(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150445
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】歯科ユニット
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61C19/00 D
A61C19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059553
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航紀
(72)【発明者】
【氏名】倉島 徹
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA01
4C052AA20
4C052LL04
(57)【要約】
【課題】エアカーテンにより給水装置に置かれたコップ内の水にエアロゾルが混入することを抑制しつつも、空気供給時に音の大きさを抑えることが可能な歯科ユニットを提供する。
【解決手段】コップを載置する部位に向けて空気を出射する空気出射部を備え、空気出射部は空気を出射する複数の出射口を有しており、複数の出射口から空気を出射する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水装置を有する歯科ユニットであって、
前記給水装置は、
コップを載置する部位に向けて空気を出射する空気出射部を備え、
前記空気出射部は空気を出射する複数の出射口を有しており、
複数の前記出射口から空気を出射する、
歯科ユニット。
【請求項2】
複数の前記出射口は、その重心が環となる仮想線に沿って間隔を有して配置されており、前記環で囲まれる面積と同じ面積となる円を考えたときに、当該円の直径が50mm以上であり、前記空気出射部における空気の出射流量が3L/分以上20L/分以下に制御する制御手段を具備している、請求項1に記載の歯科ユニット。
【請求項3】
前記制御手段により、前記部位に前記コップが載置されているときに前記空気出射部から空気を出射し、それ以外のときには前記空気出射部からの空気の出射が停止される、請求項1又は2に記載の歯科ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療等の際に患者が利用する水を給水する給水装置を備える歯科ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療の際に使用される各種設備を備える歯科ユニットには、患者がうがい等をするときのために、コップに対して自動的に給水する装置(給水装置)が具備されている。近年の歯科治療では、新型コロナウィルスの影響により、歯科治療の際のタービンでの切削やスケーリング治療の際に発生するエアロゾルが問題視されている。
対策としてバキューム自体の吸引力向上や口腔外バキュームの併用によりエアロゾルをより多く吸引するといった措置が取られているが、ハンドピースの当て方によっては飛散角度が広がってしまうことがあり、どうしても取りきれないエアロゾルが存在する。
このような取りきれないエアロゾルが、給水装置に置かれたコップの水に入ってしまうと感染の虞がある。
【0003】
また、感染防止の観点から、特許文献1、特許文献2には、施術者と患者との間にエアカーテンを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53-122293号公報
【特許文献2】特開平10-028696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエアカーテンを形成する装置では空気供給時に音が大きく、患者に不安感やストレスを与える虞があった。
【0006】
本開示は、エアカーテンにより給水装置に置かれたコップ内の水にエアロゾルが混入することを抑制しつつも、空気供給時に音の大きさを抑えることが可能な歯科ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、給水装置を有する歯科ユニットであって、給水装置は、コップを載置する部位に向けて空気を出射する空気出射部を備え、空気出射部は空気を出射する複数の出射口を有しており、複数の出射口から空気を出射する、歯科ユニットを開示する。
【0008】
複数の出射口は、その重心が環となる仮想線に沿って間隔を有して配置されており、環で囲まれた面積と同じ面積となる円を考えたときに、当該円の直径が50mm以上であり、空気出射部における空気の出射流量が3L/分以上20L/分以下に制御する制御手段を具備してもよい。
【0009】
制御手段により、コップを載置する部位にコップが載置されているときに空気出射部から空気を出射し、それ以外のときには空気出射部からの空気の出射が停止されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、エアカーテンを形成して給水装置に置かれたコップ内の水にエアロゾルが混入することを抑制し感染を抑制しつつ、空気供給時に音の大きさを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図3は給水装置10の他の角度からの外観斜視図である。
【
図4】
図4は空気出射部15をコップ受け部12側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を図面に示す形態に基づき説明する。ただし本開示はこれら形態に限定されるものではない。
【0013】
1.歯科ユニットの構造
図1は1つの形態にかかる歯科ユニット1の外観斜視図を示している。歯科ユニット1は、基台2、患者用椅子3、照明ユニット4、ドクターユニット5、アシスタントユニット6、及び、給排水ユニット7を備えている。
【0014】
1.1.基台
基台2は患者用椅子3の下方に配置されており、患者用椅子3の土台となるものである。基台2は、筐体により外郭が形成されるとともに、該筐体の内側には、各種制御機器が内包されている。ここに含まれる制御機器としては、例えば、患者用椅子3の昇降、傾倒起立等をさせるための油圧回路、及び該油圧回路を制御する油圧制御手段を挙げることができる。従って、基台2のうち、患者用椅子3の背面側には、フットスイッチ2aが設けられる。施術者はこのフットスイッチ2aやドクターユニット5の操作パネルの操作スイッチを操作して油圧制御手段に対して指令を出し、油圧回路を制御して患者用椅子3の昇降、傾倒起立をさせることができる。
【0015】
1.2.患者用椅子
本形態において患者用椅子3は、着座部3a、背もたれ3b、ヘッドレスト3c、レッグレスト3d、及びフットレスト3eを備えている。患者用椅子のこれら各部位は公知の通りであり、特に限定されることはない。
【0016】
1.3.照明ユニット
照明ユニット4は、治療を行うときに的確に患者の口腔内を照明することができるように、照明ヘッド4aが自在継ぎ手等により自由度高く移動回動可能なアーム4bを介して取り付けられている。
【0017】
1.4.ドクターユニット
ドクターユニット5は、患者用椅子3の側方のうちアシスタントユニット6とは反対側の側方に設けられ、施術者が必要とする各器具やスイッチ等が備えられる作業台5aを有している。この作業台5aにはその上面に作業面を有するとともに、施術者が施術の際に使用するハンドピース群5bがホルダーに収められている。ハンドピース群に含まれるハンドピースとしては、例えば、エアタービン、マイクロモータ、スケーラ、シリンジ等を挙げることができる。作業台5aには、操作パネルが設けられてもよく、ここに各種操作スイッチ類が配置されており、例えば患者用椅子3の傾倒起立、昇降操作、照明ヘッド4aの点灯及び消灯の切り替え、ハンドピースの作動及び停止等が可能となっている。
そして、作業台はアームにより移動及び回動ができるように支持されており、施術者の移動に合わせて作業台も移動及び回動することが可能とされ、利便性の向上が図られている。
【0018】
1.5.アシスタントユニット
アシスタントユニット6は、患者用椅子3を挟んでドクターユニット5とは反対側に配置され、主にアシスタントが使用する器具が具備された部位である。アシスタントユニット6は、ハンガー部6aがアームに支えられてなり、ハンガー部6aには、各種器具が懸架されている。懸架される器具は、例えばバキューム、排唾管、シリンジ等のハンドピースである。
【0019】
1.6.給排水ユニット
給排水ユニット7は、患者用椅子3の側方のうちのアシスタントユニット6と同じ側に設けられ、スピットン7a、及び給水装置10を備えている。
【0020】
スピットン7aは、治療中や治療後に患者がうがいをした後の口腔内のから吐き捨てた水を排水する部位であり、鉢状とされている。そしてスピットン7aに排出された唾液や水は、ウオーターユニット中の排水トラップを介して排出される。
【0021】
給水装置10は、患者がうがいに利用するコップCに対して水を自動的に供給し、コップCを保持する装置である。また、本形態で給水装置10はエアカーテンを形成する空気出射部15を備えている。以下に給水装置10について詳しく説明する。
【0022】
2.給水装置
図2に給水装置10の周辺に注目した斜視図、
図3には給水装置10を下方から見上げて空気の出射口16が見えるように表した斜視図を示した。
図2、
図3からわかるように給水装置10は、給水部、コップ受け部12、超音波センサ13、光電センサ14、及び、空気出射部15を有している。
【0023】
2.1.給水部
給水部は、コップCに対して水を供給する部位であり、不図示の給水管及びその端部に設けられた給水口11を有している。また、給水部は給水及びその停止を切り替える不図示の電磁弁を備えている。すなわち、給水管を流れる水が給水口11から流出してコップCに水が注がれる。そして給水及びその停止が電磁弁により切り替えられる。この切り替えのための電磁弁の作動は不図示の制御手段により行われる。
【0024】
ここで制御手段は特に限定されることはないが、例えば、ROM等の記憶手段に保存されたプログラム及び歯科ユニット1に具備された各種センサから受信したデータに基づいて中央演算子が作業領域としてのRAMで演算をおこない、その演算結果を出力して歯科ユニット1の各部を制御するものが挙げられる。
【0025】
2.2.コップ受け部
コップ受け部12は、コップCが置かれ、患者が手に取るまで水が注がれた状態のコップCを保持しておく部位である。コップ受け部12の形態は特に限定されることはなく公知の形態でよく、コップCを置くことができるものであればよい。
【0026】
2.3.超音波センサ
超音波センサ13は、コップ受け部12に向けて超音波を発振する発振部と、反射により戻ってきた超音波を検知する検知部とを有している。本形態で超音波センサ13は給水口11の付近に配置されている。検知部で検知された超音波を上記制御手段にデータとして処理することで、コップCに注がれた水の水位を検出し、水の供給及び停止が行われる。
【0027】
2.4.光電センサ
光電センサ14は、コップ受け部12の直上を横切るように赤外線を出射する出光部と、反射により戻ってきた赤外線を検知する受光部とを有している。本形態で光電センサ14は
図2に示したようにコップCが置かれたときにコップCの側面に対向する位置に配置されている。受光部で受光した赤外線を上記制御手段にデータとして処理することでコップCの有無を判定する。すなわち、出光部より出光した赤外線がコップCに反射して受光部で受光すればコップCが存在し、受光部で赤外線を受光しなければコップCが存在しないと判定する。
【0028】
2.5.空気出射部
[空気出射部の形態]
空気出射部15は、空気を出射する部位である。本形態の空気出射部15は、
図1~
図3よりわかるように、給水口11を囲むように配置され、
図3に直線の点線矢印で示したようにコップ受け部12に向けて空気を出射することができるように構成されている。従って、本形態では空気出射部15は環状であり、ここから出射される空気により形成されるエアカーテンは筒状となって当該筒状のエアカーテンの内側にコップCが配置される。これによりコップC及びその内側に溜められた水に対してエアカーテンの外側からのエアロゾル、埃、舞ったごみ等が混入することを抑制する。
【0029】
図4にはコップ受け部12側から空気出射部15を見た図を表した。上記のように空気出射部15から空気が出射されコップCを内側に含むように筒状のエアカーテンが形成されるが、そのために本形態の空気出射部15では
図3、
図4よりわかるように穴状である出射口16が複数、環となる仮想線(
図4のK)に沿って間隔を有して配置される。これにより、エアカーテンを形成する際に空気の量を抑えて音が大きくなることを抑制しつつ、空気をコップCの周囲にまで届かせることができる。
発明者の知見によれば、空気の出射口を環状のスリットで形成すると、空気出射時の音が大きくなるとともにコップ受け部12へのエアの推進力が不足してエアカーテンとしての機能が不十分であることがわかった。これに対して本形態のように穴状である出射口16が複数配置されることでこれらの問題を解決することができた。特に歯科ユニットであるという性質上、患者に少しでも不安感やストレスとなることは回避すべきであり、音が大きいことはその原因の1つとなることから音の大きさを抑えることは重要である。ここで、具体的な音の大きさは状況によって異なるが、患者用椅子3のヘッドレスト3cの部位で55dB以下が好ましく、より好ましくは52dB以下である。
【0030】
音の大きさを抑えつつエアカーテンとしての機能をより顕著とするため、空気出射部15から出射される空気の流速を適切に設定することが効果的である。具体的な流速は15m/秒~40m/秒が好ましい。ここで、流速自体は空気の流路や流量に関連するため、これを実現するためのより具体的な形態として次を満たすことが好ましい。
【0031】
空気出射部15の全体からの空気の出射流量は3L/分~20L/分が好ましく、より好ましくは、4L/分~15L/分である。流量の調整手段は特に限定されることはないが、例えば目盛り付きのニードルバルブを空気出射部への配管に配置することにより行うことができる。予め空気圧力に対する出射流量を得ておき、空気圧力に対応してニードルバルブの目盛りを調整すれば適切な出射流量を得ることができる。また、その他、空気出射部への配管に流量計を設けてその計測値により制御手段で流量調整弁を作動させることもできる。
【0032】
複数の出射口16は、その重心(出射口が円形の場合には中心)が環となる仮想線(
図4のK)に沿って間隔を有して配置されており、この環Kは当該環Kで囲まれる面積と同じ面積となる円を考えたときに、この円の直径が50mm以上であることが好ましい。上限値は限定されることはないが100mm以下である。環Kが円である場合には
図4にDで示した直径は50mm以上が好ましく、上限値は特に限定されることはないが100mm以下であることが好ましい。
環Kは円であることが好ましいがこのときの円は正確な円である必要はなく、概ね円であればよい。
【0033】
各出射口16の大きさは、
図4の視点において、円形であれば直径が1mm以上10mm以下、
図4の視点で円形以外であればその面積が0.78mm
2以上78.5mm
2以下であることが好ましい。
また、出射口16の数は複数であればよい。より好ましくは4つ以上である。このとき、出射口16の間隔は等間隔であってもよいが、エアロゾルが発生し易い患者用椅子3に近い側に多くの出射口16を配置するように出射口16の配列に疎密を設けてもよい。
【0034】
各出射口16への空気の供給は特に限定されることはないが、ハンドピースに空気を供給する空気供給源と同じ空気供給源に接続されることが好ましい。これにより空気の供給が、歯科用ユニットに用いられる既設のコンプレッサにより行われ、新たな空気供給源を設ける必要がなくコストを低く抑えることができる。
【0035】
[空気出射の開始及び停止]
空気出射部15からの空気の出射は空気出射部15に対して空気を供給及び停止することにより行われるが、そのための手段は例えばそのためのスイッチを歯科ユニット1のいずれかの部分(例えばドクターユニット5等)に設ければ、施術者が所望するときに空気の出射及び停止が可能となる。
【0036】
これに加え、又は、これに代えて、空気出射部15への空気の供給及び停止がコップCの有無により自動に行われてもよい。すなわち、コップ受け部12にコップCが載置されているときには空気出射部15から空気を出射し、コップ受け部12にコップCが載置されていないときには空気出射部15からの空気の出射を停止する。
そのための具体的な構成は特に限定されることはないが、コップ受け部12にコップCがあるかないかは上記のように光電センサ14により検知されているので、光電センサ14からの信号を受けた制御手段が演算を行ってコップCの有無を判定をし、当該判定に応じて空気出射部15に空気を供給する配管に設けられた電磁弁に対して開閉の指示することにより行うことができる。これによれば施術者はエアカーテン形成のための個別の作業をする必要がなく施術者の手間を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 歯科ユニット
2 基台
3 患者用椅子
4 歯科用照明
5 ドクターユニット
6 アシスタントユニット
7 給排水ユニット
10 給水装置
15 空気出射部