IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジーシーの特許一覧

特開2023-150479口腔内報知装置、及び、口腔内医療機器
<>
  • 特開-口腔内報知装置、及び、口腔内医療機器 図1
  • 特開-口腔内報知装置、及び、口腔内医療機器 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150479
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】口腔内報知装置、及び、口腔内医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61C19/00 A
A61C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059607
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 聖二
(72)【発明者】
【氏名】石川 真生
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊弥
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052FF10
4C052GG24
4C052NN02
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN15
(57)【要約】
【課題】口腔内に挿入する医療機器においてより確実に機器の状態を施術者が把握できるようにすることを課題とする。
【解決手段】口腔内医療機器の状態を報知する口腔内報知装置であって、情報処理装置と、情報処理装置に接続され、口腔内に光を出射可能に配置された光源と、を有し、情報処理装置は、口腔内医療機器がその機能を維持することが難しくなる状態になったこと、又は、当該状態に近づいていることを検知したときに光源を点灯又は点滅させる処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内医療機器の状態を報知する口腔内報知装置であって、
情報処理装置と、
前記情報処理装置に接続され、口腔内に光を出射可能に配置された光源と、を有し、
前記情報処理装置は、前記口腔内医療機器がその機能を維持することが難しくなる状態になったこと、又は、当該状態に近づいていることを検知したときに前記光源を点灯又は点滅させる処理を行う、
口腔内報知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔内報知装置が具備された口腔内医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔内医療機器に用いられる報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内に用いられる医療機器、例えば、口腔内の印象をデジタルデータとして採得するデジタル印象採得装置は3次元的に口腔内形状をスキャンする口腔内スキャナを有している。口腔内スキャナは、施術者がその先端を口腔内に挿入して歯列の直上を移動させることで形状を読み取る。
【0003】
特許文献1には機器の状態から発光パターンとの対応付けを行い、発光パターンによる報知を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-006385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなデジタル印象採得装置による口腔内スキャンにおいては、歯列形状等のスキャン対象物の唾液による湿潤状態や、口腔内スキャナを動かす速さ等によりスキャンした3D形状データの処理が追従しないとき、スキャンが停止する状態に陥ることがある。再度スキャンを継続するためには,スキャン済みの位置に口腔内スキャナを戻す必要がある。通常、スキャンが停止されるとその旨がモニタ等の画面に表示されるが、施術者は患者の口腔内を注視しており画面の表示に気が付かずにスキャンが停止したまま作業を継続してしまうことがある。
このような問題はデジタル印象採得装置に限らず口腔内医療機器について共通する問題である。
【0006】
そこで本開示は口腔内に挿入する医療機器において、より確実に機器の状態を施術者が把握できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、口腔内医療機器の状態を報知する口腔内報知装置であって、情報処理装置と、情報処理装置に接続され、口腔内に光を出射可能に配置された光源と、を有し、情報処理装置は、口腔内医療機器がその機能を維持することが難しくなる状態になったこと、又は、当該状態に近づいていることを検知したときに光源を点灯又は点滅させる処理を行う、口腔内報知装置を開示する。
【0008】
また、上記口腔内報知装置が具備された口腔内医療機器を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、口腔内医療機器の動作状況を報知するに際し、施術者は視点を患者の口腔内からずらさずに動作状況を認知することができ、より確実に機器の状態を施術者が把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は口腔内報知装置を備える口腔内医療機器の構成を説明する図である。
図2図2は口腔内報知装置の作動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を図面に示す形態例に基づき説明する。ただし本開示はこれら形態に限定されるものではない。ここでは口腔内医療機器の1つの形態例としてデジタル印象採得装置を説明し、このデジタル印象採得装置に口腔内報知装置が含まれているものである。
【0012】
[デジタル印象採得装置]
図1はデジタル印象採得装置1の構成を模式的に表した図である。図1からわかるように、デジタル印象採得装置1は、口腔内スキャナ10と情報処理装置20とを有して構成されている。また、ここに口腔内報知装置も含まれている。
【0013】
<口腔内スキャナ>
口腔内スキャナ10は施術者が口腔内にその一部を挿入して印象を採得する部位を移動させ画像を取得する部材である。そのため口腔内スキャナ10は本体11、光源12、反射鏡13、カメラモジュール14、及び、センサ15を備えている。
【0014】
本体11は口腔内スキャナ10を構成する各部材を保持するするとともに施術者がこれを手に持って操作するための部材であり、棒状の部材である。
【0015】
光源12は棒状である本体11の先端付近に配置されている。この光源12により口腔内が照明されて口腔内の画像を適切に取得することが可能となる。本形態では光源としてLEDが用いられており、より具体的には白色LED12a、赤色LED12b、緑色LED12c、青色LED12dが配置されている。
【0016】
反射鏡13は棒状である本体の11の先端付近に配置された反射体であり、光源12から出射された光の向きを、本体11の軸線に直交する方向に変えるように設置されている。従って、図1に表れているように反射鏡13は光源12に対向して、傾斜するように配置されている。これにより光源12からの光を適切に印象採得対象物(歯牙等)に当てて効率よい照明をすることができる。
【0017】
カメラモジュール14は、棒状である本体11の先端付近で棒状である側面に設けられており、口腔内スキャナ10を口腔内に挿入したときに印象採得対象部位の画像を取得する。カメラモジュール14は撮影すべき像である口腔内からの光を適切に入光させるとともに、これを電気信号に変換する。そして変換された信号が導線により情報処理装置20に送信される。カメラモジュール14の具体的な形態は特に限定されることはないが、レンズと、CCDやCMOS等の光電変換センサと、を含む機器を挙げることができる。
【0018】
センサ15は、カメラモジュール14に隣接して配置され、カメラモジュール14の温度を計測する。センサ15の種類は特に限定されることはないが、得られた温度をデジタルデータとして取得することができるセンサである。
【0019】
<情報処理装置>
情報処理装置20は、口腔内スキャナ10のカメラモジュール14、センサ15からデジタルデータを取得して必要な演算を行い画像処理をするとともに、演算の結果に応じて光源12に対して点灯、消灯、点滅等の指令を行う。そのため、情報処理装置20は中央演算子21、記憶手段22、RAM23、受信手段24、及び、送信手段25を備えて構成されている。
【0020】
中央演算子21はいわゆるCPUであり、画像処理手段やその他の各種演算手段として機能する。すなわち、中央演算子21は、記憶媒体として機能する記憶手段22に記憶された各種プログラムを実行し、所定の結果を演算して出力し、デジタル印象採得装置1を制御する。
中央演算子21が画像処理手段として機能するときには、カメラモジュール14からのデジタルデータを受信手段24を介して取り入れ、プログラムに基づいて演算をし、その結果としての3D画像信号を生成する。
中央演算子21が光源12の制御をする際には必要に応じた必要な光源を点灯、消灯、又は点滅する。光源の制御の具体的内容については後で説明する。
中央演算子21がセンサ15からの温度情報を取得した際には得られた温度に基づいて演算を行いデジタル印象採得装置1を制御する。温度による制御についても後で説明する。
またその他、中央演算子21は、記憶手段22、RAM23、受信手段24、送信手段24等の情報処理装置20に備えられる他の部材に接続されており、プログラムに基づいてこれらを制御できるように構成されている。
【0021】
記憶手段22は、中央演算子21で行われる演算の根拠となる各種プログラムやデータベースが保存される記憶媒体として機能する部材である。さらに記憶手段22は、保管すべき画像や患者のデータ等を保管する保管手段として機能してもよい。
【0022】
RAM23は、中央演算子21による演算の作業領域や一時的なデータの記憶手段として機能する部材である。RAM23は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等で構成することができ、公知のRAMと同様である。
【0023】
受信手段24は、カメラモジュール14からの、口腔内からの光に基づいた電気的信号を取り入れる機能を有する部材であり、カメラモジュール14に接続される。いわゆる入力ポート、入力コネクタ等もこれに含まれる。接続の態様は有線、無線を問わない。
また、受信手段24はセンサ15とも電気的に接続されており、センサ15で得た情報を情報処理装置20に取り込むことができる。
【0024】
送信手段25は、少なくとも光源12に接続されている。これにより情報処理装置20により得られた演算結果に基づいて光源12の点灯等を制御できる。また、得られた結果のうちモニタ等の表示手段(不図示)に送信すべき場合には、送信手段25に表示手段が接続されて信号が送信される。
送信手段25はいわゆる出力ポート、出力コネクタ等もこれに含まれる。送信の態様は有線、無線を問わない。
【0025】
<口腔内報知装置>
口腔内報知装置は、該口腔内報知装置を備える口腔内医療機器の作動状態を口腔内に表示するための装置であり、本形態では口腔内医療機器の1つであるデジタル印象採得装置1の作動状態を口腔内に表示する。本形態で口腔内報知装置は情報処理装置20、光源12、及び、センサ15を有している。本形態では口腔内報知装置を構成する各部材が上記した口腔内スキャナ10、情報処理装置20を構成する部材と兼用するため、同じ符号を付している。
【0026】
口腔内報知装置における情報処理装置20は、口腔内医療機器の状態を取得し、演算して報知する情報を決定し、報知手段(光源)に指令を行う。
【0027】
中央演算子21は、記憶媒体として機能する記憶手段22に記憶された、口腔内医療機器の状態を取得、報知の内容を決定、及び、報知手段(光源)に指令のためのプログラムを実行する。本形態では中央演算子21が光源12の制御をする際には必要に応じた必要な光源を点灯、消灯、点滅させる。光源の点灯等の具体的内容については後で説明する。
【0028】
記憶手段22は、中央演算子21で行われる演算の根拠となる各種プログラムやデータベースが保存される記憶媒体として機能する部材である。ここでデータベースとして機器の状況と点灯、消灯、点滅させる光源の種類とが対応付けされたデータベースを挙げることができる。
【0029】
RAM23は、中央演算子21による演算の作業領域や一時的なデータの記憶手段として機能する部材である。RAM23は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等で構成することができ、公知のRAMと同様である。
【0030】
受信手段24は、センサ15と電気的に接続されており、センサ15で得た情報を情報処理装置20に取り込む機能を有する部材である。いわゆる入力ポート、入力コネクタ等もこれに含まれる。接続の態様は有線、無線を問わない。
【0031】
送信手段25は、少なくとも光源12に接続されている。これにより情報処理装置20により得られた演算結果に基づいて光源12の点灯等を制御できる。送信手段25はいわゆる出力ポート、出力コネクタ等もこれに含まれる。送信の態様は有線、無線を問わない。
【0032】
光源12は棒状である本体11の先端付近に配置されている。この光源12により口腔内が報知の内容に対応した種類の点灯、消灯、点滅をして施術者に口腔内医療機器の状態を口腔内で表示して報知する。本形態では光源としてLEDが用いられており、より具体的には白色LED12a、赤色LED12b、緑色LED12c、青色LED12dが配置されている。
【0033】
センサ15は、カメラモジュール14に隣接して配置されカメラモジュール14の温度を計測する。センサ15の種類は特に限定されることはないが、得られた温度をデジタルデータとして取得することができるセンサである。
なお、本形態では口腔内医療機器の機能を適切に発揮するための状態を得るためのセンサとして温度を計測するセンサを挙げたが、口腔内医療機器の機能を適切に発揮させるための状態を得るために必要なセンサであれば温度取得に限らず他の物理量を取得するセンサであってもよい。その他のセンサとして例えば接触や押圧力を検知するセンサを挙げることができる。
【0034】
<その他>
その他、本形態ではデジタル印象採得装置1に必要な構成が具備される。例えば電源のON及びOFFスイッチ、画像取得開始及び停止のスイッチ等を挙げることができる。
【0035】
また、本形態では口腔内医療機器としてデジタル印象採得装置を例に説明したが、口腔内に挿入する口腔内医療機器であれば本開示の口腔内報知装置を適用することができる。このような口腔内医療機器として、例えば口腔内カメラ、口腔内光照射器、歯周ポケット測定器等を挙げることができる。
【0036】
[デジタル印象採得装置の作動、効果等]
<通常の作動>
デジタル印象採得装置1により口腔内の形状をスキャンする通常の場面では、デジタル印象採得装置1は次のように作動する。
施術者は口腔内スキャナ10を持ち、本体11のうち光源12、カメラモジュール14が配置された側の先端を口腔内に挿入して撮影場所の撮影を開始する。施術者は撮影すべき場所に沿ってカメラモジュール14の位置を移動させつつ取得すべき全ての範囲に亘って画像を取得する。
【0037】
このとき情報処理装置20では通常の画像取得のための照明に適した光源12の点灯等をする指令を光源12に対して行う。具体的には白色LED12a、赤色LED12b、緑色LED12c、青色LED12dを連続的に切り替えつつ発光させる。この切り替えは高速で行われるため肉眼では白色光の照明として認識される。
【0038】
<口腔内報知装置>
一方、口腔内報知装置は上記通常の作動中に作動し、必要に応じて光源12の点灯等を行う。図2に口腔内報知装置の作動の流れを示した。図2からわかるように口腔内報知装置は過程S11~過程S14を有している。以下、各過程について説明する。
【0039】
過程S11では、口腔内医療機器の状態を検知する。ここで「状態」は口腔内医療機器が機能を維持し続けることができるか否かの状態、又は、機能を維持することができない状態が近いか否かの状態であるかを検知することである。本形態ではデジタル印象採得装置1が機能を維持し続けることができない状態として、「スキャンが停止」、維持することができないことが近い状態として「口腔内スキャナの温度が高い」、「口腔内スキャナの温度が低い」、及び、「データ取得量が上限に近い」を検知する。
「スキャンが停止」は、スイッチ等でスキャンが意図的に停止されていないにもかかわらず情報処理装置20が画像情報を取得していない、又は、取得しても処理できない状態であることを情報処理装置20が自ら判定することが可能である。このようにスキャンが停止する原因として例えば施術者の口腔内スキャナ10の移動が速すぎる場合を挙げることができる。
「口腔内スキャナの温度が高い」及び「口腔内スキャナの温度が低い」はセンサ15からの情報に基づいて情報処理装置20で判定することができる。
「データ取得量が上限に近い」は現時点のデータ蓄積情報に基づいてさらなるデータ蓄積可能量を情報処理装置20が自ら判定することが可能である。
【0040】
過程S12では、過程S11で得た検知情報から、報知すべきかを情報処理装置20が判定する。維持し続けることに問題がないと判定したときにはNoが選択され過程S11に戻る。一方、維持し続けることに問題があると判定した時にはYesが選択されて過程S13に進む。
【0041】
過程S13では過程S11で得た検知情報に基づいて、情報処理装置20どのような報知をすべきかを演算し、過程S14でそれを光源12に指令して指令に基づいて点灯等をさせる。本形態では具体的に次のように行う。
「口腔内スキャンが停止」:赤色LEDが点灯
「スキャナの温度が低い」:青色LEDが点滅
「スキャナの温度が高い」:赤色LEDが点滅
「データ取得量が上限に近い」:緑色LEDが数秒間点滅
【0042】
このときの光は口腔内でも十分に視認できる光(輝度、明度、色)を用いることが好ましい。そのため、白色に見える以外の色を用いることが好ましい。
【0043】
このように口腔内報知装置によれば、施術者は口腔内医療機器の状態(特に不具合の発生)に関する情報を口腔内の表示から知ることができ、口腔内から視線をずらすことなく認識できるため、不具合に気が付かずに作業を続けてしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 デジタル印象採得装置(口腔内医療機器)
10 口腔内スキャナ
11 本体
12 光源
13 反射鏡
14 カメラモジュール
15 センサ
20 情報処理装置
図1
図2