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特開2023-150459トリアリールメタン色素、該色素を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150459
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】トリアリールメタン色素、該色素を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/26 20060101AFI20231005BHJP
   C09B 67/44 20060101ALI20231005BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09B11/26 D CSP
C09B67/44 A
G02B5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059571
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山縣 直哉
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148BE15
2H148BG01
2H148BG11
2H148BH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来のトリアリールメタン色素に比べてより長波長側に極大吸収波長を有する色素を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるトリアリールメタン色素。

[式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に、H、アルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基を表し、RとR、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。R、Rはそれぞれ独立に、H、―NO、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、複素環基、アミノ基、スルホニル基などを表す。R、Rはそれぞれ独立に、H、―CN、―NO、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、複素環基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基などを表す。Arは複素環基を表す。Anはアニオンを表し、aは1~3の整数を表し、bは0~6の整数を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるトリアリールメタン色素。
【化1】
[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基を表し、
とR、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、―NO、ハロゲン原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアリールオキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基、
―SO 、―SOH、―SOM、または、置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基もしくはスルホンアミド基を表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、―CN、―NO、ハロゲン原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアリールオキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基、
―COO、―COOH、―COOM、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカルボニル基、エステル基もしくはアミド基、
―SO 、―SOH、―SOM、または、置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基もしくはスルホンアミド基を表す。
Mは無機カチオンまたは有機カチオンを表す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基を表す。
Anはアニオンを表し、aは1~3の整数を表し、bは0~6の整数を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、RおよびRが、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のフェニル基である、請求項1に記載のトリアリールメタン色素。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R~Rが、置換基を有していてもよい炭素原子数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である、請求項1または請求項2に記載のトリアリールメタン色素。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Arが置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の
ピロリル基、インドリル基、チエニル基、チアゾリル基、フラニル基またはオキサゾリル基である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のトリアリールメタン色素。
【請求項5】
前記一般式(1)において、Anがハロゲン化物イオン、(CFSO、スルホニルイミドアニオン、またはスルホン酸アニオンである、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のトリアリールメタン色素。
【請求項6】
前記トリアリールメタン色素のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶液を用いて、23~27℃で測定する紫外可視吸収スペクトル(350~800nmの波長範囲)における吸収帯の、極大吸収波長が638nm以上680nm以下の波長範囲にある、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のトリアリールメタン色素を含有する着色組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のトリアリールメタン色素、または、
請求項6に記載の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルター用着色剤を用いるカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアリールメタン色素、該色素を含有する着色組成物、該色素または該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いるカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶や電界発光(EL)表示装置およびCCDやCMOSの撮像素子に、カラーフィルターが用いられる。カラーフィルターは、ガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより、色素薄膜や色素-樹脂複合体膜などの着色層を積層することによって製造される。下記式(B-1)、(B-2)などで表されるトリアリールメタン色素(または染料)はその分光特性からカラーフィルターなどの着色剤として利用されている化合物である(特許文献1、2など)。例えば、C.I.ベーシックブルー7(式(B-1))などのトリアリールメタン色素(C.I.はカラーインデックスの略称)を使用することにより、優れた青色色調が得られる(特許文献1)。
【0003】
【化1】
【0004】
一方、従来のトリアリールメタン色素は、590~600nm付近に極大吸収波長を有しており、640nmより長波長側の可視光の吸収が不十分だった。640nmより長波長側の可視光は赤色を示すため、青色カラーフィルターや緑色カラーフィルターとしては吸収する必要がある。したがって、当該波長領域の可視光を効率的に吸収する色素、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶液における極大吸収波長が638nm以上680nm以下の波長範囲にある色素が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-304766号公報
【特許文献2】特開2011-068866号公報
【特許文献3】特開2017-149805号公報
【特許文献4】特開2015-028121号公報
【特許文献5】特開2018-154661号公報
【特許文献6】特開2003-003081号公報
【特許文献7】特開2017-083852号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Tetrahedron」、2002年、(オランダ)、第58巻、p.2137-2146
【非特許文献2】「Organic Syntheses」、1997年、(米国)、第74巻、p.257
【非特許文献3】「Organic Syntheses」、1984年、(米国)、第62巻、p.158
【0007】
トリアリールメタン色素の一部を芳香族複素環とすることで、染料の堅牢性等を向上する試みが行われている。例えば特許文献3では、チオフェン環を2つ有するトリアリールメタン色素が開示されている。しかしながら、分光特性についてはシアン色における光学濃度(OD値)が高い旨の記載はあるが、従来のトリアリールメタン色素との違いは明示されていない。
【0008】
また、特許文献4~6ではチアゾール環を1つまたは2つ有するトリアリールメタン色素が開示されており、特に特許文献6では長波長の発色色素が得られる旨の記載がある。しかしながら本発明者の検討によれば、チアゾール環を1つ有するトリアリールメタン色素は、従来のトリアリールメタン色素と比べて極大吸収波長の長波長化は見られるものの不十分だった。また、チアゾール環を2つ有するトリアリールメタン色素は、従来のトリアリールメタン染料と比べてより短波長側に極大吸収波長を有することがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のトリアリールメタン色素に比べてより長波長側に極大吸収波長を有する色素を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有するトリアリールメタン色素が、従来のトリアリールメタン色素に比べて長波長側に極大吸収波長を有することを見出した。すなわち本発明は、以下を要旨とする。
【0011】
1.下記一般式(1)で表されるトリアリールメタン色素。
【0012】
【化2】
【0013】
[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基を表し、
とR、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、―NO、ハロゲン原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアリールオキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基、
―SO 、―SOH、―SOM、または、置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基もしくはスルホンアミド基を表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、―CN、―NO、ハロゲン原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアリールオキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基、
―COO、―COOH、―COOM、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカルボニル基、エステル基もしくはアミド基、
―SO 、―SOH、―SOM、または、置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基もしくはスルホンアミド基を表す。
Mは無機カチオンまたは有機カチオンを表す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基を表す。
Anはアニオンを表し、aは1~3の整数を表し、bは0~6の整数を表す。]
【0014】
2.前記一般式(1)において、RおよびRが、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のフェニル基であるトリアリールメタン色素。
【0015】
3.前記一般式(1)において、R~Rが、置換基を有していてもよい炭素原子数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基であるトリアリールメタン色素。
【0016】
4.前記一般式(1)において、Arが置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のピロリル基、インドリル基、チエニル基、チアゾリル基、フラニル基またはオキサゾリル基であるトリアリールメタン色素。
【0017】
5.前記一般式(1)において、Anがハロゲン化物イオン、(CFSO、スルホニルイミドアニオン、またはスルホン酸アニオンであるトリアリールメタン色素。
【0018】
6.前記トリアリールメタン色素のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶液を用いて、23~27℃で測定する紫外可視吸収スペクトル(350~800nmの波長範囲)における吸収帯の、極大吸収波長が638nm以上680nm以下の波長範囲にあるトリアリールメタン色素を含有する着色組成物。
【0019】
7.前記トリアリールメタン色素または前記着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【0020】
8.前記カラーフィルター用着色剤を用いるカラーフィルター。
【発明の効果】
【0021】
本発明のトリアリールメタン色素は、638nm以上の長波長側に極大吸収波長を有しており、該色素を含有する着色組成物はカラーフィルター用着色剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について以下に詳細に説明する。なお本発明は、以下の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
本発明のトリアリールメタン色素は、下記一般式(1)で表される。
【0024】
【化3】
【0025】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
【0026】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」における「芳香族炭化水素基」は、アリール基および縮合多環芳香族基を含み、「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基があげられる。
【0027】
一般式(1)において、R~R、および、Arで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基」における「複素環基」は、縮合多環芳香族複素環基を含み、「炭素原子数1~30の複素環基」としては、具体的に、
ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、カルボリニル基、プリニル基、インドリジニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、フェナントリジニル基、ペリミジニル基、アンチリジニル基、
ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ジヒドロピロロピロリル基、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、カルバゾリル基、アザインドリル基、アザインダゾリル基、ピラゾロピリミジニル基、プリニル基、アデニル基、グアニジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、
フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、イソベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、
オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フロピロリル基、チエノピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、フェノキサチイニル基、
ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェニル基、ビピリジニル基などの芳香族複素環基があげられる。
【0028】
一般式(1)において、R~R、Arのいずれかで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基」における「置換基」としては、具体的に、
重水素原子、―OH、―CN、―CF、―NO、=O;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
炭素原子数3~20のシクロアルキル基;
炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基;
炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基または1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基;
炭素原子数1~20のアシル基;
炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
炭素原子数2~20の複素環基;
炭素原子数6~20のアリールオキシ基;
無置換アミノ基;炭素原子数1~20の一置換もしくは二置換アミノ基
―COO、―COOH、―COOM、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のカルボニル基、エステル基もしくはアミド基、
―SO 、―SOH、―SOM、または、置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のスルホニル基もしくはスルホンアミド基を表す(ただし、Mは無機カチオンもしくは有機カチオンを表す。);
などがあげられる。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。したがってこれら「置換基」は、例えば、「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状の無置換もしくは置換アルキル基」、「炭素原子数3~20の無置換もしくは置換シクロアルキル基」、「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状の無置換もしくは置換アルケニル基」、「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基」、「炭素原子数3~20の無置換もしくは置換シクロアルコキシ基」、「炭素原子数6~20の無置換もしくは置換アリールオキシ基」、「炭素原子数0~20の無置換もしくは置換アミノ基」、「炭素原子数1~20の無置換もしくは置換アミド基」、「炭素原子数0~20の無置換もしくは置換アンモニウム基」、「炭素原子数6~20の無置換もしくは置換フェニル基」、「炭素原子数6~20の無置換もしくは置換フェノキシ基」、「ハロゲン原子で置換された炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換された炭素原子数6~20のフェニル基」、などのように表されてもよい。なお、「置換基」が炭素原子を含む場合、その炭素原子は、上記の「炭素原子数1~30」および「炭素原子数6~30」に算入される。また、これらの置換基同士が単結合、二重結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0029】
一般式(1)において、「M」で表される「無機カチオン」または「有機カチオン」が存在する場合、「有機カチオン」としては、具体的に、R101112の式で表されるアンモニウムイオンがあげられ、R~R12は、それぞれ独立に、―H、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。なお、上記式中、R~R12における「置換基」、「炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」および「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」の詳細は、前記一般式(1)におけるR~Rと同様のものが適用される。また、「無機カチオン」としては、リチウムイオン、ナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、または、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンがあげられる。Mとしては、アルカリ金属イオンが好ましい。
【0030】
なお、一般式(1)においてR~Rで表される「置換基」を有する上記の各種の「基」において、「置換基」としてあげられている、
「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、
「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基」、
「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」、
「炭素原子数1~20のアシル基」、
「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基」、
「炭素原子数2~20の複素環基」、
「炭素原子数6~20のアリールオキシ基」、または
「炭素原子数1~20の一置換もしくは二置換アミノ基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基などのアルケニル基、またはこれらが複数結合した直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基などのアルキニル基、またはこれらが複数結合した直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキニル基;ペンタ-3-エン-1-イニル基、ヘキサ-2-エン-4-イニル基などのアルケニル基とアルキニル基の混合基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基などの炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などのアシル基;
フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基(アントリル基)、テトラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、プリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ナフチリジニル基、カルボリニル基などの複素環基;
フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などのアリールオキシ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(2-エチルヘキシル)基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、芳香族炭化水素基を有する一置換もしくは二置換アミノ基、などがあげられる。
【0031】
一般式(1)における、R~Rとしては、極大吸収波長がより長波長化する点からは、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の複素環基」が好ましく、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基」がより好ましい。極大吸収波長より短波長側の吸収抑制の点からは、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」が好ましく、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」がより好ましい。
また、RとR、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0032】
一般式(1)における、R~Rとしては、耐熱性の点からは、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」が好ましく、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」がより好ましい。また、RとR、RとRは互いに結合して環を形成していてもよいが、耐熱性の点からは、RとR、RとRは、それぞれ環を形成しないことがより好ましい。
【0033】
一般式(1)において、R~Rで表される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などがあげられる。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0034】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基 があげられる。
【0035】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアリールオキシ基」における「炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などのアリールオキシ基があげられる。
【0036】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基を有する場合は「―NR1314」と表される「置換基R13およびR14を有するアミノ基」を含み、無置換アミノ基(―NH)、一置換アミノ基、二置換アミノ基などがあげられる。一置換アミノ基または二置換アミノ基における炭素原子数は、例えば、1~30であり、1~20であってよく、2~10であってよい。「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」は、―NH―、―N<または―N=CH―を介して、前記「炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」、「炭素原子数1~20のアシル基」、「炭素原子数1~30の複素環基」が結合した基であってもよい。一置換アミノ基としては、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などがあげられる。二置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジへキシルアミノ基などの炭素原子数2~30のジアルキルアミノ基;ジアリルアミノ基などの炭素原子数4~30のジアルケニルアミノ基;ジフェニルアミノ基、N-アセチル-N-フェニルアミノ基、(n-ブチル)-N-フェニルアミノ基などがあげられる。
【0037】
一般式(1)において、R~Rに含まれる「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20もしくは30のカルボニル基、エステル基もしくはアミド基」は、「―(C=O)―R15」、「―(C=O)―O―R15」または「―(C=O)―NR1314」で表される基を意味する。R15および「―NR1314」は、R~Rにおける「置換基」、および、R~Rで表される「―NR1314」と同様のものが適用される。
【0038】
一般式(1)において、R~Rに含まれる「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20もしくは30のスルホニル基もしくはスルホンアミド基」は、「―SO―R15」(もしくは「―S(=O)―R15」)または「―S(=O)―NR1314」で表される基を意味する。R15および「―NR1314」は、R~Rにおける「置換基」、および、R~Rで表される「―NR1314」と同様のものが適用される。
【0039】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアリールオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」における「置換基」としては、R~Rで表される各基における「置換基」と同様のものが適用される。
【0040】
一般式(1)において、RおよびRとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のフェニル基であることがより好ましい。
【0041】
一般式(1)において、Arとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のピロリル基、インドリル基、チエニル基、チアゾリル基、フラニル基またはオキサゾリル基が好ましく、極大吸収波長より短波長側の吸収抑制の点からはチアゾリル基がより好ましく、耐熱性の点からはインドリル基またはチアゾリル基がより好ましい。
【0042】
一般式(1)において、「a」は、一般式(1)中、トリアリールメタン色素の部分(下記一般式(2))の数を表す。「An」はアニオンを表し、「b」はAnの数を表す。一般式(1)において、トリアリールメタン色素の部分が、分子全体で電荷の総和が1価以上のカチオンである場合、つまりbが1~3の整数の場合、対イオンとして、1または2以上の「An」で表される任意のアニオンと塩または錯体を形成することができる。ただし、一般式(1)で表される化合物において、aおよびbは、全体として電気的に中性となるように選択される。aは1~3の整数を表し、1または2が好ましい。bは0~6の整数を表し、1~4の整数が好ましい。
【0043】
【化4】
【0044】
一般式(1)において、「An」は特に限定されず、例えば、ハロゲン化物イオンなどの無機アニオン、または有機アニオンがあげられる。具体的には、
Cl、Br、I;(CFSO(またはTf)、
(CFSO(またはTf)、
(CSO、(CSO、(CSO
(CN)、(CN)、NC―S-、(C
(CSO )O(C(C1225)(SO ))、
(C1225)(SO )、PF 、BF 、(PW1240
または、下記式(Z-1)~(Z-16)の構造式で示すアニオンなどがあげられる。
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
一般式(1)において、Anは単一でも異なる2以上の組み合わせでもよく、前記例示したアニオンから選ばれる単一または2もしくは3の任意の組み合わせであることが好ましく、ハロゲン化物イオン、(CFSO、スルホニルイミドアニオン、またはスルホン酸アニオン のいずれかから選ばれる単一または2もしくは3の任意の組み合わせであることがより好ましい。
【0050】
一般式(1)で表されるトリアリールメタン色素の製造方法は、特に制限されるものではなく公知の方法(例えば、特許文献5、非特許文献1、2など)を応用し、一般式(1)の各種の相当する基を有する試薬やその他の適当な試薬を用いて製造することができる。以下、本発明化合物の製造方法の一態様を記載する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
一般式(1)で表されるトリアリールメタン色素は、ビス(5-モルフォリノ-4-フェニルチオフェン-2-イル)メタノンなどの、相当する置換基を有するケトンと、1-メチル-2-フェニルインドールなどの、相当する置換基を有するアリールアミンとを、トルエンなどの溶液中、適切な加熱条件で縮合反応させることで、一般式(1)で表される化合物を含有する生成物が得られる。または、前記相当する置換基を有するケトンと、3-ブロモ-1-メチル-2-フェニルインドールなどの、相当する置換基を有するアリールハライドとを、テトラヒドロフラン(THF)などの適当な溶媒中、n-ブチルリチウムを用い、適切な冷却条件で、縮合反応させることで、一般式(1)で表される化合物を含有する生成物が得られる。
【0052】
一般式(1)で表される本発明のトリアリールメタン色素として好ましい化合物の具体例を下記式(D-1)~(D-28)に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されない。なお、前記一般式(1)中、トリアリールメタン色素の部分を示しており、Anで表されるアニオン部は省略している。下記構造式では、水素原子を一部省略しており、生じ得るすべての立体異性体、互変異性体を包含しており、平面構造式を記載している。
【0053】
【化9】
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
【化12】
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
本発明のトリアリールメタン色素は、1種または分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用(例えば混合)してもよい。当該2種以上を使用する際は、トリアリールメタン色素全体に占める質量濃度比において、最も少ない方の1種のトリアリールメタン色素の質量濃度比は0.1~50質量%である。トリアリールメタン色素の種類は1種または2種であるのが好ましい。
【0064】
本発明のトリアリールメタン色素の合成途中において、生成物を精製する方法としては、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶や晶析法などの公知の方法があげられる。また必要に応じて、これらの化合物の同定、分析には、核磁気共鳴分析(NMR)、分光光度計による吸光度測定や紫外可視吸収スペクトル(UV-Vis)測定、熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)などを行うことができる。これらの方法は、得られた化合物の溶解性、耐熱性評価、色彩評価などにも用いることができる。
【0065】
本発明のトリアリールメタン色素、該色素を含有する着色組成物、該色素または該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤は、着色剤およびカラーフィルターの製造工程において、樹脂などを含有する有機溶媒に良好に溶解または分散させる必要があるため、有機溶媒に対する溶解度や分散性が高いことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、酢酸エチル、酢酸-n-ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)などのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエーテルエステル類;アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類;ジアセトンアルコール(DAA)など;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO);クロロホルム(トリクロロメタン)、などがあげられ、PGME、PGMEA、シクロヘキサノン、またはDAAが好ましく、樹脂の溶解性とキサンテン色素の溶解性の両立の観点からはPGMEまたはシクロヘキサノンが特に好ましい。これらの溶剤は、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
【0066】
本発明のトリアリールメタン色素の有機溶媒への溶解度は、例えば次のように測定することができる。トリアリールメタン色素と有機溶媒を適当な比率で混合し、超音波処理した後、室温(25℃)下、不溶分の有無を目視で確認することにより、溶解度を評価することができる。溶解度の測定に用いる有機溶媒としては、特に限定されず、前記有機溶媒を用いることができるが、PGME、PGMEA、シクロヘキサノンまたはDAAが好ましく、PGMEまたはPGMEAがより好ましい。
【0067】
本発明のトリアリールメタン色素は、有機溶媒への溶解性、特にPGMEへの溶解性に優れ、PGMEに対する溶解度は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。高コントラスト比のカラーフィルターへの応用を考えた場合、溶解度は高い程好ましい。
【0068】
本発明のトリアリールメタン色素は、有機溶媒に溶解して調製した溶液を用いて、室温付近(例えば23~27℃)で測定する紫外可視吸収スペクトルの可視光領域(例えば、350~800nmの波長範囲)において最大の吸光度を示す、極大吸収波長が観測される。本発明においては、PGME溶液における極大吸収波長が、好ましくは638nm以上、より好ましくは645nm以上、更に好ましくは650nm以上であり、好ましくは680nm以下、より好ましくは675nm以下、更に好ましくは670nm以下である。例えば、638~680nmの波長範囲にあることが好ましく、645~670nmの範囲にあることがより好ましい。なお、色素濃度は、0.005~0.02mmol/Lが好ましく、極大吸収波長における吸光度が1以上2以下であることが好ましい。
【0069】
本発明のトリアリールメタン色素を各種樹脂溶液と混合し、ガラス基板上に塗布することにより塗膜を作製できる。得られた塗膜について、分光測色計を用いて測色し、塗膜の色彩値を得ることで色彩評価を行うことができる。色彩値はCIE L表色系などが一般的に用いられる。具体的には、膜試料の色彩値L、a、bを測定し、適当な温度での加熱前後の色彩値の色差(ΔE ab)より、耐熱性を判断することができる。カラーフィルターに応用する場合、230℃前後の温度での色差を耐熱性の指標として用いることができる。ΔE abは、その値が小さいほど、熱分解による色の変色が少ないことを意味し、10以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0070】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、一般式(1)で表されるトリアリールメタン色素、または該トリアリールメタン色素を少なくとも1種含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマーを含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。よって、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、少なくとも1種の一般式(1)で表されるトリアリールメタン色素、その他の染料や顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0071】
本発明のトリアリールメタン色素または該トリアリールメタン色素を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、各色用カラーフィルターに用いてもよいが、青色または緑色カラーフィルター用着色剤として用いるのが好ましい。
【0072】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、1種または2種以上のトリアリールメタン色素を単独で使用してもよく、色調の調整のために、他の染料または顔料などの公知の色素を混合してもよい。
青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129、C.I.ベーシックバイオレット10などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74、C.I.アシッドレッド52、289などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、本発明に属さないトリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、キサンテン系色素;その他の青色系レーキ顔料、などの青色系または赤色系の染料または顔料があげられる。
緑色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、47、58、59,62、63などの緑色顔料;C.I.ピグメントイエロー83、138、139、150、180、185などの黄色顔料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、本発明に属さないトリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、キサンテン系、イソインドリン系、キノフタロン系色素;その他のレーキ顔料、などの青色系、黄色系または緑色系の染料または顔料があげられる。
【0073】
本発明において、色調の調製のために混合する色素としては、青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、C.I.ベーシックブルー7などの本発明に属さないトリアリールメタン系色素、または、C.I.ベーシックバイオレット10、C.I.アシッドレッド52、289などのキサンテン系色素が好ましい。緑色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、C.I.ピグメントイエロー138などのキノフタロン系色素、C.I.ピグメントイエロー139などのイソインドリン系色素、またはアゾ色素が好ましい。これらの色素と本発明に属するトリアリールメタン色素を用いることにより、明度やコントラスト比に優れた青色または緑色カラーフィルターを得ることができる。
【0074】
本発明のカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、トリアリールメタン色素(2種以上の場合にはそれらの合計)に対して5~2000質量%であるのが好ましく、10~1000質量%がより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70質量%が好ましく、1~50質量%がより好ましい。
【0075】
本発明のカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のもの(例えば特許文献7、段落[0229]合成例23に記載の「バインダー樹脂(B1)」)を使用することができる。例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0076】
本発明の着色組成物は、カラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、化合物の他の成分として、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0077】
本発明のカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【実施例0078】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。合成実施例で記載した試薬は、東京化成工業株式会社製、メルク株式会社(シグマアルドリッチ社)製、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Alfa Aesar社)製、Duksan社製、Daejung社製等のものを使用した。また、合成実施例における反応はすべて、冷却管、撹拌装置、温度計を備えた反応用容器を用いて窒素気流下で行った。なお、合成実施例で得られた化合物の同定は、H-NMR分析(ブルカー社製核磁気共鳴装置、型式:Magnet System 300MHz/54mm UltraShield)により行い、測定結果および同定した構造を下記合成実施例中に示す。
【0079】
[合成実施例1]化合物(L-1)の合成
100mL容4つ口フラスコに、公知の方法(非特許文献1、2)により調製したビス(5-モルフォリノ-4-フェニルチオフェン-2-イル)メタノン(下記(中間体101))2.0g(3.9mmol)、1-メチル-2-フェニルインドール0.9g(4.3mmol)、オキシ塩化リン1.8g(12mmol)、トルエン40mLを入れ、加熱還流下(98℃)、3時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、反応混合物に水100mLを加え、ジクロロメタン100mLで2回抽出した。有機層を水100mL、飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/メタノール=100/1~10/1(体積比))で精製し、溶媒を減圧留去した。残渣を室温で12時間減圧乾燥し、中間体色素(下記(中間体D-1))(2.9g,収率100%)を黒色固体として得た。
【0080】
【化19】
【0081】
【化20】
【0082】
続いて、100mL容四つ口フラスコに、前記(中間体D-1)2.9g(3.9mmol)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCFまたはLiNTf)1.5g(5.3mmol)、メタノール20mLを入れ、室温で1時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧留去した後、残渣を水100mLで2回洗浄した。残渣を60℃で6時間減圧乾燥し、目的の化合物(L-1)(3.5g,収率97%)を紫色固体として得た。
【0083】
得られた暗赤色固体のNMR測定を行い、以下の40個の水素のシグナルを検出し、下記式(L-1)で表される化合物の構造と同定した。
【0084】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=7.54-7.18(21H)、3.82(3H)、3.80-3.66(8H)、3.50-3.28(8H)。
【0085】
【化21】
【0086】
[合成実施例2]化合物(L-2)の合成
合成実施例1において、1-メチル-2-フェニルインドール0.9g(4.3mmol)に代えて、公知の方法(特許文献4、段落[0222])により調製したチアゾール誘導体(下記(中間体104))1.3g(4.3mmol)を使用した以外は、同様の方法により、中間体色素(下記(中間体D-2))(2.5g,収率77%)を黒色固体として得た。
【0087】
【化22】
【0088】
【化23】
【0089】
続いて、合成実施例1において、(中間体D-1)に代えて前記(中間体D-2)2.0g(2.4mmol)を使用し、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.9g(3mmol)を使用した以外は、同様の方法により、目的の化合物(L-2)(2.1g,収率83%)を暗紫色固体として得た。
【0090】
得られた暗赤色固体のNMR測定を行い、以下の44個の水素のシグナルを検出し、下記式(L-2)で表される化合物の構造と同定した。
【0091】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=7.63-7.56(2H)、7.46-7.33(12H)、7.33-7.22(4H)、7.16(1H)、6.95(1H)、4.25(1H)、3.87(1H)、3.78-3.68(8H)、3.42-3.29(8H)、2.34(3H)、1.28(3H)。
【0092】
【化24】
【0093】
[合成実施例3]化合物(L-3)の合成
100mL容4つ口フラスコに、公知の方法(非特許文献1~3)で調製したケトン(下記中間体107)2.0g、1-メチル-2-フェニルインドール0.9g(4.3mmol)、オキシ塩化リン1.9g(12mmol)を入れ、トルエン40mLを加え、以降は合成実施例1と同様の方法により、中間体色素(下記(中間体D-3))(1.8g,収率62%)を青黒色固体として得た。
【0094】
【化25】
【0095】
【化26】
【0096】
続いて、合成実施例1において、(中間体D-1)に代えて前記(中間体D-3)1.8g(2.6mmol)を使用し、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.9g(3mmol)を使用した以外は、同様の方法により、目的の化合物(L-3)(2.1g,収率86%)を黒色固体として得た。
【0097】
得られた暗赤色固体のNMR測定を行い、以下の44個の水素のシグナルを検出し、下記式(L-3)で表される化合物の構造と同定した。
【0098】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=7.97-7.88(1H)、7.71-7.63(1H)、7.55-7.18(13H)、7.12-6.72(3H)、3.56-3.36(10H)、1.44(3H)、1.26-1.13(12H)。
【0099】
【化27】
【0100】
[合成実施例4]化合物(L-4)の合成
100mL容4つ口フラスコに、3-ブロモ-1-メチル-2-フェニル-1H-インドール3.0g(10mmol)、乾燥テトラヒドロフラン(THF)30mLを入れ、ドライアイス/メタノール冷媒中、-50℃まで冷却した後、n-ブチルリチウム(n-BuLi)(1.6M n-ヘキサン溶液)6.4mL(10mmol)を加え、-50℃で20分間撹拌した。反応液に公知の方法(非特許文献1~3)で調製したケトン(下記(中間体112))2.0g(3.4mmol)を加え、冷媒にドライアイスを加えずに徐々に10℃まで昇温しながら3時間撹拌した。反応液を-10℃まで冷却し、水10mLを加えて反応を停止した後、濃塩酸10mLを加え、室温で30分間撹拌した。混合物を水100mLで希釈した後、ジクロロメタン100mLで2度抽出した。有機層を水100mL、飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/メタノール=100/1~10/1(体積比))で精製した後、室温で12時間減圧乾燥し、中間体色素(下記(中間体D-4))(2.8g,収率100%)を黒色固体として得た。
【0101】
【化28】
【0102】
【化29】
【0103】
続いて、合成実施例1において、(中間体D-1)に代えて前記(中間体D-4)2.9g(3.6mmol)を使用し、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1.3g(4.5mmol)を使用した以外は、同様の方法により、目的の化合物(L-4)(3.4g,収率92%)を暗紫色固体として得た。
【0104】
得られた暗赤色固体のNMR測定を行い、以下の44個の水素のシグナルを検出し、下記式(L-4)で表される化合物の構造と同定した。
【0105】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=7.56-7.37(8H)、7.36-7.25(3H)、7.16-7.03(10H)、7.03-6.98(2H)、6.98-6.89(8H)、3.95-3.86(4H)、3.83(3H)、1.28-1.21(6H)。
【0106】
【化30】
【0107】
[合成実施例5~8]化合物(L-5)~(L-7)の合成
合成実施例4において、(中間体112)に代えて、公知の方法(非特許文献1~3)で調製した対応する置換基を有するケトン2.0gを使用し、対応する複素環基を有するアリールハライドおよびn-ブチルリチウム(1.6M n-ヘキサン溶液)をそれぞれケトンの3倍モル使用した以外は、同様の方法により、対応する中間体色素を得た。
続いて、合成実施例1において、(中間体D-1)に代えて対応する中間体色素を使用し、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを中間体色素の1.2倍モル使用した以外は、同様の方法により、化合物(L-5)~(L-7)を得た。以下に各化合物の収量、収率、色、形状を示す。
【0108】
得られた固体のNMR測定を行い、それぞれ対応する個数の水素のシグナルを検出し、下記式(L-5)~(L-7)で表される化合物の構造と同定した。
なお、以下に示す収率は、「対応する置換基を有するケトン2.0g」を基準とした収率を表す。
【0109】
化合物(L-5)0.4g、収率10%、黒青色固体、水素シグナル数42個。
【0110】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=8.32-8.19(4H)、7.59-7.19(15H)、3.82(3H)、3.38(8H)、1.15(12H)。
【0111】
【化31】
【0112】
化合物(L-6)2.9g、収率82%、黒色固体、水素シグナル数42個。
【0113】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=7.69-7.61(4H)、7.51-7.31(10H)、7.30-7.19(5H)、3.81(3H)、3.37(8H)、1.14(12H)。
【0114】
【化32】
【0115】
化合物(L-7)2.9g、収率83%、黒色固体、水素シグナル数62個。
【0116】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=7.50-7.13(11H)、7.05-6.92(4H)、6.68-6.58(4H)、3.79(3H)、3.46-3.30(16H)、1.21-1.10(24H)。
【0117】
【化33】
【0118】
[合成比較例1]比較例化合物(H-1)の合成
合成実施例1において、(中間体D-1)に代えて前記式(B-1)で表されるC.I.ベーシックブルー7 10g(19mmol)を中間体として使用し、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド5.6g(19mmol)を使用した以外は、同様の方法により、目的の比較例化合物(H-1)(13.4g,収率91%)を茶色固体として得た。
【0119】
得られた茶色固体のNMR測定を行い、以下の39個の水素のシグナルを検出し、下記式(H-1)で表される化合物の構造と同定した。
【0120】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=8.01(1H)、7.54-7.18(7H)、6.90-6.62(5H)、6.18(1H)、3.62-3.51(10H)、1.47(3H)、1.30(12H)。
【0121】
【化34】
【0122】
[合成比較例2]比較例化合物(H-2)の合成
合成実施例1において、(中間体101)に代えて4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(下記(中間体201))5.0g(15.4mmol)を使用し、N-エチル-1-ナフチルアミン臭化水素酸塩に代えて1-メチル-2-フェニルインドール3.2g(15.4mmol)、オキシ塩化リン3.1g(20.0mmol)を使用した以外は同様の方法により、中間体色素(下記(中間体202))(8.2g,収率97%)を濃青色固体として得た。
【0123】
【化35】
【0124】
合成実施例1において、(中間体D-1)に代えて(中間体202)2.0g(3.9mmol)を使用し、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1.1g(3.9mmol)を使用した以外は同様の方法により、目的の比較例化合物(H-2)(2.5g,収率81%)を茶色固体として得た。
【0125】
得られた茶色固体のNMR測定を行い、以下の40個の水素のシグナルを検出し、下記式(H-2)で表される化合物の構造と同定した。
【0126】
H-NMR(300MHz、DMSO-d):δ(ppm)=7.80(1H)、7.48-7.17(11H)、6.93(1H)、6.90-6.66(4H)、3.85(3H)、3.55(8H)、1.15(12H)。
【0127】
【化36】
【0128】
[合成比較例3]比較例化合物(H-3)の合成
公知の方法(特許文献4、段落[0211])により、化合物(H-3)を青紫色固体として得た。
【0129】
得られた青紫色固体のNMR測定を行い、以下の45個の水素のシグナルを検出し、下記式(H-3)で表される化合物の構造と同定した。
【0130】
H-NMR(300MHz、DMSO-d):δ(ppm)=7.56-7.41(4H)、7.40-7.23(6H)、7.21-7.11(3H)、6.84-6.72(4H)、4.31(1H)、3.91(1H)、3.50(8H)、2.31(3H)、1.29(3H)、1.11(12H)。
【0131】
【化37】
【0132】
[合成比較例4および5]比較例化合物(H-4)および(H-5)の合成
合成実施例1において、(中間体D-1)に代えて公知の方法(特許文献5、段落[0139]または段落[0137]を参考)で調製した中間体色素(下記(中間体203)または(中間体204))を使用し、それぞれリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを中間体色素の1.2倍モル量使用した以外は、同様の方法により、下記の通り、化合物(H-4)および(H-5)を得た。
【0133】
【化38】
【0134】
得られた固体のNMR測定を行い、それぞれ対応する個数の水素のシグナルを検出し、下記式(H-4)および(H-5)で表される化合物の構造と同定した。
【0135】
比較例化合物(H-4)0.1g、暗青色固体、水素シグナル数33個。
【0136】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=8.00-7.71(2H)、7.88(1H)、7.59-7.20(4H)、6.63(1H)、3.90-3.58(10H)、1.60-1.10(15H)。
【0137】
比較例化合物(H-5)0.1g、黒色固体、水素シグナル数38個。
【0138】
H-NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)=8.00-7.92(2H)、7.65(1H)、7.45-7.14(7H)、4.33(1H)、3.86(1H)、3.83-3.32(8H)、2.35(3H)、1.42-1.10(15H)。
【0139】
【化39】
【0140】
[実施例1]
(極大吸収波長の測定)
合成実施例1で得られた化合物(L-1)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解し、濃度0.02mmol/Lの溶液を調製し、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、型式:V-650)を用いて、分光特性として紫外可視吸収スペクトル(350~800nmの波長範囲)を室温(25℃)で測定し、測定波長範囲における極大吸収波長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0141】
[実施例2~実施例7]
実施例1において、化合物(L-1)に代えて、表1に示す化合物を使用した以外は、実施例1と同様に、PGME溶液の分光特性(紫外可視吸収スペクトル(350~800nmの波長範囲の極大吸収波長)を測定した。結果を表1にまとめて示す。
【0142】
[比較例1~比較例5]
比較のために、実施例の化合物(L-1)の代わりに、本発明に属さない前記トリアリールメタン色素化合物(H-1)~(H-5)を用いた以外は、実施例1と同様に、PGME溶液の分光特性を測定した。結果を表1にまとめて示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1より、本発明の実施例化合物であるトリアリールメタン色素は、比較例の従来のトリアリールメタン色素と比較して、長波長側に極大吸収波長を有している点で優れている。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明に係るトリアリールメタン色素を含有する着色組成物は、638nm以上の長波長側かつ可視光領域に極大吸収波長を有しており、カラーフィルター用着色剤などの種々の用途の色素材料として利用可能である。また、該着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いることにより、色特性(色域、輝度、コントラスト比など)に優れたカラーフィルターを作製することが可能である。