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特開2023-150309不定形態ワークの開先加工方法 並びにその装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150309
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】不定形態ワークの開先加工方法 並びにその装置
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/12 20060101AFI20231005BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20231005BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20231005BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20231005BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B23C3/12 D
G05B19/404 H
B23Q17/20 Z
B23Q17/24 C
B23K31/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059352
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000190725
【氏名又は名称】シンクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】門奈 勇介
(72)【発明者】
【氏名】松本 真哉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一登
【テーマコード(参考)】
3C022
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C022DD01
3C022DD11
3C022DD19
3C029AA01
3C029AA40
3C029BB01
3C029BB10
3C269BB03
3C269BB05
3C269CC01
3C269EF10
3C269JJ10
3C269JJ19
3C269MN09
3C269MN14
3C269MN16
3C269MN41
3C269PP02
3C269PP03
3C269QC01
3C269QD02
(57)【要約】
【課題】 非規格形状であり且つ非常に重いワークが、ワークテーブル上に不定配置された場合であっても、このワークに開先仕上加工を一挙に行うことができる新規な開先手法の開発を技術課題としたものである。
【解決手段】 本発明の開先加工装置1は、ワークテーブル2と、この上方において三次元方向に移動自在の開先カッタ55及びワークセンサーユニットと、ワークセンサーユニットによって取得したワークWの実ワークエッジデータに基づいて開先加工を設定する制御装置63とを具え、制御装置63における制御は、前記ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータと、予め入力されたワークWの基本形状データとを比較・判定し、この比較・判定データに基づいてワークWの必要箇所に沿って開先カッタ55を作用させて開先加工を行うことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非規格形状であり、且つワークテーブルに対し不定設置される不定形態のワークを加工対象とし、ワークの必要部位に開先加工を施す方法であって、
この方法は、
ワークを設置するワークテーブルと、
当該ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在の開先カッタと、
前記ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在のワークセンサーユニットと、
当該ワークセンサーユニットによって取得したワークの実ワークエッジデータに基づいて開先加工を設定する制御装置とを具えた開先加工装置を用いて行うものであり、
前記制御装置における制御は、前記ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータと、予め入力されたワークの基本形状データとを比較・判定し、この比較・判定データに基づいてワークの必要箇所に沿って開先カッタを作用させて開先加工を行うことを特徴とする、不定形態ワークの開先加工方法。
【請求項2】
前記制御装置における制御は、ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータを、予め制御装置に入力されたワークの基本形状データと照合することに加え、ワークテーブル上にセットされたワークの設置状態をも考慮し、これらの判定結果に基づいて、実ワークエッジデータと基本形状データとのズレを補正しながら、基本形状データにおけるワークの輪郭を維持して、開先カッタの作用範囲を特定することを特徴とする請求項1記載の、不定形態ワークの開先加工方法。
【請求項3】
前記制御装置において開先加工に先立ち入力するデータは、ワークの基本形状データの他、
ワークテーブル上にセットされたワークの設置位置データとワークの高さ位置データ、
ワークに施される開先加工の開先形状データと開先加工位置データ、
ワークにおいて実際に開先が形成されない垂直端面範囲のルート寸法データ
のうち少なくとも一つ以上のデータであることを特徴とする請求項1または2記載の、不定形態ワークの開先加工方法。
【請求項4】
前記ワークセンサーユニットには、レーザーセンサーが適用され、
当該ワークセンサーユニットによるセンシング時に、実ワークエッジが掃引範囲から逸脱した場合、実ワークエッジが平面視で基本形状データから大きくずれた配置であると判定し、基本形状データを実ワークエッジに合わせるように補正してから、実ワークエッジのセンシングを再度行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の、不定形態ワークの開先加工方法。
【請求項5】
前記補正後、実ワークエッジのセンシングを再度行っても、当該センシング時にワークエッジが再び掃引範囲から逸脱した場合、前記制御装置は、運転を中断する指示を出力し、且つワークの置き方を変更する指示を出力することを特徴とする請求項4記載の、不定形態ワークの開先加工方法。
【請求項6】
非規格形状であり、且つワークテーブルに対し不定設置される不定形態のワークを加工対象とし、ワークの必要部位に開先加工を施す装置であって、
この装置は、
ワークを設置するワークテーブルと、
当該ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在の開先カッタと、
前記ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在のワークセンサーユニットと、
当該ワークセンサーユニットによって取得したワークの実ワークエッジデータに基づいて開先加工を設定する制御装置とを具えて成るものであり、
前記制御装置は、ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータと、予め入力されたワークの基本形状データとを比較・判定し、この比較・判定データに基づいてワークの必要箇所に沿って開先カッタを作用させた開先加工を行う構成であることを特徴とする、不定形態ワークの開先加工装置。
【請求項7】
前記制御装置における制御は、ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータを、予め制御装置に入力されたワークの基本形状データと照合することに加え、ワークテーブル上にセットされたワークの設置状態をも考慮し、これらの判定結果に基づいて、実ワークエッジデータと基本形状データとのズレを補正しながら、基本形状データにおけるワークの輪郭を維持して、開先カッタの作用範囲を特定する構成であることを特徴とする請求項6記載の、不定形態ワークの開先加工装置。
【請求項8】
前記制御装置において開先加工に先立ち入力するデータは、ワークの基本形状データの他、
ワークテーブル上にセットされたワークの設置位置データとワークの高さ位置データ、
ワークに施される開先加工の開先形状データと開先加工位置データ、
ワークにおいて実際に開先が形成されない垂直端面範囲のルート寸法データ
のうち少なくとも一つ以上のデータであることを特徴とする請求項6または7記載の、不定形態ワークの開先加工装置。
【請求項9】
前記ワークセンサーユニットには、レーザーセンサーが適用され、
当該ワークセンサーユニットによるセンシング時に、実ワークエッジが掃引範囲から逸脱した場合、実ワークエッジが平面視で基本形状データから大きくずれた配置であると判定し、基本形状データを実ワークエッジに合わせるように補正してから、実ワークエッジのセンシングを再度行うことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項記載の、不定形態ワークの開先加工装置。
【請求項10】
前記補正後、実ワークエッジのセンシングを再度行っても、当該センシング時にワークエッジが再び掃引範囲から逸脱した場合、前記制御装置は、運転を中断する指示を出力し、且つワークの置き方を変更する指示を出力することを特徴とする請求項9記載の、不定形態ワークの開先加工装置。
【請求項11】
前記ワークテーブルは、その上面に支承ブロックを具え、この支承ブロックには、切削粉排除孔が開口されるとともに、支承ブロック下方空間には、側面を覆うシュートと、その下方に設けられる回収コンベヤとが設けられることを特徴とする請求項6から10のいずれか1項記載の、不定形態ワークの開先加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材に対する開先加工方法に関するものであって、特に非規格形状であり、且つワークテーブルに対し不定設置されるワークを加工対象として、後工程の溶接加工に備えた開先加工を効率的に施す、不定形態ワークの開先加工方法並びにその装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、中間部に曲がりを有するボックス断面の高耐荷重部材、一例として建設用重機のアーム部材や建築用構造部材等を製造するにあたっては、その曲がり側面部位となるパネル部材を構成部材の一部として用意する。このようなパネル部材は多くは設計仕様に応じた非規格形状であり、これに組み合わされる他の構成部材との溶接接合のため、所要箇所に予め開先加工を施すことが行われている。
このための従来手法は、設計仕様に応じた形状を、原素材鋼板材からレーザー切断等によりブランク取りし、その後、開先加工を必要する所要箇所に作用方向を斜めに設定したレーザーカッタを作用させ、溶断により面取り状の粗開先加工を施している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような溶断による手法に因み、開先表面は平滑仕上げとはなってはおらず、そのため仕上げ開先加工として更にサンダー等による手仕上げを行い、粗加工状態の開先を平滑に仕上げている。
当然ながら、このような手法ではワークのブランク取りからワークの移動、粗開先加工、ワークの移動、仕上げ開先加工という工程を採り、仕上げまでの加工に多大な手間と時間とを要している。因みにこのような加工対象は、多くは数十kgから数百kgにも及ぶ重量物であり、その移動作業一つを取ってもその重量に因み正確な作業位置に設置することが難しく手間を要するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-62003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、ブランク取りしたワークに対し一挙に開先仕上加工を行う手法を開発することを技術課題としたものであり、併せて加工にあたってワークそのものが非規格形状であるとともに、非常に重量が重く、ワークテーブル上に不定配置された場合であっても、これに対応することができる不定形態ワークの開先加工方法並びに装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず請求項1記載の、不定形態ワークの開先加工方法は、
非規格形状であり、且つワークテーブルに対し不定設置される不定形態のワークを加工対象とし、ワークの必要部位に開先加工を施す方法であって、
この方法は、
ワークを設置するワークテーブルと、
当該ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在の開先カッタと、
前記ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在のワークセンサーユニットと、
当該ワークセンサーユニットによって取得したワークの実ワークエッジデータに基づいて開先加工を設定する制御装置とを具えた開先加工装置を用いて行うものであり、
前記制御装置における制御は、前記ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータと、予め入力されたワークの基本形状データとを比較・判定し、この比較・判定データに基づいてワークの必要箇所に沿って開先カッタを作用させて開先加工を行うことを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載の、不定形態ワークの開先加工方法は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記制御装置における制御は、ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータを、予め制御装置に入力されたワークの基本形状データと照合することに加え、ワークテーブル上にセットされたワークの設置状態をも考慮し、これらの判定結果に基づいて、実ワークエッジデータと基本形状データとのズレを補正しながら、基本形状データにおけるワークの輪郭を維持して、開先カッタの作用範囲を特定することを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項3記載の、不定形態ワークの開先加工方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記制御装置において開先加工に先立ち入力するデータは、ワークの基本形状データの他、
ワークテーブル上にセットされたワークの設置位置データとワークの高さ位置データ、
ワークに施される開先加工の開先形状データと開先加工位置データ、
ワークにおいて実際に開先が形成されない垂直端面範囲のルート寸法データ
のうち少なくとも一つ以上のデータであることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項4記載の、不定形態ワークの開先加工方法は、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記ワークセンサーユニットには、レーザーセンサーが適用され、
当該ワークセンサーユニットによるセンシング時に、実ワークエッジが掃引範囲から逸脱した場合、実ワークエッジが平面視で基本形状データから大きくずれた配置であると判定し、基本形状データを実ワークエッジに合わせるように補正してから、実ワークエッジのセンシングを再度行うことを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項5記載の、不定形態ワークの開先加工方法は、前記請求項4記載の要件に加え、
前記補正後、実ワークエッジのセンシングを再度行っても、当該センシング時にワークエッジが再び掃引範囲から逸脱した場合、前記制御装置は、運転を中断する指示を出力し、且つワークの置き方を変更する指示を出力することを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項6記載の、不定形態ワークの開先加工装置は、
非規格形状であり、且つワークテーブルに対し不定設置される不定形態のワークを加工対象とし、ワークの必要部位に開先加工を施す装置であって、
この装置は、
ワークを設置するワークテーブルと、
当該ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在の開先カッタと、
前記ワークテーブルの上方において三次元方向に移動自在のワークセンサーユニットと、
当該ワークセンサーユニットによって取得したワークの実ワークエッジデータに基づいて開先加工を設定する制御装置とを具えて成るものであり、
前記制御装置は、ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータと、予め入力されたワークの基本形状データとを比較・判定し、この比較・判定データに基づいてワークの必要箇所に沿って開先カッタを作用させた開先加工を行う構成であることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項7記載の、不定形態ワークの開先加工装置は、前記請求項6記載の要件に加え、
前記制御装置における制御は、ワークセンサーユニットによって検出された実ワークエッジデータを、予め制御装置に入力されたワークの基本形状データと照合することに加え、ワークテーブル上にセットされたワークの設置状態をも考慮し、これらの判定結果に基づいて、実ワークエッジデータと基本形状データとのズレを補正しながら、基本形状データにおけるワークの輪郭を維持して、開先カッタの作用範囲を特定する構成であることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項8記載の、不定形態ワークの開先加工装置は、前記請求項6または7記載の要件に加え、
前記制御装置において開先加工に先立ち入力するデータは、ワークの基本形状データの他、
ワークテーブル上にセットされたワークの設置位置データとワークの高さ位置データ、
ワークに施される開先加工の開先形状データと開先加工位置データ、
ワークにおいて実際に開先が形成されない垂直端面範囲のルート寸法データ
のうち少なくとも一つ以上のデータであることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項9記載の、不定形態ワークの開先加工装置は、前記請求項6から8のいずれか1項記載の要件に加え、
前記ワークセンサーユニットには、レーザーセンサーが適用され、
当該ワークセンサーユニットによるセンシング時に、実ワークエッジが掃引範囲から逸脱した場合、実ワークエッジが平面視で基本形状データから大きくずれた配置であると判定し、基本形状データを実ワークエッジに合わせるように補正してから、実ワークエッジのセンシングを再度行うことを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項10記載の、不定形態ワークの開先加工装置は、前記請求項6から9のいずれか1項記載の要件に加え、
前記補正後、実ワークエッジのセンシングを再度行っても、当該センシング時にワークエッジが再び掃引範囲から逸脱した場合、前記制御装置は、運転を中断する指示を出力し、且つワークの置き方を変更する指示を出力することを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項11記載の、不定形態ワークの開先加工装置は、前記請求項6から10のいずれか1項記載の要件に加え、
前記ワークテーブルは、その上面に支承ブロックを具え、この支承ブロックには、切削粉排除孔が開口されるとともに、支承ブロック下方空間には、側面を覆うシュートと、その下方に設けられる回収コンベヤとが設けられることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0017】
まず請求項1または6記載の発明によれば、実際に検出された実ワークエッジデータと、予めDXFデータ等で入力されたワークの基本形状データとを比較・判定して、ワークの必要箇所に開先加工を施すため、非常に重量が重く、またワークテーブル上において不定配置されたワークであっても、正確且つ確実に開先加工を施すことができる。
また開先加工自体は、ワークの必要箇所、例えば一辺に沿って一度、開先カッタを作用させるだけで、開先仕上げまで行えるため、重量物で且つ不定形態ワークの開先加工を極めて効率良く行うことができる。
【0018】
また請求項2または7記載の発明によれば、制御装置における制御は、実際に検出された実ワークエッジデータと、予めDXFデータ等で入力されたワークの基本形状データとを照合しながら、更にワークの設置状態(設置データ)をも考慮するため、より実際のワークに適した開先加工が行える。
【0019】
また請求項3または8記載の発明によれば、事前に制御装置に入力するデータを具体的なものとする。
【0020】
また請求項4または9記載の発明によれば、ワークセンサーユニットとしてレーザーセンサーを適用するため、ワークセンサーユニットの構成がより明確なものとなる。
またワークセンサーユニットによるセンシング時に、実ワークエッジが掃引範囲から逸脱した場合の対応も明確なものとなる。
【0021】
また請求項5または10記載の発明によれば、実ワークエッジのセンシングを再度行っても、センシング時にワークエッジが掃引範囲から逸脱した場合、運転を中断し、且つワークの置き直しを指示するため、二回目のセンシングにおいてセンサー範囲外となった場合の対応を明確なものとし、また慎重を期す開先加工を具体的なものとする。
【0022】
また請求項11記載の発明によれば、ワークを直に載置する支承ブロックに切削粉排除孔が設けられ、またその下方には、側面がシュートで囲われた回収コンベヤが設けられているから、開先加工中にワークから発生した切削粉を、支承ブロックの切削粉排除孔から下方に落下させ、これを回収コンベヤに乗せて円滑に装置外まで排出することができる。従って、切削粉がワークテーブル(支承ブロック)上に残留してしまうことがほとんどなく、その後の開先加工も一層、円滑に且つ確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の開先加工装置の一例を示す斜視図(a)、並びに開先加工の様子を二種拡大して示す説明図(b)である。
図2-1】開先加工装置の一例を示す正面図である。
図2-2】同上平面図である。
図2-3】同上側面図である。
図3】開先加工に伴いワークから生ずる切削粉を下方に落下させ、装置外まで排除する様子を示す縦断面図である。
図4-1】開先カッタやワークセンサーユニットを昇降及び左右に移動させるための構成を示す斜視図である。
図4-2】同上側面図である。
図4-3】同上縦断面図である。
図5-1】開先加工を行う際、ワークテーブルの長手方向に沿って移動する走行フレームを示す斜視図である。
図5-2】同上脚部フレームの縦断面図である。
図6-1】走行フレームの上枠フレームを示す斜視図である。
図6-2】同上側面図である。
図7-1】開先カッタやワークセンサーユニットを昇降させるための構成を示す斜視図である。
図7-2】同上側面図である。
図7-3】同上縦断面図である。
図8-1】ワークセンサーユニットを下方から視た斜視図である。
図8-2】同上下方から視た投影図(下面図)である。
図9】開先加工を行う際のフローチャート(一例)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、以下の実施例に示すとおりであるが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0025】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。なお説明にあたっては、本発明たる不定形態ワークの開先加工装置(以下、単に開先加工装置と記す)1について説明した後、その作動態様の説明をしながら、実質的に不定形態ワークの加工方法(以下加工方法と記す)について説明する。
【0026】
本発明の開先加工装置1は、多くは異形金属材のワークWに開先加工を施すものであり、まず本発明の名称中の「不定形態ワーク」から説明する。ワークWは、例えば規格寸法を有するH形鋼・平帯鋼を初めとする加工部位が直線状等のシンプルな形状を採らず、機械部品の設計仕様に応じて曲線を含む非規格形状のいわゆる異形形状を採るものである。 そして「不定形態」と定義したのは、異形形状のワークWが更に開先加工を行うワークテーブル2において必ずしも一定の位置や姿勢に設置されず、不定配置となる場合が多く、これらの状況、すなわちワークW自体が非規格形状の異形形状であることと、不定配置されることとを含めて不定形態と称したものである。
なおワークW自体の形態としては、例えば構造用部材に対し内側に張り出すように設けられるブラケット状ないしはフランジ状部材、あるいは曲がりボックス断面構造材において曲がり部位を構成する側面パネル部材等、種々の形態が設計仕様ごとに存在するものである(図1(a)参照)。
【0027】
以下、開先加工装置1について説明する。
開先加工装置1は、一例として図1図4に示すように、大別するとワークテーブル2と、走行フレーム3と、横行サドル4と、昇降主軸ユニット5と、操作盤6とを主要部材として具える。
まずベース部材となるワークテーブル2について説明する。このものは支台フレーム21を強度部材として構成され、その側面に走行フレーム3を支持する走行ガイドレール22が設けられている。そして、一方の走行ガイドレール22に沿って、その下方には走行フレーム3の駆動に寄与するラック23が設けられている。
一方、支台フレーム21の上方には、適宜の梁部材を支承部材として支承ブロック24が設けられる。すなわち、支承ブロック24は、一例としてワークテーブル2の上面に複数個、平面視短冊状に分断された部材が組み合わされてなり、全体としてワークテーブル2のテーブル面を構成している。なお、この支承ブロック24の上方において、ワークWを支承するにあたっては、支承ブロック24の上面に設けた磁着支承台25によって磁着保持するものである。
【0028】
更に支承ブロック24には、ブロック本体のそれぞれに切削粉排除孔26が形成されており、ワークWの開先加工時に発生する切削粉W0を、当該切削粉排除孔26を通して、その下方に落下させることできる構成になっており、これによりテーブル面に切削粉W0を残留させないようにしている。
また前記支承ブロック24は、一例として上記図3に示すように、隣接する支承ブロック24を組み合わせた際に、その下方の一部の隣接部が切除され、組み合わせた状態において前記磁着支承台25を適宜固定できるようなTスロット27が構成されている。
更にこの支承ブロック24の下方空間は、上述したように、開先加工に伴い生ずる切削粉W0の回収に利用される空間であって、支台フレーム21の内側に沿って下窄まり状のシュート28が設けられ、更にこのシュート28の下方には回収コンベヤ29が設けられる。
【0029】
次に、このようなワークテーブル2の上方を走行する走行フレーム3について説明する。
走行フレーム3は、一対の脚部フレーム31の上方に、一例として図4図6に示すような上枠フレーム32が組み合わされた、言わば門形のフレームとして構成され、前記脚部フレーム31の内側には前記ワークテーブル2における走行ガイドレール22に組み合わされる走行リニアベアリング33を具えている(図5-1参照)。
更に、一例として図5-2に示すように、一方の脚部フレーム31の内側には、前記ワークテーブル2におけるラック23に噛み合うシフトピニオン34が設けられる。このシフトピニオン34は、近設配置された走行モータ34Mによって回転駆動がなされる。なお、このシフトピニオン34とラック23とについて説明すると、走行フレーム3が極めて正確な移動が要求されることから、両者のラック23とシフトピニオン34との噛み合い関係は、いわゆるトロコイド接触を採り、いわゆるバックラッシュのない噛み合い状態を実現させている。
【0030】
一方、走行フレーム3における上枠フレーム32に対しては、一例として上記図4図6に示すように、横行ガイドレール35が設けられるものであり、このものは後述する横行サドル4を支持する(図4図7参照)。そして、この横行サドル4の駆動のために、横行スクリューシャフト36が横行ガイドレール35に沿うように配置され、横行シフトモータ36Mによって回転駆動がなされる。
なお、走行フレーム3は、横行サドル4、昇降主軸ユニット5を含めて、これらを囲む安全カバー37により覆われている(図1図2参照)。
【0031】
次に、前記走行フレーム3に支持される横行サドル4について説明する。
横行サドル4は、ベース部材として横行ベース40を有するものであり、横行ベース40は、一例として図4-1に示すように、上面板40Aと前面板40Bとによって逆L字状の側面形状を呈する。そして上面板40Aと、前面板40Bの下方とには、横行リニアベアリング41が設けられ、この横行リニアベアリング41は、前記走行フレーム3における二本の横行ガイドレール35に対し外嵌状態に組み合わされる。
更に横行ベース40の前面板40Bには、走行フレーム3に取り付けられた横行スクリューシャフト36にねじ合わせられる横行メネジブロック42が設けられる(図4-3参照)。また、当該前面板40Bには、昇降リニアベアリング43が具えられ、後述する昇降主軸ユニット5に設けられた昇降レール51と組み合わされて、昇降主軸ユニット5を昇降自在に案内するものである。
更に前記横行ベース40における上面板40Aから垂直方向に延びるように昇降スクリューシャフト44が設けられるものであり、このものは上方の昇降シフトモータ44Mによって回転駆動される。
【0032】
次に横行サドル4に支持され、昇降移動する昇降主軸ユニット5について説明する。
昇降主軸ユニット5は、ベース部材として昇降フレーム50を具え、当該昇降フレーム50は、直立フレーム50Aと張出フレーム50Bとを具えて成り、このものによって開先作業を行う開先カッタ55と、ワークWの検出を行うワークセンサーユニット56とを支持する。
ここで本実施例では、開先カッタ55として、例えば図1(b)示すようなレ形開先(V形開先とも称される)と、K形開先とが主に挙げられる。
【0033】
以下、昇降フレーム50について説明する。
昇降フレーム50は、横行サドル4に対向(体面)する側において、直立フレーム50Aに対し、二本の昇降レール51を具える。この昇降レール51は、前記横行サドル4における昇降リニアベアリング43に案内され、昇降主軸ユニット5の昇降移動が行われる。
また二本の昇降レール51の間には、昇降メネジブロック52が設けられるものであり、この昇降メネジブロック52は、横行サドル4における昇降スクリューシャフト44にネジ合わせられ、昇降スクリューシャフト44の回転に従い、昇降主軸ユニット5は、上昇・下降移動するように構成される。
更に前記昇降フレーム50には主軸ホルダ53が支持され、この主軸ホルダ53は開先カッタ55の主軸54を回転自在に支持している。
一方、この開先カッタ55を駆動するカッタモータ55Mは、前記張出フレーム50Bに対して取り付けられ、カッタモータ55Mの出力軸と主軸54との間は、歯付きベルト等により回転が伝達される。
【0034】
更に昇降主軸ユニット5は、このような開先加工を施す開先カッタ55の他、ワークテーブル2上に設置されたワークWのエッジ(縁)をセンシングするワークセンサーユニット56を具える。
このワークセンサーユニット56は、前記昇降主軸ユニット5における主軸ホルダ53の前方側に設けられたセンサー昇降レール57を案内部材として上下に昇降できるように構成されるものである(図4-3・図8参照)。具体的には、センサーベース板58に対し、図示を省略するメネジブロックを設けて、センサー昇降レール57と組み合わせることって、昇降移動が行われる。この昇降移動は、センサーベース板58の上方に設けられるセンサー昇降シリンダ58Cによって、昇降シフトがなされる。
なおワークセンサーユニット56のセンサープローブ56Pは、一例としてレーザー光を照射するレーザーセンサーを用いるものであり、レーザーセンサーは、センシング範囲が平面長方形範囲となることから、ワークWの形状に応じてセンサープローブ56Pを縦置きまたは横置きのいずれかを選択できるように構成されている。すなわちセンサープローブ56Pは、90度変位させることができるよう、ロータリーアクチュエータがワークセンサーユニット56の上方に設けられる。
ここで図中符号56Cは、ワークセンサーユニット56の諸機材を保護するユニットカバーであり、また符号57Lは、センサー昇降レール57に外嵌めされるセンサー昇降リニアベアリングである。
【0035】
本発明の開先加工装置1は、以上述べた言わば装置本体となる機器の側傍に、更に操作盤6が設けられる。この操作盤6は、各種データ等を可視表示するブラウザ61と、適宜の指令を入力する入力ボード62とを具えるとともに、前記ワークセンサーユニット56から得られるセンシングデータを解析する制御装置63を具える。なお、当然ながら制御装置63それ自体の形態については、特に外形形状は特定されるものではないため、図示の状態では、いわゆるブロック状のシンボル図示とするものである。
【0036】
本発明の開先加工装置1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、本装置の作動態様を説明しながら、不定形態ワークの開先加工方法について併せて説明する。
不定形態ワークの開先加工方法は、一例として図9に示すフローチャートの手法が実用上好ましい形態であり、以下このフローチャートに基づいて説明する。
【0037】
〈ステップ1;基本形状データの入力〉
まずフローチャートのステップ1において、作業者(オペレーター)が、装置側傍に設けられた操作盤6の入力ボード62を操作し、ワークWに関する基本的な情報、つまり基本形状データを制御装置63に入力する。
この基本形状データは、加工対象となるワークWの形態に関するデータであり、具体的にはワークWの輪郭形状、材質、厚み等のいわゆる仕様情報が挙げられる。この基本形状データ、特にワークWの輪郭形状については、汎用化データであるDXFデータを適用することが好ましい。もちろん、ワークWの設計開発と、その後のブランク取りから開先加工に至る加工が、全て同一企業内で行われる場合には、適宜企業内専用のソフトウェアデータ等を適用しても構わないが、開先加工のみを別途専用で行う場合には、種々の異なる加工依頼者からのデータを汎用的に用いることができるようにするためDXFデータを用いることが好ましい。
【0038】
〈ステップ2;設置データの入力〉
次にステップ2においてワークWの設置位置に関する設置データを入力する。具体的には、ワークテーブル2上の磁着支承台25を固定手段としてワークWが保持されることから、磁着支承台25によるワークWの浮き上がり寸法(高さ位置データ)、更にはワークWがワークテーブル2の原点、多くはテーブルの外縁部からどのくらい隔たっているのかを示す、原点ズレ量等のデータ(設置位置データ)が設置データにあたり、これらを適宜入力する。
【0039】
〈ステップ3;開先加工データの入力〉
次にステップ3において開先加工データを入力するものであり、これは開先形状データ、開先位置データ等である。
まず開先形状データとしては、例えば形成すべき開先状況に応じた開先工具たる開先カッタ55の選定を行う。本実施例では、開先カッタ55として、いわゆるレ形開先とK形開先のそれぞれに適した工具が用意されており、いずれかが選択される。更にレ形開先カッタとK形開先カッタいずれの場合を選択しても、開先カッタ55の外側の呼び径を入力するものである。
また開先カッタ55の高さ方向、いわゆるZ基準位置を入力するものであり、これはワークテーブル2の支承ブロック24の上面を基準面とする。
なおレ形開先の場合には、例えば上記図1(b)に示すように、開先加工時、開先カッタ55の底面は、ワークWの下面とほぼ一致した状態となる(厳密には開先カッタ55の底面の方が、ワークWの下面より少し下に位置する)。
一方、K形開先の場合には、例えば上記図1(b)に示すように、開先カッタ55の底面は、ワークWの下面と一致しないものである。因みに、K形開先の場合には、図中寸法a・bにおいて、これらが等しいパターン(a=b)と、ほぼ等しいパターン(a≒b)とが存在するため、開先カッタ55の高さや後述するルート寸法(データ)が入力された後、ブラウザ61上に寸法値a・bが出力されることが望ましい。
【0040】
〈ステップ3;開先位置データの入力〉
また当該ステップ3では、DXF形式で入力されたワーク輪郭形状に基づいて、開先位置データ(開先加工位置データ)を入力する。具体的には、加工開始位置と加工終了位置とを入力するものであり、例えばブラウザ61等を目視しながら、作業者がブラウザ上で開始位置と終了位置とに×印を入力する。もちろん、このような二点入力、つまり開先加工の開始点及び終了点の入力の他、開始位置のみを入力した後、加工長さを勘案して自動的に終了位置を決定するようにしても構わない。なお、ワークWにおいて開先加工を施す部位は、ワークWの全周(全外周と全内周)でも構わないし、ワークWの外周を構成する一つの辺だけでも構わない。更には、ワークWの一辺の途中から途中までを加工位置とすることも可能である。また、このような開先位置データの入力に伴い、加工する範囲の長さもブラウザ上に表示することが好ましく、例えば加工位置が弧の一部または全部の場合には、その長さ(開先加工が施される弧の長さ)を表示することが好ましい。
【0041】
〈ステップ3;ルート寸法データの入力〉
更に当該ステップ3では、ルート寸法データも入力する。ここでルート寸法とは、例えば図1(b)に示すように、ワークWが板状であれば、多くは開先を形成しない、垂直端面範囲の寸法を示すものであり、このルート寸法設定は、開先カッタ55の横移動すなわち開先カッタ55をワークWに対して水平方向に接近・離反させる移動量によって決定される。
更に切削速度等についても入力する。なお、これらの入力データは、ブラウザ上で加工情報、あるいは加工データ等として表示されることが好ましい。また加工範囲等については、ブラウザ上でワークWの輪郭線に対し、例えば赤色表示等の色彩表示によって表示されることが好ましい。
【0042】
〈ステップ4;実ワークエッジの検出〉
次に、ステップ4において、実ワークエッジの検出を開始する。すなわち、本ステップ4において、ワークテーブル2(磁着支承台25)上にセットされたワークWの実際の縁がセンシングされ、実際のワークWの輪郭が検出される。なお、この検出は、実際のワークWの輪郭が、DXFデータで入力された輪郭データ(基本形状データ)と合っているか否かを確認するために行うものであり、通常はズレがあるため、どの程度ズレがあるのかを検出するステップとなる。なお、この際、ワークWの不良やDXFデータの不良は考慮しないものである。
また実ワークエッジをセンシングする際には、上述したようにワークセンサーユニット56(センサープローブ56P)からレーザービームを照射して行うものであるが、この照射範囲が平面視長方形状であることに因み、例えばセンシングするワークエッジの領域線が0度~45度の範囲はセンサープローブ56Pを0度姿勢でセンシングし、上記領域線が45度~90度の範囲はセンサープローブ56Pを90度回転させた姿勢(90度姿勢)でセンシングするものであり、これによりワークWの全外周を、比較的広いセンシング範囲で検出することができる。
【0043】
そして、センシング中、例えば実ワークエッジがセンシング範囲(照射範囲)に収まっていれば、その後の開先加工に移行するが、ワークWの置き方等によっては、実ワークエッジがセンシング範囲内に収まらずに、当該範囲から逸脱してしまうことも考えられる。 そのためステップJ1において、センシング中のワークセンサーユニット56が、このような範囲内に収まっているか否か、つまりセンサープローブ56Pが実際のワークWのエッジを捉えているか否かの判断を絶えず行うものである。
具体的にはワークセンサーユニット56が、実ワークエッジをセンシングしながらXY方向に移動するものであり、このワークセンサーユニット56のXY方向移動は、予め入力された基本形状データ(DXFデータ)を参考にしながら行われるものである。
【0044】
もちろんワークエッジのセンシング中は、ワークセンサーユニット56のXY方向への移動量を、基本形状データ(DXFデータ)と絶えず比較するものである。ここで通常は、ワークセンサーユニット56によって検出された実ワークエッジデータが、予め入力された基本形状データと全く合致することは稀であり、従って実ワークエッジデータは、基本形状データから幾らかずれるのが一般的である。このため例えば、このズレがワークセンサーユニット56のセンシング範囲内に収まっていれば、ステップ5において実ワークエッジの検出を終了する。
その後、ステップ6において、実際に検出した実ワークエッジデータと、予め入力されていたワークWの形状データとの比較を行い、そのズレ具合、多くは平面視での傾きを補正して開先カッタ55の移動軌跡を決定(設定)する。
【0045】
〈ステップJ1;第1回目判断〉
一方、ワークエッジのセンシング中、検出した実ワークエッジデータが、予め入力された基本形状データから大きくずれた場合、具体的には、センサープローブ56Pの照射範囲(掃引範囲)内でワークWのエッジを捉え切れなくなった場合)には、上記ステップJ1においてセンサー範囲外と判断し、ステップ5′に移行する。
このように実ワークエッジデータが、予め入力された基本形状データと大きくずれていることが判明した場合には、ステップ5′において、基本形状データの傾きを適宜変更したり、基本形状データを幾らか回転させたりして、ワークWの基本形状データを補正し、その後、再度、実ワークエッジの検出をやり直すものである。すなわち、ワークセンサーユニット56の移動軌跡を再設定して、ワークWの輪郭検出を再度開始するものである。
【0046】
〈ステップJ2;第2回目判断〉
もちろん、この再検出においても、上記ステップJ1と同様に、ワークエッジ検出がセンサー範囲内に収まる場合と、収まらない場合(センサー範囲外)となる場合があり、これがステップJ2である。
そして、このステップJ2において、再度行ったワークエッジ検出がセンサー範囲内であれば、上記ステップ5に移行し、実ワークエッジ検出の終了となり、上述したようにステップ6へと移行し、開先加工に備える。
【0047】
一方、ステップ5’においてワークエッジの検出を再度行っても、ワークセンサーユニット56が実ワーク輪郭を捉え切れないと判断した場合には、ステップJ2でセンサー範囲外と判断され、一旦、センシング等の運転を中断する。そして、作業者にワークWの置き方を変更するように指示し、ワークWが置き直されたら、ステップ1に戻り、一連の作業をやり直し、言わば慎重を期す処理を行うものである。
なお、ワークWの置き直しは、重量物のワークWであっても、比較的容易にワークテーブル2上を移動させることができる。すなわち本実施例では、磁着支承台25にワークWをマグネット吸着させており、この磁着支承台25を、Tスロット27を利用してワークテーブル2上に固定している。そのため、上記固定が例えばワークテーブル2に形成したTスロット27のT溝に、Tスロットボルトのボルト頭部(断面略T字状)を嵌め込み、Tスロットボルトのボルト先端からナットをねじ込んで固定しているような場合には、当該ナットを適宜緩めることにより、磁着支承台25ごとTスロット27に沿ってワークWをワークテーブル2上でスライドさせることができ、重量物のワークWであっても、作業者に多大な負担を強いることなく、容易に移動させることができる(置き直しを図ることができる)。
【0048】
〈ステップ6・7;開先加工〉
以上述べたように、ステップ5において最終的に実ワークエッジの検出が終了し、次いでステップ6において予め入力された基本形状データ(DXFデータ)と比較照合が行われた後、ステップ7において開先加工実施の信号が出力される。
開先加工にあたっては、昇降主軸ユニット5が適宜XYZ方向に移動し、ワークWに対して必要な開先加工範囲に沿って、既に設定されたルート寸法(ルート量)等を勘案しながら移動して、ワークWの輪郭の一部または全てに開先加工を行う。
そして本発明では、ワークWの所要箇所に開先カッタ55を一回作用させるだけで、所要箇所の開先仕上げまで行えるものである。なお、開先加工中は、ワークWから切削粉W0が発生することは避けられないが、この切削粉W0は、支承ブロック24に設けられた切削粉排除孔26から支承ブロック24の下方に落下し、回収コンベヤ29によって外部に排出される。このため切削粉W0がワークテーブル2(支承ブロック24)上にほぼ残らず、その後の開先加工も円滑に且つ確実に行えるものである。
【0049】
〔他の実施例〕
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず開先カッタ55については、例えばレ形開先用カッタの他、K形開先用カッタとの二種類、あるいは同一形状の開先カッタであってもその寸法等により種々の開先カッタを用意しておき、それらを予め昇降主軸ユニット5に対し、何本か並設し、必要な開先カッタのみを用いて開先加工を施すようにすることも好ましい。
【0050】
また実ワークエッジの検出(ワークセンサーユニット56によるセンシング)にあたり、先に述べた基本の実施例では、ワークWのエッジにレーザー光を照射する非接触式のセンサープローブ56Pを用い、またその移動は、予め入力した基本形状データをベースにしたが、ワークセンサーユニット56としては接触式のセンサープローブ56Pを用いることも可能である。この場合、センサープローブ56Pを常にワークWのエッジに当接させるようにしながら、自動的にワークWの外周を移動させて、実ワークエッジのデータを取得することが可能であるし、あるいは作業者が手動でワークWのエッジに沿ってセンサープローブ56Pを移動させ、言わばティーチング機能によって実ワークエッジのデータを取得することも可能である。
更にワークセンサーユニット56としては、高精度且つ広範囲を検出することが可能なレーザーセンサーを用い、ワークテーブル2上を全てスキャンするような検出方法も可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 開先加工装置(不定形態ワークの開先加工装置)
2 ワークテーブル
3 走行フレーム
4 横行サドル
5 昇降主軸ユニット
6 操作盤

21 支台フレーム
22 走行ガイドレール
23 ラック
24 支承ブロック
25 磁着支承台
26 切削粉排除孔
27 Tスロット
28 シュート
29 回収コンベヤ

31 脚部フレーム
32 上枠フレーム
33 走行リニアベアリング
34 シフトピニオン
34M 走行モータ
35 横行ガイドレール
36 横行スクリューシャフト
36M 横行シフトモータ
37 安全カバー

40 横行ベース
40A 上面板
40B 前面板
41 横行リニアベアリング
42 横行メネジブロック
43 昇降リニアベアリング
44 昇降スクリューシャフト
44M 昇降シフトモータ

50 昇降フレーム
50A 直立フレーム
50B 張出フレーム
51 昇降レール
52 昇降メネジブロック
53 主軸ホルダ
54 主軸
55 開先カッタ
55M カッタモータ
56 ワークセンサーユニット
56P センサープローブ
56C ユニットカバー
57 センサー昇降レール
57L センサー昇降リニアベアリング
58 センサーベース板
58C センサー昇降シリンダ

61 ブラウザ
62 入力ボード
63 制御装置

W ワーク
W0 切削粉
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図9