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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150458
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231005BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02J7/00 302D
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
B60L1/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059570
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】石井 剛史
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩
(72)【発明者】
【氏名】森 和繁
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祥平
(72)【発明者】
【氏名】谷口 司
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮弥
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA11
5G503DA13
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA12
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC25
5H125EE23
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】外部電源を用いることなく、長期休車中の低電圧バッテリの充電容量の低下を防止可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、作業装置と、作業装置の駆動源としての電動モータと、電動モータを制御する制御装置と、制御装置に電力を供給する低電圧バッテリと、低電圧バッテリが設けられる低電圧回路と、電動モータに電力を供給する高電圧バッテリと、高電圧バッテリが設けられる高電圧回路と、低電圧回路と高電圧回路との間に設けられるDC/DCコンバータとを備える。制御装置は、低電圧バッテリの電圧を検出し、作業機械が非稼働状態であるときに、低電圧バッテリの電圧が予め定められた電圧閾値を下回った場合には、高電圧バッテリの出力電圧をDC/DCコンバータにより降圧して低電圧バッテリに供給し、低電圧バッテリを充電するための非稼働時充電制御を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と、前記作業装置の駆動源としての電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、前記制御装置に電力を供給する低電圧バッテリと、前記低電圧バッテリが設けられる低電圧回路と、前記電動モータに電力を供給する高電圧バッテリと、前記高電圧バッテリが設けられる高電圧回路と、前記低電圧回路と前記高電圧回路との間に設けられるDC/DCコンバータとを備える作業機械において、
前記制御装置は、
前記低電圧バッテリの電圧を検出し、
前記作業機械が非稼働状態であるときに、前記低電圧バッテリの電圧が予め定められた電圧閾値を下回った場合には、前記高電圧バッテリの出力電圧を前記DC/DCコンバータにより降圧して前記低電圧バッテリに供給し、前記低電圧バッテリを充電するための非稼働時充電制御を実行する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記非稼働状態とは、前記高電圧回路における前記高電圧バッテリと前記DC/DCコンバータとの接続が遮断され、前記高電圧回路から前記DC/DCコンバータを介して前記低電圧回路に電力が供給されていない状態である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記非稼働時充電制御が開始されてからの時間を計測し、計測した時間が所定時間を経過した場合に、前記非稼働時充電制御を終了する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記高電圧バッテリのSOCを監視し、前記高電圧バッテリのSOCが低いほど前記所定時間を短くする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記高電圧バッテリのSOCを監視し、前記高電圧バッテリのSOCが予め定められたSOC閾値未満の場合には、前記作業機械が非稼働状態であるときに、前記低電圧バッテリの電圧が前記電圧閾値を下回ったとしても、前記非稼働時充電制御を実行しない
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動式の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動式の作業機械(例えば、油圧ショベル)は、作業装置の駆動源としての電動モータと、電動モータに電力を供給する高電圧バッテリと、電動モータ等を制御する制御装置と、制御装置に電力を供給する低電圧バッテリと、を備える。
【0003】
エンジン駆動式の作業機械では、エンジンを始動させる際に大電流が必要であり、低電圧バッテリには所定のCCA(Cold Cranking Ampere)性能が要求される。これに対して、電気駆動式の作業機械は、上記のようなCCA性能を要求されることがない。このため、電気駆動式の作業機械の低電圧バッテリの容量は、エンジン駆動式の作業機械の低電圧バッテリの容量に比べて小さくすることができる。
【0004】
電気駆動式の作業機械では、低電圧バッテリの容量を小さくできるため、低コスト化及び小型化の観点でメリットがあるが、長期休車時にバッテリ上がりが生じやすいというデメリットがある。バッテリ上がりが発生すると、作業機械を稼働させることができず、作業効率が低下してしまう。
【0005】
そこで、バッテリ上がりを防止するための技術として、充電容量の低下した低電圧バッテリを充電する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、高電圧で動作する走行用の電動モータに電力を供給する高電圧バッテリ、及び、低電圧で動作する電気部品に電力を供給する低電圧バッテリの充電を行う充電装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献1に記載の充電装置は、入力される交流電力から高電圧バッテリ及び低電圧バッテリの充電用の電力を生成する充電手段と、充電手段から高電圧バッテリへの電力の供給の有無を切替える第1の切替え手段と、充電手段から低電圧バッテリへの電力の供給の有無を切替える第2の切替え手段と、交流電力により動作する充電制御手段と、を備えている。
【0007】
この充電制御手段は、高電圧バッテリを充電する場合、低電圧バッテリの電圧が所定の電圧以下であるとき、高電圧バッテリを充電する前に、充電手段から低電圧バッテリに電力を供給し、低電圧バッテリを充電するように第1の切替え手段及び第2の切替え手段を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-193670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、低電圧バッテリを充電するためには、外部電源(商用電源)から電力の供給を受ける必要がある。つまり、特許文献1に記載の技術では、外部電源を用いた充電を行わない限り、低電圧バッテリの充電容量の低下を回避することができない。このため、特許文献1に記載の技術では、長期休車中の低電圧バッテリの充電容量の低下の防止という観点で改善の余地がある。
【0010】
本発明は、外部電源を用いることなく、長期休車中の低電圧バッテリの充電容量の低下を防止可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による作業機械は、作業装置と、前記作業装置の駆動源としての電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、前記制御装置に電力を供給する低電圧バッテリと、前記低電圧バッテリが設けられる低電圧回路と、前記電動モータに電力を供給する高電圧バッテリと、前記高電圧バッテリが設けられる高電圧回路と、前記低電圧回路と前記高電圧回路との間に設けられるDC/DCコンバータとを備える。前記制御装置は、前記低電圧バッテリの電圧を検出し、前記作業機械が非稼働状態であるときに、前記低電圧バッテリの電圧が予め定められた電圧閾値を下回った場合には、前記高電圧バッテリの出力電圧を前記DC/DCコンバータにより降圧して前記低電圧バッテリに供給し、前記低電圧バッテリを充電するための非稼働時充電制御を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部電源を用いることなく、長期休車中の低電圧バッテリの充電容量の低下を防止可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、油圧ショベルの側面図である。
図2図2は、油圧ショベルの背面図である。
図3図3は、油圧ショベルの背面図の部分拡大図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電動システムの構成を示すブロック図である。
図5図5は、メインコントローラのハードウェア構成図である。
図6図6は、第1実施形態に係るメインコントローラにより実行される充電制御の内容の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1実施形態に係る低電圧バッテリの電圧VBの時間変化を示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係る電動システムESの構成を示すブロック図である。
図9図9は、第2実施形態に係るメインコントローラにより実行される充電制御の内容の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、不揮発性メモリに記憶されている閾値計算用テーブルを示す図である。
図11】第2実施形態に係る低電圧バッテリの電圧VBの時間変化を示す図であり、(a)は高電圧バッテリのSOCがCAである場合の電圧VBの時間変化を示し、(b)は高電圧バッテリのSOCがCBである場合の電圧VBの時間変化を示す。
図12図12は、高電圧バッテリのSOCの時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械としての油圧ショベルについて説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1図7を参照して、第1実施形態に係る油圧ショベル1について説明する。図1は油圧ショベル1の側面図であり、図2は油圧ショベル1の背面図である。なお、本明細書において、油圧ショベル1が図1に示す状態にてオペレータが運転席に着座した場合におけるオペレータの前側(図1において右側)、後側(図1において左側)、左側(図2において左側)、右側(図2において右側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0016】
-油圧ショベルの構成-
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る油圧ショベル1は、車体重量6トン未満の電気駆動式のミニショベルである。油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体8と、下部走行体8上に旋回可能に設けられる上部旋回体15と、上部旋回体15に取り付けられる多関節型の作業装置19とを備える。
【0017】
上部旋回体15は、その基礎下部構造としての旋回フレーム15aと、旋回フレーム15aに設けられたキャノピータイプの運転室9と、旋回フレーム15aの後端に設けられたカウンターウエイト10とを備える。旋回フレーム15aの前側には、左右方向に回動可能なスイングポスト18が設けられる。作業装置19は、スイングポスト18に上下方向に回動可能に連結される。
【0018】
作業装置19は、スイングポスト18に上下方向に回動可能に連結されたブーム2と、ブーム2に上下方向に回動可能に連結されたアーム3と、アーム3に上下方向に回動可能に連結されたバケット4とを備える。ブーム2はブーム用の油圧シリンダ5によって駆動され、アーム3はアーム用の油圧シリンダ6によって駆動され、バケット4はバケット用の油圧シリンダ7によって駆動される。なお、バケット4は、オプション用の油圧アクチュエータが組み込まれたアタッチメント(図示せず)と交換可能である。
【0019】
下部走行体8は、上方から見てH字形状のトラックフレーム8aと、トラックフレーム8aの左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪8bと、トラックフレーム8aの左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の従動輪(アイドラ)8cと、駆動輪8bと従動輪8cとで掛けまわされたクローラベルト8dとを備えている。下部走行体8は、走行用の油圧モータ8eによって駆動輪8bを介してクローラベルト8dが駆動されることにより走行する。
【0020】
トラックフレーム8aの中央部には旋回輪15bが設けられている。旋回フレーム15aは旋回輪15bを介してトラックフレーム8aに旋回可能に設けられている。旋回フレーム15a(すなわち、上部旋回体15)は旋回用の油圧モータ(図示せず)の駆動により旋回する。
【0021】
カウンターウエイト10には、外部電源から供給される電力を車両に導入する受電ボックス13が設けられている。受電ボックス13には、給電ケーブル12を接続するための給電コネクタ16が設けられている。外部電源の電力は、給電ケーブル12、給電コネクタ16及び受電ボックス13を介して、油圧ショベル1の電動システムES(図4参照)に供給される。
【0022】
図3は、油圧ショベル1の背面図の部分拡大図である。図3に示すように、受電ボックス13には、作業者が充電を指示するための充電スイッチ77が設けられている。充電スイッチ77がオン操作されることにより後述する低電圧バッテリ102(図4参照)及び高電圧バッテリ111(図4参照)の充電が開始され、充電スイッチ77がオフ操作されることにより低電圧バッテリ102及び高電圧バッテリ111の充電が停止する。
【0023】
充電スイッチ77は、給電コネクタ16の近くに配置されている。このため、作業者は、給電ケーブル12を給電コネクタ16に接続した後すぐに充電スイッチ77のオン操作を行うことができる。また、作業者は、充電スイッチ77のオフ操作を行って充電を停止した後すぐに給電ケーブル12を給電コネクタ16から取り外すことができる。
【0024】
受電ボックス13には、ブレーカー17が設けられている。ブレーカー17が遮断操作されることにより、外部電源と電動システムESとの接続が物理的に遮断される。上部旋回体15の後部には、開閉可能なラジエータカバー11と、開閉可能なスライドカバー14とが設けられている。メンテナンス作業の際、作業者は、ラジエータカバー11及びスライドカバー14を開放し、内部の機器にアクセスする。
【0025】
-電動システムの構成-
図4は、第1実施形態に係る電動システムESの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る電動システムESは、商用電源である外部電源61から供給される電力を、高電圧バッテリ111及び低電圧バッテリ102に供給し充電する機能と、外部電源61または高電圧バッテリ111からの電力を、インバータ63を介して電動モータ64に供給し、作業装置19、下部走行体8及び上部旋回体15を稼働させる機能とを有している。さらに、電動システムESは、油圧ショベル1が非稼働状態であるときに、所定の条件が成立した場合には、高電圧バッテリ111からの電力を、DC/DCコンバータ103を介して低電圧バッテリ102に供給し、低電圧バッテリ102を充電する機能を有している。
【0026】
本実施形態に係る電動システムESは、作業装置19の駆動源としての電動モータ64と、電動モータ64に電力を供給する高電圧バッテリ装置101と、高電圧バッテリ装置101が設けられる高電圧回路92と、低電圧バッテリ102と、低電圧バッテリ102が設けられる低電圧回路91と、低電圧回路91と高電圧回路92との間に設けられるDC/DCコンバータ103と、を備える。低電圧バッテリ102の端子電圧は、高電圧バッテリ装置101に設けられるバッテリモジュール(以下、高電圧バッテリとも記す)111の端子電圧よりも低い。
【0027】
また、電動システムESは、インバータ63を介して電動モータ64を制御するメインコントローラ105と、DC/DCコンバータ103を制御するDC/DCコンバータ制御部131と、高電圧バッテリ装置101を制御するバッテリコントローラ110と、を有する。メインコントローラ105、DC/DCコンバータ制御部131及びバッテリコントローラ110は、相互に接続され、電動モータ64等の油圧ショベル1に設けられる各種装置の制御を行う制御装置100として構成される。
【0028】
制御装置100を構成するメインコントローラ105、DC/DCコンバータ制御部131、及びバッテリコントローラ110は、それぞれ低電圧回路91に接続されている。制御装置100には、油圧ショベル1の非稼働時には低電圧バッテリ102から電力が供給され、油圧ショベル1の稼働時には高電圧バッテリ111からDC/DCコンバータ103を介して電力が供給される。
【0029】
メインコントローラ105には、インバータ63、モニタ71、キースイッチ72、ダイヤル73、ロックスイッチ74、アラーム75、インジケータ76、充電スイッチ77、通信端末78、及び電圧検出器79が接続されている。
【0030】
電動システムESは、受電ボックス13に接続される整流器62と、メインコントローラ105からの制御信号に基づいて、電動モータ64の回転速度を制御するインバータ63とを備える。整流器62、インバータ63、DC/DCコンバータ103及び高電圧バッテリ装置101は、高電圧回路92によって接続されている。
【0031】
外部電源61から給電コネクタ16を介して電動システムESに供給される三相交流電力は、整流器62で直流電力に変換され、高電圧回路92に供給される。受電ボックス13にはリレー(不図示)が設けられており、このリレーは、メインコントローラ105からオン信号が入力されると外部電源61と整流器62とを接続する。また、このリレーは、メインコントローラ105からオフ信号が入力されると、外部電源61と整流器62との接続を遮断する。
【0032】
メインコントローラ105は、充電スイッチ77がオン操作されると、受電ボックス13のリレーにオン信号を出力し、充電スイッチ77がオフ操作されると、受電ボックス13のリレーにオフ信号を出力する。充電スイッチ77がオン操作されると、受電ボックス13のリレーによって外部電源61からの交流電力が電動システムESに供給される。充電スイッチ77がオフ操作されると、受電ボックス13のリレーによって外部電源61から電動システムESへの交流電力の供給が遮断される。
【0033】
DC/DCコンバータ103には、低電圧回路91及び高電圧回路92が接続されている。DC/DCコンバータ103は、外部電源61から供給される電圧を、低電圧(例えば12Vや24V)に降圧し、低電圧バッテリ102に供給する。これにより、低電圧バッテリ102が充電される。
【0034】
低電圧バッテリ102は、油圧ショベル1の電気システムの電源、すなわち電動モータ64以外の電気機器の電源として機能する。電動モータ64以外の電気機器としては、メインコントローラ105、DC/DCコンバータ制御部131、バッテリコントローラ110、通信端末78、整流器62、入出力切替リレー112,113及びインバータ63等である。これらの電気機器は、低電圧バッテリ102から供給される電力によって動作可能となっている。
【0035】
電動システムESには、高電圧回路92の一部を内蔵した配電ユニット93が設けられている。配電ユニット93は、高電圧回路92から絶縁された金属製の箱に覆われており、内蔵するバスバーによって回路を形成する分電ボックスの構造になっている(図示せず)。
【0036】
インバータ63は、高電圧回路92から入力される直流電力を交流電力に変換し、電動モータ64へ供給する電力変換装置である。インバータ63は、例えば、トランジスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などからなる複数(例えば6個)のスイッチング素子を有するインバータ回路を有する。
【0037】
インバータ63は、メインコントローラ105からのモータ回転速度指令に基づいて、インバータ回路のスイッチング素子の開閉動作を制御することにより、電動モータ64への供給電圧の周波数を制御し、電動モータ64の回転速度を制御する。
【0038】
電動モータ64には油圧ポンプ65が接続されている。図示しないが、油圧ポンプ65は、電動モータ64により駆動され、油圧ショベル1の油圧システムに作動油を供給する。油圧ポンプ65から吐出される作動油は、コントロールバルブを介して、各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ5,6,7、走行用の油圧モータ8e及び旋回用の油圧モータ)に供給されることで、作業装置19、下部走行体8及び上部旋回体15が駆動される。
【0039】
ダイヤル73は、電動モータ64の回転速度を指示する操作装置であり、運転室9内に設けられている。上述したように、電動モータ64は油圧ポンプ65に接続されているため、ダイヤル73は、各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ5,6,7、走行用の油圧モータ8e及び旋回用の油圧モータ)の動作速度を調整するための操作装置ともいえる。ダイヤル73は操作量に応じて内部抵抗値が変動し、電圧値がアナログ信号としてメインコントローラ105に入力される。
【0040】
メインコントローラ105には、電圧値(ダイヤル73の操作量)と目標回転速度との関係を規定する目標速度テーブルが記憶されている。メインコントローラ105は、目標速度テーブルを参照し、ダイヤル73の操作量(電圧値)に基づいて、目標回転速度を演算する。メインコントローラ105は、電動モータ64の実回転速度が目標回転速度となるようにインバータ63を制御する。電動モータ64の回転速度が変化すると、各油圧アクチュエータに供給される圧油の流量も変わる。したがって、オペレータは、ダイヤル73を操作することにより、各油圧アクチュエータの動作速度を調整することができる。
【0041】
高電圧バッテリ装置101は、高電圧回路92に接続され、インバータ63に駆動用電力を供給する。高電圧バッテリ装置101は、低電圧回路91に接続されるバッテリコントローラ110と、入出力切替リレー112,113を介して高電圧回路92に接続される高電圧バッテリ111と、高電圧回路92と高電圧バッテリ111との接続状態(接続/遮断)を切り替える入出力切替リレー112,113とを備える。
【0042】
高電圧バッテリ111は、外部電源61から整流器62を介して高電圧回路92に供給される直流電力により充電される。高電圧バッテリ(バッテリモジュール)111は、複数の二次電池(以下、電池セルとも記す)111aを有している。電池セル111aは、充電と放電が可能な蓄電素子であり、例えば、リチウムイオン電池である。複数の電池セル111aは、直列あるいは並列で接続される。
【0043】
バッテリコントローラ110は、高電圧バッテリ111の電圧、温度の管理を行う。バッテリコントローラ110は、高電圧バッテリ111の電圧、温度のデータをメインコントローラ105に出力する。
【0044】
バッテリコントローラ110は、高電圧バッテリ111と高電圧回路92との接続制御を行う。高電圧バッテリ111と高電圧回路92の間において、入出力切替リレー112,113が高電圧バッテリ装置101の電源回路の正極側と負極側に設けられている。バッテリコントローラ110は、メインコントローラ105からの指令に応じて、入出力切替リレー112,113を制御する。
【0045】
キースイッチ72は、油圧ショベル1の稼働及び停止(非稼働)の指示を行う操作装置である。キースイッチ72は、キーシリンダ及びこのキーシリンダに挿入可能なキーで構成されており、キーの回転操作位置(オフ位置、オン位置)に応じて、メインコントローラ105に信号を出力する。メインコントローラ105は、キースイッチ72がオン位置に操作されると、バッテリコントローラ110にリレー接続指令を出力する。メインコントローラ105は、キースイッチ72がオフ位置に操作されると、バッテリコントローラ110にリレー遮断指令を出力する。
【0046】
バッテリコントローラ110は、メインコントローラ105からリレー接続指令が入力されると、入出力切替リレー112,113にオン信号を出力し、入出力切替リレー112,113を接続状態にする。これにより、高電圧バッテリ111が高電圧回路92に接続される。バッテリコントローラ110は、メインコントローラ105からリレー遮断指令が入力されると、入出力切替リレー112,113にオフ信号を出力し、入出力切替リレー112,113を遮断状態(接続解除状態)にする。これにより、高電圧バッテリ111と高電圧回路92との接続が遮断される。
【0047】
入出力切替リレー112,113によって、高電圧バッテリ111と高電圧回路92とが接続されると、高電圧バッテリ111から高電圧回路92を介して各機器に電力が供給され、油圧ショベル1が稼働状態になる。油圧ショベル1が稼働状態のときには、オペレータが運転室9内の操作レバーを操作することにより、各油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0048】
入出力切替リレー112,113によって、高電圧バッテリ111と高電圧回路92との接続が遮断されると、高電圧バッテリ111から高電圧回路92を介して各機器に電力が供給されなくなり、油圧ショベル1が非稼働状態になる。非稼働状態とは、高電圧回路92における高電圧バッテリ111とDC/DCコンバータ103との接続が遮断され、高電圧回路92からDC/DCコンバータ103を介して低電圧回路91に電力が供給されていない状態である。油圧ショベル1が非稼働状態のときには、オペレータが運転室9内の操作レバーを操作したとしても、各油圧アクチュエータが動作することはない。
【0049】
DC/DCコンバータ103は、高電圧回路92の電圧を降圧して低電圧回路91に供給する。DC/DCコンバータ103は、高電圧回路92と低電圧回路91に接続されるDC/DCコンバータ回路部132と、メインコントローラ105からの指令に応じて、DC/DCコンバータ回路部132の回路の切り替えを制御して、高電圧回路92から低電圧回路91への電力の供給の開始と停止を切り換えるDC/DCコンバータ制御部131とを有する。DC/DCコンバータ回路部132は、高電圧回路92から低電圧回路91に供給する電圧を降圧する電圧変換部であり、スイッチング素子を有するスイッチング回路と、スイッチング素子の開閉動作を制御する駆動回路とを有する。DC/DCコンバータ回路部132の低電圧系統の負極側は、油圧ショベル1(以下、車両とも記す)のアースに接続される。
【0050】
なお、図示しないが、整流器62、DC/DCコンバータ制御部131、高電圧バッテリ装置101内の入出力切替リレー112,113、バッテリコントローラ110、インバータ63、メインコントローラ105の電源の負極側回路は、電気回路的に車両のアースに接続される。
【0051】
低電圧バッテリ102は、低電圧回路91に直流電力を供給する。また、低電圧バッテリ102は、低電圧回路91から供給される直流電力によって充電される。低電圧バッテリ102は、例えば、充放電可能な鉛バッテリである。低電圧バッテリ102の負極端子は、車両のアースに接続される。
【0052】
DC/DCコンバータ103が低電圧回路91に供給する電力は、低電圧バッテリ102、整流器62、DC/DCコンバータ制御部131、高電圧バッテリ装置101内の入出力切替リレー112,113、バッテリコントローラ110、インバータ63、通信端末78及びメインコントローラ105に供給される。
【0053】
電圧検出器79は、低電圧回路91に並列してメインコントローラ105に接続され、低電圧回路91の電圧を検出する。電圧検出器79の検出した電圧は、メインコントローラ105に入力される。
【0054】
モニタ71は、メインコントローラ105からの指令に応じて、車両の稼働状態、及び、バッテリコントローラ110が取得する高電圧バッテリ111の状態を表示する。高電圧バッテリ111の状態としては、例えば、高電圧バッテリ111の電池残量を示すSOC(State Of Charge)が挙げられる。
【0055】
ロックスイッチ74は車両に設けられる安全装置である。ロックスイッチ74がロック位置に操作されると、車両が稼働状態である場合であっても、作業装置19、上部旋回体15及び下部走行体8の油圧アクチュエータの動作が禁止される。ロックスイッチ74がロック解除位置に操作されると、車両が稼働状態である場合に、作業装置19、上部旋回体15及び下部走行体8の油圧アクチュエータの動作が許容される。
【0056】
アラーム75は、メインコントローラ105からの指令に応じて、作業者に警告を音で報知する報知装置である。インジケータ76は、メインコントローラ105からの指令に応じて、充電時に点灯することで、車両が充電中であることを作業者に報知する報知装置である。
【0057】
通信端末78は、車両の稼働情報をメインコントローラ105から受け取り、受け取った稼働情報を油圧ショベル1から遠く離れた管理施設に送信する。管理施設にはサーバーが設けられる。通信端末78は、例えば、2.4GHz帯、5GHz帯等の帯域を感受帯域とする通信アンテナを含む通信インタフェースを有する。通信端末78は、広域ネットワークである通信回線を介した通信を行うことにより、管理施設のサーバーと情報の授受を行う。通信端末78に接続される通信回線は、インターネット、4G,5G等の携帯電話通信網(移動通信網)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等である。サーバーは油圧ショベル1から送信された車両の稼働情報を収集する。サーバーは、収集した車両の稼働情報を管理施設内のモニタに表示する。これにより、管理者は、油圧ショベル1のメンテナンス計画を効率的に立てることができる。車両の稼働情報には、車両の稼働時間、位置情報、高電圧バッテリ装置101のステータス、故障情報などがある。
【0058】
油圧ショベル1が稼働状態であるときには、DC/DCコンバータ103が起動しているので、低電圧回路91に接続された機器類(整流器62、DC/DCコンバータ制御部131、入出力切替リレー112,113、バッテリコントローラ110、インバータ63、メインコントローラ105等)、及び、その他図示しない車両の電装品には、高電圧バッテリ装置101からDC/DCコンバータ103を介して十分な電力が供給される。また、油圧ショベル1が稼働状態であるときには、高電圧バッテリ装置101からDC/DCコンバータ103を介して低電圧バッテリ102に電力が供給され、低電圧バッテリ102が充電される。
【0059】
油圧ショベル1が非稼働状態(停止状態)であるときには、低電圧回路91に接続された機器類(整流器62、DC/DCコンバータ制御部131、入出力切替リレー112,113、バッテリコントローラ110、インバータ63、メインコントローラ105等)の電源は、低電圧バッテリ102となる。
【0060】
油圧ショベル1が非稼働状態であるときには、各機器(例えば、DC/DCコンバータ制御部131、バッテリコントローラ110、メインコントローラ105)のメモリのバックアップのために暗電流(待機電流)が常時流れている。また、油圧ショベル1が非稼働状態であるときには、メインコントローラ105が通信端末78を用いて車両の稼働情報(位置情報等)を管理施設のサーバーに定期的に送信するため、通信端末78にも常時電流が流れている。さらに、油圧ショベル1が非稼働状態であるときには、バッテリコントローラ110が高電圧バッテリ111の電池セル111aの電圧及び温度の監視、並びに電池セル間の電圧バランシング制御を行うため、バッテリコントローラ110にも常時電流が流れている。したがって、油圧ショベル1を長期に亘って休車する場合、低電圧バッテリ102は、各機器への電力の供給及び自然放電などによって、充電容量(残容量)が時間の経過に応じて減少する。
【0061】
そこで、本実施形態に係る制御装置100は、長期休車に起因する低電圧バッテリ102のバッテリ上がりの発生を防止するために、油圧ショベル1が非稼働状態であるときに、低電圧バッテリ102の電圧が予め定められた電圧閾値を下回った場合には、高電圧バッテリ111の出力電圧をDC/DCコンバータ103により降圧して低電圧バッテリ102に供給し、低電圧バッテリ102を充電するための非稼働時充電制御を実行する。以下、制御装置100により実行される非稼働時充電制御の詳細について説明する。
【0062】
低電圧バッテリ102は、充電容量の低下に応じて端子電圧が低下する。なお、油圧ショベル1が非稼働状態であるときには、低電圧回路91に流れる電流は電圧降下にほぼ影響しないとみなせる。このため、油圧ショベル1が非稼働状態であるときに電圧検出器79により検出される電圧は、低電圧バッテリ102の端子電圧に相当するといえる。つまり、メインコントローラ105は、電圧検出器79を介して低電圧バッテリ102の電圧を検出している。
【0063】
メインコントローラ105は、車両が非稼働状態のとき(すなわち、キーオフのとき)に、低電圧バッテリ102の電圧を監視する。メインコントローラ105は、車両が非稼働状態のときに低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0を下回ったか否かを判定する。車両が非稼働状態のときに低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0を下回った場合、メインコントローラ105は、非稼働時充電条件が成立したと判定する。
【0064】
電圧閾値VB0は、油圧ショベル1の起動が可能な電圧の下限値に余裕値を加算した値として予め定められている。なお、油圧ショベル1の起動とは、高電圧回路92から低電圧回路91に電力が供給されていない状態(非稼働状態)から、入出力切替リレー112,113が遮断状態から接続状態に切り替えられることにより、高電圧回路92から低電圧回路91に電力が供給される状態(稼働状態)へと遷移することを指す。
【0065】
非稼働時充電条件が成立したと判定されると、メインコントローラ105は、バッテリコントローラ110へリレー接続指令を出力する。バッテリコントローラ110は、リレー接続指令が入力されると、入出力切替リレー112,113にオン信号を出力し、入出力切替リレー112,113を接続状態にする。これにより、高電圧バッテリ装置101が高電圧回路92に接続され、高電圧バッテリ111から高電圧回路92に直流電力が供給される。
【0066】
非稼働時充電条件が成立したと判定されると、メインコントローラ105は、DC/DCコンバータ制御部131に起動指令を出力し、DC/DCコンバータ103を起動させる。DC/DCコンバータ103は、高電圧バッテリ111が接続される高電圧回路92から、低電圧バッテリ102が接続される低電圧回路91に電力を供給する。これにより、高電圧バッテリ111の蓄電電力によって低電圧バッテリ102が充電される。
【0067】
-制御装置のハードウェア構成-
図5は、メインコントローラ105のハードウェア構成図である。図5に示すように、メインコントローラ105は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置151、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ152、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ153、入力インタフェース154、出力インタフェース155、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、メインコントローラ105は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0068】
不揮発性メモリ152には、各種演算が実行可能なプログラム及び閾値(例えば、電圧閾値VB0)、データテーブルなどが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ152は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリ153は、処理装置151による演算結果及び入力インタフェース154から入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置151は、不揮発性メモリ152に記憶されたプログラムを揮発性メモリ153に展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入力インタフェース154、不揮発性メモリ152及び揮発性メモリ153から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0069】
入力インタフェース154は、各種装置(例えば、ダイヤル73、充電スイッチ77、電圧検出器79、DC/DCコンバータ制御部131、バッテリコントローラ110)から入力された信号を処理装置151で演算可能なデータに変換する。また、出力インタフェース155は、処理装置151での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(例えば、モニタ71、アラーム75、インジケータ76、DC/DCコンバータ制御部131、バッテリコントローラ110)に出力する。
【0070】
なお、バッテリコントローラ110及びDC/DCコンバータ制御部131は、メインコントローラ105と同様のハードウェア構成とすることができる。
【0071】
-制御装置による非稼働時充電制御-
図6を参照して、メインコントローラ105により実行される充電制御での処理の流れの一例について説明する。図6は、メインコントローラ105により実行される充電制御の内容の一例を示すフローチャートである。図6に示す充電制御は、所定の制御周期で繰り返し実行される。ステップS100において、メインコントローラ105は、キースイッチ72の回転操作位置がオフ位置であるか否かを判定する。キースイッチ72がオフ位置である場合、メインコントローラ105は、油圧ショベル1は非稼働状態であると判定し、処理をステップS105に進める。一方、キースイッチ72がオン位置である場合、メインコントローラ105は、油圧ショベル1は稼働状態であると判定し、図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0072】
ステップS105において、メインコントローラ105は、電圧検出器79により検出された低電圧バッテリ102の電圧VBを取得し、処理をステップS110に進める。
【0073】
ステップS110において、メインコントローラ105は、ステップS105で取得した電圧VBが予め定められた電圧閾値VB0以下であるか否かを判定する。メインコントローラ105は、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0以下である場合、非稼働時充電条件が成立したと判定し、処理をステップS115に進める。一方、メインコントローラ105は、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0よりも高い場合には、非稼働時充電条件は成立していないと判定し、図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0074】
ステップS115において、メインコントローラ105は、バッテリコントローラ110にリレー接続指令を出力し、処理をステップS120へ進める。ステップS115の処理が実行されることにより、バッテリコントローラ110は、入出力切替リレー112,113にオン信号(リレーのコイルへの励磁電流)を出力する。これにより、入出力切替リレー112,113が接続状態になる。
【0075】
ステップS120において、メインコントローラ105は、DC/DCコンバータ制御部131に起動指令を出力し、処理をステップS125へ進める。ステップS120の処理が実行されることにより、DC/DCコンバータ103が起動され、DC/DCコンバータ回路部132によって高電圧回路92の電圧(すなわち、高電圧バッテリ111の出力電圧)が降圧され、低電圧回路91に供給される。これにより、高電圧バッテリ111から低電圧バッテリ102に電力が供給されるため、低電圧バッテリ102の充電が行われる。
【0076】
ステップS125において、メインコントローラ105は、カウント変数Ncに1を加算し、新たなカウント変数Ncとするカウントアップ処理を実行する。なお、カウント変数Ncの初期値は、0(ゼロ)である。カウントアップ処理は、後述するようにカウント変数Ncが変数閾値Nsに到達するまで所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0077】
つまり、カウントアップ処理(S125)は、非稼働時充電制御が開始されてからの時間を計測する処理に相当する。
【0078】
カウントアップ処理(S125)が実行されると、処理がステップS130へ進み、メインコントローラ105は、カウント変数Ncが変数閾値Nsであるか否かを判定する。カウント変数Ncが変数閾値Nsでない場合、メインコントローラ105は、非稼働時充電制御が開始されてからの計測時間(カウント変数Nc×制御周期)が所定時間(変数閾値Ns×制御周期)ΔTを経過していないと判定し、処理をステップS125に戻す。一方、カウント変数Ncが変数閾値Nsである場合、メインコントローラ105は、非稼働時充電制御が開始されてからの計測時間が所定時間ΔTを経過したと判定し、処理をステップS135へ進める。
【0079】
変数閾値Nsは、車両の仕様に基づいた設計値であり、車格、システム構成、回路規模、低電圧バッテリ102の性能などの様々な要件に基づいて、予め定められる。変数閾値Nsは、不揮発性メモリ152に記憶されている。
【0080】
ステップS135において、メインコントローラ105は、カウント変数Ncを初期値に戻し(Nc=0)、処理をステップS140へ進める。ステップS140において、メインコントローラ105は、DC/DCコンバータ制御部131に停止指令を出力する。これにより、高電圧回路92から低電圧回路91への電力の供給が停止する。
【0081】
次のステップS145において、メインコントローラ105は、バッテリコントローラ110にリレー遮断指令を出力し、図6のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS145の処理が実行されることにより、バッテリコントローラ110は、入出力切替リレー112,113にオフ信号を出力する。これにより、入出力切替リレー112,113が遮断状態になる。
【0082】
以上のとおり、本実施形態では、非稼働時充電制御(S115~S130)により、DC/DCコンバータ103により、高電圧回路92から低電圧回路91への電力供給が維持されている間、低電圧バッテリ102が充電される。非稼働時充電制御が開始されてからの計測時間が所定時間ΔTに達すると、非稼働時充電制御が終了する(S130でYes,S135~S145)。
【0083】
-低電圧バッテリの電圧の時間変化-
図7は、低電圧バッテリ102の電圧VBの時間変化を示す図である。図7において、縦軸は低電圧バッテリ102の電圧VB[V]を表し、横軸は時間T[s]の経過を表している。VBLは、油圧ショベル1を起動できなくなる充電容量に達したときの電圧である。VB0は、起動不可電圧VBLに余裕値を加えた値である(VB0>VBL)。また、図7では、非稼働時充電制御を実行した場合(本実施形態)の電圧変動を実線(A)で示し、非稼働時充電制御を実行しない場合(比較例)の電圧変動を破線(B)で示す。
【0084】
油圧ショベル1が稼働状態から非稼働状態に遷移すると、時間の経過に応じて低電圧バッテリ102の充電容量が低下する。低電圧バッテリ102の充電容量の低下に応じて、低電圧バッテリ102の電圧VBが低下する。実線(A)で示されるように、本実施形態では、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0以下になると、非稼働時充電制御が実行され、低電圧バッテリ102の充電が開始される(時刻T0)。
【0085】
非稼働時充電制御が開始されてからの時間が、所定時間ΔT(=充電終了時刻T1-充電開始時刻T0)を経過するまでは、DC/DCコンバータ103を介して高電圧バッテリ111から低電圧バッテリ102に電力が供給され、低電圧バッテリ102の充電容量が回復する。
【0086】
図示するように、DC/DCコンバータ103を起動している間(時刻T0~T1)、電圧検出器79によって検出される電圧は、DC/DCコンバータ103が出力する電圧VB1となる。時刻T1において非稼働時充電制御が終了すると、そこから充電容量は時間の経過にしたがって減少する。充電容量が低下することにより、低電圧バッテリ102の電圧VBも低下する。
【0087】
低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0まで低下すると、再び、非稼働時充電制御が実行され、低電圧バッテリ102の充電が行われる。なお、高電圧バッテリ111の容量は、低電圧バッテリ102の容量に比べて十分に大きい。このため、高電圧バッテリ111を用いた低電圧バッテリ102の充電による高電圧バッテリ111の容量の低下はほとんど問題ではない。
【0088】
破線(B)で示されるように、本実施形態の比較例では、低電圧バッテリ102の電圧VBが時刻T0でVB0に達した後も電圧VBが時間の経過とともに低下する。比較例では、時刻TLで低電圧バッテリ102の電圧VBが起動不可電圧VBLに達する。その結果、比較例では、時刻TL以降、低電圧バッテリ102が低充電状態となり、油圧ショベル1を起動させることができなくなる。つまり、バッテリ上がりが発生する。このため、比較例では、長期休車の終了後に、外部電源61と受電ボックス13とを給電ケーブル12により接続し、外部電源61からの電力により低電圧バッテリ102の充電を行う作業が発生する。
【0089】
また、低電圧バッテリ102が低充電状態で放置されると、充電速度の低下、電圧の低下など、低電圧バッテリ102の性能劣化が早まる。その結果、低電圧バッテリ102の交換サイクルを早めてしまう。さらに、低電圧バッテリ102が低充電状態になると、低電圧バッテリ102を電源とする機器を正常に動作させることができなくなり、サービス品質が低下する。例えば、通信端末78を正常に動作させることができなくなると、油圧ショベル1の稼働情報(位置情報等)を管理施設のサーバーに送信することができなくなってしまう。また、バッテリコントローラ110を正常に動作させることができなくなると、非稼働中の高電圧バッテリ111の状態(電池セルの電圧、温度)の監視が行えず、電池セル間の電圧バランシング制御や充電量推定の精度が落ちてしまう。
【0090】
これに対して、本実施形態では、実線(A)で示されるように、長期休車中、高電圧バッテリ111から低電圧バッテリ102への充電が繰り返し行われる。このため、長期休車の終了後、直ちに油圧ショベル1を起動させることができる。長期休車中に、低電圧バッテリ102のバッテリ上がりが発生することを防止できるので、長期休車中に、外部電源61を用いた充電作業を行う必要もない。このため、本実施形態によれば、油圧ショベル1の起動に関する信頼性を確保することができる。
【0091】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0092】
(1)油圧ショベル(作業機械)1は、作業装置19と、作業装置19の駆動源としての電動モータ64と、電動モータ64を制御する制御装置100(メインコントローラ105、バッテリコントローラ110及びDC/DCコンバータ制御部131)と、制御装置100に電力を供給する低電圧バッテリ102と、低電圧バッテリ102が設けられる低電圧回路91と、電動モータ64に電力を供給する高電圧バッテリ111と、高電圧バッテリ111が設けられる高電圧回路92と、低電圧回路91と高電圧回路92との間に設けられるDC/DCコンバータ103とを備える。
【0093】
制御装置100は、低電圧バッテリ102の電圧を検出する。制御装置100は、油圧ショベル1が非稼働状態であるときに、低電圧バッテリ102の電圧VBが予め定められた電圧閾値VB0を下回った場合(図6のS100でYes,S105,S110でYes)には、高電圧バッテリ111の出力電圧をDC/DCコンバータ103により降圧して低電圧バッテリ102に供給し、低電圧バッテリ102を充電するための非稼働時充電制御(図6のステップS115~S130)を実行する。
【0094】
したがって、本実施形態によれば、外部電源61を用いることなく、長期休車中の低電圧バッテリ102の充電容量の低下を防止可能な油圧ショベル1を提供することができる。
【0095】
(2)制御装置100は、非稼働時充電制御が開始されてからの時間を計測し(図6のS125,S130でNo)、計測した時間が所定時間ΔTを経過した場合に(図6のS130でYes)、非稼働時充電制御を終了する(図6のS135~S140)。これにより、低電圧バッテリ102の過充電を防止することができる。
【0096】
(3)制御装置100は、非稼働時充電制御において充電対象となる低電圧バッテリ102からの電力により動作し、非稼働時充電制御を実行する。このため、油圧ショベル1が非稼働状態のときの制御装置100の電源を低電圧バッテリ102とは別に設ける場合に比べて、電動システムESの大型化及び高コスト化を防止することができる。
【0097】
<第2実施形態>
図8図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベル1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
【0098】
-電動システムの構成-
図8は、第2実施形態に係る電動システムESの構成を示すブロック図である。図8に示すように、第2実施形態に係る高電圧バッテリ装置201は、第1実施形態と同様、バッテリコントローラ210、高電圧バッテリ(バッテリモジュール)111、及び入出力切替リレー112,113を有している。また、第2実施形態に係る高電圧バッテリ装置201は、高電圧バッテリ111の電圧(端子電圧)を検出する電圧検出器215と、高電圧バッテリ111に流れる電流を検出する電流検出器216とを備えている。
【0099】
電圧検出器215及び電流検出器216は、検出結果(高電圧バッテリ111の電圧値及び電流値)を表す信号をバッテリコントローラ210に出力する。バッテリコントローラ210は、周期的に取得した高電圧バッテリ111の電圧値及び電流値の少なくとも一方に基づき、高電圧バッテリ111のSOCを推定する。
【0100】
バッテリコントローラ210は、高電圧バッテリ111の充放電停止時の端子電圧である開放電圧及び充放電電流量の積算値の少なくとも一方に基づき、SOCを演算する。SOCの推定方法には、周知のOCV(Open Circuit Voltage)推定法、電流積算法などを採用することができる。詳細なSOCの推定は、高電圧バッテリ111の特性、使用環境、充放電の頻度など、システムの条件によるため一概では無い。メインコントローラ105は、バッテリコントローラ210により演算されたSOCを周期的に取得する。メインコントローラ105は、高電圧バッテリ111のSOCを監視し、高電圧バッテリ111のSOCに応じた制御を行う。例えば、メインコントローラ105は、高電圧バッテリ111のSOCが低い状態では消費電力を低減させるために、電動モータ64の回転速度を制限する。
【0101】
-制御装置による非稼働時充電制御-
図9を参照して、メインコントローラ205により実行される充電制御での処理の流れの一例について説明する。図9は、図6と同様の図であり、第2実施形態に係るメインコントローラ205により実行される充電制御の内容の一例を示すフローチャートである。なお、図9に示す充電制御の例では、高電圧バッテリ111のSOCは、OCV推定法により推定される。
【0102】
図9のフローチャートでは、図6のフローチャートのステップS105とステップS110の間にステップS206,S207の処理が追加され、ステップS110とステップS115の間にステップS212の処理が追加され、ステップS120とステップS125の間にステップS223の処理が追加されている。なお、図6のフローチャートと同様の処理には、同じ記号を付し、説明を省略する。
【0103】
図9に示すように、ステップS105の電圧取得処理が終了すると、処理がステップS206に進む。ステップS206において、メインコントローラ205は、電圧検出器215により検出された高電圧バッテリ111の開放電圧VHBを取得し、処理をステップS207に進める。
【0104】
ステップS207において、メインコントローラ205は、不揮発性メモリ152に記憶されているSOC-OCVテーブルを参照し、ステップS206で取得した高電圧バッテリ111の開放電圧VHBに基づいて、高電圧バッテリ111のSOCを計算する。SOC-OCVテーブルは、開放電圧とSOCの関係を規定するデータテーブルであり、実験等により予め定められている。SOCが計算されると、処理がステップS110に進む。
【0105】
ステップS110において、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0以下であると判定されると処理がステップS212に進む。ステップS212において、メインコントローラ205は、ステップS110の計算処理で得られたSOCがSOC閾値CL以上であるか否かを判定する。メインコントローラ205は、高電圧バッテリ111のSOCがSOC閾値CL未満である場合には、充電制御無効化条件が成立したと判定し、図9のフローチャートに示す処理を終了する。一方、メインコントローラ205は、高電圧バッテリ111のSOCがSOC閾値CL以上である場合には、充電制御無効化条件は成立していないと判定し、処理をステップS115に進める。
【0106】
このように、第2実施形態では、非稼働時充電条件が成立し、かつ、充電制御無効化条件が成立していない場合(S110でYes,S212でYes)には、非稼働時充電制御(S115~S130)が実行される。一方、非稼働時充電条件が成立した場合であっても、充電制御無効化条件が成立している場合(S110でYes,S212でNo)には、非稼働時充電制御が実行されない。なお、図示しないが、充電制御無効化条件が成立した場合、メインコントローラ205は、アラーム75及びインジケータ76の少なくとも一方によって、高電圧バッテリ111のSOCがSOC閾値CL未満であることを報知させることが好ましい。さらに、メインコントローラ205は、通信端末78によって、高電圧バッテリ111のSOCがSOC閾値CL未満であることを表す情報を管理施設のサーバーに送信してもよい。
【0107】
ステップS120でDC/DCコンバータ制御部131に対する起動指令の出力処理が終了すると、処理がステップS223に進む。ステップS223において、メインコントローラ205は、不揮発性メモリ152に記憶されている閾値計算用テーブルを参照し、ステップS207の計算処理で得られたSOCに基づいて、変数閾値Nsを計算する。変数閾値Nsは、非稼働時充電制御の終了時刻を規定する。
【0108】
図10は、不揮発性メモリ152に記憶されている閾値計算用テーブルを示す図である。図10に示すように、閾値計算用テーブルは、SOCに比例して充電時間が長くなるように、SOC[%]と変数閾値Nsの関係が規定されたデータテーブルである。図9のステップS223において、変数閾値Nsは、SOCが高くなるほど大きい値が設定され、SOCが低くなるほど小さい値が設定される。
【0109】
図10に示すように、例えば、SOCがCAの場合には、変数閾値NsはNSAに設定され、SOCがCBの場合には、変数閾値NsはNSBに設定される。また、SOCがCLよりも小さい場合には、変数閾値Nsは1に設定される。CA,CB,CLの大小関係は、CA>CB>CLである。NSA,NSB,1の大小関係は、NSA>NSB>1である。図9に示すように、変数閾値Nsの計算処理が終了すると、処理がステップS125に進む。
【0110】
ステップS130において、メインコントローラ205は、カウント変数NcがステップS223の計算処理により得られた変数閾値Nsであるか否かを判定する。カウント変数Ncが変数閾値Nsでない場合、メインコントローラ205は、非稼働時充電制御が開始されてからの計測時間(カウント変数Nc×制御周期)が所定時間(変数閾値Ns×制御周期)ΔTを経過していないと判定し、処理をステップS125に戻す。一方、カウント変数Ncが変数閾値Nsである場合、メインコントローラ205は、非稼働時充電制御が開始されてからの計測時間が所定時間ΔTを経過したと判定し、処理をステップS135へ進める。
【0111】
-低電圧バッテリの電圧の時間変化-
図11は、第2実施形態に係る低電圧バッテリ102の電圧VBの時間変化を示す図である。図11(a)は、高電圧バッテリ111のSOCがCAである場合の電圧VBの時間変化を示し、図11(b)は、高電圧バッテリ111のSOCがCBである場合の電圧VBの時間変化を示す。図11において、縦軸は低電圧バッテリ102の電圧VB[V]を表し、横軸は時間T[s]の経過を表している。
【0112】
図11に示すように、油圧ショベル1が稼働状態から非稼働状態に遷移すると、時間の経過に応じて低電圧バッテリ102の充電容量が低下する。低電圧バッテリ102の充電容量の低下に応じて、低電圧バッテリ102の電圧VBが低下する。
【0113】
本第2実施形態では、第1実施形態と同様、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0以下になると、非稼働時充電制御が実行され、低電圧バッテリ102の充電が開始される(時刻T0)。
【0114】
時刻T0において、高電圧バッテリ111のSOCがCAである場合、図11(a)に示すように、時刻T0から時刻T1Aまでの所定時間ΔTA(=充電終了時刻T1A-充電開始時刻T0)、DC/DCコンバータ103を介して高電圧バッテリ111から低電圧バッテリ102に電力が供給され、低電圧バッテリ102が充電される。
【0115】
時刻T0において、高電圧バッテリ111のSOCがCBである場合、図11(b)に示すように、時刻T0から時刻T1Bまでの所定時間ΔTB(=充電終了時刻T1B-充電開始時刻T0)、DC/DCコンバータ103を介して高電圧バッテリ111から低電圧バッテリ102に電力が供給され、低電圧バッテリ102が充電される。
【0116】
図11(a)に示す時刻T1Aは高電圧バッテリ111のSOCがCAのときに、T=T0で充電を開始した場合の充電終了時刻である。図11(b)に示す時刻T1Bは高電圧バッテリ111のSOCがCBのときに、T=T0で充電を開始した場合の充電終了時刻である。所定時間ΔTA,ΔTBの大小関係は、ΔTA>ΔTBである。つまり、充電開始時刻T0における高電圧バッテリ111のSOCが高いほど、充電時間が長くなる。
【0117】
-高電圧バッテリのSOCの時間変化-
図12は、高電圧バッテリ111のSOCの時間変化を示す図である。図12において、縦軸は高電圧バッテリ111のSOC[%]を表し、横軸は時間T[s]の経過を表している。なお、図12では、説明の便宜上、時間経過に伴うSOCの変化量(低下量)を誇張して示している。CA1は、充電開始時刻T0における高電圧バッテリ111のSOCがCAである場合の充電終了時刻T1AにおけるSOCである。CB1は、充電開始時刻T0における高電圧バッテリ111のSOCがCBである場合の充電終了時刻T1BにおけるSOCである。ΔCAは、充電開始時刻T0における高電圧バッテリ111のSOCがCAである場合の充電時間ΔTA経過後のSOCの低下量である(ΔCA=CA-CA1)。ΔCBは、充電開始時刻T0における高電圧バッテリ111のSOCがCBである場合の充電時間ΔTB経過後のSOCの低下量である(ΔCB=CB-CB1)。
【0118】
充電時間ΔTAは充電時間ΔTBよりも長いため、同じ電力で高電圧バッテリ装置201からDC/DCコンバータ103を介して低電圧バッテリ102を充電した場合、高電圧バッテリ111のSOCの低下量ΔCA,ΔCBの大小関係はΔCA>ΔCBとなる。
【0119】
なお、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0を下回ったとき(時刻T0)に高電圧バッテリ111のSOCがSOC閾値CL未満である場合には、非稼働時充電制御が実行されない。この場合、高電圧バッテリ111のSOCの時間経過に応じた低下量は、非稼働時充電制御が実行される場合に比べて小さくなる(一点鎖線参照)。
【0120】
以上のように、本第2実施形態では、低電圧バッテリ102の充電開始時に充電の電力源となる高電圧バッテリ111のSOCに余裕がある場合には比較的長く低電圧バッテリ102を充電し、高電圧バッテリ111のSOCに余裕が無い場合には、低電圧バッテリ102の充電時間を短くする。なお、高電圧バッテリ111のSOCがSOC閾値CL未満の場合には、低電圧バッテリ102の充電を行わない。
【0121】
第1実施形態では、高電圧バッテリ111のSOCに関係なく、非稼働時充電制御が実行される。このため、休車期間が非常に長くなった場合、非稼働時充電制御が繰り返し行われることに起因して高電圧バッテリ111の性能が低下する。最悪の場合、高電圧バッテリ111が過放電状態となり、高電圧バッテリ111のメンテナンス作業(復旧作業)が必要になるおそれがある。
【0122】
このメンテナンス作業には、例えば、高電圧バッテリ111の交換作業、あるいは、高電圧バッテリ111への給電作業がある。高電圧バッテリ111のメンテナンス作業では、作業者が高電圧回路92と接触する作業となるため、作業者は注意を払いながら作業をする必要がある。また、一般的に、高電圧バッテリ111は低電圧バッテリ102に比べて交換がしにくく、交換作業に多大な工数と費用がかかる。
【0123】
これに対して、本第2実施形態に係るメインコントローラ205は、高電圧バッテリ111のSOCを監視し、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0を下回ったときの高電圧バッテリ111のSOCが低いほど、非稼働時充電制御における低電圧バッテリ102の充電時間(所定時間ΔT)を短くする。したがって、本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、高電圧バッテリ111のSOCが低くなるほど、非稼働時充電制御における高電圧バッテリ111のSOCの低下量を抑えることができる。
【0124】
また、メインコントローラ205は、高電圧バッテリ111のSOCが予め定められたSOC閾値CL未満の場合には、油圧ショベル1が非稼働状態であるときに、低電圧バッテリ102の電圧VBが電圧閾値VB0を下回ったとしても、非稼働時充電制御を実行しない。このように、本第2実施形態では、高電圧バッテリ111のSOCに応じて非稼働時充電制御の実行可否を決定するとともに、非稼働時充電制御を実行する場合に高電圧バッテリ111のSOCに応じた充電時間の制御を行う。これにより、高電圧バッテリ111を優先的に保護し、高電圧バッテリ111の劣化を抑制することができる。その結果、高電圧バッテリ111のメンテナンス作業の頻度を低減できる。
【0125】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0126】
<変形例1>
第2実施形態に係る制御装置100は、高電圧バッテリ111のSOCが低いほど充電時間ΔTを短くする充電時間制御、及び、高電圧バッテリ111のSOCがSOC閾値CL未満の場合には充電を行わない充電無効制御を実行する例について説明した。しかしながら、第2実施形態において、制御装置100は、上記充電時間制御及び上記充電無効制御の少なくとも一方を実行しないようにしてもよい。
【0127】
<変形例2>
上記実施形態では、油圧ショベル1の稼働及び停止(非稼働)の指示を行う操作装置が、キースイッチ72である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。キースイッチ72に代えて、プッシュ式の操作スイッチとしてもよい。
【0128】
<変形例3>
上記実施形態では、電圧検出器79が低電圧回路91に並列してメインコントローラ105に接続され、メインコントローラ105が電圧検出器79を用いて低電圧バッテリ102の電圧を検出する例について説明した。しかしながら、低電圧バッテリ102の電圧の検出方法はこれに限定されない。例えば、DC/DCコンバータ103のDC/DCコンバータ制御部131が低電圧バッテリ102の電圧を検出してもよい。この場合、DC/DCコンバータ制御部131は、検出した低電圧バッテリ102の電圧の情報をメインコントローラ105に出力する。
【0129】
<変形例4>
電動システムESの構成は、上記実施形態で説明した構成に限定されない。例えば、入出力切替リレー112,113は、配電ユニット93に設けられていてもよい。
【0130】
<変形例5>
バッテリコントローラ110,210の機能の一部または全部をメインコントローラ105,205が備えていてもよい。また、DC/DCコンバータ制御部131の機能の一部または全部をメインコントローラ105,205が備えていてもよい。例えば、メインコントローラ105,205は、バッテリコントローラ110,210を介すことなく入出力切替リレー112,113を制御してもよい。
【0131】
<変形例6>
上記実施形態では、メインコントローラ105,205は、キースイッチ72の回転操作位置がオフ位置である場合には油圧ショベル1が非稼働状態であると判定し、キースイッチ72がオン位置である場合には油圧ショベル1が稼働状態であると判定した。しかしながら、非稼働状態であるか稼働状態であるかの判定方法はこれに限定されない。例えば、メインコントローラ105,205は、所定の機器に流れる電流の電流値に基づいて、油圧ショベル1が非稼働状態である稼働状態であるかを判定してもよい。
【0132】
<変形例7>
メインコントローラ105,205は、非稼働時充電制御が実行されている間、インジケータ76を点灯させ、非稼働時充電制御が実行されていることをインジケータ76により報知させてもよい。また、メインコントローラ105,205は、非稼働時充電制御の終了時に、通信端末78を介して、非稼働時充電制御を実行したことを表す情報を油圧ショベル1の識別情報及び非稼働時充電制御を実行した日時とともに管理施設のサーバーに送信してもよい。
【0133】
<変形例8>
上記実施形態において、低電圧バッテリ102が鉛バッテリであり、高電圧バッテリ111がリチウムイオンバッテリである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。低電圧バッテリ102及び高電圧バッテリ111は、ニッケル水素バッテリであってもよい。また、低電圧バッテリ102はリチウムイオンバッテリであってもよいし、高電圧バッテリ111は鉛バッテリであってもよい。
【0134】
<変形例9>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベル1である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ、道路機械、フォークリフトなど、作業装置を備える種々の作業機械に適用することができる。また、本発明は、エンジンにより発電機を駆動し、発電機により発生する電力あるいは高電圧バッテリ111の電力によって電動モータを駆動させるハイブリッド式の作業機械であって、低電圧バッテリ102と高電圧バッテリ111とがDC/DCコンバータ103を介して接続された電動システムを備えた作業機械に適用することができる。
【0135】
<変形例10>
上記実施形態では、外部電源61から電動システムESに供給される電力が三相交流電力である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。外部電源61から電動システムESに供給される電力は、単相交流電力であってもよい。この場合、ブレーカー17は、外部電源61に合わせて単相用のブレーカーが採用される。なお、ブレーカー17は省略してもよい。
【0136】
<変形例11>
上記実施形態で説明した制御装置100の機能は、それらの一部または全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現してもよい。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上述した実施形態及び変形例は本発明を理解し易く説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施形態、変形例の構成の一部を他の実施形態、変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態、変形例の構成に他の実施形態、変形例の構成を加えることも可能である。なお、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…ブーム、3…アーム、4…バケット、5~7…油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)、8…下部走行体、8e…油圧モータ(油圧アクチュエータ)、15…上部旋回体、19…作業装置、61…外部電源、62…整流器、63…インバータ、64…電動モータ、65…油圧ポンプ、71…モニタ、72…キースイッチ、75…アラーム(報知装置)、76…インジケータ(報知装置)、77…充電スイッチ、78…通信端末、79…電圧検出器、91…低電圧回路、92…高電圧回路、93…配電ユニット、100…制御装置、101,201…高電圧バッテリ装置、102…低電圧バッテリ、103…DC/DCコンバータ、105,205…メインコントローラ、110,210…バッテリコントローラ、111…高電圧バッテリ(バッテリモジュール)、111a…電池セル(二次電池)、112,113…入出力切替リレー、131…DC/DCコンバータ制御部、132…DC/DCコンバータ回路部、151…処理装置、152…不揮発性メモリ(記憶装置)、153…揮発性メモリ(記憶装置)、154…入力インタフェース、155…出力インタフェース、215…電圧検出器、216…電流検出器、CL…SOC閾値、ES…電動システム、Nc…カウント変数、Ns…変数閾値、T0…充電開始時刻、T1,T1A,T1B…充電終了時刻、VB…低電圧バッテリの電圧、VB0…電圧閾値、VBL…起動不可電圧、VHB…開放電圧、ΔT,ΔTA,ΔTB…充電時間(所定時間)
図1
図2
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図12