(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150281
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】固体燃料の製造方法及び固体燃料
(51)【国際特許分類】
C10L 5/48 20060101AFI20231005BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C10L5/48 ZAB
C08J11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059304
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】石野 陽一
【テーマコード(参考)】
4F401
4H015
【Fターム(参考)】
4F401AA13
4F401BA04
4F401BB20
4F401CA70
4F401CA84
4F401EA38
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4F401FA08Z
4H015AA13
4H015AA17
4H015AB01
4H015BA13
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、塩化ビニル系樹脂のような塩素含有樹脂を含む廃棄物を原料とする固体燃料において、塩素含有率が低減された固体燃料を低コストで提供することである。
【解決手段】 塩素含有樹脂を含む原料を酸素濃度10%以下、温度290~400℃の条件下で加熱することによって塩素含有率が低減された固体燃料を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有樹脂を含む原料を酸素濃度10%以下、温度290~400℃の条件下で加熱することを特徴とする、固体燃料の製造方法。
【請求項2】
前記塩素含有樹脂が塩化ビニル系樹脂である、請求項1記載の固体燃料の製造方法。
【請求項3】
原料が木質系バイオマス、ペーパスラッジ、パルプ、古紙のいずれか1種以上を含む、請求項1~2のいずれかに記載の固体燃料の製造方法。
【請求項4】
原料が0.1~50mmのサイズである粉砕物である、請求項1~3のいずれかに記載の固体燃料の製造方法。
【請求項5】
塩素含有樹脂を含む原料を二軸押出機にて、酸素濃度10%以下、温度290~400℃の条件下で加熱しつつ混錬する、請求項1~4のいずれかに記載の固体燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素含有樹脂を含む原料から塩素含有率が低減された固体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素化合物が含まれている樹脂(塩素含有樹脂)を含む廃棄物から得られる固体燃料は塩素含有率が高く、このような固体燃料は燃焼設備の腐食に対する対策や排ガス処理設備が必要となる。従って、固体燃料の塩素含有率を低減させることが求められる。特許文献1には、塩素含有樹脂を含む原料から焙焼によって製造される固体燃料の塩素含有率を低下させるために、固体燃料を水で洗浄する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では固体燃料を水で洗浄するための工程が必要となり、コストアップとなる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、塩素含有樹脂を含む廃棄物を原料とする固体燃料料において、塩素含有率が低減された固体燃料を低コストで提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、塩素含有樹脂を含む原料を酸素濃度10%以下、温度290~400℃の条件下で加熱することによって、塩素含有率が低減された固体燃料を効率よく製造できることを見出した。
【0007】
本発明は、以下を提供する。
(1)塩素含有樹脂を含む原料を酸素濃度10%以下、温度290~400℃の条件下で加熱することを特徴とする、固体燃料の製造方法。
(2)前記塩素含有樹脂が塩化ビニル系樹脂である、(1)に記載の固体燃料の製造方法。
(3)原料が木質系バイオマス、ペーパスラッジ、パルプ、古紙のいずれか1種以上を含む、(1)~(2)のいずれかに記載の固体燃料の製造方法。
(4)原料が0.1~50mmのサイズである粉砕物である、(1~(3)のいずれかに記載の固体燃料の製造方法。
(5) 塩素含有樹脂を含む原料を二軸押出機にて、酸素濃度10%以下、温度290~400℃の条件下で加熱しつつ混錬する、(1)~(4)のいずれかに記載の固体燃料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塩素含有樹脂を含む原料を特定の温度範囲で加熱することにより、洗浄等の特別な処理を行わなくても塩素含有率の低い固体燃料を効率よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、原料として塩素含有樹脂を含む原料を使用する。塩素含有樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、等が挙げられる。
【0010】
塩素含有樹脂以外の原料としては、塩素を含有しない樹脂、木質系バイオマス、ペーパスラッジ、パルプ、古紙、等である。
【0011】
木質系バイオマスとしては、木材チップ、樹皮(バーク)、おが屑、鋸屑等が挙げられる。これらの木質系バイオマスはあまり利用されることなく、廃棄されることが多いのが現状である。樹種は広葉樹、針葉樹のいずれも使用できる。具体的には、これに限定されるものではないが、広葉樹としては、ユーカリ、パラゴムノキ、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示され、針葉樹としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等が例示される。
【0012】
塩素を含有しない樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ABS樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポロエチレンテレフタレート等)、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂等)、等が挙げられる。
【0013】
本発明において、原料は0.1~100mmのサイズに粉砕された粉砕物を使用することが好ましく、0.1~50mmのサイズのものを使用することがさらに好ましい。なお、本発明において、原料粉砕物のサイズとは、篩い分け器の円形の穴の大きさによって篩い分けされたものである。原料を粉砕するための装置としては、ナイフ切削型バイオマス燃料用チッパーで粉砕処理することが好ましい。
【0014】
本発明において、原料粉砕物を成形物として高密度化してもよい。本発明における高密度化とは、原料粉砕物をブリケットやペレット状に成型する処理のことを意味する。成型処理を行うことによって、嵩密度を大幅に高めることができる。高密度化処理後の嵩密度は0.40g/cm3~1.5g/cm3程度である。
【0015】
本発明における高密度化を行う前に、粉砕物の水分を10~50%とすることが望ましい。水分が10%より少ないとブリケッターやペレタイザーの内部で閉塞が発生し、安定した成型物の製造ができない。水分が50%を超えると成型できず、粉体状またはペースト状で排出される。
【0016】
本発明において高密度化処理を行うための装置は特に限定されていないが、ウエストポーター((株)タジリ製)、スクイーズセパレータ((株)小熊製)、ブリケッター(北川鉄工所(株)製)、リングダイ式ペレタイザー(CPM(株)製、(株)御池鉄工所製)、フラットダイ式ペレタイザー(ダルトン(株)製)等が望ましい。
【0017】
本発明において、原料の塩素含有樹脂を含む原料の加熱処理の条件は、酸素濃度10%以下で、温度290~400℃である。酸素濃度が10%を超えると物質収率、熱量収率が低下する。また、温度が290℃未満では、塩素含有率を低減させることが不十分となり、後述する粉砕性が不十分である。温度が400℃を超えた場合は、塩素含有率の低減が頭打ちとなる。また、温度が350℃を超えると、物質収率、熱量収率の低下が顕著になる。従って、物質収率、熱量収率も勘案すると、炉内温度は250~400℃が好ましく、さらに260~350℃がさらに好ましい。処理温度を290~400℃とすることで、塩素含有率の低減、物質収率と粉砕性を両立できる固体燃料を製造することが可能になると推察される。
【0018】
本発明において、加熱処理を行うための装置は特に限定されないが、ロータリーキルン、竪型炉、二軸押出機が好ましい。なお、酸素濃度を10%以下に調整するため装置内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。処理時間は1~180分が好ましく、1~60分がさらに好ましい。また、加熱処理を行うための装置として、外熱式ロータリーキルンを使用してもよい。外熱式ロータリーキルンとは、キルン内筒の一部または全部をキルン外筒で覆う構造を有するもので、内筒内で原料の加熱処理を行い、外筒内で燃料を燃焼させて内筒内部の原料を間接的に加熱する。
【0019】
本発明で得られる固体燃料は、原料として粉砕が困難である木質バイオマスを含有しても粉砕が容易である。例えば、粉砕性の指標であるJIS M 8801:2004に規定のハードグローブ粉砕性指数(HGI)は30以上が好ましく、40以上がさらに好ましい。HGIが高くなるほど、粉砕され易いことを示している。HGIが30~70の範囲であれば、石炭と混合して粉砕処理することが可能となる。石炭のHGIは通常40~70であるので、本発明で得られた固体燃料は石炭と同等の粉砕性を有している。
【実施例0020】
以下に実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
塩化ビニル樹脂をラボミル(商品名:ラボミルOML-2、大阪ケミカル株式会社製)にて、サイズ5mm以下となるように粉砕処理した。これを原料として、イナートガスオーブン(Advatec製)を用い、窒素パージして(酸素濃度1%未満)、温度325℃、時間30分間加熱処理を行って固体燃料を得た。
【0022】
[実施例2]
加熱処理の温度を350℃にした以外は、実施例1と同様にして固体燃料を得た。
【0023】
[実施例3]
加熱処理の温度を300℃にした以外は、実施例1と同様にして固体燃料を得た。
【0024】
[実施例4]
塩化ビニル樹脂に替えて容器リサイクルペレット(ポリプロピレンが主成分)を原料とした以外は、実施例1と同様にして固体燃料を得た。
【0025】
[比較例1]
加熱処理の温度を250℃にした以外は、実施例1と同様にして固体燃料を得た。
【0026】
[比較例2]
加熱処理の温度を275℃にした以外は、実施例1と同様にして固体燃料を得た。
【0027】
[比較例3]
塩化ビニル樹脂を加熱処理することなく、固体燃料とした。
【0028】
[比較例4]
容器リサイクルペレットを加熱処理することなく、固体燃料とした。
【0029】
実施例及び比較例で得られた固体燃料及びその原料について、下記の方法にて塩素含有率を測定し、結果を表1に示した。
・塩素含有率:EN15289:2011に従い、蛍光X線分析装置(EDX-8000、島津製作所製)を用いて、固体燃料の塩素濃度を測定した。削減率は加熱処理をしていない固体燃料(比較例3、4)の塩素濃度からの算出した削減率である。
【0030】
【0031】
表1に示されるように、実施例1~4の固体燃料は、塩素含有率の顕著な低下が認められた。これに対して、比較例1~2では塩素含有率の低下は十分ではなかった。