(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150294
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】横編機
(51)【国際特許分類】
D04B 15/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D04B15/00
D04B15/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059328
(22)【出願日】2022-03-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(72)【発明者】
【氏名】小柴 康平
(72)【発明者】
【氏名】増田 敬二
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054KA05
4L054LA19
4L054NA01
(57)【要約】
【課題】 正面中央付近からでも、動作状態の制御や確認の作業性向上が可能な操作パネルを有する横編機を提供する。
【解決手段】 天井板6上に設けられる操作パネル10は、横編機1の動作状態などを表示する表示パネル11と、各種操作の入力部12とを備える。操作パネル10は、台座13に装着された状態で天井板6上に据え置かれる。台座13は、正面中央付近の予め定める範囲を移動可能である。横編機1の動作は、機械固有の個体差に合わせるように調整する必要がある。操作パネル10を据える位置は、作業者が調整作業することが多い正面中央付近から使い易い位置となるので、作業性向上を図ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作状態を表示する表示パネルと操作の入力部とを備える操作パネルと、
操作パネルとの通信で、入力部への操作に基づく動作状態の制御と表示パネルでの表示とを行わせる制御部と
を有する横編機において、
操作パネルを装着可能で、横編機の天井板上で、正面中央付近の予め定める範囲を移動可能に据え置かれる台座、を含むことを特徴とする横編機。
【請求項2】
前記台座には、前記横編機の運転動作を停止させる操作のための停止用スイッチを備える、
ことを特徴とする請求項1記載の横編機。
【請求項3】
前記台座または前記操作パネルのうちの少なくとも一方は、前記横編機で編地を編成する運転動作を制御するための編成データが記憶された記憶媒体の装着用の端子を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の横編機。
【請求項4】
前記台座は、前記天井板に吸着する吸着部材を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の横編機。
【請求項5】
前記台座または前記操作パネルのうちの少なくとも一方は、前記横編機の運転動作を通常編成の速度よりも低速で行わせる操作が可能な操作用スイッチを接続可能である、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の横編機。
【請求項6】
前記操作パネルと前記制御部との前記通信は、無線通信で行われる、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の横編機。
【請求項7】
前記操作パネルはタブレット端末であり、
前記台座は装着されたタブレット端末を充電する充電器を備える、
ことを特徴とする請求項6記載の横編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針床の長手方向を編幅方向とする横編機に関する。横編機は、針床に並ぶ編針を駆動するカムを搭載するキャリッジが編幅方向に往復走行しながら編地を編成する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機は、針床に多数の針溝を並設し、各針溝に収容される編針を歯口に進退させて編地を編成する。編針の駆動は編幅方向に往復走行するキャリッジが搭載するカムによって行われる。横編機の実機での編地編成では、品質の良い編地を編成するために調整が必要な場合がある。調整時には、キャリッジ速度を通常編成時の速度よりも低速に切換えて、編針の動作を確認したりする必要がある。このような運転状況の切換えのために、正面手前に操作バーを備える横編機が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、運転状況の切換えを含む各種操作や運転状況のパネル表示が可能な操作パネルを備える横編機も用いられている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2の操作パネルは、編幅方向の一方側に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-117186号公報
【特許文献2】中国意匠登録CN301531021S号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横編機の動作を調整する作業者は、横編機の正面中央付近に位置することが多い。特許文献1の操作バーによる運転状況の切換えは、正面中央付近でも可能であるけれども、通常の運転と低速と停止との切換えに限られ、各種設定等の操作はできない。特許文献2の操作パネルは、横編機の正面中央から離れた位置にあるので、正面中央付近からは操作や表示の確認が困難になることがある。
【0006】
本発明の目的は、正面中央付近からでも、動作状態の制御や確認の作業性向上が可能な操作パネルを有する横編機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、動作状態を表示する表示パネルと操作の入力部とを備える操作パネルと、
操作パネルとの通信で、入力部への操作に基づく動作状態の制御と表示パネルでの表示とを行わせる制御部と
を有する横編機において、
操作パネルを装着可能で、横編機の天井板上で、正面中央付近の予め定める範囲を移動可能に据え置かれる台座、を含むことを特徴とする横編機である。
【0008】
また本発明で、前記台座には、前記横編機の運転動作を停止させる操作のための停止用スイッチを備える、
ことを特徴とする。
【0009】
また本発明で、前記台座または前記操作パネルのうちの少なくとも一方は、前記横編機で編地を編成する運転動作を制御するための編成データが記憶された記憶媒体の装着用の端子を備える、
ことを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記台座は、前記天井板に吸着する吸着部材を備える、
ことを特徴とする。
【0011】
また本発明で、前記台座または前記操作パネルのうちの少なくとも一方は、前記横編機の運転動作を通常編成の速度よりも低速で行わせる操作が可能な操作用スイッチを接続可能である、
ことを特徴とする。
【0012】
また本発明で、前記操作パネルと前記制御部との前記通信は、無線通信で行われる、
ことを特徴とする。
【0013】
また本発明で、前記操作パネルはタブレット端末であり、
前記台座は装着されたタブレット端末を充電する充電器を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、横編機の動作を調整する作業者が作業することが多い横編機の正面中央付近で使い易い位置に操作パネルを据えることで、作業性向上を図ることができる。
【0015】
また本発明によれば、横編機の運転動作の停止の操作を、表示パネルの表示状態と関係なく、台座に設ける停止用スイッチで行うことができる。
【0016】
また本発明によれば、端子への記憶媒体の装着を横編機の正面中央付近から容易に行うことが可能となり、編成データの入力を作業性良く行うことができる。
【0017】
また本発明によれば、台座を天井板上に吸着させて、台座に装着した状態の操作パネルが位置ずれし難くすることができる。
【0018】
また本発明によれば、たとえば正面の安全カバーを開けて運転状態を確認する必要があるような場合の作業者は、操作用スイッチを手持ちで操作しながら、横編機の運転動作を低速で確認することができる。
【0019】
また本発明によれば、操作パネルを運転状況に応じて適切な位置に移動させ、操作性をさらに向上させることができる。
【0020】
また本発明によれば、操作パネルはタブレット端末であるので、動作状態を手持ちで確認しながら、必要な操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例である横編機1の構成を、簡略化して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1から
図3は、本発明の一実施例である横編機1で、主として操作パネル10に関連する構成を、簡略化して示す。各図で対応する部分は,同一の参照符を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。また説明の便宜上、図示を省略する部分がある。
【実施例0023】
図1に示す横編機1は、図の横方向を編幅方向として、多数の針溝が並設される針床2を備える。キャリッジ3は、駆動部4からのベルトを介する駆動などで、編幅方向に往復走行しながら、搭載するカムで各針溝に収容される編針を歯口に進退させて編地を編成する。針床2や駆動部4などの横編機1の各部は、フレーム5で支持される。フレーム5の上部は、天井板6で覆われる。天井板6の上方に、天ばね支持部7が架設される。天ばね支持部7は、編地編成の際に編針に供給する編糸の張力を調整する天ばね装置を並べて支持する。天井板6は、編糸が巻付けられている編糸コーンを多数載置するためにも使用される。横編機1の運転状態などの制御は、フレーム5で支持される制御部8で行われる。横編機1の正面側には、透明で開閉可能な安全カバー9が設けられる。製品の生産は、デザインシステムなどで作成される編成データに従う自動運転として、安全カバー9を閉じている状態の通常編成で行われる。通常編成は、製品としての編地を効率的に生産することが可能な、たとえば1.2m/sのキャリッジ走行速度で行われる。
【0024】
本実施例の横編機1は、天井板6上に、操作パネル10が設けられる。操作パネル10は、横編機1の動作状態などを表示する表示パネル11と、各種操作の入力部12とを備える。表示パネル11は、画像の表示とともに、タッチパネルとしての入力機能も備える。入力部12は、各種スイッチなどを備える。操作パネル10と制御部8とは通信する。制御部8は、表示パネル11や入力部12への操作に基づく横編機1の動作状態の制御と、表示パネル11での表示を行わせる。操作パネル10は、台座13に装着された状態で天井板6上に据え置かれる。台座13は、正面中央付近の予め定める範囲を移動可能である。移動可能な範囲は、横編機1の編幅サイズに応じて適宜設定すればよく、たとえば正面中央から左右に各1m程度となる後述するケーブル17の長さで設定される。横編機1の動作は、機械固有の個体差に合わせるように調整する必要がある。操作パネル10を据える位置は、作業者が調整作業することが多い正面中央付近で使い易い位置となるので、作業性向上を図ることができる。
【0025】
図2および
図3は、操作パネル10に関連する構成を示す。台座13は、正面中央に、横編機1の運転動作を停止させる操作のための停止用スイッチ13aを備える。停止用スイッチ13aを備えることで、横編機1の運転動作の停止の操作を、表示パネル11の表示状態と関係なく、台座13で行うことができる。台座13は、天井板6に吸着する吸着部材としての磁石13b,13cを備える。台座13を天井板6上に吸着させて、台座13に装着した状態の操作パネルが位置ずれし難くすることができる。なお、吸着部材として、滑り止めが可能なものなら使用可能であり、移動し難いように重量がある錘でもよい。
【0026】
本実施例の台座13は、操作用スイッチ14を装着可能である。また、台座13には、USBメモリスティックなどの記憶媒体15も装着可能である。台座13には、操作用スイッチ14を接続するための端子14aと、記憶媒体15を接続するための端子15aとが設けられている。端子14a,15aは、操作パネル10に設けるようにしてもよい。操作用スイッチ14は、操作ボタン14bを押さない状態ではOFF、少し押すとON、さらに強く押すとOFFになるような、3ポジションの動作を行い、強く押してOFFになると、押すのをやめてもONにはならずにOFFを続ける。たとえば正面の安全カバー9を開けて運転状態を確認する必要があるような場合の作業者は、操作用スイッチ14を手持ちで操作しながら、横編機の運転動作を低速で確認し、いつでも停止させることができる。この低速は、たとえば0.05m/s以下などに、操作パネル10で任意に設定可能にしておく。また、端子15aへの記憶媒体15の装着を横編機1の正面中央付近から容易に行うことが可能となり、編成データの入力を作業性良く行うことができる。なお、記憶媒体15としては、適合する端子15aを備えるようにすれば、SDカードなどを使用することもできる。
【0027】
図2に示すように、台座13には、凹部13dも設けられる。凹部13dは、記憶媒体15や編針、工具などを一時的に置いておくことができる。
図3に示すように、操作パネル10の台座13への装着は、支持板16による固定によって行われる。台座13の背面からは、制御部8との間を接続し、電源の供給や通信を行うケーブル17が出ている。ケーブル17は、台座13内で、表示パネル11、入力部12、および端子14a,15aにそれぞれ接続されるコード17a,17b,17c,17dに分岐する。
【0028】
本実施例の操作パネル10と制御部8とは、ケーブル17を介する有線通信で接続されているので、操作パネル10を装着した台座13が天井板6上の移動可能な範囲は、ケーブル17の長さによって制限される。しかしながら、この制限は、操作パネル10と制御部8との通信が無線通信で行われ、操作パネル10に電池を内蔵すれば生じない。たとえば操作パネル10としてタブレット式端末を使用し、制御部8にも無線通信の機能を備えるようにすればよい。操作パネル10はタブレット端末であるので、動作状態を手持ちで確認しながら、必要な操作を行うことができる。また、台座13にbluetoothや赤外線などの近距離無線通信の機能を備えて、台座13と操作パネル10との間で無線通信を行うようにしてもよい。操作パネル10を、横編機1の運転状況に応じて適切な位置に移動させ、操作性をさらに向上させることができる。なお、電池を内蔵する操作パネル10を用いる場合は、台座13に電池の充電機能も備えることが好ましい。クレードル式で、非接触でも充電可能な台座13を使用することは、さらに好ましい。
【0029】
図1の操作パネル10の表示パネル11は、数値や画像で運転情報を表示するとともに、タッチパネルの操作画面として、停止スイッチ、通常速度スイッチ、低速度運転スイッチ、および低速の設定部など、キャリッジ3の走行に対応する。安全カバー9が開いていれば、安全のために、操作パネル10から運転操作ができないようにしておく。操作用スイッチ14を接続していれば、安全カバー9が開いていても、操作ボタン14bを押している間は、低速での運転を可能にすることができる。