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  • 特開-力覚センサモジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150436
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】力覚センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/24 20060101AFI20231005BHJP
   G01L 1/26 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01L1/24 Z
G01L1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059543
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(72)【発明者】
【氏名】金森 義明
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 泰佑
(57)【要約】
【課題】メタサーフェスパターンが静電破壊される可能性を低減すること。
【解決手段】力覚センサモジュール(10)は、透光性を有する第1基板(11)と、第1主面(111)に設けられたメタサーフェスパターン(14)と、第1基板(11)と対向するように設けられた第2基板(12)であって、第1主面(111)に対向する第2主面(121)を含む第2基板(12)と、第2主面(121)に設けられた反射層(16)と、第1主面(111)に設けられた導電性材料製のスペーサ層(13)と、第2主面(121)とスペーサ層(13)とを接合する接合層(18)と、スペーサ層(13)に接続されたグランド配線(22)と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第1基板と、
前記第1基板の第1主面に設けられたメタサーフェスパターンと、
前記第1基板と対向するように設けられた第2基板であって、前記第1主面に対向する第2主面を含む第2基板と、
前記第2主面に設けられた反射層と、
前記第1主面に設けられた導電性材料製のスペーサ層と、
前記第2主面と前記スペーサ層とを接合する接合層と、
前記スペーサ層に接続されたグランド配線と、を備えている、
ことを特徴とする力覚センサモジュール。
【請求項2】
前記スペーサ層は、インジウムチタン錫製であり、
前記接合層は、シリコン製である、
ことを特徴とする請求項1に記載の力覚センサモジュール。
【請求項3】
前記グランド配線は、異方性導電膜を介して前記スペーサ層に接続されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の力覚センサモジュール。
【請求項4】
透光性を有し、且つ、前記メタサーフェスパターンを覆う保護層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の力覚センサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製である第1基板に設けられたメタサーフェスパターンと、当該メタサーフェスパターンに対向するように第2基板に設けられた反射層と、第1基板と第2基板との間隔を規定するスペーサとを備えた力覚センサモジュールが知られている(例えば、特許文献1)。このような力覚センサモジュールでは、メタサーフェスパターンに光を入射させ、メタサーフェスパターンを透過するとともに、反射層において反射される光を用いて、メタサーフェスパターンと反射層との間隔に関する情報を得る。当該間隔は、第2基板に対して作用する力の大きさに応じて決まるため、当該力覚センサモジュールは、光学的な手法を用いて、第2基板に対して作用する力の大きさを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-94973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような力覚センサモジュールを製造する場合、メタサーフェスパターンが設けられた第1基板、反射層が設けられた第2基板、及びスペーサを別個に製造したうえで、第1基板、スペーサ、及び第2基板を、この順番で積み重ね、接合する工程が実施される。
【0005】
特許文献1の図27及び段落0040には、第2基板に設けられた反射層の表面に、第2基板の外縁に沿ったフォトレジスト樹脂製のスペーサを形成し(図27の(1-b)参照)、このスペーサを用いて第1基板と第2基板とを接合する(図27の(3)参照)ことが記載されている。
【0006】
このように構成された力覚センサモジュールにおいては、メタサーフェスパターンが設けられた第1基板がガラス製であるため、第1基板がなんらかの理由により帯電した場合に、メタサーフェスパターンが静電破壊される可能性がある。
【0007】
本発明の一態様に係る力覚センサモジュールは、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、第1基板が帯電した場合であっても、メタサーフェスパターンが静電破壊される可能性を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る力覚センサモジュールは、第1基板と、メタサーフェスパターンと、第2基板と、反射層と、スペーサ層と、接合層と、グランド配線と、を備えている。第1基板は、透光性を有する。メタサーフェスパターンは、第1基板の第1主面に設けられる。第2基板は、第1基板と対向するように設けられ、第1主面に対向する第2主面を含む。反射層は、第2主面に設けられる。スペーサ層は、導電性材料製であり、第1主面に設けられる。接合層は、第2主面とスペーサ層とを接合する。グランド配線は、スペーサ層に接続される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、メタサーフェスパターンが静電破壊される可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る力覚センサモジュールを含む力覚センサシステムの模式図である。図1は、力覚センサモジュールの断面図を含んでいる。
図2】(a)、(b)の各々は、それぞれ、図1に示した力覚センサモジュールを構成する第1基板及び第2基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る力覚センサモジュール10と、力覚センサモジュール10を備えた力覚センサシステム1とについて、図1を参照して説明する。また、力覚センサモジュール10について、図2を参照して説明する。図1は、力覚センサモジュール10を含む力覚センサシステム1の模式図である。図1は、力覚センサモジュール10の断面図を含んでいる。図2の(a)、(b)の各々は、それぞれ、力覚センサモジュール10を構成する第1基板11及び第2基板12の平面図である。
【0012】
〔力覚センサモジュールの構成〕
図1に示すように、力覚センサモジュール10は、第1基板11と、第2基板12と、スペーサ層13と、メタサーフェスパターン14と、保護層15と、反射層16と、ハードコート層17と、接合層18と、異方性導電膜21と、グランド配線22とを備えている。
【0013】
力覚センサモジュール10では、第1基板11及び第2基板12のうち、第2基板12に対して点荷重Fを作用させた状態において、その点荷重Fを検出する。
【0014】
<第1基板>
第1基板11は、透光性を有する板状部材である。本実施形態では、第1基板11を構成する材料として、無アルカリガラスを採用している。無アルカリガラスはアルカリ成分を含まないため、薬品や水によって表面が侵食されにくく、電気絶縁性に優れている。ただし、第1基板11を構成する材料は、後述する光L1の波長帯域において透光性を有する固体の材料であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。第1基板11を構成する材料の他の例としては、石英及びポリカーボネート樹脂が挙げられる。なお、後述するように、本実施形態では、光L1の波長帯域を1400nm以上1600nm以下とする。
【0015】
本実施形態において、第1基板11を平面視した場合の形状(図2の(a)参照)は、1辺が4cmである正方形である。また、本実施形態において、第1基板11の厚みは、500μmである。第1基板11の形状及び厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。第1基板11の好ましい厚みは、500μm以上2000μm以下である。
【0016】
第1基板11は、互いに対向する一対の主面である主面111及び主面112を含む。図1に示した状態において、主面111が上側に位置し、主面112が下側に位置するように、第1基板11は配置されている。主面111は、第1主面の一例である。
【0017】
なお、力覚センサモジュール10では、上述したように第2基板12に対して点荷重Fを作用させる。そのうえで、力覚センサモジュール10では、点荷重Fに起因して第2基板12が撓むことを利用して点荷重Fを検出する。したがって、第1基板11は、点荷重Fを第2基板12に作用させた場合に、撓まないように、あるいは、第2基板12のたわみ量に対して無視できる程度しか撓まないように、構成されていることが好ましい。
【0018】
(メタサーフェスパターン)
図1及び図2の(a)に示すように、第1基板11の主面111には、メタサーフェスパターン14が設けられている。なお、図2の(a)において、メタサーフェスパターン14は、保護層15により覆われているため、破線で図示されている。
【0019】
メタサーフェスパターン14は、周期的に配置された複数(図2の(a)においては25個)のサブパターン141からなる。本実施形態においては、5行5列の行列状にサブパターン141を配置している。ただし、図2の(a)は、サブパターン141を分かりやすく示すための模式図である。実際のメタサーフェスパターン14は、より多く(例えば、100行100列の配置の場合は10000個)のサブパターン141により構成されている。
【0020】
本実施形態において、各サブパターン141(すなわちメタサーフェスパターン14)は、金属製(本実施形態ではアルミニウム)である。図2の(a)に示したようなメタサーフェスパターン14は、例えば、アルミニウムのベタ膜を主面111に形成したうえで、リソグラフィーの技術を用いることによって得ることができる。アルミニウムは耐食性がよく、金に比べて安価である。ただし、メタサーフェスパターン14はアルミニウムに限らず、他の金属製(例えば、金、銀、銅)であってもよい。なお、金は加工がしやすく耐腐食性であるが高価である。また、本実施形態において、サブパターン141を形成するアルミニウムは、合金ではない純アルミニウムである。アルミニウムの純度が高い純アルミニウムであっても、僅かな不純物を含む。ここで、アルミニウムの純度によりメタサーフェスパターン14の性能が異なる。アルミニウムの純度により光学定数(屈折率、消衰係数)が変わるため、アルミニウムの純度が光学特性に影響を及ぼすためである。
【0021】
各サブパターン141は、一辺の長さが300nmの正方形状である。また、各サブパターン141の厚み(すなわちメタサーフェスパターン14の厚み)は、30nmである。各サブパターン141の好ましい厚みは20nm以上60nm以下である。各サブパターン141の厚みによりメタサーフェスパターン14の性能が変化する。各サブパターン141の厚みにおける下限値の目安は、スキンデプスである。なお、スキンデプスとは、表皮効果に起因して定まる表皮の深さであり、ある周波数を有する電磁波を金属に照射した場合に、電磁界密度が高くなる領域の深さである。各サブパターン141の厚みがスキンデプスに近づくと光が十分に反射しない等により、光学特性が劣化する。一方、各サブパターン141の厚みが厚いと別の共振モードが発生したり共振波長がシフトしたりする。また、各サブパターン141の厚みが厚いと製作の難易度が上がる。
【0022】
ただし、メタサーフェスパターン14における周期的な配置、メタサーフェスパターン14を構成する材料、各サブパターン141の形状、各サブパターン141の大きさ、及び、各サブパターン141の厚みは、上述したものに限定されず、既存の技術を参考にし、適宜定めることができる。
【0023】
なお、力覚センサモジュール10では、洗浄時にメタサーフェスパターン14が酸化することを低減又は防ぐことを目的として後述する保護層15を備えている。保護層15を用いることなくメタサーフェスパターン14の酸化を抑制するために、メタサーフェスパターン14を構成する材料として金及び白金に代表される酸化されにくい材料を採用することも考えられる。
【0024】
(保護層)
図2の(a)に示すように、第1基板11の主面111には、メタサーフェスパターン14を構成する各サブパターン141を完全に覆う保護層15が設けられている。保護層15は、第1基板11と同様に、透光性を有する。
本実施形態において、保護層15は、石英ガラス(SiO)製のベタ膜である。本実施形態において、保護層15の厚みは、35nmである。保護層15の厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。保護層15の好ましい厚みは、35nm以上60nm以下である。
【0025】
保護層15を設けることにより、メタサーフェスパターン14が設けられた第1基板11を洗浄する工程において、メタサーフェスパターン14が直接に洗浄液(たとえば、純水など)に晒されることに起因して生じ得るメタサーフェスパターン14の酸化(特にその表面における酸化)を低減する、又は、防ぐことができる。したがって、保護層15は、透光性を有していることに加えて、洗浄液を透過させないように緻密な膜により構成されていることが好ましい。
【0026】
保護層15は、上述したメタサーフェスパターン14の酸化を低減又は防ぐことができるものであればよい。保護層15がメタサーフェスパターン14の酸化を抑制することにより、設計時に定めた所望の応答特性を長期間に亘って得ることができる。保護層15において、構成する材料や、その成膜方法や、厚みなどは、適宜定めることができる。
【0027】
<第2基板>
第2基板12は、点荷重Fを作用させた場合に撓むように構成された板状部材である。図1に示すように、第2基板12は、第1基板11と対向するように設けられている。本実施形態では、第2基板12を構成する材料として、ポリカーボネート樹脂を採用している。ただし、第2基板12を構成する材料は、点荷重Fを作用させた場合に撓む固体の材料であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。第2基板12を構成する材料の他の例としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、及びシリコーン樹脂に代表される樹脂材料と、アルミニウム、銅、及びステンレスに代表される金属材料とが挙げられる。
【0028】
本実施形態において、第2基板12を平面視した場合の形状(図2の(b)参照)は、第1基板11と同じく、1辺が4cmである正方形である。また、本実施形態において、第2基板12の厚みは、300μmである。第2基板12の形状及び厚みは、点荷重Fを作用させた場合に適切な量だけ撓むように構成されていればよく、上述した例に限定されない。第2基板12の好ましい厚みは、300μm以上400μm以下である。
【0029】
第2基板12は、互いに対向する一対の主面である主面121及び主面122を含む。第2主面の一例である主面121は、第1基板11の主面111と対向している。図1に示した状態において、主面121が下側に位置し、主面122が上側に位置するように、第2基板12は配置されている。
【0030】
(反射層)
図1及び図2の(b)に示すように、第2基板12の主面121には、反射層16が設けられている。反射層16は、光L1を反射することによって反射光である光L2を生成する金属膜である。本実施形態では、反射層16を構成する材料として、アルミニウムを採用している。ただし、反射層16を構成する材料は、光L1を反射する固体の材料であればよく、市場で入手可能な金属の中から適宜選択することができる。反射層16を構成する材料の他の例としては、金及び銀が挙げられる。ここで、反射層16の材料はメタサーフェスの金属と同じであるほうがプロセスが簡便化されコスト的にも有利である。また、第2基板12は、単に反射率が高い金属であればよいということではない。力覚センサモジュール10においては、表面プラズモンポラリトンを介して第2基板12とメタサーフェスパターン14とが一体になることで光共振器を構成する。そのため、第2基板12の金属が変わると光学特性にも影響を及ぼすと考えられる。
【0031】
本実施形態において、反射層16の厚みは、50nmである。反射層16の厚みは、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。反射層16の好ましい厚みは、50nm以上100nm以下である。
【0032】
ただし、反射層16において、構成する材料や、その成膜方法や、厚みなどは、適宜定めることができる。
【0033】
(ハードコート層)
図1に示すように、主面122には、ハードコート層17が設けられている。本実施形態において、ハードコート層17は、第2基板12の全てを覆うように設けられている。ハードコート層17は、第2基板12の表面であって、力覚センサモジュール10の外部に露出している表面のできるだけ広い領域を覆っていることが好ましい。ハードコート層17は、第2基板12の側面を更に覆うように設けられていてもよい。
【0034】
ハードコート層17は、スマートフォンや表示パネルなどの表面に設けられている被覆層と同様に構成された被覆層である。本実施形態においては、ハードコート層17を構成する材料として、シリコーン樹脂を採用している。ただし、ハードコート層17を構成する材料は、これに限定されない。ハードコート層17を構成する材料の他の例としては、アクリル樹脂及びフッ素樹脂が挙げられる。
【0035】
ハードコート層17は、第2基板12を構成する材料(本実施形態においてはポリカーボネート)と比較して、硬いため、傷つきにくい。また、ハードコート層17は、ガスを透過させにくい特性を有する。
【0036】
<スペーサ層>
図1に示すように、スペーサ層13は、主面111に設けられた導電性材料製の部材である。スペーサ層13は、第1基板11と第2基板12との間隔(無負荷時における間隔)を規定するための部材である。本実施形態において、スペーサ層13は、第1基板11と第2基板12とにより挟持されている。第1基板11とスペーサ層13とは、互いに接合されており、第2基板12とスペーサ層13とは、後述する接合層18により互いに接合されている。
【0037】
スペーサ層13は、インジウムチタン錫製である。ただし、スペーサ層13は導電性材料製であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。
【0038】
<接合層>
接合層18は、主面121とスペーサ層13とを接合する部材である。本実施形態では、接合層18は、第1基板11側に設けられた第1接合層181と、第2基板12側に設けられた第2接合層182とを常温接合技術により接合した部材である。接合層18を構成する第1接合層181及び第2接合層182は、シリコン製である。ただし、第1接合層181及び第2接合層182の各々を構成する材料は、主面121及びスペーサ層13の各々に対して成膜したときに良好な密着性を示し、且つ、第1接合層181及び第2接合層182同士が常温接合技術を用いて接合することができる材料であればよく、市場で入手可能な材料の中から適宜選択することができる。シリコンは、スペーサ層13を構成するインジウムチタン錫、及び、第2基板12を構成するポリカーボネート樹脂の何れにも良好な密着性を示し、且つ、常温接合の技術を用いて接合することができる。第1接合層181及び第2接合層182を構成するシリコン以外の材料としては、例えば、酸化ケイ素、銅、チタンが挙げられる。
【0039】
以上のように、スペーサ層13がインジウムチタン錫製であり、接合層18がシリコン製であることにより、常温接合技術を用いてスペーサ層13が設けられた第1基板11と、第2基板12とを接合することができる。したがって、主面111と主面121との間隔を精密に制御した状態で力覚センサモジュール10を製造することができる。
【0040】
<グランド配線>
グランド配線22は、スペーサ層13に接続されている。図1に示すように、グランド配線22は、異方性導電膜21を介してスペーサ層13に接続されている。この構成によれば、スペーサ層13に対してグランド配線22を、容易且つ確実に、導電性を有する状態で接続することができる。
【0041】
本実施形態では、保護層15と反射層16との間隔Gが190nmになるように、スペーサ層13及び接合層18の厚みを定めている。また、第2基板12の中央近傍に点荷重Fを作用させた場合における第2基板12のたわみ量をたわみ量ΔGとする。点荷重Fを作用させた場合、第2基板12がたわみ量ΔGの分だけ撓むため、間隔Gは、無負荷の場合の間隔Gよりもたわみ量ΔGだけ狭くなる。
【0042】
このように、スペーサ層13及び接合層18が第1基板11と第2基板12との間に介在することによって、第1基板11と第2基板12との間隔は、固定される。具体的には、外縁及び内縁の形状が何れも正方形である環状の枠体をスペーサ層13及び接合層18として採用している。本実施形態において、スペーサ層13及び接合層18は、外縁の1辺の長さが4cmであり、第1基板11及び第2基板12と輪郭の形状が同一である。ただし、スペーサ層13及び接合層18の外縁の形状は、これに限定されず、適宜定めることができる。また、スペーサ層13及び接合層18は、閉じた枠体に限定されず、その一部が切れていてもよい。また、スペーサ層13は、1つの部材により構成されていてもよいし、複数の部材により構成されていてもよい。後者の場合、複数の部材の各々は、柱として機能する柱状部材あるいは筒状部材であってもよい。
【0043】
スペーサ層13の厚みは、一定である。したがって、スペーサ層13を挟み込む主面111と主面121とが平行になるように、第1基板11及び第2基板12を固定することができる。
【0044】
<効果>
ここで、力覚センサモジュール10の効果について説明する。特許文献1の図15には、第1基板と第2基板との間隔を規定するスペーサとして、クロム(Cr)製のスペーサを採用した力覚センサモジュールが記載されている。しかしながら、クロム製のスペーサをそのままガラス製である第1基板に接合することはできない。
【0045】
そのため、図15の力覚センサモジュールにおいては、なんらかの接合手段を用いて、クロム製のスペーサと、第1基板とを接合する。実際、特許文献1では、図21及び段落0035に記載されているように、接合手段としてポリイミドテープを用いている。接合手段としてポリイミドテープを用いる手法は、試作段階の力覚センサモジュールにおいてメタサーフェスパターンの光学特性を確認するなどの用途には有効である。ただし、ポリイミドテープは、一時的にスペーサと第1基板とを接合しているに過ぎないため、製品版の力覚センサモジュールにおいて採用することはできない。
【0046】
クロム製のスペーサと、第1基板とを長期に亘って接合する接合手段の一例としては、紫外線硬化樹脂に代表される樹脂製の接着剤が考えられる。ただし、このような接着剤には、第1基板と第2基板との間隔を精密に制御することが難しいという問題がある。
【0047】
本発明の一態様に係る力覚センサモジュール10においては、例えばシリコンにより構成された中間膜を用いてスペーサ層13と第1基板11とを接合するため、第1基板11と第2基板12との間隔を精密に制御することができる。
【0048】
また、力覚センサモジュール10においては、グランド配線22を接地させることにより、導電性材料からなるスペーサ層13及びグランド配線22を介して、第1基板11は、接地される。したがって、力覚センサモジュール10は、第1基板11の帯電を抑制することができるので、メタサーフェスパターン14が静電破壊される可能性を低減することができる。
【0049】
〔力覚センサシステムの構成〕
図1に示すように、力覚センサシステム1は、上述した力覚センサモジュール10と、測定部30とを備えている。ここでは、測定部30について簡単に説明する。
【0050】
測定部30は、光源31と、光ファイバ32と、サーキュレータ33と、光ファイバ34と、コリメートレンズ35と、光ファイバ36と、光検出部37と、を備えている。
【0051】
光源31は、波長帯域が1400nm以上1600nm以下である光L1を出射するように構成されている。本実施形態においては、近赤外線を放射する発光ダイオード(LED)を光源31として用いている。ただし、光源31は、LEDに限定されず、市場で入手可能な光源の中から適宜選択することができる。また、光源31は、このLEDの後段に設けられたフィルタであって、光L1の波長帯域を1400nm以上1600nm以下に限定するフィルタを有する。
【0052】
サーキュレータ33は、3個のポートP1,P2,P3を有する光学素子である。サーキュレータ33は、ポートP1に入射した光をポートP2から出射し、ポートP2に入射した光をポートP3から出射し、ポートP3から入射した光をポートP1から出射するように構成されている。
【0053】
光ファイバ32は、一方の端部が光源31に接続されており、他方端部がサーキュレータ33のポートP1に接続されている。したがって、光ファイバ32は、光源31が出射した光L1をサーキュレータ33のポートP1に入射する。
【0054】
光ファイバ34は、一方の端部がコリメートレンズ35に接続されており、他方端部がサーキュレータ33のポートP2に接続されている。したがって、光ファイバ34は、サーキュレータ33のポートP2から出射された光L1をコリメートレンズ35に出射するとともに、コリメートレンズ35から入射された光L2をポートP2に入射する。
【0055】
コリメートレンズ35は、光ファイバ34の一方の端部から出射された光L1をコリメート光に変換する。コリメートレンズ35によりコリメート化された光L1は、反射層16により反射されることにより光L2に変換され、同じ経路を逆方向に向かって伝搬する。光L2は、コリメートレンズ35を介して光ファイバ34の一方の端部に入射する。ここで、コリメートレンズ35は、光L1と同様にコリメート光である光L2を光ファイバ24の一方の端部に効率よく結合させる。
【0056】
光ファイバ36は、一方の端部が光検出部37に接続されており、他方端部がサーキュレータ33のポートP3に接続されている。したがって、光ファイバ36は、サーキュレータ33のポートP3から出射された光L2を光検出部37に出射する。
【0057】
光検出部37は、光L2のスペクトル(本実施形態では反射スペクトル)を計測するための構成である。本実施形態において、光検出部37は、光L2を分光する分光器と、分光された光L2の各波長成分の光を電気信号に変換するフォトダイオードと、を備えている。
【0058】
図1の挿入図は、力覚センサモジュール10の入力光である光L1、及び、力覚センサモジュール10の出力光である光L2の各々のスペクトルを模式的に示すグラフである。挿入図では、光L1のスペクトルを実線で図示し、光L2のスペクトルを破線で図示している。
【0059】
挿入図から分かるように、光L2のスペクトルは、光L1のスペクトルと中心波長同士で比較した場合に、シフト量Δλだけ長波長側へシフトする。シフト量Δλは、図1に示す間隔Gに応じて定まる量である。また、間隔Gは、点荷重Fを第2基板12の中央近傍に作用させた場合における第2基板12のたわみ量ΔGに応じて定まる量である。したがって、力覚センサモジュール10において、シフト量Δλは、点荷重Fの大きさに応じて定まる量である。力覚センサシステム1では、力覚センサモジュール10における点荷重Fとシフト量Δλとの相関関係を予め取得しておく、あるいは、計算しておくことによって、点荷重Fを検知することができる。
【0060】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 力覚センサシステム
10 力覚センサモジュール
11 第1基板
12 第2基板
13 スペーサ層
14 メタサーフェスパターン
15 保護層
16 反射層
17 ハードコート層
18 接合層
22 グランド配線
30 測定部
図1
図2