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特開2023-150487作業機械、ウインチ装置、及び位置検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150487
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業機械、ウインチ装置、及び位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 5/14 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B66D5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059615
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本庄 浩平
(57)【要約】
【課題】湿式多板式のネガティブブレーキ装置の制動力を自動的に検出できる作業機械を提供する。
【解決手段】ウインチドラム(5)とウインチドラムの回転に制動をかける湿式多板式のネガティブ制御方式のブレーキ装置(4)とを含むウインチ装置(106)が搭載された作業機械において、ブレーキ装置は、複数の摩擦板(12)と複数の相手板(13)とを交互に重ね合わせて構成されるクラッチ板(CP)と、クラッチ板を圧接する押圧部材(16)と、押圧部材を付勢して制動力を生じさせる付勢部材(17)と、を有し、さらに、前記付勢部材により前記押圧部材が付勢されているときの制動力に関する情報を検出する制動力検出手段(7)を備えたことを特徴とする作業機械。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチドラムと前記ウインチドラムの回転に制動をかける湿式多板式のネガティブ制御方式のブレーキ装置とを含むウインチ装置が搭載された作業機械において、
前記ブレーキ装置は、
複数の摩擦板と複数の相手板とを交互に重ね合わせて構成されるクラッチ板と、
前記クラッチ板を圧接する押圧部材と、
前記押圧部材を付勢して制動力を生じさせる付勢部材と、を有し、
さらに、前記付勢部材により前記押圧部材が付勢されているときの制動力に関する情報を検出する制動力検出手段を備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制動力検出手段は、前記押圧部材または前記押圧部材と連動して移動する連動部材の位置に関する情報を検出することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記制動力検出手段は、前記ブレーキ装置が制動状態にあるときに前記押圧部材または前記連動部材の位置を検出することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項2または3に記載の作業機械において、
前記制動力検出手段は、前記作業機械の作業開始前に前記押圧部材または前記連動部材の位置を検出することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載の作業機械において、
前記制動力検出手段にて検出された前記制動力が基準値を下回ったことを報知する報知装置をさらに備えることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記報知装置は、前記制動力に基づいて算出された前記クラッチ板の使用限界に対する余裕率を報知することを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機械において、
前記報知装置は、前記余裕率を、蓄積された経年変化のデータと対比して報知することを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項6に記載の作業機械において、
前記ウインチ装置が複数搭載され、
前記報知装置は、前記複数のウインチ装置のうち、第1ウインチ装置における前記余裕率と、第2ウインチ装置における前記余裕率との比較結果を報知することを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項6~8の何れか1項に記載の作業機械において、
前記報知装置は、表示画面を有し、
前記表示画面は、前記余裕率の変化をグラフで表示することを特徴とする作業機械。
【請求項10】
請求項2~8の何れか1項に記載の作業機械において、
前記クラッチ板と前記押圧部材を挟んで反対側の側壁には凹部が形成され、
前記制動力検出手段の少なくとも一部は、前記凹部内に設けられることを特徴とする作業機械。
【請求項11】
請求項2~10の何れか1項に記載の作業機械において、
前記押圧部材または前記連動部材の位置を目視可能な目視確認手段をさらに備えることを特徴とする作業機械。
【請求項12】
請求項11に記載の作業機械において、
前記制動力検出手段と前記目視確認手段の一部は共通部品で構成されることを特徴とする作業機械。
【請求項13】
作業機械に適用され、ウインチドラムと前記ウインチドラムの回転に制動をかける湿式多板式のネガティブ制御方式のブレーキ装置とを含むウインチ装置において、
前記ブレーキ装置は、
複数の摩擦板と複数の相手板とを交互に重ね合わせて構成されるクラッチ板と、
前記クラッチ板を圧接する押圧部材と、
前記押圧部材を付勢して制動力を生じさせる付勢部材と、を有し、
さらに、前記付勢部材により前記押圧部材が付勢されているときの制動力に関する情報を検出する制動力検出手段を備えたことを特徴とするウインチ装置。
【請求項14】
請求項2~12の何れか1項に記載のウインチ装置に用いられ、前記押圧部材または前記連動部材の位置を検出する位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、ウインチ装置、及びウインチ装置に用いられる位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一例であるクレーンにはウインチ装置が搭載されている。ウインチ装置に関する従来技術として、例えば、特許文献1に記載のウインチ装置は、湿式多板式のブレーキ装置を備えている。湿式多板式のブレーキ装置は、摩擦フェーシングを貼り付けた摩擦板と相手板とを交互に配置して構成されたクラッチ板を、押圧ばねで圧接することで制動力を発生させる。このように一般に、クレーンでは、非操作時に押圧ばねのばね力によってブレーキを掛けるネガティブ制御方式のブレーキ装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6645937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネガティブ制御方式のブレーキ装置(ネガティブブレーキ装置)では、摩擦フェーシングが摩耗して摩擦板の厚みが減少すると、押圧ばねのセット寸法が伸びて制動力が低下する。しかしながら、上記従来技術では、その制動力の低下を自動的に検出できないといった課題がある。
【0005】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、湿式多板式のネガティブ制御方式のブレーキ装置の制動力を自動的に検出できる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、ウインチドラムと前記ウインチドラムの回転に制動をかける湿式多板式のネガティブ制御方式のブレーキ装置とを含むウインチ装置が搭載された作業機械において、前記ブレーキ装置は、複数の摩擦板と複数の相手板とを交互に重ね合わせて構成されるクラッチ板と、前記クラッチ板を圧接する押圧部材と、前記押圧部材を付勢して制動力を生じさせる付勢部材と、を有し、さらに、前記付勢部材により前記押圧部材が付勢されているときの制動力に関する情報を検出する制動力検出手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、湿式多板式のネガティブ制御方式のブレーキ装置の制動力を自動的に検出できる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るネガティブブレーキ装置を備えたクレーンの外観側面図。
図2】主巻ウインチの構成図。
図3】(a)は摩擦板の正面図、(b)は(a)に示す摩擦板のIIIb-IIIb断面図。
図4】(a)はネガティブブレーキ装置の断面図、(b)は(a)の要部を示す拡大断面図。
図5】クラッチ板の余裕率の算出と表示装置への報知の手順を示すフローチャート。
図6】クラッチ板の余裕率の算出に用いられる初期値の設定手順を示すフローチャート。
図7】余裕率の予想線図。
図8】主巻ウインチと補巻ウインチの余裕率の比較線図。
図9】(a)は第2実施形態に係るネガティブブレーキ装置の断面図、(b)は(a)の要部を示す拡大断面図。
図10】第2実施形態において、クラッチ板の余裕率の算出に用いられる初期値の設定手順を示すフローチャート。
図11】(a)は、変形例2-1に係るネガティブブレーキ装置の断面図、(b)は(a)の要部を示す拡大断面図。
図12】(a)は、変形例2-2に係るネガティブブレーキ装置の断面図、(b)は(a)の要部を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るネガティブ制御方式のブレーキ装置(以下、適宜、ネガティブブレーキ装置またはブレーキ装置と略記する)を、作業機械の一例であるクレーンに適用した実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るネガティブブレーキ装置を備えたクレーンの外観側面図である。図1に示すクレーン100は、クローラクレーンであり、走行体102と、旋回装置103を介して走行体102上に旋回可能に搭載された旋回体104と、旋回体104の先端部に起伏可能に取り付けられたブーム105と、ブーム105の先端に設けられたシーブ110,111及びシーブ117,118とを有している。シーブ110及びシーブ117を経由した主巻ロープ112と、シーブ111及びシーブ118を経由した補巻ロープ113とによって、アタッチメントの一例であるバケット116が吊り下げられている。勿論、バケット116の他に、荷物等も吊り上げられる。
【0011】
旋回体104にはキャブ109が設けられている。キャブ109には、各種操作レバー(主巻操作レバー、補巻操作レバー、起伏操作レバー、走行レバー、旋回レバーなど)が設けられており、使用者はこれらの操作レバーを操作して、クレーン100の吊り荷作業や掘削作業、旋回操作、並びに走行操作を行う。なお、各種操作レバーの代わりに操作ダイヤル等を用いても良い。また、キャブ109には、クレーン100の運転状態や警告などの各種情報等を表示するための表示装置90と、表示装置90を制御するコントローラ80とが設けられている(図2参照)。
【0012】
主巻ロープ112、補巻ロープ113は旋回体104に搭載された主巻ウインチ(第1ウインチ装置)106、補巻ウインチ(第2ウインチ装置)107にそれぞれ巻回され、各ウインチ106,107の駆動によって各ロープ112,113が巻き取りまたは繰り出されて、吊り荷が昇降する。そして、バケット116を主巻ロープ112及び補巻ロープ113で吊り下げて、主巻ウインチ106と補巻ウインチ107とを同時に駆動することで、バケット116を巻下げることができる。また、荷物を吊上げまたは吊下げる場合には、主巻ウインチ106と補巻ウインチ107の一方を使用すれば良い。
【0013】
ブーム105の先端部にはペンダントロープ114が接続されており、旋回体104に搭載された起伏ウインチ108の駆動により起伏ロープ115が巻き取りまたは繰り出されると、ペンダントロープ114を介してブーム105が起伏される。
【0014】
次に、本発明の第1実施形態に係るネガティブブレーキ装置の構成について説明する。なお、上記の通り、クレーン100には、主巻ウインチ106、補巻ウインチ107、及び起伏ウインチ8が搭載されており、それぞれのウインチ106,107,108が同じ機構のネガティブブレーキ装置を備えている。そこで、以下の説明では、主巻ウインチ106のネガティブブレーキ装置について説明し、その他のネガティブブレーキ装置についての説明は省略する。
【0015】
図2は主巻ウインチの構成図、図3(a)は摩擦板の正面図、図3(b)は図3(a)に示す摩擦板のIIIb-IIIb断面図、図4(a)はネガティブブレーキ装置の断面図、図4(b)はネガティブブレーキ装置の要部を示す拡大断面図である。
【0016】
図2に示すように、主巻ウインチ106は、油圧モータ1と、ネガティブブレーキ装置2(以下、ブレーキ装置2と言う)と、減速機3と、ネガティブブレーキ装置4(以下、ブレーキ装置4と言う)と、巻取りドラム5と、制動力検出手段7(後述)と、を備える。
【0017】
主巻ウインチ106は、フリーフォール機能を備えており、油圧モータ1の一方の出力軸にブレーキ装置2が接続され、他方の出力軸(減速機3側の出力軸)にブレーキ装置4が接続されている。ブレーキ装置2,4は、非操作時において油圧モータ1にブレーキを掛けるネガティブ制御方式である。荷の停止時は、両ブレーキ装置2,4を掛かり状態(ブレーキ状態)として、両ブレーキ装置2,4が荷重を保持する。荷の巻上げ、巻下げ時には、ブレーキ装置2を解除し、ブレーキ装置4を掛かり状態として、油圧モータ1の動力を巻取りドラム5に伝達する。荷の自由落下時は、ブレーキ装置2を掛かり状態として、ブレーキ装置4の制動力を調整することにより、荷の降下速度を制御する。つまり、ブレーキ装置2はクラッチ装置として機能し、ブレーキ装置4は、荷の停止、巻上げ、及び巻下げ時はクラッチ装置として機能し、荷の自由落下時はブレーキ装置として機能する。
【0018】
なお、主巻ウインチ106は、フリーフォール機能を備えているため、ブレーキ装置2及びブレーキ装置4を備えているが、フリーフォール機能を備えていない場合には、ブレーキ装置4を備える必要はない。
【0019】
ブレーキ装置4は、湿式多板式であり、複数の摩擦板を備える。図3(a),(b)に示すように、摩擦板12は、円板状のベースプレート12aに摩擦フェーシング12bを貼り付けて構成される。この摩擦フェーシング12bには、油溝12cが形成されており、油溝12cに冷却油が流れることで、摩擦フェーシング12bが冷却される。
【0020】
図4(a),(b)に示すように、複数の摩擦板12と複数の相手板13とを回転可能に交互に重ね合わせることにより、湿式多板式のクラッチ板CPが構成される。摩擦板12のベースプレート12a及び相手板13は、金属材で構成されている。クラッチ板CPは、常時、押圧ばね(付勢部材)17により付勢されて圧接されており、押圧ばね17の付勢力を解除することで、ブレーキ装置4のブレーキ状態が解除される。なお、図示は省略するが、ブレーキ装置2についても同様に構成されている。
【0021】
図4(a)において、10は減速機3に接続される出力軸、11は出力軸10とスプライン結合されて一体で回動するカップリング、12はカップリング11とスプライン結合されて一体で回動し、かつ、軸方向に移動可能な摩擦板、13は摩擦板12と交互に重ね合わされ、ケーシング14とスプライン結合されて、軸方向に移動可能な相手板、15はケーシング14に締結され、出力軸10の軸受ハウジングを形成すると共に、相手板13の一端と当接してクラッチ板CPの押圧反力を受けるフロントカバー、16は相手板13の他端と当接して押圧ばね17のばね力をクラッチ板CPに付勢する押圧部材、18は押圧ばね17の固定側端面を形成するセカンドカバー、19は押圧部材16と締結され、セカンドカバー18の内周側で軸方向に移動可能であって、クラッチ解除シリンダを構成するピストン(連動部材)、20は出力軸10と反対側に位置して、セカンドカバー18と締結され、ピストン19のクラッチ解除側の移動量を規制するリアカバー(側壁)である。なお、リアカバー20の中央部には凹部20aが形成されている。
【0022】
セカンドカバー18には、ピストン19への油路を形成するクラッチ解除ポート18aが設けられている。このクラッチ解除ポート18aに圧油を供給することで、ピストン19及び押圧部材16が、押圧ばね17の付勢力に抗してクラッチ板CPから離れる方向(図4(a)の左方向)に移動し、クラッチ板CPの圧接状態(ブレーキ状態)を解除する。
【0023】
ここで、クラッチ板CPの圧接状態が解除される所定値以上の圧力を付与すれば、制動力は最小(全解除)となり、所定値未満の圧力では、ピストン19の推力と押圧ばね17の付勢力の差分がクラッチ板CPへの押圧力として作用し、制動力の調整が可能となる。
【0024】
なお、ケーシング14の内部は、摩擦板12の発熱を冷却する冷却油が循環している(湿式)。冷却油は冷却油入口ポート14aから供給され、摩擦フェーシング12bに形成された油溝12c(図3参照)を経由し、冷却油出口ポート14bから排出される。この時、冷却油が油溝12cを通過する抵抗などにより、冷却油入口ポート14a側の油室には、一定の内圧が発生する。
【0025】
さらに、本実施形態では、制動力に関する情報であるクラッチ板CPの圧接位置(別言すれば、摩擦フェーシング12bの摩耗量)を検出するために、制動力検出手段7が設けられている。図4(b)に示すように、制動力検出手段7は、直線変位検出器であるポテンショメータ71を備える。ポテンショメータ71は、ロッド71aの機械的ストロークを検出器本体71bの電子回路によって電気信号に変換する。なお、本実施形態におけるポテンショメータ71は、ロッド復帰型である。
【0026】
図4(b)において、72は先端側が押圧部材16と当接し、クラッチ板CPの圧接時における押圧部材16並びにピストン19の位置(ストローク位置)を検出する検出棒、73はケーシング14内部の冷却油を封止すると共に、検出棒72の後端側をロッド71aに押し当てるように検出器本体71bを固定するアダプタである。74は検出棒72を押圧部材16に押し当てるように設置した復帰ばねである。検出棒72は押圧部材16及びピストン19の変位に伴って軸方向に移動する。ポテンショメータ71は、検出棒72の移動量を検出することにより、押圧部材16並びにピストン19の現在位置を検出可能となる。即ち、ポテンショメータ71は、押圧部材16並びにピストン19の位置を検出する位置検出装置である。
【0027】
なお、図2に示すように、制動力検出手段7は、コントローラ80と電気的に接続されており、制動力検出手段7にて検出された制動力に関する情報、即ち、押圧部材16並びにピストン19の位置データ(検出値)はコントローラ80に入力される。また、コントローラ80は、表示装置(報知装置)90と電気的に接続されており、制動力検出手段7の検出値に基づいて、クラッチ板CPの余裕率(使用限界に対する摩耗の度合い)を算出して表示装置90に表示する。
【0028】
次に、コントローラ80による制御処理について説明する。図5は、コントローラによるクラッチ板の余裕率の算出と表示装置への報知の手順を示すフローチャートである。
【0029】
コントローラ80は、図示しないが、各種演算等を行うCPU、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM、および他の機器とデータを送受信する際のインタフェースである通信インタフェースを含むハードウェアと、記憶装置に記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。コントローラ80の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0030】
コントローラ80は、エンジンが始動されると、図5に示す処理を実行する。まず、コントローラ80は、クラッチ板CPが圧接状態にあるか否かを判定する(S101)。例えば、コントローラ80は、クラッチ解除ポート18aに供給される圧油の圧力(クラッチ解除シリンダの圧力)に基づいて、クラッチ板CPの圧接状態を判定する。
【0031】
ネガティブ制御方式のブレーキ装置4では、クラッチ解除シリンダの圧力が一定値(例えば、タンク圧力)以下であった場合、即ち、クラッチ解除シリンダにブレーキ解除圧力が作用していない場合、コントローラ80は、クラッチ板CPが圧接状態にあると判定できる。
【0032】
また、別の方法として、クレーン100の仕様が、エンジンの始動後(あるいは、本体電源投入後)から所定時間内、別言すればクレーン100の作業開始前において、クラッチ解除シリンダに圧力が付与されない構成の場合、その所定時間内はネガティブ制御方式のため必ずクラッチ板CPが圧接状態にある。そこで、コントローラ80は、クラッチ解除シリンダの圧力の代わりに、エンジン始動後(あるいは、本体電源投入後)からの時間が所定時間以内である場合に、クラッチ板CPが圧接状態であると判定しても良い。
【0033】
クラッチ板CPが圧接状態(即ち、制動状態)であると判定された場合(S101/Yes)、コントローラ80は、制動力検出手段7(ポテンショメータ71)の検出値を取得し(S102)、後述する初期値を参照して(S104)、クラッチ板CPの余裕率を算出する(S103)。そして、余裕率が下限(基準値/使用限界)に到達した場合(S105/Yes)には、コントローラ80は、クラッチ板CP(特に摩擦板12)の交換必要性を表示装置90を介して報知し(S106)、算出した余裕率を記憶装置に記憶する(S107)。なお、コントローラ80は、このS101~S107の処理をエンジンの始動毎に行い、余裕率の記録を蓄積する。この記録を日報として定期的に外部に出力しても良い。
【0034】
次に、S103において実行されるクラッチ板CPの余裕率の算出方法について説明する。図6は、クラッチ板の余裕率の算出に用いられる初期値(S104)の設定手順を示すフローチャートである。
【0035】
図6に示すように、使用者は、ブレーキ装置4を全解除状態にし(S104-1)、キャブ109内に設けられた初期設定ボタン85(図2参照)を押す(S104-2)。コントローラ80は、その時の制動力検出手段7(ポテンショメータ71)の検出値をピストン19の変位開始点として記憶装置に記憶する(S104-3)。例えば、制動力検出手段7からの検出値(電圧信号)が3.7Vであったとすると、その3.7Vがピストン19の変位開始点としてコントローラ80に記憶される。
【0036】
使用者は、ブレーキ装置4を掛かり状態にし(S104-4)、初期設定ボタン85を押す(S104-5)。コントローラ80は、その時の制動力検出手段7の検出値を新品時のクラッチ板CPの圧接位置として記憶装置に記憶する(S104-6)。例えば、制動力検出手段7からの検出値が2.5Vであったとすると、その2.5Vが新品時のクラッチ板CPの圧接位置(初期値)としてコントローラ80に記憶される。
【0037】
コントローラ80は、ピストン19の変位開始点からクラッチ板CPの圧接位置までの限界変位量からクラッチ板CPの余裕率を算出する。制動力検出手段7は、例えば、0~10mmが0.5V~4.5Vに対応しており、0.4V/mmが校正値となっている。上記の通り、3.7Vがピストン19の変位開始点、2.5Vが新品時のクラッチ板CPの圧接位置であり、ピストン19の変位開始点から6mm(2.4V)変位した位置がクラッチ板CPの圧接位置となった場合に、余裕率0%(使用限界位置)とし、新品時のクラッチ板CPの圧接位置を余裕率100%とする。
【0038】
この場合、3.7V-2.4V=1.3Vが使用限界位置として算出される。これに従い、新品時のクラッチ板CPの圧接位置からの許容変位量は、2.5V-1.3V=1.2Vとなる。
【0039】
今、制動力検出手段7の検出値が2.1Vであったとすれば、新品時のクラッチ板CPの圧接位置2.5Vから0.4V(1mm)変位した位置が現在のクラッチ板CPの圧接位置となり、この時のクラッチ板CPの余裕率は、
1-(0.4/1.2)×100=67%と算出される。
【0040】
本実施形態では、定期的な記録結果を経年データとしてコントローラ80の記憶装置に蓄積し、分析することで、ブレーキ装置4が所定の制動力以下となる時期を予測し、消耗部品の交換必要性を表示装置90を介して使用者に報知する。消耗部品として想定される摩擦板12は、摩擦フェーシング12bのエネルギ吸収に伴う摩耗と、圧縮永久歪みの蓄積で厚みが減少する。摩擦フェーシング12bの摩耗は、新品時から数千回の相手板13との圧接過程にて摩耗量が増加する初期なじみ段階があり、なじみが得られた後は定常摩耗領域に遷移する。また、摩耗が進行した最終段階では、摩擦フェーシング12bの油溝12cの面積が減少することによって熱負荷が上昇し、定常摩擦量が漸増する事が予想される。圧縮永久歪は、圧縮力が負荷された初期段階に大きく蓄積し、以降はフェーシング組織の圧密化と、厚み減少による圧縮作用力の低下が影響し、一定量に収束する性質を有している。
【0041】
これらの性質を考慮し、過去データから摩耗の将来線を推定するのは単純ではないが、少なくとも摩擦フェーシング12bの厚み減少量は初期段階に大きく増加し、以降緩やかになることが予想されるため、過去全データを分析範囲とした線形近似の予測では実態から外れる可能性が高い。したがって、現在から過去一定期間のデータを分析範囲とした線形近似の予測を行い、対象期間を例えば直近6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月とした図7に示す余裕率の予想線図(グラフ)を作成し、使用者に提示すれば、使用者はその期間の稼働状態を勘案してどの予想線が最も妥当性が高いかの判断ができる。
【0042】
また、上記したように、クレーン100には、主巻ウインチ106、補巻ウインチ107、及び起伏ウインチ108が搭載されている。主巻ウインチ106と補巻ウインチ107とは、共に荷を巻上げまたは巻下げ可能であり、どちらのウインチを使用するかは使用者次第である。そのため、主巻ウインチ106のブレーキ装置と補巻ウインチのブレーキ装置とでは、使用頻度に偏りが発生して、ブレーキ装置の摩耗状態にも偏りが生じる可能性がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、コントローラ80が、図8に示す余裕率の比較線図を作成し、表示装置90に表示する構成としている。こうすることで、使用者は、主巻ウインチ106と補巻ウインチ107の使用頻度に偏りがあるか否かを把握して、使用頻度の少ない方のウインチを使用することにより、両ウインチ106,107の使用頻度の平準化を図ることができ、メンテナンス間隔を延ばすことが可能となる。
【0044】
また、図4(b)に示すように、本実施形態において、制動力検出手段7は、ピストン19の外周部のうち最大外径を有する大径部19aよりも内周側、かつ複数の押圧ばね17よりも内周側に設けられるのが好ましい。制動力検出手段7は、ポテンショメータ71をアダプタ73に直列に配置した構成となっており、ピストン19の大径部19aより外周側に設置すると、制動力検出手段7が押圧ばね17と軸方向に重なるため、セカンドカバー18の端面から軸方向への突出量が大きくなり、ブレーキ装置4が軸方向に大型化してしまう。この点、本実施形態では、ピストン19の大径部19aより内周側であってリアカバー20の凹部20aに制動力検出手段7を設けているため、ポテンショメータ71の後端部が押圧ばね17と軸方向に重なることなく位置することができ、ブレーキ装置4の軸方向長さを小さくすることができる。また、クラッチ板CPと押圧部材16を挟んで反対側にある側壁としてのリアカバー20に形成された凹部20a内に制動力検出手段7が位置しているため、リアカバー20の端面からの突出量をなるべく小さくでき、好適である。
【0045】
第1実施形態の作用効果をまとめると、以下の通りである。
【0046】
制動力検出手段7が自動的にクラッチ板CPの圧接位置(摩耗量)を検出するので、ブレーキ装置4の制動力低下を定期的に確認でき、ブレーキ装置4を良好な状態で使用できる。また、クラッチ板CPを分解して点検しなくても、クラッチ板CPの摩耗量を確認できるため、ブレーキ装置4の点検作業が簡単である。さらに、制動力検出手段7が摩擦フェーシング12bの圧縮弾性変形を考慮した圧接位置を確認できるので、クラッチ板CPの摩耗点検の精度が高い。なお、クラッチ板CPの摩耗量を目視で確認する手段を備えた構成の場合、点検者が実際にブレーキ装置の設置場所まで行く必要があるが、本実施形態では自動的にクラッチ板CPの摩耗量を検出できるため、点検者が現場に行く手間が省ける。
【0047】
また、コントローラ80がクラッチ板CPの余裕率を算出し、表示装置90の表示画面を介して使用者に報知するので、使用者は容易にブレーキ装置4の状態を把握できる。しかも、図7に示すように、使用者は、表示装置90を介して、制動力低下の経年データに基づいて、消耗部品の交換時期を予測できるため、メンテナンス計画を立てやすく、便利である。
【0048】
また、図8に示すように、コントローラ80は、主巻ウインチ106のブレーキ装置と補巻ウインチ107のブレーキ装置のうち何れのクラッチ板CPが消耗しているかを比較して、その比較結果を表示装置90に表示しているため、使用者は、この画面を見て主巻ウインチ106と補巻ウインチ107の使用頻度を平準化でき、両ウインチのブレーキ装置の長寿命化を図ることができる。
【0049】
また、制動力検出手段7をピストン19の大径部19aより内周側に配置して、ポテンショメータ71の後端部がリアカバー20の凹部20a内に位置する構成としたので、制動力検出手段7を設けるによるブレーキ装置4の大型化を防げる。よって、既存のクレーンにそのまま制動力検出手段7を設けたブレーキ装置4を搭載できる。
【0050】
ここで、ブレーキ装置にはポジティブ制御方式もあるが、ポジティブ制御方式においては、制動力はブレーキ制御圧力の大小によって決定される。そのため、仮に摩擦フェーシングが摩耗しても、残存している限り、クラッチ板を圧接する力を大きくすることで、制動力を維持できる。
【0051】
一方、本実施形態のようにネガティブ制御方式の場合、摩擦フェーシング12bの厚みの減少によって押圧ばね17のセット寸法が伸びると、その分、制動力が低下してしまう。そのため、ネガティブ制御方式では、制動力の低下を正確に把握することは重要である。その点、本実施形態のように、制動力検出手段7によりクラッチ板CPを圧接する押圧部材16または押圧部材16と連動するピストン19の位置を自動的に検出できる構成にすれば、ブレーキ装置4の制動力の低下を正確に把握できるので好ましい。
【0052】
(第2実施形態)
図9(a)は第2実施形態に係るネガティブブレーキ装置の断面図、図9(b)は第2実施形態に係るネガティブブレーキ装置の要部を示す拡大断面図である。
【0053】
第2実施形態に係るネガティブブレーキ装置240(以下、ブレーキ装置240)では、第1実施形態に示す制動力検出手段7に併設して目視確認手段であるインジケータ6を備えた点に特徴がある。以下、この特徴について詳しく説明し、第1実施形態と重複する構成については、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0054】
インジケータ6は、目盛を目視で確認することで、クラッチ板CPの圧接位置を把握でき、摩擦フェーシング12bの大まかな摩耗量を知ることができる。
【0055】
インジケータ6の構成について詳しく説明する。図9(b)において、61は押圧部材16と当接し、押圧部材16並びにピストン19の位置を検出する検出棒、62はケーシング14内部の冷却油を封止すると共に、検出棒61の後端部が貫通するアダプタ、63は検出棒61を押圧部材16に押し当てるように設置した復帰ばね、をそれぞれ示す。検出棒61の後端部はアダプタ62から露出しており、検出棒61の軸方向の移動に伴って、検出棒61のアダプタ62からの突出量が変化する。点検者は、検出棒61の突出量を目視で確認することにより、クラッチ板CPの圧接位置を確認することができる。本実施形態では、検出棒61の後端部がアダプタ62の端面と面一になったときが、クラッチ板CPを交換する目安となっている。なお、インジケータ6は、制動力検出手段7より径方向の外側の位置に設けられているが、その位置は任意である。
【0056】
第2実施形態では、クラッチ板CPの圧接時における検出棒61の突出量を目視確認することで、ブレーキ装置240の制動力低下を大まかに知ることができる。因みに、インジケータ6を構成する部品において、復帰ばね63の設置は必須ではないが、冷却油の通過抵抗による内圧によって、検出棒61と押圧部材16との接触が切り離されることを防止するために、復帰ばね63を設置した方が好ましい。
【0057】
なお、図9(a),(b)に示すように、第2実施形態では、検出棒61は、制動力検出手段7の検出棒72と同様に押圧部材16に当接させる構成としているが、ピストン19に当接させるようにしても良い。
【0058】
以上説明したように、第2実施形態では、インジケータ6と制動力検出手段7とを併設したので、第1実施形態と同様の作用効果を奏することに加えて、ポテンショメータ71による圧接位置の自動検出と、インジケータ6による目視確認の両方を行うことができ、便利である。
【0059】
ここで、第2実施形態では、インジケータ6を備えたことにより、第1実施形態と異なる初期値を用いてクラッチ板CPの余裕率を算出できる。以下、第2実施形態におけるクラッチ板CPの余裕率の算出方法について説明する。図10は、第2実施形態において、クラッチ板の余裕率の算出に用いられる初期値の設定手順を示すフローチャートである。
【0060】
図10に示すように、使用者は、クラッチ板CPの圧接時、即ち、ブレーキ装置240を解除していない初期状態におけるインジケータ6の突出量を実測し(S104-11)、コントローラ80の図示しない入力部を操作して、実測したインジケータ6の突出量を初期値として登録する(S104-12)。例えば、インジケータ6の突出量が3mmの場合、使用者はコントローラ80に突出量3.0と数値入力する。そして、その時の制動力検出手段7の検出値(例えば、2.5V)を新品時のクラッチ板CPの圧接位置として記憶する(S104-13)。
【0061】
第2実施形態では、コントローラ80は、インジケータの突出量=使用限界までの移動可能量として余裕率を算出する。
【0062】
制動力検出手段7は、例えば、0~10mmが0.5V~4.5Vに対応しており、0.4V/mmが校正値となっている。上記の通り、初期値として2.5V(即ち、インジケータ突出量3.0mm)が設定されたとすると、コントローラ80は、この状態を余裕率100%と判定する。そして、経年変化により制動力検出手段7の検出値が2.1Vであったとすれば、2.5V-2.1V=0.4Vとなり、0.4Vに対応する1mmだけクラッチ板CPは摩耗したことになる。
【0063】
よって、この時の余裕率は、
1-(1.0/3.0)×100=67%と算出される。
【0064】
このように、第2実施形態では、インジケータ6と制動力検出手段7の両方を備えているため、余裕率の算出において初期値の設定が簡単となる。
【0065】
(変形例2-1)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。図11(a)は、変形例2-1に係るネガティブブレーキ装置の断面図、図11(b)は変形例2-1に係るネガティブブレーキ装置の要部を示す拡大断面図である。
【0066】
変形例2-1に係るネガティブブレーキ装置240-1(以下、ブレーキ装置240-1)では、インジケータ6と制動力検出手段7の部品の一部を共通化した点に特徴がある。具体的には、インジケータ6の検出棒61と制動力検出手段7の検出棒72とを共通部品とし、検出棒61の代わりに検出棒72を用いている。そのために、ピストン19から内周側に突出して検出棒72と当接する接触部位19bを設ける構成としている。この構成であっても、検出棒72がピストン19の変位と連動して軸方向に移動するので、クラッチ板CPの摩耗量を目視確認するインジケータ6としての機能は損なわれない。
【0067】
この変形例2-1によれば、インジケータ6の検出棒61とポテンショメータ71の検出棒72とを共通部品とすることで、部品点数を削減でき、低コスト化を実現できる。また、部品点数が減ることで、ブレーキ装置240-1の組立も簡単である。
【0068】
(変形例2-2)
図12(a)は、変形例2-2に係るネガティブブレーキ装置の断面図、図12(b)は変形例2-2に係るネガティブブレーキ装置の要部を示す拡大断面図である。
【0069】
変形例2-2に係るネガティブブレーキ装置240-2(以下、ブレーキ装置240-2)では、変形例2-1と同様に、インジケータ6の検出棒61と制動力検出手段7の検出棒72とを共通部品とし、検出棒61の代わりに検出棒72を用いている。そのために、押圧部材16から軸方向に突出して検出棒72と当接する接触部位16aを設ける構成としている。この構成であっても、検出棒72が押圧部材16の変位と連動して軸方向に移動するので、クラッチ板CPの摩耗量を目視確認するインジケータ6としての機能は損なわれない。
【0070】
この変形例2-2によれば、インジケータ6の検出棒61とポテンショメータ71の検出棒72とを共通部品とすることで、部品点数を削減でき、低コスト化を実現できる。また、部品点数が減ることで、ブレーキ装置240-2の組立も簡単である。
【0071】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0072】
また、クレーンの一例として、クローラクレーンを例示したが、本発明は、これに限らず、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等の他の移動式クレーンに加えて、タワークレーン、天井クレーン、ジブクレーン、引込みクレーン、スタッカークレーン、門型クレーン、アンローダ、アースドリル等の基礎機械等のあらゆるクレーンに適用可能である。また、本発明はクレーン以外の作業機械、例えば、道路機械や油圧ショベル、ホイールローダ等にも適用できる。
【0073】
また、本発明のネガティブブレーキ装置は、ウインチ以外にも、例えば、旋回装置、走行装置のブレーキ装置に適用しても良いし、また、パーキングブレーキに適用しても良い。
【0074】
また、上記した実施形態では、キャブ109内にコントローラ80及び表示装置90を設け、制動力検出手段7からの検出値に基づいてクラッチ板CPの余裕率を算出し、表示装置90に表示する構成例を説明したが、この構成に代えて、制動力検出手段7で検出した検出値を外部(例えば、管理室)に通信回線を介して出力し、外部に設けられたコントローラにてクラッチ板の余裕率を算出し、外部に設けられた表示装置に表示し、あるいは作業日報として紙媒体に印字しても良い。このとき、図7及び図8に示すようなグラフを現在の余裕率と共に紙媒体に印字しても良い。
【0075】
また、クラッチ板CPの余裕率の計算方法は上記した実施形態に限定されない。クラッチ板CPの使用限界に対してクラッチ板CPがどの程度劣化しているか算出できる計算手法であれば良い。また、余裕率の表示態様も任意で良く、百分率以外の表示態様で表示されていても良い。
【0076】
また、制動力検出手段7は、ブレーキ装置の制動力に関する情報を検出できれば良く、例えば、クラッチ板CPの押圧時におけるクラッチ板CPの幅、押圧ばね17の長さ、押圧ばね17の先端位置など、摩擦板12の摩耗に応じて変化するパラメータを検出し、それを制動力に関する情報として検出すれば良い。また、制動力検出手段7が押圧ばね17の押圧力を検出する構成であれば、制動力検出手段7は、押圧力を検出するロードセル等のセンサで構成されても良い。ただし、制動力に関する情報を検出する手段が、押圧部材16並びにピストン19というブレーキ装置の後方側(出力軸10と反対側)に位置する部材の位置を検出する位置検出装置であれば、押圧部材16並びにピストン19の移動を測定するだけで良いので、制動力検出手段の構成を簡易にすることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 油圧モータ
2 ブレーキ装置
3 減速機
4 ブレーキ装置
5 巻取りドラム(ウインチドラム)
6 インジケータ(目視確認手段)
7 制動力検出手段
10 出力軸
12 摩擦板
12a ベースプレート
12b 摩擦フェーシング
12c 油溝
13 相手板
14 ケーシング
14a 冷却油入口ポート
14b 冷却油出口ポート
15 フロントカバー
16 押圧部材
16a 接触部位
17 押圧ばね(付勢部材)
18 セカンドカバー
18a クラッチ解除ポート
19 ピストン(連動部材)
19a ピストン大径部
19b 接触部位
20 リアカバー(側壁)
20a 凹部
61 検出棒(目視確認手段)
62 アダプタ
63 復帰ばね
71 ポテンショメータ(直線変位検出器/位置検出装置)
71a ロッド
71b 検出器本体
72 検出棒(制動力検出手段)
73 アダプタ
74 復帰ばね
80 コントローラ
85 初期設定ボタン
90 表示装置(報知装置)
100 クレーン
102 走行体
103 旋回装置
104 旋回体
105 ブーム
106 主巻ウインチ(第1ウインチ装置/ウインチ装置)
107 補巻ウインチ(第2ウインチ装置/ウインチ装置)
108 起伏ウインチ(ウインチ装置)
109 キャブ
240,240-1,240-2 ブレーキ装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12