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特開2023-150374光学センサの温度補正装置及び光学センサの温度補正方法
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  • 特開-光学センサの温度補正装置及び光学センサの温度補正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150374
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】光学センサの温度補正装置及び光学センサの温度補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20231005BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/27 F
G01N21/53 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059467
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瓶子 司
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB06
2G059CC19
2G059DD12
2G059EE02
2G059GG02
2G059KK03
2G059MM14
2G059NN02
2G059NN05
(57)【要約】
【課題】光学センサにおいて、光源の温度変化による受光部の出力値への影響を容易に抑制する。
【解決手段】流体に向けて光を照射する光源20と、光源20からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部30と、を有する光学センサ10の温度補正装置100は、光源20の温度を検出する温度センサ50と、光源20の温度と出力値との関係を示す補正情報が記憶される記憶部42と、温度センサ50により検出される光源20の温度と、補正用情報と、から受光部30の出力値を補正する補正処理部43と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に向けて光を照射する光源と、前記光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正装置であって、
前記光源の温度を検出する温度センサと、
前記光源の温度と前記出力値との関係を示す補正情報が記憶される記憶部と、
前記温度センサにより検出される前記光源の温度と、前記補正情報と、から前記受光部の前記出力値を補正する補正処理部と、を備えることを特徴とする光学センサの温度補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学センサの温度補正装置であって、
前記補正情報は、前記光源の温度と前記出力値との関係を、基準温度における前記受光部の基準出力値に対する割合で示すことを特徴とする光学センサの温度補正装置。
【請求項3】
流体に向けて光を照射する光源と、前記光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正装置であって、
流体に入射する前の前記光源の光量を検出する光量検出部と、
前記光量検出部の基準出力値に対する、前記光量検出部の出力値の割合を演算し、当該割合から前記受光部の前記出力値を補正する補正処理部と、を備えることを特徴とする光学センサの温度補正装置。
【請求項4】
流体に向けて光を照射する光源と、前記光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正方法であって、
前記光源の温度と前記出力値との関係を示す補正情報を用いて、前記受光部の前記出力値を補正することを特徴とする光学センサの温度補正方法。
【請求項5】
流体に向けて光を照射する光源と、前記光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正方法であって、
流体に入射する前の前記光源の光量を検出し、前記光源の基準光量に対する、前記光源の光量の割合を演算し、当該割合から前記受光部の前記出力値を補正することを特徴とする光学センサの温度補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサの温度補正装置及び光学センサの温度補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サンプル基板と、LED(発光ダイオード)と、光学検出器と、温度センサと、温度調整システムと、を備え、サンプル基板に照射したLEDの光を光学検出器により受光してサンプル基板の調査を行う装置が開示されている。LEDは温度依存特性を有し、温度により出力が変化する。LEDの出力が変化すると、LEDの光を受光する光学検出器の出力値も変化してしまう。そのため、特許文献1に記載の装置では、温度センサがLEDの温度を検出して温度信号を生成し、温度調整システムが温度信号を受信して温度信号に基づいて熱源及び冷却源を制御する。これにより、LEDの温度を一定にし、LEDの出力を一定にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-519266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような装置は、LEDの温度を調整する構成であるため、温度調整のために、熱源及び冷却源や、熱源及び冷却源を制御する構成を有する。そのため、装置の構成が複雑になる。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、光学センサにおいて、光源の温度変化による受光部の出力値への影響を容易に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体に向けて光を照射する光源と、光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正装置であって、光源の温度を検出する温度センサと、光源の温度と出力値との関係を示す補正情報が記憶される記憶部と、温度センサにより検出される光源の温度と、補正用情報と、から受光部の出力値を補正する補正処理部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、温度センサにより検出される光源の温度と、補正情報と、から受光部の出力値を補正する。つまり、光源の温度を調整することなく、補正情報により受光部の出力値が補正される。よって、光源の温度変化による受光部の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0008】
また、本発明は、補正情報は、光源の温度と出力値との関係を、基準温度における受光部の基準出力値に対する割合で示すことを特徴とする。
【0009】
この発明では、補正情報は、光源の温度と出力値との関係を、基準温度における受光部の基準出力値に対する割合で示したものである。よって、補正情報が簡素なものとなり、受光部の出力値の補正が容易となる。
【0010】
また、本発明は、流体に向けて光を照射する光源と、光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正装置であって、流体に入射する前の光源の光量を検出する光量検出部と、光量検出部の基準出力値に対する、光量検出部の出力値の割合を演算し、当該割合から受光部の出力値を補正する補正処理部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明では、光量検出部の基準出力値に対する光量検出部の出力値の割合から受光部の出力値を補正する。つまり、光源の温度を調整することなく、光量検出部を利用して受光部の出力値が補正される。よって、光源の温度変化による受光部の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、流体に向けて光を照射する光源と、光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正方法であって、光源の温度と出力値との関係を示す補正情報を用いて、受光部の出力値を補正することを特徴とする。
【0013】
この発明では、光源の温度と、補正情報と、から受光部の出力値を補正する。つまり、本方法では、光源の温度を調整することなく、補正情報により受光部の出力値が補正される。よって、光源の温度変化による受光部の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、流体に向けて光を照射する光源と、光源からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部と、を有する光学センサの温度補正方法であって、流体に入射する前の光源の光量を検出し、光源の基準光量に対する、光源の光量の割合を演算し、当該割合から受光部の出力値を補正することを特徴とする。
【0015】
この発明では、光源の基準光量に対する光源の光量の割合から受光部の出力値を補正する。つまり、光源の温度を調整することなく、光量を利用して受光部の出力値が補正される。よって、光源の温度変化による受光部の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学センサにおいて、光源の温度変化による受光部の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る光学センサ及び温度補正装置を示す概略図である。
図2】光源の温度と受光部の出力値との相関を示す図である。
図3】光源の温度と受光部の出力値との関係を、受光部の基準出力値に対する割合で示すマップである。
図4】本発明の実施形態の変形例に係る光学センサ及び温度補正装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る光学センサの温度補正装置(以下では、単に「温度補正装置」とも称する)100について説明する。
【0019】
まず、温度補正装置100が設けられる光学センサ10について説明する。本実施形態では、光学センサ10は、例えば、油圧機械(図示せず)に作動油を給排する配管(図示せず)を連結する継手間に設けられ、作動油中の異物である粒子1を検出するものである。本実施形態では、光学センサ10は、作動油中の粒子1の材質の特定等を行う。なお、光学センサ10は、作動油以外の作動水や圧縮空気等の流体中の粒子を検出してもよい。また、光学センサ10は、粒子1の材質以外の総表面積や総量(具体的には、総粒子数)、粒径等を検出してもよい。
【0020】
図1に示すように、光学センサ10は、作動油が流れる通路60と、作動油に向けて光を照射する光源20と、光源20からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部30と、受光部30からの情報を処理するコントローラ40と、を有する。
【0021】
通路60は、上流側の端部と下流側の端部が、それぞれ外部の配管に接続される。通路60には、光源20からの光を透過させるための透過窓67が光源20に対向して設けられる。また、通路60には、後述するように作動油中の粒子1により散乱された散乱光を透過させるための透過窓68が受光部30に対向して設けられる。透過窓67,68は、例えば、ガラス、人工石英、サファイア等の光透過性の材料で形成される。
【0022】
光源20は、本実施形態ではLEDにより構成される。光源20は、通路60の外部に設けられ、透過窓67を通じて通路60に向けて光を照射する。光源20からの光は、通路60を流れる作動油中の粒子1により一部が散乱され、散乱された散乱光が受光部30に入射する。なお、「散乱」とは、光源20からの光の進行方向が作動油中の粒子1により変わることを指す。「散乱光」には、例えば、粒子1の表面で反射された光、粒子1により屈折された光、粒子1を回折した光が含まれる。光源20の出力値は、コントローラ40に出力される。
【0023】
受光部30は、本実施形態では、複数の受光素子30a,30b,30cにより構成される。受光素子30a,30b,30cには、例えばPD(Photo Diode)が用いられる。受光素子30a,30b,30cは、通路60の外部でかつ互いに異なる角度で通路60に対向するように設けられる。具体的には、受光素子30a,30b,30cは、自身の受光軸と光源20の光軸とのなす角度α,β,γがそれぞれ異なるように設けられる。受光素子30a,30b,30cは、光源20からの光のうち粒子1により散乱された散乱光をそれぞれ受光し、受光した光を電気信号(具体的には、電圧値)に変換してコントローラ40に出力する。なお、本実施形態では、受光部30の出力値が電圧値である場合について説明するが、受光部30の出力値はその他の電気信号等であってもよい。また、受光部30は、一つの受光素子により構成されてもよい。
【0024】
コントローラ40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースはコントローラ40に接続された機器との情報の入出力に使用される。なお、コントローラ40は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0025】
コントローラ40は、光源20や受光部30といった、散乱光を検出するための構成と一体に設けられる。コントローラ40は、受光部30から出力された散乱光の情報から作動油中の粒子1の材質を特定する特定部41を有する。特定部41による粒子1の材質の特定方法の詳細は後述する。コントローラ40は、特定部41の検出結果を表示部(図示せず)等に出力する。なお、これら特定部41や後述する補正処理部43等は、コントローラ40の各機能を仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
【0026】
ここで、光源20は、通路60を流れる流体や外部機器からの熱により、温度が変化する。また、LEDにより構成される光源20では、温度により出力が変化する。具体的には、光源20を定電圧で制御していても、光源20が高温になるほど出力は大きくなる。このように、光源20の温度が変化し光源20の出力が変化すると、受光部30が受光する散乱光の強さが変化し、受光部30の出力値が変化する。受光部30の出力値が変化すると、光学センサ10により粒子1の材質が特定しづらくなるおそれがある。
【0027】
そのため、本実施形態では、光学センサ10に温度補正装置100が設けられる。温度補正装置100は、光源20の出力の温度変化による受光部30の出力値の変化を補正する。具体的には、受光部30から出力された出力値(より具体的には、受光部30の受光素子30a,30b,30cからそれぞれ出力された電圧値)を、基準となる基準温度における出力値となるように補正する。特定部41は、温度補正装置100により補正された受光部30の出力値から、作動油中の粒子1の材質を特定する。
【0028】
温度補正装置100は、光源20の温度を検出する温度センサ50と、補正情報が記憶される記憶部42と、温度センサ50により検出される光源20の温度と補正情報とから受光部30の出力値を補正する補正処理部43と、を備える。本実施形態では、温度センサ50は光源20に設けられ、記憶部42及び補正処理部43はコントローラ40に設けられる。
【0029】
温度センサ50は、光源20の温度を検出する。温度センサ50が検出した光源20の温度は、コントローラ40(具体的には、補正処理部43)に出力される。
【0030】
記憶部42に記憶される補正情報は、光源20の出力の温度変化に対する受光部30の出力値の補正に用いられる。補正情報は、具体的には、光源20の温度と受光部30の出力値との関係を示すマップである。受光部30の出力値は、光源20の出力に相関する。また、光源20の出力は、光源20の温度に比例する。そのため、図2に示すように、光源20の温度が上昇すると光源20の出力が一定の割合で増加し、受光部30の出力値が一定の割合で増加する。さらに、受光部30の出力値は、作動油の状態に相関する。例えば、作動油中の粒子1の総量が図2に示すグラフIの状態から二倍に増加すると、光源20からの光を散乱する粒子1がグラフIの状態の二倍となるため、受光部30の出力値がグラフIの二倍となる(図2に示すグラフII)。このように、受光部30の出力値は、温度変化する光源20の出力と作動油の状態との両方に相関する。
【0031】
本実施形態では、補正情報としてのマップを、図2に示すように、光源20の各温度における受光部30の出力値(絶対値)を基に示している。補正情報には、グラフI、グラフIIのように、異なる作動油の状態に対応する複数のマップが含まれる。言い換えれば、補正情報には、基準温度での受光部30の複数の出力値に対して、各出力値に対応する傾きを有する複数のグラフに対応するマップが含まれる。マップは、予め実験的に求められる。
【0032】
以下では、図2に示すマップを用いた受光部30の出力値の補正方法について説明する。補正処理部43は、温度センサ50が取得した光源20の温度と、マップと、から受光部30の出力値を補正する。具体的には、ある温度での受光部30の出力値を、マップを参照して、基準温度における出力値となるように補正する。例えば、光源20の温度が図2に示す温度Aであり、受光部30の出力値が図2に示すaであった場合、この状態は、グラフIのマップに対応する。そのため、グラフIのマップを参照し、受光部30の出力値を、グラフIのマップでの基準温度における出力値となるように補正する。また、光源20の温度が図2に示す温度Bであり、受光部30の出力値が図2に示すbであった場合、この状態は、グラフIIのマップに対応する。そのため、グラフIIのマップを参照し、受光部30の出力値を、グラフIIのマップでの基準温度における出力値となるように補正する。このようにして、光源20の出力の温度変化に対する受光部30の出力値の補正がされる。
【0033】
補正された受光部30の出力値から、特定部41は、作動油中の粒子1の材質を特定する。具体的には、特定部41は、受光部30の受光素子30a,30b,30cのそれぞれの出力値(電圧値)を補正処理部43により補正した電圧値Va,Vb,Vcから、作動油中の粒子1の材質を特定する。本実施形態では、受光素子30a,30b,30cが受光する散乱光としては、粒子1の表面で反射される光が支配的となる。そのため、特定部41は、反射率に基づいて粒子1の材質を特定する。記憶部42には、マップに加えて、作動油中に粒子1として含まれ得る材質について、受光素子30a,30b,30cの受光軸と光源20の光軸とのなすそれぞれの角度α,β,γにおける反射率が予め記憶される。特定部41は、光源20の出力値(基準温度での光源20の出力値)と、コントローラ40に出力された受光素子30a,30b,30cのそれぞれの出力値と、から角度α,β,γにおけるそれぞれの反射率を演算し、演算された反射率と、予め記憶された各材質における角度α,β,γの反射率と、から作動油中の粒子1の材質を特定する。
【0034】
このように、温度補正装置100は、補正処理部43が、温度センサ50により検出される光源20の温度と、補正情報としてのマップと、から受光部30の出力値を補正する。つまり、温度補正装置100では、光源20の温度を調整することなく、受光部30の出力値が補正される。このように、温度補正装置100では、光源20の温度変化による受光部30の出力値への影響を、マップを用いた補正処理により容易に抑制することができる。
【0035】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0036】
温度補正装置100は、温度センサ50により検出される光源20の温度と、マップと、から受光部30の出力値を補正する。つまり、温度補正装置100では、光源20の温度を調整することなく、受光部30の出力値が補正されることで、光源20の温度変化による受光部30の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0037】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0038】
<変形例1>
上記実施形態では、補正情報としてのマップは、光源20の温度と受光部30の出力値との関係を、光源20の各温度における受光部30の出力値(絶対値)を基に示したものである。これに限らず、補正情報としてのマップは、図3に示すように、光源20の温度と受光部30の出力値との関係を、基準温度における受光部30の基準出力値に対する割合で示したものであってもよい。以下では、図3に示すマップについて詳しく説明する。
【0039】
縦軸は、基準温度での受光部30の基準出力値を100%とした、基準出力値に対する各温度での受光部30の出力値の割合である。例えば、図3に示すマップでは、基準温度よりも低い温度Aでは受光部30の出力値は基準出力値に対して80%であり、基準温度よりも高い温度Bでは受光部30の出力値は基準出力値に対して130%であることを示している。マップは、予め実験的に求められる。このように、補正情報としてのマップを、基準温度における受光部30の基準出力値を基にして表すことで、図2に示すグラフI、グラフIIのような異なる作動油の状態を一つのマップで表すことができる。また、上記実施形態では、受光部30が複数の受光素子30a,30b,30cにより構成されるが、複数の受光素子30a,30b,30cのそれぞれの出力値を補正するために、共通のマップを用いることができる。よって、マップを簡素にすることができる。
【0040】
以下では、図3に示すマップを用いた受光部30の出力値の補正方法について説明する。補正処理部43は、ある温度での受光部30の出力値を、マップを参照して、基準温度における出力値となるように補正する。例えば、光源20の温度が図3に示す温度Aであった場合には、温度Aでの受光部30の出力値は基準出力値に対して80%である。そのため、受光部30の出力値を1.2倍にし、基準温度における出力値となるように補正する。また、光源20の温度が図3に示す温度Bであった場合には、温度Bでの受光部30の出力値は基準出力値に対して130%である。そのため、受光部30の出力値を10/13倍にし、基準温度における出力値となるように補正する。
【0041】
このように、本変形例のマップは、光源20の温度と出力値との関係を、基準温度における受光部30の基準出力値に対する割合で示したものである。そのため、上記実施形態のように、光源20の温度と受光部30の出力値(絶対値)との関係を示すマップと比較し、マップが簡素なものとなり、補正処理部43による出力値の補正が容易となる。
【0042】
<変形例2>
上記実施形態では、温度補正装置100は温度センサ50を備え、補正処理部43が、光源20の温度と、補正情報としてのマップと、から受光部30の出力値を補正する。これに代えて、図4に示すように、温度補正装置100は、作動油に入射する前の光源20の光量を検出する光量検出部70を備えてもよい。光源20の光量は、光源20の温度と相関関係がある。したがって、本変形例1では、光源20の温度ではなく、光源20の光量を検出し、その検出値に基づいて受光部30の出力値を補正する。つまり、光源20の温度変化に対する受光部30の出力値の補正を、基準となる状態(例えば、基準温度)における光源20の基準光量に対する光源20の光量の割合に基づいて行うことができる。これにより、受光部30の出力値を、基準となる状態での出力値となるように補正する。
【0043】
具体的には、記憶部42には、マップに代えて、基準となる光量検出部70の基準出力値(例えば、基準温度での光量検出部70の出力値)が記憶される。補正処理部43は、光量検出部70の基準出力値に対する、光量検出部70の出力値の割合を演算し、当該割合から受光部30の出力値を補正する。例えば、光量検出部70の出力値が基準出力値の80%であった場合は、受光部30の出力値を1.2倍にし、基準となる状態での出力値となるように補正する。このように、本変形例では、光源20の温度ではなく、光源20の光量の変化を検出することにより、受光部30の出力値を補正する。言い換えれば、本方法は、流体に入射する前の光源20の光量を検出し、光源20の基準光量に対する、光源20の光量の割合を演算し、当該割合から受光部30の出力値を補正する。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。さらに、マップが不要となるため、温度補正装置100の構成を簡易なものにすることができる。
【0044】
<変形例3>
上記実施形態では、温度補正装置100は、光源20からの光のうち粒子1により散乱された散乱光を受光部30により受光する光学センサ10に適用される。これに限らず、温度補正装置100は、光源20からの光のうち粒子1により遮蔽されずに透過した透過光を受光部30により受光する光学センサ10に適用されてもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
<変形例4>
上記実施形態では、光源20は、LEDにより構成される。これに限らず、光源20は、温度により出力が変化するものであればよい。
【0046】
<変形例5>
上記実施形態では、コントローラ40は、光源20や受光部30といった、散乱光を検出するための構成と一体に設けられる。これに限らず、コントローラ40は、光源20や受光部30とは別体に設けられてもよい。例えば、コントローラ40は、ネットワークを通じて受光部30及び温度センサ50と通信されるサーバであってもよい。
【0047】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0048】
流体に向けて光を照射する光源20と、光源20からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部30と、を有する光学センサ10の温度補正装置100は、光源20の温度を検出する温度センサ50と、光源20の温度と出力値との関係を示す補正情報が記憶される記憶部42と、温度センサ50により検出される光源20の温度と、補正用情報と、から受光部30の出力値を補正する補正処理部43と、を備える。
【0049】
この構成では、温度センサ50により検出される光源20の温度と、補正情報と、から受光部30の出力値を補正する。つまり、光源20の温度を調整することなく、受光部30の出力値が補正される。よって、光源20の温度変化による受光部30の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0050】
また、光学センサ10の温度補正装置100では、補正情報は、光源20の温度と出力値との関係を、基準温度における受光部30の基準出力値に対する割合で示す。
【0051】
この構成では、補正情報は、光源20の温度と出力値との関係を、基準温度における受光部30の基準出力値に対する割合で示したものである。よって、補正情報が簡素なものとなり、受光部30の出力値の補正が容易となる。
【0052】
また、流体に向けて光を照射する光源20と、光源20からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部30と、を有する光学センサ10の温度補正装置100は、流体に入射する前の光源20の光量を検出する光量検出部70と、光量検出部70の基準出力値に対する、光量検出部70の出力値の割合を演算し、当該割合から受光部30の出力値を補正する補正処理部43と、を備える。
【0053】
この構成では、光量検出部70の基準出力値に対する光量検出部70の出力値の割合から受光部30の出力値を補正する。つまり、光源20の温度を調整することなく、光量検出部70を利用して受光部30の出力値が補正される。よって、光源20の温度変化による受光部30の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0054】
また、流体に向けて光を照射する光源20と、光源20からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部30と、を有する光学センサ10の温度補正方法は、光源20の温度と出力値との関係を示す補正情報を用いて、受光部30の出力値を補正する。
【0055】
この構成では、光源20の温度と、補正情報と、から受光部30の出力値を補正する。つまり、本方法では、光源20の温度を調整することなく補正情報により受光部30の出力値が補正される。よって、光源20の温度変化による受光部30の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0056】
また、流体に向けて光を照射する光源20と、光源20からの光を受光し受光した光に応じた出力値を出力する受光部30と、を有する光学センサ10の温度補正方法は、光源20の温度と出力値との関係を示す補正情報を用いて、受光部30の出力値を補正する。
【0057】
この構成では、光源20の基準光量に対する光源20の光量の割合から受光部30の出力値を補正する。つまり、光源20の温度を調整することなく、光量を利用して受光部30の出力値が補正される。よって、光源20の温度変化による受光部30の出力値への影響を容易に抑制することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0059】
1・・・粒子、10・・・光学センサ、20・・・光源、30・・・受光部、42・・・記憶部、43・・・補正処理部、50・・・温度センサ、70・・・光量検出部
図1
図2
図3
図4