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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150515
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/08 20060101AFI20231005BHJP
   F01L 3/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F01L1/08 A
F01L3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059661
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】中田 陽介
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016AA08
3G016BA03
3G016BA37
3G016BB04
3G016CA08
3G016CA27
3G016GA02
(57)【要約】
【課題】各気筒毎に複数の吸気バルブを備える内燃機関にあって、機械損失のさらなる低減に寄与する。
【解決手段】一つの気筒に複数の吸気バルブを設け、そのうち一方の吸気バルブの最大リフト量または最大リフト量をとるタイミングと、他方の吸気バルブの最大リフト量または最大リフト量をとるタイミングとを異ならせた内燃機関を構成した。その上で、一方の吸気バルブの弁体を閉じる方向に弾性付勢するスプリングのばね定数と、他方の吸気バルブの弁体を閉じる方向に弾性付勢するスプリングのばね定数とを異なる大きさに設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの気筒に複数の吸気バルブを設け、
そのうち一方の吸気バルブの最大リフト量または最大リフト量をとるタイミングと、他方の吸気バルブの最大リフト量または最大リフト量をとるタイミングとを異ならせる内燃機関。
【請求項2】
前記一方の吸気バルブの弁体を閉じる方向に弾性付勢するスプリングのばね定数と、前記他方の吸気バルブの弁体を閉じる方向に弾性付勢するスプリングのばね定数とを異ならせる請求項1記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として車両等に搭載される内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
4ストロークレシプロエンジンとして、各気筒毎に複数の吸気ポート及び吸気バルブを設けている、いわゆるマルチバルブエンジンが公知である(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-044723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の出力及び燃費性能の一層の向上を図るためのアプローチとして、気筒の吸排気バルブを開閉駆動することに伴う機械損失の低減が挙げられる。一般的なマルチバルブエンジンでは、一つの気筒に実装される複数のバルブを同数のカムローブにより同時に押圧してこれらを開弁させる。このため、各バルブの弁体を閉じる方向に弾性付勢しているバルブスプリングからカムシャフトが受ける反力の和が大きくなり、タペット(または、バルブリフタ)とカムローブとの間の摩擦も増大する。
【0005】
バルブリフト量(開弁量)を小さくしたり、バルブスプリングのばね定数を小さくしたりすれば、カムシャフトが受ける反力を小さくし、タペットとカムローブとの間の摩擦を軽減することが可能である。しかしながら、バルブリフト量を縮小すると、気筒に流入する吸気量が減少する上、筒内流動、特に空気と燃料とをよく混合するために重要なタンブル流も弱くなって、内燃機関の出力、燃費及びエミッションに悪影響をもたらす。また、単純にバルブスプリングのばね定数を小さくすると、共振が発生しやすくなるという別の問題を招く。
【0006】
本発明は、各気筒毎に複数の吸気バルブを備える内燃機関にあって、機械損失のさらなる低減に寄与することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、一つの気筒に複数の吸気バルブを設け、そのうち一方の吸気バルブの最大リフト量または最大リフト量をとるタイミングと、他方の吸気バルブの最大リフト量または最大リフト量をとるタイミングとを異ならせた内燃機関を構成した。
【0008】
より好ましくは、前記一方の吸気バルブの弁体を閉じる方向に弾性付勢するスプリングのばね定数と、前記他方の吸気バルブの弁体を閉じる方向に弾性付勢するスプリングのばね定数とを異なる大きさに設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各気筒毎に複数の吸気バルブを備える内燃機関における機械損失のさらなる低減に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における車両用内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。
図2】同実施形態の内燃機関の吸気バルブ及び吸気カムシャフトを示す斜視図。
図3】同実施形態の内燃機関の一つの気筒が備える複数の吸気バルブの一方のリフト量と他方のそれとの関係を例示するタイミング図。
図4】同実施形態の内燃機関の一つの気筒が備える複数の吸気バルブの一方のリフト量と他方のそれとの関係を例示するタイミング図。
図5】同実施形態の内燃機関の一つの気筒が備える複数の吸気バルブの一方のリフト量と他方のそれとの関係を例示するタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態の内燃機関は、ポート噴射式の4ストローク火花点火レシプロエンジンであり、複数の気筒1(例えば、三気筒。図1には、そのうち一つを図示している)を包有する。各気筒1の吸気ポートの近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を気筒1毎に設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0012】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、吸気絞り弁である電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0013】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0014】
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所(特に、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34)に接続している。
【0015】
本実施形態にあって、内燃機関の運転制御を司る電子制御装置(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラがCAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
【0016】
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、運転者によるアクセルペダルの踏込量(アクセル開度、換言すれば要求されるエンジントルクまたはエンジン負荷率)を検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(スロットルバルブ32の下流、特に、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、車両の加速度または車両が現在所在している路面の勾配を検出する加速度センサから出力される加速度信号f、内燃機関の吸気カムシャフト13の複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号g、運転者が操作するスイッチやセレクタレバー(に付随するポジションセンサ)等から出力される信号h等が入力される。
【0017】
ECU0の出力インタフェースからは、点火プラグ12に付随するイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
【0018】
ECU0のプロセッサは、メモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に吸入される空気(新気)量を推算する。そして、吸入空気量に見合った(理論空燃比またはその近傍の目標空燃比を達成できるような)要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量、EGRガス分圧)等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の内燃機関は、各気筒1毎に複数の吸気ポート及び吸気バルブ14を備えている。各吸気ポートを開閉するポペット弁体141、142はそれぞれ、バルブスプリング143、144により閉じる方向、即ち弁座に着座する方向に弾性付勢されている。吸気バルブ14を開閉駆動するカムシャフト13には、各気筒1毎に吸気バルブ14と同数のカムローブ131、132を突設してある。各カムローブ131、132がバルブタペットに接触してこれを押圧すると、吸気バルブ14の弁体141、142がスプリング143、144の弾性付勢力に抗して押し下げられ、弁体141、142が弁座から離反する、つまりは吸気バルブ14が開く。
【0020】
本実施形態では、一つの気筒1の複数の吸気バルブ14の弁体141、142を各々駆動する第一カムローブ131のプロフィールと第二カムローブ131のプロフィールとを異ならせている。換言すれば、カムシャフト13の軸心方向(カムシャフト13の中心軸が伸びる方向に平行な方向)から見たときに、第一カムローブ131と第二カムローブ132とが完全に重なり合わない。
【0021】
図3に示す例では、第一弁体141を駆動する第一カムローブ131の中心角と、第二弁体142を駆動する第二カムローブ132の中心角とをカムシャフト13の回転方向に沿ってずらすことで、第二弁体142のリフト量(破線で表す)が最大となるタイミングを、第一弁体141のリフト量(実線で表す)が最大となるタイミングから、クランク角度換算で最大5°CA遅らせている。これにより、吸気バルブ14の両弁体141、142を押し開こうとするカムシャフト13に作用する反力の最大値が減少する。さらに、第二弁体142を付勢するスプリング144のばね定数を、第一弁体141を付勢するスプリング143のばね定数よりも小さく設定して、共振の発生を抑制しながら、バルブタペットとカムローブ132との間の摩擦を軽減することができる。
【0022】
図4に示す例では、第一弁体141を駆動する第一カムローブ131に比して、第二弁体142を駆動する第二カムローブ132を低くし、第二弁体142のリフト量(破線で表す)の最大値を、第一弁体141のリフト量(実線で表す)の最大値よりも小さくしている。両者の差は、2mm以下とする。これにより、吸気バルブ14の両弁体141、142を押し開こうとするカムシャフト13に作用する反力の最大値が減少する。さらに、第二弁体142を付勢するスプリング144のばね定数を、第一弁体141を付勢するスプリング143のばね定数よりも小さく設定して、共振の発生を抑制しながら、バルブタペットとカムローブ132との間の摩擦を軽減することができる。
【0023】
図5に示す例は、図3に示す例と図4に示す例との組み合わせである。やはり、吸気バルブ14の両弁体141、142を押し開こうとするカムシャフト13に作用する反力の最大値が減少する。さらに、第二弁体142を付勢するスプリング144のばね定数を、第一弁体141を付勢するスプリング143のばね定数よりも小さく設定して、共振の発生を抑制しながら、バルブタペットとカムローブ132との間の摩擦を軽減することができる。
【0024】
なお、一つの気筒1に連なる複数の吸気ポートに個別にインジェクタ11を設置している場合、第一弁体141が開閉する吸気ポートに臨むインジェクタ11から噴射する燃料の量に比して、第二弁体142が開閉する吸気ポートに臨むインジェクタ11から噴射する燃料の量をより減量することも考えられる。
【0025】
本実施形態によれば、気筒1に流入する吸気量を必要十分に確保し、筒内流動特にタンブル流を効果的に発生させながら、吸気バルブ14の開閉駆動に伴う機械損失のより一層の低減を図ることができる。
【0026】
本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0027】
0…制御装置(ECU)
1…気筒
13…吸気カムシャフト
131、132…カムローブ
14…バルブ
141、142…弁体
143、144…バルブスプリング
図1
図2
図3
図4
図5