(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150364
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電動ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20231005BHJP
F04B 49/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04B49/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059450
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 剛史
(72)【発明者】
【氏名】津久井 謙
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一成
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA05
3H145AA12
3H145AA24
3H145AA42
3H145BA38
3H145CA09
3H145CA12
3H145CA22
3H145DA05
3H145DA16
3H145EA17
3H145EA20
3H145EA37
3H145EA42
3H145EA45
(57)【要約】
【課題】電動ポンプシステムの振動を抑制する。
【解決手段】電動ポンプシステム100は、通電によって作動が制御されるソレノイドバルブ40の開度に応じて吐出流量が制御されるポンプ10と、ポンプ10を駆動する電動モータ50と、要求されるポンプ10の吐出流量又は吐出圧を示す指令信号に基づいてポンプ10のソレノイドバルブ40及び電動モータ50の作動を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、電動ポンプシステム100又はCVT2に所定の振動が生じるかを判定するための判定条件が満たされる場合には、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の作動を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物に作動流体を供給する電動ポンプシステムであって、
通電によって作動が制御されるソレノイドバルブの開度に応じて吐出流量が制御されるポンプと、
前記ポンプを駆動する電動モータと、
要求される前記ポンプの吐出流量又は吐出圧を示す指令信号に基づいて前記ポンプの前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータの作動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記電動ポンプシステム又は前記駆動対象物に生じる振動に基づいて設定される判定条件が満たされると、前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする電動ポンプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電動ポンプシステムであって、
前記ポンプ、前記電動モータ、及び前記駆動対象物のいずれかの振動を検出する振動検出部を有し、
前記制御装置は、前記振動検出部の検出結果が所定の閾値よりも大きくなると、前記判定条件が満たされているとして、前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする電動ポンプシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の電動ポンプシステムであって、
前記ポンプ又は前記電動モータの振動を検出する第1振動検出部と、
前記駆動対象物の振動を検出する第2振動検出部と、を有し、
前記制御装置は、
前記第1振動検出部の検出結果から振幅が所定の第1振幅閾値以上となる第1周波数帯を取得し、
前記第2振動検出部の検出結果から振幅が所定の第2振幅閾値以上となる第2周波数帯と取得し、
前記第1周波数帯と前記第2周波数帯とが少なくとも一部において重複すると、前記判定条件が満たされているとして、前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする電動ポンプシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の電動ポンプシステムであって、
前記電動モータの回転数を検出する回転検出部をさらに備え、
前記ポンプは、ベーンポンプであり、
前記制御装置は、
前記ポンプのベーン数と前記回転検出部の検出結果とに基づいて前記ポンプの次数成分の周波数を算出し、
前記電動モータのスロット数、極数、及び前記スロット数と前記極数の最小公倍数のいずれかと、前記回転検出部の検出結果と、に基づいて前記電動モータの次数成分の周波数を算出し、
前記ポンプの次数成分の周波数と前記電動モータの次数成分の周波数が重複すると、前記判定条件が満たされているとして、前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする電動ポンプシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の電動ポンプシステムであって、
前記制御装置には、前記駆動対象物の固有振動数である共振周波数領域が予め記憶されており、
前記制御装置は、前記ポンプの次数成分の周波数及び前記電動モータの次数成分の周波数の少なくとも一方が前記共振周波数領域と重複すると、前記判定条件が満たされているとして、前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする電動ポンプシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の電動ポンプシステムであって、
前記制御装置には、前記電動モータの回転数と前記ソレノイドバルブの開度との組み合わせにおいて、所定以上の振動が発生する使用制限条件を表す制御マップが記憶されており、
前記制御装置は、前記使用制限条件で前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータが作動していると、前記判定条件が満たされるとして、前記ソレノイドバルブ及び前記電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする電動ポンプシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の電動ポンプシステムであって、
前記制御装置は、前記判定条件が満たされると、要求される前記ポンプの前記吐出流量が確保されるように、前記ソレノイドバルブの開度を減少させると共に前記電動モータの回転数を増加させる、又は、前記ソレノイドバルブの開度を増加させると共に前記電動モータの回転数を減少させることを特徴とする電動ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可変容量形ポンプを電動モータによって駆動する電動モータ駆動式ポンプ装置が開示されている。この電動モータ駆動式ポンプ装置では、ポンプは可変容量型のベーンポンプであり、カムリングを移動変位させる切換バルブが設けられる。切換バルブの作動を制御することで、ポンプ吐出容量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような電動ポンプ装置では、駆動対象物に要求される流量又は圧力で作動流体を供給するように、作動が制御される。この電動ポンプ装置では、駆動対象物に要求される作動流体を供給すると共に、その振動や騒音を抑制することも求められている。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、振動を抑制可能な電動ポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電動ポンプシステムであって、通電によって作動が制御されるソレノイドバルブの開度に応じて吐出流量が制御されるポンプと、ポンプを駆動する電動モータと、要求されるポンプの吐出流量又は吐出圧を示す指令信号に基づいてポンプのソレノイドバルブ及び電動モータの作動を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、電動ポンプシステム又は駆動対象物に生じる振動に基づいて設定される判定条件が満たされると、ソレノイドバルブ及び電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする。
【0007】
この発明では、所定の振動が生じるような作動条件でソレノイドバルブ及び電動モータが作動していると、ソレノイドバルブ及び電動モータの少なくとも一方の作動が調整される。これにより、振動が発生しやすい作動条件である判定条件での電動ポンプの作動が回避される。
【0008】
また、本発明は、ポンプ、電動モータ、及びポンプが取り付けられた駆動対象物のいずれかの振動を検出する振動検出部を有し、制御装置は、振動検出部の検出結果が所定の閾値よりも大きくなると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ及び電動モータの少なくとも一方の作動を調整する。
【0009】
この発明では、検出される振動に基づいてソレノイドバルブ及び電動モータの作動が調整されるため、より確実に振動を抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、ポンプ又は電動モータの振動を検出する第1振動検出部と、ポンプが取り付けられた駆動対象物の振動を検出する第2振動検出部と、を有し、制御装置は、第1振動検出部の検出結果から振幅が所定の第1振幅閾値以上となる第1周波数帯を取得し、第2振動検出部の検出結果から振幅が所定の第2振幅閾値以上となる第2周波数帯と取得し、第1周波数帯と第2周波数帯とが少なくとも一部において重複すると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ及び電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、制御装置が、第1振動検出部及び第2振動検出部の結果をそれぞれ周波数分析し、前記第1周波数帯と第2周波数帯とが重複するかを比較することを特徴とする。
【0012】
これらの発明では、電動ポンプシステムと駆動対象物との両方の振動に基づくことで、電動ポンプシステムと駆動対象物の両方の振動の発生を判定することができ、共振が発生している場合など、電動ポンプシステム及び駆動対象物の全体としての振動を抑制することができる。
【0013】
また、本発明は、制御装置には、電動モータの回転数とソレノイドバルブの開度との組み合わせにおいて、所定以上の振動を発生させない使用可能条件と所定以上の振動が発生する制限条件とを表す制御マップが記憶されており、制御装置は、使用が制限される作動条件でソレノイドバルブ及び電動モータが作動していると、判定条件が満たされるとして、ソレノイドバルブ及び電動モータの少なくとも一方の作動を調整する。
【0014】
この発明では、振動を検出するセンサ等を用いなくても、振動が生じやすい作動条件でのポンプ及び電動モータの作動を避けることができる。
【0015】
また、本発明は、電動モータの回転数を検出する回転検出部をさらに備え、ポンプは、ベーンポンプであり、制御装置は、ポンプのベーン数と回転検出部の検出結果とに基づいてポンプの次数成分の周波数を算出し、電動モータのスロット数、極数、及びスロット数と極数の最小公倍数のいずれかと、回転出部の検出結果と、に基づいて電動モータの次数成分の周波数を算出し、ポンプの次数成分の周波数と電動モータの次数成分の周波数が重複すると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ及び電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする。
【0016】
この発明では、ポンプと電動モータとの次数成分の周波数が重複することで増幅される振動を抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、制御装置には、駆動対象物の固有振動数である共振周波数領域が予め記憶されており、制御装置は、ポンプの次数成分の周波数及び電動モータの次数成分の周波数の少なくとも一方が共振周波数領域と重複すると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ及び電動モータの少なくとも一方の作動を調整することを特徴とする。
【0018】
この発明では、電動ポンプシステムと駆動対象物との共振振動の増幅を抑制することができる。
【0019】
また、本発明は、制御装置が、判定条件が満たされると、要求されるポンプの吐出流量が確保されるように、ソレノイドバルブの開度を減少させると共に電動モータの回転数を増加させる、又は、ソレノイドバルブの開度を増加させると共に電動モータの回転数を減少させることを特徴とする。
【0020】
この発明では、駆動対象物に対して必要な流量を供給しつつ、ポンプ及び電動モータの両方の振動の周波数を変更して振動の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電動ポンプシステムの振動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動ポンプシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るポンプの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る電動ポンプシステムの構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】横軸を周波数、縦軸を振幅として、振動を表したグラフ図であり、(a)はポンプで生じる振動、(b)はCVTで生じる振動を表す図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第3実施形態における制御マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動ポンプシステム100について説明する。
【0024】
(第1実施形態)
電動ポンプシステム100は、作動流体によって作動する駆動対象物(流体圧機器)に対して、作動流体(本実施形態では、作動油)を供給する装置である。以下では、電動ポンプシステム100は、車両Vに搭載され、駆動対象物としてのベルト式無段変速機構(以下、「CVT2」と称する。)を備える変速機に対して作動油を供給する場合を例に説明する。なお、駆動対象物は、建設機械の流体圧制御装置や車両の自動変速機などであってもよい。
【0025】
図1に示すように、電動ポンプシステム100は、CVT2の作動を制御する車両VのECU3から指令信号を受信し、指令信号に応じて作動油をCVT2に供給する。電動ポンプシステム100は、可変容量型のポンプ10と、ポンプ10を駆動する電動モータ50と、ポンプ10及び電動モータ50によって構成される電動ポンプ1の振動を検出する振動検出部としての加速度センサ61と、ポンプ10及び電動モータ50の作動を制御する制御装置60と、を備える。
【0026】
ポンプ10は、可変容量型のベーンポンプである。また、ポンプ10は、非平衡型のベーンポンプである。ポンプ10は、
図2に示すように、回転駆動されるロータ11と、ロータ11に径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン12と、ロータ11及びベーン12を収容するカムリング13と、を備える。ロータ11は、電動モータ50の回転軸51に連結されており、電動モータ50の回転軸51と共に回転する。
【0027】
ベーン12は、ベーン12に印加される背圧とロータ11の回転に伴って遠心力によって径方向外側に付勢され、ベーン12の先端部がカムリング13の内周面13aに沿って摺動する。ロータ11とカムリング13とは、ポンプボディ(図示省略)とポンプカバー(図示省略)との間に設けられており、ロータ11とカムリング13との間には、各ベーン12によって仕切られたポンプ室14が複数形成される。
【0028】
カムリング13は、ロータ11の中心に対して偏心している。そのため、ロータ11の回転に伴ってベーン12が往復動し、ポンプ室14が拡縮する。ポンプ室14の拡大に伴って、タンクT内の作動油が吸込通路5a及び吸込ポート(図示省略)を通じてポンプ室14に吸い込まれる。ポンプ室14の縮小に伴って、ポンプ室14から作動油が吐出ポート(図示省略)を通じて吐出される。吐出された作動油は、吐出通路5bに導かれてCVT2に供給される。
【0029】
ポンプ10の押しのけ容積(吐出容量)は、カムリング13の偏心量に応じて変化する。具体的には、偏心量が減少すると、押しのけ容積は減少する。偏心量が増加すると、押しのけ容積は増加する。なお、押しのけ容積は、ロータ11の1回転当たりの作動油の吐出量に相当する。
図2は、カムリング13が最大限偏心しておりポンプ10の押しのけ容積が最大となっている状態を示している。
【0030】
ポンプ10は、カムリング13を取り囲む環状のアダプタリング20と、カムリング13とアダプタリング20との間の圧力を制御する制御弁30と、制御弁30の作動特性を制御するソレノイドバルブ40と、を備える。
【0031】
アダプタリング20は、支持ピン21を介してカムリング13を揺動自在に支持している。カムリング13がアダプタリング20に対して揺動することにより、ロータ11の中心に対する偏心量が変化する。
【0032】
カムリング13とアダプタリング20との間の空間は、支持ピン21と、アダプタリング20の内周に設けられるシール部材22と、によって、第1流体圧室20aと第2流体圧室20bとに区画されている。第1流体圧室20aが拡大し第2流体圧室20bが縮小する方向(
図2における右方向)にカムリング13が揺動すると、偏心量が減少する。第1流体圧室20aが縮小し第2流体圧室20bが拡大する方向(
図2における左方向)にカムリング13が揺動すると、偏心量が増加する。
【0033】
カムリング13の揺動は、第1流体圧室20aと第2流体圧室20bとの圧力差に起因して生じる。第1流体圧室20aと第2流体圧室20bは、制御弁30を介してタンクTに接続されており、第1流体圧室20aと第2流体圧室20bの圧力は、制御弁30を用いて制御される。第2流体圧室20bは、吐出通路5bにおけるソレノイドバルブ40の上流に固定絞り5cを通じて接続されている。
【0034】
制御弁30は、ソレノイドバルブ40の前後の圧力差に応じて、第1ポジション30a又は第2ポジション30bに選択的に切り換えられる。第1ポジション30aでは、制御弁30は、第1流体圧室20aとタンクTとの連通を許容する一方で第2流体圧室20bとタンクTとの連通を遮断する。第2ポジション30bでは、制御弁30は、第1流体圧室20aとタンクTとの連通を遮断する一方で第2流体圧室20bとタンクTとの連通を可変絞り31を通じて許容する。可変絞り31は、ソレノイドバルブ40の前後の圧力差が大きいほど開口面積が大きくなるように形成されている。
【0035】
ソレノイドバルブ40は、制御装置60から供給される電流に応じて吐出通路5bの開度を調整する。吐出通路5bの開度が調整されることで、ソレノイドバルブ40の前後の圧力差が調整される。ソレノイドバルブ40は、吐出通路5bを閉じる方向に弁体(図示省略)を付勢するソレノイド41と、ソレノイド41に抗して弁体を付勢するスプリング42と、を有する。
【0036】
ソレノイドバルブ40の前後の圧力差が所定の値より小さいと、制御弁30は、リターンスプリング32の付勢力により第1ポジション30aに保たれる。
【0037】
このとき、第1流体圧室20aは、制御弁30を通じてタンクTと連通し、第1流体圧室20a内の圧力はタンク圧となる。一方で、第2流体圧室20bとタンクTとの連通は制御弁30によって遮断される。第2流体圧室20bには吐出通路5bにおける作動油が導かれるため、カムリング13は、第2流体圧室20b内の圧力によって
図2における左方向に付勢され、最大限偏心した位置で保持される。その結果、ポンプ10の押しのけ容積は最大となる。
【0038】
ロータ11の回転数の増加又はソレノイド41への通電量の増加によってソレノイドバルブ40の前後の圧力差が所定の値に達すると、制御弁30が第2ポジション30bに切り換えられる。これにより、制御弁30は、第1流体圧室20aとタンクTとの連通を遮断する一方で、第1流体圧室20aと吐出通路5bとの連通を許容する。そのため、第1流体圧室20a内の圧力は上昇する。また、制御弁30は、第2流体圧室20bとタンクTとの連通を可変絞り31を通じて許容する。そのため、第2流体圧室20b内の圧力は低下し、カムリング13は、第1流体圧室20a内の圧力によって
図1における右方向に揺動する。その結果、偏心量は減少し、ポンプ10の押しのけ容積が減少する。
【0039】
以上のように、電動ポンプシステム100では、ロータ11の回転数(電動モータ50の回転数)と、ソレノイドバルブ40への通電量と、を制御することで、ポンプ10の押しのけ容積を調整して、ポンプ10の吐出流量を調整することができる。
【0040】
加速度センサ61は、電動ポンプ1に生じる振動を測定可能な位置に取り付けられる。例えば、加速度センサ61は、電動モータ50を車両Vに取り付けるブラケット部(図示省略)に設けられる。なお、加速度センサ61が取り付けられる位置は、これに限定されず、任意の位置とすることができるが、可能な限り車両V(母機)に近い位置で振動を検出することが望ましい。また、加速度センサ61は、電動モータ50とポンプ10との両方に取り付けられてもよい。加速度センサ61の検出結果(振幅)は、制御装置60に入力される。加速度センサ61は、駆動対象物であるCVT2など、車両V側に設けてもよい。
【0041】
制御装置60は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成されるECUである。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。制御装置60は、少なくとも、本実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能にプログラムされている。なお、制御装置60は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0042】
制御装置60は、本明細書に記載の電動ポンプ1の制御方法を実行可能となるように、電動モータ50及びポンプ10の作動を制御する。
【0043】
図3は、制御装置60が実行する電動ポンプ1の制御方法を示すフローチャートである。制御装置60は、例えば、車両VのイグニッションスイッチがONされ、電動ポンプシステム100が起動されると、
図3に示す処理を所定の時間間隔で実行する。
【0044】
ステップS10では、指令信号に応じた流量及び圧力となるように、電動モータ50の回転数及びソレノイドバルブ40の開度を調整する。
【0045】
ステップS11では、電動ポンプ1に生じる振動に基づいて設定される判定条件を満たすか否かを判定する。具体的には、判定条件とは、加速度センサ61が検出する振動が、所定の振動閾値以上であるかである。たとえば、振動閾値は、電動ポンプ1において共振が生じた場合の振動の振幅の値に相当する。加速度センサ61が検出した振動が振動閾値以上であれば、判定条件を満たすとしてステップS12に進む。つまり、判定条件を満たす場合とは、電動ポンプ1が共振周波数によって作動している場合である。加速度センサ61が検出した振動が閾値未満であれば、そのまま処理を終了する。
【0046】
ステップS12では、電動モータ50の回転数を下げる(つまり、電動モータ50への通電量を減少させる)と共に、ソレノイドバルブ40の開度を増加させる(つまり、ソレノイドバルブ40への通電量を増加させる)ように、電動ポンプ1の作動を制御する。その後、ステップS11でNOと判定されるまで、ステップS11及びS12が繰り返し実行される。
【0047】
ソレノイドバルブ40の開度を増加させることで、ポンプ10の押しのけ容積が増加して、1回転当たりの吐出量は大きくなる。このため、電動モータ50の回転数を下げても、ポンプ10が吐出する作動油の流量を下げることなく、指令信号に応じた流量及び圧力での作動油の供給が維持される。言い換えると、ステップS12では、ポンプ10が吐出する作動油の流量が指令信号に応じた流量を確保する(下回らない)ように、電動モータ50の回転数の減少及びソレノイドバルブ40の開度の増加が行われる。
【0048】
また、電動モータ50の回転数が下がるため、電動モータ50で生じる振動の周波数を変更することができる。電動モータ50の振動の周波数を変えることで、電動ポンプ1の振動を抑制することができる。
【0049】
なお、ステップS12では、電動モータ50の回転数を増加させ、ソレノイドバルブ40の開度を減少させるものでもよい。この場合であっても、電動ポンプ1が吐出する作動油の流量は要求される流量を確保しつつ、電動モータ50で生じる振動の周波数を変更して共振の発生を抑制することができる。
【0050】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0051】
電動ポンプシステム100では、電動ポンプ1に生じる振動が振動閾値以上となると、CVT2への供給流量を維持しつつ、電動モータ50の回転数が調整される。これにより、共振が生じる共振領域での電動モータ50の作動が避けられるため、電動ポンプ1における振動を抑制することができる。
【0052】
特に、ポンプが非平衡型である可変容量型ベーンポンプである場合、平行型である場合と比べて、振動が生じやすい。このような場合であっても、本実施形態の電動ポンプシステム100は、作動条件を調整することで振動を抑制できるため、特に有用である。
【0053】
(第2実施形態)
次に、
図4から
図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る電動ポンプシステム200について、説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
上記第1実施形態では、電動ポンプシステム100は、電動ポンプ1の振動を検出する加速度センサ61を有する。制御装置60は、加速度センサ61が検出した振動が、振動閾値以上であるかを判定条件として、電動ポンプ1の作動を制御する。
【0055】
これに対し、第2実施形態に係る電動ポンプシステム200では、ポンプ10、電動モータ50、又はCVT2で生じる振動を比較することで、振動が生じやすい作動条件(判定条件)であるかを判定する。具体的には、第2実施形態に係る電動ポンプシステム200は、
図4に示すように、電動モータ50の回転数を取得する回転検出部としてのレゾルバ52と、ポンプ10の振動を検出する第1振動検出部としての第1加速度センサ61と、CVT2の振動を検出する第2振動検出部としての第2加速度センサ62と、を有する。そして、制御装置60は、電動ポンプ1の振動とCVT2との振動を比較し、振幅が大きくなる周波数帯が重複していると、判定条件を満たすとして電動ポンプ1の作動を調整する。以下、具体的に説明する。
【0056】
第1加速度センサ61は、上記第1実施形態の加速度センサ61と同様の構成であるため、同一の符号で表して、詳細な説明は省略する。
【0057】
第2加速度センサ62は、例えば、電動ポンプシステム100が搭載される車両Vに取り付けられ、CVT2の振動を検出するものである。第2加速度センサ62の検出結果は、制御装置60に入力される。
【0058】
レゾルバ52は、電動モータ50に取り付けられ、電動モータ50の回転数(回転速度)を検出する。レゾルバ52の検出結果は、制御装置60に入力される。また、ポンプ10は、電動モータ50に連結されているため、電動モータ50の回転数からポンプ10の回転数を算出することができる。本実施形態では、ポンプ10の回転数は、電動モータ10の回転数と同一である。
【0059】
以下、第2実施形態に係る電動ポンプ1の制御方法について説明する。
【0060】
第2実施形態では、制御装置60は、
図5に示す処理を実行する。
【0061】
ステップS20では、電動モータ50の回転数を取得する。
【0062】
ステップS21では、第1加速度センサ61の検出結果からポンプ10で生じる振動の周波数分析を行い、電動モータ50の回転数に基づいて周波数帯と振幅との関係を取得する(
図6(a)参照)。周波数分析は、第1加速度センサ61の検出結果を高速フーリエ変換することで行われる。
【0063】
ステップS22では、
図6(a)に示すように、ステップS21で取得した周波数帯と振幅の関係とから、所定の第1振幅閾値以上となる周波数帯(以下、「第1周波数帯」と称する。)を取得する。
【0064】
ステップS23では、ステップS21と同様、第2加速度センサ62の検出結果からCVT2で生じる振動の周波数分析を行い、電動モータ50の回転数に基づいて周波数帯と振幅との関係を取得する。
【0065】
ステップS24では、ステップS22と同様、
図6(b)に示すように、ステップS23で取得した周波数帯と振幅の関係とから、所定の第2振幅閾値以上となる周波数帯(以下、「第2周波数帯」と称する。)を取得する。
【0066】
ステップS25では、ステップS22で取得した第1周波数帯とステップS24で取得した第2周波数帯とが重複しているかを判定する。
【0067】
ここで、ポンプ10の振動において振幅が大きくなる領域(第1周波数帯)と、CVT2の振動において振幅が大きくなる領域(第2周波数帯)とが、重複している場合、重複した周波数帯において共振が発生し、その結果振幅が大きくなっていると考えられる。つまり、共通の周波数帯において、ポンプ10及びCVT2のいずれにも振幅の増大が生じている場合は、共振が発生していると考えられる。よって、第1周波数帯と第2周波数帯との重複を判定することで、共振の発生を判定することができる。
【0068】
なお、ポンプ10側は振幅の小さい低振動だが、CVT2の固有振動数によっては、振動がCVT2側に伝わるにつれて増幅され、CVT2側のみが振幅の大きい高振動になる場合もある。そのような場合には、駆動対象物であるCVT2などの車両V側に加速度センサ61を設け、第1実施形態のような制御を用いて判定することが好ましい。
【0069】
第1周波数帯と第2周波数帯とが少なくとも一部において重複していると、判定条件を満たしているとして、ステップS26に進む。判定条件を満たしていない場合には、そのまま処理を終了する。
【0070】
ステップS26では、第1実施形態のステップS12と同様である。ステップS26を実行すると、処理を終了する。このように、電動ポンプ1の作動条件を変更することで、共振の発生を抑制することができる。
【0071】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0072】
電動ポンプシステム200では、電動ポンプ1とCVT2とが、共通の周波数帯において振幅が高くなっていると、共振が発生しているとして電動ポンプ1の作動が調整される。これにより、共振が生じる共振領域での電動ポンプ1の作動が避けられるため、電動ポンプ1及びCVT2における振動を抑制することができる。
【0073】
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
【0074】
上記第2実施形態では、ポンプ10の振動において振幅が大きくなる領域(第1周波数帯)と、CVT2の振動において振幅が大きくなる領域(第2周波数帯)とが、重複していると、電動ポンプ1の作動を制御して振動を抑制する。これに対し、ポンプ10の次数成分と電動モータ50の次数成分とが重複しないように電動ポンプ1の作動を制御して、振動を低減するようにしてもよい。以下、具体的に説明する。
【0075】
次数成分の周波数fは、f=n×z×N/60[Hz]で表わされる。ここで、nは次数、zはポンプ10ではベーン枚数、電動モータ50ではスロット数、極数、スロット数と極数の最小公倍数のいずれか、Nは回転数、fは次数成分の周波数である。ポンプ10及び電動モータ50の回転数は、レゾルバ52の検出結果より取得することができる。例えば、回転数600[rpm]でポンプ10のベーン枚数が10枚の時のポンプ10の1次成分の周波数(次数成分)は、f=1×10×600/60=100[Hz]となる。
【0076】
制御装置60は、ポンプ10及び電動モータ50のそれぞれにおいて、1次から所定の次数(例えば6次)までの次数成分の周波数fを算出する。なお、このように予め任意で定めた次数まで算出するものでもよいし、所定周波数(たとえば3000Hz)となるまで次数成分の周波数を算出するようにしてもよい。そして、制御装置60は、ポンプ10の各次数成分の周波数と、電動モータ50の各次数成分の周波数を比較し、互いに重複する場合には、判定条件が満たされているとして、ポンプ10及び電動モータ50の作動を制御する。具体的には、電動モータ50の回転数を制御する。電動モータ50の回転数を変更することで、重複していた次数成分でのポンプ10の周波数と電動モータ50の周波数とは、乖離するようになる。これにより、電動ポンプ1の振動を低減することができる。
【0077】
なお、各次数成分の比較においては、次数成分が一致しているかを判定するだけでなく、次数成分の差や比率が所定値以下であることを判定するようにしてもよい。つまり、周波数が重複するとは、互いに一致する場合に限定されず、両者の差が所定値以下又は比率が所定範囲内であるような場合も含む意味である。別の観点からいえば、本明細書では、2つの周波数が重複するとは、それぞれの周波数を含む数値幅を有して設定される所定の周波数領域が互いに重複することを含む意味である。
【0078】
また、制御装置60は、ポンプ10と電動モータ50との周波数の次数成分を比較することに代えて、又は、加えて、CVT2(駆動対象物)との共振周波数領域と上記のポンプ10及び/又は電動モータ50の周波数の各次数成分とを比較して、判定条件を満たすかを判定してもよい。この場合、制御装置60は、CVT2の共振周波数領域とポンプ10及び/又は電動モータ50の周波数の各次数成分とが重複すると判定条件を満たすとして、ポンプ10及び電動モータ50の作動を制御する。共振周波数領域は、CVT2の固有振動数に基づいて設定されるものであり、制御装置60に予め記憶される。これにより、CVT2などの共振周波数領域と、ポンプ10及び/又は電動モータ50の次数成分が重複を避けることができるので、共振による振動を抑制することができる。
【0079】
以下、共振周波数領域の設定方法について、具体的に説明する。まず、駆動対象物であるCVT2に加速度センサを設け、ポンプ10又は電動モータ50の回転数をスイープさせて、振動データを取得する。そして、振動データを周波数分析し、周波数-振幅-時間(回転数)のグラフから、回転数をスイープさせても常に振動が大きい一定の周波数成分(たとえば500Hz)を共振周波数領域として特定する。なお、CVT2などの駆動対象物ではなく、電動ポンプシステム200の共振を抑える場合には、CVT2に代えて電動ポンプシステム200に対して上述の手法を適用することで実現可能である。
【0080】
(第3実施形態)
次に、
図7及び
図8を参照して、本発明の第3実施形態に係る電動ポンプシステム300について、説明する。以下では、主に上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
第3実施形態に係る電動ポンプシステム300は、上記第1実施形態の加速度センサ61、第2実施形態の第1加速度センサ61及び第2加速度センサ62を備えていない。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。つまり、第3実施形態に係る電動ポンプシステム300は、
図1に示す構造から加速度センサ61の構成を除外した構造を有する。
【0082】
電動ポンプシステム300では、共振が生じるような電動モータ50の回転数とソレノイドバルブ40の開度との組み合わせを表す制御マップ(
図8)が制御装置60に予め記憶される。制御マップに含まれた、共振が生じる作動条件で電動ポンプ1が作動している場合には、判定条件を満たすとして電動ポンプ1の作動を調整する。以下、具体的に説明する。
【0083】
以下、第3実施形態に係る電動ポンプ1の制御方法について説明する。
【0084】
第3実施形態では、制御装置60は、
図7に示す処理を実行する。
【0085】
ステップS30は、第1実施形態のステップS10(
図5参照)と同様であるため説明を省略する。
【0086】
ステップS31では、電動モータ50の回転数及びソレノイドバルブ40の開度の組み合わせ(以下、「現在の作動条件」と称する。)を制御マップと比較する。制御マップには、
図8に示すように、電動ポンプ1又はCVT2(車両V)に所定以上の振幅の振動を発生せず使用が可能な作動条件である使用可能条件と、所定以上の振幅の振動を発生させ使用が制限される使用制限条件と、が含まれている。現在の作動条件が、制御マップに含まれる使用制限条件と一致する場合には、判定条件を満たすとして、ステップS32に進み、電動ポンプ1の作動を制御する。ステップS32は、上記第1実施形態のステップS26(
図5参照)と同様である。以降、ステップS31でNOと判定されるまで、ステップS31及びS32が繰り返し実行される。現在の作動条件が、制御マップに含まれる使用可能条件と一致する場合には、処理を終了する。
【0087】
制御マップは、予め実験等を行って、共振が生じて振動が大きくなる電動モータ50の回転数とソレノイドバルブ40の開度との組み合わせを調べることで、作成することが可能である。
【0088】
このような第3実施形態においても、共振が生じる作動条件で電動ポンプ1が作動することが防止されるため、振動の発生を抑制することができる。
【0089】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0090】
上記第1実施形態における振動検出部、第2実施形態における第1振動検出部及び第2振動検出部は、それぞれ加速度センサである。これに対し、振動検出部、第1振動検出部、及び第2振動検出部は、振動を検出できるものである限り任意のものとすることができ、例えば、振動によって生じる音波を検出する音波計であってもよい。
【0091】
また、上記各実施形態では、判定条件を満たす場合には、ソレノイドバルブ40の開度と電動モータ50の回転数との両方を調整しているが、どちらか一方のみを調整するものでもよい。ソレノイドバルブ40の開度の調整のみを行う場合、ソレノイドバルブ40の開度を減少させてポンプ10の吐出容量を減少させる制御は、CVT2に対して必要な流量が供給される範囲内で実行される。同様に、電動モータ50の回転数の調整のみを行う場合、電動モータ50の回転数を減少させる制御は、CVT2に対して必要な流量が供給される範囲内で実行される。
【0092】
上記第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態は、排他的な構成ではなく、互いに組み合わせてもよい。3つの実施形態から選択される2つの実施形態を組み合わせてもよいし、すべての実施形態を組み合わせてもよい。
【0093】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0094】
電動ポンプシステム100,200,300は、通電によって作動が制御されるソレノイドバルブ40の開度に応じて吐出流量が制御されるポンプ10と、ポンプ10を駆動する電動モータ50と、要求されるポンプ10の吐出流量又は吐出圧を示す指令信号に基づいてポンプ10のソレノイドバルブ40及び電動モータ50の作動を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、電動ポンプシステム100,200,300又はCVT2に所定の振動が生じるかを判定するための判定条件が満たされる場合には、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の少なくとも一方の作動を調整する。
【0095】
この構成では、所定の振動が生じるような作動条件でソレノイドバルブ40及び電動モータ50が作動していると、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の少なくとも一方の作動が調整される。これにより、電動ポンプシステム100の振動の発生を抑制することができる。また、作動条件には、ソレノイドバルブ40の開度と電動モータ50の回転数という2つのパラメータが含まれるため、パラメータが一つしかない場合と比較して、要求される作動油の流量を確保しつつ、振動を抑制できる作動条件によって作動させやすくなる。
【0096】
また、電動ポンプシステム100は、ポンプ10、電動モータ50、及びポンプ10が取り付けられポンプ10が吐出する作動流体が供給される対象物のいずれかの振動を検出する加速度センサ61を有し、制御装置60は、加速度センサ61の検出結果が所定の閾値よりも大きくなると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の少なくとも一方の作動を調整する。
【0097】
この構成では、検出される振動に基づいてソレノイドバルブ40及び電動モータ50の作動が調整されるため、より確実に振動を抑制することができる。
【0098】
また、電動ポンプシステム200は、ポンプ10又は電動モータ50の振動を検出する第1加速度センサ61と、ポンプ10が取り付けられポンプ10が吐出する作動油が供給されるCVT2の振動を検出する第2加速度センサ62と、を有し、制御装置60は、第1振動検出部の検出結果から振幅が所定の第1振幅閾値以上となる第1周波数帯を取得し、第2振動検出部の検出結果から振幅が所定の第2振幅閾値以上となる第2周波数帯と取得し、第1周波数帯と第2周波数帯とが少なくとも一部において重複すると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の少なくとも一方の作動を調整する。
【0099】
また、電動ポンプシステム200は、制御装置60は、第1加速度センサ61及び第2加速度センサ62の結果をそれぞれ周波数分析し、第1周波数帯と第2周波数帯とが重複するかを比較する。
【0100】
これらの構成では、電動ポンプシステム200とCVT2との両方の振動に基づくことで、電動ポンプシステム200とCVT2との共振を判定することができ、電動ポンプシステム200及び車両Vの全体としての振動を抑制することができる。
【0101】
また、電動ポンプシステム300では、制御装置60には、電動モータ50の回転数とソレノイドバルブ40の開度との組み合わせにおいて、所定以上の振動を発生させない使用可能条件と所定以上の振動が発生する使用制限条件とを表す制御マップが記憶されており、制御装置60は、使用が制限される作動条件でソレノイドバルブ40及び電動モータ50が作動していると、判定条件が満たされるとして、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の少なくとも一方の作動を調整する。
【0102】
この構成では、振動を検出するセンサ等を用いなくても、振動が生じやすい作動条件での電動ポンプ1の作動を避けることができる。
【0103】
また、電動ポンプシステム200は、電動モータ50の回転数を検出するレゾルバ52をさらに備え、ポンプ10は、ベーンポンプであり、制御装置60は、ポンプ10のベーン数とレゾルバ52の検出結果とに基づいてポンプ10の次数成分の周波数を算出し、電動モータ50のスロット数、極数、及びスロット数と極数の最小公倍数のいずれかと、レゾルバ52の検出結果と、に基づいて電動モータ50の次数成分の周波数を算出し、ポンプ10の次数成分の周波数と電動モータ50の次数成分の周波数が重複すると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の少なくとも一方の作動を調整する。
【0104】
この構成では、ポンプ10と電動モータ50との次数成分の周波数が重複することで増幅される振動を抑制することができる。
【0105】
また、電動ポンプシステム200では、制御装置60には、CVT2の固有振動数である共振周波数領域が予め記憶されており、制御装置60は、ポンプ10の次数成分の周波数及び電動モータ50の次数成分の周波数の少なくとも一方が共振周波数領域と重複すると、判定条件が満たされているとして、ソレノイドバルブ40及び電動モータ50の少なくとも一方の作動を調整する。
【0106】
この構成では、電動ポンプシステム200とCVT2との共振振動の増幅を抑制することができる。
【0107】
また、電動ポンプシステム100,200,300では、制御装置60が、判定条件が満たされると、要求されるポンプ10の吐出流量が確保されるように、ソレノイドバルブ40の開度を減少させると共に電動モータ50の回転数を増加させる、又は、ソレノイドバルブ40の開度を増加させると共に電動モータ50の回転数を減少させる。
【0108】
この構成では、CVT2に対して必要な流量を供給しつつ、ポンプ10及び電動モータ50の両方の振動の周波数を変更して振動の発生を抑制することができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0110】
100,200,300…電動ポンプシステム、1…電動ポンプ、2…CVT(駆動対象物)、10…ポンプ、40…ソレノイドバルブ、50…電動モータ、52…レゾルバ(回転検出部)、60…制御装置、61…加速度センサ(振動検出部),第1加速度センサ(第1振動検出部)、62…第2加速度センサ(第2振動検出部)