(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015035
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】透析デバイスおよび透析システムのための吸着剤
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230124BHJP
A61M 1/28 20060101ALI20230124BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20230124BHJP
B01J 39/02 20060101ALI20230124BHJP
B01J 39/09 20170101ALI20230124BHJP
B01J 41/02 20060101ALI20230124BHJP
B01J 41/10 20060101ALI20230124BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20230124BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61M1/16 190
A61M1/28 105
B01J20/06 B
B01J39/02
B01J39/09
B01J41/02
B01J41/10
B01J20/04 A
B01J20/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162006
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2019529958の分割
【原出願日】2017-12-05
(31)【優先権主張番号】10201610175P
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(71)【出願人】
【識別番号】510338259
【氏名又は名称】テマセク ポリテクニック
【氏名又は名称原語表記】TEMASEK POLYTECHNIC
(71)【出願人】
【識別番号】518049809
【氏名又は名称】アワック テクノロジーズ ピーティーイー エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】AWAK TECHNOLOGIES PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルチェル、クリスチャン ガート
(72)【発明者】
【氏名】ヘイウッド、ピーター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤を提供する。
【解決手段】吸着剤は、可溶性のナトリウムイオン供給源を含む。吸着剤は、尿素をアンモニウムイオンに変換し、アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、Ca、MgおよびKを主にナトリウムイオンと交換するように形成されている、イオン交換システムを構成する。可溶性のナトリウムイオン供給源によって、再生透析液中のナトリウム濃度の初期低下が克服される。透析液の再生中にナトリウムとCa、MgおよびKとの交換を利用するように形成された注入システムとともに使用されるとき、所望のナトリウムイオン濃度を維持することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、該吸着剤は、(a)固
体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症毒素処理酵素粒子;(b)アン
モニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンを主にナトリウムイオンと交
換するように形成された、陽イオン交換粒子;および(c)陰イオン交換粒子の均一な混
合物を含み、可溶性のナトリウムイオン供給源をさらに含む、吸着剤。
【請求項2】
前記可溶性のナトリウムイオン供給源が、可溶性塩である、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記可溶性塩が、塩基性塩である、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記可溶性塩が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからな
る群の1つ以上から選択される、請求項3に記載の吸着剤。
【請求項5】
前記可溶性塩が、炭酸水素ナトリウムである、請求項4に記載の吸着剤。
【請求項6】
前記可溶性塩が、中性塩または弱酸の塩である、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記可溶性のナトリウムイオン供給源の粒子を含む、請求項1~6のいずれか1項に記
載の吸着剤。
【請求項8】
前記陽イオン交換粒子が、3.5~5.0の範囲内、好ましくは、約4.5のpHに設
定されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項9】
前記陽イオン交換粒子が、非晶質で非水溶性の金属リン酸塩をプロトン化型で含む、請
求項1~8のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項10】
前記金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからなる群
より選択される、請求項9に記載の吸着剤。
【請求項11】
前記金属が、ジルコニウムである、請求項10に記載の吸着剤。
【請求項12】
前記陰イオン交換粒子が、7~14、好ましくは、12~13の範囲内のpHに設定さ
れている、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項13】
前記陰イオン交換粒子が、非晶質かつ部分的に水和した非水溶性の金属酸化物を水酸化
物対イオン型、炭酸対イオン型、酢酸対イオン型および/または乳酸対イオン型で含み、
該金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より
選択され得る、請求項1~12のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項14】
前記陰イオン交換粒子が、含水酸化ジルコニウム粒子である、請求項13に記載の吸着
剤。
【請求項15】
陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比が、1:1~5:1の範囲内、好ましくは
、2:1~3:1の範囲内、より好ましくは、約2.4:1である、請求項1~14のい
ずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項16】
前記尿毒症毒素処理酵素粒子が、ウレアーゼを含む、請求項1~15のいずれか1項に
記載の吸着剤。
【請求項17】
有機化合物吸収体粒子をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項18】
炭酸脱水酵素をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項19】
吸着剤を調製するプロセスであって、可溶性のナトリウムイオン供給源の粒子と、(a
)固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症毒素処理酵素粒子;(b)
アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンをナトリウムイオンと交
換するように形成された、陽イオン交換粒子;(c)陰イオン交換粒子;および(d)有
機化合物吸収体粒子のうちの少なくとも1つとを混合する工程および該混合物を含める工
程を含む、プロセス。
【請求項20】
不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、その吸着剤は、可溶性
のナトリウムイオン供給源を含む、吸着剤。
【請求項21】
不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、該吸着剤は、尿素をア
ンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し、主にプロトンと交換にアンモニウムに結
合する、吸着剤。
【請求項22】
不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、該吸着剤は、ナトリウ
ムイオンと交換に必須の陽イオンに主に結合する、吸着剤。
【請求項23】
不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、該吸着剤は、(a)尿
素をアンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し、(b)主にプロトンと交換にアン
モニウムに結合し、主にナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに結合する、吸着剤。
【請求項24】
カートリッジ内に含められた、請求項1~23のいずれか1項に記載の吸着剤を含む、
吸着剤カートリッジ。
【請求項25】
透析液を処理し、再利用するための透析システムであって、そのシステムは、吸着剤に
おけるイオン交換の後に予測量のナトリウムを放出する記述1~69のいずれか1つに記
載の吸着剤カートリッジ、使用済みの透析液を使用済みの透析液の供給源から吸着剤カー
トリッジに運搬するための導管、再生透析液を吸着剤カートリッジから使用済みの透析液
の供給源に運搬するための導管、および必須の陽イオンを含む注入溶液が、吸着剤カート
リッジからの予測されるナトリウムイオンの放出と合わさって所定の透析液ナトリウム濃
度をもたらすように、その注入溶液を再生透析液に投与するための注入システムを備える
、透析システム。
【請求項26】
前記再生透析液に加えるための、カルシウム塩、マグネシウム塩およびカリウム塩以外
の塩の供給源、典型的には塩化ナトリウムをさらに含む、請求項25に記載の透析システ
ム。
【請求項27】
前記再生透析液のpHが、6~8の範囲内で維持される、請求項25または26のどち
らか1項に記載の透析システム。
【請求項28】
前記注入溶液中の陽イオン当量の濃度が、所定の透析液ナトリウムイオン濃度とほぼ等
しく、該吸着剤におけるイオン交換の後に該注入溶液を加えることによって、目標の透析
液ナトリウム濃度が提供される、請求項25に記載の透析システム。
【請求項29】
透析プロセスにおいて透析液を再生するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)使用済みの透析液を使用済みの透析液の供給源から、(i)尿素をアンモニウム
および炭酸水素イオンに加水分解し、(ii)主にプロトンと交換にアンモニウムに結合
し、主にナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに結合する、吸着剤に運搬して、再生
透析液を生成する工程;
(b)必須の陽イオンを該再生透析液に投入して、該透析液を再構成する工程;および
(c)再構成された透析液を該吸着剤から該使用済みの透析液の供給源に運搬する工程
を反復する工程を含み、
該吸着剤におけるイオン交換後に、所定の濃度のナトリウムイオンが生成されることを
特徴とする、
プロセス。
【請求項30】
前記必須の陽イオンが、注入溶液として投入され、該注入溶液中の陽イオン当量の濃度
が、所定の透析液ナトリウムイオン濃度とほぼ等しく、該吸着剤におけるイオン交換の後
に該注入溶液を加えることによって、目標の透析液ナトリウム濃度が提供される、請求項
29に記載のプロセス。
【請求項31】
(a)尿素をアンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し、(b)主にプロトンと
交換にアンモニウムに結合し、主にナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに結合して
、透析プロセスにおける透析液の再生において使用するための再生透析液を生成する、吸
着剤。
【請求項32】
請求項1~18もしくは20~23のいずれか1項に記載の吸着剤または請求項24に
記載の吸着剤カートリッジおよび必須のイオンの塩を含む注入液を含む、キット。
【請求項33】
前記注入液が、必須の陽イオンの濃度が目標のナトリウムイオン濃度とほぼ等しい注入
溶液の形態であるか、または前記キットが、必須の陽イオンの濃度が目標のナトリウムイ
オン濃度とほぼ等しい注入溶液を調製するための指示書を含む、請求項33に記載のキッ
ト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、透析用の吸着剤、ならびに再生式透析(血液透析、腹膜透析、肝臓透析、肺
透析、水精製および生体液の再生であり得るがこれらに限定されない)用の吸着剤システ
ムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
本明細書における明らかに先に公開された書類の列挙または考察は、その書類が、最先
端技術の一部であることまたは共通の一般知識であることを認めたこととして必ずしも受
け止められるべきでない。
【0003】
透析は、膜を通過する能力の差に基づいた液体中の粒子の分離である。医学では、この
用語は、腎臓の正常な機能の代わりとしての血液の臨床上の精製のことを指す。特に、透
析は、腎機能障害または腎不全に罹患している患者の腎機能に取って代わるために用いら
れる。この用語は、腹水、尿および血液濾過液をはじめとした他の生体液の精製のことも
指すことがある。その精製は、通常、半透膜を通じて血液などの生体液を透析液などの精
製液と接触させることによって行われる。このプロセスは、過剰な水、電解質および不用
の毒素を身体から除去するので、確実にそれらの濃度が生理学的範囲内になる。最も一般
的には、精製液(典型的には透析液)は、一度だけ使用され、生体液(典型的には血液)
と一度接触した後は、「使用済みの透析流体」としてそのまま廃棄される。これは、「シ
ングルパス」透析と呼ばれる。他方で、吸着剤に基づく再生透析は、生体液を精製するた
めに透析流体を使用した後にそれを再利用するプロセスである。このプロセスは、使用済
みの透析流体から望まれない物質を除去し(再生)、所望の物質と置き換える(再構成)
ことにより、「新鮮透析流体」を生成し、次いで、それを再度、生体液と接触させて、透
析プロセスを続ける。
【0004】
末期腎疾患を有する患者に使用される透析の主な形態は、シングルパスの施設血液透析
である。血液透析は、濾過ユニット、すなわちダイアライザーを通過することによって、
患者の血液から直接毒素を除去するための体外システムの使用を必要とする。従来のシン
グルパス血液透析プロセスでは、患者は、長時間を要し得る透析の時間にわたって動けな
い。この治療には、一度使用されると直ちに廃棄される透析液を調製するために大量の精
製水(超純水)の準備が必要である。
【0005】
他の形態の透析は、腹膜透析であり、これは通常、持続携行式腹膜透析(CAPD)お
よび自動腹膜透析(APD)として応用されている。CAPDでは、新鮮透析液を患者の
腹腔(腹膜腔)に注入し、その腹腔において拡散によって、血液中の代謝廃棄物および電
解質が腹膜を越えて透析液と交換される。電解質および代謝廃棄物の十分な拡散を生じさ
せるために、透析液は通常、2~3時間にわたって腹膜腔に保持され、その後、使用済み
の透析液が除去され、新鮮透析液と交換される。CAPDの大きな欠点としては、毒素の
クリアランスが低レベルであること、および使用済みの透析液を絶えず交換する必要があ
り、これは患者の日常生活に混乱を生じさせ得ることが挙げられる。APDは、透析を夜
間または患者が休んでいる間に行うことができ、透析液を自動的に交換および置換できる
ことを除いては、CAPDと同様に機能する。
【0006】
シングルパス血液透析と同様に、CAPDおよびAPDの両方が、比較的大量の透析液
を必要とし、これが患者の自由および移動性を制限する。血液透析および/または腹膜透
析からの使用済み透析液を、廃棄するのとは違い、再生して、使用済み液体の量を減少さ
せるデバイスが存在する。透析液は、その溶液から尿毒症毒素および過剰な電解質を除去
する吸着剤を通過することによって再生することができる。例えば、最初のREDY(再
生式透析(REcirculating DYalysis))吸着剤システムは、尿毒
性の不用な代謝産物を含む透析溶液が再生されるために通過する5層を有する吸着剤カー
トリッジを備える。
【0007】
いくつかの吸着剤透析システム(例えば、REDY、AllientまたはAWAK吸
着剤システム)は、尿素((クレアチニンおよび尿酸などの他の代謝廃棄物とは異なり)
容易に活性炭に吸着されない)をアンモニウムイオンおよび炭酸水素イオンに変換するた
めにウレアーゼを使用する。REDYシステムでは、活性炭および含水酸化ジルコニウム
からなる第1層は、スカベンジャー層として作用し、微量金属夾雑物によるウレアーゼの
不活性化を防止する。第2層は、アルミナ粒子上に吸着されたウレアーゼを含む。第3層
は、陽イオン交換体として作用する緩衝リン酸ジルコニウムからなる。Drukker
W.and van Doorn A.W.J.(1989)Dialysate Re
generation.In:Maher J.F.(eds)Replacement
of Renal Function by Dialysis.Springer,
Dordrechtにおいて考察されているように、そのリン酸ジルコニウムには、水素
イオンおよびナトリウムイオンが1:8の比でロードされている。アンモニウムイオンは
、カルシウム、マグネシウムおよびカリウムイオンとともに、水素イオンおよびナトリウ
ムイオンに交換される。放出された水素イオンは、炭酸水素イオンによって部分的に緩衝
されるが、水素イオンの放出に起因してpHが低下し、その緩衝の結果として炭酸イオン
濃度が低下するが、初期低下の後、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウ
ムイオンおよびカリウムイオンとナトリウムイオンとの交換に起因して透析液中のナトリ
ウムイオン濃度は徐々に上昇する。第4層は、陰イオン交換樹脂として作用し、透析液中
のリン酸イオンを酢酸イオンと交換する、含水酸化ジルコニウムからなる。最後に、活性
炭層は、クレアチニン、尿酸および他の代謝産物を吸着する。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0078387号は、使用済みの透析液中のNa+とH
CO3
-とのバランスを新鮮透析液に見られるレベルに戻すことができる、酸性リン酸ジ
ルコニウムとアルカリ性含水酸化ジルコニウムとの組み合わせを含む吸着剤カートリッジ
を開示している。好ましい態様において、そのシステムは、再生透析液中のpHおよびN
a+を低レベルにまで低下させること、ならびにHCO3
-をゼロにまで低下させること
に依存する。次いで、NaHCO3再注入システムが、pH、Na+およびHCO3
-を
所望のレベルにする。
【0009】
PCT特許公開番号WO02/43859は、炭酸ジルコニウムナトリウムおよびリン
酸ジルコニウムの層を含む吸着剤カートリッジを開示している。その炭酸ジルコニウムナ
トリウム層は、リン酸イオンを吸着し、リン酸ジルコニウムは、使用済みの透析流体中に
存在するアンモニア、Ca2+、Mg2+、K+および毒性の重金属を吸着する。pHを
補正するように作用し、炭酸水素イオンを放出する新しい化合物である炭酸ジルコニウム
ナトリウムを投入することによって吸着剤交換プロファイルは影響される。
【0010】
米国特許第6,818,196号は、炭酸ジルコニウムナトリウムを苛性ソーダ(水酸
化ナトリウム)で処理して、アルカリ性含水酸化ジルコニウムを形成する工程を含む、リ
ン酸ジルコニウムを生成する方法を開示している。これはその後、加熱され、リン酸と混
合されて、酸性リン酸ジルコニウムをもたらし、それをさらに苛性ソーダで滴定すること
により、所望のリン酸ジルコニウムが得られる。その目的は、REDY吸着剤カートリッ
ジにおいて使用するためのより良好な品質のリン酸ジルコニウムを作製することである。
【0011】
米国特許第7,241,272号は、代謝廃棄物材料を除去するためのカートリッジに
おける樹脂床の使用に関する。それは、少なくとも4層、すなわち、ウレアーゼ層、リン
酸ジルコニウム層、酸化ジルコニウム層および炭素層を備える。リン酸ジルコニウム層は
、2つの対イオンNa+およびH+を含み、NH4
+、Ca2+、Mg2+およびNa+
を吸収できる。それらの対イオンの放出は、透析液のpHおよび樹脂の電流負荷状態(p
H)によって決定される。Na+イオンは、NH4
+、Ca2+、Mg2+およびK+と
の交換でも放出される。pH、Na+および炭酸水素イオンレベルの実質的な変動が、ほ
とんどの図において明らかである。
【0012】
米国特許第8,580,112号は、不用な材料を除去するために、炭酸ジルコニウム
ナトリウム、リン酸ジルコニウムまたは他のアンモニア吸着剤、アルミナ、酸化ジルコニ
ウム、アルミナ担持ウレアーゼおよび粒状の活性炭を含む吸着剤カートリッジを使用する
透析システムを記載している。この透析システムは、フィードバック制御システムを有し
、そのフィードバック制御システムは、ナトリウムレベルを計測するために伝導度感知に
依存し、必要なときに水を希釈剤として加えることによって再生透析液中のナトリウムイ
オン濃度を制御する。
【0013】
PCT公開番号WO2009/157877は、不用な代謝産物を透析液体から除去す
るための吸着剤を開示している。この吸着剤は、陽イオン交換粒子と混合された、尿毒症
毒素を処理する固定化された酵素粒子の層を含む。しかしながら、依然として、実質的な
pH、Na+および炭酸水素イオンの変動が存在し、カルシウムイオン、マグネシウムイ
オンおよびカリウムイオンの影響が考察されていない。
【0014】
PCT公開番号WO2005/123230は、2つの吸着剤タイプのカートリッジを
備えるシステムに関し、一方は、尿素を分解し、Na+を放出させるためのものであり、
他方は、Na+に結合するためのものである。尿素を分解し、ナトリウムを放出する吸着
剤は、活性炭、ウレアーゼ、リン酸ジルコニウムおよび/または酸化ジルコニウムの1層
以上を含む。Na+に結合する吸着剤は、同じハウジング内に混合され、含められている
、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を含む混床式イオン交換樹脂であり得る。透
析液中のナトリウムの制御は、必要に応じて第2の吸着剤を含めるかまたは迂回すること
によって達成される。このシステムは、ナトリウムを正確に制御するための伝導度感知に
よるフィードバック制御に依存する。
【0015】
PCT公開番号WO2007/103411は、Na、Ca、MgおよびKを阻止する
陽イオン阻止膜を使用する交換可能なカートリッジを有する透析システムを開示しており
、残りの不用な構成要素は、その膜を越えて拡散して、重金属、酸化体および他の不用な
尿毒性の代謝産物を除去する精製層;その溶液から尿素を除去するが陽イオンを阻止する
尿素除去層;ならびにリン酸イオンおよび硫酸イオンを除去するイオン交換層と接触する
。これにより、その精製システムはおそらくCaMgおよびK濃度と無関係となり、NH
4との交換でのNaの放出もおそらく妨げる。したがって、Naプロファイルも、尿素濃
度と無関係であると予想される。
【0016】
米国特許出願公開第2013/0213890は、尿毒性廃棄物およびクレアチニンを
吸収するための活性炭材料、ならびに透析液からリン酸イオンを吸収するための酸化ジル
コニウム材料を少なくとも含む吸着剤カートリッジを備えるモジュール式血液透析システ
ムを開示している。その陽イオン交換プロセスは、尿素の除去を可能にするが、化学量論
的形式でナトリウムおよび水素を透析液中に放出する。透析液の安定な組成を維持するた
めに、ナトリウムイオン濃度は、ナトリウムイオンの吸収または希釈によって低下されな
ければならない。さらに、二酸化炭素および水素イオンの生成により、透析液のpH不安
定性が生じ、これにより、炭酸水素イオンの注入またはpHを調整する他の手段が必要と
なり得る。
【0017】
米国特許出願公開第2013/0199998は、透析回路と体外循環路との間の透析
膜を越えた流体の流動を制御するためのポンプを備える、制御されたコンプライアンス透
析回路を有する血液透析システムに関する。透析液の伝導度を計測することによって、N
a+濃度がモニターされ、希釈によって制御が達成される。
【0018】
現在公知の方法に関連する問題が存在する。透析液中のNa+濃度は、最初に低下する
が、その後、透析液の再生における交換プロセスのおかげで透析の持続時間にわたって徐
々に上昇する。次いで、この濃度の段階的変化は、通常、生理学的に許容され得る目標濃
度に集まってくる。例えば、REDYシステムにおける再生透析液は、通常、透析の時間
にわたって約100mEq/Lから約160mEq/L(平均値は約140mEq/L)
に上昇するナトリウム濃度を特徴とする。ゆえに、このアプローチが採用されるとき、N
a+濃度は、平均して140mEq/Lという目標濃度に達し得るが、この透析のほとん
どで、Na+濃度は、最適値より高いかまたは低い。
【0019】
最もよく知られている吸着剤、例えば、REDY吸着剤は、ほぼ中性の全体的なナトリ
ウムバランスおよび中性のpH条件をもたらすように選択される。これは、アンモニウム
ならびにCa、MgおよびKの両方がプロトンと部分的に交換され、ナトリウムと部分的
に交換されるように吸着材をあらかじめ条件づけることによって行われる(例えば、Dr
ukker on REDY吸着剤:H/Naロード比1:8)。低い透析液ナトリウム
濃度という初期段階があり、その後、透析液ナトリウム濃度が徐々に上昇し、最終的に高
い透析液ナトリウム濃度で終了する。治療全体の経過にわたって、ナトリウム濃度は、平
均して、所望の生理学的な目標ナトリウム濃度におおよそ達する。吸着剤およびその交換
挙動は、極端に低いおよび極端に高いナトリウム濃度を回避しつつ、同時に、可能な限り
中性のpH条件をもたらすようにデザインされる。この交換挙動をもたらすために、吸着
材は、あらかじめ条件づけられ、合成中にナトリウムが「事前にロードされる」。次いで
、これは、カスタマイズされた開始時の透析液槽(starting diaysate
bath)と組み合わされることが多い。その事前のローディングは、陽イオン交換体
と陰イオン交換体の両方に適用され得る。さらに、いくつかの吸着剤は、イオン交換材料
のうちの1つの化学修飾を使用する(例えば、含水酸化ジルコニウムと交換に陰イオン交
換体として炭酸ジルコニウムナトリウムを使用する)。これらのすべての修飾が、アンモ
ニウムと他の透析液陽イオンとの間の交換挙動の区別を目的としないという共通点がある
。それらは、特定の交換選択性を考慮せずに、極端なナトリウム濃度を防止しつつ、同時
に、単にpH変動の緩衝を目的とするだけである。
【0020】
他の公知の吸着剤は、非常に低いナトリウムローディングを有し、かつアンモニウム、
Ca、MgおよびKとプロトンとのほぼ定量的な交換を提供するか、または非常に高いナ
トリウムローディングを有し、かつこれらの陽イオンとナトリウムとのほぼ定量的な交換
を提供する、より極端な交換特性を提供するように選択される。再生透析液において得ら
れる極端に低いまたは極端に高いナトリウム濃度を補正するために、これらのシステムに
は、フィードバックによって制御される注入システムが必要である。これは、フィードバ
ックによって制御される、2つのタイプの再生透析液(低Naおよび高Na)の混合、ま
たはフィードバックによって制御される、NaHCO3の注入(低Naの再生透析液)も
しくは水での希釈(高Naの再生透析液)によって行われ得る。
【0021】
これらの吸着剤のいずれもが、それぞれアンモニウムならびにCa、MgおよびKの差
次的な交換挙動のために選択されない。合成中の吸着剤にNaを事前にロードすることに
よって一緒に測定される、これらの陽イオンのすべてに対して同様の交換比H/Naであ
ると仮定して、これらの陽イオンのすべてが、通常、評価される。実際は、所望のナトリ
ウム交換プロファイルをもたらすための、そのような差次的な交換挙動およびその利用の
可能性は、これまで評価されていなかった。
【0022】
むしろ、それらのイオン交換システムには、意図した交換プロファイルをもたらすよう
にナトリウムが事前にロードされる(生理学的平衡濃度において平衡化されるか、または
プロトンもしくはナトリウムとの完全な交換のいずれかの極値にされる)。
【0023】
他のシステムは、ナトリウム濃度を計測し、次いで最終的なナトリウム濃度を上昇また
は低下させるために濃縮溶液または水を投与するフィードバックシステムを用いて、この
段階的変化を打ち消そうと試みる。そのようなフィードバックシステムは、複雑であり、
高価であり、不具合を起こしやすい。それらは通常、問題であることおよび限られた精度
しか有しないことが知られている伝導度の計測に依存している。さらに、それらは、その
システムの物理的サイズの増大および使い捨ての構成要素の数の増加の一因となる。
【0024】
既存の吸着剤システムは、アンモニウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムと
の交換における実質的な程度のナトリウム放出を特徴とする。これは、再生透析液へのナ
トリウムの一定した添加をもたらし、そしてこれは、透析液のナトリウム濃度の一定した
上昇をもたらす。ナトリウムと同時に、他の構成物の濃度(例えば、炭酸水素イオン濃度
および塩素イオン濃度)も、不十分にしか制御されない。これは、患者にとって望ましく
ない状態および潜在的に有害な状態、例えば、高クロール血性アシドーシスをもたらし得
る。これは、Ca、MgおよびKの塩化物を使用済みの透析液の再構成に使用するとき、
特に関連する。以前のいくつかの吸着剤システム、例えば、REDYシステムは、Ca/
Mg/Kの酢酸塩溶液を使用して、そのような望ましくない影響を打ち消すかまたは改善
した。しかしながら、これらの酢酸塩溶液は、加熱殺菌プロセスにとって問題があること
が知られている。ゆえに、既存の吸着剤システムは、これらの塩の非滅菌溶液の使用に限
られる。他の弱酸の塩(例えば、炭酸水素塩または乳酸塩)は、透析液の再構成にとって
実際に有用であるために十分な溶解度を有しない。
【0025】
上記のシステムの重要な問題は、アンモニウムと、他の透析液陽イオンCa、Mgおよ
びKとの交換挙動の選択性が評価されていないこと、ゆえに吸着剤に基づく透析液再生に
おけるそのような選択性を活用する可能性が評価されていないことである。従来技術は、
再生透析液中の低pHと高ナトリウム放出との間のバランスをとるためにあらゆる手段を
尽くしている。これは、合成中の吸着剤にNaを事前にロードすることによって行われる
が、有意なナトリウム放出を犠牲にして、かろうじて許容され得るpHプロファイルが提
供される。したがって、患者は、その透析のほとんどの場合、不完全な透析液組成または
潜在的には有害でさえある透析液組成に曝露される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
概要
本発明は、不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤を提供し、その吸着剤
は、可溶性のナトリウムイオン供給源を含む。
【課題を解決するための手段】
【0027】
可溶性のナトリウムイオン供給源は、(a)固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理
酵素を含む尿毒症毒素処理酵素粒子;(b)アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換
し、必須の陽イオンを主にナトリウムイオンと交換するように形成された、陽イオン交換
粒子;および(c)陰イオン交換粒子のうちの少なくとも1つとの均一な混合物として存
在し得る。
【0028】
したがって、本発明は、不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤を提供し
、その吸着剤は、(a)固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症毒素
処理酵素粒子;(b)アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンを
主にナトリウムイオンと交換するように形成された、陽イオン交換粒子;および(c)陰
イオン交換粒子の均一な混合物を含み、可溶性のナトリウムイオン供給源をさらに含む。
【0029】
吸着剤を調製するプロセスも提供され、そのプロセスは、可溶性のナトリウムイオン供
給源と、(a)固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症毒素処理酵素
粒子;(b)アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンをナトリウ
ムイオンと交換するように形成された、陽イオン交換粒子;(c)陰イオン交換粒子;お
よび(d)有機化合物吸収体粒子のうちの少なくとも1つとを混合する工程、およびその
混合物を含める工程を含む。
【0030】
さらなる態様において、尿素をアンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し、主に
プロトンと交換にアンモニウムに結合する吸着剤が提供される。アンモニウムと交換され
たプロトンは、炭酸水素イオンと結合し、生じた炭酸は、CO2として放出される。した
がって、その吸着剤は、CO2への変換によって尿素を除去する。これにより、再生透析
液において反復可能な化学的条件がもたらされ、その化学的条件は、使用済みの透析液の
尿素濃度と無関係である。
【0031】
さらなる態様において、ナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに主に結合する吸着
剤が提供される。
【0032】
さらなる態様において、(a)尿素をアンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し
、(b)主にプロトンと交換にアンモニウムに結合し、主にナトリウムイオンと交換に必
須の陽イオンに結合する、吸着剤が提供される提供される。
【0033】
さらなる態様において、カートリッジに収容された本明細書中に記載されるような吸着
剤を含む吸着剤カートリッジが提供される提供される。
【0034】
さらなる態様において、透析液を処理し、再利用するための透析システムが提供され、
そのシステムは、吸着剤におけるイオン交換の後に予測量のナトリウムを放出する本明細
書中に記載の吸着剤カートリッジ、使用済みの透析液を使用済みの透析液の供給源から吸
着剤カートリッジに運搬するための導管、再生透析液を吸着剤カートリッジから使用済み
の透析液の供給源に運搬するための導管、および必須の陽イオンを含む注入溶液が、吸着
剤カートリッジからの予測されるナトリウムイオンの放出と合わさって所定の透析液ナト
リウム濃度をもたらすように、その注入溶液を再生透析液に投与するための注入システム
を備える、透析システムが提供される。
【0035】
吸着剤カートリッジは、Naと(化学量論的)交換にCa、MgおよびKに主に結合す
る本明細書中に記載されるような吸着剤を含む。吸着剤再生前の使用済みの透析液中のC
a、MgおよびKの濃度は、ほんの小さな(無条件の)変動を受けるが、主として、その
前の再生および再構成プロセス中に注入溶液を加えることによってもたらされる所定の濃
度によって制御される。その必須の陽イオンは、通常、注入溶液に投入される。注入溶液
中の必須の陽イオンの濃度は、吸着剤における使用済みの透析液からのCa、Mgおよび
Kの事前の交換によって放出されるNaの増加とマッチするように選択される。再生透析
液と、このマッチした注入溶液とを合わせることにより、所望の(所定の)ナトリウム濃
度がもたらされる。注入液の組成および注入速度の選択に応じて、本システムは、フィー
ドバック制御システムの必要なく、特定のナトリウムプロファイルをもたらすようにまた
は再生透析液中のナトリウム濃度を一定に維持するように適合させることができる。
【0036】
したがって、別の態様において、透析プロセスにおいて透析液を再生するためのプロセ
スが提供され提供され、そのプロセスは、
(a)使用済みの透析液を使用済みの透析液の供給源から、(a)尿素をアンモニウム
および炭酸水素イオンに加水分解し、(b)主にプロトンと交換にアンモニウムに結合し
、主にナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに結合する、吸着剤に運搬して、再生透
析液を生成する工程;
(b)必須の陽イオンを再生透析液に投入して、透析液を再構成する工程;および
(c)再構成された透析液を吸着剤から使用済みの透析液の供給源に運搬する工程
を反復する工程を含み、
吸着剤におけるイオン交換後に、所定の濃度のナトリウムイオンが生成されることを特徴
とする。
【0037】
なおも別の態様において、本明細書中に記載されるような吸着剤、および必須の陽イオ
ンの塩を含む注入液を含むキットが提供される提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本開示が容易に理解され得るためおよび実際に実施され得るために、添付の図面および
実施例に照らして例証される実施形態について言及する。これらの図面はその説明ととも
に、本発明の実施形態をさらに例証し、様々な原理および利点を説明するのに役立つ。
【0039】
【
図1】
図1は、本発明に係る陽イオン交換体のイオン交換特性の可能な解釈を示している模式図である。
【
図2】
図2は、吸着剤を試験するためのシングルループ透析システムを図示している模式図である。
【
図3】
図3は、吸着剤を試験するためのダブルループ透析システムを図示している模式図である。
【
図4】
図4は、(a)ナトリウムイオン濃度に対する患者の尿素レベルの影響を示しているグラフであり、(b)ナトリウムイオン濃度に対する透析液の尿素およびCa/Mg/Kの影響を示しているグラフである。
【
図5】
図5は、ダブルループ透析システムにおける精製の前後(「上流血液」および「下流血液」)の模擬患者の生体液のナトリウム濃度、ならびに本発明に係る再生され、再構成された透析液(「上流透析液」)中のナトリウム濃度を示しているグラフである。
【
図6】
図6は、(a)従来の吸着剤に基づく透析システムにおけるナトリウムの初期低下およびその後のナトリウム濃度の漸増、(b)ナトリウム濃度の漸増を変化させずに、ナトリウムの初期低下を克服するための吸着剤改変の影響、(c)透析全体にわたって一定したナトリウム濃度を提供するためにナトリウムの初期低下とその後のナトリウム濃度の漸増の両方に対処するシステム改変の影響、および(d)透析中にナトリウム濃度を漸減させるためにナトリウムの初期低下とその後のナトリウム濃度の漸増の両方に対処するシステム改変の影響を示している図である。
【
図7】
図7は、炭酸イオン濃度に対する患者の尿素レベルの影響を示しているグラフである。
【
図8】
図8は、塩素イオン濃度に対する患者の尿素レベルの影響を示しているグラフである。
【
図9】
図9は、pHに対する患者の尿素レベルの影響を示しているグラフである。
【
図10】
図10は、炭酸水素イオン濃度に対する透析液の尿素およびCa/Mg/Kの影響を示しているグラフである。
【
図11】
図11は、塩素濃度に対する透析液の尿素およびCa/Mg/Kの影響を示しているグラフである。
【
図12】
図12は、pHに対する透析液の尿素およびCa/Mg/Kの影響を示しているグラフである。
【
図13】
図13は、ナトリウムイオン濃度に対する吸着剤における炭酸水素ナトリウムの影響を示しているグラフである。
【
図14】
図14は、炭酸水素イオン濃度に対する吸着剤における炭酸水素ナトリウムの影響を示しているグラフである。
【
図15】
図15は、塩素濃度に対する吸着剤における炭酸水素ナトリウムの影響を示しているグラフである。
【
図16】
図16は、本発明に係る透析プロセスを図示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
説明
本発明は、不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤に関する。特に、本発
明は、不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤に関し、その吸着剤は、可溶
性のナトリウムイオン供給源を含む。本明細書中に記載されるように、吸着剤に基づく透
析におけるナトリウム初期低下を低減する以前の試みは、合成中に吸着剤を改変すること
または塩溶液を再生透析液に注入することによるものであった。本吸着剤は、尿素をアン
モニウムイオンに変換し、アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオ
ンを主にナトリウムイオンと交換するように形成された、イオン交換システムを含む。こ
れは、陽イオン交換粒子ならびに陰イオン交換粒子と混合され得る尿毒症毒素処理酵素粒
子を含み得る。
【0041】
陽イオン交換材料と陰イオン交換材料との組み合わせは、アンモニウムとプロトンとの
交換を支持するが必須の陽イオンとナトリウムとの交換に影響しない特性がもたらされる
ように選択される。ゆえに、再生透析液中のナトリウム濃度は、使用済みの透析液中のア
ンモニウム(すなわち尿素)濃度と無関係である。むしろ、再生透析液中のナトリウムの
絶対量は、比較的小さい(無条件の)濃度変動を受けると知られている陽イオン(例えば
、カルシウム、マグネシウムおよびカリウム)と交換に、使用済みの透析液中に放出され
るナトリウムに依存する。実際に、Ca、MgおよびKの濃度は、透析システムにおける
透析液の再生および再構成プロセスによってあらかじめ決められた濃度とほぼ等しい。し
たがって、本発明は、透析液の再生中に、Ca、MgおよびKの交換に由来する(ほぼ一
定の)ナトリウム放出を補償するように形成された注入(再構成)システムとともに、上
に記載されたような吸着剤を使用することにも関する。その吸着剤は、再生透析液におけ
る初期の「ナトリウム低下」を防ぐのに十分な量の可溶性ナトリウム塩を優先的に含む。
次いで、再構成、すなわちCa、MgおよびKイオンの注入が、放出されたナトリウムの
濃度とマッチする濃度に設定された溶液を用いて行われるので、再構成後に所望の目標の
ナトリウム濃度がもたらされる。実際に、注入溶液は、目標のナトリウム濃度とほぼ等し
い総陽イオン濃度で提供される。
【0042】
したがって、本発明は、透析液を再生するためのプロセスを可能にし、このプロセスで
は、所定の量の陽イオン(例えば、Ca2+、Mg2+およびK+)を加えることにより
、記載されたような吸着剤との接触によって不用な代謝産物が除去された透析液に補充さ
れる。再生され、再構成された透析液は、そのような処置を必要とする患者に再注入され
る。透析の後、使用済みの透析液は、既知量の陽イオンを含み、ゆえに、対応する量のナ
トリウムイオンを吸着剤から放出し;したがって、ナトリウムイオン濃度は、再生透析液
を再構成するために先に加えた陽イオンの濃度によって決定される。その結果は、さらな
る(フィードバックによって制御される)再注入システムを必要とすることのない、再生
され、再構成された透析液中のナトリウム濃度の従来にない正確な制御である。
【0043】
上記のイオン交換挙動は、イオン交換材料へのナトリウムイオンの比較的低い「事前の
ローディング」を必要とするので、これまで望ましいとは考えられていなかった。本吸着
剤システムへの可溶性ナトリウム塩の本明細書中に記載される添加がないと、吸着剤に基
づく透析処理の初期段階において著しい「ナトリウム低下」に至ることがあり、患者は、
低いナトリウム濃度、低pHおよびその結果として低い炭酸水素イオン濃度への有害な曝
露を受ける可能性がある。さらに、過剰量のナトリウムが、処理の初期段階において患者
から除去され、処理の後期段階において補充されない場合、可溶性ナトリウム塩の添加が
ないと、そのような交換システムは、大幅に負の総ナトリウムバランスをもたらす可能性
が高い。
【0044】
これらの厄介な問題を克服するために、吸着剤材料の少なくとも1つの構成要素と混合
され得る可溶性のナトリウムイオン供給源(例えば、可溶性ナトリウム塩)と吸着剤を組
み合わせる。以前に報告された吸着剤とは対照的に、この組み合わせは、差次的な交換挙
動というユニークな利点を提供し、同時に、安全かつ効果的な透析処理に必要な生理学的
条件の維持を可能にする。吸着剤材料と混合される可溶性ナトリウム塩を含めることによ
り、別のアプローチ(例えば、酸性陽イオン交換材料と混合された強塩基性陰イオン交換
材料の使用、またはナトリウムを放出する陰イオン交換材料(例えば、炭酸ジルコニウム
ナトリウム)の使用)にまさるユニークな利点も提供される。なぜなら、これらの材料は
、アンモニウムとナトリウムとの部分的な交換、ゆえにナトリウム放出の増加、および使
用済みの透析液の尿素濃度の依存を特徴とし、その両方が、アンモニウムならびにCa/
MgおよびKに対する選択的な交換挙動の本明細書中に記載される吸着剤の特性と対照的
であるからである。
【0045】
さらに、初期の「ナトリウム低下」の段階を完全に回避しつつナトリウムを連続的に放
出する再生プロセスを特徴とする本明細書中に記載されるような吸着剤を提供することは
、これまで望ましくないと考えられていただろう。従来の吸着剤システムでは、この状況
は、透析液ナトリウム濃度の過剰な上昇をもたらして患者に対してナトリウムを過剰に放
出させるので、患者に対して潜在的に有害な状況をもたらすと予想されていただろう。こ
れは、Ca、MgおよびKと交換にナトリウムをもっぱら放出する吸着剤を使用すること
、可溶性のナトリウム供給源を加えることによって「ナトリウム低下」を防ぐこと、およ
び目標の透析液ナトリウム濃度にマッチする濃度を有する注入液を使用する再構成の配置
によって、効率的に防止され、制御される。
【0046】
本明細書中で使用される用語「吸着剤」は、所望の目的の物質を吸収する能力を特徴と
する材料群のことを広く指す。
【0047】
用語「代謝廃棄物(metabolic wastes)」は、本明細書の文脈におい
て、代謝によって産生され、透析液解毒プロセスにおいて除去されるのが望ましい、透析
液中の任意の構成物、典型的には毒性の構成物を意味する。典型的な代謝廃棄物としては
、リン酸イオン、尿素、クレアチニンおよび尿酸が挙げられるが、これらに限定されない
。
【0048】
本明細書中で使用される用語「必須の陽イオン」は、透析溶液中に存在し、安全かつ効
果的な使用に不可欠な、ナトリウムイオン以外の陽イオンのことを指す。これらのイオン
は、通常、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンであるが、カリウムイオンも存在
してよい。カルシウム、マグネシウムおよびカリウムは、本吸着剤によって除去され、透
析液を再構成するために、再生透析液に再投入される必要がある。
【0049】
用語「陽イオン当量」または「全陽イオン当量」は、溶液中のプロトンを除くすべての
正電荷当量の和のことを指す。それは、mEq/Lを単位として計測される。
【0050】
用語「ナトリウム」または記号「Na」は、当業者が十分理解しているように、元素自
体ではなくナトリウムイオンのことを指すために本明細書において使用され得る。したが
って、用語「ナトリウム」、「Na」、「ナトリウムイオン」および「Na+」は、交換
可能に使用される。同様に、用語「カルシウム」、「マグネシウム」および「カリウム」
、または記号「Ca」、「Mg」および「K」は、それぞれカルシウムイオン、マグネシ
ウムイオンおよびカリウムイオンのことを指すために本明細書において使用され得る。
【0051】
本明細書中で使用される用語「使用済みの透析液の供給源」は、それがいかに生成され
ようとも、透析液の供給源への言及である。その供給源は、膜を越えた交換によって生体
液の再生が行われる、使用済みの流体の任意の供給源であり得る。例えば、透析プロセス
が血液透析である場合、使用済みの透析液の供給源は、血液透析装置におけるダイアライ
ザーであり得る。そのような装置において、患者由来の血液の流れと透析液の流れは向流
であり、交換は、それらの流れを分断している膜を越えて行われる。あるいは、それは、
例えば、交換が行われるべき患者の腹膜腔に透析液が投入される腹膜透析における患者で
あり得る。
【0052】
本明細書中で使用される用語「陽イオン交換粒子」は、陽イオン種または正に帯電した
種と接触したとき、典型的には、正に帯電した種の溶液をこの粒子の表面上に流すことに
よって、そのような種を捕捉または固定化することができる粒子のことを指す。
【0053】
本明細書中で使用される用語「陰イオン交換粒子」は、陰イオン種または負に帯電した
種と接触したとき、典型的には、負に帯電した種の溶液をこの粒子の表面上に流すことに
よって、そのような種を捕捉または固定化することができる粒子のことを指す。
【0054】
本明細書中で使用される用語「尿毒症毒素処理酵素」は、基質として尿毒症毒素と反応
することができる酵素のことを指す。例えば、尿毒症毒素処理酵素は、基質として尿素、
基質として尿酸または基質としてクレアチニンと反応することができる酵素であり得る。
尿毒性酵素は、例えば、この酵素を溶液中の尿毒症毒素と反応させ、その尿毒症毒素の濃
度の低下を計測することによって、インビトロにおいてこの機能を有すると判定され得る
。尿毒症毒素処理酵素の例としては、ウレアーゼ(尿素と反応する)、ウリカーゼ(尿酸
と反応する)またはクレアチニナーゼ(クレアチニンと反応する)が挙げられるが、これ
らに限定されない。
【0055】
本明細書中で使用される用語「尿毒症毒素」は、当業者が十分に理解しているように、
例えばタンパク質、核酸などの分解による老廃物を含む1つ以上の化合物のことを指す。
尿毒症毒素の非限定的な例としては、尿素、尿酸、クレアチニンおよびベータ-2(β2
)ミクログロブリンが挙げられる。健常個体において、尿毒症毒素は、通常、尿を通じて
身体から排泄される。しかしながら、ある特定の個体では、尿毒症毒素は、十分に速い速
度で身体から除去されず、尿毒性、すなわち、生理的に正常なレベルの尿毒症毒素と比較
して高レベルの少なくとも1つの尿毒症毒素を特徴とする疾患または状態に至る。尿毒症
毒素に関連する障害の非限定的な例としては、化学療法を受けている被験体における腎疾
患または腎不全、痛風および尿毒性が挙げられる。
【0056】
本明細書中で使用される用語「尿毒症毒素処理酵素粒子」は、粒子の形態の尿毒症毒素
処理酵素のことを指す。これらの酵素は、生体適合性の固体支持体への共有結合もしくは
物理的結合または架橋または封入または他の任意の手段によって固定化され得る。
【0057】
本明細書中で使用される用語「可溶性の供給源」は、吸着剤の他の構成要素に加えられ
、混合され得るか、または他の吸着剤の構成要素と分断する分離層としてもしくはコンパ
ートメントに存在し得る、他の構成要素と異なる化合物のことを指す。それは通常、吸着
剤において他の固体粒子と混合される固体粒子の形態で吸着剤に加えられ得る。
【0058】
本明細書中で使用される用語「生体適合性」は、ヒトまたは動物の身体に有害な生物学
的反応を引き起こさない材料の特性のことを指す。
【0059】
本明細書中で使用される用語「均一」は、ある混合物が、所与のサンプル全体にわたっ
て同じ比率の様々な構成要素を有し、一貫した混合物を生成することを意味する、実質的
に均一な混合物のことを指す。その混合物の組成は、全体的に実質的に同じであるが、固
体粒子の混合において、混合が完全でない領域がサンプル中に存在し得ることが認識され
るだろう。
【0060】
用語「粒径」は、粒子の直径または直径等価物のことを指す。用語「平均粒径」は、多
くの量の粒子が特定の粒径に近いが、その特定のサイズより大きい粒子がいくつか存在し
、その特定のサイズより小さい粒子がいくつか存在することを意味する。粒子の分布のピ
ークは、特定のサイズを有し得る。したがって、例えば、平均粒径が50ミクロンである
場合、50ミクロンより大きいいくつかの粒子および50ミクロンより小さいいくつかの
粒子が存在し得る。
【0061】
本明細書中で使用される用語「再生する」または「再生された」は、吸着剤による尿毒
症毒素の破壊および/または吸収によって透析液を解毒する作用のことを指す。
【0062】
本明細書中で使用される用語「再生透析液」は、吸着剤による尿毒症毒素の破壊および
/または吸収によって解毒された透析液のことを指す。
【0063】
本明細書中で使用される用語「再構成する」または「再構成された」は、再生透析液を
、透析前の新鮮透析液と本質的に同じ状態および化学組成に変換する作用のことを指す。
【0064】
本明細書中で使用される用語「再構成された透析液」は、透析前の新鮮透析液と本質的
に同じ状態および化学組成に変換された透析液のことを指す。
【0065】
本明細書中で使用される用語「主に」は、いくらかの量の別の状況または状態も最小限
の程度で生じる可能性を排除するものではないが、大部分で生じるかまたはたいてい生じ
る状況または状態を表すと意図されている。例えば、それは、>80%または>90%ま
たは>95%または99%超であり得る。誤解を避けるために、その他のすべてを除外し
て、その状況または状態だけが生じる可能性が、この用語によって包含される。
【0066】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物
は、Yを完全に含まない場合がある。必要ならば、語「実質的に」は、本発明の定義から
省いてもよい。
【0067】
別段特定されない限り、用語「含む(comprising)」および「含む(com
prise)」ならびにそれらの文法上の変化形は、「オープンな」言語または「包括的
な」言語であると意図され、それらは、列挙されるエレメントを含むだけでなく、列挙さ
れていないさらなるエレメントを含むことを許容する。文脈が、用語「~からなる」と等
価な排他的な意味を要求する場合、それらの用語には、この意味も与えられる場合がある
。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、用語「約」は、製剤の構成要素の濃度の文脈において、
典型的には、表示の値の±5%、より典型的には、表示の値の+/-4%、より典型的に
は、表示の値の±3%、より典型的には、表示の値の+/-2%、なおもより典型的には
、表示の値の±1%、なおもより典型的には、表示の値の+/-0.5%を意味する。
【0069】
本開示全体にわたって、ある特定の実施形態が、範囲の形式で開示され得る。その範囲
の形式での記載は、単に便利さおよび簡潔さのための記載であって、開示される範囲に対
する柔軟性のない限定として解釈されるべきでないことが理解されるべきである。したが
って、その範囲の記載は、考えられるすべての部分範囲ならびにその範囲内の個別の数値
を明確に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3
、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、ならびにその範囲内
の個別の数字、例えば、1、2、3、4、5および6を明確に開示したと見なされるべき
である。これは、範囲の幅を問わず適用される。
【0070】
尿毒症毒素処理酵素は、尿毒症毒素処理酵素粒子の固定化を提供し得る任意の公知の支
持体材料に固定化され得る。固定化は、アルミナへの吸着などによる物理的手段によるも
のであり得る。ある実施形態において、非固定化酵素が使用される。あるいは、尿素をア
ンモニアに変換するために、他の方法が使用される。
【0071】
1つの実施形態において、支持体材料は、上記酵素が共有結合する生体適合性の基材で
ある。その生体適合性の材料は、炭水化物系ポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリ
エステルまたは無機ポリマー材料であり得る。生体適合性の基材は、1つの材料で構成さ
れている均一な基材、または少なくとも2つの材料で構成されている複合基材であり得る
。生体適合性の基材は、セルロース、Eupergit(登録商標)、二酸化ケイ素(例
えば、シリカゲル)、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ナイロン、ポリカプロラ
クトンおよびキトサンのうちの少なくとも1つであり得る。
【0072】
1つの実施形態において、生体適合性の基材への尿毒症毒素処理酵素の固定化は、グル
タルアルデヒド活性化、エポキシ基による活性化、エピクロロヒドリン活性化、ブロモ酢
酸活性化、臭化シアン活性化、チオール活性化、ならびにN-ヒドロキシスクシンイミド
およびジイミドアミドカップリングからなる群より選択される固定化の手法によって行わ
れる。用いられる固定化の手法は、シラン系リンカー(例えば、(3-アミノプロピル)
トリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランまたは(3
-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン)の使用も含み得る。生体適合性の基材の表
面は、反応性層および/または安定化層(例えば、デキストランまたはポリエチレングリ
コール)ならびに好適なリンカー分子および安定剤分子(例えば、エチレンジアミン、1
,6-ジアミノヘキサン、チオグリセロール、メルカプトエタノールおよびトレハロース
)によってさらに官能化され得る。尿毒症毒素処理酵素は、精製された形態、または粗抽
出物(例えば、タチナタマメ由来のウレアーゼの抽出物または他の好適なウレアーゼ供給
源)の形態で使用され得る。
【0073】
尿毒症毒素処理酵素粒子は、尿素を炭酸アンモニウムに変換することができ得る。1つ
の実施形態において、尿毒症毒素処理酵素は、ウレアーゼ、ウリカーゼおよびクレアチニ
ナーゼのうちの少なくとも1つである。好ましい実施形態において、尿毒症毒素処理酵素
は、ウレアーゼである。
【0074】
1つの実施形態において、尿毒症毒素処理酵素粒子は、ウレアーゼ粒子である。
【0075】
1つの実施形態において、尿毒症毒素処理酵素粒子は、約10ミクロン~約1000ミ
クロン、約100ミクロン~約900ミクロン、約200ミクロン~約900ミクロン、
約300ミクロン~約800ミクロン、約400ミクロン~約700、500ミクロン~
約600ミクロン、約25ミクロン~約250ミクロン、約25ミクロン~約100ミク
ロン、約250ミクロン~約500ミクロン、約250ミクロン~約1000ミクロン、
約125ミクロン~約200ミクロン、約150ミクロン~約200ミクロン、約100
ミクロン~約175ミクロンおよび約100ミクロン~約150ミクロンの範囲内の平均
粒径を有する。
【0076】
1つの実施形態において、1000~10000単位のウレアーゼが、前記生体適合性
の基材に固定化される。固定化されたウレアーゼおよび基材の全重量は、約0.5g~約
30gの範囲である。
【0077】
1つの実施形態において、陽イオン交換粒子は、非晶質で非水溶性の金属リン酸塩をプ
ロトン化型で含む。1つの実施形態において、その金属は、チタン、ジルコニウム、ハフ
ニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。1つの実施形態において、
そのリン酸塩が水に難溶性である金属は、ジルコニウムである。難溶性のリン酸塩は、1
0mg/Lを超えない水溶解度を有するリン酸塩であると本明細書中で理解されるべきで
ある。好ましくは、陽イオン交換粒子は、アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し
、必須の陽イオンをナトリウムイオンと交換するように形成された、リン酸ジルコニウム
粒子である。
【0078】
ある実施形態において、陽イオン交換粒子は、合成中にそれらを低pHに設定すること
によって、アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンをナトリウム
イオンと交換するように形成されている。この特性を最適化するために、陽イオン交換粒
子は通常、合成中に低pHおよび低ナトリウムローディングに設定される。ある実施形態
において、陽イオン交換体は、酸の存在下において合成される。pHは、所望の差次的な
交換挙動を提供するレベルにまでpHを上昇させるための水酸化ナトリウムなどの塩基で
の滴定などによって、所望のレベルに調整することによって設定される。その滴定は、ナ
トリウムとカルシウム、マグネシウムおよびカリウムとの所望の交換を可能にするために
、ナトリウムが十分にロードされた陽イオン交換粒子を提供することにも役立つ。ある実
施形態において、陽イオン交換材料は、リン酸ジルコニウムである。これは、従来のプロ
セスにおいて、例えば、リン酸との反応によって塩基性硫酸ジルコニウム(BZS)また
は炭酸ジルコニウムから、合成され得る。他の酸を使用する場合は、リン酸基の供給源が
提供されなければならない。典型的には、pHは、塩基による反応産物の滴定によって、
3.5~5.0の範囲内、好都合には約4.5になるように設定される。
【0079】
リン酸ジルコニウム粒子は、約10ミクロン~約1000ミクロン、約100ミクロン
~約900ミクロン、約200ミクロン~約900ミクロン、約300ミクロン~約80
0ミクロン、約400ミクロン~約700、500ミクロン~約600ミクロン、約25
ミクロン~約200ミクロンまたは約25ミクロン~約150ミクロンまたは約25ミク
ロン~約80ミクロンまたは約25ミクロン~約50ミクロンまたは約50ミクロン~約
100ミクロンまたは約125ミクロン~約200ミクロンまたは約150ミクロン~約
200ミクロンまたは約100ミクロン~約175ミクロンまたは約100ミクロン~約
150ミクロンまたは約150ミクロン~約500ミクロンまたは約250ミクロン~約
1000ミクロンの範囲内の平均粒径を有し得る。リン酸ジルコニウム粒子は、リン酸ジ
ルコニウム粒子の固定化を提供し得る任意の公知の支持体材料に固定化され得る。1つの
実施形態において、支持体材料は、生体適合性の基材である。1つの実施形態において、
リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、それらの粒子を所定の容積に物理的に圧縮すること
である。1つの実施形態において、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、リン酸ジルコニ
ウムまたはリン酸ジルコニウムと好適なセラミック材料との混合物を焼結することによっ
て達成される。生体適合性の基材は、1つの材料で構成されている均一な基材、または少
なくとも2つの材料で構成されている複合基材であり得る。
【0080】
好適な陽イオン交換材料は、アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽
イオンをナトリウムイオンと交換するように形成されている材料である。この特性は、そ
の材料のイオン交換能を計測することによって測定され得る。カルシウムイオン、マグネ
シウムイオンおよび/またはカリウムイオンの存在下においてナトリウムイオン濃度の変
化を経時的に計測すると、ナトリウムイオン濃度の上昇がもたらされるはずであるが、た
とえ尿素の分解によって生成されるアンモニウムイオンが存在したとしても、カルシウム
イオン、マグネシウムイオンおよび/またはカリウムイオンの非存在下では変化しない。
【0081】
陰イオン交換粒子は、非晶質かつ部分的に水和した非水溶性の金属酸化物を水酸化物対
イオン型、炭酸対イオン型、酢酸対イオン型および/または乳酸対イオン型で含み得、こ
こで、その金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからな
る群より選択され得る。1つの実施形態において、金属は、ジルコニウムである。陰イオ
ン交換粒子は、酸化ジルコニウム粒子であり得る。好ましくは、陰イオン交換粒子は、含
水酸化ジルコニウム粒子である。
【0082】
ある実施形態において、陰イオン交換粒子は、アルカリ性pHに設定されている。ある
実施形態において、それらは、7~14の範囲内のpHに設定されている。ある実施形態
において、それらは、12~13の範囲内のpHに設定されている。これを達成するため
の1つの方法は、陰イオン交換粒子を塩基で飽和させることである。ある実施形態におい
て、その塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリ
ウム、水酸化マグネシウム;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭
酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモニウムからなる群
より選択される。好ましくは、その塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび炭
酸水素ナトリウムからなる群より選択される。アルカリ性の陰イオン交換粒子は、特に、
上に記載されたような酸性の陽イオン交換粒子と組み合わされるとき、それぞれアンモニ
ウムおよびCa/Mg/Kとの所望の選択的な吸着剤交換特性をもたらすために好ましい
。陰イオン交換材料として使用される金属酸化物は、典型的には、炭酸塩などの前駆体を
水酸化物との反応によって酸化物に変換することによって合成された後、自由選択の滴定
が行われ、その生成物を洗浄しないことにより、その生成物内に過剰な水酸化物が保持さ
れることが認識されるだろう。ナトリウム塩を使用する場合、塩基は、ナトリウムイオン
の供給源として作用できるので、洗浄されない陰イオン交換粒子を使用する場合、水酸化
ナトリウムが好ましい。
【0083】
酸化ジルコニウム粒子は、約10ミクロン~約1000ミクロン、約100ミクロン~
約900ミクロン、約200ミクロン~約900ミクロン、約300ミクロン~約800
ミクロン、約400ミクロン~約700、500ミクロン~約600ミクロン、約10ミ
クロン~約200ミクロンまたは約10ミクロン~約100ミクロンまたは約10ミクロ
ン~約30ミクロンまたは約10ミクロン~約20ミクロンまたは約20ミクロン~約5
0ミクロンまたは約25ミクロン~約50ミクロンまたは約30ミクロン~約50ミクロ
ンまたは約40ミクロン~約150ミクロンまたは約80ミクロン~約120ミクロンま
たは約160ミクロン~約180または約25ミクロン~約250または約250ミクロ
ン~約500または約250ミクロン~約1000の範囲内の平均粒径を有し得る。酸化
ジルコニウム粒子は、酸化ジルコニウム粒子の固定化を提供し得る任意の公知の支持体材
料に固定化され得る。1つの実施形態において、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、そ
れらの粒子を所定の容積に物理的に圧縮することである。1つの実施形態において、酸化
ジルコニウム粒子の固定化は、酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムと好適なセラミ
ック材料との混合物を焼結することによって達成される。1つの実施形態において、支持
体材料は、生体適合性の基材である。生体適合性の材料は、炭水化物系ポリマー、有機ポ
リマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリオレフィン
または無機ポリマーまたはセラミック材料であり得る。生体適合性の基材は、セルロース
、Eupergit(登録商標)、二酸化ケイ素、ナイロン、ポリカプロラクトンおよび
キトサンのうちの少なくとも1つであり得る。
【0084】
1つの実施形態において、酸化ジルコニウム粒子は、リン酸イオンおよび他の陰イオン
を吸収することができる任意の粒子によって置き換えられ得る。好ましくは、それらの粒
子は、リン酸イオン、フッ化物イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオンを含む群から選択さ
れる陰イオンを吸収することができる。酸化ジルコニウム粒子は、吸収した陰イオンと交
換に、酢酸イオン、乳酸イオン、炭酸水素イオンおよび水酸化物イオンなどのイオンも放
出し得る。1つの実施形態において、酸化ジルコニウム粒子は、鉄、アルミニウム、なら
びにヒ素、ビスマス、カドミウム、コバルト、銅、鉛、水銀、ニッケル、パラジウムおよ
び銀からなる群より選択される重金属にとって良好な結合剤でもある。
【0085】
ある実施形態において、陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比は、1:1~5:
1の範囲内である。ある実施形態において、陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比
は、2:1~3:1の範囲内である。ある実施形態において、陽イオン交換粒子と陰イオ
ン交換粒子との比は、約2.4:1である。陰イオン交換体は、低pH陽イオン交換体に
対するpH緩衝剤として作用するが、しかしながら、この比では、陰イオン交換粒子の緩
衝能だけでは、陽イオン交換体による酸性化およびナトリウム濃度の低下を補償するには
不十分である。
【0086】
吸着剤は、可溶性のナトリウム供給源を含む。ナトリウムの提供によって、ナトリウム
濃度の初期低下が克服される。したがって、本発明に係る吸着剤材料は、透析プロセスの
初期段階において、従来の材料と比べて、より小さいナトリウムイオン濃度低下を示す。
理想的には、ナトリウムイオン濃度の初期低下が存在しない。
【0087】
ある実施形態において、可溶性のナトリウムイオン供給源は、可溶性塩の粒子であり得
る。ある実施形態において、可溶性塩は、塩基性塩である。ある実施形態において、可溶
性塩は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群の1つ
以上から選択される。それは、塩化ナトリウムなどの中性塩または弱酸の塩(例えば、乳
酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウム)でもあり得る。
【0088】
所望の交換選択性の発生には、合成中における吸着剤材料の比較的低いNaローディン
グが必要である。ゆえに、吸着剤材料によって引き起こされるNaの初期低下を克服する
ために、別個のナトリウムイオン供給源を加えることが必要である。
【0089】
吸着剤は、尿素の分解において生成され、かつ患者から透析液に持ち込まれる、炭酸水
素イオンを含む。陽イオン交換体から放出される水素イオンによる中和(この中和によっ
て、二酸化炭素が形成する)に起因して、炭酸水素イオン濃度の初期低下が生じる。炭酸
イオンおよび/または炭酸水素イオンは、吸着剤に塩を直接加えて補償することによって
投入され得る。これは、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムまたは弱酸塩(例
えば、酢酸ナトリウムまたは乳酸ナトリウム)を投入することによって行われ得、これに
より、透析液中の炭酸水素イオンが上昇する。ナトリウム塩は、ナトリウム供給源として
も作用し得るので、ナトリウム塩が好ましい。陰イオン交換体の量は、低pH陽イオン交
換体を補償するには不十分であるので、pHのバランスをとる必要もある。そのバランス
は、塩基性材料(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム
)の投入によって達成され得る。そのような化合物は、それらの低下の各々に対処するた
めに別々に加えられ得るが、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムの投入は、すべて
の不足に対処することが認識されるだろう;ゆえに、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナト
リウムが、ナトリウムイオンの好ましい供給源である。
【0090】
理論に拘束されることを望むものではないが、吸着剤は、主に尿素をCO2に変換して
、吸着剤に基づく透析液の再生の化学反応が、使用済みの透析液中の尿素濃度とほとんど
無関係になることを可能にすると考えられている。第1の工程において、使用済みの透析
液に含まれる尿素は、アンモニウムおよび炭酸水素イオンに変換される。第2の工程にお
いて、イオン交換体は、アンモニウムを主にプロトンと交換する。次いで、それらのプロ
トンは、炭酸水素イオンと再結合することにより、CO2を形成し、そのCO2はそのシ
ステムから放出される。カルシウム、マグネシウムおよびカリウムなどの陽イオンは、主
にナトリウムと交換される。有益なことに、吸着剤は、計算された量の炭酸ナトリウムお
よび/または炭酸水素ナトリウムを含む均一な混合物である。炭酸ナトリウム/炭酸水素
ナトリウムの添加は、吸着剤の交換特性を変化させることなく、再生透析液中のナトリウ
ム濃度に影響する。
【0091】
吸着剤は、CO2放出を促進するために炭酸脱水酵素を必要に応じて含み得る。炭酸脱
水酵素は、二酸化炭素および水が炭酸、プロトンおよび炭酸水素イオンに変換される反応
を触媒する。例としては、ヒトまたはウシの赤血球由来の炭酸脱水酵素および組換えヒト
炭酸脱水酵素が使用され得る。炭酸脱水酵素は、尿毒症毒素処理酵素粒子について先に記
載されたような任意の公知の支持体材料に固定化され得る。炭酸脱水酵素は、尿毒症毒素
処理酵素粒子とは別々にまたは同じ粒子に固定化され得る。
【0092】
1つの実施形態において、吸着剤は、有機化合物吸収体をさらに含む。有機化合物吸収
体は、尿毒症毒素処理酵素粒子ならびに陽イオン交換粒子および/または陰イオン交換粒
子と混合され得るか、または分離層を形成し得る。有機化合物吸収体は、とりわけ活性炭
、モレキュラーシーブ、ゼオライトおよび珪藻土からなる群より選択され得る。有機化合
物吸収体粒子は、活性炭粒子であり得る。1つの実施形態において、1次層における有機
化合物吸収体は、活性炭フィルターパッドである。別の実施形態において、有機化合物吸
収体は、活性炭粒子を含む。
【0093】
活性炭粒子は、約10ミクロン~約1000ミクロン、約10ミクロン~約250ミク
ロン、約20ミクロン~約200ミクロン、約25ミクロン~約150ミクロン、約50
ミクロン~約100ミクロン、約25ミクロン~約250ミクロンまたは約100ミクロ
ン~約200ミクロンまたは約100ミクロン~約150ミクロンまたは約150ミクロ
ン~約300ミクロンまたは約200ミクロン~約300ミクロンまたは約400ミクロ
ン~約900ミクロンまたは約500ミクロン~約800ミクロンまたは約600ミクロ
ン~約700ミクロンまたは約250ミクロン~約500ミクロンまたは約250ミクロ
ン~約1000ミクロンの範囲内の平均粒径を有し得る。
【0094】
1つの実施形態において、活性炭粒子は、有機化合物を吸収することができる任意の粒
子によって置き換えられ得る。好ましくは、それらの粒子は、交換において何も放出せず
に、クレアチニン、尿酸ならびに他の小型および中型の有機分子を含む群から選択される
有機化合物および/または有機代謝産物を吸収することができる。活性炭粒子は、空間を
節約する目的でも、所定の容積に物理的に圧縮され得る。1つの実施形態において、活性
炭粒子は、活性炭フィルターパッドに物理的に圧縮される。
【0095】
本発明は、吸着剤を調製するプロセスも提供し、そのプロセスは、尿素をアンモニウム
イオンに変換する固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子を、アンモニウムイオンを主に水
素イオンと交換し、必須の陽イオンをナトリウムイオンと交換するように形成された陽イ
オン交換粒子と混合する工程を含み、ナトリウム供給源を提供する工程、ならびに必要に
応じて、陰イオン交換粒子および/または有機化合物吸収体粒子を混合する工程をさらに
含む。
【0096】
1つの実施形態において、吸着剤は、少なくとも1つのカートリッジに収容される。吸
着剤カートリッジは、それらが透析デバイスから容易に取り出せるように形成され得る。
また、吸着剤カートリッジは、コンパクトであり得、摩耗および破れに耐える材料から作
られ得る。カートリッジは、化学的および生物学的に不活性な弾力性のある材料から作ら
れ得る。カートリッジは、漏出なく、透析デバイスのフローシステム内の圧力に耐えるこ
ともでき得る。カートリッジは、滅菌条件(例えば、加熱滅菌、エチレンオキシド滅菌お
よび電離放射線による滅菌)に耐え得る材料から作られ得る。1つの実施形態において、
吸着剤カートリッジは、アクリロニトリルブタジエンスチレンから作られる。吸着剤カー
トリッジは、ポリカーボネート、ポリプロピレンまたはポリエチレンから作られ得る。1
つの実施形態において、フィルターパッドおよび濾紙が、吸着剤の層から生じる任意の粒
子を濾別するために、吸着剤カートリッジの入口および出口に、ならびに/または吸着剤
内の個別の層の間に配置され得る。
【0097】
本発明は、透析液を再生するためのプロセスにも関し、そのプロセスでは、所定の量の
陽イオン(例えば、Ca2+、Mg2+およびK+)を加えることにより、本発明の吸着
剤との接触によって不用な代謝産物が除去された透析液が補充される。透析の後、使用済
みの透析液は、既知量の陽イオンを含むので、対応する量のナトリウムイオンを吸着剤か
ら放出する;ゆえに、再生透析液中のナトリウムイオン濃度は、透析液を再構成するため
にあらかじめ加えられていた陽イオンの量によって決定される。本システムは、主に尿素
をCO2に変換し、主に陽イオン(例えば、カルシウム、マグネシウムおよびカリウム)
をナトリウムと交換する、吸着剤を使用する。注入液の濃度は、注入液の構成物(Ca、
Mg、K)による再構成のために使用される注入液の体積と再混合されたとき、Ca、M
gおよびKと交換されたナトリウムの量が所望の目標のナトリウム濃度をもたらすように
選択される。したがって、透析液の再生および再構成のためのシステムは、本質的に制御
される注入システムを備える。そのシステムは、特定のナトリウムプロファイルを生成し
得るか、またはフィードバック制御システムの必要なく、再生透析液において一定のナト
リウム濃度を維持し得る。
【0098】
本発明の利点の1つは、透析溶液中のナトリウムレベルを所望の範囲内で維持すること
ができる点である。これは、患者の血液中の高いまたは低いナトリウムレベルの結果とし
て患者が経験する不快感を低減するのを助け得る。
【0099】
本発明のシステムは、従来の透析装置よりも有意に小さいばらつきで透析液ナトリウム
濃度を制御することができる。例えば、目標濃度の±5%という精度が達成可能である。
例えば、本システムは、透析液ナトリウム濃度を132~145mEq/Lの範囲内で維
持できる。さらに、例えば「ナトリウムモデリング」のための特定の濃度のプロファイル
に到達可能であり、等しく±5%の精度で達成され得る。炭酸水素イオン濃度および塩素
イオン濃度が、従来技術よりも有意に良好に制御される。
【0100】
本発明の吸着剤システムは、電解質の再注入のために塩化物を使用することを可能にす
るのに対して、以前のシステムは、透析液緩衝システム(緩衝濃度およびCl濃度)を生
理学的範囲内に維持するために、酢酸塩などの弱酸の塩を使用しなければならなかった。
酢酸塩は、塩化物よりも高価であり、滅菌された形態および安定な形態で提供することが
困難である(滅菌中および貯蔵中の組成の変化)。しかしながら、本発明は、Ca、Mg
およびKの塩化物に基づいて注入溶液を提供する可能性を可能にするが、本システムは、
これらの塩に限定されない。塩化物は、総塩濃度または注入比を変化させることなく、乳
酸塩によって部分的に置き換えられ得る。乳酸イオンによる塩素イオンの部分的な置き換
えだけが存在し得るので、得られる注入溶液は、溶解度の問題によって限定されないだろ
う。有益なことに、そのような混合塩溶液は、再生透析液の緩衝能を高めて患者のアシド
ーシスを阻止するために使用され得る。より有益なことに、そのような溶液は、非経口注
入用の商業的に入手可能な溶液と似ていることがあり、蒸気滅菌に適している場合がある
。
【0101】
得られるシステムは、単純であり、頑健であり、小さく、費用効率が高く、従来技術と
比べて、構成要素の数が少ない。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、
二価の陽イオンおよびカリウムが主にナトリウムと交換されつつ、アンモニウムを主にプ
ロトンと交換する吸着剤の特徴に起因すると考えられている。これは、吸着剤の合成中に
より低いpHおよびより低いナトリウムローディングに故意に設定される吸着剤イオン交
換デザイン(リン酸ジルコニウム)の結果である。驚くべきことに、カルシウム、マグネ
シウムおよびカリウムに対する陽イオン交換特性は、吸着剤のpHと無関係であるが、ア
ンモニウムの交換特性は、pHに強く依存することが見出された。これにより、アンモニ
ウムとプロトンとの交換を支持するが、カルシウム、マグネシウムおよびカリウムとナト
リウムとの交換は影響されない、pHを有するイオン交換材料を作製することが可能にな
る。本発明の吸着剤は、イオン交換選択性を干渉することなく、再生透析液のpHを所望
の目標範囲内、例えば、6.0~8.0に維持するために、そのような最適化されたリン
酸ジルコニウムをアルカリ性pHの含水酸化ジルコニウムと組み合わせている。このシス
テムは、透析の初期段階において、約100mEq/Lという透析液のNa濃度までの顕
著なNa低下を受ける。このNa低下に対抗するために、計算された量の炭酸水素ナトリ
ウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたは水酸化ナトリウムが、均一な吸着剤混合物
に加えられる。
【0102】
その結果、再生透析液中のナトリウム濃度は、使用済みの透析液中のアンモニウム(す
なわち尿素)濃度と無関係となる。むしろ、ナトリウム交換の絶対量は、使用済みの透析
液中のカルシウム、マグネシウムおよびカリウムの濃度(既知であり、小さな変動しか受
けない)に依存する。これらの濃度は、実際には、透析システムにおける透析液の再生お
よび再構成プロセスによって測定される。例えば、典型的なK、CaおよびMg濃度は、
2、3および1mEq/Lである。つまり、再生プロセス中に放出されたナトリウムの実
際の量は既知であり、再生プロセス中に本システムによって測定されるK、CaおよびM
g濃度に直接依存する。これにより、K、CaおよびMgを投与するために使用される溶
液の濃度の計算が可能になり、この濃縮液の注入による体積の増加は、K、CaおよびM
gのイオン交換によって引き起こされるナトリウム増加と正確にマッチする。例えば、K
、CaおよびMg溶液の濃度は、K、CaおよびMgの当量の合計と引き換えに放出され
るナトリウム当量が、例えば138mEq/Lという所望の目標Na濃度をもたらすため
に必要な体積の溶液によって満たされるように、設定され得る。例えば、3mEq/Lの
K、3mEq/LのCaおよび1mEq/LのMgを含む1Lの使用済みの透析液の再生
は、合計で5~7mEq、例えば、7mEqのナトリウムを放出し得る。本発明のシステ
ムは、有益なことに、濃縮液を投与してK、CaおよびMgを再構成し、その濃縮液は、
51mLという総体積を有することにより、前記1Lの使用済みの透析液を再構成する。
したがって、7mEqのナトリウム増加は、体積を51mL増加させ、それにより、加え
られた流体の構成要素において、7/0.051mEq/L=138mEq/Lというナ
トリウム濃度が形式上もたらされる。極めて重大なことに、この濃度は、目標濃度と同じ
であり、ゆえに、1.051Lという再生された総体積におけるナトリウム濃度に影響し
ない。このモデルに基づくと、再生透析液とK、CaおよびMg濃縮液との好ましい混合
比は、1000:51である。この混合比は、経験的な最適化によってさらに微調整され
得る理想的な計算値に基づくことに注意するべきである。実際には、ナトリウムイオンお
よび必須のイオンの濃度は、医師によって指示される。注入溶液の組成または注入溶液の
投与体積が異なり得るいくつかの構成が提供され得る。ナトリウム濃度に関する定常状態
が維持され得る。あるいは、他の混合比は、例えば、ナトリウムモデリングにおけるよう
な目標濃度からの意図的な逸脱をもたらし得る。あるいは、異なる目標濃度のCa、Mg
、KおよびNaは、異なる濃度の溶液および異なる注入体積比を用いることによって達成
され得る。
【0103】
ある実施形態において、注入液の濃縮液は、注入後に透析液の浸透圧を確実に補正する
ために、グルコースなどの浸透圧剤をさらに含み得る。
【0104】
ある実施形態において、注入液の濃縮液は、可変の構成要素、または異なる目標濃度の
Ca、MgおよびKの代わりに他の塩化物を用いる「プレースホルダー」としての役割を
果たし得る塩化ナトリウムなどのさらなる塩をさらに含み得る。有益なことに、これによ
り、一連の注入濃縮液(すべてが同じ注入体積比を用いて投与され得る)の提供が可能に
なり、それにより、デバイスのデザインが容易になる。例えば、そのような濃縮液は、意
図的に低い塩化ナトリウム濃度も含み得るので、注入後の透析液において負のナトリウム
勾配を作ることが可能になる。
【0105】
本発明のある特定の態様を具体化する非限定的な例をこれより説明する。
図面の詳細な説明
【0106】
異なるスケールの2つの実験装置を使用した。相違点は、表1に示されるとおりであっ
た。
【0107】
【0108】
注入/毒素溶液の構成要素:
・陽イオン注入液:Ca2+-1.5mmol/L、Mg2+-0.5mmol/L、K
+-3.0mmol/L;および
・毒素:尿素-8.9mmol/L、クレアチニン-370μmol/Lおよびリン酸塩
-1.3mmol/L.
【0109】
従来の吸着剤透析の配置では、6Lの透析液および最大1Lの注入液を使用する。本発
明のある実施形態では、2Lの透析液および4~5Lの注入液を使用する。したがって、
透析治療を完了するために必要な総液量は、従来の吸着剤透析と比べて本発明において相
対的に変わらない。従来の吸着剤透析は、ナトリウム、炭酸水素イオンおよびpHの変化
を緩衝するために、大きな透析液レザバー容積(REDYシステムの場合、6Lもの大き
さ)を使用するが;注入液を小容量(1L)に維持した。本発明では、必要とされる注入
を達成するために、それより大きな注入液容積を使用するが、透析液レザバーは、もはや
緩衝液の容積として作用するために必要ではなく、2Lにまで減少させることができる:
【0110】
小型装置10は、
図2に示されているとおりである。このプロセスは、まず、撹拌機2
0が取り付けられた使用済みの透析液レザバー15からサンプル流を引き込む工程を含み
、ここで、その透析液流は、熱交換器25によって37℃に加熱される。その流速は、圧
力緩衝装置およびセンサー35と連結しているポンプ30によって制御される。最初に、
尿素を含む溶液を、使用済みの透析液レザバーに投入する。これは、熱交換器25への通
過によって加熱されると、第1のサイクルの透析からの使用済みの透析液によく似る。次
いで、使用済みの透析液は、吸着剤カートリッジ40を通過して、再生透析液を生成する
。アンモニアのレベルは、アンモニアセンサー45によってモニターされ得る。好適なア
ンモニアセンサーの1つは、WO2017/034481(その内容は参照により本明細
書中に援用される)に開示されている。この実験系では、注入液/毒素溶液50が、その
再生透析液に供給される。その目的は、本明細書中に記載されるように塩濃度を維持する
ことと、患者が処置される条件をそっくりに模倣することの両方である。この実験系は、
注入液とともに毒素を加えるが、その注入液は通常、再生透析液に投入された後、透析液
が透析に再使用されることが認識されるだろう。腹膜透析では、再構成された透析液が、
患者の腹膜腔に投入されて、毒素の拡散が生じ得るが、血液透析では、毒素は、患者の血
液と逆方向でダイアライザーを通過する再構成された透析液流として膜を越えて拡散する
。この実験系では、再構成された透析液は、毒素を含むので、第2のサイクルで使用済み
の透析液として処理される。使用済みの透析液は、使用済みの透析液レザバー15に戻る
。使用済みの透析液は、第2のサイクルにおいて吸着剤で処理するために、使用済みの透
析液レザバーから引き込まれる。ガスビュレット55が、各サイクルにおいて生成された
二酸化炭素ガスの体積を計測する。使用済みの透析液および再生透析液のサンプルを、各
サイクルにおいて解析のためにそれぞれサンプルポート60(使用済みの透析液)および
65(再生透析液)を通じて回収した。小型装置10は、透析液の種々の構成要素が経時
的にNa
+の放出にどのように影響するかの影響を調べる際に使用した。
【0111】
吸着剤カートリッジ40における吸着剤は、実験に応じて異なる。各場合において、そ
れは、尿素をアンモニウムイオンに変換する、陽イオン交換粒子と混合された固定化され
た尿毒症毒素処理酵素粒子を含む。それらの陽イオン交換粒子は、本発明において、アン
モニウムイオンを主に水素イオンと交換し、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよ
びカリウムイオンをナトリウムイオンと交換するように形成されている。その陽イオン交
換材料は、アンモニウムとプロトンとの交換を支持するpHにおいて働くが、二価の陽イ
オンとナトリウムとの交換は、影響されない(
図1)。ゆえに、再生透析液中のナトリウ
ム濃度は、使用済みの透析液中のアンモニウム(すなわち尿素)濃度と無関係である。
【0112】
毒素/注入溶液50は、Ca塩、Mg塩、K塩の水溶液、ならびに尿素、クレアチニン
およびリン酸供給源からなった。Ca、MgおよびKは、通常、塩化物として投入した。
この実験系では、リン酸塩を投入することにより、廃棄物の生成を模倣した。典型的には
、そのリン酸塩は、H3PO4またはKH2PO4として投入された。KH2PO4をリ
ン酸塩の供給源として使用した場合、KClの質量は、Kの同じ目標濃度を達成するため
に、1:1モル比でそれに対応して減少させた。
【0113】
フルスケールの装置110は、
図3に示されているとおりである。ダブルループプロセ
スは、小型装置のプロセスと似ているが、模擬患者の血液のための第2の回路をさらに備
える。透析液水溶液を用いて、患者の血液をまねる。このプロセスはまず、サンプル流を
、透析液レザバー115からポンプ145によって37℃の熱交換器125を通過してダ
イアライザー130にくみ出す工程を含み、そのダイアライザー130において、模擬血
液との交換が行われる。模擬血液を、レザバー170からポンプ180によって37℃の
熱交換器180を通過してくみ出した。次いで、加熱された模擬血液は、ダイアライザー
130を通過した後、患者レザバー170に戻った。模擬血液および透析液は、それらが
交換される膜のどちらかの側に流れる(図示せず)。次いで、使用済みの透析液は、ダイ
アライザー130からポンプ135によって圧力緩衝装置のゲージ140に向かってくみ
出された後、吸着剤カートリッジ145を通過して、透析液を再生する。注入ポンプ15
5によって制御される注入溶液150は、再生透析液に供給されて、透析液を再構成する
。過剰な流体は、必要に応じて排出ポンプ160によって排液レザバー165に除去され
、残りの再生透析液は、透析液レザバー115に供給される。
【0114】
本発明のある特定の態様を具体化する非限定的な例をこれより説明する。
【実施例0115】
実施例1-リン酸ジルコニウムの調製
リン酸ジルコニウムを、従来の方法によって、例えば、米国特許第3,850,835
号に記載されているような塩基性硫酸ジルコニウムとリン酸との水性混合物の反応によっ
て、合成する。あるいは、リン酸ジルコニウムは、米国特許第4,256,718号に記
載されているように、炭酸ジルコニウムナトリウムとリン酸との水性混合物から合成され
る。
【0116】
生成物を4.5という溶液pHまで滴定した。4.5というpHに達するまで、水酸化
ナトリウムの5M溶液をリン酸ジルコニウムの水性スラリーに段階的に加えた。滴定後、
そのリン酸ジルコニウムを、濾液が浸出物(leachables)の許容され得る限度
内に入るまで洗浄し、風乾した。
【0117】
実施例2-含水酸化ジルコニウムの調製
含水酸化ジルコニウムを、従来の方法によって、例えば、米国特許第4,256,71
8号に記載されているような炭酸ジルコニウムナトリウムと水酸化ナトリウムとの水性混
合物の反応によって合成する。含水酸化ジルコニウムの合成後、生成物を12~13とい
うpHまで滴定した。これは、含水酸化ジルコニウムの水性スラリーを生成し、そのスラ
リーが12~13というpHになるまでそれを5M水酸化ナトリウムで滴定することによ
って行われた。いくつかの場合、含水酸化ジルコニウムを、濾液中の浸出物の濃度が許容
され得るレベル内になるまで洗浄し、風乾した。あるいは、HZOをスラリーから直接回
収し、洗浄せず、その後風乾した。洗浄手順に供されたHZOは、「洗浄HZO」と呼ば
れる。滴定スラリーから直接回収されたHZOは、「非洗浄HZO」と呼ばれる。
【0118】
実施例3-小型カートリッジ用の吸着剤混合物の調製
各実験について、吸着剤カートリッジは、下記に列挙される材料からなった。リン酸ジ
ルコニウム(ZP)を、実施例1に従って調製した。含水酸化ジルコニウム(HZO)を
、実施例2に記載したように調製し、洗浄材料と非洗浄材料の両方を、示されているとお
りに使用した。固定化されたウレアーゼ(IU)を、WO2011/102807(その
内容は参照により本明細書中に援用される)の実施例1および2に記載されているように
調製した。活性炭(AC)は、50~200ミクロンの粒径を有する。通常、再生透析液
のナトリウム濃度に対するその改変の影響を区別するために、一度に1つの実験条件を変
更した。これらの実験では、吸着剤のナトリウムおよびpHの設定値を2つの方法で調整
した:
1)可溶性の添加物(Na2CO3、NaHCO3)の使用、および/または
2)HZOの改変-非洗浄HZOおよび洗浄HZOの使用
【0119】
各実験において、入口および出口を有するガラス製のフレックスカラムを吸着剤用の容
器として使用した。吸着剤材料、固定化されたウレアーゼおよび添加物を個別に計量し、
次いで、共に混合し、そのフレックスカラムに乾式充填した。吸着剤床を、脱脂綿の栓を
用いて所定の位置に留め、この時点において、透析液回路に取り付けるための準備が整っ
た。
【0120】
【0121】
実施例4-透析液の化学的性質に対する尿素濃度の影響
3つの同一の吸着剤カートリッジを、表2に与えられているような組成を用いて構築し
、上に記載された再循環小型透析装置10において試験した。それらの3つのカートリッ
ジに、
図2に照らして上に記載された再循環小型透析装置10において、流入する一連の
患者尿素レベルに相当する低い、中程度のまたは高い尿素濃度を負荷した。簡潔には、低
濃度、中濃度および高濃度の尿素(2.2mM、4.5mMおよび8.9mM)を含む透
析液溶液を、最初の透析液溶液として使用するために調製した。その低、中または高尿素
レベルを維持するのに十分な尿素ならびに必要とされるCa
2+、Mg
2+、K
+、クレ
アチニンおよびリン酸濃度を含むように、毒素/注入溶液50を調製した。これらの3つ
の各実験において、毒素含有透析液を、Ca
2+、Mg
2+、K
+、尿素、クレアチニン
およびリン酸塩が除去される吸着剤カートリッジを通ってくみ出した。次いで、負荷濃度
の尿素、クレアチニンおよびリン酸塩を維持するため、ならびにCa
2+、Mg
2+およ
びK
+を加えるために、毒素/注入溶液を加えることによって、その透析液を再構成した
。その透析液のアリコートを、サンプルポート60を介して得た。
【0122】
以下が観察された:
a)ナトリウム:3つすべての尿素濃度について、経時的なNa
+濃度が同様の傾向を
示したことから、尿素の濃度は、吸着剤カートリッジからのNa
+の放出に対して影響を
及ぼさなかったことが示唆される(
図4a)。
b)炭酸水素イオン:HCO
3
-プロファイルは、透析液の尿素濃度に対して弱い依存
しか示さない。報告された炭酸水素イオンの減少と一致したHCO
3
-の初期低下が存在
する。続いて、有意な炭酸水素イオンの増加が明らかに無かったことから、尿素から形成
されたほぼすべてのNH
4
+がH
+と交換され、尿素から形成されたHCO
3
-と結合し
て、それをCO
2として放出することが示唆される(
図7)。
c)塩化物:Cl
-プロファイル(勾配)は、透析液の尿素濃度と無関係である。注入
液の添加によるCl
-の着実な増加が存在する(
図8)。
d)pH: pHプロファイルは、透析液の尿素濃度に対して弱い依存しか示さない(図
9)。HCO
3
-の形式上の減少による酸性化および注入液添加によるCl
-の増加が見
られる。
【0123】
実施例5-透析液の化学的性質に対するCa
2+、Mg
2+およびK
+注入の影響
尿素(アンモニウム)除去とCa/Mg/K除去との透析液の影響を区別するために、
図2に照らして上に記載された再循環小型透析装置10において、2つの同一の吸着剤カ
ートリッジ(表2を参照のこと)に、尿素またはCaMgおよびKを含む透析液を負荷し
た。実施例4におけるように、各実験において、透析液を、吸着剤カートリッジを通って
くみ出した後、注入液を加えることにより、透析液のCa
2+、Mg
2+、K
+、尿素、
クレアチニンおよびリン酸塩が補充され、それらのそれぞれの濃度が維持された(関連す
る場合)。透析液のアリコートを、サンプルポート60を介して得た。
【0124】
以下が観察された:
a)ナトリウム:尿素の非存在下では、経時的なNa
+プロファイルは、Na
+濃度の
初期低下およびその後の増加を経時的に示す典型的なプロファイルによく似ていた(
図4
b)。しかしながら、Ca
2+、Mg
2+およびK
+の非存在下では、Na
+濃度は、よ
り大きな初期低下を示し、それはその後も比較的一定のままであった(およそ110mm
ol/L)(
図4b)。これは、Na
+濃度の上昇が、おそらく陽イオン交換を介してC
a
2+、Mg
2+およびK
+によって引き起こされ、そのNa
+が置換され、吸着剤カー
トリッジからNa
+が放出されることを示している(
図4b)。
b)炭酸水素イオン、pH、Cl:HCO3
-プロファイルは、注入液または尿素の存
在に対して弱い依存しか示さない。尿素の結合もCa/Mgの結合も、HCO
3
-に対し
て有意な影響を及ぼさない(
図10)。Cl
-は、注入液の存在下において増加し、Na
+の増加とほぼ等しい増加であったことが観察された。注入液なしの尿素の存在下におい
てCl
-は増加しなかったが、注入液の添加により、Clは着実に増加した(
図11)。
したがって、注入液の添加は、NaCl濃度を形式的に上昇させる。さらに、Ca/Mg
の存在下かつ尿素の非存在下において非常に低いpHが観察された(
図12)。HCO
3
-の形式上の減少による酸性化および注入液添加によるCl
-の増加は明白であった。
【0125】
実施例6-改変後のNa
+プロファイルの改善
可溶性ナトリウム塩を吸着剤に加えることの透析液の影響を、
図2に照らして上に記載
された再循環小型透析装置10において、2つの吸着剤組成(表2、実施例6を参照のこ
と)を、同一の透析液および注入溶液を用いて試験することによって調べた。炭酸水素ナ
トリウムの増加は別として、それらの吸着剤は、組成が同一であった。
a)ナトリウム:Na
+の初期低下は、吸着剤混合物中の(塩基性)Na
+塩の量を増
加させることによって、妨げられるかまたは少なくとも低減される。定常期におけるNa
+増加の勾配は、影響されない(
図13)。したがって、(塩基性)Na
+塩の添加は、
吸着剤のイオン交換挙動に影響せずに、従来のシステムにおいて明らかなNa
+の初期低
下を改善するかまたは回避する。
b)炭酸水素イオン:通常のHCO
3
-の初期低下は、吸着剤混合物中の(塩基性)N
a
+塩の量を増加させることによって有意に改善される。定常期におけるHCO
3
-の増
加は、影響されず、ほぼゼロのままである(
図13)。したがって、(塩基性)Na
+塩
の添加は、吸着剤のイオン交換挙動に影響せずに、HCO
3
-の初期低下を低減する。
c)塩化物:Cl
-プロファイルは、吸着剤混合物中の(塩基性)Na塩の量と本質的
に無関係である(
図15)。したがって、(塩基性)Na
+塩の添加は、Cl
-濃度に有
意に影響しない。
【0126】
実施例7-Na
+プロファイルの制御を可能にするための吸着剤および注入液組成の改
変
本質的に制御される吸着剤透析システムを構築するために実施例4、5および6におい
て明らかにされた概念を有益に利用するために、改変された吸着剤および注入液組成を用
いて、一連の実験を行った。3つの吸着剤カートリッジを、
図2に照らして上に記載され
た再循環小型透析装置10において試験した(表2、実施例7を参照のこと)。第1の実
験では、模擬透析セッションにおいて未改変の注入溶液を用いて未改変の吸着剤を使用し
たところ(
図6a)、特徴的なナトリウムの低下がもたらされた後、着実に増加した。第
2の実験では、吸着剤を、可溶性ナトリウム塩としてさらなるNa
2CO
3を含むように
改変した。これにより、ナトリウムの低下は補正されたが、その後のナトリウム勾配はそ
のままであった(
図6b)。第3の実験では、同じ改変された吸着剤を、改変された注入
液とともに透析回路に含めたが、ここで、注入液組成は、透析液のナトリウム勾配を相殺
するように変更された(
図6c)。その注入液組成は、注入液の体積を増加させることに
よって修正された。さらなる改変を用いれば、ナトリウムモデリングにおいて通常適用さ
れるナトリウム勾配に似た負のナトリウム勾配を達成することが可能である(
図6d)。
例えば、Na142mMという透析前の開始時の槽を使用し、適切に改変された注入液組
成および注入速度と組み合わせて透析を行うことにより、本明細書中に開示される吸着剤
を用いてそのような結果をもたらすことができる。
【0127】
実施例8-陽イオン交換効率に対するHZO改変、可溶性ナトリウム塩および注入条件の
効果の比較
【表3】
【0128】
実施例8F~8G(表3)における非洗浄HZO(高Naローディングを有する)の使
用は、実施例8A~8E(表3)におけるより低いNaローディングを有する洗浄HZO
の使用(アンモニウムとH+との少なくとも94%の交換)と比べて好ましくないアンモ
ニウムとH+との交換特性(88%のアンモニウムしかH+と交換されなかった)をもた
らすとみられた。これは、NaによるZPまたはHZOの事前のローディングに関する吸
着剤改変の従来のアプローチが、本発明におけるような添加物の使用より劣る結果をもた
らすことを示唆している。
【0129】
実施例9再構成プロセスのための注入液組成および注入比を計算するための式
安定なNa濃度を維持するための溶液:
・吸着剤カートリッジを出た再生透析液は、およそ138mEq/Lの混合Ca2+/
Mg2+/K+を含むCa2+/Mg2+/K+の溶液で再構成されなければならない。
・そのように、Ca2+/Mg2+/K+と交換されたさらなるNa+は、そのさらな
るNa+を138mEq/Lの濃度に再構成する注入液の体積と合わされる。
・理想的な解析では、注入液の塩濃度は、以下の条件を満たさなければならない。
cI
CaMgK+cI
Na=cD
Na
式中、
cI
CaMgK:混合Ca2+/Mg2+/K+の注入液濃度
cD
Na:目標の透析液Na+濃度
cI
Na:注入溶液中のNaの濃度(存在する場合)
【0130】
より詳細な解析:
・より詳細な解析では、注入液の塩濃度は、以下の条件を満たさなければならない。
cI
CaMgKxηCaMgK+cD
尿素xη尿素+cI
Na=cD
Na
式中、
cI
CaMgK:混合Ca2+/Mg2+/K+の注入液濃度
cI
Na:Na+(必要に応じて加えられる;例えば、NaCl)の注入液濃度
cD
Na:目標の透析液Na+濃度
cD
尿素:再生前の透析液尿素濃度
ηCaMgK:Ca2+/Mg2+/K+とNa+との交換効率(約0.85~1)
η尿素:尿素とNa+との交換効率(<0.1)
・最適濃度cI
CaMgKおよび最適注入比は、経験的な反復性の最適化(微調整)に
よって、目標の透析液組成に対してさらに決定され得る。
【0131】
注入比の計算:
・理想的な解析では、注入比(注入液添加の流速と再生透析液の流速との比)は、以下
のように計算される。
r=vI/vD=cD
CaMgK/cI
CaMgK
式中、
r:注入比
vI:注入液添加の流速
vD:再生透析液の流速
cD
CaMgK=cD
Ca+cD
Mg+cD
K目標の透析液Ca2+/Mg2+/K+
濃度
cI
CaMgK=cI
Ca+cI
Mg+cI
K:注入液Ca2+/Mg2+/K+濃度
【0132】
理想的な例:
・cD
Ca=3mEq/L cD
Mg=1mEq/L cD
K=3mEq/L
cD
CaMgK=7mEq/L cD
Na=138mEq/L
・cI
CaMgK=cD
Na=138mEq/L
・r=cD
CaMgK/cI
CaMgK=7mEq/L/138mEq/L≒1:20
【0133】
透析再構成プロセスの例を
図16に図示する。図示されている例では、注入溶液は、体
積が51mLであり、3mEq/LのCa、1mEq/LのMg、3mEq/LのKを含
む。
【0134】
NaClの添加を行うおよび行わないさらなる例:
目標の透析液組成
cD
Ca=3mEq/L cD
Mg=1mEq/L cD
K=3mEq/L cD
Na=
138mEq/L
は、以下の溶液を1:20の注入比で注入することによって達成され得る。
cI
Ca=59mEq/L cI
Mg=20mEq/L cI
K=59mEq/L cI
Na=0mEq/L
以下の組成
cI
Ca=49mEq/L cI
Mg=20mEq/L cI
K=39mEq/L cI
Na=30mEq/Lの注入液を使用する場合、同じ注入比を用いることにより、以下
cD
Ca=2.5mEq/L cD
Mg=1mEq/L cD
K=2mEq/L cD
N
a=138mEq/Lを含む透析液を生成することができる。
【0135】
実施例10:フルスケールのインビトロ実験
図3に示されている透析回路110に係るフルスケールの実験を、模擬患者の40Lの
模擬体液において行った。吸着剤組成は、以下の材料からなった:ZP(1141g)、
洗浄HZO(472g)、AC(160g)、IU(27g)および炭酸ナトリウム(5
0g)。吸着剤を、入口および出口を備え、吸着剤層の前後に濾紙が取り付けられた円筒
形のコンパートメントからなる容器に乾式充填した。透析中に72Lの再生透析液を再構
成するのに十分な塩を含む4Lの体積の注入液を4時間にわたって注入した。表1におけ
るパラメータに従って、透析セッションを行った。注入流速は、16.7mL/分であり
、透析液(dialyate)の流速は、300mL/分であった。要求される毒素負荷
を透析液回路におけるカートリッジに送達するために、300mL/分という血液回路の
流速、および本明細書で述べられた値のおよそ1.5倍の模擬血液毒素濃度(全毒素の約
60%が模擬患者の体液から透析液に移動すると仮定)を使用した。したがって、模擬患
者の溶液は、40Lの模擬体液中に964.5mmol尿素、40.4mmolクレアチ
ニンおよび137.4mmolリン酸イオンを含んだ。ダイアライザーの上流の血液は、
「入口側血液(blood in)」においてサンプリングされ、下流の血液は、「出口
側血液(blood out)」においてサンプリングされ、透析液回路についても同様
であった。改変された吸着剤および注入液組成による本質的な制御の結果として、安定な
ナトリウム濃度が、透析セッションの持続時間にわたって、血液回路と透析液回路の両方
において観察された(
図5)。
【0136】
発明の記述
1.不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、その吸着剤は、可溶
性のナトリウムイオン供給源を含む、吸着剤。
2.前記可溶性のナトリウムイオン供給源が、可溶性塩である、記述1に記載の吸着剤。
3.前記可溶性塩が、塩基性塩である、記述2に記載の吸着剤。
4.前記可溶性塩が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムから
なる群の1つ以上から選択される、記述3に記載の吸着剤。
5.前記可溶性塩が、炭酸水素ナトリウムである、記述4に記載の吸着剤。
6.前記可溶性塩が、中性塩である、記述2に記載の吸着剤。
7.前記ナトリウム塩が、塩化ナトリウムである、記述6に記載の吸着剤。
8.前記可溶性塩が、弱酸の塩である、記述2に記載の吸着剤。
9.前記可溶性塩が、乳酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムである、記述8に記載の吸着
剤。
10.前記吸着剤が、(a)固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症
毒素処理酵素粒子;(b)アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオ
ンを主にナトリウムイオンと交換するように形成された、陽イオン交換粒子;および(c
)陰イオン交換粒子のうちの少なくとも1つとの均一な混合物中に可溶性のナトリウムイ
オン供給源を含む、記述1~9のいずれか1つに記載の吸着剤。
11.前記陽イオン交換粒子が、3.5~5.0の範囲内のpHに設定されている、記述
10に記載の吸着剤。
12.前記陽イオン交換粒子が、約4.5のpHに設定されている、記述11に記載の吸
着剤。
13.前記陽イオン交換粒子が、10~1000ミクロン、好ましくは、25~150ミ
クロン、より好ましくは、50~100ミクロンの範囲内の粒径を有する、記述10~1
2のいずれか1つに記載の吸着剤。
14.前記陽イオン交換粒子が、非晶質で非水溶性の金属リン酸塩を部分的プロトン化型
で含む、記述10~13のいずれか1つに記載の吸着剤。
15.前記金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからな
る群より選択される、記述14に記載の吸着剤。
16.前記金属が、ジルコニウムである、記述15に記載の吸着剤。
17.前記陰イオン交換粒子が、7~14、好ましくは、12~13の範囲内のpHに設
定されている、記述10~16のいずれか1つに記載の吸着剤。
18.前記陰イオン交換粒子が、塩基で飽和している、記述10~17のいずれか1つに
記載の吸着剤。
19.前記塩基が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カ
リウム、水酸化マグネシウム;水酸化カルシウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモ
ニウムからなる群より選択される、記述18に記載の吸着剤。
20.前記塩基が、水酸化ナトリウムである、記述19に記載の吸着剤。
21.前記陰イオン交換粒子が、非晶質かつ部分的に水和した非水溶性の金属酸化物を水
酸化物対イオン型、炭酸対イオン型、酢酸対イオン型および/または乳酸対イオン型で含
み、その金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからなる
群より選択され得る、記述10~20のいずれか1つに記載の吸着剤。
22.前記陰イオン交換粒子が、酸化ジルコニウム粒子である、記述21に記載の吸着剤
。
23.前記陰イオン交換粒子が、含水酸化ジルコニウム粒子である、記述22に記載の吸
着剤。
24.前記陰イオン交換粒子が、10~1000ミクロン、好ましくは、25~150ミ
クロン、より好ましくは、50~100ミクロンの範囲内の粒径を有する、記述10~2
3のいずれか1つに記載の吸着剤。
25.陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比が、1:1~5:1の範囲内である、
記述10~24のいずれか1つに記載の吸着剤。
26.陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比が、2:1~3:1の範囲内である、
記述25に記載の吸着剤。
27.陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比が、約2.4:1である、記述26に
記載の吸着剤。
28.前記尿毒症毒素処理酵素粒子が、ウレアーゼを含む、記述10~26のいずれか1
つに記載の吸着剤。
29.前記尿毒症毒素処理酵素粒子が、10ミクロン~1000ミクロンの範囲内の平均
粒径を有する、記述10~28のいずれか1つに記載の吸着剤。
30.有機化合物吸収体粒子をさらに含む、記述10~29のいずれか1つに記載の吸着
剤。
31.前記有機化合物吸収体粒子が、活性炭粒子である、記述30に記載の吸着剤。
32.前記活性炭粒子が、10ミクロン~1000ミクロンの範囲内の平均粒径を有する
、記述31に記載の吸着剤。
33.炭酸脱水酵素をさらに含む、記述10~32のいずれか1つに記載の吸着剤。
34.不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、その吸着剤は、(
a)固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症毒素処理酵素粒子;(b
)アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンを主にナトリウムイオ
ンと交換するように形成された、陽イオン交換粒子;および(c)陰イオン交換粒子の均
一な混合物を含み、可溶性のナトリウムイオン供給源をさらに含む、吸着剤。
35.前記可溶性のナトリウムイオン供給源が、可溶性塩である、記述34に記載の吸着
剤。
36.前記可溶性塩が、塩基性塩である、記述35に記載の吸着剤。
37.前記可溶性塩が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムか
らなる群の1つ以上から選択される、記述36に記載の吸着剤。
38.前記可溶性塩が、炭酸水素ナトリウムである、記述37に記載の吸着剤。
39.前記可溶性塩が、中性塩である、記述35に記載の吸着剤。
40.前記ナトリウム塩が、塩化ナトリウムである、記述39に記載の吸着剤。
41.前記可溶性塩が、弱酸の塩である、記述35に記載の吸着剤。
42.前記可溶性塩が、乳酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムである、記述41に記載の
吸着剤。
43.前記陽イオン交換粒子が、3.5~5.0の範囲内のpHに設定されている、記述
34~42のいずれか1つに記載の吸着剤。
44.前記陽イオン交換粒子が、約4.5のpHに設定されている、記述43に記載の吸
着剤。
45.前記陽イオン交換粒子が、10~1000ミクロン、好ましくは、25~150ミ
クロン、より好ましくは、50~100ミクロンの範囲内の粒径を有する、記述34~4
4のいずれか1つに記載の吸着剤。
46.前記陽イオン交換粒子が、非晶質で非水溶性の金属リン酸塩を部分的プロトン化型
で含む、記述34~45のいずれか1つに記載の吸着剤。
47.前記金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからな
る群より選択される、記述46に記載の吸着剤。
48.前記金属が、ジルコニウムである、記述47に記載の吸着剤。
49.前記陰イオン交換粒子が、7~14、好ましくは、12~13の範囲内のpHに設
定されている、記述34~48のいずれか1つに記載の吸着剤。
50.前記陰イオン交換粒子が、塩基で飽和している、記述34~49のいずれか1つに
記載の吸着剤。
51.前記塩基が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カ
リウム、水酸化マグネシウム;水酸化カルシウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモ
ニウムからなる群より選択される、記述50に記載の吸着剤。
52.前記塩基が、水酸化ナトリウムである、記述51に記載の吸着剤。
53.前記陰イオン交換粒子が、非晶質かつ部分的に水和した非水溶性の金属酸化物を水
酸化物対イオン型、炭酸対イオン型、酢酸対イオン型および/または乳酸対イオン型で含
み、その金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからなる
群より選択され得る、記述34~52のいずれか1つに記載の吸着剤。
54.前記陰イオン交換粒子が、酸化ジルコニウム粒子である、記述53に記載の吸着剤
。
55.前記陰イオン交換粒子が、含水酸化ジルコニウム粒子である、記述54に記載の吸
着剤。
56.前記陰イオン交換粒子が、10~1000ミクロン、好ましくは、25~150ミ
クロン、より好ましくは、50~100ミクロンの範囲内の粒径を有する、記述34~5
5のいずれか1つに記載の吸着剤。
57.陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比が、1:1~5:1の範囲内である、
記述34~56のいずれか1つに記載の吸着剤。
58.陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比が、2:1~3:1の範囲内である、
記述57に記載の吸着剤。
59.陽イオン交換粒子と陰イオン交換粒子との比が、約2.4:1である、記述58に
記載の吸着剤。
60.前記尿毒症毒素処理酵素粒子が、ウレアーゼを含む、記述34~59のいずれか1
つに記載の吸着剤。
61.前記尿毒症毒素処理酵素粒子が、10ミクロン~1000ミクロンの範囲内の平均
粒径を有する、記述34~60のいずれか1つに記載の吸着剤。
62.有機化合物吸収体粒子をさらに含む、記述34~60のいずれか1つに記載の吸着
剤。
63.前記有機化合物吸収体粒子が、活性炭粒子である、記述62に記載の吸着剤。
64.前記活性炭粒子が、10ミクロン~1000ミクロンの範囲内の平均粒径を有する
、記述63に記載の吸着剤。
65.炭酸脱水酵素をさらに含む、記述34~64のいずれか1つに記載の吸着剤。
66.吸着剤を調製するプロセスであって、可溶性のナトリウムイオン供給源と、(a)
固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症毒素処理酵素粒子;(b)ア
ンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンをナトリウムイオンと交換
するように形成された、陽イオン交換粒子;(c)陰イオン交換粒子;および(d)有機
化合物吸収体粒子のうちの少なくとも1つとを混合する工程、およびその混合物を含める
工程を含む、プロセス。
67.尿素をアンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し、主にプロトンと交換にア
ンモニウムに結合する、吸着剤。
68.ナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに主に結合する、吸着剤。
69.(a)尿素をアンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し、かつ(b)主にプ
ロトンと交換にアンモニウムに結合し、主にナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに
結合する、吸着剤。
70.カートリッジ内に含められた、記述1~69のいずれか1つに記載の吸着剤を含む
、吸着剤カートリッジ。
71.透析液を処理し、再利用するための透析システムであって、そのシステムは、吸着
剤におけるイオン交換の後に予測量のナトリウムを放出する記述1~69のいずれか1つ
に記載の吸着剤カートリッジ、使用済みの透析液を使用済みの透析液の供給源から吸着剤
カートリッジに運搬するための導管、再生透析液を吸着剤カートリッジから使用済みの透
析液の供給源に運搬するための導管、および必須の陽イオンを含む注入溶液が、吸着剤カ
ートリッジからの予測されるナトリウムイオンの放出と合わさって所定の透析液ナトリウ
ム濃度をもたらすように、その注入溶液を再生透析液に投与するための注入システムを備
える、透析システム。
72.前記必須の陽イオンが、二価の陽イオンおよび/またはカリウムイオンである、記
述71に記載の透析システム。
73.前記二価の陽イオンが、カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンであ
る、記述72に記載の透析システム。
74.前記透析液中のナトリウムイオン濃度を一定に維持するように適合されている、記
述71~73のいずれか1つに記載の透析システム。
75.132mEq/L~145mEq/Lのナトリウムイオン濃度を生成するように適
合されている、記述74に記載の透析システム。
76.再生透析液中のナトリウムイオン含有量を減少させるように適合されている、記述
71~73のいずれか1つに記載の透析システム。
77.前記再生透析液に加えるための浸透圧剤の供給源をさらに備える、記述71~76
のいずれか1つに記載の透析システム。
78.前記再生透析液に加えるための、カルシウム塩、マグネシウム塩およびカリウム塩
以外の塩の供給源をさらに備える、記述71~77のいずれか1つに記載の透析システム
。
79.カルシウム塩、マグネシウム塩およびカリウム塩以外の塩が、塩化ナトリウムであ
る、記述78に記載の透析システム。
80.前記再生透析液のpHが、6~8の範囲内に維持される、記述71~79のいずれ
か1つに記載の透析システム。
81.透析プロセスにおいて透析液を再生するためのプロセスであって、そのプロセスは
、
(a)使用済みの透析液を使用済みの透析液の供給源から、(a)尿素をアンモニウム
および炭酸水素イオンに加水分解し、(b)主にプロトンと交換にアンモニウムに結合し
、主にナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに結合する、吸着剤に運搬して、再生透
析液を生成する工程;
(b)必須の陽イオンを再生透析液に投入して、透析液を再構成する工程;および
(c)再構成された透析液を吸着剤から使用済みの透析液の供給源に運搬する工程
を反復する工程を含み、
その吸着剤におけるイオン交換後に、所定の濃度のナトリウムイオンが生成されることを
特徴とする、
プロセス。
82.前記吸着剤が、記述1~65または69のいずれか1つに記載の吸着剤である、記
述81に記載のプロセス。
83.(a)尿素をアンモニウムおよび炭酸水素イオンに加水分解し、(b)主にプロト
ンと交換にアンモニウムに結合し、主にナトリウムイオンと交換に必須の陽イオンに結合
して、透析プロセスにおける透析液の再生において使用するための再生透析液を生成する
、吸着剤。
84.記述1~33、34または38のいずれか1つに記載の吸着剤、および必須のイオ
ンの塩を含む注入液を含む、キット。
85.前記可溶性塩が、炭酸ナトリウムである、記述4または37のどちらか1つに記載
の吸着剤。
86.前記可溶性ナトリウム塩が、前記吸着剤における分離層またはコンパートメントを
構成する、記述1~9のいずれか1つに記載の吸着剤。
87.前記炭酸脱水酵素が、固体支持体への化学的結合もしくは物理的結合によって固定
化されているか、または架橋もしくは封入によって固定化されている、記述33または6
5のどちらか1つに記載されている吸着剤。
88.120mEq/L~150mEq/Lのナトリウムイオン濃度をもたらすように適
合されている、記述74に記載の透析システム。
89.前記注入溶液中の陽イオン当量の濃度が、所定の透析液ナトリウムイオン濃度とほ
ぼ等しく、吸着剤におけるイオン交換の後にその注入溶液を加えることによって、目標の
透析液ナトリウム濃度が提供される、記述71に記載の透析システム。
90.前記必須の陽イオンが、注入溶液として投入され、その注入溶液中の陽イオン当量
の濃度が、所定の透析液ナトリウムイオン濃度とほぼ等しく、吸着剤におけるイオン交換
の後にその注入溶液を加えることによって、目標の透析液ナトリウム濃度が提供される、
記述81に記載のプロセス。
91.前記注入液が、必須の陽イオンの濃度が目標のナトリウムイオン濃度とほぼ等しい
注入溶液の形態であるか、または前記キットが、必須の陽イオンの濃度が目標のナトリウ
ムイオン濃度とほぼ等しい注入溶液を調製するための指示書を備える、請求項84に記載
のキット。
不用な代謝産物を透析液体から除去するための吸着剤であって、該吸着剤は、(a)固体支持体に固定化された尿毒症毒素処理酵素を含む尿毒症毒素処理酵素粒子;(b)アンモニウムイオンを主に水素イオンと交換し、必須の陽イオンを主にナトリウムイオンと交換するように形成された、陽イオン交換粒子;および(c)陰イオン交換粒子の均一な混合物を含み、可溶性のナトリウムイオン供給源をさらに含み、
前記陽イオン交換粒子が、3.5~5.0の範囲内のpHに設定されている、吸着剤。
前記陰イオン交換粒子が、非晶質かつ部分的に水和した非水溶性の金属酸化物を水酸化物対イオン型、炭酸対イオン型、酢酸対イオン型および/または乳酸対イオン型で含み、該金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る、請求項1~12のいずれか1項に記載の吸着剤。
前記注入溶液中の陽イオン当量の濃度が、所定の透析液ナトリウムイオン濃度とほぼ等しく、該吸着剤におけるイオン交換の後に該注入溶液を加えることによって、目標の透析液ナトリウム濃度が提供される、請求項21に記載の透析システム。
前記注入液が、必須の陽イオンの濃度が目標のナトリウムイオン濃度とほぼ等しい注入溶液の形態であるか、または前記キットが、必須の陽イオンの濃度が目標のナトリウムイオン濃度とほぼ等しい注入溶液を調製するための指示書を含む、請求項27に記載のキット。