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  • 特開-セラミックス基複合材の成形方法 図1
  • 特開-セラミックス基複合材の成形方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150461
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】セラミックス基複合材の成形方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20231005BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 35/65 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 35/573 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C04B35/80 600
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
C04B35/65
C04B35/573
C04B35/577
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059574
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩庸
(72)【発明者】
【氏名】西口 輝一
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB08
4F072AD11
4F072AD23
4F072AF06
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH06
4F072AH22
4F072AH49
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AK14
4F072AK20
4F072AL09
(57)【要約】
【課題】溶融ケイ素を好適に含浸させて、強度低下を抑制し、高品質なセラミックス基複合材を成形する。
【解決手段】溶融ケイ素を含浸させてセラミックス基複合材を成形するセラミックス基複合材の成形方法において、強化繊維と、前記溶融ケイ素が含浸するマトリックスとが一体となったプリプレグを積層及び硬化して、積層硬化体を形成するステップと、形成した前記積層硬化体を炭化させて、前記積層硬化体に含浸経路を形成するステップと、前記含浸経路が形成された前記積層硬化体に、前記溶融ケイ素を含浸させるステップと、を実行しており、前記マトリックスに含まれる母材樹脂は、少なくともベンゾオキサジン樹脂を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ケイ素を含浸させてセラミックス基複合材を成形するセラミックス基複合材の成形方法において、
強化繊維と、前記溶融ケイ素が含浸するマトリックスとが一体となったプリプレグを積層及び硬化して、積層硬化体を形成するステップと、
形成した前記積層硬化体を炭化させて、前記積層硬化体に含浸経路を形成するステップと、
前記含浸経路が形成された前記積層硬化体に、前記溶融ケイ素を含浸させるステップと、を実行しており、
前記マトリックスに含まれる母材樹脂は、少なくともベンゾオキサジン樹脂を含むセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項2】
前記母材樹脂は、エポキシ樹脂をさらに含む請求項1に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項3】
前記母材樹脂は、前記ベンゾオキサジン樹脂に対する前記エポキシ樹脂の割合が、「ベンゾオキサジン樹脂:エポキシ樹脂=10:1~100(wt%比)」となっている請求項2に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項4】
前記ベンゾオキサジン樹脂に対する前記エポキシ樹脂の割合は、「ベンゾオキサジン樹脂:エポキシ樹脂=8:2(wt%比)~3:7(wt%比)」となっている請求項3に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項5】
炭化後の前記母材樹脂における炭素の割合を残炭率とすると、
前記母材樹脂の残炭率は、10%以上55%以下の範囲となっている請求項1から4のいずれか1項に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項6】
前記母材樹脂の残炭率は、25%よりも大きく45%以下の範囲となっている請求項5に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項7】
前記母材樹脂は、フィラーを含み、
前記フィラーは、粉体となる炭化ケイ素と、粉体となる炭素と、を含み、
前記母材樹脂に含まれる樹脂の割合は、0%よりも大きく50%以下の範囲となっており、
前記炭化ケイ素の割合は、0%以上95%以下の範囲となっており、
前記炭素の割合は、0%以上50%以下の範囲となっている請求項1から5のいずれか1項に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項8】
前記母材樹脂に含まれる樹脂の割合は、10%以上30%以下の範囲となっており、
前記炭化ケイ素の割合は、30%以上60%以下の範囲となっており、
前記炭素の割合は、0%以上30%以下の範囲となっている請求項7に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【請求項9】
前記マトリックスは、前記溶融ケイ素の含浸方向に延在する繊維を含み、
前記繊維は、前記母材樹脂の揮発開始温度よりも低くなっている請求項1から8のいずれか1項に記載のセラミックス基複合材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミックス基複合材の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス基複合材の成形方法として、MI(melt-infiltrated:溶融含浸)法を用いたセラミックス基複合材の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、樹脂バインダ及び細孔形成剤を含有するマトリックススラリーを、繊維強化材料に含浸させてプリフォームとし、プリフォームを加熱して、樹脂バインダを炭化させると共に細孔形成剤により気孔の形成を促進させることで多孔質プリフォームを形成する。この後、製造方法では、多孔質プリフォームの気孔内に溶融ケイ素を充填することで、炭化ケイ素を形成している。この製造方法に用いられる樹脂バインダは、フラン樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-241327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなセラミックス基複合材の成形方法では、炭化ケイ素を好適に形成する場合、残炭率の大きな樹脂バインダを用いることで、溶融ケイ素と炭素との反応を効率的に行うことが可能である。例えば、樹脂バインダとして、残炭率の大きいフェノール樹脂を用いることが考えられる。しかしながら、フェノール樹脂は、硬化時に脱水縮合するため、縮合水を起因とする粗大ボイドが生成され易い。生成された粗大ボイドは、溶融ケイ素が含浸せずに、そのままボイドとして存在する場合があり、強度低下の要因となる。また、例えば、樹脂バインダとして、縮合水が発生しないエポキシ樹脂を用いることが考えられる。しかしながら、エポキシ樹脂は、残炭率が小さいため、樹脂バインダにフィラーとしての炭素の粉体を多く添加する必要がある。この場合、粉体が凝集することによって、溶融ケイ素の含浸経路をふさいでしまい、未含浸領域が形成される場合があり、強度低下の要因となる。
【0005】
そこで、本開示は、溶融ケイ素を好適に含浸させて、強度低下を抑制し、高品質なセラミックス基複合材を成形することができるセラミックス基複合材の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のセラミックス基複合材の成形方法は、溶融ケイ素を含浸させてセラミックス基複合材を成形するセラミックス基複合材の成形方法において、強化繊維と、前記溶融ケイ素が含浸するマトリックスとが一体となったプリプレグを積層及び硬化して、積層硬化体を形成するステップと、形成した前記積層硬化体を炭化させて、前記積層硬化体に含浸経路を形成するステップと、前記含浸経路が形成された前記積層硬化体に、前記溶融ケイ素を含浸させるステップと、を実行しており、前記マトリックスに含まれる母材樹脂は、少なくともベンゾオキサジン樹脂を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、溶融ケイ素を好適に含浸させて、強度低下を抑制し、高品質なセラミックス基複合材を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るセラミックス基複合材を示す断面図である。
図2図2は、本実施形態に係るセラミックス基複合材の成形方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0010】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係るセラミックス基複合材を示す断面図である。図2は、本実施形態に係るセラミックス基複合材の成形方法を示す説明図である。
【0011】
本実施形態に係るセラミックス基複合材の成形方法は、溶融含浸法(MI法)を用いた成形方法となっている。セラミックス基複合材としては、例えば、SiC(炭化ケイ素)複合材であり、具体的には、SiC繊維強化SiC基複合材(SiC/SiC複合材)である。セラミックス基複合材の成形方法の説明に先立ち、図1を参照して、SiC/SiC複合材であるセラミックス基複合材1について説明する。なお、セラミックス基複合材は、SiC/SiC複合材に、特に限定されず、本実施形態の成形方法により成形可能なセラミックス基複合材であれば、何れであってもよい。
【0012】
(セラミックス基複合材)
図1に示すように、セラミックス基複合材1は、セラミックス基強化繊維を含む繊維層5と、繊維層5に含浸するマトリックスを含むマトリックス層6と、が一体となったプリプレグを用いて形成される。
【0013】
繊維層5は、繊維が主体の層であり、セラミックス基強化繊維として、SiC繊維が適用されている。繊維層5は、母材樹脂を含むマトリックスがSiC繊維に含浸し、硬化することで予備成形体となり、予備成形体を炭化させて溶融ケイ素を含浸させて反応させることにより形成される。プリプレグとしては、例えば、SiC繊維の繊維方向が一方向となる一方向材が用いられ、繊維方向を異ならせながら積層される。
【0014】
マトリックス層6は、炭化ケイ素を含む層となっている。マトリックス層6は、繊維層5に含浸するマトリックスを含む層となっている。繊維層5とマトリックス層6とを含む積層硬化体は、炭化させることにより含浸経路8が形成され、この含浸経路8に溶融ケイ素を含浸させて反応させることで形成される。
【0015】
なお、プリプレグの間には、後述する繊維11(図2参照)を設けてもよい。積層硬化体は、繊維11を炭化させることにより含浸経路8が形成され、この含浸経路8に溶融ケイ素を含浸させて反応させることで形成される。マトリックス層6に形成される含浸経路8は、繊維層5の積層方向に直交する面内方向に亘って、溶融ケイ素が充填される空間が連通するように形成されている。そして、この含浸経路8に溶融ケイ素が含浸することで、マトリックス層6は、炭化ケイ素が含浸経路8に沿って形成された層となる。
【0016】
ここで、マトリックスに含まれる母材樹脂について説明する。母材樹脂は、少なくともベンゾオキサジン樹脂を含むものとなっている。本実施形態では、母材樹脂として、例えば、ベンゾオキサジン樹脂と、エポキシ樹脂とを混合した熱硬化性樹脂が用いられる。ベンゾオキサジン樹脂は、熱硬化反応が開環重合であり、熱硬化時において縮合水が発生しないものとなっている。また、ベンゾオキサジン樹脂は、ベンゼン環を多く含むため、残炭率が高いものとなっている。ここで、残炭率は、炭化後の母材樹脂における炭素の割合である。母材樹脂の残炭率は、10%以上55%以下の範囲となっており、より好ましくは、25%よりも大きく45%以下の範囲となっている。また、残炭率の評価においては、母材樹脂の残炭率を35%としており、この残炭率において好適な評価を得ている。
【0017】
一方で、母材樹脂は、SiC繊維に含浸させてプリプレグとすることから、タック性及び柔軟性を確保すべく、ベンゾオキサジン樹脂に比して低粘度となるエポキシ樹脂を混合している。このとき、ベンゾオキサジン樹脂に対するエポキシ樹脂の割合は、「ベンゾオキサジン樹脂:エポキシ樹脂=10:1~100(wt%比)」となっている。換言すれば、エポキシ樹脂は、ベンゾオキサジン樹脂を1とすると、1/10~10の範囲のwt%比となっている。また、ベンゾオキサジン樹脂に対するエポキシ樹脂の割合は、「ベンゾオキサジン樹脂:エポキシ樹脂=8:2(wt%比)~3:7(wt%比)」の範囲とすることがより好適である。
【0018】
また、母材樹脂は、フィラーを含んでいてもよく、フィラーとしては、粉体となる炭素及び粉体となる炭化ケイ素の少なくとも一方を用いてもよい。本実施形態において、母材樹脂は、粉体となる炭素及び粉体となる炭化ケイ素を含むものとなっている。つまり、本実施形態の母材樹脂は、フィラーを含む熱硬化性樹脂となっている。本実施形態では、一例として、母材樹脂、粉体となる炭化ケイ素、粉体となる炭素の割合が、「樹脂:炭化ケイ素:炭素=41:50:9(wt%比)」となっている。
【0019】
ここで、母材樹脂に含まれる樹脂の割合は、0%よりも大きく50%以下の範囲であればよく、望ましくは10%以上30%以下の範囲がよい。また、炭化ケイ素の割合は、0%以上95%以下の範囲であればよく、望ましくは30%以上60%以下の範囲がよい。さらに、炭素の割合は、0%以上50%以下の範囲であればよく、望ましくは0%以上30%以下の範囲がよい。なお、樹脂の割合、炭化ケイ素の割合、炭素の割合の総和は、100%を超えない、つまり、100%以下となることは言うまでもない。つまり、樹脂の割合の範囲、炭化ケイ素の割合の範囲、炭素の割合の範囲を満足した上で、割合の総和が100%以下となる母材樹脂が用いられる。
【0020】
(セラミックス基複合材の成形方法)
次に、図2を参照して、セラミックス基複合材1の成形方法について説明する。セラミックス基複合材1の成形方法では、先ず、繊維層5とマトリックス層6とが一体となったプリプレグを積層及び硬化して、積層硬化体を形成する(ステップS1)。なお、ステップS1では、積層するプリプレグの間に、繊維11を配置してもよい。この場合、ステップS1では、プリプレグと繊維11とを交互に繰り返し積層していく。なお、ステップS1においては、プリプレグと繊維11とをさらに一体化したシートとし、複数のシートを繰り返し積層してもよい。この後、ステップS1では、積層したプリプレグを加熱することで、積層硬化体を形成する。マトリックス層6に用いられる繊維11は、バインダ樹脂を付着させた炭素繊維、バインダ樹脂を付着させたSiC繊維などの無機繊維、または有機繊維である。なお、有機繊維にもバインダ樹脂を付着させてもよい。また、マトリックス層6に用いられる繊維11は、不織布、織布、または一方向材となっている。このため、マトリックス層6に用いられる繊維11は、その繊維方向が、積層体の面内方向に沿う方向となる。
【0021】
続いて、セラミックス基複合材1の成形方法では、形成した積層硬化体を炭化させることにより、積層硬化体の面内方向に亘って含浸経路8を形成する(ステップS2)。積層硬化体を炭化させると、マトリックスの母材樹脂が炭化することで、含浸経路8が形成されることとなる。
【0022】
なお、繊維11を設けた積層硬化体を炭化させると、繊維11は、炭素繊維及びSiC繊維の場合、バインダ樹脂が炭化することで、また、有機繊維の場合、繊維自体が炭化することで、繊維方向(面内方向)に沿って含浸経路8が形成されることとなる。バインダ樹脂及び有機繊維は、母材樹脂よりも揮発開始温度が低い樹脂となっている。例えば、母材樹脂としてベンゾオキサジン樹脂とエポキシ樹脂とを混合させた樹脂が用いられる場合、バインダ樹脂及び有機繊維は、PVC(polyvinyl chloride、ポリ塩化ビニル)、PMMA(Poly Methyl Methacrylate、アクリル)等が用いられる。ステップS2では、積層硬化体を炭化させることにより、含浸経路8を形成した積層硬化体を、セラミックス基複合材1の前駆体として形成する。
【0023】
また、ステップS2では、積層硬化体の母材樹脂に含まれるベンゾオキサジン樹脂及びエポキシ樹脂が炭化する。このため、残炭率の高い積層硬化体が形成される。
【0024】
なお、繊維11を設けた積層硬化体を炭化させる場合、ステップS2では、繊維11が炭素繊維及びSiC繊維の場合、繊維11に付着したバインダ樹脂が炭化することで、溶融ケイ素が含浸する含浸経路8内に炭素が形成される。また、ステップS2では、マトリックス層6の繊維11が有機繊維である場合、繊維11自体が炭化することで、溶融ケイ素が含浸する含浸経路8が形成されると共に、含浸経路8内に炭素が形成される。ステップS2において形成される含浸経路8は、母材樹脂が炭化することにより発生する分解ガスの脱ガス経路としても機能するため、積層体の割れを抑制することが可能となる。
【0025】
この後、セラミックス基複合材1の成形方法では、前駆体となる含浸経路8が形成された積層硬化体に、溶融ケイ素を含浸させる(ステップS3)。ステップS3では、ステップS2において形成された含浸経路8に沿って溶融ケイ素が含浸する。含浸した溶融ケイ素は、含浸経路8内の炭素、炭化した母材樹脂に含まれる炭素、母材樹脂に含有されたフィラーの炭素と反応することで、炭化ケイ素となる。そして、ステップS3の実行により、セラミックス基複合材1の成形方法が終了となる。
【0026】
なお、繊維11を設けた積層硬化体において、繊維11が炭素繊維である場合、溶融ケイ素は、炭素繊維と反応することで、SiC繊維を生成する。
【0027】
以上のように、本実施形態に記載のセラミックス基複合材の成形方法は、例えば、以下のように把握される。
【0028】
第1の態様に係るセラミックス基複合材1の成形方法は、溶融ケイ素を含浸させてセラミックス基複合材1を成形するセラミックス基複合材1の成形方法において、強化繊維と、前記溶融ケイ素が含浸するマトリックスとが一体となったプリプレグを積層及び硬化して、積層硬化体を形成するステップS1と、形成した前記積層硬化体を炭化させて、前記積層硬化体に含浸経路を形成するステップS2と、前記含浸経路が形成された前記積層硬化体に、前記溶融ケイ素を含浸させるステップS3と、を実行しており、前記マトリックスに含まれる母材樹脂は、少なくともベンゾオキサジン樹脂を含む。
【0029】
この構成によれば、母材樹脂にベンゾオキサジン樹脂が含まれることで、炭化時において、縮合水を発生させることなく、母材樹脂の残炭率を向上させることができる。このため、含浸経路8が塞がれることなく、溶融ケイ素を好適に含浸させることができ、溶融ケイ素と炭素とを好適に反応させて炭化ケイ素を生成することができる。これにより、強度低下が抑制された高品質なセラミックス基複合材を成形することができる。
【0030】
第2の態様として、前記母材樹脂は、エポキシ樹脂をさらに含む。
【0031】
この構成によれば、ベンゾオキサジン樹脂に比して低粘度となるエポキシ樹脂を混合することで、プリプレグに適した母材樹脂とすることができる。つまり、母材樹脂を含有するプリプレグを、タック性及び柔軟性を有するものとすることができる。
【0032】
第3の態様として、前記母材樹脂は、前記ベンゾオキサジン樹脂に対する前記エポキシ樹脂の割合が、「ベンゾオキサジン樹脂:エポキシ樹脂=10:1~100(wt%比)」となっている。
【0033】
この構成によれば、タック性及び柔軟性を有する好適なプリプレグとすることができる。
【0034】
第4の態様として、前記ベンゾオキサジン樹脂に対する前記エポキシ樹脂の割合は、「ベンゾオキサジン樹脂:エポキシ樹脂=8:2(wt%比)~3:7(wt%比)」となっている。
【0035】
この構成によれば、タック性及び柔軟性を有する最適なプリプレグとすることができる。
【0036】
第5の態様として、炭化後の前記母材樹脂における炭素の割合を残炭率とすると、前記母材樹脂の残炭率は、10%以上55%以下の範囲となっている。
【0037】
この構成によれば、溶融ケイ素の反応に最適な残炭率とすることができる。
【0038】
第6の態様として、前記母材樹脂の残炭率は、25%よりも大きく45%以下の範囲となっている。
【0039】
この構成によれば、溶融ケイ素の反応により最適な残炭率とすることができる。
【0040】
第7の態様として、前記母材樹脂は、フィラーを含み、前記フィラーは、粉体となる炭化ケイ素と、粉体となる炭素と、を含み、前記母材樹脂に含まれる樹脂の割合は、0%よりも大きく50%以下の範囲となっており、前記炭化ケイ素の割合は、0%以上95%以下の範囲となっており、前記炭素の割合は、0%以上50%以下の範囲となっている。
【0041】
この構成によれば、残炭率が最適となる積層体を形成することができる。
【0042】
第8の態様として、前記母材樹脂に含まれる樹脂の割合は、10%以上30%以下の範囲となっており、前記炭化ケイ素の割合は、30%以上60%以下の範囲となっており、前記炭素の割合は、0%以上30%以下の範囲となっている。
【0043】
この構成によれば、残炭率がさらに最適となる積層体を形成することができる。
【0044】
第9の態様として、前記マトリックスは、前記溶融ケイ素の含浸方向に延在する繊維11を含み、前記繊維11は、前記母材樹脂の揮発開始温度よりも低くなっている。
【0045】
この構成によれば、積層硬化体の炭化時において、繊維11を母材樹脂よりも先に揮発させることができる。これにより、含浸経路8を母材樹脂の揮発成分が揮発するための流路として用いることができるため、クラックの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 セラミックス基複合材
5 繊維層
6 マトリックス層
8 含浸経路
11 繊維
図1
図2