜水の水位は急激に上昇する。次いで、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が発生すると、ボウル部2a内の溜水は負圧により排水トラップ管路2eの中へ引き込まれ、排水トラップ管路2eを通って排出されるので、ボウル部2a内の水位は急激に低下する。なお、ゼット吐水口2bから洗浄水が吐出されている間も、「中リム」吐水として、リム吐水口2dからの吐水も継続されている。
【0065】
一方、排水弁水圧駆動部14においてピストン14bが押し上げられ、これに伴いロッド15及び排水弁12が所定位置まで引き上げられると、クラッチ機構22が、下部ロッド15b及び排水弁12を、上部ロッド15aから切り離す。これにより、排水制御弁18の開弁中においては、上部ロッド15aはピストン14bと共に上方に押し上げられたままになる一方、下部ロッド15b及び排水弁12は、自重により降下する。しかしながら、切り離された下部ロッド15bは、排水弁フロート機構26の係合部26bと係合し、下部ロッド15b及び排水弁12の降下が阻止される。これにより、クラッチ機構22が切り離された後も貯水タンク10の排水口10aは開弁されたままとなり、ゼット吐水口2bからの吐水が継続される。
【0066】
上述したように、排水弁水圧駆動部14から流出した洗浄水の一部は貯水タンク10内に流入する。しかしながら、流出管24を通って貯水タンク10に流入する洗浄水の流量は、排水弁12が開弁されることにより排水口10aから排出される洗浄水の流量よりも少ないため、この状態では貯水タンク10内の水位は低下する。
【0067】
次いで、貯水タンク10内の洗浄水の排出により、貯水タンク10内の水位が低下すると、制御弁フロート34が低下する。これにより、時刻tS2において、排水弁12が開弁された後、アーム部34aが回動し、フロートパイロット弁18dがパイロット弁口(図示せず)から離座し、パイロット弁口(図示せず)が開弁される。
【0068】
さらに、フロートパイロット弁18dが開弁された後、コントローラ28は排水制御用電磁弁20aに再び制御信号を送り、電磁弁パイロット弁18cを閉弁させる。しかしながら、この時点では、フロートパイロット弁18dが開弁されているため、排水制御弁18の圧力室内の圧力が上昇することはなく、排水制御弁18は開弁されたまま維持される。
【0069】
次いで、貯水タンク10内の洗浄水が排水口10aから排出されることにより、貯水タンク10内の水位が所定水位まで低下すると、排水弁フロート機構26のフロート部26aが下降し、これが係合部26bを移動させる。これにより、下部ロッド15bと係合部26bとの係合が解除され、下部ロッド15b及び排水弁12は再び降下し始める。そして、時刻tS3において貯水タンク10の排水口10aが排水弁12により閉弁され、排水口10aから流出した洗浄水のゼット吐水口2bからの吐水が停止される。時刻tS3においてゼット吐水口2bからの吐水が停止されると、その後、排水トラップ管路2e内におけるサイフォン現象が終了する。サイフォン現象が終了することにより、ボウル部2a内の溜水の排水トラップ管路2eからの排出も停止する。
【0070】
一方、ゼット吐水が終了した後も「後リム」吐水としてリム吐水口2dからの吐水が継続され、このリム吐水口2dから吐出された洗浄水はボウル部2a内に流入し、リフィール水として利用される。このため、
図4の上欄の下段に示すように、ボウル部2a内の溜水の水位は、排水弁12の閉弁後、サイフォン現象が終了したあと、少しずつ上昇する。
【0071】
さらに、時刻tS1において吐水制御弁19が開弁された後、所定時間経過した時刻tS4において、コントローラ28は吐水制御用電磁弁20bに制御信号を送り、電磁弁パイロット弁19cを閉弁させる。これにより、吐水制御弁19が閉弁され、リム吐水口2dからの洗浄水の吐水が停止される。
【0072】
さらに、リム吐水口2dからの吐水が停止された後も、排水制御弁18は開弁された状態にあるため、給水管32から供給された水は、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14aを通って、貯水タンク10内、及びオーバーフロー管10b内に流入する。従って、排水口10aが閉弁された後も、オーバーフロー管10bに流入した洗浄水が、ゼット吐水口2bを通ってボウル部2a内に流入し、流入した洗浄水はリフィール水として利用される(なお、オーバーフロー管10bを通ってゼット吐水口2bから吐出される洗浄水は小流量であるため、
図4では図示を省略している)。これにより、ボウル部2a内の溜水の水位は、リム吐水口2dからの吐水が停止された後も、ゆっくり上昇する。一方、貯水タンク10内にも、排水弁水圧駆動部14を通った洗浄水が流入するので、貯水タンク10内の水位も上昇する。
【0073】
次いで、時刻tS5において、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L1まで上昇すると、制御弁フロート34が上昇し、アーム部34aを介してフロートパイロット弁18dが移動され、パイロット弁口が閉弁される。これにより、電磁弁パイロット弁18c及びフロートパイロット弁18dの両方が閉弁された状態となるので、制御弁本体部18a内の圧力室の圧力が上昇して主弁体18bを閉弁させ、排水制御弁18が閉弁状態となる。この際、ボウル部2a内の溜水の水位は、待機状態(時刻tS0)における水位に復帰する。以上により、貯水タンク10への給水が停止される。
【0074】
一方、排水制御弁18が閉弁されることにより、排水弁水圧駆動部14への水の供給が停止されると、排水弁水圧駆動部14のピストン14bは、スプリング14cの付勢力により押し下げられる。ピストン14bと共に上部ロッド15aが押し下げられると、クラッチ機構22により切り離されていた上部ロッド15aと下部ロッド15bが再び連結される。このため、次回、便器洗浄が実行された時は、上部ロッド15a及び下部ロッド15bは、ピストン14bにより共に引き上げられる。以上により、小洗浄モードによる一回の便器洗浄が終了し、水洗便器装置は、便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0075】
次に、
図4の下欄に示す大洗浄モードを実行した場合における便器洗浄シーケンスを説明する。
図4の下欄の時刻t
L0における便器洗浄の待機状態は、上述した小洗浄モードの場合と同様である。
次いで、時刻t
L1において、使用者が大洗浄を行うべくレバーハンドル8を操作すると、大洗浄モードの実行を指示する信号がコントローラ28に送られる。コントローラ28は、吐水制御用電磁弁20bに通電して吐水制御弁19を開弁させ、リム吐水口2dからの吐水を開始させる。この吐水制御弁19の制御は、上述した小洗浄モードと同様である。
【0076】
さらに、コントローラ28は、時刻tL2において、排水制御用電磁弁20aに通電を行い、排水制御弁18を開弁させる。上述したように、排水制御弁18が開弁されると、排水弁水圧駆動部14が作動され、貯水タンク10の排水弁12が開弁される。これにより、時刻tL2において、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される。この排水弁12を開弁させる作用も、上述した小洗浄モードの場合と同様である。しかしながら、時刻tL1においてリム吐水口2dからの吐水を開始させた後、時刻tL2において排水弁12を開弁させるまでの期間が、大洗浄モードの場合には、小洗浄モードの場合よりも長くされている。即ち、大洗浄モードにおける時刻tL1と時刻tL2の間の時間は、小洗浄モードにおける時刻tS1と時刻tS2の間の時間よりも長くされている。
【0077】
ここで、リム吐水口2dから吐水される洗浄水の流量(L/min)は、大洗浄モードの場合も、小洗浄モードの場合と同じである。しかしながら、大洗浄モードの場合には、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される前の、リム吐水口2dからの吐水を行っている吐水時間が、小洗浄モードの場合よりも長くされている。このため、ゼット吐水口2bからの吐水を開始させる時点におけるボウル部2a内の溜水の水位は、大洗浄モードの方が、小洗浄モードの場合よりも高くなる。即ち、大洗浄モードにおいてゼット吐水を開始させる際の溜水水位LLは、小洗浄モードにおいてゼット吐水を開始させる際の溜水水位LSよりも高くされている。このように、本実施形態においては、ゼット吐水口2bからの吐水中におけるボウル部2a内の溜水の水位が、大洗浄モードの場合と小洗浄モードの場合で異なるように制御される。
【0078】
このように、本実施形態においては、ゼット吐水を開始させるまでにリム吐水を行う期間を、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも長くすることにより、ゼット吐水を開始させる際の溜水水位が、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも高くなるようにしている。これに対し、変形例として、ゼット吐水を開始させるまでのリム吐水の流量を、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも多くすることにより、ゼット吐水を開始させる際の溜水水位が、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも高くなるように本発明を構成することもできる。
【0079】
なお、本実施形態においては、リム吐水口2dから吐水される洗浄水の流量(L/min)が比較的小さい。このため、ゼット吐水口2bからの吐水は、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象がまだ発生していない状態で行われ、ゼット吐水口2bからの吐水によりサイフォン現象が誘発される。即ち、ゼット吐水口2bからの吐水は、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が発生する前に行われる。
【0080】
また、リム吐水口2dから洗浄水が吐出され、ボウル部2a内の水位が上昇すると、ボウル部2a内の溜水が、排水トラップ管路2eの頂点2fを乗り越えて、排水トラップ管路2eから排水される(この状態ではサイフォン現象は発生していない)。この排水トラップ管路2eの頂点2fを乗り越える流量は、リム吐水口2dからの吐水が開始された後、少しずつ増加し、やがてリム吐水口2dから流入する洗浄水の流量と、排水トラップ管路2eの頂点2fを乗り越えて流出する洗浄水の流量が等しくなる。この状態では、リム吐水口2dからの吐水中であっても、ボウル部2a内の溜水の水位は一定になり、安定水位となる。本実施形態においては、ボウル部2a内の溜水が安定水位に到達する前に、ゼット吐水口2bからの吐水が開始され、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象を発生させている。
【0081】
さらに、ボウル部2a内の汚物及び溜水を排水トラップ管路2eを介して排出するサイフォン力は、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が発生する時点におけるボウル部2a内の溜水の水位が高いほど大きくなる。即ち、サイフォン現象が発生する時点におけるボウル部2a内の溜水の水位が、排水トラップ管路2eの頂点2f(
図2)の高さよりも高いほど、水頭圧により溜水を排水トラップ管路2e内に押し込む力が強くなり、サイフォン力が大きくなる。また、サイフォン現象が発生する時点における溜水の水位が高いほど、サイフォン現象の発生により排水トラップ管路2e内に吸い込まれる洗浄水の量が多くなり、より強力にボウル部2a内の汚物を排出することができる。
【0082】
本実施形態においては、ゼット吐水口2bからの吐水を開始させ、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象を発生させる際の溜水の水位が、大洗浄モードの方が小洗浄モードよりも高くされている。このため、
図5に示すように、大洗浄モードにおいては、小洗浄モードよりも、排水トラップ管路2eを通って流れる洗浄水の瞬間流量の最大値が大きくなる。この結果、本実施形態においては、大洗浄モードの方が小洗浄モードよりもサイフォン力が大きくなり、より強力にボウル部2a内の汚物及び溜水を、排水トラップ管路2eを通して排出することができる。
【0083】
さらに、
図4の時刻t
L2においてゼット吐水口2bからの吐水を開始させた後、時刻t
L3において排水弁12が閉弁され、ゼット吐水口2bからの吐水が終了する。ここで、ゼット吐水口2bからのゼット吐水は、排水制御弁18を開弁させ、排水弁水圧駆動部14を作動させて排水弁12を引き上げることにより行われ、これは大洗浄モードの場合も、小洗浄モードの場合も同様である。従って、大洗浄モードにおいて排水弁12が開弁される時刻t
L2~時刻t
L3の期間は、小洗浄モードにおいて排水弁12が開弁される時刻t
S2~時刻t
S3の期間とほぼ同一になる。このため、ゼット吐水口2bからは、大洗浄モードと小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象を誘発するために、実質的に同量(同じ体積)の洗浄水が吐出される。
【0084】
なお、実際には、洗浄水タンク装置4に供給される水道Cの給水圧等が常に一定ではないため、ゼット吐水口2bから吐出される洗浄水の量は、一回の洗浄毎、及び大洗浄モードと小洗浄モードでバラツキが生じる。しかしながら、ゼット吐水口2bからの吐水は、同一の洗浄制御装置(排水弁水圧駆動部14、コントローラ28)により、同一の制御で実行されるため、大洗浄モード及び小洗浄モードにおいて、実質的に同量の洗浄水がゼット吐水口2bから吐出されるということができる。従って、本実施形態においては、大洗浄モード及び小洗浄モードにおいて、実質的に同量の洗浄水をゼット吐水口2bから吐出させながら、ゼット吐水口2bからの吐水中における溜水の水位を異ならせることにより、大洗浄モードと小洗浄モードを実行している。
【0085】
次に、
図4の時刻t
L4において、コントローラ28は吐水制御弁19を閉弁させ、リム吐水口2dからの吐水を終了させる。さらに、時刻t
L5において、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L
1まで上昇すると、制御弁フロート34が上昇し、排水制御弁18が閉弁状態となる。この際、ボウル部2a内の溜水の水位は、待機状態(時刻t
L0)における水位に復帰し、貯水タンク10への給水が停止される。以上により、大洗浄モードによる一回の便器洗浄が終了し、水洗便器装置は、便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0086】
ここで、大洗浄モードにおいて、時刻tL2に排水弁12を開弁させた後、時刻tL4においてリム吐水口2dからの吐水を終了させるまでの期間は、小洗浄モードにおける時刻tS2~時刻tS4の期間と同一である。また、大洗浄モードにおいてリム吐水口2dからの吐水が行われている期間tL1~tL4は、小洗浄モードにおいてリム吐水口2dからの吐水が行われている期間tS1~tS4よりも長くなる。このため、リム吐水口2dから吐水される洗浄水の量(洗浄水の体積)は、大洗浄モードの方が小洗浄モードよりも多くなる。一方、大洗浄モードにおいて排水制御弁18が開弁されている期間tL2~tL5は、小洗浄モードにおいて排水制御弁18が開弁されている期間tS2~tS5と同一であり、ゼット吐水口2bから吐水される洗浄水の量も実質的に同一である。このため、大洗浄モードにおいて使用される洗浄水の総量(リム吐水口2d及びゼット吐水口2bから吐水される洗浄水全体の体積)は、小洗浄モードにおいて使用される洗浄水の総量よりも多くなる。
【0087】
本発明の第1実施形態の水洗大便器装置1によれば、洗浄制御装置である排水弁水圧駆動部14及びコントローラ28が、大洗浄モードと小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象を誘発するために実質的に同量の洗浄水をゼット吐水口2bから吐出させるので、単純な構成で大洗浄モード及び小洗浄モードを実現することができる。また、本実施形態によれば、リム吐水口2dからの吐水を制御して、ゼット吐水口2bからの吐水中におけるボウル部2a内の溜水の水位を大洗浄モードと小洗浄モードで異ならせているので、無駄水を抑制しながら大洗浄モード及び小洗浄モードを実現することができる。
【0088】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、ゼット吐水口2bからの吐水を開始させる際に、ボウル部2a内の溜水の水位が、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも高くされている。このため、大洗浄モードでは、ゼット吐水口2bからの吐水により、より多くの洗浄水を排水トラップ管路2e内に送り込むことができ、サイフォン現象を誘発するためのゼット吐水口2bからの吐水の量が実質的に小洗浄モードと同じであっても強いサイフォン現象を誘発することができ、洗浄力を高くすることができる。
【0089】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が発生する前にゼット吐水口2bからの吐水を開始させるので、ゼット吐水口2bからの吐水によりサイフォン現象を誘発することができる。このため、サイフォン現象が発生する前にリム吐水口2dから多量の洗浄水が吐出され、無駄水が発生するのを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、ボウル部2a内が安定水位に到達する前に、ゼット吐水口2bからの吐水が開始されるので、汚物の排出にあまり寄与せずにボウル部2aから排出される洗浄水の量を減じることができ、無駄水を抑制することができる。
【0091】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、ゼット吐水口2bから吐出させる洗浄水は、大洗浄モード、小洗浄モードにおいて、実質的に同量であるため、排水弁12を開弁させる機構を単純化することができる。一方、給水源である水道から供給された洗浄水の吐出タイミング、流量等は、吐水制御弁19の制御により比較的簡単に変更することができ、容易に大洗浄モード、小洗浄モードを実現することができる。
【0092】
次に、
図6及び
図7を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態による水洗大便器装置は、コントローラ28によって実行される制御のみが上述した第1実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0093】
図6は、本発明の第2実施形態の水洗大便器装置による便器洗浄シーケンスの一例を示すタイムチャートであり、上欄には小洗浄モードにおける便器洗浄を示し、下欄には大洗浄モードにおける便器洗浄を示している。また、各欄の上段にリム吐水口からの吐水流量、中段にゼット吐水口からの吐水流量、下段にボウル部内における溜水の水位を夫々示している。また、
図7は、大洗浄モード、小洗浄モードにおいて、排水トラップ管路を通って流れる洗浄水の瞬間流量の時間的変化を模式的に示す図である。
【0094】
まず、本発明の第2実施形態の水洗大便器装置により、
図6の上欄に示す小洗浄モードを実行した場合における便器洗浄シーケンスを説明する。
図6の上欄の時刻t
S10における便器洗浄の待機状態は、上述した第1実施形態と同様である。
次いで、時刻t
S11において、使用者が小洗浄を行うべくレバーハンドル8(
図1)を操作すると、小洗浄モードの実行を指示する信号がコントローラ28に送られる。コントローラ28は、吐水制御用電磁弁20bに通電して吐水制御弁19を開弁させ、リム吐水口2dからの吐水を開始させる。この吐水制御弁19の制御は、上述した第1実施形態と同様である。これにより、ボウル部2a内の溜水の水位は少しずつ上昇する。
【0095】
さらに、コントローラ28は、時刻tS12において、排水制御用電磁弁20aに通電を行い、排水制御弁18を開弁させる。排水制御弁18が開弁されると、排水弁水圧駆動部14が作動され、貯水タンク10の排水弁12が開弁される。これにより、時刻tS12において、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象を誘発するための、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される。この排水弁12を開弁させる作用も、上述した第1実施形態と同様である。
【0096】
排水弁12が開弁され、ゼット吐水口2bから大流量の吐水が行われることにより、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が誘発され、ボウル部2a内の溜水及び汚物が排水トラップ管路2eを通って排出される。これにより、ボウル部2a内の溜水の水位が低下する。
【0097】
次いで、時刻tS12において排水制御弁18を開弁させ、排水弁12を開弁させた後、排水弁12が閉弁される前の時刻tS13において、コントローラ28は、リム吐水口2dからの吐水を停止させる。即ち、コントローラ28は、排水弁12が開弁された後、閉弁される前に、吐水制御用電磁弁20bに信号を送って吐水制御弁19を閉弁させ、リム吐水口2dからの吐水を停止させる。
【0098】
その後、時刻t
S14において、排水弁12は排水口10aに着座して閉弁され、サイフォン現象を誘発するためのゼット吐水口2bからの吐水が終了する。この排水弁12を閉弁させる作用も、第1実施形態と同様である。
また、上述した第1実施形態と同様に、排水弁12が閉弁された後も、排水制御弁18は開弁された状態が継続するので、給水管32(
図3)から供給された水道水は、流出管24を通って、貯水タンク10及びオーバーフロー管10bの中に夫々流入する。
【0099】
オーバーフロー管10bの中に流入した洗浄水は、リフィールするためにゼット吐水口2bを通ってボウル部2aの中に流入するので、排水弁12が閉弁された後もボウル部2aの溜水水位は上昇する。また、貯水タンク10に流入した洗浄水は、貯水タンク10内の水位を上昇させる。
図6の時刻t
S15において、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L
1まで上昇すると、制御弁フロート34が上昇し、排水制御弁18が閉弁状態となる。この際、ボウル部2a内の溜水の水位は、待機状態(時刻t
S10)における水位に復帰し、貯水タンク10への給水が停止される。以上により、小洗浄モードによる一回の便器洗浄が終了し、水洗便器装置は、便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0100】
次に、
図6の下欄に示す大洗浄モードを実行した場合における便器洗浄シーケンスを説明する。
図6の下欄の時刻t
L10における便器洗浄の待機状態は、小洗浄モードの場合と同様である。
次いで、時刻t
L11において、使用者が大洗浄を行うべくレバーハンドル8を操作すると、大洗浄モードの実行を指示する信号がコントローラ28に送られる。コントローラ28は、吐水制御用電磁弁20bに通電して吐水制御弁19を開弁させ、リム吐水口2dからの吐水を開始させる。この吐水制御弁19の制御も小洗浄モードの場合と同様である。これにより、ボウル部2a内の溜水の水位は少しずつ上昇する。
【0101】
さらに、コントローラ28は、時刻tL12において、排水制御用電磁弁20aに通電を行い、排水制御弁18を開弁させる。排水制御弁18が開弁されると、排水弁水圧駆動部14が作動され、貯水タンク10の排水弁12が開弁される。これにより、時刻tL12において、サイフォン作用を誘発するためのゼット吐水口2bからの吐水が開始される。この排水弁12を開弁させる作用も、小洗浄モードの場合と同様である。また、本実施形態においても、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される前に排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が発生することはない。
【0102】
排水弁12が開弁され、ゼット吐水口2bから大流量の吐水が行われることにより、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が誘発され、ボウル部2a内の溜水及び汚物が排水トラップ管路2eを通って排出される。ここで、本実施形態においては、リム吐水を開始させた後、ゼット吐水を開始させるまでの期間tL11~tL12が、小洗浄モードにおける期間tS11~tS12と同一である。このため、本実施形態においては、ゼット吐水口2bからの吐水を開始させる時点におけるボウル部2a内の溜水の水位が、大洗浄モードの場合と、小洗浄モードの場合で、実質的に同一になるように制御される。
【0103】
一方、小洗浄モードにおいては、コントローラ28は、時刻t
S12において排水制御弁18を開弁させて排水弁12を開弁させた後、排水弁12が閉弁される前の時刻t
S13において、リム吐水口2dからの吐水を停止させていた。これに対し、大洗浄モードにおいては、排水弁12が閉弁された後(時刻t
L13の後)までリム吐水口2dからの吐水が継続される。このため、小洗浄モードにおいては、ゼット吐水口2bからの吐水により排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が誘発された後、急激にボウル部2a内の溜水の水位が低下するのに対し、大洗浄モードにおいては、サイフォン現象が誘発された後も緩やかに溜水の水位が低下する。この結果、大洗浄モードにおいては、ボウル部2a内の溜水の水位は、常に排水トラップ管路2eの入口の上端2g(
図2)よりも高い位置にあり、排水トラップ管路2eの入口から大気が吸い込まれることはない。
【0104】
即ち、
図7に模式的に示すように、本実施形態においては、ゼット吐水が開始される時点におけるボウル部2a内の水位が大洗浄モードと小洗浄モードで同一であるため、排水トラップ管路2e内を流れる洗浄水の瞬間流量の最大値が、大洗浄モードと小洗浄モードでほぼ同一である。しかしながら、小洗浄モードではゼット吐水中(期間t
S12~t
S14)にリム吐水が停止されるのに対し、大洗浄モードではリム吐水が継続されるので、サイフォン現象が誘発された後の溜水の水位が小洗浄モードよりも高く維持される。この結果、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象が長く継続する。
【0105】
このように、本実施形態においては、ゼット吐水口2bからの吐水中におけるボウル部2a内の溜水の水位が大洗浄モードと小洗浄モードで異なるように、リム吐水口2dからの吐水が制御される。即ち、ゼット吐水口2bからの吐水が開始された後のボウル部2a内の溜水の水位が、大洗浄モードでは、小洗浄モードよりも高くなるように、リム吐水口2dからの吐水が制御される。このため、
図7に示すように、大洗浄モードでは、洗浄水が排水トラップ管路2e内を大流量で流れる時間が小洗浄モードよりも長くなる。これにより、大洗浄モードでは、小洗浄モードよりも強力な洗浄力を得ることができる。
【0106】
このように、本実施形態においては、ゼット吐水中においてリム吐水を行う期間を、小洗浄モードでは、大洗浄モードよりも短くすることにより、ゼット吐水が開始された後の溜水水位が、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも高くなるようにしている。これに対し、変形例として、ゼット吐水中におけるリム吐水の流量を、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも多くすることにより、ゼット吐水を開始させた後の溜水水位が、大洗浄モードでは小洗浄モードよりも高くなるように本発明を構成することもできる。また、本実施形態においては、小洗浄モードにおいて、ゼット吐水中にリム吐水を停止させているが、ゼット吐水中にリム吐水が漸減されるように本発明を構成することもできる。
【0107】
さらに、
図6の時刻t
L13において、排水弁12が排水口10aに着座して閉弁され、サイフォン現象を誘発するためのゼット吐水口2bからの吐水が終了する。ここで、大洗浄モードにおいて、排水弁12が開弁された後、閉弁されるまでの期間t
L12~t
L13は、小洗浄モードにおいて、排水弁12が開弁された後、閉弁されるまでの期間t
S12~t
S14と実質的に同じである。このため、排水トラップ管路2e内でサイフォン現象を誘発するためにゼット吐水口2bから吐出させる洗浄水の量(洗浄水の体積)は、小洗浄モードと大洗浄モードで、実質的に同一になる。
【0108】
次いで、排水弁12が閉弁された後、時刻tL14において、コントローラ28は、吐水制御弁19を閉弁させて、リム吐水口2dからの吐水を停止させる。このように、大洗浄モードにおいては、ゼット吐水口2bからサイフォン現象を誘発するための吐水が開始される前から、吐水が終了した後まで、リム吐水口2dからの吐水が継続される。
【0109】
さらに、排水弁12が閉弁された後も、排水制御弁18は開弁された状態が継続するので、給水管32(
図3)から供給された水道水は、流出管24を通って、貯水タンク10及びオーバーフロー管10bの中に夫々流入する。貯水タンク10に流入した洗浄水は貯水タンク10内に貯留され、オーバーフロー管10bの中に流入した洗浄水は、ボウル部2aをリフィールするために、ゼット吐水口2bを通ってボウル部2aに流入する。
【0110】
次いで、時刻tL15において、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L1まで上昇すると、制御弁フロート34が上昇し、排水制御弁18が閉弁状態となる。この際、ボウル部2a内の溜水の水位は、待機状態(時刻tL10)における水位に復帰し、貯水タンク10への給水が停止される。以上により、大洗浄モードによる一回の便器洗浄が終了し、水洗便器装置は、便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0111】
ここで、大洗浄モードにおいてリム吐水口2dからの吐水が行われている期間tL11~tL14は、小洗浄モードにおいてリム吐水口2dからの吐水が行われている期間tS11~tS13よりも長くなる。このため、リム吐水口2dから吐水される洗浄水の量(洗浄水の体積)は、大洗浄モードの方が小洗浄モードよりも多くなる。このように、大洗浄モードにおいて使用される洗浄水の総量(リム吐水口2d及びゼット吐水口2bから吐水される洗浄水全体の体積)は、小洗浄モードにおいて使用される洗浄水の総量よりも多くなる。
【0112】
本発明の第2実施形態の水洗大便器装置によれば、ゼット吐水口2bからの吐水が開始された後のボウル部2a内の溜水の水位が、大洗浄モードでは、小洗浄モードよりも高くされる。この結果、溜水の水位が高い大洗浄モードでは、サイフォン現象の持続時間が、小洗浄モードよりも長くなる。このため、大洗浄モードと小洗浄モードで、サイフォン現象を誘発するために、ゼット吐水口2bから実質的に同量の洗浄水を吐出させながら、大洗浄モードではサイフォン現象の持続時間を長くすることができ、洗浄力を高くすることができる。
【0113】
本発明の第2実施形態の水洗大便器装置によれば。大洗浄モードの実行時において、リム吐水口2dからの吐水が、サイフォン現象を誘発するための吐水が開始される前から、吐水が終了した後まで継続される。このため、リム吐水口2dからの吐水により、ボウル部2aの表面の洗浄、リム吐水口2dからの吐水により誘発されるサイフォン作用の補助、及びボウル部2aのリフィールを行うことができ、リム吐水口2dからの吐水を有効に洗浄に活用することができる。
【0114】
次に、
図8を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態による水洗大便器装置は、大洗浄モード及び小洗浄モードの洗浄シーケンスは、上述した第1実施形態と同一であり、これを実現するための水洗大便器装置の構成が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、以下では、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
図8は、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置の全体構成を示す図である。
【0115】
図8に示すように、本実施形態の水洗大便器装置100は、水洗便器本体102と、洗浄水タンク装置104と、水洗便器本体102の洗浄を制御する洗浄制御装置106と、を有する。本実施形態の水洗大便器装置100は、使用後に、リモコン108の操作に基づいて、洗浄制御装置106により水洗便器本体102のボウル部102aの大洗浄又は小洗浄を実行することができるように構成されている。
【0116】
さらに、洗浄水タンク装置104は、水洗便器本体102に供給すべき洗浄水を貯留する洗浄水タンク本体である貯水タンク110と、この貯水タンク110に貯留された洗浄水を水洗便器本体102に圧送するための加圧ポンプ112と、切替弁114と、給水源である水道Cから供給された洗浄水の、切替弁114への供給、停止を切り替える開閉弁116と、を有する。
【0117】
水洗便器本体102は、汚物を受けるボウル部102aと、このボウル部102aの溜水面Wよりも下方に設けられた下部吐水口であるゼット吐水口102bと、ボウル部102aのリム部102cに設けられた上部吐水口であるリム吐水口102dと、を有する。さらに、ボウル部102aの下部には、排水トラップ管路102eが連通されており、この排水トラップ管路102eの入口は、ゼット吐水口102bと対向するように向けられている。
【0118】
加圧ポンプ112は、貯水タンク110に貯留された洗浄水を加圧して、水洗便器本体102のゼット吐水口102bから吐出させるように構成されている。加圧ポンプ112を作動させ、ゼット吐水口102bから洗浄水を吐出させることにより、排水トラップ管路102e内でサイフォン現象が誘発される。
【0119】
切替弁114は、水道Cから供給された洗浄水を、貯水タンク110側、又はリム吐水口102d側に切り替えるように構成されている。切替弁114が貯水タンク110側に切り替えられている状態では、水道Cから供給され、切替弁114を通過した洗浄水は、貯水タンク110に流入し、貯留される。一方、切替弁114がリム吐水口102d側に切り替えられている状態では、水道Cから供給され、切替弁114を通過した洗浄水は、水洗便器本体102のリム吐水口102dから吐出される。
【0120】
開閉弁116は切替弁114の上流側に設けられ、水道Cから供給された洗浄水の、切替弁114への流出、停止を切り替え可能に構成されている。切替弁114がリム吐水口102d側に切り替えられている状態では、開閉弁116の開閉により、リム吐水口102dからの洗浄水の吐水、止水が切り替えられる。
【0121】
洗浄制御装置106は、リモコン108の操作に基づいて、小洗浄モード及び大洗浄モードを実行するように構成されている。即ち、洗浄制御装置106は、加圧ポンプ112、切替弁114、及び開閉弁116に夫々制御信号を送り、小洗浄モード及び大洗浄モードを実行する。具体的には、洗浄制御装置106は、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、及びこれらを作動させるためのソフトウェア等(以上、図示せず)から構成されている。
【0122】
次に、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置100の作用を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置100により実行される便器洗浄のシーケンスは、
図4に示した、第1実施形態のシーケンスと同様である。
【0123】
即ち、
図4の上欄、時刻t
S0の待機状態においては、貯水タンク110内の所定水位まで洗浄水が貯留され、切替弁114はリム吐水口102d側に切り替えられ、開閉弁116は閉弁されている。
次いで、時刻t
S1において使用者がリモコン108により小洗浄の操作を行うと、洗浄制御装置106は、小洗浄モードを実行する。まず、洗浄制御装置106は開閉弁116に制御信号を送り、これを開弁させる。これにより、水道Cから供給された洗浄水が、開閉弁116、切替弁114を通って水洗便器本体102のリム吐水口102dから「前リム」吐水として吐出される。即ち、リム吐水口102dからのリム吐水は、水道Cの給水圧により直接実行される。
【0124】
次いで、時刻tS2において、洗浄制御装置106は、加圧ポンプ112に制御信号を送り、これを作動させる。これにより、貯水タンク110に貯留されていた洗浄水が圧送され、水洗便器本体102のゼット吐水口102bから吐出される。これにより、排水トラップ管路102e内でサイフォン現象が誘発され、ボウル部102a内の汚物及び洗浄水が排水トラップ管路102eを通って排出される。なお、時刻tS2においてゼット吐水が開始された後も、「中リム」吐水として、リム吐水口102dからの吐水は継続される。
【0125】
さらに、洗浄制御装置106は、時刻tS3において、加圧ポンプ112に制御信号を送り、これを停止させる。これにより、ゼット吐水口102bからのゼット吐水が停止される。また、時刻tS3においてゼット吐水が停止された後も、リム吐水口102dからの吐水は、「後リム」吐水として継続される。「後リム」吐水として吐出された洗浄水は、水洗便器本体102のボウル部102aのリフィールに使用される。
【0126】
次いで、時刻tS4においてボウル部102aのリフィールが完了すると、洗浄制御装置106は切替弁114に制御信号を送り、これを貯水タンク110側に切り替える。これにより、水道Cから供給された洗浄水は、貯水タンク110に供給されるようになり、リム吐水口102dからの吐水は停止される。その後、貯水タンク110内の水位が所定水位まで復帰すると、洗浄制御装置106は、開閉弁116を閉弁させると共に、切替弁114をリム吐水口102dの側に切り替える。これにより、水洗大便器装置100は、便器洗浄開始前の待機状態に復帰し、小洗浄モードによる便器洗浄が完了する。
【0127】
また、
図4の下欄に示す大洗浄モードも同様に、洗浄制御装置106の制御により実行される。ここで、大洗浄モードにおいては、時刻t
L1においてリム吐水が開始された後、時刻t
L2において加圧ポンプ112を作動させるまでの期間が、小洗浄モードよりも長くされている。このため、時刻t
L2において加圧ポンプ112を作動させ、ゼット吐水口102bからの吐水を開始させる際のボウル部102a内の溜水水位が、大洗浄モードでは、小洗浄モードよりも高くなる。
【0128】
さらに、時刻tL2~tL3において、加圧ポンプ112は、小洗浄モードの時刻tS2~tS3と同一の作動時間、同一の作動回転数で作動される。このため、排水トラップ管路102e内でサイフォン現象を誘発するためにゼット吐水口102bから吐出される洗浄水は、大洗浄モードと小洗浄モードで実質的に同量になる。このように、貯水タンク110と加圧ポンプ112を使用した本実施形態の水洗大便器装置100によっても、本発明の第1実施形態と同様の大洗浄モード及び小洗浄モードを実行することができる。
【0129】
また、加圧ポンプ112、切替弁114、及び開閉弁116が作動するタイミングを変更することで、本実施形態の水洗大便器装置100の構成により、
図6に示した本発明の第2実施形態と同様の大洗浄モード及び小洗浄モードを実行することもできる。
【0130】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、リム吐水口からの吐水は水道から直接供給され、ゼット吐水口からの吐水は貯水タンクから供給されていたが、これら吐水の供給源は任意に組み合わせることができる。さらに、上述した実施形態においては、溜水面よりも上方の上部吐水口としてリム吐水口が設けられ、溜水面よりも下方の下部吐水口としてゼット吐水口が設けられていたが、これらの吐水口の位置は、溜水面の上方及び下方において適宜変更することができる。また、上述した本発明の各実施形態に備えられている任意の構成要素を、他の実施形態の構成と任意に組み合わせて本発明を構成することができる。
【符号の説明】
【0131】
1 水洗大便器装置
2 水洗便器本体
2a ボウル部
2b ゼット吐水口(下部吐水口)
2c リム部
2d リム吐水口(上部吐水口)
2e 排水トラップ管路
2f 排水トラップ管路の頂点
2g 入口の上端
4 洗浄水タンク装置
8 レバーハンドル
10 貯水タンク(洗浄水タンク本体)
10a 排水口
10b オーバーフロー管
12 排水弁
14 排水弁水圧駆動部
14a シリンダ
14b ピストン
14c スプリング
14d 隙間
14e パッキン
14f 貫通孔
15 ロッド
15a 上部ロッド
15b 下部ロッド
18 排水制御弁
18a 制御弁本体部
18b 主弁体
18c 電磁弁パイロット弁
18d フロートパイロット弁
19 吐水制御弁(開閉弁)
19a 吐水弁本体部
19b 主弁体
19c 電磁弁パイロット弁
20a 排水制御用電磁弁
20b 吐水制御用電磁弁
22 クラッチ機構
23 流入管
24 流出管
24b 第1下降管
24c 第2下降管
25 リム給水管
26 排水弁フロート機構
26a フロート部
26b 係合部
28 コントローラ
30a バキュームブレーカ
30b バキュームブレーカ
32 給水管
32a 止水栓
32b 定流量弁
33 給水管分岐部
33a 第1分岐管
33b 第2分岐管
34 制御弁フロート
100 水洗大便器装置
102 水洗便器本体
102a ボウル部
102b ゼット吐水口
102c リム部
102d リム吐水口
102e 排水トラップ管路
104 洗浄水タンク装置
106 洗浄制御装置
108 リモコン
110 貯水タンク
112 加圧ポンプ
114 切替弁
116 開閉弁