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特開2023-150366エレベータ巻上機用シャフト固定治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150366
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】エレベータ巻上機用シャフト固定治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20231005BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B11/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059453
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一色 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
【テーマコード(参考)】
3F304
3F306
【Fターム(参考)】
3F304BA13
3F306AA02
3F306BA03
3F306BA06
(57)【要約】
【課題】軸受をシャフトから取り外す際に、ウォームホイールの歯が破損することを防止し得るエレベータ巻上機用シャフト固定治具を提供する。
【解決手段】シャフト固定治具60は、ベース部材61と、ベース部材61に対して巻上機20のシャフト26の長手方向に移動可能であるスペーサ部材65とを備える。スペーサ部材65は、巻上機20のブレーキホイール50に当接し得るヘッド部66を含む。ベース部材61は、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に固定される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に対してエレベータ巻上機のシャフトの長手方向に移動可能であるスペーサ部材とを備え、
前記スペーサ部材は、前記エレベータ巻上機のブレーキホイールに当接し得るヘッド部を含み、
前記ベース部材は、固定部材を用いて、前記エレベータ巻上機のうち前記長手方向において前記ブレーキホイールに対向する部分に固定される、エレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項2】
前記シャフトの前記長手方向における前記スペーサ部材の位置をロックするロック部材をさらに備える、請求項1に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記スペーサ部材が螺合され得るナットである、請求項2に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項4】
前記ベース部材に、雌ねじ孔が設けられており、
前記スペーサ部材は、前記雌ねじ孔に螺合し得るボルトである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項5】
前記ヘッド部は、前記ブレーキホイールのうち、前記シャフトが嵌合されるボス部に当接し得る、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項6】
前記ベース部材には、前記シャフトを受け入れ可能な凹部が設けられている、請求項5に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記シャフトの側面に沿って湾曲している、請求項5に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項8】
前記ベース部材に固定されている固定片をさらに備え、
前記ベース部材は、前記固定片と前記固定片を固定する前記固定部材とを用いて、前記エレベータ巻上機の前記部分に固定される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【請求項9】
前記固定部材は、前記シャフトを回転可能に支持する軸受のオイルシールを押圧する押圧部材である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のエレベータ巻上機用シャフト固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ巻上機用シャフト固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-172604号公報(特許文献1)は、モータと、シャフトと、シープと、軸受と、ウォームホイールとを備えるエレベータ用巻上機を開示している。シープには、エレベータのロープが巻かれている。ロープの一端はかごに接続されており、ロープの他端はカウンターウエイトに接続されている。シャフトは、ウォーム部を含む。ウォーム部は、ウォームホイールの歯にかみ合っている。モータは、シャフトを回転させる。軸受は、シャフトを回転可能に支持する。モータがシャフトを回転させると、ウォーム部にかみ合っているウォームホイールが回転する。ウォームホイールが回転すると、シープが回転して、かご及びカウンターウエイトが移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-172604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受を交換するために、軸受をシャフトから取り外す。しかし、特許文献1では、軸受をシャフトから取り外す際に、シャフトが移動して、シャフトのウォーム部にかみ合っているウォームホイールの歯が破損するおそれがある。本開示の目的は、軸受をシャフトから取り外す際に、ウォームホイールの歯が破損することを防止し得るエレベータ巻上機用シャフト固定治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のエレベータ巻上機用シャフト固定治具は、ベース部材と、ベース部材に対してエレベータ巻上機のシャフトの長手方向に移動可能であるスペーサ部材とを備える。スペーサ部材は、エレベータ巻上機のブレーキホイールに当接し得るヘッド部を含む。ベース部材は、固定部材を用いて、エレベータ巻上機のうちシャフトの長手方向においてブレーキホイールに対向する部分に固定される。
【発明の効果】
【0006】
本開示のエレベータ巻上機用シャフト固定治具は、エレベータ巻上機の軸受の交換時に、この軸受によって回転可能に支持されているシャフトが移動することを防止することができる。本開示のエレベータ巻上機用シャフト固定治具によれば、エレベータ巻上機の軸受の交換時に、ウォームホイールの歯が破損することが防止され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具の概略正面図である。
図2】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具の、図1に示される断面線II-IIにおける概略断面図である。
図3】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具が適用されるエレベータ巻上機を含むエレベータの全体構成を示す概略図である。
図4】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具が適用されるエレベータ巻上機の概略拡大側面図である。
図5】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具が適用されるエレベータ巻上機の概略部分拡大正面図である。
図6】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具が適用されるエレベータ巻上機の概略部分拡大側面図である。
図7】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具が適用されるエレベータ巻上機の概略部分拡大側面図である。
図8】実施の形態のエレベータ巻上機用シャフト固定治具が適用されるエレベータ巻上機の概略部分拡大側面図である。
図9】実施の形態の変形例のエレベータ巻上機用シャフト固定治具の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0009】
図1及び図2に示される実施の形態のシャフト固定治具60は、図4図6図7及び図8に示されるように、軸受33の交換時に、エレベータ巻上機(巻上機20)のシャフト26が移動することを防止するために用いられる治具である。図3から図5を参照して、シャフト固定治具60が適用される巻上機20と、巻上機20を備えるエレベータ1とを説明する。
【0010】
図3を参照して、エレベータ1は、建築物2に設けられている。エレベータ1は、例えば、昇降路3と、最下階乗り場6と最上階乗り場7とを含む複数の乗り場と、機械室8と、巻上機20と、そらせ車15と、かご10と、カウンターウエイト11と、ロープ12と、バッファ18とを含む。
【0011】
ピット4は、昇降路3のうち最下階乗り場6より下方の部分である。ピット床5は、昇降路3の底面である。機械室8は、昇降路3の上方に設けられている。機械室8には、巻上機20と、そらせ車15とが設置されている。ロープ12の一端は、かご10に接続されている。ロープ12の他端は、カウンターウエイト11に接続されている。巻上機20は、綱車21と、綱車シャフト22とを含む。ロープ12は、綱車21に巻かれている。綱車21は、綱車シャフト22の一端に連結されている。綱車21が回転することによって、ロープ12は移動する。かご10は、昇降路3を昇降する。カウンターウエイト11は、かご10と反対方向に昇降路3を昇降する。
【0012】
バッファ18は、ピット床5上に設置されている。バッファ18は、カウンターウエイト11の下方に配置されている。ロープ12が破断してカウンターウエイト11が自由落下した場合に、カウンターウエイト11がピット床5に衝突する際の衝撃を、バッファ18は緩和し得る。バッファ18の頂部は、最下階乗り場6より下方にある。
【0013】
図4及び図5を参照して、巻上機20は、綱車21(図3を参照)及び綱車シャフト22に加えて、例えば、フレーム23と、モータケース24と、ウォームホイール25と、シャフト26と、モータ30と、軸受31と、軸受33と、軸受箱34と、リングナット35と、軸受カバー36と、軸受41と、オイルシール42と、軸受箱43と、押圧部材45と、ブレーキホイール50と、ブレーキシュー55とを含む。
【0014】
フレーム23は、鉄などの金属で形成されている。フレーム23は、例えば、ウォームホイール25と、シャフト26と、軸受箱34と、軸受41と、オイルシール42と、ブレーキホイール50と、ブレーキシュー55とを収容している。
【0015】
ウォームホイール25は、綱車シャフト22の他端に連結されている。シャフト26は、ウォーム部27を含む。ウォームホイール25の歯は、ウォーム部27にかみ合っている。ウォームホイール25とウォーム部27とは、ウォームギアを形成している。シャフト26のうちウォーム部27が形成されていない部分の側面26aは、円柱側面などのように湾曲した側面である。
【0016】
モータケース24は、モータ30と、軸受31とを収容している。モータ30は、シャフト26を回転させる。シャフト26は、例えば、モータシャフトである。軸受31は、シャフト26の一方端に配置されている。軸受31は、シャフト26を回転可能に支持している。
【0017】
軸受箱34は、軸受33を収容している。軸受箱34は開口34aを含む。軸受33は、軸受箱34の開口34aを通して、軸受箱34の中に収容される、または、軸受箱34から取り出される。軸受33は、シャフト26の一方端に配置されている。軸受31は、シャフト26を回転可能に支持している。軸受31は、例えば、シャフト26のスラスト方向(長手方向)にかかる荷重を支えるスラスト軸受である。リングナット35は、軸受33がシャフト26から外れることを防止するとともに、シャフト26の長手方向において軸受33を位置決めする。軸受カバー36は、例えば、ボルト(図示せず)を用いて、軸受箱34に固定されている。軸受カバー36は、軸受箱34の開口34aを閉塞する。
【0018】
軸受41は、シャフト26の長手方向において、軸受31と軸受33との間に配置されている。軸受41は、シャフト26の長手方向において、モータ30と、ウォーム部27との間に配置されている。軸受41は、シャフト26の長手方向において、ブレーキホイール50と、ウォーム部27との間に配置されている。軸受41は、シャフト26を回転可能に支持している。オイルシール42は、軸受41の潤滑材(例えば、潤滑油など)を封止する。軸受箱43は、軸受41と、オイルシール42と収容する。軸受箱43は、ストッパ44を含む。ストッパ44は、軸受41がシャフト26から外れることを防止するとともに、シャフト26の長手方向において軸受41を位置決めする。
【0019】
押圧部材45は、オイルシール42を押圧する。押圧部材45は、例えば、押さえ板46と、ボルト47とを含む。押さえ板46は、オイルシール42に対向している。ボルト47を締めることによって、押さえ板46はオイルシール42を押圧する。
【0020】
ブレーキホイール50は、薄肉部51と、外側リング部52と、ボス部53とを含む。薄肉部51は、ブレーキホイール50の径方向において、外側リング部52とボス部53とに接続されている。薄肉部51は、外側リング部52及びボス部53の各々よりも薄く形成されている。外側リング部52は、薄肉部51に対して、ブレーキホイール50の径方向外側に配置されている。外側リング部52の外周側面52aは、ブレーキホイール50の外周側面50aである。
【0021】
ボス部53は、薄肉部51に対して、ブレーキホイール50の径方向内側に配置されている。ボス部53には、ボス孔53aが設けられている。シャフト26は、ボス孔53aに嵌合されている。ボス部53は、頂面53bを含む。シャフト26の長手方向(シャフト26の軸方向)からの平面視において、ボス部53の頂面53bは、リング形状を有している。ボス部53の頂面53bは、ボス部53のうち薄肉部51から最も離れた面である。ボス部53の頂面53bは、ボス部53のうち、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に最も近い面である。
【0022】
図5を参照して、ブレーキシュー55は、ブレーキホイール50の外周側面50aに面している。ブレーキシュー55は、ブレーキホイール50の径方向に移動可能である。ブレーキシュー55がブレーキホイール50に押し当てられると、ブレーキホイール50の回転が停止する。ブレーキホイール50の回転が停止すると、シャフト26、ウォームホイール25、綱車シャフト22、及び、綱車21も回転を停止して、かご10(図3を参照)及びロープ12(図3を参照)が停止する。
【0023】
図1及び図2を参照して、本実施の形態のシャフト固定治具60の構成を説明する。シャフト固定治具60は、ベース部材61と、スペーサ部材65と、固定片70と、ロック部材68とを備える。
【0024】
ベース部材61は、ステンレスのような金属で形成されている。ベース部材61は、主面61aと、主面61aとは反対側の主面61bと、側面61cと、側面61dとを含む。主面61aと主面61bとは、シャフト26の長手方向において互いに対向している。図4及び図6から図8に示されるように、主面61bは、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に面している。主面61bは、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に接触してもよい。ベース部材61は、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に固定される。巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分は、例えば、オイルシール42である。側面61cは、主面61aと主面61bとに接続されている。側面61cは、ベース部材61の長手側面である。側面61dは、主面61aと主面61bとに接続されている。側面61dは、ベース部材61の短手側面である。
【0025】
ベース部材61に、雌ねじ孔62が設けられている。雌ねじ孔62は、主面61aに設けられている。雌ねじ孔62は、主面61aから主面61bまで延在してもよい。ベース部材61に、シャフト26を受け入れ可能な凹部61fが設けられている。凹部61fは、シャフト26の側面26aに沿って湾曲している。凹部61fは、例えば、側面61cに設けられている。
【0026】
スペーサ部材65は、ベース部材61に対して、シャフト26の長手方向(主面61aの法線方向、主面61bの法線方向)に移動可能である。スペーサ部材65は、例えば、雌ねじ孔62に螺合し得るボルトである。スペーサ部材65は、ヘッド部66と、胴部67とを含む。胴部67の長手方向は、シャフト26の長手方向(主面61aの法線方向、主面61bの法線方向)である。胴部67の側面に、ねじ溝が形成されている。胴部67は、雌ねじ孔62に螺合し得る。ヘッド部66は、胴部67に接続されている。ヘッド部66は、ブレーキホイール50(図4及び図6から図8を参照)に当接し得る。より具体的には、ヘッド部66は、ブレーキホイール50のボス部53(頂面53b)に当接し得る。
【0027】
本実施の形態では、スペーサ部材65の数は二つである。スペーサ部材65の数は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。シャフト固定治具60が複数のスペーサ部材65を含む場合、複数のスペーサ部材65は、シャフト26の側面26aまたはリング状のボス部53の頂面53bに沿って配列されてもよい。
【0028】
図2を参照して、ロック部材68は、シャフト26の長手方向(主面61aの法線方向、主面61bの法線方向、胴部67の長手方向)におけるスペーサ部材65の位置をロックする。ロック部材68は、例えば、スペーサ部材65が螺合され得るナットである。ロック部材68は、主面61aに当接してもよい。
【0029】
図1及び図2を参照して、固定片70は、ボルトのような固定部材75を用いて、ベース部材61に固定されている。より具体的には、固定片70は、ベース部材61の側面61cに固定されている。
【0030】
固定片70は、例えば、L字形状を有する金属板である。固定片70は、第1板部分71と、第2板部分72とを含む。第1板部分71は、ベース部材61の側面61cに対向しており、固定部材75を用いてベース部材61の側面61cに固定されている。第2板部分72は、第1板部分71に接続されている。第2板部分72は、ベース部材61の主面61bに沿って延在している。第2板部分72の法線方向は、例えば、第1板部分71の法線方向に垂直である。第2板部分72は、表面72aと、表面72aとは反対側の表面72bとを含む。表面72aは、主面61bと面一であってもよい。第2板部分72に、孔73が設けられている。孔73は、表面72aから表面72bまで延在している。
【0031】
図1及び図4及び図6から図8に示されるように、ベース部材61は、固定片70と固定片70を固定する固定部材76とを用いて、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分(例えば、オイルシール42)に固定される。固定部材76は、固定片70を固定する。そのため、シャフト固定治具60がフレーム23から落下することが防止され得る。固定部材76は、例えば、オイルシール42を押圧する押圧部材45である。押さえ板46は、ボルト47のヘッド部と第2板部分72の表面72bとの間に挟まれている。ボルト47の胴部は、孔73及び押さえ板46を貫通している。ボルト47を締めることによって、押さえ板46はオイルシール42を押圧する。
【0032】
軸受33を交換するために、軸受33をシャフト26から取り外す。図4から図8を参照して、本実施の形態のシャフト固定治具60を使用したシャフト26から軸受33の取り外し方法と、シャフト固定治具60の作用とを説明する。
【0033】
モータ30を停止させるとともに、ブレーキシュー55をブレーキホイール50の外周側面50aに押し当てる。シャフト26の回転が停止する。ボルト47を緩めて、押さえ板46及びボルト47を、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分(例えば、オイルシール42)から取り外す。
【0034】
図6に示されるように、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分(例えば、オイルシール42)と、ブレーキホイール50との間に、シャフト固定治具60を設置する。具体的には、ベース部材61の凹部61fをシャフト26の側面26aに沿って配置する。凹部61f内に、シャフト26の一部が配置される。ベース部材61は、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分上に配置される。ベース部材61の主面61bは、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に接触してもよい。
【0035】
固定片70と固定部材76とを用いて、ベース部材61を、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に固定する。具体的には、第2板部分72の表面72b上に押さえ板46を配置する。ボルト47を締める。こうして、押さえ板46と第2板部分72とはオイルシール42を押圧するとともに、ベース部材61は、固定片70と固定部材76(押さえ板46及びボルト47)とを用いて、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に固定される。ベース部材61が、フレーム23から落下することが防止される。
【0036】
スペーサ部材65を、ブレーキホイール50のボス部53に向けて移動させる。例えば、スペーサ部材65が雌ねじ孔62に螺合し得るボルトである場合、スペーサ部材65を回転させることによって、スペーサ部材65は、ブレーキホイール50のボス部53に向けて移動する。スペーサ部材65のヘッド部66は、ボス部53の頂面53bに当接する。ロック部材68を用いて、シャフト26の長手方向におけるスペーサ部材65の位置をロックする。例えば、ロック部材68がナットである場合、ナットを締めることによって、スペーサ部材65の位置はロックされる。ナットは、ベース部材61の主面61aに当接してもよい。
【0037】
図7に示されるように、ボルト(図示せず)を緩めて、軸受カバー36を軸受箱34から取り外す。リングナット35をシャフト26から取り外す。
【0038】
図8に示されるように、ジャッキボルト80を用いて、軸受箱34をフレーム23から取り外す。具体的には、ジャッキボルト80の胴部は軸受箱34のねじ孔(図示せず)を貫通して、ジャッキボルト80の胴部の先端をフレーム23に接触させる。ジャッキボルト80の胴部の先端をフレーム23に接触させながら、ジャッキボルト80を回転させる。軸受箱34は、シャフト26の長手方向に移動して、フレーム23から取り外される。軸受箱34に収容されている軸受33も、シャフト26から取り外される。
【0039】
軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト固定治具60が、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分(例えば、オイルシール42)と、ブレーキホイール50(ボス部53)との間に設置されている。シャフト26は、ボス部53のボス孔53aに嵌合している。そのため、軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト固定治具60は、ブレーキホイール50及びシャフト26が、シャフト26の長手方向に移動することを阻止する。軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト26のウォーム部27にかみ合っているウォームホイール25の歯が破損することが防止され得る。また、軸受33をシャフト26から取り外す際に、軸受41がストッパ44を押圧することによってストッパ44が破損することも防止され得る。
【0040】
(変形例)
図9に示されるように、ベース部材61は、シャフト26の側面26aに沿って湾曲している。ベース部材61の側面61cは、シャフト26の側面26aに沿って湾曲している。ベース部材61の側面61cは、シャフト26を受け入れ可能な凹部61fである。固定片70は、固定部材75を用いて、ベース部材61の側面61dに固定されている。
【0041】
シャフト固定治具60は固定片70を備えていなくてもよい。ベース部材61は、固定部材76を用いて、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に固定されてもよい。例えば、ベース部材61に貫通孔(図示せず)が設けられ、巻上機20のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に雌ねじ孔(図示せず)が設けられ、固定部材76が貫通孔を貫通して雌ねじ孔に螺合されてもよい。
【0042】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60の効果を説明する。
【0043】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60は、ベース部材61と、ベース部材61に対してエレベータ巻上機(巻上機20)のシャフト26の長手方向に移動可能であるスペーサ部材65を備える。スペーサ部材65は、エレベータ巻上機のブレーキホイール50に当接し得るヘッド部66を含む。ベース部材61は、固定部材76を用いて、エレベータ巻上機のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に固定される。
【0044】
軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト固定治具60は、ブレーキホイール50及びシャフト26が、シャフト26の長手方向に移動することを阻止する。そのため、軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト26のウォーム部27にかみ合っているウォームホイール25の歯が破損することが防止され得る。また、軸受33をシャフト26から取り外す際に、軸受41がストッパ44を押圧することによってストッパ44が破損することも防止され得る。
【0045】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60は、シャフト26の長手方向におけるスペーサ部材65の位置をロックするロック部材68をさらに備える。
【0046】
ロック部材68は、軸受33をシャフト26から取り外す際にスペーサ部材65がシャフト26の長手方向に移動することを、より確実に防止する。そのため、軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト26のウォーム部27にかみ合っているウォームホイール25の歯が破損することがより確実に防止され得る。また、軸受33をシャフト26から取り外す際に、軸受41がストッパ44を押圧することによってストッパ44が破損することもより確実に防止され得る。
【0047】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60では、ロック部材68は、スペーサ部材65が螺合され得るナットである。
【0048】
そのため、エレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60のコストが低減する。
【0049】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60では、ベース部材61に、雌ねじ孔62が設けられている。スペーサ部材65は、雌ねじ孔62に螺合し得るボルトである。
【0050】
そのため、エレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60のコストが低減する。
【0051】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60では、ヘッド部66は、ブレーキホイール50のうち、シャフト26が嵌合されるボス部53に当接し得る。
【0052】
エレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60のサイズが小型化され得る。シャフト固定治具60の持ち運びが容易になるとともに、シャフト固定治具60はより小さなスペースに保管され得る。
【0053】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60では、ベース部材61には、シャフト26を受け入れ可能な凹部61fが設けられている。
【0054】
そのため、スペーサ部材65は、リング状のボス部53の頂面53bに沿って配置され得る。スペーサ部材65のヘッド部66をブレーキホイール50のボス部53により確実に接触させることができる。軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト26のウォーム部27にかみ合っているウォームホイール25の歯が破損することがより確実に防止され得る。また、軸受33をシャフト26から取り外す際に、軸受41がストッパ44を押圧することによってストッパ44が破損することもより確実に防止され得る。
【0055】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60では、ベース部材61は、シャフトの側面26aに沿って湾曲している。
【0056】
そのため、スペーサ部材65は、リング状のボス部53の頂面53bに沿って配置され得る。スペーサ部材65のヘッド部66をブレーキホイール50のボス部53により確実に接触させることができる。軸受33をシャフト26から取り外す際に、シャフト26のウォーム部27にかみ合っているウォームホイール25の歯が破損することがより確実に防止され得る。また、軸受33をシャフト26から取り外す際に、軸受41がストッパ44を押圧することによってストッパ44が破損することもより確実に防止され得る。
【0057】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60は、ベース部材61に固定されている固定片70をさらに備える。ベース部材61は、固定片70と固定片70を固定する固定部材76とを用いて、エレベータ巻上機のうちシャフト26の長手方向においてブレーキホイール50に対向する部分に固定される。
【0058】
そのため、固定部材76の配置の自由度が向上して、シャフト固定治具60の配置の自由度が向上する。シャフト固定治具60は、より適切な位置に配置され得る。
【0059】
本実施の形態のエレベータ巻上機(巻上機20)用シャフト固定治具60では、固定部材76は、シャフト26を回転可能に支持する軸受41のオイルシール42を押圧する押圧部材45である。
【0060】
固定部材76として、エレベータ巻上機(巻上機20)が元来含む押圧部材45が用いられている。シャフト固定治具60を巻上機20に固定するための部品を新たに追加する必要がない。シャフト固定治具60を巻上機20に固定するためのコストが低減される。
【0061】
今回開示された実施の形態及びその変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 エレベータ、2 建築物、3 昇降路、4 ピット、5 ピット床、6 最下階乗り場、7 最上階乗り場、8 機械室、10 かご、11 カウンターウエイト、12 ロープ、15 そらせ車、18 バッファ、20 巻上機、21 綱車、22 綱車シャフト、23 フレーム、24 モータケース、25 ウォームホイール、26 シャフト、26a,61c,61d 側面、27 ウォーム部、30 モータ、31 軸受、33 軸受、34 軸受箱、34a 開口、35 リングナット、36 軸受カバー、41 軸受、42 オイルシール、43 軸受箱、44 ストッパ、45 押圧部材、46 押さえ板、47 ボルト、50 ブレーキホイール、50a 外周側面、51 薄肉部、52 外側リング部、52a 外周側面、53 ボス部、53a ボス孔、53b 頂面、55 ブレーキシュー、60 シャフト固定治具、61 ベース部材、61a,61b 主面、61f 凹部、62 雌ねじ孔、65 スペーサ部材、66 ヘッド部、67 胴部、68 ロック部材、70 固定片、71 第1板部分、72 第2板部分、72a,72b 表面、73 孔、75 固定部材、76 固定部材、80 ジャッキボルト。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9