(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150406
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】アナログメータの指示値読取装置、アナログメータの指示値読取方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20231005BHJP
G08C 19/36 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G06T7/60 300
G08C19/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059506
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲朗
【テーマコード(参考)】
2F073
5L096
【Fターム(参考)】
2F073AB01
2F073CC02
2F073CC03
2F073CD01
2F073CD11
2F073DD07
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG11
2F073GG01
2F073GG08
2F073GG09
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA23
5L096FA15
5L096FA32
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA02
(57)【要約】
【課題】アナログメータの指示値を読み取る、アナログメータの指示値読取装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、アナログメータを撮像した画像を取得し、画像は、アナログメータの指針に対応する領域を含み、画像内の画素の色情報の、指針が動く方向と所定の角度をなす方向に沿った変化に対応した値を画素のそれぞれに割り当て、割り当てた値に基づいて、指針の位置及び/または角度を判定し、指針の位置及び/または角度からアナログメータの指示値を判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログメータの指示値を読み取る装置であって、
前記アナログメータを撮像した画像を取得し、前記画像は、前記アナログメータの指針の少なくとも一部に対応する領域を含み、
前記画像内の画素の色情報の、前記指針が動く方向と所定の角度をなす方向に沿った変化に対応した値を前記画素のそれぞれに割り当て、
前記割り当てた値に基づいて、前記指針の位置及び/または角度を判定し、
前記指針の位置及び/または角度から前記アナログメータの指示値を判定する、
ように構成された制御装置を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記指針が動く方向と所定の角度をなす方向に沿った前記画素の色情報の変化に対応する値を前記画素のそれぞれに割り当てるように構成されるものであり、前記値の符号は、前記色情報に相当する数値またはベクトルの変化の向きに対応し、前記値の絶対値は、前記数値または前記ベクトルの変化の大きさに対応する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記指針が動く方向と略直交する方向に関して複数の画素を含む二次元的な領域に対して、前記値を前記画素のそれぞれに割り当てるように更に構成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記割り当てられた値の、前記指針が動く方向と略直交する方向に関する和、平均値、または中央値を算出することによって、前記指針の位置及び/または角度を判定するように更に構成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記割り当てられた値または前記算出された値の最大値を有する位置と最小値を有する位置との中間の位置を算出することによって、前記指針の位置及び/または角度を判定するように更に構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記最大値が正でない、または前記最小値が負でないときに前記アナログメータの指示値の読み取りに失敗したと判定するように更に構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記最大値を有する位置と前記最小値を有する位置との差が予め定められた範囲に含まれないときに前記アナログメータの指示値の読み取りに失敗したと判定するように更に構成されている、ことを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記最大値の絶対値と、前記最小値の絶対値との差または比が、予め定められた範囲に含まれないときに前記アナログメータの指示値の読み取りに失敗したと判定するように更に構成されている、ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記所定の角度が、前記指針が動く方向と略平行な方向に対応する角度であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記判定された指示値に対応するインジケータを前記画像にオーバレイするように更に構成され、
前記画像を前記制御装置を備える装置とは別のコンピュータデバイスに送信するように構成された通信装置を更に備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記インジケータは、前記画像の前記指針に対応する領域にオーバレイするように、前記判定された指針の位置及び/または角度で描画された線分であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記画像を取得することは、マッピングパラメータに基づいて、前記画像に対してマッピングを行うことを含み、前記マッピングパラメータは、前記アナログメータに対して撮像装置が略正対した状態で撮像した基準画像内の画素の位置と前記画像内の画素の位置との間の位置関係を示すことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
アナログメータの指示値を読み取る方法であって、
前記アナログメータを撮像した画像を取得するステップであって、前記画像は、前記アナログメータの指針の少なくとも一部に対応する領域を含む、ステップと、
前記画像内の画素の色情報の、前記指針が動く方向と所定の角度をなす方向における変化に対応した値を前記画素に割り当てるステップと、
前記割り当てた値に基づいて、前記指針の位置及び/または角度を判定するステップと、
前記指針の位置及び/または角度から前記アナログメータの指示値を判定するステップと、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項14】
コンピュータによって実行されるとき、請求項13に記載の方法を前記コンピュータに実行させるコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アナログメータの指示値読取装置、アナログメータの指示値読取方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産設備などにおいて、アナログメータの指示値を読み取って、設備・機器の状態を管理する必要が生じることがある。アナログメータが自身の指示値を電気信号に変換し、コンピュータデバイスに送信することができれば、読み取りに人手を割くことなく、正確かつ容易に状態を管理することができる。しかしながら、全てのアナログメータがそのような情報の送信に対応しているわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、アナログメータ指示値を読み取る技術を開示している。特許文献1に記載された技術は、針を含む盤面の全体の画像を撮影し、針が可動する角度領域を等角度間隔で分割した各角度を投票角度とし、投票角度毎に、画像内の針と交差する針の支点を中心とする円と投票角度を表現する針の支点を起点とする半直線との交点における画素値に基づいて、指示値を判定する。
【0005】
アナログメータは通常、アナログメータによって異なる太さ(短手方向における長さ)の直線形状の指針を有する。また、指針の太さが一様でない、三角形状の指針を有する場合もある。特許文献1に記載された技術は、指針の短手方向における両端の境界を検出するわけではないので、指針の短手方向における長さに起因した読み取り誤差を生じさせることがある。また、設置したカメラで撮像した画像から、アナログメータの指示値を機械的に読み取る場合、アナログメータを撮像する際のカメラの位置・向きの変化や、光源の位置・向き・強さの変化、作業者や他の物体等による遮蔽や影の影響などにより、アナログメータの指示値が読み取り不可能になることがあるが、この際に、読み取り不可能と報告されるのでなく、誤った値が指示値として報告されることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置は、アナログメータの指示値を読み取る装置であって、前記アナログメータを撮像した画像を取得し、前記画像は、前記アナログメータの指針の少なくとも一部に対応する領域を含み、前記画像内の画素の色情報の、前記指針が動く方向と所定の角度をなす方向に沿った変化に対応した値を前記画素のそれぞれに割り当て、前記割り当てた値に基づいて、前記指針の位置及び/または角度を判定し、前記指針の位置及び/または角度から前記アナログメータの指示値を判定する、ように構成された制御装置を含む。
【0007】
また、別の実施形態に係る方法は、アナログメータの指示値を読み取る方法であって、前記アナログメータを撮像した画像を取得するステップであって、前記画像は、前記アナログメータの指針の少なくとも一部に対応する領域を含む、ステップと、前記画像内の画素の色情報の、前記指針が動く方向と所定の角度をなす方向における変化に対応した値を前記画素に割り当てるステップと、前記割り当てた値に基づいて、前記指針の位置及び/または角度を判定するステップと、前記指針の位置及び/または角度から前記アナログメータの指示値を判定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置及びアナログメータの指示値読取方法によれば、指針の短手方向における両端の境界を検出することによって指示値を判定するので、上述した読み取り誤差を低減することができる。また、検出した両端の境界に関する特徴から、読み取りが妥当かどうかを簡便に評価することができ、本来指示値が読み取り不可能な場合に、誤った値が指示値として報告される確率を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置の構成の例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置の構成要素の例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係るアナログメータの例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る座標系の例を示す模式図である。
【
図6】第1の実施形態に係る画素値が角度方向において変化する例を示す模式図である。
【
図7】第1の実施形態に係る画素値を積算した値をプロットしたグラフの例を示す模式図である。
【
図8】第2の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置の構成の例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して、一実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置を詳細に説明する。アナログメータの指示値読取装置は、アナログメータの指針の少なくとも一部及び指針の可動範囲の少なくとも一部に対応する盤面上の領域を撮像し、撮像画像からアナログメータの指示値を判定する。
【0011】
本実施形態では、アナログメータは、盤面上に目盛の集合及び指針を含む。用語「指針」は、回転軸を中心に回転する、または、指針の短手方向に直線的に移動し、目盛の集合の範囲内のいずれかの値を示す針を指す。個々のアナログメータによって、指針のサイズ、形状などは異なりうる。
【0012】
アナログメータは、様々な方式、形状及び/またはタイプのものを含む。例えば、指針が特定の回転軸を中心に回転する方式のほか、指針が回転せずに直線的に移動する方式のアナログメータなども含む。
【0013】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態を説明する。
図1を参照して、第1の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置の構成の例を説明する。本実施形態では、アナログメータの指示値読取装置は、撮像機能を有するコンピュータデバイス100によって実装される。コンピュータデバイス100は、スマートフォン及びタブレットコンピュータなどの携帯型コンピュータデバイス、ラップトップ型コンピュータデバイス、及びノート型コンピュータデバイスなど、少なくとも演算機能及び撮像機能を有する情報処理装置であればよい。
【0014】
図1に示すように、コンピュータデバイス100は、アナログメータMの盤面を撮像し、撮像した画像内の指針を含む指針の可動範囲の全部または一部に対応する領域の画素値を計算することによって、指示値を判定する。コンピュータデバイス100(または、後述する撮像装置がコンピュータデバイス100と別個に存在する場合は撮像装置)は、その視野内にアナログメータMの盤面が存在するような位置に固定して設置される。また、コンピュータデバイス100は、アナログメータMの盤面に対して正対する。
【0015】
次に、
図2を参照して、アナログメータの指示値読取装置(コンピュータデバイス100)の各種構成要素を説明する。コンピュータデバイス100は、制御装置11、メモリ12、記憶装置13、通信装置14,入力装置15、出力装置16、及び撮像装置17を含む。メモリ12、記憶装置13、通信装置14,入力装置15、出力装置16、及び撮像装置17はそれぞれ、内部バスを通じて制御装置11に結合され、制御装置11によって制御される。
【0016】
制御装置11は、プロセッサとも称され、中央処理装置(CPU)などを含む。また、グラフィックプロセシングユニット(GPU)を含んでもよい。制御装置11は、上記各構成要素の制御及び演算を実行する。
【0017】
メモリ12は、制御装置11が処理する、コンピュータ実行可能な命令、及び当該命令による演算処理後のデータなどを記憶した揮発性データ記憶装置である。メモリ12は、RAM(ランダムアクセスメモリ)(例えば、SRAM(スタティックRAM)及びDRAM(ダイナミックRAM))などで実装されてもよい。
【0018】
記憶装置13は、上述したプログラム及び後述する閾値などを記憶した不揮発性データ記憶装置である。記憶装置13は、ROM(リードオンリメモリ)、SSD(ソリッドステートドライブ)などの不揮発性半導体メモリ、磁気記憶装置(ハードディスクドライブなど)、及び光ディスクなどで実装されてもよい。なお、プログラム及びデータベーステーブルなどのデータは、記憶装置13に加えまたはその代わりに、NAS(Network Attached Storage)及び/またはSAN(Storage Area Network)など、コンピュータデバイス100以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0019】
通信装置14は、ネットワーク(図示せず)を通じて別のコンピュータデバイスとの間でデータ及び制御情報を送受信するネットワークインタフェースである。このネットワークインタフェースは、例えば、TCP/IPなどのプロトコルに準拠したネットワークカード(例えば、LANカード)などによって実装される。例えば、コンピュータデバイス100は、図示しない中央コンピュータ(サーバコンピュータ)に、アナログメータMの指示値についての情報を定期的に送信してもよい。このようにして、中央コンピュータは、設備内のアナログメータを一括管理することができる。
【0020】
入力装置15は、ユーザがコンピュータデバイス100と対話する際にユーザが情報を入力することを支援する。入力装置15は、マウス、キーボード、タッチパネル、及びマイクなどによって実装される。出力装置16も同様に、ユーザがコンピュータデバイス100と対話する際にユーザに情報を出力することを支援する。出力装置16は、ディスプレイスクリーン及びスピーカなどによって実装される。
【0021】
撮像装置17は、1つまたは複数のCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサなどを含む、後述するアナログメータMの盤面を撮像するためのカメラである。撮像装置17が撮像した画像は、制御装置11によって分析される。
【0022】
本実施形態では、制御装置11及び撮像装置17が単体のコンピュータデバイス100において実装される例を示すが、そのような例に限定されない。例えば、撮像装置17は、単体のデバイスとして機能し、制御装置11を含むコンピュータデバイス100に結合されてもよい。この場合も、本実施形態では、単体のコンピュータデバイス100及び単体の撮像装置17を含むアナログメータの指示値読取装置として機能する。コンピュータデバイス100と撮像装置17とは、直接結合されてもよく、または、USBなどの公知の規格・方式で接続されてもよい。また、ネットワーク(有線・無線を問わない)を介して接続されてもよい。この場合、コンピュータデバイス100は、図示しない通信装置(LANアダプタなど)を含む。また、コンピュータデバイス100は、撮像装置17または撮像装置17に接続されたコンピュータからネットワーク経由で送信される撮像画像を処理するサーバコンピュータであってもよい。上述したサーバコンピュータとしてクラウドサービスを利用してもよい。
【0023】
次に、
図3を参照して、第1の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置によって指示値が読み取られる、アナログメータMの例を説明する。
図3に示すように、アナログメータMは、指針P、目盛の集合(0から300までの範囲の値を示す)、及び目盛に対応する数字の集合(50の倍数を示す)を含む。指針Pは、可動範囲内のいずれかに位置する(具体的には、その回転軸を中心にいずれかの角度で傾く)。以下では、指針Pが回転(移動)する方向と略平行な方向を「角度方向」と称し、指針Pの長手方向を「指針方向」と称する。なお、アナログメータの指示値読取装置によって指示値が読み取られるアナログメータは、指針が回転せずにその短手方向に直線的に移動するなど、その他の方式のアナログメータでもよい。この場合は、上述の角度方向は、指針が移動する方向とみなすことができる。また、指針が回転する方式のアナログメータにおける指針がとる角度は、指針が直線的に移動する方式のアナログメータにおいては、指針が移動する方向における位置に相当すると考えてもよい。
【0024】
次に、
図4のフローチャートを参照して、第1の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置(コンピュータデバイス100)が実行する処理の例を示す。
図4に示す処理は、コンピュータデバイス100が、アナログメータMの盤面を撮像し、指示値を読み取る例を示す。なお、この読み取りの処理は、1回のみ実行されてもよいし、あらかじめ定められた間隔をとるなどして複数回実行されてもよい。
【0025】
まず、ステップS401では、撮像装置17は、制御装置11の指示に基づいて、アナログメータMの盤面を撮像し、撮像信号を制御装置11に送信する。このときに、少なくとも指針Pの一部及び可動範囲の一部を含む盤面上の領域が撮像される。ステップS401では、アナログメータMの盤面を撮像するとき、目盛の集合、及び/または、盤面上の文字、及び/または、指針Pの回転中心付近などを含めないように撮像してもよい。このようにすることによって、後述する指針Pに対応する角度を判定する際にノイズとなり得る領域が除外されるため好ましい。
【0026】
次に、制御装置11は、撮像信号に基づいて、撮像画像を生成する(ステップS402)。次に、制御装置11は、撮像画像をグレースケールに変換する(ステップS403)。なお、グレースケールに変換せずに、1つの画素に対応する色情報を単一の数値としてではなく、3原色(RGB値)などの複数の数値の組(ベクトル)として扱ってもよい。
【0027】
グレースケールへの変換は、例えば、式(1)に従って、各々の画素に対応するRGB値を加重平均することによって計算してもよい。
【0028】
【0029】
次に、制御装置11は、グレースケール変換後の画像から、少なくとも指針Pの一部及び指針Pの可動範囲の一部を含む注目領域を抽出した注目領域画像を生成する(ステップS404)。この処理によって、グレースケール変換後の画像に存在する、少なくとも指針Pの一部及び可動範囲の一部を含む注目領域が抽出される。このとき、アナログメータMの目盛の集合、及び/または、盤面上の文字、及び/または、指針Pの回転中心付近などを含めないように注目領域を抽出してもよい。このようにすることによって、後述する指針Pに対応する角度を判定する際にノイズとなり得る領域が除外されるため好ましい。
【0030】
注目領域は、例えば、パターンマッチング、及び/または、SIFT、SURF、ORB、KAZE、AKAZEなどの公知の特徴量算出アルゴリズムを使用して識別されてもよい。また、ニューラルネットワークなどの機械学習モデルを使用して注目領域を識別してもよい。
【0031】
次に、制御装置11は、注目領域画像を、指針Pの回転中心を原点とする極座標系とみなして、指針方向と角度方向とが直交する直交座標系に変換する(ステップS405)。極座標系では、注目領域画像内の各々の画素が位置する座標をC(r,φ)で表す。rは、原点からの距離であり、φは、始線からの偏角である。始線は適宜定めてよい。
【0032】
なお、本実施形態で例示しているアナログメータMは、指針が特定の回転軸を中心に回転する方式であるため、ステップS405による座標系の変換が必要であるが、指針が回転せずに直線的に移動する方式のアナログメータでは、ステップS405は省略できる。
【0033】
図5は、注目領域画像から変換された直交座標系の模式図を示す。
図5に示す横軸は、注目領域画像を極座標系において表す場合の始線からの偏角に対応し、角度方向における位置に対応する。
【0034】
図5に示す縦軸は、注目領域画像を極座標系において表す場合の原点からの距離を取り、指針方向における位置に対応する。
【0035】
図5は、
図3に示した盤面内の指針P、及び数字に対応する領域を含む。
図5に示すP1は、
図3に示した指針Pの回転中心から右上方向に延在する部分に対応する。P2は、
図3に示した指針Pの回転中心から左下方向に延在する部分に対応する。
【0036】
図4の説明に戻り、制御装置11は、画素値の角度方向における変化(つまり、指針が動く方向と略平行な方向に沿った変化)を検出する(ステップS406)。次に、制御装置11は、画素値の角度方向における変化に対応した値を、それぞれの画素に割り当てる(ステップS407)。ステップS406及びS407は、例えば、Sobelフィルタなどの一次微分フィルタを適用することによって行ってもよい。
【0037】
図6を参照して、各々の画素の画素値に基づいて、画素値の角度方向における変化に対応した値をそれぞれの画素に割り当てる例を説明する。
図6は、指針P(
図5に示した指針Pに対応する)の一部とその周辺領域の一部に対応する画素の集合を表す模式図である。
図6に示すx1乃至x3はそれぞれ、角度方向における位置を表す。
図6に示す例では、指針P(に対応する領域)は、角度方向において位置x1と位置x2との間、及び位置x2と位置x3との間を境界に、指針方向に延在する。
【0038】
なお、実際には、指針Pに対応する画素のそれぞれは、色の濃淡などに起因して、異なる画素値を有するが、以下の説明では、説明の単純化のため、黒または白のいずれかを表す画素値を有するものとする。また、指針方向における画素値の変化が無視できる領域に注目して説明する。
【0039】
指針Pに対応する画素の色は黒である(つまり、位置x2の近傍の画素値は、黒を表す)。一方、指針Pに隣接する領域に対応する画素の色は白である(つまり、位置x1またはx3の近傍の画素値は、白を表す)。
図6では、分かりやすくするため、位置x1に近い、指針P(に対応する領域)に隣接する領域、及び、位置x3に近い、指針P(に対応する領域)に隣接する領域を網掛けにし、それぞれ、領域AR1及び領域AR2とする。
【0040】
領域AR1に対応する画素値は白を表し、角度方向において隣接する指針Pに対応する領域の画素値は黒を表すので、領域AR1から指針Pに対応する領域に至る経路で、画素値が角度方向において大幅に変化する。この変化は、領域AR1内の画素に対応する画素値と、指針Pに対応する領域内の画素に対応する画素値を比較することによって判定できる。
【0041】
一方、指針Pに対応する領域の画素値は黒を表し、角度方向において隣接する領域AR2に対応する画素値は白を表すので、指針Pに対応する領域から領域AR2に至る経路で、画素値が角度方向において大幅に変化する。この変化は、指針Pに対応する領域内の画素に対応する画素値と、領域AR2内の画素に対応する画素値を比較することによって判定できる。
【0042】
上述した例では、領域AR1に対応する画素値から指針Pに対応する画素値への色の変化(白から黒への)と、指針Pに対応する画素値から領域AR2に対応する画素値への色の変化(黒から白への)は、同一の程度の変化であり、変化の方向が異なる。よって、例えば、領域AR1と指針Pに対応する領域の境界に対応する画素に割り当てられる値を正の値とし、指針Pに対応する領域と領域AR2の境界に対応する画素に割り当てられる値を、上述の正の値と絶対値が同一である負の値とする。つまり、角度方向における色情報の変化に対応した値を画素のそれぞれに割り当てる。割り当てられる値の符号は、色情報に相当する数値またはベクトルの変化の向きに対応し、絶対値は、変化の大きさに対応する。
【0043】
次に、制御装置11は、角度ごとに、その角度に対応する各画素についてステップS407で割り当てられた値の総和を計算する(角度ごとに、画素に割り当てられた値を積算する)(ステップS408)。なお、角度ごとに、画素に割り当てられた値の総和を計算する代わりに、角度ごとに、画素に割り当てられた値の平均値または中央値などを算出してもよい。
【0044】
図7は、割り当てられた値を角度ごとに積算した値をプロットしたグラフを示す模式図である。
図7に示すグラフの横軸は、角度に対応する。縦軸は、角度ごとに積算された値に対応する。
図7から分かるように、横軸の200から500までの範囲内(
図7に示す範囲R1)では、縦軸が表す積算値がおよそ-100000からおよそ100000までの範囲をとっている。これは、
図3に示したアナログメータMの盤面内の指針Pの回転軸から左下に延在する部分及び、その周辺の領域に対応する画素に割り当てられた値が積算された値に対応している。
【0045】
上述のおよそ-100000の積算値(
図7に示す負の値のピークNP1)は、アナログメータMの盤面から指針Pの上述した部分への角度方向における画素値の変化(盤面の色から指針Pの色への変化)に対応して割り当てられた値が積算された値を示す。上述のおよそ100000の積算値(
図7に示す正の値のピークPP1)は、指針Pの上述した部分からアナログメータMの盤面への角度方向における画素値の変化(指針Pの色から盤面の色への変化)に対応して割り当てられた値が積算された値を示す。
【0046】
また、横軸の2800から3000までの範囲内(
図7に示す範囲R2)では、縦軸が表す積算値がおよそ-300000からおよそ400000までの範囲をとっている。これは、
図3に示したアナログメータMの盤面内の指針Pの回転軸から右上に延在する部分及び、その周辺の領域に対応する画素に割り当てられた値が積算された値に対応している。
【0047】
上述のおよそ-300000の積算値(
図7に示す負の値のピークNP2)は、アナログメータMの盤面から指針Pの上述した部分への角度方向における画素値の変化(盤面の色から指針Pの色への変化)に対応して割り当てられた値が積算された値を示す。上述のおよそ400000の積算値(
図7に示す正の値のピークPP2)は、指針Pの上述した部分からアナログメータMの盤面への角度方向における画素値の変化(指針Pの色から盤面の色への変化)に対応して割り当てられた値が積算された値を示す。
【0048】
本実施形態では、上述した積算値は、角度方向における画素値の変化に対応して割り当てられた値を積算したものである。そして、指針Pに対応する領域は、角度方向においてこれに隣接する領域(盤面に対応する領域)に対して、大きく異なる画素値を有する。よって、中心から放射状に最も長く延在する、指針Pの回転軸から右上に延在する部分について、角度方向において隣接する領域との境界における画素に割り当てられた値の積算値は、最も大きい絶対値を有する。
【0049】
図4の処理に戻り、制御装置11は、角度ごとに積算した値の集合において、最大値(正の値)及び最小値(負の値)を判定し、最大値を有する角度方向の位置と最小値を有する角度方向の位置との中間の位置を特定する(ステップS409)。
図7に示すグラフでは、ピークNP2が最小値を示し、ピークPP2が最大値を示す。よって、ピークNP2に対応する角度方向の位置とピークPP2に対応する角度方向の位置との中間に対応する位置が、指針Pの角度方向における位置(回転角度)として本ステップにおいて特定される。
【0050】
次に、制御装置11は、ステップS409において特定された回転角度に対応する指示値を判定する(ステップS410)。指針Pがとりうる指示値の少なくとも一部は、指針Pの回転角度と関連付けられたルックアップテーブルとして記憶装置14に記憶されている。これらの関連付けは、アナログメータMに対して、指針Pの回転角度と対応する指示値とを計測することによって予め行われる。なお、ルックアップテーブルでは、指針Pがとりうるすべての回転角度についてではなく、一部の回転角度についてのみ指示値と関連付けられてもよい。
【0051】
例えば、アナログメータMが線形目盛を有するとき、回転角度aに対して指示値Aが関連付けられ、回転角度bに対して指示値Bが関連付けられるケースにおいて、ステップS409において特定された回転角度がrである場合(rに対応する指示値がルックアップテーブルにおいて直接的に関連付けられていないとき)、式(2)に従って、rに対応する指示値を計算することができる。
【0052】
【0053】
上述したように指示値を計算することによって、少なくとも2つの回転角度に指示値を関連付けることにより、特定された回転角度に対応する指示値を判定することができる。なお、より多くの回転角度に指示値を関連付けることによって、指示値を計算する際の誤差を小さくすることができる。アナログメータMが対数目盛を有するときは、式(2)の代わりに式(3)を用いることができる。
【0054】
【0055】
ステップS409の処理では、角度ごとに積算した値の集合において、最大値が正の値でない場合、または最小値が負の値でない場合、指針Pの境界を検出することができず、読み取りに失敗したとして、処理を終了してもよい。また、最大値を有する角度方向における位置と最小値を有する角度方向における位置との差が、予め定められた範囲に含まれない場合、指針Pの短手方向における長さに対応した長さの要素を検出することができず、読み取りに失敗したとして、処理を終了してもよい。更に、最大値の絶対値と最小値の絶対値との差または比が、予め定められた範囲に含まれない場合、指針Pの角度方向における2つの境界の少なくとも一方を誤って検出し、読み取りに失敗したとして、処理を終了してもよい。
【0056】
以上のように、第1の実施形態を説明した。本実施形態では、角度方向における画素値の変化に対応した値を割り当て、割り当てた値を指針方向について、角度ごとに積算することによって、指針Pの短手方向における両端の境界を検出できる。よって、従来技術と比較して、指針の短手方向における両端の境界を検出することによって、指針の短手方向における長さに起因する読み取り誤差を減少させ、かつ、読み取り失敗の検出(読み取り不可能な状態であることの検出)を容易にし、本来読み取り不可能な状態である際に、指示値として誤って読み取った値が報告される確率を小さくできる。
【0057】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態の実施形態では、コンピュータデバイス100(または、撮像装置17)がアナログメータに対して正対する例を説明した。第2の実施形態では、コンピュータデバイス100(または、撮像装置17がコンピュータデバイス100と別個に存在する場合は撮像装置17)が、アナログメータに対して正対しない状態にある例を説明する。
図8を参照して、第2の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置(コンピュータデバイス100)の構成の例を説明する。
【0058】
図8に示すように、コンピュータデバイス100は、撮像装置17の同一の視野内に存在する2つのアナログメータM1及びM2の盤面を同時または別個に撮像する。
【0059】
アナログメータに対して撮像装置17が正対した状態で撮像しないと、指針の領域が正しく識別されないことがある。第2の実施形態では、アナログメータに対して正対していない状態で撮像装置17が撮像した撮像画像を座標変換することによって、撮像装置17がアナログメータに対して正対した状態で撮影したのと同様に指針に対応する領域を識別する。座標変換パラメータを計算するために、アナログメータに対して撮像装置17が正対した状態で撮像した基準画像が予め生成される。基準画像は記憶装置13に記憶されてもよい。
【0060】
次に、
図9フローチャートを参照して、第3の実施形態に係るアナログメータの指示値読取装置(コンピュータデバイス100)が実行する処理の例を示す。
図9に示すステップS901乃至S902、及びS904乃至S911は、
図4で説明したステップS401乃至S410と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0061】
ステップS903では、制御装置11は、ステップS902で生成された撮像画像に対し、座標変換パラメータに基づいて、座標変換を行う。座標変換パラメータは、予め生成された基準画像に含まれる画素と、ステップS902で生成された撮像画像に含まれる対応する画素との間の位置関係に基づいて計算される。座標変換パラメータは、予め計算されてもよく、または基準画像に基づいて、ステップS903において計算されてもよい。
【0062】
座標変換は、画像内の領域を平行移動、拡大・縮小、回転、せん断の内少なくとも1つを行うアフィン変換、または、四角形の領域を別の形状の四角形に変形する射影変換などであってもよい。座標変換パラメータに基づいて撮像画像に対して座標変換を行う(つまり、マッピングパラメータに基づいて、撮像画像に対してマッピングを行う)ことによって、撮像装置17がアナログメータに対して正対した状態で撮像した画像内の指針と同様の形状の指針を識別することができる。
【0063】
このようにして、ステップS902において生成された撮像画像内の指針の形状が歪んでいても、座標変換によって補正される。その後は、後続の処理によって第1の実施形態で説明した方式と同様に、撮像画像内の指針が存在しうる領域についての画素に割り当てられた値を積算することによって、アナログメータの指示値が特定される。
【0064】
以上のように、第2の実施形態を説明した。第2の実施形態では、アナログメータに対して撮像装置17が正対していなくても、座標変換を行うことによって、撮像装置17がアナログメータに対して正対した状態で撮像した画像内の指針と同様の指針を識別することができる。よって、撮像装置17を固定する必要なしに、撮像装置17の視野内にある複数のアナログメータの指示値を読み取ることができ、ひいては、1つのコンピュータデバイス100(撮像装置17)が、複数のアナログメータの指示値を読み取ることができる。
【0065】
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれにおいても、コンピュータデバイス100は、予め定められた間隔で指示値を読み取る処理を繰り返してもよい。このときに、コンピュータデバイス100は、指示値についての情報を、サーバコンピュータに送信してもよい。なお、サーバコンピュータとしてクラウドサービスを使用してもよい。サーバコンピュータは、指示値が異常の値を示すか否かを判定してもよい。指示値の異常判定には、最新の指示値だけでなく、指示値を累積した時系列データを用いてもよい。また、他のアナログメータの指示値(または、時系列データ)、及び/または、特定の設定値、工程値などの設備・機器の状態を表す値(または、時系列データ)を組み合わせて異常判定に用いてもよい。この場合、異常判定は、関連する設備・機器全体に対して行われるとみなしてもよい。異常判定は、閾値(または、適正範囲)を用いた判定方法の他、線形モデル、サポートベクトルマシン、Local Outlier Factor、Isolation Forest、ニューラルネットワークなどを含む機械学習モデルを用いて行ってもよい。異常判定の結果は、ユーザが使用するユーザコンピュータデバイス(図示せず)から確認できるようにしてもよい。また、異常を示す場合、ユーザが使用するユーザコンピュータデバイスにアラートメッセージを送信してもよい。
【0066】
また、コンピュータデバイス100は、読み取った指示値に対応して、例えば、撮像画像内で、前記指示値を示す任意の図形または記号、数値、文字などのインジケータ(例えば、回転軸から指示値が示す目盛に延在する直線)を描画(オーバレイ)し、その画像をユーザコンピュータデバイスに送信してもよい。このようにすることによって、例えば、コンピュータデバイス100が指示値を誤って読み取った場合、ユーザコンピュータデバイスに送信される画像内で、オーバレイした直線の位置と指針の位置とがずれることになる。よって、ユーザは、コンピュータデバイス100が指示値を誤って読み取ったことを把握することができる。
【0067】
上記実施形態で説明したハードウェアの構成要素は例示的なものにすぎず、その他の構成も可能であることに留意されたい。また、上記実施形態で説明した処理の順序は、必ずしも説明した順序で実行される必要がなく、任意の順序で実行されてもよい。更に、本発明の基本的な概念から逸脱することなく、追加のステップが新たに加えられてもよい。
【0068】
また、本発明の一実施形態に係るアナログメータの指示値の読み取りは、コンピュータデバイス100によって実行されるコンピュータプログラムによって実装されるが、当該コンピュータプログラムは、非一時的記憶媒体に記憶されてもよい。非一時的記憶媒体の例は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリ装置、内蔵ハードディスク及び取外可能ディスク装置などの磁気媒体、光磁気媒体、ならびにCD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)などの光学媒体などを含む。