IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液圧回転機 図1
  • 特開-液圧回転機 図2
  • 特開-液圧回転機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150339
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】液圧回転機
(51)【国際特許分類】
   F03C 1/253 20060101AFI20231005BHJP
   F04B 1/324 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
F03C1/253
F04B1/324
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059405
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
【テーマコード(参考)】
3H070
3H084
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070BB06
3H070BB12
3H070CC34
3H070DD52
3H084AA08
3H084AA12
3H084AA16
3H084BB26
3H084CC32
3H084CC35
3H084CC50
(57)【要約】
【課題】液圧回転機を小型化する。
【解決手段】ピストンモータ100は、シリンダブロック2の回転に伴って容積室4aを拡縮するようにピストン4を往復動させる傾転可能な斜板5と、斜板5の傾転を制御するサーボレギュレータ20と、を備え、サーボレギュレータ20は、斜板5に当接し油圧を受けて斜板5を揺動させるサーボピストン21と、サーボピストン21に作用する油圧を制御するスプール30と、スプール30の作動を制御するソレノイド25と、斜板5の傾転に追従して移動するフィードバックピン50と、スプール30とフィードバックピン50との間に圧縮状態で設けられるスプリング55と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と共に回転するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに形成され前記回転軸の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入され前記シリンダの内部に容積室を区画するピストンと、
前記シリンダブロックの回転に伴って前記容積室を拡縮するように前記ピストンを往復動させる傾転可能な斜板と、
前記斜板の傾転角を制御するサーボレギュレータと、を備え、
前記サーボレギュレータは、
前記斜板に当接し流体圧を受けて前記斜板を揺動させるサーボピストンと、
前記サーボピストンに作用する前記流体圧を制御するスプールと、
前記スプールの作動を制御するソレノイドと、
前記斜板の傾転に追従して移動する移動部材と、
前記スプールと前記移動部材との間に圧縮状態で設けられる付勢部材と、を有することを特徴とする液圧回転機。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧回転機であって、
前記移動部材は、前記斜板に当接する前記サーボピストンの端部に当接し、前記サーボピストンの移動に対向して移動することを特徴とする液圧回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液圧回転機として、可変容量型のピストンポンプと、ピストンポンプに取り付けられピストンポンプの斜板の傾転を制御するサーボレギュレータと、を備えたポンプ装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のポンプ装置では、ピストンポンプの斜板にアームを介してサーボレギュレータのサーボピストンが連結される。
【0003】
アームは、ピンおよびスライドメタルを介して、サーボピストンに形成される環状溝に連結される。このため、サーボピストンが軸方向に移動すると、スライドメタルがサーボピストンとともに移動し、アームが回動し、斜板が傾転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-150870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のポンプ装置では、サーボピストンの変位を斜板に伝達するために、サーボピストンに係合するスライドメタルと、スライドメタルの変位によって斜板を回動するアームと、を備えている。このように、従来の液圧回転機では、スライドメタル及びアームが設けられることで部品点数が増加し、ひいては装置の大型化を招いていた。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、サーボレギュレータを備える液圧回転機を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液圧回転機であって、シリンダブロックの回転に伴って容積室を拡縮するようにピストンを往復動させる傾転可能な斜板と、斜板の傾転角を制御するサーボレギュレータと、を備え、サーボレギュレータは、斜板に当接し流体圧を受けて斜板を揺動させるサーボピストンと、サーボピストンに作用する流体圧を制御するスプールと、スプールの作動を制御するソレノイドと、斜板の傾転に追従して移動する移動部材と、スプールと移動部材との間に圧縮状態で設けられる付勢部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明では、サーボピストンを斜板に当接させ、サーボレギュレータによって制御された流体圧を受けてサーボピストンが斜板を押圧する構成とすることで、サーボピストンの移動を斜板の傾転に変換するアームを廃止することができる。
【0009】
また、本発明は、移動部材が、斜板に当接するサーボピストンの端部に当接し、サーボピストンの移動に対向して移動することを特徴とする。
【0010】
この発明では、サーボピストンの端部には、斜板と共に移動部材が当接する。斜板及び移動部材が当接する程度にサーボピストンの径を大きくすることで、流体圧を受ける受圧面積が大きくなるため、サーボピストンから斜板に作用する力を大きく確保できる。これにより、斜板の回転によって生じる傾転モーメントの影響を相対的に小さくすることができ、斜板を所望の傾転角に制御しやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サーボレギュレータを備える液圧回転機を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る液圧回転機の断面図である。
図2図1におけるA部拡大図であり、ソレノイドに通電されていない状態を示す図である。
図3図1におけるA部拡大図であり、ソレノイドに通電された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る液圧回転機としてのピストンモータ100について説明する。
【0014】
ピストンモータ100は、外部から供給される作動流体としての作動油の油圧(流体圧)によりピストン4が往復動して回転軸1が回転することで、回転駆動力を出力する。
【0015】
以下の説明では、ピストンモータ100を静油圧式無段変速機(HST:Hydro Static Transmission)に利用されるピストンモータとして使用した場合について説明する。HSTは、例えば、建設機械等の車両に利用されるものであり、エンジン等の駆動源によって駆動される可変容量型のピストンポンプと、車両の駆動輪を駆動する走行用モータであるピストンモータ100と、ピストンポンプとピストンモータ100とを接続する閉回路(図示省略)と、を備える。ピストンポンプから供給される作動油によって走行用モータであるピストンモータ100が回転駆動される。
【0016】
図1に示すように、ピストンモータ100は、斜板5の角度に応じて押しのけ容積が設定される斜板式油圧モータである。ピストンモータ100は、押しのけ容積が変わることで、シリンダブロック2、ひいては回転軸1の出力回転速度が変更される。
【0017】
本実施形態では、斜板5の角度は、回転軸1に対して垂直(言い換えると、傾転角が0°)である中立状態から一方側に傾いた範囲内で調整される。つまり、中立状態から一方側へ傾斜した角度を正の範囲とすると、斜板5は、傾斜角度の負の状態にはならず、常に傾斜角度が正となる範囲内で角度が調整される。さらにいうと、ピストンモータ100は、斜板5の最大傾斜角及び最小傾斜角が、いずれも正の角度範囲内となるように構成されている。
【0018】
ピストンモータ100は、第1ポート(図示省略)及び第2ポート(図示省略)に選択的に供給される作動油によって回転軸1が正方向又は逆方向に回転する。このように、ピストンモータ100は、双方向回転するモータである。
【0019】
ピストンモータ100は、ハウジング10と、ハウジング10を貫通するように設けられる回転軸1と、ハウジング10内に収容され回転軸1とともに回転するシリンダブロック2と、シリンダブロック2に形成される複数のシリンダ3と、各シリンダ3内に摺動自在に挿入されるピストン4と、ハウジング10内で揺動可能(回動可能)に設けられる斜板5と、を備える。
【0020】
ハウジング10は、有底筒状のハウジング本体11と、ハウジング本体11の開口端を封止し回転軸1が挿通するカバー12と、を有する。
【0021】
回転軸1は、ハウジング10に取り付けられる軸受9a,9bによって回転可能に支持される。
【0022】
シリンダブロック2は、ハウジング10内に収容される。シリンダブロック2は、回転軸1の外周側に設けられる。シリンダブロック2は、回転軸1の外周側にスプライン結合され、回転軸1と一体に回転駆動される。複数のシリンダ3は、周方向に沿って、所定の間隔をもって配置される。複数のシリンダ3は、回転軸1の軸方向に沿って延在する。
【0023】
シリンダ3内にはピストン4が摺動自在に収容され、ピストン4によってシリンダ3の内部に容積室4aが画定される。ハウジング10のカバー12には、シリンダブロック2とカバー12との間に設けられたバルブプレート7に形成されるポート(図示省略)を通じて容積室4aに作動油を給排する第1ポート及び第2ポートが形成される。容積室4aは、シリンダブロック2の回転に伴って、第1ポート及び第2ポートに交互に連通する。
【0024】
ピストン4の一端は、ピストンシュー8を介して斜板5に接触する。ピストンポンプから各容積室4aに導かれる油圧によって各ピストン4がシリンダ3から突出し、ピストン4がピストンシュー8を介して斜板5を押すことによってシリンダブロック2が回転する。これにより、回転軸1が回転する。回転軸1の回転は、車両の駆動輪に伝達される。
【0025】
ピストンモータ100では、回転軸1の回転中心軸に対する斜板5の角度(傾転角)を変えることで、ピストン4のストローク量が変更される。これにより、ピストンモータ100の回転軸1の出力回転速度を変化させることが可能となる。
【0026】
ピストンモータ100は、斜板5の傾転角を調整するサーボレギュレータ20を備える。
【0027】
サーボレギュレータ20は、斜板5に当接し油圧を受けて斜板5を揺動させるサーボピストン21と、サーボピストン21に作用する油圧を制御するスプール30と、スプール30の作動を制御するソレノイド25と、斜板5の傾転に追従して移動する移動部材としてのフィードバックピン50と、スプール30とフィードバックピン50との間に圧縮状態で設けられる付勢部材としてのスプリング55と、サーボピストン21による斜板5の傾転に抗するように斜板5を押圧する反力機構60と、を有する。
【0028】
サーボピストン21は、中心軸が回転軸1と平行に設けられ、斜板5の外周縁の一部に対向する円柱状の部材である。斜板5に対向するサーボピストン21の一端面(以下、「接触面21a」と称する。)は、サーボピストン21の中心軸に垂直な平坦面に形成される。サーボピストン21の接触面21aには、斜板5に設けられる球状の受け座5aを介して斜板5が接触する。なお、受け座5aは、球状に限定されず、サーボピストン21の接触面21aに接触する円筒面を有する円柱状に形成されてもよい。
【0029】
斜板5に対向する接触面21aとは反対側のサーボピストン21の端面には、凹部22が形成される。凹部22には、ハウジング10のカバー12に設けられたボス部13が挿入される。サーボピストン21の凹部22とボス部13とによって、圧力室23が形成される。サーボピストン21には、圧力室23に導かれる油圧によって斜板5に向かう推力が作用する。これにより、斜板5は、サーボピストン21により押圧されて揺動する。
【0030】
ハウジング本体11には、円筒状のスリーブ40を収容するスリーブ収容孔11aが形成される。スリーブ収容孔11aは、回転軸1に平行に延びており、一端がハウジング10の内部に開口し、他端がハウジング本体11の端面に開口する。また、ハウジング本体11には、流体圧源である油圧ポンプ(図示省略)から供給される元圧を導く元圧通路15と、圧力室23に油圧(信号圧)を導く信号圧通路16と、が形成される。信号圧通路16は、ハウジング本体11、カバー12、及びボス部13にわたって形成される。図1では、信号圧通路16の一部を破線で簡略化して図示している。
【0031】
図2に示すように、スリーブ40には、スプール30を収容するスプール収容孔40aが形成される。スプール収容孔40aは、スリーブ40の軸方向両端面のそれぞれに開口する。スプール収容孔40aは、スリーブ40がスリーブ収容孔11aに取り付けられた状態において、回転軸1と平行に延びる。
【0032】
また、スリーブ40には、ハウジング本体11の元圧通路15に連通する元圧ポート41と、ハウジング本体11の信号圧通路16に連通する信号圧ポート42と、が形成される。元圧ポート41及び信号圧ポート42のそれぞれは、スリーブ40の外周面及び内周面(スプール収容孔40aの内周面)に開口する。
【0033】
スプール30は、スリーブ40のスプール収容孔40aに摺動自在に挿入される。スプール30は、スプール収容孔40aの内周面に摺接する第1ランド部31及び第2ランド部32と、第1ランド部31と第2ランド部32との間に形成される環状溝33と、を有する。つまり、第1ランド部31と第2ランド部32とは、環状溝33によって隔てられる。
【0034】
スリーブ収容孔11aから突出するスプール30の端部には、スプリング55が着座するばね座56を支持するフランジ部34と、ばね座56に挿入される挿入部35と、が設けられる。
【0035】
ソレノイド25は、通電によって生じる電磁力によってスプール30を軸方向に移動させる。ソレノイド25は、ハウジング本体11の端面に対するスリーブ収容孔11aの開口を塞ぐようにして、ハウジング本体11の端面に取り付けられる。ソレノイド25への通電は、コントローラ(図示省略)によって制御される。
【0036】
フィードバックピン50は、図1に示すように、スリーブ40とサーボピストン21との間にスプール30と同軸上に配置される棒状部材である。フィードバックピン50は、スリーブ収容孔11aに摺動自在に挿入される。フィードバックピン50の軸方向の一端面は、サーボピストン21の一端部において斜板5に接触する接触面21aに接触している。サーボピストン21に接触する一端面とは反対側のフィードバックピン50の端面には、図2に示すように、ばね収容凹部50aが設けられる。
【0037】
また、スリーブ収容孔11a内であってスリーブ40とフィードバックピン50との間には、中間室45が形成される。ハウジング本体11の内部は、タンク圧とされ、中間室45はハウジング本体11に形成されるドレン通路(図示省略)を通じてハウジング本体11の内部に連通する。サーボピストン21の移動に伴って圧力室23から排出される作動油は、信号圧通路16から中間室45及びドレン通路を通じてハウジング本体11の内部へ排出される。
【0038】
スプリング55は、コイルスプリングであり、フィードバックピン50のばね収容凹部50a内において、スプール30とフィードバックピン50との間に圧縮状態で設けられる。具体的には、スプリング55は、スプール30のフランジ部34に支持されたばね座56に一端が着座し、ばね収容凹部50aの底部に他端が着座する。よって、フィードバックピン50は、スプリング55の付勢力によってサーボピストン21に押し付けられる。これにより、フィードバックピン50は、サーボピストン21の動き、ひいては、斜板5の傾転(揺動)に追従する。
【0039】
反力機構60は、サーボピストン21による斜板5の傾転(揺動)に抗するように斜板5に対して推力を発揮するものである。反力機構60は、受け座5aを介して斜板5に接触し斜板5を押圧するピストン61と、一定圧の油圧が供給され斜板5に向かう推力をピストン61に作用させる圧力室62と、斜板5に向けてピストン61を付勢するスプリング63と、カバー12に取り付けられピストン61の移動を案内するガイド軸部64と、を有する。
【0040】
ピストン61は、回転軸1の周方向においてサーボピストン21から180°離間した位置に設けられる。ガイド軸部64は、ピストン61に挿入され、ピストン61とガイド軸部64とによって、圧力室62が形成される。圧力室62には、ガイド軸部64とハウジング10にわたって形成される供給通路(図示省略)を通じて、一定圧の油圧が供給される。スプリング63は、ピストン61とガイド軸部64との間に圧縮した状態で設けられる。反力機構60は、略一定の推力によって斜板5を付勢する。なお、反力機構60は、本実施形態の構成に限定されず、斜板5に対して推力を発揮できる限り、任意の構成とすることができる。
【0041】
次に、サーボレギュレータ20の作動について説明する。
【0042】
ソレノイド25への通電が遮断された状態では、スプール30は、スプリング55の付勢力によってソレノイド25に向けて押し付けられる。この状態では、スリーブ40の元圧ポート41と信号圧ポート42との連通は、スプール30の第2ランド部32によって遮断される(図2参照)。このため、ハウジング本体11の信号圧通路16には、外部の油圧ポンプからの油圧が導かれず、圧力室23にも油圧は導かれない。この状態では、斜板5は、反力機構60からの推力によって傾転角が最大の状態となる(図1及び図2の状態)。
【0043】
ソレノイド25へ電流が供給されると、供給される電流値に応じてスプール30がサーボピストン21に向けてスプリング55の付勢力に抗して移動する。これにより、図3に示すように、スリーブ40の元圧ポート41と信号圧ポート42とが、スプール30の移動量に応じた所定の開度により環状溝33を通じて連通する。元圧通路15を通じて導かれる元圧がスプール30の開度に応じて減圧され、これにより信号圧が生成される。生成された信号圧は、スリーブ40の信号圧ポート42及びハウジング10の信号圧通路16を通じて圧力室23に導かれる。
【0044】
圧力室23に信号圧が導かれると、信号圧の大きさに応じて斜板5を押圧する推力がサーボピストン21に作用する。サーボピストン21の推力が反力機構60の推力を上回ると、斜板5は傾転角が小さくなるように傾転する。斜板5の傾転により、ピストンモータ100の回転速度が変化する。
【0045】
サーボピストン21が移動して斜板5が傾転するのに伴い、フィードバックピン50がスプリング55の付勢力に抗して移動する。その結果、スプリング55が圧縮されて、スプリング55が発揮する付勢力が大きくなる。このように、フィードバックピン50は、サーボピストン21の移動すなわち斜板5の傾転角の変化に応じてスプリング55の付勢力を変化させる。
【0046】
スプリング55の付勢力が変化すると、スプール30は、スプリング55の付勢力と、ソレノイド25の推力と、が釣り合うように移動する。これにより、スプール30の開度が所定の開度で維持され、圧力室23の圧力は、サーボピストン21を所望の位置で保つように調整される。その結果、ピストンモータ100の斜板5の傾転角が所望の角度に維持される。
【0047】
このように、サーボレギュレータ20によれば、ソレノイド25によってスプール30を駆動し、圧力室23内の圧力を制御して、サーボピストン21の位置を変更することで、ピストンモータ100の斜板5の傾転を制御することができる。
【0048】
例えば、特開2008-240518号公報に記載のような従来のポンプ装置では、ピストンポンプの斜板にアームを介してサーボレギュレータのサーボピストンが連結される。アームは、ピンおよびスライドメタルを介して、サーボピストンに形成される環状溝に連結される。このため、サーボピストンが軸方向に移動すると、スライドメタルがサーボピストンとともに移動し、アームが回動し、斜板が傾転する。このようなポンプ装置では、斜板を傾転させるためにアーム及びスライドメタルといった部品を用いているため、部品点数が多く、装置が大型化しやすい。
【0049】
これに対し、本実施形態のピストンモータ100では、サーボピストン21を斜板5に当接させ、サーボレギュレータ20によって制御された油圧を受けてサーボピストン21が斜板5を押圧する構成である。このように、サーボピストン21が斜板5を直接押圧する構成とすることで、サーボピストン21の移動を斜板5の傾転に変換するアーム及びスライドメタルを廃止することができる。よって、ピストンモータ100を小型化することができる。また、アームを用いない構成であるため、アームと連結するための環状溝をサーボピストン21に形成する必要もない。このため、サーボピストン21の加工工数を低減することができる。
【0050】
また、特開2008-240518号公報に記載のポンプ装置は、サーボピストンに作用する圧力を制御するスプールと、スプールを付勢するスプールスプリングと、スプールスプリングの付勢力を変化させるフィードバックリンクと、を有しており、フィードバックリンクは、サーボピストンに連結されている。このポンプ装置では、フィードバックリンクが回転することでサーボピストンの変位、ひいては斜板の傾転がフィードバックされる。このように、従来のポンプ装置では、斜板の傾転をフィードバックするために、サーボピストンの変位に伴って回動するフィードバックリンクが設けられる分、装置が大型化してしまう。
【0051】
これに対し、本実施形態では、フィードバックピン50は、サーボピストン21に当接する構成である。リンクの回動によって斜板5の変位をフィードバックする構成ではないため、装置の構成を簡略化・小型化することができる。
【0052】
また、本実施形態のピストンモータ100は、双方向に回転するモータである。双方向に回転する斜板式のピストンモータの場合、シリンダブロックの回転によって生じる斜板の傾転モーメントの方向も二方向となるため、一方向にのみ回転するピストンモータと比較して、傾転モーメントを抑制しにくい。つまり、一方向に回転する場合には、その回転によって生じる傾転モーメントを打ち消すように、例えば、バルブプレートの形状を調整することで、傾転モーメントの影響を抑制することができる。一方、双方向に回転する場合、二方向の傾転モーメントの両方を打ち消すように調整することは、困難である。斜板の傾転モーメントが大きいと、サーボピストンによって斜板を押圧しても斜板を所望の傾転角に制御することが難しくなる。
【0053】
これに対し、本実施形態では、サーボピストン21の接触面21aには、斜板5及びフィードバックピン50が接触する。言い換えると、サーボピストン21の径は、斜板5及びフィードバックピン50を接触させることができる程度に、大きな径とされる。このように、サーボピストン21の径を比較的大きくすることで、シリンダブロック2の回転により生じる斜板5の傾転モーメントに対して、サーボピストン21の推力を相対的に大きくすることができる。このため、双方向に回転するピストンモータ100であっても、傾転モーメントの影響を抑制して、斜板5の傾転角を所望のものに制御することができる。
【0054】
また、一般に、ピストンモータが高速で回転する場合、特に斜板の傾転角が小さい場合には、斜板からサーボピストンへの反力(図1においてサーボピストン21を下方に向けて押圧する力)が大きくなる。これに対し、本実施形態では、サーボピストン21の径を大径化できるため、斜板5の傾転角が小さい状態でピストンモータ100が高速回転して斜板5からの反力が大きくなっても、当該反力に対抗して斜板5を付勢する付勢力を確保することができる。
【0055】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0056】
上記実施形態では、液圧回転機としてHSTに利用されるピストンモータ100について説明した。これに対し、液圧回転機は、HST以外の用途で利用されるピストンモータであってもよい。また、液圧回転機は、ピストンモータ100に限定されず、ピストンポンプであってもよい。
【0057】
上記実施形態では、フィードバックピン50は、サーボピストン21に接触し、サーボピストン21に追従して移動する。これに対し、フィードバックピン50は、サーボピストン21を介さず斜板5の揺動が直接伝達されて、斜板5の揺動に追従して移動する構成でもよい。このような構成としては、例えば、フィードバックピン50が斜板5に直接接触する構成でもよいし、斜板5及びフィードバックピン50に連結される伝達部材を介して斜板5の揺動がフィードバックピン50に伝達される構成でもよい。
【0058】
上記実施形態では、ピストンモータ100は、斜板5の傾転角が一方向(正の方向)の範囲内で調整される。これに対し、ピストンモータ100は、斜板5が中立状態から二方向に傾転するように、傾転角が制御されるものであってもよい。
【0059】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0060】
ピストンモータ100は、回転軸1と共に回転するシリンダブロック2と、シリンダブロック2に形成され回転軸1の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダ3と、シリンダ3内に摺動自在に挿入されシリンダ3の内部に容積室4aを区画するピストン4と、シリンダブロック2の回転に伴って容積室4aを拡縮するようにピストン4を往復動させる傾転可能な斜板5と、斜板5の傾転を制御するサーボレギュレータ20と、を備え、サーボレギュレータ20は、斜板5に当接し油圧を受けて斜板5を揺動させるサーボピストン21と、サーボピストン21に作用する油圧を制御するスプール30と、スプール30の作動を制御するソレノイド25と、斜板5の傾転に追従して移動するフィードバックピン50と、スプール30とフィードバックピン50との間に圧縮状態で設けられるスプリング55と、を有する。
【0061】
この構成では、サーボピストン21を斜板5に当接させ、サーボレギュレータ20によって制御された油圧を受けてサーボピストン21が斜板5を押圧する構成とすることで、サーボピストン21の移動を斜板5の傾転に変換するアームを廃止することができる。したがって、ピストンモータ100を小型化することができる。
【0062】
また、ピストンモータ100では、フィードバックピン50は、斜板5に当接するサーボピストン21の端部に当接し、サーボピストン21の移動に対向して移動する。
【0063】
この構成では、サーボピストン21の端部には、斜板5と共にフィードバックピン50が当接する。斜板5及びフィードバックピン50が当接する程度にサーボピストン21の径を大きくすることで、油圧を受ける受圧面積が大きくなるため、サーボピストン21から斜板5に作用する力を大きく確保できる。これにより、斜板5の回転によって生じる傾転モーメントの影響を相対的に小さくすることができ、斜板5を所望の傾転角に制御しやすくなる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0065】
100…ピストンモータ(液圧回転機)、1…回転軸、2…シリンダブロック、3…シリンダ、4…ピストン、4a…容積室、5…斜板、20…サーボレギュレータ、21…サーボピストン、25…ソレノイド、30…スプール、50…フィードバックピン(移動部材)、55…スプリング(付勢部材)
図1
図2
図3