(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150379
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059472
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】522060021
【氏名又は名称】日本電動株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】橘 貞一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 修一
(72)【発明者】
【氏名】一柳 健
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP05
5H609QQ05
5H609QQ10
5H609RR52
5H609RR55
(57)【要約】
【課題】電動モータの駆動を阻害せず、効率的な冷却を可能とするとともに、耐久性や取り扱い性能に優れる熱交換器を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、回転軸心11を中心に回転する永久磁石12を備えるモータ1に設けられる熱交換器Xであって、回転軸心11を囲む管路22を備え、管路22の内部に、磁性流体M1や磁性粒体M3を有し、モータ1から発せられる漏れ磁束を利用して管路22の内部に回転を起こす熱交換器Xである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心を中心に回転する磁石を備えるモータに設けられる熱交換器であって、
前記回転軸心を囲む管路を備え、
前記管路の内部に、磁性体を有する熱交換器。
【請求項2】
前記管路は、前記管路内の流れを制御する逆止弁を有し、
前記逆止弁は、前記モータと近接して設けられる請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記管路は、前記管路内の流れを制御する逆止弁を有し、
前記逆止弁は、テスラバルブである請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記磁性体は、球体である請求項1~3の何れかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記磁性体は、磁性流体である請求項1~4の何れかに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記モータに取り外し可能に設けられる請求項1~5の何れかに記載の熱交換器。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の熱交換器が設けられる電動モータ。
【請求項8】
請求項7に記載の電動モータが設けられた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体を利用した電動モータに対応する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータは、所定方向に流れる電流と、磁石が発生させる磁界の相互作用によって回転する力を発生させる機械である。一方、電動モータが動作すると渦電流等によって熱が発生し、それによって内部の磁石の温度が上昇して磁力が減衰し、電動モータの効率が急減することが知られている。
このような問題に対応するために、特許文献1には、磁石を冷却するためのヒートパイプを内部に設けた電動モータが記載されている。
【0003】
また、磁性体を利用した熱交換器として、磁気熱量効果を利用したものが広く知られている。磁気熱量効果とは、常磁性体から磁場を取り去ることでエントロピーを増大させ、吸熱反応を起こすものである。特許文献2には、その一例として、磁気の付加・除去によって放熱・吸熱を制御する冷暖房装置が記載されている。
【0004】
また、磁性体を利用した熱交換器として、磁性体の磁力と温度の関係を利用したものがある。すなわち、高温においては磁性体の磁力が小さくなることを利用して、管路に磁性流体を封入し、低温側の所定位置に磁界を印加することによって、一方向の流れを発生させる構成を持つCPUの冷却装置が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019―161785号公報
【特許文献2】再表2012―157708号公報
【特許文献3】特許7012404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、電動モータの冷却は効率的な回転のために重要であるところ、特許文献2、特許文献3に記載されているような磁力の効果を利用した熱交換器を適用するためには、電動モータの付近に強磁性体を偏在するように配置する必要がある。これは、電動モータの挙動に影響を与え、かえって電動モータの動きを阻害する恐れがあるため好ましくない。
また、特に車両においては、エンジンと共に動作するオイルポンプを使用した熱交換器を設け、これによりエンジン等の冷却を行うることが多いが、エンジンの動力を一部利用するのでエンジンの効率が下がり、また駆動部分が増えるため故障が発生しやすくなる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、電動モータの駆動を阻害せず、効率的な冷却を可能とするとともに、耐久性や取り扱い性能に優れる熱交換器等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本願発明は、回転軸心を中心に回転する磁石を備えるモータに設けられる熱交換器であって、前記回転軸心を囲む管路を備え、前記管路の内部に、磁性体を有する熱交換器である。
このような構成によって、磁性体を冷媒として使用することが可能になり、さらに電動モータから発せられる漏れ磁束を利用して冷媒を駆動するため、モータの効率的な冷却が可能となる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記管路は、管路内の流れを制御する逆止弁を有し、前記逆止弁は、前記モータと近接して設けられる。
このような構成によって、モータの磁性によって生ずる逆流を減少させることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記管路は、管路内の流れを制御する逆止弁を有し、前記逆止弁は、テスラバルブである。
このような構成によって、別途駆動機構を設けることなく、モータの磁性による逆流を起こりにくくすることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記磁性体は、球体である。
このような構成によって、前記磁性体を前記管路の中で流れやすくすることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記磁性体は、磁性流体である。
このような構成によって、前記磁性体を前記管路の中で流れやすくすることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記熱交換器は、前記電動モータに取り外し可能に設けられる。
このような構成によって、熱交換器の取り扱い性能を高めることができる。
【0014】
本発明は、前記熱交換器が設けられた電動モータである。
このような構成によって、冷却性能が高い電動モータを提供することができるようになる。
【0015】
本発明は、前記電動モータが設けられた車両である。
このような構成によって、電動モータの効率、耐久性と取り扱い性能に優れる車両を提供することができる。特に、前記熱交換器は振動やある程度の傾きにも強く、電動モータの動作に対応して熱交換器が動作するため、車両との相性が良い。
【発明の効果】
【0016】
上記課題を解決する本発明は、電動モータの駆動を阻害せず、効率的な冷却を可能とするとともに、耐久性や取り扱い性能に優れる熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る、熱交換器の模式図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る、熱交換器の断面模式図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る、熱交換器の断面模式図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る、熱交換器の斜視図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る、熱交換器の逆止弁に係る模式図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る、熱交換器の取り付け態様の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態に係る、熱交換器の断面模式図である。
【
図8】本発明の第三の実施形態に係る、熱交換器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る熱交換器について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0019】
≪第一の実施形態≫
本実施形態に係る熱交換器Xは、
図1に示すように、回転する磁性体を内部に有するモータ1と、モータ1の周囲を取り囲むバルク2と、バルク2と接続されるオイルクーラー3と、を備える。
後述するように、バルク2は管路22を有しており、その内部には、冷媒Mとして磁性流体M1が流れるようにしてある。
【0020】
モータ1は、回転するロータを内部に有するモータであって、例えばサーボモーターやステッピングモーター等のブラシレスモーターが想定される。
本実施形態においてモータ1は、モータ1の中心に設けられる回転軸心11と、回転軸心11を取り囲むように設けられる永久磁石12と、回転軸心11の周囲に等間隔に複数設けられるステータ13と、ステータ13に所定のタイミングで電力を供給するコントローラー14と、を有する。
また、モータ1のケースは磁力を遮蔽しにくい薄肉非鉄金属や樹脂で形成されていることが望ましい。
【0021】
回転軸心11は、モータ1の中心に設けられる鉄心部分であって、モータ1から突出して外部に回転動力を出力する。モータ1の内部には、回転軸心11を軸支して位置を固定する軸受けが複数設けられている。
【0022】
永久磁石12は、回転軸心11を取り囲み、回転軸心11が回転する方向に固定されて設けられることでロータとして機能する。また、永久磁石12は複数の磁石に分割されており、極性が異なる磁石がそれぞれ隣接するように構成されている。なお、図面において極性の違いはハッチング方向の違いで表現している。
本実施形態において
図2に示すように、回転軸心11は、4つの永久磁石12によって取り囲まれるように設けられており、隣接する永久磁石12はそれぞれ外周へ向かう磁力の極性が異なるようにしてある。
【0023】
ステータ13は、モータ1のケース内周面において、磁力を制御可能な電磁石として設けられている。すなわち、ステータ13は、巻き付け芯131に、導体である線材132が巻き付けられることで構成される。
本実施形態においては、ステータ13は等間隔になるように配置されてあり、本実施形態においては6つ(3対)のステータ13がケースが形成する円周内に設けられている。
また、ステータ13の所定位置には、ホール素子(図示せず)が設けられており、発生する誘導電流によって永久磁石12の位置を確かめられるようにしてある。
【0024】
巻き付け芯131は、モータ1のケースの内周面に設けられている鉄心部材であって、好ましくはケースと一体に設けられる。巻き付け芯131は、内周面からモータ1の内側方向に向かって突出し、さらに端部が周方向に向けて伸びることで錨のような形状となっている。これによって、巻かれる線材132が外れにくくなるようにしてある。
【0025】
線材132は、巻き付け芯131に巻き付く銅線であって、それぞれコントローラー14と電気的に接続されている。また、対向位置にあるステータ13の線材132は、対向するステータ13と同一の磁性を帯びるように電気的に接続している。
【0026】
コントローラー14は、ホール素子によって永久磁石の位置が所定位置にあることを検出した際に、後述するように適切な電流を線材132に供給する。すなわち、永久磁石が一方向に回転するように、ステータ13が放出する磁力をコントロールする。
【0027】
バルク2は、
図4に示すように、モータ1の外周面を取り囲むように篏合する部材であって、いわゆるウォータージャケットとして機能する。バルク2は、モータ1を嵌め込む外環部21と、バルク2の内部において冷媒Mが流通する管路22と、によって構成されている。
一方、バルク2は、モータ1と一体に構成されていてもよく、また、外環部21を設けず管路22をモータ1の内部に組み込む構成であってもよい。
【0028】
外環部21は、薄肉金属等の熱伝導率が高い素材で設けられた円環状の部材であって、内径をモータ1の外径と略同一とすることによって、モータ1を嵌め込むことができるように構成されている。外環部21には、後述する吸熱管路221が設けられており、モータ1から放出される熱を受け取るようにしてある。
【0029】
管路22は、磁気シールド効果が小さく、熱伝導率の高い薄肉金属や樹脂などによって設けられる管路であって、内部に冷媒Mを封入し、これによって熱のやり取りを可能とする部品である。管路22は、モータ1から熱を吸収する吸熱管路221と、オイルクーラー3に熱を放出する放熱管路222と、吸熱管路221と放熱管路222を接続する接続管路223と、が油密に接続されて設けられており、管路22の途中に逆止弁23が設けられてもよい。なお、図面においては、管路22の厚みを表現せずに簡略化している。
【0030】
本実施形態において、冷媒Mは、磁性流体M1である。
磁性流体M1は、液体中に強磁性体あるいは常磁性体の微粒子(1nm~100μm)が分散されている物質であって、磁力に反応して液体の状態を保ったまま、あるいは半固体状になって吸い寄せられるように動作する。
磁性流体M1は管路22の内部を満たす必要はなく、少量の空気や、磁性流体と分離する非磁性流体M2と共に封入されることによって流れを起こしやすくすることが好ましい。特に好ましくは、非磁性流体M2を磁性流体M1の密度と略同一として互いに流動による影響を及ぼしやすくする。
【0031】
吸熱管路221は、
図2及び
図3に示すように、外環部21を介してモータ1の側面と略密着して取り囲むように設けられている。すなわち、回転軸心11の回転軸を取り囲むように設けられることとなり、これによって吸熱管路221内部の磁性流体M1に適切に作用する。
好ましくは、吸熱管路221はステータ13の直上において取り囲んで設けられる。これによって、ステータ13から発生する磁力を強力に受けることができるため、冷却効果が高まる。
【0032】
放熱管路222は、
図1に示すように、オイルクーラー3に取り付けられている。放熱管路222がオイルクーラー3中を複数回往復して設けられることによって、磁性流体M1に溜まった熱を効率的に排出することができる。
【0033】
接続管路223は、
図5に示すように、放熱管路222から吸熱管路221に冷媒Mの供給を行う供給接続管路224と、吸熱管路221から放熱管路222に冷媒Mの排出を行う排出接続管路225と、を含む。
管路22は、これらの部材が一方向に連通するように接続されている。
【0034】
本実施形態においては、逆止弁23としていわゆるテスラバルブ231が設けられている。これによって、可動部品を新たに設けることなく磁性流体M1の逆流を防ぐことができる。
好ましくは、テスラバルブ231の取付位置は、排出接続管路225において吸熱管路221と近接する位置とするとよい。これによって、後述する第六ステータ13W’が磁性流体M1を引き寄せることで起こる逆流を防ぐことができる。
【0035】
また、
図5(b)に記載しているように、逆止弁23は、磁力に反応するスイッチ232であってもよい。すなわち、普段は開放状態にあるが、後述する第六ステータ13W’が磁力を発したときに常磁性体であるスイッチ232が閉じて逆流を防ぐようにする。
なお、逆止弁23は、上記の位置に限られずどこに設けられていてもよい。例えば、供給接続管路224にも逆止弁23が取り付けられてもよく、吸熱管路221の中途において逆止弁23が屈曲して設けられていてもよい。
【0036】
バルク2の外周面には、
図6に記載しているように、フィン24が設けられていてもよい。フィン24は、バルク2の外周面と接触し、径方向に向けて突出する複数の薄板状の部材であり、本実施形態においては、隣接する薄板が端部で接続することでトラスを形成する。これによってバルク2の表面積を増大させ、ここにおいても熱交換を効率的に行うことができるようになる。
【0037】
以下、
図2及び
図3を用いて吸熱管路221内部の磁性流体M1の流れについて説明を行う。
図2及び
図3は、バルク2が取り付けられたモータ1の断面模式図を表しており、状態は、
図2(a)、
図2(b)、
図3の順に遷移する。
いる。ここにおいて、隣り合うステータ13を第一ステータ13U、第二ステータ13V、第三ステータ13W、とし、これらと対向する位置に設けられるステータをそれぞれ第四ステータ13U’、第五ステータ13V’、第六ステータ13W’とする。対向するステータ同士は同一の磁気を帯びるようにしてある。このうち、供給接続管路224と最も近接するものは第一ステータ13Uであり、排出接続管路225と最も近接するものは第六ステータ13W’である。
【0038】
図2(a)の状態では、第一ステータ13U、第二ステータ13V、第四ステータ13U’、第五ステータ13V’に磁力が発生することにより、永久磁石12が時計回りに回転する作用を発生させる。
ここにおいて、各ステータは外周方向に漏れ磁束を発生させ、管路22内部に流れる磁性粒体M3を図上矢印のように引き寄せる。この際、特に第一ステータ13Uは、供給接続管路224から磁性流体M1を引き込む作用を起こし、管路22内に反時計回りの流れを誘導する。
【0039】
次に、モータ1が
図2(b)の状態に遷移すると、第二ステータ13V、第三ステータ13W、第五ステータ13V’、第六ステータ13W’に磁力が発生することで、永久磁石12が時計回りに回転する作用を発生させる。
ここにおいても、各ステータは外周方向に漏れ磁束を発生させ、管路22内部に流れる磁性粒体M3は図上矢印のように引き寄せられる。この際、第二ステータ13V及び第五ステータ13V’は、漏れ磁束の影響下ではなくなった第一ステータ13U及び第四ステータ13U’の直上に位置する磁性流体M1を引き寄せるように作用することで、管路22内に反時計回りの流れを起こす。
【0040】
次に、モータ1が
図3の状態に遷移すると、第一ステータ13U、第三ステータ13W、第四ステータ13U’、第六ステータ13W’に磁力が発生することで、永久磁石12が時計回りに回転する作用を発生させる。
ここにおいても、各ステータは外周方向に漏れ磁束を発生させ、管路22内部に流れる磁性粒体M3は図上矢印のように引き寄せられる。この際、第三ステータ13W及び第六ステータ13W’は、漏れ磁束の影響下ではなくなった第二ステータ13V及び第五ステータ13V’の直上に位置する磁性流体M1を引き寄せるように作用することで、管路22内に反時計回りの流れを起こす。
【0041】
このような作用が繰り返されることによって、磁性流体M1は、管路22を一方向に流動させる。
なお、漏れ磁束によって時計回りに磁性流体M1を引き寄せる作用が部分的に発生するが、第六ステータ13W’による作用を第一ステータ13U直上の磁性流体M1は受けないこと、第六ステータ13W’の付近に設けられる逆止弁23によりそのような流れの発生が阻止されること、漏れ磁束が発生する領域が反時計回りに変動することなどによって、全体としては反時計回りの流動を起こすこととなる。
【0042】
オイルクーラー3は、放熱管路222と密着する部材であって、本実施形態においては、
図6に示すように、車両Bの進行方向の先端部分に設けられている。これにより、走行時に外部からの気流を取り込むことによって、放熱管路222に流れる流体の熱交換を行う。
好ましくは、オイルクーラー3は、バルクの近接位置に設け、またバルク2と略同一の高さに設けるとよい。これにより、流動の圧力や速度が小さくとも、適切な強さの流動を起こすことが可能となる。
【0043】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。本発明は、車両Bに取り付けられるモータ1を冷却する使用者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0044】
まず、使用者は、
図4に示すように、モータ1をバルク2に嵌め込んで取り付ける。
次に、使用者は、モータ1を駆動させることによって所定の漏れ磁束を発生させ、管路22内部の冷媒Mの流れを起こす。
これによって、使用者は、電動モータの駆動を阻害せず、むしろ通常は無くすことが好ましい漏れ磁束を利用した効率的な冷却を可能とするとともに、耐久性に優れる熱交換器を提供することができるようになる。
【0045】
≪第二の実施形態≫
以下、
図7を用いて本発明の第二の実施形態について説明を行う。なお、第一の実施形態と同様の構成については同一の符号を用いて説明を省略する。
本実施形態に係る発明は、回転する磁性体を内部に有するモータ1と、モータ1の周囲を取り囲むバルク2と、によって構成される。
図7は、本実施形態に係るバルク2をモータ1に取り付けた状態における断面の模式図を表している。
【0046】
バルク2は、内周面においてモータ1を嵌め込む外環部21と、バルク2の内部において冷媒Mが流通する管路22と、外周面に複数設けられるフィン24によって構成されている。
ここにおいて、管路22の内部には、冷媒Mが封入されている。
【0047】
冷媒Mは、非磁性流体M2と、複数の磁性粒体M3及び非磁性粒体M4と、を含む。
非磁性流体M2は、管路22の内部を満たすオイルである。
また、磁性粒体M3は鉄球などの磁性体で、非磁性粒体M4は真鍮やアルミニウムなどの非磁性体で構成されることが想定される。これらの粒体は、内部に空洞を設けることによって、非磁性流体M2と全体の密度を略同一とすることが好ましく、これによって管路22内部での流れをスムーズにすることができる。
【0048】
磁性粒体M3は、漏れ磁束に引き寄せられて運動する粒体であって、管路22の内部で適切な重量・体積で封入されることによって、非磁性流体M2を流動させる流れを引き起こす。
なお、粒体の形状は角柱状や角錐状・多面体・球体とすることが想定され、粒径は管路22の内径よりも小さければどのようにしてもよく、粉末としてもよい。
非磁性粒体M4は、磁性粒体M3と略同一の形状で設けられている磁性を持たない粒体である。
【0049】
本実施形態においては、磁性粒体M3と非磁性粒体M4とのいずれも管路22の内部に敷き詰められている球体部材であって、その直径は、管路22の内径よりも小さく、内径の半分よりも大きくなるように設けられている。これによって、磁性粒体M3及び非磁性粒体M4を一定の間隔で配置し、漏れ磁束を適切に作用させることができるようになる。好ましくは、管路22の内径よりも0.1~3mm程度小さくなるように構成する。
また、
図7に示すように、2つのステータ13の漏れ磁束が作用する領域に対応する長さにおいて磁性粒体M3が整列されて配置されており、それ以外の領域においては非磁性粒体M4整列されて配置されている。
【0050】
バルク2は、内周面にモータ1への取り付けを行う外環部21と、内部に冷媒Mが流れる管路22と、外周部に取り付けられるフィン24と、によって構成される。
【0051】
外環部21は、モータ1の周面に取り付けられる部材であって、後述するように吸熱管路221と放熱管路222との間に、磁気シールド効果をもつ磁気遮蔽部211が設けられ、放熱管路222に漏れ磁束の影響が及ぶことを防止している。
【0052】
管路22は、吸熱管路221と、放熱管路222と、接続管路223に管路22は、モータ1から熱を吸収する吸熱管路221と、オイルクーラー3に熱を放出する放熱管路222と、吸熱管路221と放熱管路222を接続する接続管路223と、が油密に接続されて設けられている。
好ましくは、管路22の内部には磁性粒体M3及び非磁性粒体M4の進行方向を誘導する溝が設けられる。
【0053】
放熱管路222は、モータ1に巻き付いて設けられる吸熱管路221の外側において、外環部21の外周を包囲するようにして設けられている。
【0054】
接続管路223は、本実施形態においては、吸熱管路221と放熱管路222をモータ1の径方向において伸びることで接続するように設けられる。これによって管路22は、モータ1の周囲を二重に包囲するような形となる。
【0055】
以下、
図7を用いて管路22内部の冷媒Mの流れについて説明を行う。
図7(a)のとき、モータは
図3のときと略同様にして各ステータが外周方向に漏れ磁束を発生させる。これにより管路22内部に流れる磁性粒体M3は図上矢印の向きに引き寄せられる。この際、第一ステータ13Uは、接続管路223に位置する磁性粒体M3を引き寄せ、また、第三ステータ13W及び第六ステータ13W’は、漏れ磁束の影響下ではなくなった第二ステータ13V及び第五ステータ13V’の直上に位置する磁性粒体M3を引き寄せる作用をすることで、磁性粒体M3は管路22内を反時計回りに運動する。
【0056】
図7(b)の時、モータは
図2(a)のときと略同様にして各ステータが外周方向に漏れ磁束を発生させる。これにより管路22内部に流れる磁性粒体M3は図上矢印の向きに引き寄せられる。この際、第一ステータ13Uは、接続管路223に位置する磁性粒体M3を引き寄せ、また、第四ステータ13U’は、漏れ磁束の影響下ではなくなった第三ステータ13Wの直上に位置する磁性粒体M3を引き寄せる作用をすることで、磁性粒体M3は管路22内に反時計回りに運動する。
好ましくは、永久磁石12と、磁性粒体M3との動きが同期するように回転するように、非磁性粒体M4を配置する。
【0057】
このような作用が繰り返されることによって、磁性粒体M3は、管路22を反時計回りに運動し、それに伴って非磁性流体M2が反時計回りに流動する。本実施形態においては、磁性粒体M3の間に非磁性粒体M4が設けられるため、より適切に動作しやすくなる。
なお、漏れ磁束によって時計回りに磁性粒体M3を引き寄せる作用が部分的に発生するが、第一の実施形態で述べた作用に加えて本実施形態では漏れ磁束の影響が及ばなくなった位置において非磁性粒体M4が直上にある状態になり、時計回りに移動させる作用が磁性粒体M3に及びにくくなる。
【0058】
フィン24は、外気に対する表面積を幅広にとって放熱を促進する金属部材であり、放熱管路222に設けられているか、外環部21の外周面に放熱管路222と近接して設けられている。また、熱伝導率が高い物質を介して接続されて設けられている。
【0059】
なお、第二の実施形態において、磁気遮蔽部211を設けず、接続管路223を交差させ、吸熱管路221と対向位置にある放熱管路222とを接続することで、放熱管路222内側の磁性粒体M3に漏れ磁束の影響を及ぼして回転させる構成としてもよい。
【0060】
使用者は、モータ1をバルク2に嵌め込んで取り付け、モータ1を駆動させることによって所定の漏れ磁束を発生させ、管路22内部の冷媒Mの流れを起こす。
これによって、使用者は、効率的な冷却を可能とするとともに、耐久性に優れる熱交換器を提供することができるようになる。さらに本実施形態においては、管路22の長さを短縮して全体のサイズを縮小するとともに、管路22における高さの変化を最小限にすることで効率的な熱輸送を可能とする。
【0061】
《第三の実施形態》
以下、
図8を用いて本発明の第三の実施形態について説明を行う。なお、第一の実施形態と同様の構成については同一の符号を用いて説明を省略する。
本実施形態に係る熱交換器Xは、回転する磁性体を内部に有するモータ1と、モータ1の周囲を取り囲む管路22と、によって構成される。すなわち、管路22がモータ1の周囲を直接取り囲む。
図8は、本実施形態に係る管路22をモータ1に取り付けた状態における斜視図を表している。
【0062】
管路22は、吸熱管路221と、放熱管路222と、接続管路223を有している。ここにおいて、吸熱管路221は若干の可撓性を有し、モータ1のケースの外周面に直接巻き回して設けられている。これにより吸熱管路221とステータ13との距離を狭め、漏れ磁束を補足しやすくする。
【0063】
図8(a)に記載の実施形態においては、モータ1の側面を吸熱管路221がとぐろ状に複数周巻きついて取り囲む。これによって、モータ1と吸熱管路221との間の接触面積を増加させ熱吸収の効率を上げるとともに、モータ1からの漏れ磁束の補足量を増やし、内部の磁性体をより効率的に流すことができる。なお、吸熱管路221は、モータ1の回転軸心11に対して傾斜をつけて巻き付けても良い。
【0064】
図8(b)に記載の実施形態においては、モータ1の側面に巻き付く複数の吸熱管路221と、吸熱管路221に比べて大径の放熱管路222と、放熱管路222に流れる冷媒Mを複数の吸熱管路221に分流して接続する供給接続管路224と、複数の吸熱管路221に流れる冷媒Mを合流して放熱管路222に接続する排出接続管路225によって構成されている。これによって、モータ1と吸熱管路221との間の接触面積を増加させ熱吸収の効率を上げるとともに、モータ1からの漏れ磁束の補足量を増やし、内部の磁性体をより効率的に流すことができる。なお、吸熱管路221は、モータ1の外周面に対して扁平な形状となるようにしてもよい。
【0065】
使用者は、
図8のように、モータ1を管路22が形成する円筒の内側に嵌め込んで取り付け、モータ1を駆動させることによって所定の漏れ磁束を発生させ、管路22内部の冷媒Mに流れを起こす。これによって、使用者は、モータ1の効率的な冷却を可能とするとともに、耐久性に優れる熱交換器を提供することができるようになる。さらに本実施形態においては、吸熱管路221の取り付け部分を変形させることができるため、嵌め込みやすくなるとともに、密着性を上昇させて熱交換の効率を上げることができる。
【0066】
なお、第一の実施形態~第三の実施形態に記載の各要素を適宜抜き出して、それぞれを組み合わせる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 モータ
11 回転軸心
12 永久磁石
13 ステータ
131 巻き付け芯
132 線材
14 コントローラー
2 バルク
21 外環部
211 磁気遮蔽部
22 管路
221 吸熱管路
222 放熱管路
223 接続管路
224 供給接続管路
225 排出接続管路
23 逆止弁
231 テスラバルブ
232 スイッチ
24 フィン
3 オイルクーラー
M 冷媒
M1 磁性流体
M2 非磁性流体
M3 磁性粒体
M4 非磁性粒体
X 熱交換器