IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-情報処理装置 図1
  • 特開-情報処理装置 図2
  • 特開-情報処理装置 図3
  • 特開-情報処理装置 図4
  • 特開-情報処理装置 図5
  • 特開-情報処理装置 図6
  • 特開-情報処理装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150495
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/0969 20060101AFI20231005BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20231005BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20231005BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
G08G1/0969
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059624
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉持 拓明
(72)【発明者】
【氏名】白石 哲夫
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC04
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL09
5H181MC18
(57)【要約】
【課題】カメラで目標物を検知できなかった場合であっても、目標物の位置情報に基づいた処理を行うことの可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る情報処理装置は、判定部、算出部および推定部を備えている。判定部は、外部との通信により取得した車両位置情報と、ステレオ画像に基づいて生成された距離画像から得られた第1目標物までの第1距離情報とに基づいて、地図情報の中に第1目標物に相当する物が含まれているか否かを判定する。算出部は、地図情報の中に第1目標物に相当する物が含まれていると判定された場合に、地図情報に基づいて、第1目標物と、第1目標物と所定の関係を持つ第2目標物との第2距離情報を算出する。推定部は、第1距離情報および第2距離情報に基づいて、第2目標物の位置情報を推定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオ画像に基づいて生成された距離画像に基づいて、第1目標物までの第1距離情報を検出する検出部と、
外部との通信により取得した車両位置情報と、前記検出部により検出された前記第1距離情報とに基づいて、地図情報の中に前記第1目標物に相当する物が含まれているか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記地図情報の中に前記第1目標物に相当する物が含まれていると判定された場合に、前記地図情報に基づいて、前記第1目標物と、前記第1目標物と所定の関係を持つ第2目標物との第2距離情報を算出する算出部と、
前記検出部により検出された前記第1距離情報と、前記算出部により算出された前記第2距離情報とに基づいて、前記第2目標物の位置情報を推定する推定部と
を備えた
情報処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記第1距離情報と、過去に算出済みの前記第2距離情報とに基づいて、前記第2目標物の位置情報を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記地図情報において、前記第1目標物と前記第2目標物とが互いに関連付けられている
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1目標物は、ステレオカメラによって相対的に撮像容易な目標物であり、
前記第2目標物は、ステレオカメラによって相対的に撮像困難な目標物である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1目標物は、信号機であり、
前記第2目標物は、停止線である
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記車両位置情報および前記第1距離情報から得られる、前記地図情報の中の前記第1目標物の位置から所定の閾値の範囲内に、前記第1目標物に相当する物が含まれているか否かを判定する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記第1距離情報が短くなるにつれて前記閾値を小さくする
請求項6に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを用いて車両の前方を撮像し、それにより得られた画像に基づいて、目標物を検知する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-068317号公報
【特許文献2】特開2013-184664号公報
【特許文献3】特開2021-033772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、目標物が路面に描かれた物(例えば、停止線)である場合、目標物が経年変化で見えにくくなったり、物の陰に隠れたり、雪などで覆われたりしていることがある。その場合、カメラでは目標物を検知することが難しい。そのため、カメラで目標物を検知できなかったときには、目標物の位置情報に基づいた処理を行うことができないという問題があった。従って、カメラで目標物を検知できなかった場合であっても、目標物の位置情報に基づいた処理を行うことの可能な情報処理装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る情報処理装置は、検出部、判定部、算出部および推定部を備えている。検出部は、ステレオ画像に基づいて生成された距離画像に基づいて、第1目標物までの第1距離情報を検出する。判定部は、外部との通信により取得した車両位置情報と、検出部により検出された第1距離情報とに基づいて、地図情報の中に第1目標物に相当する物が含まれているか否かを判定する。算出部は、判定部により、地図情報の中に第1目標物に相当する物が含まれていると判定された場合に、地図情報に基づいて、第1目標物と、第1目標物と所定の関係を持つ第2目標物との第2距離情報を算出する。推定部は、検出部により検出された第1距離情報と、算出部により算出された第2距離情報とに基づいて、第2目標物の位置情報を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施の形態に係る走行制御システムの概略構成例を表す図である。
図2図1の走行制御システムの機能ブロック例を表す図である。
図3】停止線位置の推定について説明するための図である。
図4】停止線位置の推定について説明するための図である。
図5】停止線位置の推定手順の一例を表す図である。
図6】前方に複数の停止線が存在するときの停止線位置の推定について説明するための図である。
図7】複数の走行車線が存在するときの停止線位置の推定について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0008】
<1.実施の形態>
[構成例]
図1図2は、本開示の一実施の形態に係る走行制御システム1の概略構成例を表したものである。走行制御システム1は、例えば、図1図2に示したように、複数の車両100にそれぞれ搭載された走行制御装置10と、複数の走行制御装置10が無線通信を介して接続されるネットワーク環境NWに設けられる管制装置200とを備えている。走行制御装置10が本開示の「情報処理装置」の一具体例に相当する。
【0009】
管制装置200は、各車両100の走行制御装置10から送信される道路地図情報を逐次統合して更新し、更新した道路地図情報を各車両100に送信する。管制装置200は、例えば、道路地図情報統合_ECU201と、送受信機202とを有している。
【0010】
道路地図境情報統合_ECU201は、送受信機202を通じて複数の車両100から収集した道路地図情報を統合して、道路上の車両を取り巻く道路地図情報を逐次更新する。道路地図情報は、例えば、ダイナミックマップからなり、主として道路情報を構成する静的情報及び準静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報及び動的情報とを有している。
【0011】
静的情報は、例えば、道路や道路上の構造物、車線情報、路面情報、恒久的な規制情報等、1ヶ月以内の更新頻度が求められる情報によって構成されている。静的情報に含まれる構造物には、例えば、信号機、交差点、道路標識、停止線などが含まれている。静的情報には、さらに、例えば、互いに関連性の高い複数の構造物に対して、関連付け(紐付け)がなされている。例えば、ある交差点と、その交差点に付随して設けられた、信号機、道路標識、停止線とが互いに関連付けられている(紐づけられている)。道路に対して複数の車線が設けられている場合には、停止線は、車線ごとに紐付けられていることもある。静的情報に含まれる各構造物には、ダイナミックマップにおける位置座標(位置情報)が付与されている。
【0012】
準静的情報は、例えば、道路工事やイベント等による交通規制情報、広域気象情報、渋滞予測等、1時間以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。準動的情報は、例えば、観測時点における実際の渋滞状況や走行規制、落下物や障害物等、一時的な走行障害状況、実際の事故状態、狭域気象情報など、1分以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0013】
動的情報は、例えば、移動体の間で送信・交換される情報や現在示されている信号の情報、交差点内の歩行者・自転車情報、交差点を直進する車両情報等、1秒単位での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0014】
このような道路地図情報は、各車両100から次の情報を受信するまでの周期で維持・更新され、更新された道路地図情報は送受信機202を通じて各車両100に適宜送信される。
【0015】
走行制御装置10は、車両100の周囲の走行環境を認識するためのユニットとして、走行環境認識ユニット11及びロケータユニット12を有している。また、走行制御装置10は、走行制御ユニット(以下、「走行_ECU」と称す)22と、エンジン制御ユニット(以下、「E/G_ECU」と称す)23と、パワーステアリング制御ユニット(以下、「PS_ECU」と称す)24と、ブレーキ制御ユニット(以下、「BK_ECU」と称す)25とを有している。これら各制御ユニット22~25は、走行環境認識ユニット11及びロケータユニット12と共に、CAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を介して接続されている。
【0016】
走行_ECU22は、例えば、運転モードに応じて車両100を制御する。運転モードとしては、例えば、手動運転モードと、走行制御モードとが挙げられる。手動運転モードとは、ドライバによる保舵を必要とする運転モードであり、例えば、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両を走行させる運転モードである。走行制御モードとは、ドライバによる運転操作において、車両100(自車両)の周囲にいる歩行者や車両などの安全性を高めるためにドライバをサポートする運転モードである。走行_ECU22は、走行制御モードにおいて、例えば、交差点に車両100(自車両)が近づいたときに、その交差点に設けられた信号機が青から黄色、そして赤色に変化したときに、車両100(自車両)がその交差点付近にある停止線で停止するよう、車両100を制御する。走行制御モードにおける詳細な処理内容については、後に詳述する。走行_ECU22が、本開示の「判定部」「算出部」「推定部」の一具体例に相当する。
【0017】
E/G_ECU23の出力側には、スロットルアクチュエータ27が接続されている。このスロットルアクチュエータ27は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものであり、E/G_ECU23からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。
【0018】
PS_ECU24の出力側には、電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28は、ステアリング機構にモータの回転力で操舵トルクを付与するものであり、自動運転では、PS_ECU24からの駆動信号により電動パワステモータ28を制御動作させることで、現在の走行車線の走行を維持させる車線中央維持制御、および自車両を隣接車線へ移動させる車線変更制御(追越制御などのための車線変更制御)が実行される。
【0019】
BK_ECU25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するもので、BK_ECU25からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ29が駆動されると、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対してブレーキ力が発生し、強制的に減速される。
【0020】
走行環境認識ユニット11は、例えば、車両100内前部の上部中央に固定されている。この走行環境認識ユニット11は、メインカメラ11aおよびサブカメラ11bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)11cと、走行環境検出部11dとを有している。
【0021】
メインカメラ11aおよびサブカメラ11bは、車両100の周辺の実空間をセンシングする自律センサである。メインカメラ11aおよびサブカメラ11bは、例えば、車両100の、幅方向における中央部分を挟んで左右対称な位置に配置され、車両100の前方を異なる視点からステレオ撮像する。
【0022】
IPU11cは、メインカメラ11aおよびサブカメラ11bで撮像することにより得られた車両100前方の一対のステレオ画像に基づいて、対応する対象の位置のズレ量から求めた距離画像を生成する。
【0023】
走行環境検出部11dは、例えば、IPU11cから受信した距離画像に基づき、車両100周辺の道路を区画する車線区画線を求める。走行環境検出部11dは、例えば、さらに、車両100が走行する走行路(走行レーン)の左右を区画する区画線の道路曲率[1/m]、および左右区画線間の幅(車幅)を求める。走行環境検出部11dは、さらに、例えば、距離画像に対して所定のパターンマッチングなどを行い、車線や、車両100の周辺に存在する構造物等の立体物を検出する。
【0024】
ここで、走行環境検出部11dにおける立体物の検出では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と車両100(自車両)との相対速度などの検出が行われる。検出対象の立体物としては、例えば、信号機、交差点、道路標識、停止線、他の車両、歩行者などが挙げられる。立体物が本開示の「第1目標物」である場合、立体物までの距離が、本開示の「第1距離情報」となる。走行環境検出部11dが、本開示の「検出部」の一具体例に相当する。走行環境検出部11dは、例えば、検出した立体物の情報を走行_ECU22に出力する。
【0025】
ロケータユニット12は、道路地図上の車両100位置(自車位置)を推定するものであり、自車位置を推定するロケータ演算部13を有している。このロケータ演算部13の入力側には、車両100の位置(自車位置)を推定するに際して必要とするセンサ類が接続されている。そのようなセンサ類として、例えば、加速度センサ14、車速センサ15、ジャイロセンサ16、GNSS受信機17などが含まれている。加速度センサ14は、車両100の前後加速度を検出する。車速センサ15は、車両100の速度を検出する。ジャイロセンサ16は、車両100の角速度または角加速度を検出する。GNSS受信機17は、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。また、ロケータ演算部13には、管制装置200との間で情報の送受信を行うとともに、他の車両100との間で情報の送受信を行うための送受信機18が接続されている。
【0026】
また、ロケータ演算部13には、高精度道路地図データベース19が接続されている。高精度道路地図データベース19は、HDDなどの大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、例えば、道路地図情報統合_ECU201に含まれる道路地図情報と同様に、主として道路情報を構成する静的情報および準静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報および動的情報とを有している。
【0027】
ロケータ演算部13は、例えば、地図情報取得部13aと、車両位置推定部13bと、走行環境認識部13cとを有している。
【0028】
車両位置推定部13bは、GNSS受信機17で受信した測位信号に基づき車両100(自車両)の位置座標を取得する。この位置座標が本開示の「外部との通信により取得した車両位置情報」の一具体例に相当する。また、車両位置推定部13bは、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を推定する。地図情報取得部13aは、車両位置推定部13bで取得した車両100(自車両)の位置座標に基づき、車両100(自車両)を含む所定の範囲の地図情報を高精度道路地図データベース19に格納されている地図情報から取得する。
【0029】
車両位置推定部13bは、トンネル内走行などのようにGNSS受信機17の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境において、車速センサ15で検出した車速、ジャイロセンサ16で検出した角速度、および加速度センサ14で検出した前後加速度に基づいて自車位置を推定する自律航法に切換えて、道路地図上の自車位置を推定する。
【0030】
車両位置推定部13bは、上述のようにGNSS受信機17で受信した測位信号或いはジャイロセンサ16等で検出した情報等に基づいて道路地図上の車両100の位置(自車位置)を推定すると、推定した道路地図上の自車位置に基づき、車両100(自車両)が走行中の走行路の道路種別等を判定する。
【0031】
走行環境認識部13cは、送受信機18を通じた外部通信(路車間通信、および車車間通信)により取得した道路地図情報を用い、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報を最新の状態に更新する。この情報更新は、静的情報のみならず、準静的情報、準動的情報、および動的情報についても行われる。これにより、道路地図情報は、車外との通信により取得した道路情報及び交通情報を含んで構成され、道路上を走行する車両等の移動体の情報が略リアルタイムで更新される。
【0032】
走行環境認識部13cは、走行環境認識ユニット11により認識した走行環境情報に基づいて道路地図情報の検証を行い、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報を最新の状態に更新する。この情報更新は、静的情報のみならず、準静的情報、準動的情報、及び、動的情報についても行われる。これにより、走行環境認識ユニット11により認識した道路上を走行する車両等の移動体の情報については、リアルタイムで更新される。
【0033】
そして、このように更新された道路地図情報は、送受信機18を通じた路車間通信及び車車間通信により、管制装置200および車両100(自車両)の周辺車両等に対して送信される。
【0034】
さらに、走行環境認識部13cは、更新された道路地図情報のうち、車両位置推定部13bにおいて推定した自車位置を含む所定の範囲の地図情報を、自車位置(車両位置情報)とともに、走行_ECU22に出力する。
【0035】
次に、走行_ECU22について詳細に説明する。
【0036】
図3は、停止線位置の推定について説明するための図である。図3には、車両100(自車両)を含む、車両100(自車両)前方の道路状況が例示されている。図3において、車両100(自車両)は、走行制御装置10を備えており、片側1車線の道路を走行している。車両100(自車両)の前方には、交差点があり、その交差点には、信号機および停止線が設けられている。図3において「CAM」とは、CAMに隣接して記載された位置情報がステレオカメラから得られた画像データに基づいて得られた位置情報であることを指している。図3において「MAP」とは、MAPに隣接して記載された位置情報が高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報に含まれる位置情報であることを指している。
【0037】
車両100(自車両)に設けられたステレオカメラは、車両100(自車両)の前方を撮像し、それにより得られたステレオ画像をIPU11cに出力する。ステレオ画像には、少なくとも、交差点と、その交差点に対応して設けられた信号機TL(第1目標物)および停止線SL(第2目標物)が含まれている。信号機TLは、停止線SLと比べると、ステレオカメラによって相対的に撮像容易な目標物である。また、停止線SLは、信号機TLと比べると、ステレオカメラによって相対的に撮像困難な目標物である。
【0038】
図3に示したように、停止線が視認可能な道路状況の場合には、ステレオ画像内においても、停止線が視認可能な状態で含まれている可能性が高い。この場合には、走行環境検出部11dは、停止線を直接、検出することができる。このとき、走行_ECU22は、走行環境検出部11dで検出した停止線SLまでの距離と、走行環境認識部13cから取得した地図情報および自車位置(車両位置情報)とに基づいて、停止線SLの位置(Xc1,Yc1)を取得してもよい。ここで、Xc1は、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報における経度情報である。Yc1は、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報における緯度情報である。
【0039】
しかし、例えば、図4に示したように、停止線SLが視認できない道路状況の場合には、走行環境検出部11dは、ステレオ画像内で停止線SLを検出することができない可能性が高い。走行_ECU22は、そのような状況を想定して、走行環境検出部11dから停止線SLの情報を取得できない場合であっても、停止線位置を推定することの可能な機能を備えている。なお、図4において「EST」とは、ESTに隣接して記載された位置情報が高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報の位置情報とは異なる情報を用いて推定された位置情報であることを指している。以下に、図5を用いて、走行_ECU22による、停止線位置の推定手順について説明する。
【0040】
図5は、停止線位置の推定手順の一例を表したものである。まず、ステレオカメラは、ステレオ画像を取得し、IPU11cに出力する。IPU11cは、ステレオカメラで取得したステレオ画像に基づいて距離画像を生成し、走行環境検出部11dに出力する。走行環境検出部11dは、IPU11cで生成された距離画像に対して、所定のパターンマッチングなどを行い、信号機TLを検出する(ステップS101)。なお、走行環境検出部11dは、上記ステレオ画像および上記距離画像の少なくとも一方に対して、所定のパターンマッチングを行うことで、信号機TLを検出してもよい。
【0041】
ステップS101において信号機TLを検出することができた場合(ステップS102;Y)、走行環境検出部11dは、車両100(自車両)から信号機TLまでの距離D1を算出する(ステップS103)。走行環境検出部11dは、例えば、上記距離画像に基づいて距離D1を算出する。走行環境検出部11dは、距離D1を信号機TLの識別子と対応付けて走行_ECU22に出力する。
【0042】
走行_ECU22は、走行環境認識部13cから、車両位置推定部13bにおいて推定した自車位置を含む所定の範囲の地図情報および自車位置(車両位置情報)を取得する。走行_ECU22は、走行環境検出部11dから取得した距離D1および信号機TLの識別子と、走行環境認識部13cから取得した地図情報および自車位置(車両位置情報)とに基づいて、信号機TLのマッチングを行う(ステップS105)。
【0043】
具体的には、走行_ECU22は、走行環境認識部13cから取得した地図情報の中に、走行環境認識部13cで検出した信号機TLに相当する物が含まれているか否かを判定する。例えば、走行_ECU22は、走行環境認識部13cから取得した地図情報から、自車位置(車両位置情報)から距離D1離れた位置(xb1,yb1)を、ステレオカメラで取得した信号機TLの位置として取得する。ここで、xb1は、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報における経度情報である。yb1は、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報における緯度情報である。
【0044】
続いて、走行_ECU22は、走行環境認識部13cから取得した地図情報において、信号機TLの位置(xb1,yb1)から所定の距離(閾値)の範囲内に、信号機TLに相当する物が含まれているか否かを判定する。例えば、走行_ECU22は、走行環境認識部13cから取得した地図情報において、上述の範囲内に、位置(Xb1,Yb1)の信号機TLを検出したときには、その位置(Xb1,Yb1)を、走行環境認識部13cから取得した地図情報における信号機TLの位置として取得する。ここで、Xb1は、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報における経度情報である。Yb1は、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報における緯度情報である。
【0045】
走行_ECU22は、判定に用いる「所定の距離」を、走行環境検出部11dから取得した距離D1の大きさに関係なく一定値としてもよい。走行_ECU22は、判定に用いる「所定の距離」を、走行環境検出部11dから取得した距離D1が時間とともに短くなるにつれて小さくしてもよい。走行_ECU22は、判定に用いる「所定の距離」を、距離D1が短くなるにつれて連続的に(滑らかに)小さな値に変化させてもよい。走行_ECU22は、判定に用いる「所定の距離」を、距離D1が短くなるにつれて断続的(段階的)に小さな値に変化させてもよい。このように「所定の距離」を変化させるのは、車両100(自車両)が、信号機TLに近づくにつれて、より正確なマッチングを行いたいためである。
【0046】
信号機TLのマッチングができた場合(ステップS106;Y)、走行_ECU22は、位置(Xb1,Yb1)の信号機TLに対応する停止線SLの位置情報(Xc1,Yc1)を、走行環境認識部13cから取得した地図情報から取得する(ステップS107)。このとき、走行_ECU22は、位置(Xb1,Yb1)の信号機TLに対応する停止線SLの位置(Xc1,Yc1)を取得できた場合には(ステップS108;Y)、信号機TLと停止線SLとの相対距離D2(第2距離情報)を、走行環境認識部13cから取得した地図情報に基づいて算出する(ステップS109)。具体的には、走行_ECU22は、信号機TLの位置(Xb1,Yb1)と、停止線SLの位置(Xc1,Yc1)とを用いて、相対距離D2を算出する。
【0047】
走行_ECU22は、自車位置(車両位置情報)、距離D1および相対距離D2を用いて、停止線SLの位置(xc1,yc1)を推定する(ステップS110)。なお、図4に示したように、停止線SLが視認できない道路状況の場合、つまり、ステレオカメラで得られた画像データからは停止線SLが検出できない場合には、走行_ECU22は、停止線SLの位置(Xc1,Yc1)を取得できていない可能性が高い。そのような場合に、走行_ECU22は、停止線SLの位置情報として、推定により得られた位置(xc1,yc1)を用いる。
【0048】
一方、信号機TLのマッチングができなかった場合(ステップS106;N)、または、位置(Xb1,Yb1)の信号機TLに対応する停止線SLの位置(Xc1,Yc1)を取得できなかった場合には(ステップS108;Y)には、走行_ECU22は、過去に相対距離D2を算出済みか否か判定する(ステップS111)。その結果、過去に相対距離D2を算出済みだった場合(ステップS111;Y)には、走行_ECU22は、過去に算出した相対距離D2と、自車位置(車両位置情報)と、距離D1とを用いて、停止線SLの位置(xc1,yc1)を推定する(ステップS110)。なお、過去に相対距離D2を算出したことがなかった場合(ステップS111;N)には、走行_ECU22は、停止線SLの位置推定を終了する。
【0049】
[効果]
次に、本開示の一実施の形態に係る走行制御システム1の効果について説明する。
【0050】
本実施の形態では、車両100(自車両)の位置座標と、ステレオ画像に基づいて生成された距離画像から得られた信号機TLまでの距離D1とに基づいて、地図情報の中に信号機TLに相当する物が含まれているか否かが判定される。地図情報の中に信号機TLに相当する物が含まれていると判定された場合に、地図情報に基づいて、信号機TLと、信号機TLと所定の関係を持つ停止線SLとの相対距離D2が算出される。距離D1と、相対距離D2とに基づいて、停止線SLの位置情報が推定される。このように、本実施の形態では、停止線SLの位置が、ステレオ画像に基づいて算出されず、地図情報に基づいて算出した相対距離D2を用いて算出される。これにより、ステレオ画像で停止線SLを検知できなかった場合であっても、停止線SLの位置を推定により求めることができる。その結果、停止線SLの位置情報に基づいた処理を行うことができる。
【0051】
本実施の形態では、地図情報において、信号機TLと停止線SLとが互いに関連付けられている。これにより、地図情報を参照するだけで、検出された信号機TLに対応する停止線SLの位置を知ることができるので、少ない演算量で、停止線SLの位置を推定することができる。
【0052】
本実施の形態では、走行環境認識部13cから取得した地図情報において、信号機TLの位置(xb1,yb1)から所定の距離の範囲内に、信号機TLに相当する物が含まれているか否かが判定される。このような判定方法を用いることで、ステレオカメラから得られた信号機TLの位置(xb1,yb1)の精度を考慮して、地図情報に含まれる信号機TLを検出することができる。
【0053】
本実施の形態では、上記の判定方法において、距離D1が短くなるにつれて所定の距離(閾値)が小さくなる。このように所定の距離(閾値)を変化させることで、車両100(自車両)が、信号機TLに近づくにつれて、地図上での信号機TLの位置を精度よく検出することができる。
【0054】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0055】
[変形例A]
上記実施の形態において、例えば、図6に示したように、車両100の前方に、複数の停止線が存在する場合があるとする。この場合、走行_ECU22は、信号機TLに対応する停止線SLとして、相対的に手前の停止線を選択してしまう可能性がある。しかし、走行環境認識部13cから取得した地図情報において、相対的に手前の停止線は、信号機TLに対応する停止線SLとして関連付けられていない。そのため、走行_ECU22は、走行環境認識部13cから取得した地図情報に含まれる、信号機TLとの対応関係についての情報を用いることで、信号機TLに対応する停止線SLとして、相対的に手前の停止線ではなく、相対的に遠方の停止線を正しく選択することができる。
【0056】
なお、走行環境認識部13cから取得した地図情報において、信号機TLに対応する停止線SLがそもそも規定されていない可能性もある。例えば、信号機TLの新設や移設に際して、信号機TLとの対応関係についての情報が地図情報に盛り込まれ損ねた場合に、そのような可能性が発生する。そこで、走行環境検出部11dにおいて、信号機TLの手前に複数の停止線が検出された場合には、走行_ECU22は、走行環境検出部11dで検出された、信号機TLの手前に存在する複数の停止線のうち、信号機TLに最も近い停止線を、信号機TLに対応する停止線SLとして選択するようにしてもよい。
【0057】
[変形例B]
上記実施の形態および変形例Aにおいて、例えば、図7に示したように、車両100(自車両)が複数の車線(走行レーン)のうちの1つの車線(走行レーン)を走行している場合があるとする。この場合、走行_ECU22は、信号機TLに対応する停止線SLとして、車両100(自車両)が走行している車線(走行レーン)とは異なる車線(走行レーン)の停止線を選択してしまう可能性がある。そこで、走行_ECU22は、走行環境認識部13cから取得した地図情報に含まれる、信号機TLとの対応関係に含まれる車線(走行レーン)についての情報を用いることで、車両100(自車両)が走行している車線(走行レーン)に対応する停止線SLを正しく選択することができる。
【0058】
なお、走行環境認識部13cから取得した地図情報において、信号機TLに対応する停止線SLについての情報として、車両100(自車両)が走行している車線(走行レーン)とは異なる車線(走行レーン)の停止線についての情報しか規定されていない可能性もある。そこで、走行環境検出部11dにおいて、複数の車線(走行レーン)が検出された場合には、走行_ECU22は、信号機TLに対応する停止線の車線(走行レーン)と、車両100(自車両)が走行している車線(走行レーン)との位置関係に基づいて、信号機TLに対応する停止線SLの位置情報から、車両100(自車両)が走行している車線(走行レーン)に対応する停止線SLの位置情報を推定するようにしてもよい。
【0059】
[変形例C]
上記実施の形態および変形例A,Bでは、ステレオカメラによって相対的に撮像容易な目標物として、信号機が例示されており、ステレオカメラによって相対的に撮像困難な目標物として、停止線が例示されていた。しかし、上記実施の形態および変形例A,Bにおいて、ステレオカメラによって相対的に撮像容易な目標物が、交差点や、道路標識であってもよい。また、上記実施の形態および変形例A,Bにおいて、ステレオカメラによって相対的に撮像困難な目標物が、停止線以外の物標であってもよい。
【0060】
[変形例D]
上記実施の形態および変形例A~Cでは、位置座標が2次元となっていたが、3次元となっていてもよい。
【0061】
[変形例E]
上記実施の形態および変形例A~Dでは、停止線SLの位置を利用して車両100の走行制御が行われていた。しかし、上記実施の形態および変形例A~Dにおいて、停止線SLの位置が、他の用途に用いられてもよい。例えば、ステレオ画像において、ある時刻における停止線SLの位置から所定の距離以内の領域(停止線近接領域)と、停止線近接領域の周囲の領域とで閾値を異ならせることで、その後に、ステレオ画像による停止線SLの検出をし易くするようにしてもよい。
【0062】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…走行制御システム、10…走行制御装置、11…走行環境認識ユニット、12…ロケータユニット、13…ロケータ演算部、13a…地図情報取得部、13b…車両位置推定部、13c…走行環境認識部13c、14…加速度センサ、15…車速センサ、16…ジャイロセンサ、17…GNSS受信機、18…受送信機、19…高精度道路地図データベース、22…走行_ECU、23…E/G_ECU、24…PS_ECU、25…BK_ECU、27…スロットルアクチュエータ、28…電動パワステモータ、29…ブレーキアクチュエータ、100…車両、200…管制装置、201…道路地図情報統合_ECU、202…送受信機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7