(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150507
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】燃料電池と二次電池とを有する電源システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20231005BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231005BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20231005BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20231005BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20231005BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231005BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/249
H01M8/04302
H01M8/04225
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059648
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】飯山 繁
(72)【発明者】
【氏名】川添 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳央
(72)【発明者】
【氏名】苅野 健
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA03
5H127AA06
5H127AB14
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DA01
5H127DB66
5H127DB71
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC96
(57)【要約】
【課題】二次電池の充電時における燃料電池の劣化を抑制するための技術を提供する。
【解決手段】本開示の電源システム100は、燃料電池11と、燃料電池11に水素含有ガス及び酸素含有ガスを供給する補機13と、燃料電池11の始動時に補機13に電力を供給する二次電池15と、出力計画で定められた目標出力電力に燃料電池11の出力電力が追従するように燃料電池11の運転を制御する制御装置20と、を備えている。目標出力電力が出力計画閾値を上回る時点から出力計画閾値を下回る時点までの期間において、制御装置20は、二次電池15の充電量が目標充電量を上回るまで燃料電池11の出力電力を目標出力電力から増加させて二次電池15を充電する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池に水素含有ガス及び酸素含有ガスを供給する補機と、
前記燃料電池の始動時に前記補機に電力を供給する二次電池と、
出力計画で定められた目標出力電力に前記燃料電池の出力電力が追従するように前記燃料電池の運転を制御する制御装置と、
を備え、
前記目標出力電力が出力計画閾値を上回る時点から前記出力計画閾値を下回る時点までの期間において、前記制御装置は、前記二次電池の充電量が目標充電量を上回るまで前記燃料電池の出力電力を前記目標出力電力から増加させて前記二次電池を充電する、燃料電池と二次電池とを有する電源システム。
【請求項2】
複数の前記燃料電池と、
複数の前記燃料電池に対応する複数の前記補機と、
を備え、
前記目標充電量は、複数の前記補機に含まれた少なくとも1つの前記補機が対応する前記燃料電池の始動時に消費する電力量よりも大きく、複数の前記補機が複数の前記燃料電池の始動時に消費する電力量よりも小さい、
請求項1に記載の燃料電池と二次電池とを有する電源システム。
【請求項3】
前記二次電池の充電に起因する前記燃料電池の前記出力電力の増加分と前記出力計画における前記燃料電池の前記目標出力電力との合計が前記電源システムの最大出力を超えないように前記増加分が設定される、請求項1又は2に記載の燃料電池と二次電池とを有する電源システム。
【請求項4】
前記目標出力電力が前記出力計画閾値を上回る期間にのみ前記二次電池の充電が行われる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池と二次電池とを有する電源システム。
【請求項5】
前記出力計画閾値は、前記燃料電池の出力電力の許容される下限値である、
請求項1から4に記載の燃料電池と二次電池とを有する電源システム。
【請求項6】
前記燃料電池は、固体高分子形燃料電池である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池と二次電池とを有する電源システム。
【請求項7】
二次電池から補機に電力を供給して燃料電池を始動することと、
出力計画で定められた目標出力電力に前記燃料電池の出力電力が追従するように前記燃料電池の運転を制御することと、
前記目標出力電力が出力計画閾値を上回る時点から前記出力計画閾値を下回る時点までの期間において、前記二次電池の充電量が目標充電量を上回るまで前記燃料電池の出力電力を前記目標出力電力から増加させて前記二次電池を充電することと、
を含む、燃料電池と二次電池とを有する電源システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池と二次電池とを有する電源システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を備えた電源システムは、水素と酸素との化学反応によって電力を生成するシステムである。ただし、始動時には、ポンプ、ブロワ、弁などの補機を作動させるための電力を必要とする。始動時に補機を作動させるための電力は、商用電源又は内蔵の二次電池から供給される。
【0003】
特許文献1には、燃料電池及び二次電池を有する燃料電池システムと燃料電池システムを制御する制御部とを備えた燃料電池制御装置が記載されている。制御部は、燃料電池システムの停止命令を受け、かつ、二次電池の充電量が閾値以下であると判定した場合、燃料電池から二次電池への強制充電を充電量が閾値になるまで実施するように燃料電池システムを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池に必要な充電電流は、燃料電池の通常の出力電流よりも遥かに小さい。二次電池の充電電流は、例えば、燃料電池の通常の出力電流の1/10未満である。二次電池の劣化を抑制する観点から、二次電池を大電流で充電することは避けるべきである。
【0006】
特許文献1によれば、二次電池が適切な電流で充電されるように、通常の出力範囲から外れた低電流で燃料電池が運転される。しかし、燃料電池を低電流で運転すると、燃料電池のセル電圧が上がり、燃料電池の劣化が早まる。
【0007】
本開示は、二次電池の充電時における燃料電池の劣化を抑制するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の燃料電池と二次電池とを有する電源システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池に水素含有ガス及び酸素含有ガスを供給する補機と、
前記燃料電池の始動時に前記補機に電力を供給する二次電池と、
出力計画で定められた目標出力電力に前記燃料電池の出力電力が追従するように前記燃料電池の運転を制御する制御装置と、
を備え、
前記目標出力電力が出力計画閾値を上回る時点から前記出力計画閾値を下回る時点までの期間において、前記制御装置は、前記二次電池の充電量が目標充電量を上回るまで前記燃料電池の出力電力を前記目標出力電力から増加させて前記二次電池を充電する。
【0009】
別の側面において、本開示の燃料電池と二次電池とを有する電源システムの運転方法は、
二次電池から補機に電力を供給して燃料電池を始動することと、
出力計画で定められた目標出力電力に前記燃料電池の出力電力が追従するように前記燃料電池の運転を制御することと、
前記目標出力電力が出力計画閾値を上回る時点から前記出力計画閾値を下回る時点までの期間において、前記二次電池の充電量が目標充電量を上回るまで前記燃料電池の出力電力を前記目標出力電力から増加させて前記二次電池を充電することと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、二次電池の充電時における燃料電池の劣化を抑制して電源システムの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1における電源システムの構成を示すブロック図
【
図3】電源システムの出力計画及び二次電池の充電量を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0014】
(実施の形態1)
以下、
図1から
図3を用いて、実施の形態1を説明する。
【0015】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態1の電源システム100の構成を示すブロック図である。電源システム100は、複数の燃料電池11、複数の補機13、二次電池15、及び制御装置20を備えている。
【0016】
燃料電池11は、詳細には、燃料電池スタックである。燃料電池11には、水素含有ガス及び酸素含有ガスが供給される。燃料電池11において、水素と酸素との化学反応によって電力が生成される。燃料電池11において生成された電力は、電力供給回路19を通じて、補機13、二次電池15、及び負荷200に供給される。燃料電池11において生成された電力が制御装置20に供給されてもよい。
【0017】
燃料電池11は、典型的には、固体高分子形燃料電池である。固体高分子形燃料電池は、低温で作動する、頻繁な起動及び停止が容易であるといった特徴を持つことから、本開示の技術の適用対象として適している。ただし、燃料電池11は、固体酸化物形燃料電池、リン酸形燃料電池などの他の型式の燃料電池であってもよい。
【0018】
少なくとも1台の燃料電池11を備えている限りにおいて、燃料電池11の台数は特に限定されない。電源システム100は、燃料電池11を1台のみ備えていてもよく、複数の燃料電池11を備えていてもよい。
【0019】
補機13は、燃料電池11に水素含有ガス及び酸素含有ガスを供給する役割を担う。補機13は、ポンプ、ブロワ、弁などの機器を含む。ポンプは、例えば、水を輸送するためのポンプを含む。ブロワは、例えば、水素含有ガスを燃料電池11のアノードに供給するためのブロワ、及び、酸素含有ガスを燃料電池11のカソードに供給するためのブロワを含む。弁としては、流量調整弁、圧力調整弁、開閉弁などが挙げられる。詳細には、弁は、所望の流量の水素含有ガスを燃料電池11のアノードに供給するための流量調整弁を含む。
【0020】
複数の補機13のそれぞれは複数の燃料電池11のそれぞれに対応している。補機13と燃料電池11とがガス供給経路17によって接続されている。ガス供給経路17は、ガス配管によって構成されうる。
【0021】
複数の補機13のそれぞれと燃料電池11とが電力供給回路19によって接続されている。補機13は、燃料電池11で生成された電力によって動作しうる。また、複数の補機13のそれぞれと二次電池15とが電力供給回路19によって接続されている。電源システム100の始動時に二次電池15から複数の補機13のそれぞれに電力が供給される。
【0022】
電源システム100の始動時において、複数の補機13から選ばれる一部の補機13のみに二次電池15から電力が供給されるように電源システム100が構成されていてもよい。この場合、一部の補機13に対応する一部の燃料電池11が始動して電力を生成する。燃料電池11で生成された電力が一部の補機13以外の一又は複数の補機13に供給され、対応する一又は複数の燃料電池11が始動する。このような構成によれば、電源システム100の始動時に必要とされる二次電池15の放電電力を下げることができる。大出力の二次電池は高価なので、このことは、二次電池15のコストを低減するのに有利である。また、放電電力を下げることは、二次電池15の寿命の観点からも望ましい。なお、「一部の補機13」は、単一の燃料電池11に対応する単一の補機13であってもよい。
【0023】
二次電池15は、燃料電池11の始動時に補機13に電力を供給する役割を担う。二次電池15は、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply)であってもよい。二次電池15の種類は特に限定されない。二次電池15としては、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、鉛蓄電池などが挙げられる。
【0024】
二次電池15と燃料電池11とが電力供給回路19によって接続されている。二次電池15は、燃料電池11で生成された電力によって充電される。
【0025】
制御装置20は、例えば、入出力回路、プロセッサ、メモリなどを含むDSP(Digital Signal Processor)によって構成されている。制御装置20は、燃料電池11の運転を制御するため運転制御部21を含む。運転制御部21は、例えば、メモリに記憶されたソフトウェアで構成されている。
【0026】
制御装置20は、また、出力計画作成部23を含む。出力計画作成部23は、外部からの入力に応じて、電源システム100の出力計画を作成する。あるいは、出力計画作成部23は、負荷200の過去の消費電力の時系列データを用いた推定によって、電源システム100の出力計画を作成してもよい。運転制御部21は、出力計画作成部23によって作成された出力計画に従って燃料電池11の運転を制御する。詳細には、運転制御部21は、出力計画で定められた目標出力電力に燃料電池11の出力電力が追従するように燃料電池11の運転を制御する。出力計画作成部23も制御装置20のメモリに記憶されたソフトウェアで構成されうる。
【0027】
電源システム100の出力計画は、電源システム100の出力電力の目標値の時系列データを含む。時系列データは、後述する
図3(a)のようなグラフのデータであってもよく、時刻と目標出力電力とが対応付けられたテーブルのデータであってもよい。目標出力電力は、電源システム100の出力電力の目標値を意味する。出力計画を参照すれば、任意の時刻における目標出力電力を特定することができる。なお、出力計画は、電源システム100の外部で作成されて制御装置20に入力されてもよい。
【0028】
電源システム100が複数の燃料電池11を備えているとき、電源システム100の出力電力は、それら複数の燃料電池11の出力電力の合計値を意味する。電源システム100が燃料電池11を1台のみ備えているとき、電源システム100の出力電力は、単一の燃料電池11の出力電力を意味する。
【0029】
運転制御部21は、二次電池15の充電も制御する。すなわち、充電の開始、充電の終了、充電時の電流値などが運転制御部21によって管理される。
【0030】
また、制御装置20は、二次電池15の充電量を監視するための充電量監視部25を含む。充電量監視部25は、例えば、電池残量計ICである。運転制御部21は、二次電池15の充電量を示すデータを充電量監視部25から取得する。充電量を示すデータは、二次電池15の充電を制御するために使用される。
【0031】
負荷200としては、工場、商業施設、公共施設、医療施設などの大規模施設が挙げられる。例えば、工場の操業時間は決まっており、必要な電力も比較的正確に予測できる。このことは、電源システム100の出力計画を予め作成するうえで好都合である。同様のことが、商業施設などにも当てはまる。
【0032】
[1-2.動作]
以上のように構成された電源システム100について、その動作を以下説明する。
【0033】
図2は、燃料電池11の電流-電圧特性を示すグラフである。縦軸はセル電圧を表す。横軸は電流を表す。
図2のグラフから理解できるように、0A(アンペア)から10Aの領域Aに対応する低電流領域では、燃料電池11は、高いセル電圧を示す。領域Aでは、燃料電池11の劣化、特に電極の劣化の進行が速い。領域Aは、電源システム100の始動時及び停止時に短時間使用される領域である。10Aから100Aの領域Bに対応する高電流領域では、燃料電池11は、低いセル電圧を示す。領域Bでは、燃料電池11の劣化の進行が遅い。領域Bは、発電のために長時間使用される領域である。燃料電池11の劣化を抑制する観点から、領域Aにおける燃料電池11の運転時間を極力短くすることが望ましい。
【0034】
次に、二次電池15の充電パターン及び放電パターンの一例を表1に示す。二次電池15は、例えば、5Wの電力を燃料電池11から受けて充電され、電源システム100の始動時に200Wの電力を補機13に向けて放電する。充電時間は、例えば、8時間である。放電時間は、例えば、0.2時間である。充放電容量は40Whである。100Vの直流電圧で充電及び放電が行われる場合、充電電流は0.05Aであり、放電電流は2Aである。放電電流に対する充電電流の比率は0.025である。このように、放電電流と比較して充電電流は低い。
【0035】
【0036】
次に、表2は、電源システム100の始動時に二次電池15から補機13に供給される電力(補機への供給電力)と燃料電池11の通常時の出力電力とを示す。電源システム100の始動時に二次電池15から補機13に供給される電力は、例えば、0.2kWである。一方、燃料電池11の通常時の出力電力は2kWから10kWである。燃料電池11の定格出力での出力電流に対する電源システム100の始動時に二次電池15から補機13に供給される電流の比率は、0.02である。つまり、燃料電池11の出力電流と比較して二次電池15から補機13に供給される電流は低い。
【0037】
【0038】
これらの例は、燃料電池11の出力電力が二次電池15の充電に必要とされる電力を遥かに上回ることを示している。したがって、無負荷状態(負荷200の消費電力がゼロの状態)で二次電池15を充電するために燃料電池11を運転することは避けるべきである。これにより、燃料電池11のセル電圧が過上昇し、燃料電池11の劣化が速まることを回避できる。
【0039】
図3は、電源システム100の出力計画及び二次電池15の充電量を示すグラフである。詳細には、
図3(a)が電源システム100の出力計画を示す。
図3(b)が二次電池15の充電量を示す。
図3(a)の縦軸は、電源システム100の目標出力電力(単位:kW)を表す。
図3(b)の縦軸は、二次電池15の充電量(単位:Wh)を表す。
図3(a)及び(b)の横軸は時刻を表す。
【0040】
図3(a)の出力計画は、制御装置20の出力計画作成部23によって予め作成されうる。本実施の形態では、時刻t1が発電開始時刻であり、時刻t5が発電終了時刻である。時刻t2及び時刻t3のそれぞれにおいて、目標出力電力が変更される。
【0041】
図3(a)において、出力計画に基づく目標出力電力は実線で表されている。破線は、二次電池15を充電するための電力の増加分を表す。すなわち、所定の期間において、制御装置20の運転制御部21は、二次電池15の充電量が目標充電量を上回るまで燃料電池11の出力電力を目標出力電力から増加させて二次電池15を充電する。所定の期間は、目標出力電力が出力計画閾値を上回る時点(時刻t1)から出力計画閾値を下回る時点(時刻t5)までの期間である。燃料電池11は、出力計画に基づく目標出力電力に二次電池15を充電するための電力を加えた電力を出力するように制御される。
【0042】
上記の制御によれば、二次電池15を充電するために無負荷状態で燃料電池11を運転させずに済む。つまり、セル電圧が高い値を示す領域、すなわち、
図2を参照して説明した領域Aで燃料電池11を運転することを回避できる。これにより、燃料電池11の劣化が抑制され、ひいては、電源システム100の耐久性が向上する。
【0043】
図3(a)に示す「出力計画閾値」は、燃料電池11の劣化を抑制するために定められた閾値である。出力計画閾値未満の目標出力電力の設定を禁止するように、出力計画を作成する際に制約が課されてもよい。すなわち、出力計画閾値は、燃料電池11の出力電力の許容される下限値であってもよい。これにより、燃料電池11は、始動時、停止時などの過渡期を除く通常の期間において、出力計画閾値よりも高い電力を生成するように制御される。その結果、燃料電池11の電極の劣化が抑制される。出力計画閾値は、
図2に示す領域Aと領域Bとの境界の出力電力(1kW)に対応している。
【0044】
図3(b)に示す「目標充電量」は、電源システム100の始動時に補機13に電力を供給するために二次電池15に必要とされる充電量である。例えば、複数の燃料電池11を始動するために複数の補機13が40Whの充電量を必要とする場合、目標充電量は、40Whよりも高い値に設定される。例えば、必要最小限の充電量の2倍の充電量が目標充電量に設定される。
【0045】
目標充電量は、複数の補機13に含まれた少なくとも1つの補機13が対応する燃料電池11の始動時に消費する電力量よりも大きく、複数の補機13が複数の燃料電池11の始動時に消費する電力量よりも小さくてもよい。つまり、先に説明したように、特定の補機13を作動させて対応する燃料電池11を始動させ、その燃料電池11によって生成された電力を残りの1又は複数の補機13に供給して残りの1又は複数の燃料電池11を始動させる。この場合、電源システム100が多数の燃料電池11を備えていたとしても、二次電池15の容量は小容量で足りる。このことは、二次電池15に費やされるコストの削減及び電源システム100の設置面積の縮小に寄与する。
【0046】
図3(a)及び(b)に示すように、出力計画に定められた時刻t0において、制御装置20の運転制御部21は、二次電池15の電力を補機13に供給して燃料電池11を始動する。ただし、時刻t0から時刻t1までの期間の目標出力電力はゼロである。
【0047】
時刻t1において、燃料電池11が発電を開始する。燃料電池11の出力電力は、運転制御部21による制御によって、目標出力電力に収斂する。運転制御部21による制御の方式は、例えば、PI制御などのフィードバック制御である。
【0048】
時刻t1において、補機13への電力供給元が二次電池15から燃料電池11に切り替わる。併せて、燃料電池11で生成された電力による二次電池15の充電が開始される。時刻t1から二次電池15の充電量が増加に転じる。
【0049】
時刻t1から時刻t2までの期間において、燃料電池11の出力電力は、出力計画で定められた目標出力電力WC12と二次電池15の充電電力WT12との合計に合わせられる。時刻t1から時刻t2までの期間において、負荷200への電力供給と二次電池15への電力供給とが並行して行われる。
【0050】
次に、時刻t2において、出力計画の目標出力電力がWC
12からWC
23へと変化する。目標出力電力WC
23は、電源システム100の最大出力にほぼ等しい値を持つ。最大出力を超える電力を生成することは不可能である。したがって、二次電池15の充電に起因する燃料電池11の出力電力の増加分と出力計画における燃料電池11の目標出力電力との合計が電源システム100の最大出力を超えないように増加分が設定される。時刻t2から時刻t3までの期間において、出力計画で定められた目標出力電力WC
23と二次電池15の充電電力WT
23との合計が最大出力に等しい。合計が最大出力を超えないように、充電電力WT
23が減らされている。充電電力WT
23は、時刻t1から時刻t2の期間における充電電力WT
12よりも小さい。したがって、
図3(b)に示すように、時刻t2から時刻t3の期間における充電量の増加レートは、時刻t1から時刻t2の期間における充電量の増加レートよりも緩やかである。
【0051】
なお、出力計画の目標出力電力WC23が電源システム100の最大出力に等しいとき、二次電池15を充電する余裕が無い可能性がある。この場合、二次電池15の充電を中断してもよい。つまり、時刻t2から時刻t3の期間において、二次電池15の充電を中断してもよい。
【0052】
次に、時刻t3において、出力計画の目標出力電力がWC23からWC34へと変化する。目標出力電力WC34は、最大出力よりも十分に小さい。したがって、時刻t3から時刻t4までの期間において、燃料電池11の出力電力は、出力計画で定められた目標出力電力WC34と二次電池15の充電電力WT34との合計に合わせられる。充電電力WT34は、時刻t1から時刻t2までの期間における充電電力WT12に等しい。時刻t3から時刻t4までの期間において、負荷200への電力供給と二次電池15への電力供給とが並行して行われる。
【0053】
時刻t4において、二次電池15の充電量が目標充電量に到達する。充電量が目標充電量に到達した場合、二次電池15の充電を終了する。ただし、充電量が目標充電量に到達した後も充電を継続してもよい。
【0054】
時刻t5において、燃料電池11の運転を終了する。
【0055】
本実施の形態によれば、目標出力電力が出力計画閾値を上回る期間、すなわち、時刻t1から時刻t5までの期間にのみ二次電池15の充電が行われる。これにより、セル電圧が高い値を示す領域、すなわち、
図2を参照して説明した領域Aで燃料電池11を運転し続けることを回避できる。
【0056】
[1-3.効果等]
以上のように、電源システム100において、目標出力電力が出力計画閾値を上回る時点から出力計画閾値を下回る時点までの期間において、制御装置20は、二次電池15の充電量が目標充電量を上回るまで燃料電池11の出力電力を目標出力電力から増加させて二次電池を充電する。
【0057】
本実施の形態によれば、二次電池15を充電するために無負荷状態で燃料電池11を運転させずに済む。つまり、セル電圧が高い値を示す領域、すなわち、
図2を参照して説明した領域Aで燃料電池11を運転することを回避できる。これにより、燃料電池11の劣化が抑制され、ひいては、電源システム100の耐久性が向上する。
【0058】
また、本実施の形態において、電源システム100は、複数の燃料電池と、複数の燃料電池に対応する複数の補機と、を備えていてもよい。目標充電量は、複数の補機に含まれた少なくとも1つの補機が対応する燃料電池11の始動時に消費する電力量よりも大きく、複数の補機13が複数の燃料電池11の始動時に消費する電力量よりも小さくてもよい。この場合、電源システム100が多数の燃料電池11を備えていたとしても、二次電池15の容量は小容量で足りる。
【0059】
また、本実施の形態において、二次電池15の充電に起因する燃料電池11の出力電力の増加分と出力計画における燃料電池11の目標出力電力との合計が電源システム100の最大出力を超えないように増加分が設定されてもよい。このようにすれば、最大出力を超える電力を生成することを回避できる。
【0060】
また、本実施の形態において、目標出力電力が出力計画閾値を上回る期間にのみ二次電池15の充電が行われてもよい。このようにすれば、セル電圧が高い値を示す領域、すなわち、
図2を参照して説明した領域Aで燃料電池11を運転し続けることを回避できる。
【0061】
また、本実施の形態において、出力計画閾値は、燃料電池11の出力電力の許容される下限値であってもよい。これにより、燃料電池11の電極の劣化が抑制される。
【0062】
また、本実施の形態において、燃料電池11は、固体高分子形燃料電池であってもよい。固体高分子形燃料電池は、出力電力の調節が容易であることから、本開示の技術の適用対象として適している。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の技術は、燃料電池及び二次電池を備えた電源システムに有用である。
【符号の説明】
【0064】
11 燃料電池
13 補機
15 二次電池
17 ガス供給経路
19 電力供給回路
20 制御装置
21 運転制御部
23 出力計画作成部
25 充電量監視部
100 電源システム
200 負荷