(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150308
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】撹拌羽根着脱構造及び、これを備えた撹拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/07 20220101AFI20231005BHJP
B01F 27/70 20220101ALI20231005BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20231005BHJP
B01F 101/06 20220101ALN20231005BHJP
【FI】
B01F27/07
B01F27/70
B01F35/90
B01F101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059350
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松本 宏典
(72)【発明者】
【氏名】近藤 豪仁
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰三
(72)【発明者】
【氏名】牟田 淳一
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037CA03
4G037DA21
4G037EA03
4G078AA13
4G078AB05
4G078BA01
4G078BA09
4G078DA01
4G078DB10
4G078EA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シャフトの脱落を防止する撹拌羽根着脱構造を提供する。
【解決手段】撹拌装置の撹拌羽根着脱構造Xであって、撹拌アーム6と、撹拌羽根7と、シャフト8とを備え、撹拌アームは、羽根保持部62を備え、アーム側シャフト孔62bが形成され、撹拌羽根は、被保持部71aを備え、羽根側シャフト孔71cが形成され、シャフトは、アーム側シャフト孔62b及び羽根側シャフト孔に挿通されることで撹拌アームと撹拌羽根とを回転可能に連結し、シャフト本体80と、ロック片81とを備え、その先端側にスリットを備え、スリット内に支持ピンが配置され、ロック片は、長孔を備え、支持ピンが挿通されることでスリット内に軸支され、シャフトは、ロック片が重力により回転して長孔の長手方向とシャフト本体とが非平行となることで、脱落が防止されるよう構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌装置の撹拌羽根着脱構造であって、
撹拌アームと、撹拌羽根と、シャフトとを備え、
前記撹拌アームは、その先端側に羽根保持部を備え、当該羽根保持部にはアーム側シャフト孔が形成されており、
前記撹拌羽根は、被保持部を備え、当該被保持部には羽根側シャフト孔が形成されており、
前記シャフトは、前記アーム側シャフト孔及び前記羽根側シャフト孔に挿通されることで前記撹拌アームと前記撹拌羽根とを回転可能に連結するよう構成されるとともに、シャフト本体と、ロック片とを備え、
前記シャフト本体は、その先端側にスリットを備えるとともに、当該スリット内に支持ピンが配置され、
前記ロック片は、長孔を備えるとともに、当該長孔に前記支持ピンが挿通されることで前記スリット内に軸支されており、
前記シャフトは、前記ロック片が重力により回転して前記長孔の長手方向と前記シャフト本体とが非平行となることで、脱落が防止されるよう構成される、撹拌羽根着脱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の撹拌羽根着脱構造であって、
前記ロック片における前記長孔の短手方向と同方向の長さが、前記シャフト本体の直径よりも大きい、撹拌羽根着脱構造。
【請求項3】
請求項2に記載の撹拌羽根着脱構造であって、
前記撹拌アームは、前記撹拌羽根側に向かって突出し当該撹拌羽根を付勢する付勢手段を備える、撹拌羽根着脱構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の撹拌羽根着脱構造であって、
前記シャフトは、その基端側に頭部を備え、
前記頭部を前記シャフトの軸方向から見たときに、当該頭部の前記支持ピンとは垂直な方向の幅が、同支持ピンの延在する方向の幅よりも大きくなるよう構成される、撹拌羽根着脱構造。
【請求項5】
請求項4に記載の撹拌羽根着脱構造であって、
前記撹拌羽根は、撹拌のための羽根板と、当該羽根板を支持する基板及び止め板とを備え、
前記羽根板は、挿通孔を備え、
前記基板は、前記被保持部を備え、
前記基板と前記止め板の少なくとも一方は、前記被保持部の近傍に当接部を備え、
前記基板と前記止め板の一方は係合突起を備え、他方は当該係合突起と係合する係合孔を備え、
前記係合孔は、解除孔と、当該解除孔に連接されたこれより小さな固定孔とを備え、
前記係合突起は、その先端側に膨径部を備え、当該膨径部は、前記解除孔を通るが前記固定孔を通らない形状および大きさとされ、
前記挿通孔及び前記解除孔に前記係合突起が挿通されるとともに、前記基板、前記羽根板及び前記止め板がこの順に重ね合わされた状態で前記基板と前記止め板が相対的にスライドすることで、前記膨径部と前記固定孔とが係合し、この状態で前記シャフトが前記撹拌アームの前記アーム側シャフト孔及び前記撹拌羽根の前記羽根側シャフト孔に挿通されることで、前記基板と前記止め板の係合解除方向への相対的なスライドが前記当接部と前記頭部との当接により規制される、撹拌羽根着脱構造。
【請求項6】
処理槽内に収容された被撹拌物を撹拌する撹拌装置であって、
請求項1~請求項5のいずれかに記載の撹拌羽根着脱構造を備える、撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌装置の撹拌羽根を着脱するための撹拌羽根着脱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撹拌アームと、撹拌アームの先端に取着される撹拌羽根とを備え、撹拌アームを回転させることで被撹拌物を撹拌する撹拌装置がある。例えば、特許文献1には、シャフト(軸)により撹拌アーム(アーム)と撹拌羽根とを着脱可能な撹拌羽根着脱構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されるような撹拌羽根着脱構造のシャフトには、先端に抜止め材(脱出止め用の鉤)が設けられており、抜止め材を回転させてシャフトと垂直な方向に曲げることで、撹拌アームに撹拌羽根を取り付けた後、シャフトが脱落しないようになっている。
【0005】
しかしながら、不注意による抜止め材の折り忘れや経年による抜止め材の回転抵抗の低下により抜止め材が真っ直ぐな状態となり、シャフトが脱落するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、シャフトの脱落を確実に防止することの可能な撹拌羽根着脱構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、撹拌装置の撹拌羽根着脱構造であって、撹拌アームと、撹拌羽根と、シャフトとを備え、前記撹拌アームは、その先端側に羽根保持部を備え、当該羽根保持部にはアーム側シャフト孔が形成されており、前記撹拌羽根は、被保持部を備え、当該被保持部には羽根側シャフト孔が形成されており、前記シャフトは、前記アーム側シャフト孔及び前記羽根側シャフト孔に挿通されることで前記撹拌アームと前記撹拌羽根とを回転可能に連結するよう構成されるとともに、シャフト本体と、ロック片とを備え、前記シャフト本体は、その先端側にスリットを備えるとともに、当該スリット内に支持ピンが配置され、前記ロック片は、長孔を備えるとともに、当該長孔に前記支持ピンが挿通されることで前記スリット内に軸支されており、前記シャフトは、前記ロック片が重力により回転して前記長孔の長手方向と前記シャフト本体とが非平行となることで、脱落が防止されるよう構成される、撹拌羽根着脱構造が提供される。
【0008】
本発明によれば、ロック片が重力により回転する構成となっていることで、シャフトの挿入後、特に作業を行うことなく自然とシャフトがロックされ、シャフトの脱落を確実に防止することが可能となっている。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
好ましくは、前記ロック片における前記長孔の短手方向と同方向の長さが、前記シャフト本体の直径よりも大きい。
【0011】
好ましくは、前記撹拌アームは、前記撹拌羽根側に向かって突出し当該撹拌羽根を付勢する付勢手段を備える。
【0012】
好ましくは、前記シャフトは、その基端側に頭部を備え、前記頭部を前記シャフトの軸方向から見たときに、当該頭部の前記支持ピンとは垂直な方向の幅が、同支持ピンの延在する方向の幅よりも大きくなるよう構成される。
【0013】
好ましくは、前記撹拌羽根は、撹拌のための羽根板と、当該羽根板を支持する基板及び止め板とを備え、前記羽根板は、挿通孔を備え、前記基板は、前記被保持部を備え、前記基板と前記止め板の少なくとも一方は、前記被保持部の近傍に当接部を備え、前記基板と前記止め板の一方は係合突起を備え、他方は当該係合突起と係合する係合孔を備え、前記係合孔は、解除孔と、当該解除孔に連接されたこれより小さな固定孔とを備え、前記係合突起は、その先端側に膨径部を備え、当該膨径部は、前記解除孔を通るが前記固定孔を通らない形状および大きさとされ、前記挿通孔及び前記解除孔に前記係合突起が挿通されるとともに、前記基板、前記羽根板及び前記止め板がこの順に重ね合わされた状態で前記基板と前記止め板が相対的にスライドすることで、前記膨径部と前記固定孔とが係合し、この状態で前記シャフトが前記撹拌アームの前記アーム側シャフト孔及び前記撹拌羽根の前記羽根側シャフト孔に挿通されることで、前記基板と前記止め板の係合解除方向への相対的なスライドが前記当接部と前記頭部との当接により規制される。
【0014】
また、本発明によれば、処理槽内に収容された被撹拌物を撹拌する撹拌装置であって、上述した撹拌羽根着脱構造を備える、撹拌装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る撹拌羽根着脱構造Xを撹拌装置1に適用した際の概略正面図であり、一部を切り欠いて内部がわかるように示している。
【
図2】
図1の撹拌羽根着脱構造Xを組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の撹拌羽根着脱構造Xの分解斜視図である。
【
図4】
図2の撹拌羽根着脱構造Xを別の角度から見たときの斜視図である。
【
図5】
図2の撹拌羽根着脱構造Xの要部断面図である。
【
図6】
図2の撹拌羽根着脱構造Xのシャフト8の斜視図である。
【
図7】
図7Aは、
図2の撹拌羽根着脱構造Xのシャフト8の正面図であり、
図7Bは、同シャフト8の平面図であり、
図7Cは、同シャフト8の側面図である。
【
図8】
図2の撹拌羽根着脱構造Xの
図5とは異なる要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0017】
1.撹拌装置1の構成
まず、本発明の一実施形態に係る撹拌装置1の全体構成について説明する。本実施形態において、撹拌装置1は、被撹拌物である食材を加熱しながら撹拌する蒸気ニーダである。撹拌装置1は、
図1に示すように、食品が収容される処理槽2と、処理槽2内の食品を加熱する蒸気ジャケット3と、処理槽2内の食品を撹拌する撹拌手段4とを備える。
【0018】
処理槽2は、横向き略円筒状の容器であり、その軸方向中央部には、上部が開口する略矩形筒状のホッパー20が設けられている。ただし、処理槽2の形状はこれに限定されず、例えば、上部が開口する半球状の容器であっても良い。蒸気ジャケット3は、処理槽2の下方を覆うよう設けられる。
【0019】
蒸気ジャケット3には、蒸気入口バルブ30付きの蒸気供給路31を介して、蒸気が供給可能とされる。また、蒸気ジャケット3に供給された蒸気の凝縮水は、蒸気トラップ32付きのドレン排出路33を介して、外部へ排出可能とされる。
【0020】
撹拌手段4は、具体的には、撹拌軸5と、複数の撹拌アーム6と、各撹拌アーム6に取り付けられた複数の撹拌羽根7と、シャフト8(
図2参照)と、駆動ボックス9とを備える。撹拌軸5は、処理槽2の内部において、その軸方向の両端を架け渡すように設けられる。撹拌軸5は、駆動ボックス9内の駆動機構により回転可能とされる。撹拌軸5が回転することで、撹拌アーム6に取り付けられた撹拌羽根7により食品の攪拌動作が行われる。
【0021】
また、駆動ボックス9内には、処理槽2の傾動機構も内蔵されており、この傾動機構により、処理槽2(ホッパー20)の上部開口を前方へ倒すよう傾動可能とされる。撹拌軸5の駆動機構や処理槽2の傾動機構は、タッチパネルや操作ボタンを備えた操作盤10の操作により制御される。
【0022】
撹拌アーム6は、
図2及び
図4にも示すように、直線状又は所望に湾曲された丸棒材からなるアーム本体60を備える。アーム本体60の基端部には、当該撹拌アーム6を撹拌軸5に固定するためのクランプ部材61が設けられる。クランプ部材61の構成については、撹拌アーム6を撹拌軸5に固定可能である限り、任意のものを採用することができる。クランプ部材61により撹拌アーム6を撹拌軸5に固定することにより、撹拌軸5に対し撹拌アーム6及び撹拌羽根7を一体回転させることができる。
【0023】
アーム本体60の先端側には、羽根保持部62が設けられる。羽根保持部62は、
図3に示すように、アーム本体60の先端側から突出して設けられた一対の板状の羽根保持片62aを備え、この一対の羽根保持片62aは、互いに離隔して平行に配置される。そして、一対の羽根保持片62aには、板面と直交して、アーム側シャフト孔62bが貫通形成されている。
【0024】
また、アーム本体60の先端側には、
図5に示すように、一対の羽根保持片62aの間の位置において先端側に向かって開口するよう、ピン収容穴63が形成されている。本実施形態において、ピン収容穴63は、アーム本体60の軸線から偏心して、羽根保持片62aの幅方向一方(
図5における左側)に偏った位置に設けられている。
【0025】
そして、ピン収容穴63には、撹拌羽根7側に向かって突出し、撹拌羽根7の被保持部71aを付勢する付勢手段64が収容される。付勢手段64は、具体的には、コイルバネ64aと、押圧ピン64bとを備える。押圧ピン64bの先端部は略半球状に形成され、押圧ピン64bは、先端部がピン収容穴63から突出するよう、コイルバネ64aに付勢されている。なお、
図5において、付勢手段64については、その断面を示していない。
【0026】
撹拌羽根7は、
図3に示すように、撹拌のための羽根板70と、羽根板70を支持する基板71及び止め板72とを備える。本実施形態において、基板71及び止め板72は、ステンレス等の金属製とされ、羽根板70は、超高分子量ポリエチレンやフッ素樹脂等の合成樹脂製とされる。なお、以下の撹拌羽根7の説明においては、羽根板70、基板71及び止め板72の長手方向を左右方向、これらの板面と垂直な板厚方向を上下方向、左右方向及び上下方向と垂直な方向を前後方向(
図3において左側を前方)とする(
図3参照)。
【0027】
羽根板70は、略矩形の板材からなり、先端縁は所望により面取りされて傾斜するよう形成される(
図5参照)。羽根板70には、基板71の係合突起71dと対応した位置に、挿通孔70aが貫通形成されている。
【0028】
基板71は、略矩形の板材からなり、その左右方向中央部の後方に、撹拌アーム6の羽根保持部62へ取り付けるための被保持部71aを備える。被保持部71aは、略直方体のブロック状とされる。被保持部71aは、その下面側に先端側へ延びる延出部71bを備え、この延出部71bが基板71の下面に重ね合わされて溶接等により固定される。被保持部71aには、左右方向へ沿って、羽根側シャフト孔71cが貫通形成されている。
【0029】
また、基板71は、その上面の左右両端部に左右一対の係合突起71dを備える。本実施例では、係合突起71dは、短い丸棒材から形成され、基板71から上方へ突出して設けられる。係合突起71dの基端部は、基板71に溶接等により固定される。
【0030】
係合突起71dは、その基端側に軸部71d1を備え、その先端側に膨径部71d2を備える。軸部71d1の長さは、羽根板70と止め板72との合計厚さに対応した長さとされる。また、膨径部71d2は、軸部71d1よりも大径とされ、後述する止め板72の解除孔72a1を通るが固定孔72a2を通らない形状及び大きさとされる。
【0031】
止め板72は、略矩形の板材からなり、基板71の係合突起71dと対応した位置に、係合突起71dと係合する一対の係合孔72aを備える。各係合孔72aは、解除孔72a1と、この解除孔72a1に連接されたこれより小さな固定孔72a2とを備えただるま形状とされる。より具体的には、解除孔72a1は、丸孔状に形成され、固定孔72a2は、この解除孔72a1から後側へ長孔状に延出するよう形成される。固定孔72a2の幅寸法は、解除孔72a1の直径よりも小さく形成される。解除孔72a1は、係合突起71dの膨径部71d2を抜き差し可能な大きさとされる。一方、固定孔72a2は、膨径部71d2を抜き差しできない大きさとされる。
【0032】
止め板72の左右方向中央部の後方側には、浅い切欠き72bが形成されると共に、その左右に当接部としての一対のストッパ72cが設けられる。各ストッパ72cは、その形状を特に問わないが、本実施例では略矩形板状とされ、止め板72の板面に対し略垂直に設けられ、止め板72の下方へ延出して設けられる。
【0033】
なお、羽根板70及び基板71については、先端(前方)に向かうにつれてその長手方向の幅が狭くなるよう、幅寸法を変化させてもよい。また、止め板72についても同様に、幅寸法を変化させてもよい。ただし、羽根板70、基板71及び止め板72について、このような傾斜は必須ではない。
【0034】
シャフト8は、ステンレス等の金属製とされる。シャフト8は、アーム側シャフト孔62b及び羽根側シャフト孔71cに挿通されることで撹拌アーム6と撹拌羽根7とを回転可能に連結するよう構成される。本実施形態において、シャフト8は、脱落防止のため、先折れ式のいわゆるグラビティロック機構を備えている。
【0035】
シャフト8は、具体的には、
図6~
図7Cに示すように、シャフト本体80と、ロック片81と、頭部82とを備える。シャフト本体80は、丸棒状に形成され、その先端側に、互いに離間して平行に配置された一対の板状の支持片80aを備える。また、一対の支持片80aの間には、
図6及び
図7Bに示すように、ロック片81を配置するためのスリット80bが形成される。スリット80b内には、一対の支持片80aを架け渡すように支持ピン83が配置される。支持ピン83の両端は、それぞれ支持片80aを貫通するよう圧入され、溶接等により支持片80aに固定されている。また、一対の支持片80aの基端部は、ロック片81の傾斜部81cと当接する当接部80cとなっている。
【0036】
ロック片81は、薄板状に形成された略長方形形状の金属片である。ロック片81は、
図7Aに示すように、厚み方向に貫通し、長手方向に沿って延びる長円形の長孔81aを備える。長孔81aは、その短手方向の長さも支持ピン83の径よりも大きく形成されており、支持ピン83を挿通可能に構成されている。ロック片81は、長孔81aに支持ピン83が挿通されることでスリット80b内に軸支される。ロック片81は、このように軸支されることにより、スリット80b内を回動及び平行移動することが可能となっている。そして、シャフト8は、ロック片81が重力により回転して折れ曲がり、長孔81aの長手方向とシャフト本体80とが非平行となることで、脱落が防止されるよう構成されている。
【0037】
また、本実施形態のシャフト8においては、
図7Aに示すように、ロック片81の短手方向の長さL1(言い換えると、長孔81aの短手方向と同方向の長さ)は、シャフト本体80の直径Dよりも大きくなっている(L1>D)。加えて、ロック片81の長手方向の一端部(
図7Aにおける右端部)は、角部が切り欠かれた先細り部81bとなっており、長手方向の他端部(
図7Aにおける左端部)は、その端面が傾斜する傾斜部81cとなっている。
【0038】
なお、ロック片81は、長孔81aの傾斜部81c側の端部に支持ピン83が位置する状態(
図7Aの状態)において、傾斜部81cの先端が当接部80cと当接するようになっている。ただし、本発明に係るシャフト8において、傾斜部81cを設けることは必須ではない。
【0039】
頭部82は、シャフト本体80の基端側にシャフト本体80と一体的に設けられる。頭部82は、略直方体形状をなし、シャフト本体80の径よりも太く形成されている。また、本実施形態において、シャフト8は、
図7Cに示すように、頭部82をシャフト8の軸方向から見た場合における、頭部82の支持ピン83とは垂直な方向の幅L2(
図7Aも参照)が、支持ピン83の延在する方向(長手方向)の幅L3(
図7Bも参照)よりも大きくなるよう構成される(L2>L3)。なお、頭部82をシャフト8の軸方向から見たときの支持ピン83とは垂直な方向の幅L2は、シャフト本体80の長手方向及び支持ピン83の長手方向のそれぞれに垂直な方向の長さと言い換えることができる。また、支持ピン83の延在する方向の幅L3は、頭部82のロック片81の回転する平面に垂直な方向の長さと言い換えることができる。したがって、本実施形態の頭部82は、シャフト本体80に垂直な方向のうち、ロック片81が折れ曲がる方向(
図7Aにおける上下方向)の長さが長くなっていることになる。
【0040】
ところで、本実施形態の撹拌装置1において、上記説明した撹拌アーム6、撹拌羽根7及びシャフト8は、撹拌羽根着脱構造Xを構成しており、撹拌アーム6に対して撹拌羽根7を着脱可能となっている。以下、
図3及び
図8~
図11Bを参照して、撹拌羽根着脱構造Xによる撹拌羽根7の着脱動作について説明する。
【0041】
2.撹拌羽根着脱構造Xによる撹拌羽根7の着脱動作
撹拌羽根7を撹拌アーム6に取り付けるには、まず、基板71の係合突起71dに羽根板70の挿通孔70aをはめ込みつつ、基板71に羽根板70を重ね合わせる。これにより、係合突起71dの軸部71d1に挿通孔70aがはめ込まれると共に、係合突起71dの軸部71d1の先端側及び膨径部71d2が羽根板70から突出した状態となる。そこで、その係合突起71dに止め板72の係合孔72aの解除孔72a1をはめ込んで、羽根板70に止め板72を重ね合わせる(
図3参照)。そして、基板71、羽根板70及び止め板72がこの順に重ね合わされた状態で、基板71に対し止め板72を先端側へスライドさせる(
図10A~
図10B参照)。
【0042】
これにより、係合突起71dの軸部71d1に係合孔72aの固定孔72a2がはめ込まれるとともに、係合突起71dの膨径部71d2と固定孔72a2とが係合する。なお、基板71に対し止め板72を先端側へ十分にスライドさせた状態では、基板71、羽根板70及び止め板72は、
図2及び
図4にも示すように、基端側(後端側)が揃うように配置され、羽根板70が基板71及び止め板72に対し先端側へ延出するようになっている。
【0043】
次に、このような状態となった撹拌羽根7の被保持部71aを、撹拌アーム6の羽根保持部62の一対の羽根保持片62aの間に配置し、アーム側シャフト孔62b及び羽根側シャフト孔71cにシャフト8を挿通する(
図8及び
図10B~
図10C参照)。ここで、シャフト8をアーム側シャフト孔62b及び羽根側シャフト孔71cに挿通する際には、
図7Aに示すように、シャフト8のロック片81の傾斜部81cの先端をシャフト本体80の当接部80cに当接させた状態にしておく。これにより、ロック片81の一方向の回転(
図7Aにおける時計回りの回転)が規制され、ロック片81がシャフト本体80と平行な状態に維持され、シャフト8を容易に挿通することが可能である。
【0044】
そして、シャフト8をアーム側シャフト孔62b及び羽根側シャフト孔71cに挿通した後にロック片81が重力又は使用者による操作により折れ曲がることで、シャフト8の抜け止めが図られる。
【0045】
ところで、シャフト8が挿通された状態では、
図5に示すように、付勢手段64の押圧ピン64bが撹拌羽根7の被保持部71aを押圧するため、撹拌羽根7はシャフト8まわりに下方へ付勢される。撹拌装置1の運転中、撹拌羽根7は
図5において時計回りに回転するが、押圧ピン64bの作用により、羽根板70の先端辺を処理槽2の内面に当接させやすくなっている。
【0046】
また、押圧ピン64bが被保持部71aを押圧することで、間接的に被保持部71aがシャフト8を先端側に引っ張ることになる。したがって、シャフト8は、アーム側シャフト孔62bの先端側の内面に押し付けられることになり、軸方向の移動がしにくくなっている。また、シャフト8が押し付けられていることで、ロック片81が仮に真っ直ぐな状態であっても、ロック片81の短手方向の長さL1がシャフト本体80の直径Dよりも大きくなっていることと相まって、ロック片81がアーム側シャフト孔62bの縁部に引っかかりやすくなっている。
【0047】
加えて、撹拌アーム6に撹拌羽根7を取り付けた状態では、
図9及び
図10Cに示すように、シャフト8の頭部82に止め板72のストッパ72cが当接または近接するようになっている。これにより、基板71に対する止め板72の後方側(つまり、係合突起71dに対する係合孔72aの係合解除方向)へのスライドが、ストッパ72cと頭部82との当接により規制される。すなわち、撹拌アーム6に撹拌羽根7を取り付けた状態で、シャフト8の頭部82と止め板72のストッパ72cとの間で許容される最大隙間は、基板71に対し止め板72を基端側へスライドさせようとしても、基板71の係合突起71dの位置に止め板72の係合孔72aの解除孔72a1が来ない位置とされる。ただし、シャフト8の頭部82と止め板72のストッパ72cとの間の隙間は、小さいほど好ましい。
【0048】
なお、本実施形態のシャフト8の頭部82は、上述したように、頭部82をシャフト8の軸方向から見た場合における、頭部82の支持ピン83とは垂直な方向の幅L2の長さが支持ピン83の延在する方向(長手方向)の幅L3よりも大きくなるよう構成されている(L2>L3)。そして、幅L3の方向が撹拌羽根7の前後方向と一致する場合には、
図10B及び
図10Cに示すように、頭部82がストッパ72cと干渉することなく、シャフト8を挿入可能となっている。一方、
図11A及び
図11Bに示すように、幅L2の方向が撹拌羽根7の前後方向と一致する場合には、頭部82がストッパ72cと干渉し、シャフト8を最後まで挿入できないようになっている。
【0049】
一方、上記とは逆に、撹拌アーム6から撹拌羽根7を取り外す場合には、シャフト8のロック片81をシャフト8の軸方向へ沿うように回転させて、シャフト8を撹拌アーム6の羽根保持部62及び撹拌羽根7の被保持部71aから抜き外せばよい。その後、基板71に対し止め板72を基端側へスライドさせて、基板71の係合突起71dを止め板72の係合孔72aの解除孔72a1に配置すれば良い。これにより、基板71から止め板72および羽根板70を取り外すことができる。
【0050】
3.作用効果
以上、説明した実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。
【0051】
(1)シャフト8がロック片81を備え、ロック片81が重力により回転する構成である。これにより、シャフト8の挿入後、特に作業を行うことなく自然とシャフト8を抜けないようロックすることができる。なお、本実施形態のロック片81の構成において、撹拌動作中にロック片81がシャフト本体80に沿って真っ直ぐ(
図7Aの状態)になり得るのは、シャフト8の先端側が下方を向くときのみである。しかしながら、シャフト8の先端側が下方を向いている状態では、シャフト8は重力によって下方(すなわち、シャフト8が挿入される方向)に引っ張られているため、シャフト8が脱落することはない。したがって、本発明に係るシャフト8は、ロック片81が折れ曲がった状態か、又はシャフト8の先端が下方を向き脱落しない状態のいずれかの状態しか取ることがないため、その脱落が確実に防止されている。
【0052】
(2)ロック片81における長孔81aの短手方向と同方向の長さL1が、シャフト本体80の直径Dよりも大きくなっている(
図7A参照)。これにより、シャフト8が抜ける方向に移動した際、ロック片81がアーム側シャフト孔62bの縁部に引っかかることで、シャフト8の脱落を防止することができる。また、撹拌アーム6が付勢手段64を備え、撹拌羽根7の被保持部71aを押圧することでシャフト8がアーム側シャフト孔62bの先端側の内面に押し付けられている。これによっても、ロック片81がアーム側シャフト孔62bの縁部に引っかかりやすくなっている。
【0053】
(3)シャフト8の頭部82をシャフト8の軸方向から見たときに、頭部82の支持ピン83とは垂直な方向の幅L2が、支持ピン83の延在する方向の幅L3よりも大きくなるよう構成される。そして、幅L2の方向が撹拌羽根7の前後方向と一致する場合には、頭部82がストッパ72cと干渉し、シャフト8を最後まで挿入できないようになっている。ここで、仮にロック片81が撹拌羽根7の方向に回転可能となるようシャフト8が挿入されると、ロック片81が撹拌羽根7と干渉して回転できず、脱落を防止できないおそれがある。この点、本実施形態のシャフト8では、頭部82の形状を支持ピン83の向き、すなわちロック片81の回転方向に応じて工夫することで、上記不具合が起きる向きにシャフト8を挿入しにくくし、ロック片81と撹拌羽根7の干渉を防止することが可能となっている
【0054】
(4)撹拌羽根7の固定のためシャフト8の頭部82とストッパ72cとを当接させる構成であり、シャフト8を挿入する際、シャフト8の撹拌羽根7側の位置にストッパ72cが存在している。これにより、シャフト8の頭部82の形状と相まって、シャフト8を確実に正しい向きで挿入することが可能となっている。
【0055】
(5)上述した撹拌羽根着脱構造を備えた撹拌装置1であれば、処理槽2内へのシャフト8の脱落を確実に防止することができる。
【0056】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0057】
上記実施形態において、シャフト8の頭部82は略直方体形状であった。しかしながら、シャフト本体80の軸方向から見たときの頭部82の形状は、
図12Aに示すように長円形であってもよく、
図12Bに示すように楕円形であっても良い。また、頭部82は、軸方向から見たときにおける第1の方向に対し、これと垂直な第2の方向の長さが長い形状であれば、任意の形状とすることができる。
【0058】
上記実施形態において、シャフト8のロック片81は略長方形形状であった。しかしながら、ロック片81は、長孔81aを有していれば、正方形形状であっても、その他の形状であっても良い。
【0059】
上記実施形態では、ロック片81の短手方向の長さL1(言い換えると、長孔81aの短手方向と同方向の長さ)は、シャフト本体80の直径Dよりも大きくなっていた(L1>D)。しかしながら、ロック片81の短手方向の長さL1は、シャフト本体80の直径Dと同じか、これより短くても良い。
【0060】
上記実施形態では、撹拌羽根7における基板71に撹拌アーム6の羽根保持部62へ取り付けるための被保持部71aが形成されていた。しかしながら、被保持部は、止め板72に形成されていても良い。
【0061】
上記実施形態では、撹拌羽根7における基板71に係合突起71dが設けられ、止め板72に係合孔72aが設けられていた。しかしながら、基板71に係合孔を設け、止め板72に係合突起を設けても良い。
【0062】
上記実施形態において、基板71と止め板72の係合解除方向への相対的なスライドを規制するための当接部としてのストッパ72cは、止め板72に形成されていた。しかしながら、当接部は、基板71や羽根板70に設けるようにしても良い。また、当接部は、1つのみであっても良い。
【0063】
上記実施形態において、撹拌羽根7は羽根板70、基板71及び止め板72の3つの板材を重ね合わせることで構成されていた。しかしながら、撹拌羽根7はこのような構成に限定されず、撹拌アーム6の羽根保持部62に保持される被保持部を備えていれば、任意の構成とすることができる。また、撹拌羽根7が基板71及び止め板72を相対的にスライドさせて構成されるものでなければ、ストッパ72cは不要である。ただし、このストッパが設けられていない場合でも、撹拌羽根7がシャフト8に近接する位置に当該シャフト8の頭部82に当接する箇所(当接部)を有していることはある。その場合であっても、シャフト8の頭部82の形状を上述したよう支持ピン83の向き(ロック片81の回転方向)に応じて工夫することで、ロック片81と撹拌羽根7の干渉を防止し、ロック片81を回転させて確実に脱落を防止することができる。
【0064】
上記実施形態において、撹拌装置1は蒸気ニーダとされたが、本発明は、これ以外の撹拌装置1にも適用可能である。また、撹拌装置1は、食品以外の被撹拌物を撹拌するものであっても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 :撹拌装置
2 :処理槽
3 :蒸気ジャケット
4 :撹拌手段
5 :撹拌軸
6 :撹拌アーム
7 :撹拌羽根
8 :シャフト
9 :駆動ボックス
10 :操作盤
20 :ホッパー
30 :蒸気入口バルブ
31 :蒸気供給路
32 :蒸気トラップ
33 :ドレン排出路
60 :アーム本体
61 :クランプ部材
62 :羽根保持部
62a :羽根保持片
62b :アーム側シャフト孔
63 :ピン収容穴
64 :付勢手段
64a :コイルバネ
64b :押圧ピン
70 :羽根板
70a :挿通孔
71 :基板
71a :被保持部
71b :延出部
71c :羽根側シャフト孔
71d :係合突起
71d1 :軸部
71d2 :膨径部
72 :止め板
72a :係合孔
72a1 :解除孔
72a2 :固定孔
72b :切欠き
72c :ストッパ(当接部)
80 :シャフト本体
80a :支持片
80b :スリット
80c :当接部
81 :ロック片
81a :長孔
81b :先細り部
81c :傾斜部
82 :頭部
83 :支持ピン
X :撹拌羽根着脱構造