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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150435
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】力覚センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/26 20060101AFI20231005BHJP
   G01L 1/24 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01L1/26 B
G01L1/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059542
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(72)【発明者】
【氏名】金森 義明
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 泰佑
(57)【要約】
【課題】設計時に想定した荷重よりも大きな荷重を印加された場合であっても破損しない力覚センサモジュールを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る力覚センサモジュール(50)は、外力に応じて撓む起歪体の撓み量に応じて前記外力を検知する力覚センサ(10)と、力覚センサ(10)を収容する筐体(2)と、起歪体に前記外力を伝達する力伝達部(3)であって、前記起歪体に接触した状態で筐体に収容されており、力伝達部(3)の先端を含む一部分が筐体の表面から筐体の外に突出している力伝達部(3)と、を備え、筐体(2)の表面からの力伝達部(3)の一部分の突出量は、前記先端が筐体の表面と同一平面上に位置する場合であっても力覚センサが破損しないように設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力に応じて撓む起歪体を含み、当該起歪体の撓み量に応じて前記外力を検知する力覚センサと、
前記力覚センサを収容する筐体と、
前記起歪体に前記外力を伝達する力伝達部であって、前記起歪体に接触した状態で前記筐体に収容されており、当該力伝達部の先端を含む一部分が前記筐体の表面から当該筐体の外に突出している力伝達部と、を備え、
前記筐体の表面からの前記力伝達部の前記一部分の突出量は、前記先端が前記筐体の表面と同一平面上に位置する場合であっても前記力覚センサが破損しないように設定されている、
ことを特徴とする力覚センサモジュール。
【請求項2】
前記力伝達部は、内部に流体を含む弾性体を流体バネとして備えており、
前記力伝達部の前記一部分として前記弾性体の一部分が前記筐体から突出している、
ことを特徴とする請求項1に記載の力覚センサモジュール。
【請求項3】
前記力伝達部は、前記弾性体と前記起歪体との間に介在するとともに前記弾性体から突出する突出部を更に備えており、
前記突出部は、前記弾性体よりも変形しにくい材料により構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の力覚センサモジュール。
【請求項4】
前記起歪体の表面のうち、前記突出部と対向する領域には、滑り止め構造が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の力覚センサモジュール。
【請求項5】
前記力覚センサは、
透光性を有する第1基板と、
前記第1基板の第1主面に設けられたメタサーフェスパターンと、
前記第1基板と対向するように設けられた第2基板であって、前記第1主面に対向する第2主面を含む第2基板と、
前記第2主面に設けられた反射層と、
前記第1基板と前記第2基板との間隔を規定するスペーサと、を備えており、
前記第2基板は、前記起歪体である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項6】
前記第2基板は、樹脂製であり、
前記第2基板の一対の主面のうち前記第2主面に対向する第3主面を覆うハードコート層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の力覚センサモジュール。
【請求項7】
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、前記メタサーフェスパターン及び前記反射層を収容する内部空間を構成し、
前記第1基板には、前記内部空間に向かって光を入射させる入射ポートと、前記内部空間から光を出射させる出射ポートと、が設けられており、
末端における光軸が前記第1基板の法線方向に沿うように、前記入射ポートに対して前記末端が接続された第1光ファイバと、
末端における光軸が前記第1基板の法線方向に沿うように、前記出射ポートに対して前記末端が接続された第2光ファイバと、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の力覚センサモジュール。
【請求項8】
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、前記メタサーフェスパターン及び前記反射層を収容する内部空間を構成し、
前記第1基板には、前記内部空間に向かって光を入射させるとともに、前記内部空間から光を出射させるポートが設けられており、
一方の末端における光軸が前記第1基板の法線方向に沿うように、前記ポートに対して前記一方の末端が接続された光ファイバと、
前記光ファイバの他方の末端に設けられた光コンバイナ又は光サーキュレータと、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の力覚センサモジュール。
【請求項9】
前記筐体において前記力覚センサを収容している空間を収容空間として、
前記収容空間内における前記力覚センサの位置であって、前記第1主面の法線方向における位置を調整することによって、前記起歪体に印加するプリロードを調整するプリロード調整機構を更に備え、
前記プリロードは、前記外力が前記力伝達部に印加されていない状態において、当該力伝達部が前記起歪体に印加している力である、
ことを特徴とする請求項5~8の何れか1項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項10】
前記プリロード調整機構は、内部に流体を含む弾性体を備えている、
ことを特徴とする請求項9に記載の力覚センサモジュール。
【請求項11】
請求項8に記載の力覚センサモジュールと、
前記光コンバイナ又は光サーキュレータに対して、光ファイバと介して接続された光源と、
前記光コンバイナ又は光サーキュレータに対して、光ファイバと介して接続された光検出部と、を備えている、
ことを特徴とする力覚センサシステム。
【請求項12】
被取得物を取得する取得装置であって、
前記被取得物に接触する領域に、請求項1~10の何れか1項に記載の力覚センサモジュールが配設されている、
ことを特徴とする取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製である第1基板に設けられたメタサーフェスパターンと、当該メタサーフェスパターンに対向するように第2基板に設けられた反射層と、第1基板と第2基板との間隔を規定するスペーサとを備えた力覚センサモジュールが知られている(例えば、特許文献1)。このような力覚センサモジュールでは、メタサーフェスパターンに光を入射させ、メタサーフェスパターンを透過するとともに、反射層において反射される光を用いて、メタサーフェスパターンと反射層との間隔に関する情報を得る。当該間隔は、第2基板における主面の法線方向に対して作用する力の大きさに応じて決まるため、当該力覚センサモジュールは、光学的な手法を用いて、第2基板に対して作用する一軸方向に沿った力の大きさを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-94973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図29に示された力覚センサモジュールでは、第2基板に印加される荷重に応じて、反射層とメタサーフェスパターンとの間隔d(エアギャップd)が狭くなる。この力覚センサモジュールを用いた場合、間隔dを光学的な手法を用いて測定することにより、測定した間隔dに対応した荷重を検知することができる。
【0005】
ところで、このような力覚センサモジュールは、設計時に想定した荷重よりも大きな荷重を印加された場合、第2基板及びメタサーフェスパターンの少なくとも何れかが破損する可能性がある。
【0006】
本発明の一態様に係る力覚センサモジュールは、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、設計時に想定した荷重よりも大きな荷重を印加された場合であっても破損しない力覚センサモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る力覚センサモジュールは、力覚センサと、筐体と、力伝達部と、を備える。力覚センサは、外力に応じて撓む起歪体を含み、起歪体の撓み量に応じて外力を検知する。筐体は、力覚センサを収容する。力伝達部は、起歪体に外力を伝達する。当該力伝達部は、起歪体に接触した状態で筐体に収容されており、力伝達部の先端を含む一部分が前記筐体の表面から当該筐体の外に突出している。そして、筐体の表面からの力伝達部の一部分の突出量は、先端が筐体の表面と同一平面上に位置する場合であっても力覚センサが破損しないように設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、設計時に想定した荷重よりも大きな荷重を印加された場合であっても破損しない力覚センサモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る力覚センサモジュールの主要部分の断面図である。
図2】本発明の実施形態2に係る力覚センサモジュールの主要部分の構成を示しており、図中の(a)は当該主要部分の外観図であり、(b)は当該主要部分に具備されるプリロード調整機構の斜視図であり、(c)は(a)における切断線A-A´における矢視断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る力覚センサモジュールの一実施形態を示し、主要部分が断面図で示されている図である。
図4】図中の(a)~(c)の各々は、それぞれ、図1等に示した主要部分に具備される力覚センサを構成する第1基板、第2基板、及びスペーサの平面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る力覚センサモジュールの他の実施形態を示し、主要部分が断面図で示されている図である。
図6】本発明の一態様に係る取得装置の一例であるロボットハンドの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る力覚センサモジュールの一実施形態について、詳細に説明する。先ず、力覚センサモジュールの主要部分の構成を説明する。
【0011】
<力覚センサモジュールの主要部分>
図1は、本実施形態に係る力覚センサモジュールの主要部分の断面図である。力覚センサモジュール50の主要部分1は、筐体2と、力伝達部3と、力覚センサ10とを備える。
【0012】
詳細は後述するが、力伝達部3の先端を含む一部分が筐体2の表面から筐体2外に突出しており、当該先端に点荷重Fが作用することにより、力伝達部3が力覚センサ10の一部分に点荷重F(外力)を伝達する。点荷重F(外力)の伝達を受けた力覚センサ10の一部分はその外力に応じて撓む構成となっており、力覚センサ10は、その撓み量に応じて外力を検知することができる。以下、各構成について説明する。
【0013】
(筐体2)
筐体2は、力覚センサ10を収容している。筐体2において力覚センサ10を収容している空間を収容空間Sとすれば、力覚センサ10は、収容空間Sにおける底部に配設されている。
【0014】
筐体2は、底部とは反対側にある上部に、開口部21が設けられている。開口部21には、力伝達部3が配置されており、力伝達部3によって開口部21が封じられた構成となっていることにより、収容空間Sは概ね密閉されている。
【0015】
筐体2は、難燃剤樹脂などの硬質材料から構成することができる。収容空間Sにおける底部から開口部21までの長さ(高さ)は、一定である。
【0016】
なお、筐体2の収容空間Sへの力伝達部3及び力覚センサ10の設置は、開口部21を通じて行うことが可能であるが、例えば筐体2の底部などに別の開口を設けて、当該開口を通じて設置されてもよい。
【0017】
(力伝達部3)
力伝達部3は、筐体2の開口部21に配設されており、筐体2の開口部側の外から作用される点荷重Fを受けることができるよう、力伝達部3の先端を含む一部分が筐体2の表面から筐体2の外に突出している。力伝達部3は、力覚センサ10における開口部21側の表面(ハードコート層17)に接触した状態で筐体2に収容されている。
【0018】
力伝達部3は、内部に流体312を含む弾性体311によって構成された流体バネ31と、突出部32とを有する。
【0019】
流体バネ31は、中空部分が設けられた弾性体311と、当該中空部分に充填された流体312とを備える。力伝達部3の前記一部分として弾性体311の一部分が筐体2の外に突出している。流体バネ31は、いわゆるダイヤフラムであり、バネとしての伸縮方向と、点荷重Fの荷重方向とが略一致するように、筐体2の開口部21に配設されている。
【0020】
弾性体311は、ステンレスなどの金属材料から構成されることが好ましいが、この限りではない。
【0021】
流体312は、オイルまたは空気であることが好ましいが、この限りではない。
【0022】
突出部32は、弾性体311と力覚センサ10における開口部21側の表面(ハードコート層17)との間に介在するとともに弾性体311から突出した構成である。本例では、突出部32は、力覚センサ10に向かって弾性体311から突出した略半球体の構造体から構成されており、略半球面の先端領域が、力覚センサ10における開口部21側の表面に接触している。
【0023】
突出部32は、流体バネ31の中心軸(最もバネ伸縮する箇所)に沿った位置において最も突出した構造となっている。
【0024】
突出部32は、弾性体311よりも変形しにくい材料により構成されていればよく、例えばシリコーン等の樹脂材料から構成することができるが、この限りではない。突出部32は、弾性体311に対して適当な方法で接合されていればよい。
【0025】
以上のような力伝達部3は、力覚センサ10における開口部21側の表面(ハードコート層17)に点荷重F(外力)を伝達することができる。これは、流体バネ31の先端の一部分が筐体2の開口部21が設けられている部分の表面から筐体2の外に突出していることにより実現できる。また、後述するように、力伝達部3は、その筐体2外に突出している部分の突出量が適切になるように開口部21に配設されている。
【0026】
(力覚センサ10)
力覚センサ10は、外力に応じて撓む起歪体を含む。図1の例では、外力に応じて撓む起歪体を、第2基板12として図示している。第2基板12は、少なくとも力伝達部3の突出部32と対向する領域に、滑り止め構造を有するハードコート層17を有する。力伝達部3の突出部32は球面体であることから、点荷重F(外力)が作用する方向によっては、第2基板12における主面の法線方向に対して傾きを有する場合がある。この場合に、ハードコート層17に設けられた滑り止め構造によって、突出部32が横滑りすることを防ぐことができる。滑り止め構造は、ハードコート層17の表面に凹凸を形成することにより実現できる。なお、滑り止め構造は、ハードコート層17にアンチグレアコートを施して実現してもよい。
【0027】
力覚センサ10は、起歪体を含み、当該起歪体の撓み量に応じて前記外力を検知する力覚センサであればよい。一例としては、後述するようなメタマテリアルセンサを力覚センサ10として採用することができる。第2基板12及びハードコート層17については、後述する。
【0028】
<力伝達部3に作用する点荷重(外力)>
筐体2の表面からの力伝達部3の一部分の突出量は、力伝達部3の先端(流体バネ31の先端)が筐体2の表面と同一平面上に位置する場合であっても力覚センサが破損しないように設定されている。突出量とは、図1に示す長さPに相当する。
【0029】
要するに、図1に示す例では、筐体2外部から力伝達部3に作用する点荷重F(外力)をもたらす荷重負荷物体Obは、力伝達部3の先端(流体バネ31の先端)への接触が始まってから暫くは、流体バネ31を起歪体である第2基板12に向かって押す。このとき、押圧を受けて撓んだ第2基板12によって、力覚センサ10が点荷重(外力)を検知する。そして、更に流体バネ31を押し込むと、力伝達部3の先端(流体バネ31の先端)が筐体2の表面と同一平面上に位置したところで、荷重負荷物体Obは筐体2の表面によって負荷方向への更なる移動が妨げられる。これにより、力伝達部3の先端(流体バネ31の先端)は、筐体2の表面と同一平面上にある位置よりも、更に第2基板12側には移動できない。このように更なる移動が妨げられることで、第2基板12への過度な点荷重の負荷が回避される。そのため、力覚センサ10が過度の点荷重を受けて破損しないようになっている。
【0030】
図1に示す長さPを上述のように定めるには、筐体2と、力伝達部3と、力覚センサ10との相対的位置を適切に設定する必要がある。筐体2の開口部21への力伝達部3の設置は、位置決め機構が設けられていてもよく、位置を微調整できる構成となっていてもよい。
【0031】
なお、図1に示す力覚センサモジュール50の主要部分1は、主要部分1単体で外力を検知できる構成であれば、主要部分1のみで力覚センサモジュールを構成することができる。一方で、後述する実施形態3のように、メタマテリアルセンサへの光の入出力に基づいて外力を検知する態様の力覚センサモジュールであれば、主要部分1以外にも力覚センサモジュールに具備される構成がある。
【0032】
本実施形態の力覚センサモジュールは、設計時に想定した荷重よりも大きな荷重を力伝達部に印加された場合であっても、力伝達部の先端が筐体の表面と同一平面よりも奥に押し込まれることがない。したがって、本実施形態は、設計時に想定した荷重よりも大きな荷重を印加された場合であっても破損しない力覚センサモジュールを提供することができる。また、力伝達部が、内部に流体を含む弾性体を流体バネであることで、力伝達部に対して作用する外力の方向が第2基板における主面の法線方向に対して傾きを有する場合に生じ得る外力のロスを低減することができる。したがって、本実施形態の力覚センサモジュールは、外力を検知するときの精度を高めることができる。また、突出部32を設けていることにより、起歪体である力覚センサ10(第2基板12)の所定の位置に外力を作用させることができる。また、本実施形態では、第2基板12に、少なくとも力伝達部3の突出部32と対向する領域に、滑り止め構造が設けられていることから、突出部32の滑りを低減することができるので、結果として外力のロスを低減することができる。したがって、本力覚センサモジュールは、外力を検知するときの精度を高めることができる。
【0033】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0034】
図2は、本実施形態に係る力覚センサモジュールの主要部分の構成を示しており、図中の(a)は当該主要部分の外観図であり、(b)は当該主要部分に具備されるプリロード調整機構の斜視図であり、(c)は(a)における当該主要部分を切断線A-A´矢視断面図を含むXZ平面で切断してY軸の負側から正側に向かって見た矢視断面図である。
【0035】
力覚センサモジュールの主要部分1は、図2中の(a)に示すように、カバー部5により表面を覆われ、センサ面の中央に力伝達部3の突出部分がカバー部5に覆われた状態でセンサ面から突出している。主要部分の側面には、図2中の(b)に全体を示すプリロード調整機構4の一部分が露出している。
【0036】
図2中の(c)の断面図に示すように、力覚センサモジュールの主要部分1は、カバー部5に覆われた中に、筐体2が配設されている。筐体2の収容空間Sには、起歪体(第2基板12)を含む力覚センサ10が配設されている。
【0037】
力覚センサ10における第2基板12側には、第2基板12に外力を伝達する力伝達部3が設けられている。
【0038】
(力伝達部3)
力伝達部3は、一例としては真円の球面体であり、筐体2の開口部21に嵌合して配設されている。
【0039】
球面体の力伝達部3は、筐体2の収容空間S側に向いた端部が力覚センサ10に接触している。一方、球面体の力伝達部3における筐体2の開口部21から外に向いた端部は、筐体2の表面から突出している。
【0040】
(筐体2)
筐体2の開口部21は、球面体の力伝達部3の径と等しい内径D2を有するが、外に近い領域では、外方に向かって内径が狭くなっており、球面体の力伝達部3の径よりも内径D1のほうが小さく構成されている。これにより、球面体の力伝達部3が開口部21から外に不都合に移動することを抑制することができる。
【0041】
筐体2の開口部21側とは反対側、すなわち筐体2の底部にも、底部側の開口領域29が設けられている。この開口領域29を介して例えば力覚センサ10に接続される構成(後述する光ファイバ等)を、主要部分1の外に引き出すことができる。また、この開口領域29は、力伝達部3、力覚センサ10、及びプリロード調整機構4を、収容空間Sに配設する際の通路として使用することができるが、他の開口を筐体2に設けて、当該開口を通路として用いてもよい。
【0042】
(カバー部5)
カバー部5は、一例として筐体2の開口部21及びその周辺を覆うブーツにより実現される。カバー部5に覆われることによって、開口部21からゴミが収容空間Sに侵入することを防ぐことができる。カバー部5は、一例として樹脂から構成することができる。
【0043】
(プリロード調整機構4)
プリロード調整機構4は、収容空間S内における力覚センサ10の位置であって、力覚センサ10の主面の法線方向における位置を調整することによって、前記起歪体に印加するプリロードを調整する。ここで、プリロードは、前記外力が前記力伝達部に印加されていない状態において、当該力伝達部が前記起歪体に印加している力である。
【0044】
プリロード調整機構4は、内部に流体41を含む弾性体の管42を備え、弾性体の管42の一部は環状を構成しており、他の部分は直部を構成している。環状の部分は、力覚センサ10における起歪体(第2基板12)側とは反対側に隣接して配置されている。弾性体の管42は、内部に流体を封入することができ、流体の封入量に応じて弾性体の管42の管径を調整することができる。このようなプリロード調整機構4を、力覚センサ10における起歪体(第2基板12)側とは反対側に配置することにより、収容空間S内における力覚センサ10の位置であって、力覚センサ10の主面の法線方向における位置を調整する。
【0045】
直部は、筐体2の側面から外部に露出している。なお、図中では露出した直管が、管端において開口した構成となっているが、これは力覚センサモジュールの製造過程において上述のように流体の量を調整するために開口している状態を示しているものであり、力覚センサモジュールの出荷時には管端は適切な方法によって閉じられている。
【0046】
弾性体の管42は、耐摩擦性を有する材料により構成することができ、一例としてはポリアセタール樹脂(POM)から構成することができる。流体41は、一例としてオイルを採用できるが、これに限らない。
【0047】
本実施形態のように、メタサーフェスパターン及び反射層を用いる光学的な力覚センサは、メタサーフェスパターンと反射層との間隔の変化に対して線形ではない光の応答特性を示す。そこで、例えば出荷前にプリロード調整機構を用いてプリロードを調整することができるので、実現可能な応答特性のバリエーションを拡大することができる。
【0048】
<力伝達部3に作用する点荷重(外力)>
上述の実施形態1と同様に、本実施形態においても筐体2の表面からの力伝達部3の一部分の突出量が、力伝達部3の先端(流体バネ31の先端)が筐体2の表面と同一平面上に位置する場合であっても力覚センサが破損しないように設定されている。突出量とは、図2中の(c)に示す長さPに相当する。
【0049】
要するに、図1に示す例と同様に図2中の(c)に示す例においても、筐体2外部から力伝達部3に作用する点荷重F(外力)をもたらす荷重負荷物体は、力伝達部3の先端への接触(カバー部5を介した接触)が始まってから暫くは、力伝達部3を起歪体である第2基板12に向かって押す。このとき、押圧を受けて撓んだ第2基板12によって、力覚センサ10が点荷重(外力)を検知する。そして、更に力伝達部3を押し込むと、力伝達部3の先端が筐体2の表面と同一平面上に位置したところで、荷重負荷物体は筐体2の表面によって負荷方向への更なる移動が妨げられる。これにより、力伝達部3の先端は、筐体2の表面と同一平面上にある位置よりも、更に第2基板12側には移動できない。このように更なる移動が妨げられることで、第2基板12への過度な点荷重の負荷が回避される。そのため、力覚センサ10が過度の点荷重を受けて破損しないようになっている。
【0050】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0051】
上述の各実施形態の力覚センサ10及びこれを備えた力覚センサモジュールの一態様を、図3及び図4を用いて説明する。
【0052】
図3は、力覚センサモジュール50を含む力覚センサシステム60の構成図であり、力覚センサモジュール50の主要部分1の一部である力覚センサ10の構成を断面図として示した図である。なお、図3は、説明の便宜上、上述の実施形態で説明した筐体2、力伝達部3、及びカバー部5は図示を省略している。図4の(a)~(c)の各々は、それぞれ、力覚センサ10を構成する第1基板11、第2基板12、及びスペーサ13の平面図である。
【0053】
(力覚センサ10の構成)
力覚センサ10は、メタマテリアルセンサである。具体的には、力覚センサ10は、第1基板11と、第2基板12(起歪体)と、スペーサ13と、メタサーフェスパターン14と、保護層15と、反射層16と、ハードコート層17(起歪体)と、を備えている。力覚センサ10では、第1基板11側及び第2基板12側のうち、第2基板12側に対して点荷重Fを作用させた状態において、その点荷重Fを検出する。
【0054】
<第1基板11>
第1基板11は、透光性を有する板状部材である。本実施形態では、第1基板11を構成する材料として、無アルカリガラスを採用している。無アルカリガラスはアルカリ成分を含まないため、薬品や水によって表面が侵食されにくく、電気絶縁性に優れている。ただし、第1基板11を構成する材料は、後述する光L1の波長帯域において透光性を有する固体の材料であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。第1基板11を構成する材料の他の例としては、石英及びポリカーボネート樹脂が挙げられる。なお、後述するように、本実施形態では、光L1の波長帯域を1400nm以上1600nm以下とする。
【0055】
本実施形態において、第1基板11を平面視した場合の形状(図4の(a)参照)は、1辺が4cmである正方形である。また、本実施形態において、第1基板11の厚みは、500μmである。第1基板11の形状及び厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。第1基板11の好ましい厚みは、500μm以上2000μm以下である。
【0056】
第1基板11は、互いに対向する一対の主面である主面111及び主面112を含む。図1に示した状態において、主面111が上側に位置し、主面112が下側に位置するように、第1基板11は配置されている。主面111は、第1主面の一例である。
【0057】
なお、力覚センサ10では、上述したように第2基板12に対して点荷重Fを作用させる。そのうえで、力覚センサ10では、点荷重Fに起因して第2基板12が撓むことを利用して点荷重Fを検出する。したがって、第1基板11は、点荷重Fを第2基板12に作用させた場合に、撓まないように、あるいは、第2基板12のたわみ量に対して無視できる程度しか撓まないように、構成されていることが好ましい。
【0058】
メタサーフェスパターン14は、図3及び図4の(a)に示すように、第1基板11の主面111に設けられている。なお、図4の(a)において、メタサーフェスパターン14は、保護層15により覆われているため、破線で図示されている。
【0059】
メタサーフェスパターン14は、周期的に配置された複数(図4の(a)においては25個)のサブパターン141からなる。本実施形態においては、5行5列の行列状にサブパターン141を配置している。ただし、図4の(a)は、サブパターン141を分かりやすく示すための模式図である。実際のメタサーフェスパターン14は、より多く(例えば、100行100列の配置の場合は10000個)のサブパターン141により構成されている。
【0060】
本実施形態において、各サブパターン141(すなわちメタサーフェスパターン14)は、金属製(本実施形態ではアルミニウム)である。図4の(a)に示したようなメタサーフェスパターン14は、例えば、アルミニウムのベタ膜を主面111に形成したうえで、リソグラフィーの技術を用いることによって得ることができる。アルミニウムは耐食性がよく、金に比べて安価である。ただし、メタサーフェスパターン14はアルミニウムに限らず、他の金属製(例えば、金、銀、銅)であってもよい。なお、金は加工がしやすく耐腐食性であるが高価である。また、本実施形態において、サブパターン141を形成するアルミニウムは、合金ではない純アルミニウムである。アルミニウムの純度が高い純アルミニウムであっても、僅かな不純物を含む。ここで、アルミニウムの純度によりメタサーフェスパターン14の性能が異なる。アルミニウムの純度により光学定数(屈折率、消衰係数)が変わるため、アルミニウムの純度が光学特性に影響を及ぼすためである。
【0061】
各サブパターン141は、一辺の長さが300nmの正方形状である。また、各サブパターン141の厚み(すなわちメタサーフェスパターン14の厚み)は、30nmである。各サブパターン141の好ましい厚みは20nm以上60nm以下である。各サブパターン141の厚みによりメタサーフェスパターン14の性能が変化する。各サブパターン141の厚みにおける下限値の目安は、スキンデプスである。なお、スキンデプスとは、表皮効果に起因して定まる表皮の深さであり、ある周波数を有する電磁波を金属に照射した場合に、電磁界密度が高くなる領域の深さである。各サブパターン141の厚みがスキンデプスに近づくと光が十分に反射しない等により、光学特性が劣化する。一方、各サブパターン141の厚みが厚いと別の共振モードが発生したり共振波長がシフトしたりする。また、各サブパターン141の厚みが厚いと製作の難易度が上がる。
【0062】
ただし、メタサーフェスパターン14における周期的な配置、メタサーフェスパターン14を構成する材料、各サブパターン141の形状、各サブパターン141の大きさ、及び、各サブパターン141の厚みは、上述したものに限定されず、既存の技術を参考にし、適宜定めることができる。
【0063】
なお、力覚センサ10では、洗浄時にメタサーフェスパターン14が酸化することを低減又は防ぐことを目的として後述する保護層15を備えている。保護層15を用いることなくメタサーフェスパターン14の酸化を抑制するために、メタサーフェスパターン14を構成する材料として金及び白金に代表される酸化されにくい材料を採用することも考えられる。しかしながら、金及び白金は高価であるため、力覚センサ10の製造コストを削減するという観点において好ましくない。
【0064】
保護層15は、図4の(a)に示すように、第1基板11の主面111におけるメタサーフェスパターン14を構成する各サブパターン141を完全に覆うように設けられている。保護層15は、第1基板11と同様に、透光性を有する。
【0065】
本実施形態において、保護層15は、石英ガラス(SiO)製のベタ膜である。本実施形態において、保護層15の厚みは、35nmである。保護層15の厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。保護層15の厚みの好ましいは、35nm以上60nm以下である。
【0066】
保護層15は、メタサーフェスパターン14が設けられた第1基板11を洗浄する工程において、メタサーフェスパターン14が直接に洗浄液(たとえば、純水など)に晒されることに起因して生じ得るメタサーフェスパターン14の酸化(特にその表面における酸化)を低減する、又は、防ぐことを目的として設けられている。したがって、保護層15は、透光性を有していることに加えて、洗浄液を透過させないように緻密な膜により構成されていることが好ましい。
【0067】
保護層15は、上述したメタサーフェスパターン14の酸化を低減又は防ぐことができるものであればよい。保護層15において、構成する材料や、その成膜方法や、厚みなどは、適宜定めることができる。
【0068】
<第2基板12>
第2基板12は、点荷重Fを作用させた場合に撓むように構成された板状部材(起歪体)である。図3に示すように、第2基板12は、第1基板11と対向するように設けられている。本実施形態では、第2基板12を構成する材料として、ポリカーボネート樹脂を採用している。ただし、第2基板12を構成する材料は、点荷重Fを作用させた場合に撓む固体の材料であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。第2基板12を構成する材料の他の例としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、及びシリコーン樹脂に代表される樹脂材料と、アルミニウム、銅、及びステンレスに代表される金属材料とが挙げられる。
【0069】
本実施形態において、第2基板12を平面視した場合の形状(図4の(b)参照)は、第1基板11と同じく、1辺が4cmである正方形である。また、本実施形態において、第2基板12の厚みは、300μmである。第2基板12の形状及び厚みは、点荷重Fを作用させた場合に適切な量だけ撓むように構成されていればよく、上述した例に限定されない。第2基板12の好ましい厚みは、300μm以上400μm以下である。
【0070】
第2基板12は、互いに対向する一対の主面である主面121及び主面122を含む。第2主面の一例である主面121は、第1基板11の主面111と対向している。また、主面121に対向する主面122は、第3主面の一例である。図3に示した状態において、主面121が下側に位置し、主面122が上側に位置するように、第2基板12は配置されている。
【0071】
反射層16は、図3及び図4の(b)に示すように、第2基板12の主面121に設けられている。反射層16は、光L1を反射することによって反射光である光L2を生成する金属膜である。本実施形態では、反射層16を構成する材料として、アルミニウムを採用している。ただし、反射層16を構成する材料は、光L1を反射する固体の材料であればよく、市場で入手可能な金属の中から適宜選択することができる。反射層16を構成する材料の他の例としては、金及び銀が挙げられる。ここで、反射層16の材料はメタサーフェスの金属と同じであるほうがプロセスが簡便化されコスト的にも有利である。また、第2基板12は、単に反射率が高い金属であればよいということではない。力覚センサモジュール50においては、表面プラズモンポラリトンを介して第2基板12とメタサーフェスパターン14とが一体になることで光共振器を構成する。そのため、第2基板12の金属が変わると光学特性にも影響を及ぼすと考えられる。
【0072】
本実施形態において、反射層16の厚みは、50nmである。反射層16の厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。反射層16の好ましい厚みは、50nm以上100nm以下である。
【0073】
ただし、反射層16において、構成する材料や、その成膜方法や、厚みなどは、適宜定めることができる。
【0074】
ハードコート層17は、図3に示すように、主面122に設けられている。本実施形態において、ハードコート層17は、第2基板12の全てを覆うように設けられている。ハードコート層17は、第2基板12の側面を更に覆うように設けられていてもよい。
【0075】
ハードコート層17は、スマートフォンや表示パネルなどの表面に設けられている被覆層と同様に構成された被覆層である。本実施形態においては、ハードコート層17を構成する材料として、シリコーン樹脂を採用している。ただし、ハードコート層17を構成する材料は、これに限定されない。ハードコート層17を構成する材料の他の例としては、アクリル樹脂及びフッ素樹脂が挙げられる。
【0076】
ハードコート層17は、第2基板12を構成する材料(本実施形態においてはポリカーボネート)と比較して、硬いため、傷つきにくい。また、ハードコート層17は、ガスを透過させにくい特性を有する。
【0077】
ハードコート層17は、第2基板12の表面であって、力伝達部3の接触領域を含むできるだけ広い領域を覆っていることが好ましい。
【0078】
なお、第2基板12が樹脂製である場合には、第2基板12の第1基板11に対向する側の面である主面121にも、ハードコート層17と同じ被覆層が設けられていても良い。
第2基板12が樹脂製である場合、樹脂から生じ得るガスが流出する量をハードコート層によって抑制することができる。
【0079】
<スペーサ13>
図3に示すように、スペーサ13は、第1基板11と第2基板12との間隔(無負荷時における間隔)を規定するための部材である。本実施形態において、スペーサ13は、第1基板11と第2基板12とにより挟持されている。第1基板11とスペーサ13とは、互いに接合されており、第2基板12とスペーサ13とは、互いに接合されている。本実施形態では、スペーサ13を、第1基板11及び第2基板12の各々と接合するための接合部材として、光硬化型樹脂を用いている。ただし、接合部材は、これに限定されず、市場で入手可能な接合部材の中から適宜選択することができる。
【0080】
本実施形態では、保護層15と反射層16との間隔Gが190nmになるように、スペーサ13の厚みを定めている。また、第2基板12の中央近傍に点荷重Fを作用させた場合における第2基板12のたわみ量をたわみ量ΔGとする。点荷重Fを作用させた場合、第2基板12がたわみ量ΔGの分だけ撓むため、間隔Gは、無負荷の場合の間隔Gよりもたわみ量ΔGだけ狭くなる。
【0081】
このように、スペーサ13が第1基板11と第2基板12との間に介在することによって、第1基板11と第2基板12との間隔は、固定される。具体的には、図4の(c)に示すように、外縁及び内縁の形状が何れも正方形である環状の枠体をスペーサ13として採用している。本実施形態において、スペーサ13は、外縁の1辺の長さが4cmであり、第1基板11及び第2基板12と輪郭の形状が同一である。ただし、スペーサ13の外縁の形状は、これに限定されず、適宜定めることができる。また、スペーサ13は、閉じた枠体に限定されず、その一部が切れていてもよい。また、スペーサ13は、1つの部材により構成されていてもよいし、複数の部材により構成されていてもよい。後者の場合、複数の部材の各々は、柱として機能する柱状部材あるいは筒状部材であってもよい。
【0082】
スペーサ13の厚みは、一定である。したがって、スペーサ13を挟み込む主面111と主面121とが平行になるように、第1基板11及び第2基板12を固定することができる。
【0083】
<内部空間10S>
図3に示すように、力覚センサ10は、メタサーフェスパターン14及び保護層15が設けられた第1基板11と、スペーサ13と、反射層16及びハードコート層17が設けられた第2基板12とをこの順番で積み重ねたうえで、各々を接合することによって得られる。そのため、メタサーフェスパターン14、保護層15、及び反射層16は、第1基板11と、第2基板12と、スペーサ13とにより取り囲まれた内部空間10Sに収容されている。
【0084】
図3に示した力覚センサ10においては、内部空間10Sが密閉されている。ただし、本発明の一態様において、内部空間10Sは、密閉されていなくてもよい。内部空間10Sを密閉しない場合には、第1基板11、第2基板12、スペーサ13の少なくとも何れかに、内部空間10Sと、力覚センサ10の外部空間(図1等の収容空間S)とを連通する通気孔を設けておけばよい。
【0085】
本実施形態の力覚センサ10においては、第1基板11に設けられたメタサーフェスパターン14が保護層により保護されている。そのため、主面111にメタサーフェスパターン14を形成した後の工程において、メタサーフェスパターン14を含む第1基板11を洗浄する場合であっても、メタサーフェスパターン14が直接に洗浄液に晒されることを防ぐことができる。仮に、メタサーフェスパターンが直接に洗浄液に晒された場合、メタサーフェスパターンの表面が酸化する可能性がある。力覚センサ10は、製造工程においてメタサーフェスパターン14を含む第1基板11を洗浄する場合であっても、メタサーフェスパターン14に生じ得る酸化などの悪影響を抑制することができる。したがって、力覚センサ10は、設計時に定めた所望の応答特性を得ることができる。
【0086】
力覚センサ10において、第2基板12は、金属製又は樹脂製であることが好ましい。上記の構成によれば、第2基板12がガラス製である場合とは異なり、第2基板12に対して想定を超える力が作用した場合であっても、第2基板12が割れる可能性を低減することができる。したがって、このような力覚センサ10は、想定を超える力が作用する場合における安全性を高めることができる。
【0087】
また、金属製又は樹脂製の第2基板12を採用する場合、ガラス製の第2基板を採用する場合と比較して、第2基板12を構成する材料におけるヤング率及びポアソン比の選択肢を拡大することができる。力覚センサ10の応答特性(例えば、検出可能な力の範囲や、検出可能な力の分解能など)は、点荷重Fを作用した場合におけるたわみ量ΔGに異存している。すなわち、力覚センサ10の応答特性は、第2基板12を構成する材料におけるヤング率及びポアソン比に異存している。そのため、力覚センサ10は、第2基板12を構成する材料をガラスではなく金属及び樹脂から選択することにより、実現可能な応答特性のバリエーションを拡大することができる。すなわち、力覚センサ10は、製品ラインナップのバリエーションを拡大することができる。
【0088】
また、力覚センサ10は、ハードコート層17を備えている。第2基板12を構成する材料として樹脂を採用した場合、力覚センサ10の製造後にも第2基板12からガスが生じ続ける可能性がある。上記の構成によれば、第2基板12の主面122がハードコート層17により覆われている。ハードコート層17を構成する材料は、硬度が高いことに加えて、ガスの透過を抑制することができる。したがって、力覚センサ10は、第2基板12から生じ得るガスの量を抑制することができる。また、上述の実施形態に示すように、ハードコート層17の上面には、滑り止め構造が設けられている。
【0089】
また、力覚センサ10においては、内部空間10Sは、密閉されていることが好ましい。上記の構成によれば、異物(例えば空気中のゴミなど)が内部空間10Sに侵入することを抑制することができる。したがって、力覚センサ10は、設計時に想定した応答特性を容易に維持することができる。
【0090】
また、力覚センサ10においては、内部空間10Sと、力覚センサ10の外部空間とが連通して構成も採用し得る。上記の構成によれば、内部空間10Sが密閉されていないため、外部空間における圧力が変化するような場合であっても、第1基板11と第2基板12との無負荷時における間隔Gを所定の間隔に保つことができる。したがって、力覚センサ10の一変形例は、外部空間における圧力に関わらず、設計時に想定した応答特性を示すことができる。
【0091】
以上の構成の力覚センサ10を、図1及び図2に示す筐体2の収納空間Sに収容することにより、上述の各実施形態の力覚センサモジュールの主要部分1が構成されるが、主要部分1以外の力覚センサモジュールの構成として、図3を用いて説明する。
【0092】
(力覚センサモジュール50の他の構成)
力覚センサモジュール50は、主要部分1に加えて、光サーキュレータ23と、光ファイバ24と、コリメートレンズ25とを含む。
【0093】
光サーキュレータ23は、光ファイバ24の他方の末端に設けられが光学素子である。光サーキュレータ23は、3個のポートP1,P2,P3を有する光学素子である。光サーキュレータ23は、ポートP1に入射した光をポートP2から出射し、ポートP2に入射した光をポートP3から出射し、ポートP3から入射した光をポートP1から出射するように構成されている。なお、光サーキュレータ23に代えて、光コンバイナを備えてもよい。
【0094】
光ファイバ24は、一方の末端が第1基板11の主面111側に設けられたポートPIO(コリメートレンズ25)に接続されている。したがって、光ファイバ24は、光サーキュレータ23のポートP2から出射された光L1をコリメートレンズ25に出射するとともに、コリメートレンズ25から入射された光L2をポートP2に入射する。
【0095】
コリメートレンズ25は、光ファイバ24の一方の端部から出射された光L1をコリメート光に変換する。コリメートレンズ25によりコリメート化された光L1は、反射層16により反射されることにより光L2に変換され、同じ経路を逆方向に向かって伝搬する。光L2は、コリメートレンズ25を介して光ファイバ24の一方の端部に入射する。ここで、コリメートレンズ25は、光L1と同様にコリメート光であるL1を光ファイバ24の一方の端部に効率よく結合させる。
【0096】
〔力覚センサシステム60の構成〕
図3に示すように、力覚センサシステム60は、上述した力覚センサモジュール50に加え、光源20と、光ファイバ22と、光ファイバ26と、光検出部27と、を備えている。
【0097】
光源20は、波長帯域が1400nm以上1600nm以下である光L1を出射するように構成されている。本実施形態においては、近赤外線を放射する発光ダイオード(LED)を光源20として用いている。ただし、光源20は、LEDに限定されず、市場で入手可能な光源の中から適宜選択することができる。また、光源20は、このLEDの後段に設けられたフィルタであって、光L1の波長帯域を1400nm以上1600nm以下に限定するフィルタを設けている。
【0098】
光ファイバ22は、一方の端部が光源20に接続されており、他方端部が光サーキュレータ23のポートP1に接続されている。したがって、光ファイバ22は、光源20が出射した光L1を光サーキュレータ23のポートP1に入射する。
【0099】
光ファイバ26は、一方の端部が光検出部27に接続されており、他方端部が光サーキュレータ23のポートP3に接続されている。したがって、光ファイバ26は、光サーキュレータ23のポートP3から出射された光L2を光検出部27に出射する。
【0100】
光検出部27は、光L2のスペクトル(本実施形態では反射スペクトル)を計測するための構成である。本実施形態において、光検出部27は、光L2を分光する分光器と、分光された光L2の各波長成分の光を電気信号に変換するフォトダイオードと、を備えている。
【0101】
図3の挿入図は、力覚センサ10の入力光である光L1、及び、力覚センサ10の出力光である光L2の各々のスペクトルを模式的に示すグラフである。挿入図では、光L1のスペクトルを実線で図示し、光L2のスペクトルを破線で図示している。
【0102】
挿入図から分かるように、光L2のスペクトルは、光L1のスペクトルと中心波長同士で比較した場合に、シフト量Δλだけ長波長側へシフトする。シフト量Δλは、図3に示す間隔Gに応じて定まる量である。また、間隔Gは、点荷重Fを第2基板12の中央近傍に作用させた場合における第2基板12のたわみ量ΔGに応じて定まる量である。したがって、力覚センサ10において、シフト量Δλは、点荷重Fの大きさに応じて定まる量である。力覚センサモジュール50では、力覚センサ10における点荷重Fとシフト量Δλとの相関関係を予め取得しておく、あるいは、計算しておくことによって、点荷重Fを検知することができる。
【0103】
〔変形例〕
図3に示す態様は、光の入射と出射とを1つのポートで実現している態様であったが、これに限らず、入射ポートと出射ポートとが分離している態様であってもよい。この態様について、図5を用いて説明する。
【0104】
図5は、力覚センサモジュール50を含む力覚センサシステム60の変形例を示す構成図である。なお、力覚センサモジュール50の主要部分1の一部である力覚センサ10の構成は、断面図として示しており、図3に示す力覚センサ10の断面図と同一である。
【0105】
図5の態様においては、第1基板11には、主面112側に、内部空間10Sに向かって光を入射させる入射ポートPと、内部空間10Sから光を出射させる出射ポートPと、が設けられている。
【0106】
入射ポートPには、一方の末端が接続された第1光ファイバ22Aが接続されている。入射ポートPには拡散レンズ25Aが設けられている。
【0107】
第1光ファイバ22Aは、一方の末端における光軸が第1基板11の法線方向に沿うように設けられている。第1光ファイバ22Aは、他方の末端が、図3に示す光源20に接続されている。
【0108】
拡散レンズ25Aによって拡散されて内部空間10Sに入射した光L1は、反射層16によって反射されて反射光である光L2となって、第1基板11を通過し、出射ポートPに入る。
【0109】
出射ポートPには、集光レンズ28Aが設けられている。また、出射ポートPには、第2光ファイバ26Aの一方の末端が接続されている。
【0110】
第2光ファイバ26Aは、光軸が第1基板11の法線方向に沿うように設けられている。第2光ファイバ26Aの他方の末端は、図3に示す光検出部27に接続されており、出射ポートPの集光レンズ28Aによって集光された光L2は、第2光ファイバ26Aを介して、光検出部27に入る。
【0111】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0112】
上述の各実施形態の力覚センサモジュール50の主要部分1は、被取得物(荷重負荷物体Ob)を把持して取得するロボットハンド(取得装置)の指部に取り付けることができる。図6は、ロボットハンドの一例を示した概略斜視図である。ロボットハンド70には、指部71が設けられており、指部71は、被取得物に接触する領域を有する。上述の各実施形態の力覚センサモジュール50の主要部分1は、指部71に配設されている。このように主要部分1を指部71に配設することにより、指部71が被取得物を把持したことを力伝達部3を介して力覚センサ10が検知することができる。
【0113】
力覚センサモジュール50の主要部分1を適用する対象としては、ロボットハンドに限らない。例えば、被取得物を取得する取得装置(器具)に主要部分1を取り付ける態様であれば、被取得物を取得したことを検知することに利用することができる。また、例えば、医療用(手術用)の鉗子(取得装置)に主要部分1を取り付ける態様であれば、鉗子によって被取得物(例えば組織)を挟んだことを検知することに利用することができる。
【0114】
本実施形態は、力伝達部3を介して外力が精度よく力覚センサ10に伝わる構成であるため、mN程度の小さい力でも検知することができる。したがって、先述のようなロボットハンドや鉗子の適用例においては、過度の力で被取得物を掴んだり挟んだりすることがなく、被取得物が当該力によって損傷することを回避することができる。
【0115】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
50 力覚センサモジュール
1 力覚センサモジュールの主要部分
2 筐体
3 力伝達部
31 流体バネ
311 弾性体
312 流体
32 突出部
10力覚センサ
11 第1基板
12 第2基板
13 スペーサ
14 メタサーフェスパターン
15 保護層
16 反射層
17 ハードコート層
20 光源
22A 第1光ファイバ
23 光サーキュレータ
24 光ファイバ
25 コリメートレンズ
26 光ファイバ
26A 第2光ファイバ
27 光検出部
29 光ファイバ
60 力覚センサシステム
70 ロボットハンド(取得装置)
71 指部(被取得物に接触する領域)
出射ポート
入射ポート
IO ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6