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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150335
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ジオポリマー発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20231005BHJP
   C04B 12/04 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 14/20 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 38/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C04B28/26 ZAB
C04B12/04
C04B14/20 A
C04B20/00 B
C04B38/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059397
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】野呂 仁一朗
(72)【発明者】
【氏名】内藤 直記
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA08
(57)【要約】
【課題】 特定の骨材を用いるとともに、反応スラリーの物性を特定の条件に調整することにより、ジオポリマー発泡体の強度を維持しつつ、所望の気泡を形成することができる、ジオポリマー発泡体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材、及び水を含む反応スラリーを得、反応スラリーに発泡剤を添加して発泡性スラリーとし、発泡性スラリーを加熱することによりジオポリマー発泡体を製造する方法であって、骨材として、平均粒子径が50~500μmであり、且つ粒子径10μm以下の体積割合(X)が3%以下であるマイカを用い、反応スラリーの23℃における粘度を3000~15000mPa・sとすることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材、及び水を含む反応スラリーを得、前記反応スラリーに発泡剤を添加して発泡性スラリーとし、前記発泡性スラリーを加熱することによりジオポリマー発泡体を製造する方法であって、
前記骨材として、平均粒子径が50~500μmであり、且つ粒子径10μm以下の体積割合(X)が3%以下であるマイカを用い、
前記反応スラリーの23℃における粘度を3000~15000mPa・sとすることを特徴とするジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記マイカの平均粒子径が80~300μmであることを特徴とする請求項1に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記マイカの添加量(Y)がアルミノケイ酸塩100質量部に対して、10~150質量部であり、前記マイカの添加量(Y[質量部])と、前記マイカ中の粒子径10μm以下のマイカ粒子の体積割合(X[%])とが、下式(1)の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
0.1≦ X × Y ÷ 100 ≦3 ・・・(1)
【請求項4】
前記反応スラリーにおける水の配合割合が25~45質量%であることを特徴とする請求項 1から3のいずれか一項に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記骨材として、さらにジオポリマー粉体を添加し、
前記ジオポリマー粉体の添加量(Z)が、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、1~80質量部であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記ジオポリマー粉体が、ジオポリマー発泡体屑を粉砕して得られる粉体及び/又は前記ジオポリマー発泡体を粉砕して得られる粉体であることを特徴とする請求項5に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項7】
前記ジオポリマー粉体中の粒子径10μm以下のジオポリマー粉体粒子の体積割合が5%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオポリマーは、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させることにより製造される無機ポリマーであり、環境に優しい素材として注目されている。
【0003】
このジオポリマーは、SiOとAlOとから形成される四面体構造を有すると共に、該四面体構造によるネットワーク中に、AlOの負電荷を補償する陽イオンを保有している構造を有する。
【0004】
上記ジオポリマーを用いた材料としては、例えば、Al-SiO系粉体、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、水、発泡剤、充填剤としての骨材を含む吸水性ジオポリマー素材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-219281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、ジオポリマー発泡体を製造するために、製造過程において、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩と、充填剤として骨材を分散させた反応スラリーに、撹拌等の剪断力を加えると、反応スラリーは急激に高い粘性を示す現象が起きやすくなる。このような現象が見られる場合には、発泡時に、生成したジオポリマーの安定した気泡を形成することが困難となる。また、粘度の上昇を抑えるために水を添加して反応スラリーの粘性を調整すると、強度に優れるジオポリマー発泡体が得られ難くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、ジオポリマー発泡体としての気泡を安定して形成させつつ、ジオポリマー発泡体の強度を維持することができる、ジオポリマー発泡体の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のジオポリマー発泡体の製造方法は以下のことを特徴としている。
<1>本発明のジオポリマー発泡体の製造方法は、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材、及び水を含む反応スラリーを得、前記反応スラリーに発泡剤を添加して発泡性スラリーとし、前記発泡性スラリーを加熱することによりジオポリマー発泡体を製造する方法であって、
前記骨材として、平均粒子径が50~500μmであり、且つ粒子径10μm以下の体積割合(X)が3%以下であるマイカを用い、
前記反応スラリーの23℃における粘度を3000~15000mPa・sとすることを特徴とする。
<2>前記<1>の発明のジオポリマー発泡体の製造方法において、前記マイカの平均粒子径が80~300μmであることを特徴とする。
<3>前記<1>又は<2>の発明のジオポリマー発泡体の製造方法において、前記マイカの添加量(Y[質量部])がアルミノケイ酸塩100質量部に対して、10~150質量部であり、前記マイカの添加量(Y)と、前記マイカ中の粒子径10μm以下のマイカ粒子の体積割合(X[%])とが、下式(1)の関係を満足することを特徴とする。
0.1≦ X × Y ÷ 100 ≦3 ・・・(1)
<4>前記<1>から<3>の発明のジオポリマー発泡体の製造方法において、前記反応スラリーにおける水の配合割合が25~45質量%であることを特徴とする。
<5>前記<1>から<4>の発明のジオポリマー発泡体の製造方法において、前記骨材として、さらにジオポリマー粉体を添加し、
前記ジオポリマー粉体の添加量(Z)が、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、1~80質量部であることを特徴とする。
<6>前記<5>の発明のジオポリマー発泡体の製造方法において、前記ジオポリマー粉体が、ジオポリマー発泡体屑を粉砕して得られる粉体及び/又は前記ジオポリマー発泡体を粉砕して得られる粉体であることを特徴とする。
<7>前記<5>又は<6>の発明のジオポリマー発泡体の製造方法において、前記ジオポリマー粉体中の粒子径10μm以下のジオポリマー粉体粒子の体積割合が5%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法によれば、添加される骨材の種類及び粒度分布を特定するとともに、反応スラリーの物性を特定の条件に調整することにより、ジオポリマー発泡体としての気泡を安定して形成させつつ、強度に優れたジオポリマー発泡体を製造することできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のジオポリマー発泡体の製造方法の一実施形態について説明する。本発明のジオポリマー発泡体の製造方法は、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材、及び水を含む反応スラリーを得、前記反応スラリーに発泡剤を添加して発泡性スラリーとし、前記発泡性スラリーを加熱することによりジオポリマー発泡体を製造する方法であり、骨材として、特定の平均粒子径、且つ特定の粒子径範囲のマイカを含み、さらに、反応スラリーの粘度を特定範囲とするものである。
【0011】
(アルミノケイ酸塩)
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法で用いられるアルミノケイ酸塩は、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部をアルミニウム原子に置き換えた構造を持つ化合物である。
【0012】
前記アルミノケイ酸塩(xMO・yAl・zSiO・nHO、Mはアルカリ金属)は、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応時、反応スラリー中で、アルミニウムイオンが水溶液中に溶出するとともに、ケイ酸モノマー(ケイ酸、Si(OH))が生じる。このようにして生じたケイ酸モノマーと陽イオンとが重縮合することにより、SiO・AlOの四面体構造によるポリマーネットワークのジオポリマーが形成される。
【0013】
アルミノケイ酸塩としては、バイデライト、ベントナイト、メタカオリン、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、パイロフィライト、バーミキュライト、雲母、緑泥石、サポナイト、セピオライト、及び酸性白土等の粘土鉱物、フライアッシュ、シリカフューム、その他のアルミニウムを含むケイ酸塩鉱物等を例示することができる。また、焼成アルミノケイ酸塩が好ましく、特にメタカオリンが好ましい。これらの物質は市販のものを使用することができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アルミノケイ酸塩は、粉末であることが好ましい。これらの物質を適宜粉砕分級して特定の画分を用いることにより、所望の組成のアルミノケイ酸塩に調整することができる。
【0014】
アルミノケイ酸塩として特に好ましいメタカオリンは、化学式:Al・2SiOで現わされる化合物であり、アルミノケイ酸塩中のメタカオリンの割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。アルミノケイ酸塩中のメタカオリンの割合が上記範囲であると、多数の気泡による良好な気泡構造がジオポリマー発泡体中に形成されやすく、強度に優れたジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0015】
また、アルミノケイ酸塩粉末は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.3μm以上30μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径がこの範囲であると、製造されたジオポリマー発泡体に良好な気泡構造が形成される。
【0016】
アルミノケイ酸塩粉末の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布をもとに、算術平均して算出することができる。なお、上記平均粒子径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0017】
アルミノケイ酸塩におけるAlの含有量の下限は、アルミノケイ酸塩の総質量に対して20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、アルミノケイ酸塩におけるAlの含有量の上限は、アルミノケイ酸塩の総質量に対して70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。Alの含有量をこの範囲とすることにより、ジオポリマー発泡体の強度を高めやすい。
【0018】
(アルカリ金属ケイ酸塩)
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法で用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウムを例示することができる。これらを水に溶解させると高アルカリ性の水溶液となる。
【0019】
このアルカリ金属ケイ酸塩のアルカリ性水溶液と、アルミノケイ酸塩とを反応させることにより、アルミノケイ酸塩からAl等の陽イオンを溶出させるとともに、ケイ酸モノマーを生じさせることができる。また、アルカリ金属ケイ酸塩は、重縮合によりジオポリマーを形成するケイ酸モノマーの供給源になる。
【0020】
本発明においては、アルカリ金属ケイ酸塩の中でもケイ酸カリウムを用いるのが好ましい。なお、水溶液の水素イオン濃度(pH)を調整し、所望とするアルカリ性を示す水溶液とするために、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を添加することができる。
【0021】
ケイ酸カリウムにおける、SiOとKOのモル比(Si0/K0比)は、1以上5以下であることが好ましく、1.5以上4.5以下であることがより好ましく、3以上4以下であることがさらに好ましい。モル比を上記範囲にすることにより、ジオポリマー発泡体の強度をより向上させることができる。
【0022】
また、上記アルカリ金属ケイ酸塩は、水溶液として添加することが好ましい。例えば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液におけるアルカリ金属ケイ酸塩の濃度は、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、22質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩の濃度がこの範囲内であると、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合した反応スラリーの発泡成形性を向上させることができる。
【0023】
(水酸化カリウム添加)
特に、反応スラリーのpHを調整し、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応を促進させるために、アルカリ金属ケイ酸塩100質量部に対して10~90質量部の水酸化カリウムを添加するのが好ましく、50~80質量部を添加するのがより好ましい。
【0024】
(骨材:マイカ)
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、添加される骨材としてマイカが用いられる。マイカは、一般的に白雲母(muscovite、マスコバイト)と呼ばれるケイ酸塩鉱物であり、KAl(AlSi10)(OH)の化学組成で示される。なお、本発明において、「マイカ」の用語は、物理的及び化学的に類似しているシート状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)鉱物を包含する。
【0025】
本発明で用いる骨材としてのマイカは、平均粒子径が50~500μmであり、且つ粒子径10μm以下の体積割合(X)が3%以下の粒度分布を有するものである。平均粒子径が500μmより大きいマイカを添加すると、反応スラリーの粘度が上昇する傾向がある。係る観点から、マイカの平均粒子径は80~300μmが好ましく、100~200μmがより好ましい。なお、マイカの平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布をもとに、算術平均して算出することができる。なお、上記平均粒子径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0026】
また、10μm以下の体積割合(X)が3%より多く添加された場合にも、同様に反応スラリーの粘度が上昇する傾向がある。粒子径が小さいと粒子の凝集が起こり易く、粘度が上昇してしまうという観点から、粒子径10μm以下の体積割合(X)は3.0%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましい。
【0027】
マイカの平均粒子径の範囲及び粒子径10μm以下の体積割合を上記範囲とすることにより、ジオポリマーが形成される反応スラリーの粘度が過度に上昇することなく、反応スラリーは気泡構造の構築に適するものとすることができる。また、強度に優れる発泡体を形成できる気泡構造の構築に適するものとなり、強度に優れるジオポリマー発泡体を安定して製造することができる。
【0028】
また、マイカの添加量(Y)は、添加するマイカの平均粒子径及び、粒子径10μm以下の体積割合(X)が上記範囲であれば限定されるものではないが、通常、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、20~110質量部であることがより好ましく、30~100質量部であることがさらに好ましい。
【0029】
さらに、マイカの添加量(Y[質量部])と、マイカ中の粒子径10μm以下のマイカ粒子の体積割合(X[%])とが、下式(1)を満足することが好ましい。
0.1≦ X × Y ÷ 100 ≦3 ・・・(1)
【0030】
マイカの添加量(Y)及び、粒子径10μm以下のマイカ粒子の体積割合(X)の関係を上記範囲とすることにより、より確実に反応スラリーの粘度上昇を抑制することができる。なお、上式(1)は、反応スラリー中に存在する、比較的小さい粒子径のマイカの含有量と関連すると考えられる。
【0031】
(ジオポリマー粉体)
また、本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、骨材として、さらにジオポリマー粉体を含むことが好ましい。ジオポリマー粉体としては、本発明のジオポリマー発泡体の端材や屑などの回収材料を粉砕して得られる粉体及び/又は本発明のジオポリマー発泡体を粉砕して得られる粉体であることが好ましい。ジオポリマー粉体は、本発明のジオポリマー発泡体の製造方法において骨材として作用し、ジオポリマー発泡体の強度を向上させることができるとともに、ジオポリマー発泡体製造時のリサイクル性を向上させることができる。なお、ジオポリマー粉体は、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させて得られるジオポリマーとは区別され、別途反応スラリーに添加されるものである。
【0032】
また、ジオポリマー発泡体の回収原料を用いる場合には、ジオポリマー粉体中に含まれるマイカは、反応スラリーに添加されるマイカには含まれないものとする。ジオポリマー発泡体に含まれているマイカは、もはや、マイカ単独で粉体中に存在するものではなく、ジオポリマーに取り込まれた形で存在すると考えられるため、反応スラリー中における挙動が異なるためである。なお、ジオポリマー発泡体の回収原料を用いる場合、ジオポリマー中に含まれているマイカは、ジオポリマー形成反応には関与しないものの、新たに形成されたジオポリマー発泡体の強度に対しては、反応時加えられたマイカと同様に、ジオポリマー発泡体の強度の向上に寄与し得る。
【0033】
ジオポリマー粉体の平均粒子径は30~700μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。ジオポリマー粉体の平均粒子径がこの範囲であると、反応スラリーの粘度が良好となり、また、ジオポリマーの生成や気泡構造の構築に好適な反応スラリーとなり、強度に優れるジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0034】
また、ジオポリマー粉体中の粒子径10μm以下のジオポリマー粉体粒子の体積割合は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。ジオポリマー粉体の平均粒子径及び、粒子径10μm以下の粒子の体積割合を上記範囲とすることにより、反応スラリーの粘度上昇を抑制することができ、所望の気泡を有するジオポリマー発泡体を製造することができる。
【0035】
なお、本発明において骨材の粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布をもとに、算術平均して粒子径を算出できる。なお、上記平均粒子径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0036】
(ジオポリマー粉体の配合量)
骨材におけるジオポリマー粉体の添加量(Z)は、アルミノケイ酸塩100質量部に対して1~80質量部であることが好ましく、5~70質量部であることがより好ましく、10~50質量部であることがさらに好ましい。ジオポリマー粉体の配合量がこの範囲であると、ジオポリマー粉体が骨材として作用することにより強度が向上したジオポリマー発泡体の気泡構造を安定して得ることができる。
【0037】
なお、骨材として回収原料のジオポリマー粉体を用いる場合において、例えば、長期的にリサイクルを繰り返したジオポリマー粉体を用いる場合には、リサイクルの回数に比例してジオポリマー発泡体の強度が低下する可能性があるため、マイカを追加添加することが望ましい。
【0038】
(他の骨材)
また、本発明で用いる骨材としては、上記マイカ、ジオポリマー粉体のほか、本発明の効果を阻害しない範囲において他の骨材を配合することができる。他の骨材としては、例えば、ウォラストナイト、チョーク、タルク、モロカイト、コージエライト、玄武岩、長石、ジルコン、グラファイト、ホウ砂等を例示することができる。また、上記他の骨材は平均粒子径が50μm以上500μm以下の粉体であることが好ましい。
【0039】
(製造方法)
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法は、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材、及び水を含む反応スラリーを得、前記反応スラリーに発泡剤を添加して発泡性スラリーとし、前記発泡性スラリーを加熱することによりジオポリマー発泡体を得る。
【0040】
さらに具体的には、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、骨材、及び水を含む反応スラリーを得、前記反応スラリーにおいてアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させてジオポリマーを形成させるとともに、前記反応スラリーに発泡剤を添加して発泡性スラリーとし、前記発泡性スラリーを加熱することにより気泡を発生させ、ジオポリマー発泡体を得ることが好ましい。
【0041】
(反応スラリー)
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させて、ジオポリマーを含む反応スラリーを形成する。なお、水溶液(スラリー)中で、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させることにより、アルミニウムイオンが水溶液中に溶出すると共に、ケイ酸モノマー(ケイ酸、Si(OH))が生じる。このようにして生じたケイ酸モノマーと陽イオンとが重縮合することにより、SiO・AlOの四面体構造によるポリマーネットワークを有するジオポリマーが形成されると考えられる。
【0042】
具体的には、例えば、アルミノケイ酸塩、ジオポリマー粉体などの粉体原料混合物と、アルカリケイ酸塩と、水とを混合し、好ましくは、前記粉体原料混合物とアルカリケイ酸塩水溶液とを混合して、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させてジオポリマーを含む反応スラリーを形成する。
【0043】
なお、反応スラリーとは、前記粉体原料混合物の粒子やジオポリマー粉体、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応により生じたジオポリマー等の粒子の固体成分が、水に分散して存在している流動体を意味する。この反応スラリーにおいては、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とが完全に反応してジオポリマーが形成されている必要は無く、反応スラリーの一部として、形成されたジオポリマーが存在していればよい。また、反応スラリーにおける水の配合割合は25~45質量%が好ましく、30~40質量%がより好ましい。なお、スラリーの媒体は水を主成分とするものであるが、副成分として水溶性のアルコールなどを添加してもよい。
【0044】
(反応工程)
前記アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とが均一に反応スラリー中に分散され、さらに、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とが反応して、ジオポリマーが形成される。反応は、アルミノケイ酸塩がアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に添加された際に起こると考えられるが、反応をより効率的に行うためには、反応スラリーに加熱が行われることが好ましい。なお、反応スラリーを加熱する際には、同時に、後述する分解型発泡剤が加熱により分解して発泡が行われてもよく、反応と発泡とが同時並行的に進行してもよい。
【0045】
(Al/Si比)
前記アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応工程において、反応スラリーにおける、Alに対するSiのモル比Si/Alは0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。混合物のSi/Alのモル比がこの範囲であると、生成したジオポリマー発泡体中に、交換性陽イオンを適度に存在させることができるとともに、良好な気泡構造を形成することができる。
【0046】
(粘度)
後述の方法により測定される、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合し、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とが反応してなる反応スラリーの23℃における粘度は3000~15000mPa・sの範囲である。本発明において、反応スラリーの粘度は、上記の特定の骨材を用いることにより調整することができる。反応スラリーの粘度が上記範囲であれば、ジオポリマー粉体が分散した反応スラリーに剪断力が加えられることによる急激な粘度上昇が生じず、所望の均一な気泡の形成が容易となる。係る観点から、反応スラリーの粘度は3500~10000mPa・sであることが好ましく、4000~9000mPa・sであることがより好ましい。
【0047】
(その他添加剤)
ジオポリマー発泡体には、必要に応じて、発泡核剤、反応性材料や補強繊維等の他の材料を含有させることができる。発泡核剤としては、タルク、シリカ、金属石鹸等を例示することができる。発泡核剤を添加することにより、発泡剤の添加による発泡性を向上させることができる。反応性材料としては、例えば、ベントナイト、セピオライト、ミヌゲル及びアタパルジャイト粘土のような粘土、セメントバインダー、アルミン酸カルシウムセメント、有機ポリマーバインダー(例えばセルロースバインダー)等のうちの1種又は2種以上を例示することができる。反応性材料を添加することにより、発泡性スラリーの反応(硬化)時間を調整することができる。
【0048】
補強繊維は、ジオポリマー発泡体の強度向上やクラック防止を図る目的で添加することができる。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムウイスカー、アルミナ繊維、スチールウール、スラグウール等が挙げられる。補強繊維を添加することにより、発泡ジオポリマーの強度を高めることができる。その他の材料の添加量は、本発明の所期の目的を達成できる範囲であれば、特に限定されるものではないが、通常、ジオポリマー発泡体100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0049】
(発泡剤)
上記反応スラリーに添加する発泡剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ほう酸ナトリウムなどの分解型発泡剤や、非鉄金属粉末などを例示することができる。非鉄金属粉末としては、アルミニウム粉末を例示することができる。これらの中でも、発泡剤として、過酸化水素又は非鉄金属粉末を用いることが好ましく、過酸化水素を用いることがより好ましい。また、反応スラリーに発泡剤が添加されることにより発泡性スラリーが形成される。なお、この発泡性スラリーにおいて、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応は、完全に進行している必要は無く、少なくともその一部が反応している状態であればよい。
【0050】
発泡剤として過酸化水素を用いる場合、過酸化水素水として用いるのが好ましい。この場合、良好な気泡構造を有するジオポリマー発泡体が得られやすくなる観点からは、過酸化水素水中の過酸化水素の濃度は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
発泡剤の添加量は特に限定されないが、例えば、過酸化水素を添加する場合は、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましい。発泡剤の添加量を上記範囲とすることにより発泡性スラリーが十分に発泡し、良好な気泡構造を有するジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0052】
(気泡連通剤)
さらに、発泡工程では、発泡性スラリーを発泡させ、アルミノケイ酸塩とアルカリケイ酸塩の発泡性スラリー中に多数の気泡を形成し、かつ気泡間を連通させることができる。気泡連通剤としては、例えば、酵母や藻類などの微生物、タンパク質、界面活性剤などを使用することができる。なかでも、気泡連通剤は、酵母(ドライイーストなど)であることが好ましい。酵母の添加量は、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びジオポリマー粉体の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
(加熱)
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、前記発泡剤を含有する前記発泡性スラリーを加熱することにより、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応をさらに促進させるとともに、発泡剤を発泡させて気泡を形成させ、多数の気泡が形成されたジオポリマー発泡体を得ることができる。
【0054】
前記加熱の際の温度は、使用される発泡剤により決定することができるが、分解型の発泡剤の場合には、発泡剤の分解温度付近まで加熱されることが好ましい。特に、発泡剤として過酸化水素水を用いる場合には、加熱温度は50~80℃が好ましい。なお、上記の加熱による反応と発泡とは同時併行的に行われてもよい。
【0055】
(成形)
成形工程では、前記発泡性スラリーを成形型内に入れて、型内を加熱し、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とをさらに反応させるとともに、発泡剤を発泡させることにより、成形型の形状を有するジオポリマー発泡体の型内成形体を得ることができる。なお、各種成形方法を採用することにより、所望の形状に成形することができる。
【0056】
例えば、注型法を採用した場合には、前記発泡性スラリーが発泡することにより形成される気泡は、発泡剤添加後から30分~1時間程度経過するまでの間に成長し、気泡構造を形成する。
【0057】
(発泡成形体)
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、攪拌等により気泡を形成する物理的な発泡とは異なり、発泡剤の添加により徐々に気泡を成長させて発泡させるものであるため、気泡の微細化が起こりにくく、また気泡径のムラが少ない比較的均一な気泡構造を有する発泡体を得ることができる。また、特定のマイカの添加による反応スラリーの適度な粘度の上昇は、気泡の安定化にも寄与するため、ジオポリマー発泡体の気泡構造の構築がより容易となる。
【0058】
ジオポリマー発泡体の見掛け密度は、100kg/m以上500kg/m以下であることが好ましい。軽量性の観点からは、見掛け密度は105kg/m以上300kg/m以下であることがより好ましく、110kg/m以上200kg/m以下であることがさらに好ましい。
【0059】
また、ジオポリマー発泡体の最大気泡径は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。このような気泡径を有する気泡構造を形成できれば、強度に優れる気泡壁が形成され易くなる。係る観点から、最大気泡径は2mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0060】
上記の特性を有する本発明のジオポリマー発泡体は、安定した径の気泡が多数形成されており、優れた耐熱性と断熱性、高い強度を有することから、耐熱レンガとして特に好適に用いることができる。例えば、ジオポリマー発泡体を溶解炉の内壁材として使用することにより、炉壁温度が低下することが防止され、炉の保温性が高まることで、入力熱そのものを減少させることが可能となり、大幅な省エネルギー化が期待できる。
【実施例0061】
以下、本発明のジオポリマー発泡体の製造方法について、実施例とともに説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(ジオポリマー発泡体形成用原料)
以下の原料を用いて、ジオポリマー発泡体を作製した。
アルミノケイ酸塩:メタカオリン(Imerys社製:Argical M1200S、結晶化度0%)
アルカリ金属ケイ酸塩:ケイ酸カリウム(日本化学工業製:2K珪酸カリ)
発泡核剤:タルク(松村産業製:Hi-filler5000PJS)
発泡剤:過酸化水素水(富士フィルム和光純薬製:過酸化水素濃度30質量%)
骨材1-1:マイカ(Imerys社製:MU280)
骨材1-2:マイカ(Imerys社製:M814)
骨材1-3:マイカ(セイシン企業製:C100M)
骨材1-4:マイカ(セイシン企業製:C60M)
骨材1-5:マイカ(セイシン企業製:CS-35)
骨材2-1:粉砕品1(ジオポリマー発泡体の粉砕品)
骨材2-2:粉砕品2(ジオポリマー発泡体の粉砕品)
【0063】
(骨材として用いるジオポリマー粉体の製造)
骨材として用いるジオポリマー粉体として、まずジオポリマー発泡体を製造し、このジオポリマー発泡体を粉砕することによりジオポリマー粉体を得た。このジオポリマー粉体は、ジオポリマー発泡体の端材、屑などを回収し、リサイクル材として用いることを想定したものである。なお、リサイクル材を想定した上記のジオポリマーを製造するために用いる骨材としてはマイカを用いた。
【0064】
まず、メタカオリンと骨材としてのマイカを混合して粉体原料混合物を形成した。また、ケイ酸カリウム、水酸化カリウム、蒸留水を混合し、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液(濃度37%、pH=14以上)を作製した。また、骨材(マイカ)の配合量は、アルミノケイ酸塩100質量部に対して96質量部となるように配合した。
【0065】
次に、粉体原料混合物100質量部に対してアルカリ金属ケイ酸塩水溶液が104部となるように混合し、撹拌速度60rpmで攪拌し、反応スラリーを形成した。
【0066】
次に、反応スラリーに、発泡剤(30%過酸化水素水)を反応スラリー100質量部に対して1.5部添加し、攪拌ベラを用いて、撹拌速度60rpmで1分間攪拌することで発泡性スラリーを形成した。その後、任意の型枠(成型型)内に発泡性スラリーを注入して成形型を密閉し、温度60℃で加熱して成形型を1時間保持することで、ジオポリマー型内発泡体を得た。
【0067】
その後、ジオポリマー発泡体を、自動乳鉢(日陶科学ALG-200WD)を用いて粉砕し、目開きの異なるふるいを使用して粒径を分けることにより、表1、表2に示す粒度分布の粉砕品1及び粉砕品2のジオポリマー粉体を得た。
【0068】
(ジオポリマー発泡体の製造方法)
まず、アルミノケイ酸塩(メタカオリン)と発泡核剤としてのタルク、また、骨材としてのマイカ、上記ジオポリマー粉体を表1、表2に示す割合で混合し、粉体原料混合物を形成した。また、ケイ酸カリウムと蒸留水を混合してアルカリ金属ケイ酸塩水溶液(ケイ酸カリウム濃度37%、pH=14以上)を作製した。
【0069】
次に、粉体原料混合物とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを表1、表2に示す割合で混合し、撹拌速度60rpmで攪拌し、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させて反応スラリーを形成した。また、反応スラリーには表1、表2に示す割合で発泡剤(30%過酸化水素水)を添加し、攪拌ベラを用い、撹拌速度60rpmで1分間攪拌し、発泡性スラリーとした。
【0070】
その後、直径90mm、高さ60mmの円柱状の成形空間を有する型枠(成形型)内に発泡性スラリーを注入して成形型を密閉し、温度60℃で成形型を1時間保持することで、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを完全に反応させると共に、発泡性スラリーを発泡させて、ジオポリマー発泡体を得た。さらに取り出したジオポリマー発泡体を60℃で約1日保持することで乾燥させた。
【0071】
(測定及び評価)
上記製造に用いた骨材の平均粒子径、反応スラリーの粘度、また、上記方法で作製した実施例1~10及び比較例1~6のジオポリマー発泡体の成形体密度、最大気泡径、平均最大点応力を以下の方法で測定し、反応スラリーの粘度制御性及び発泡体の状態を以下の方法で評価した。その結果を表1、表2に示す。
(骨材の平均粒子径)
骨材(マイカ及びジオポリマー粉体)の平均粒子径は、JIS Z 8825:2013に基づき、HORIBA製Laser Scattering Particle Size Distribution Partica LA-960を使用して測定した。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定対象の体積基準の粒度分布を測定するとともに、体積平均径を平均粒子径として算出した。
【0072】
(反応スラリーの粘度)
反応スラリーの粘度は、アタゴ製ATAGO VISCOを使用して測定した。具体的には、90mLのポリスチレン製カップに60mLの反応スラリーを入れ、測定範囲A3のスピンドルを用い、60rpmで撹拌した際のスラリーの粘度を測定した。なお、粘度の測定は、アルミノケイ酸塩と、ジオポリマー粉体(粉体原料混合物)と、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合して撹拌した後5分経過時の、加熱前の反応スラリーの粘度(常温23℃)を測定した。上記の操作を最低5回行い、その平均値を反応スラリーの濃度とした。
【0073】
(成形体密度)
ジオポリマー発泡体の成形体密度は、発泡体のスキン部分(成形型に隣接して成形された部分)を削除したサンプルに対して、サンプルの見掛け体積及び質量を測定し、質量を見掛け体積で除して単位換算することにより算出した。
【0074】
(最大気泡径)
ジオポリマー発泡体の最大気泡径は、円柱状測定サンプルのスキン部を有していない円状の切断面の任意の部分を20倍に拡大投影し、個々の気泡部分の最大径を測定した。その中から最大径の大きい順に5つの値の平均値を最大気泡径とした。
【0075】
(平均最大点応力)
ジオポリマー発泡体の圧縮強度(最大点応力)は、測定装置として島津製作所製「オートグラフAG-500B」を用いて測定した。まず、柱軸方向における上下面(底面)にスキン部を有していない直径90mm、高さ50mmの円柱状の測定サンプルを測定装置に配置し、測定サンプルの高さ方向と一致する方向に於いて、測定サンプルに圧縮荷重を加えた、この際の圧縮速度は1mm/minとした。測定サンプルの変位が5mmとなるまで圧縮試験を行い、この測定に於いて最大となる応力(最大点応力)を求め、この値を圧縮強度とした。なお、測定サンプルは5個準備し、その平均値を平均最大点応力とした。
【0076】
(反応スラリーの粘度制御性)
反応スラリーの粘度制御性を以下の基準で評価した。
〇:(撹拌速度60rpmにおける撹拌が可能である
×:(撹拌速度60rpmにおける撹拌ができず、団子状になる。
【0077】
<実施例1~10>
実施例1~4では、骨材としてマイカのみを、また、実施例5~10では、マイカ及びジオポリマー粉体を表1、表2に示す割合で使用してジオポリマー発泡体を得た。ジオポリマー発泡体の製造過程において、反応スラリーの過度な粘度上昇は見られず、非常に良好な気泡を有するジオポリマー発泡体を得ることができた。また、得られたジオポリマー発泡体は強度に優れるものであった。
【0078】
<比較例1、4~6>
骨材として、10μm以下の割合が本発明で規定する値より多い(3.6%)のマイカを使用した。その結果、反応スラリーの粘度が測定不能なほど上昇し、ジオポリマー発泡体を得ることができなかった。
【0079】
<比較例2、3>
骨材として、ジオポリマー粉体(粉砕品)のみを使用した。調整した反応スラリーの粘度制御性は、実施例1~10と比較して非常に劣るものであった。
【0080】
<実施例及び比較例の対比>
実施例1~10に示したように、骨材であるマイカ及びジオポリマー粉体中の、平均粒子径、粒子径10μm以下の粒子の体積割合及び、反応スラリーの粘度を本発明の規定の範囲とすることにより、反応スラリーの粘度が良好であり、優れた強度のジオポリマー発泡体が得られることが確認された。
【0081】
一方、比較例1、4~6に示したように、骨材であるマイカの、粒子径10μm以下の粒子の体積割合が5%より大きい場合、また、比較例2、3に示すように、骨材としてジオポリマー粉体(粉砕品)のみを使用した場合には、反応スラリーの粘度制御性が著しく悪化し、所望の気泡径及び強度を有するジオポリマー発泡体を得ることが困難であることが確認された。
【0082】
(得られたジオポリマー成形体のリサイクル性の評価)
実施例5~10、比較例2~6において、ジオポリマー粉体を骨材として使用した場合には、リサイクルを繰り返すごとに、ジオポリマー発泡体中のマイカの配合量(ジオポリマー粉体中のマイカの量も含む)が減少し、最終的に、ジオポリマー発泡体中のマイカの配合割合は一定値となる。この一定値は、ジオポリマー粉体の配合量と関連している。ジオポリマー粉体の配合量が29質量部の場合にはジオポリマー発泡体中のマイカの配合割合(収束値)は28%となり、ジオポリマー粉体の配合量が48質量部の場合にはジオポリマー発泡体中のマイカの配合割合(収束値)は22%となり、ジオポリマー粉体の配合量が67質量部の場合にはジオポリマー発泡体中のマイカの配合割合(収束値)は15%となる。また、骨材としてジオポリマー粉体のみを用いて配合量が96質量部とした場合にはジオポリマー発泡体中のマイカの配合割合(収束値)はほぼ0%に近くなる。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】