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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150527
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】アタッチメント及び歯科矯正具
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20231005BHJP
   A61C 7/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61C7/08
A61C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059676
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】517118102
【氏名又は名称】SheepMedical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】石亀 勝
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA20
4C052JJ01
(57)【要約】
【課題】構造を極めて簡素化し、歯列部を構成する歯を所望の位置に圧下又は挺出することが可能なアタッチメントを提供する。
【解決手段】歯科矯正具のマウスピースが上顎歯列部に装着され、上顎歯列部3を構成する歯に取り付けられるアタッチメント10であって、三角錐形状に形成されるとともに、歯面5aへの取付状態の正面視において、二等辺三角形に形成され、この二等辺三角形の底辺11aが歯面5aの歯軸5b方向に対して直交する方向に取り付けられる。取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺11aに対向する点11bが歯肉部8側に配設される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科矯正具のマウスピースが歯列部に装着され、該歯列部を構成する歯に取り付けられるアタッチメントであって、
三角錐形状に形成されるとともに、前記歯への取付状態の正面視において、二等辺三角形に形成され、該二等辺三角形の底辺が前記歯の歯軸方向に対して直交する方向に取り付けられることを特徴とするアタッチメント。
【請求項2】
前記取付状態の正面視において、前記二等辺三角形の底辺に対向する点が歯肉部側に配設されることを特徴とする請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項3】
前記取付状態の正面視において、前記二等辺三角形の底辺に対向する点が歯冠部先端側に配設されることを特徴とする請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項4】
前記歯列部の前歯に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアタッチメント。
【請求項5】
前記歯列部が上顎歯列部であって、該上顎歯列部の歯の頬側の歯面に固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアタッチメント。
【請求項6】
前記歯列部が下顎歯列部であって、該下顎歯列部の歯の舌側の歯面に固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアタッチメント。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアタッチメントと、
前記アタッチメントに対応した凹部が形成され、前記歯列部に装着された状態で前記凹部に前記アタッチメントが嵌合されるマウスピースと、
を備えることを特徴とする歯科矯正具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列部の個々の歯を矯正するときに用いられるアタッチメント、及びそのアタッチメントを備えた歯科矯正具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マウスピース型矯正治療では、アライナーを装着するためにアタッチメントと称される補助部を歯に形成する場合がある。このアタッチメントは、歯と同色で高さが略1mmの突起物であり、光を照射することで硬化する光重合コンポジットレジン等を用いて形成される。このアタッチメントを患者の歯面に形成することにより、歯面に凹凸が付加され、アライナーに対する歯列部の保持力を高めて、より複雑な方向に歯列部の歯を移動させるようにしている。
【0003】
ところで、上記アタッチメントには、特許文献1に記載された技術がある。この特許文献1のアタッチメント部は、磁石装着部と、該磁石装着部に吸着されるキーパーとを有し、上記磁石装着部が2本のバーとホルダからなり、上記キーパーが凸起と台からなる。この台が歯面に接着固定されて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-16632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたアタッチメントでは、磁石装着部が2本のバーとホルダからなり、キーパーが凸起と台からなることから、部品点数が多くなり、構造が複雑化するという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、構造を極めて簡素化し、歯列部を構成する歯を所望の位置に圧下又は挺出することが可能なアタッチメント及び歯科矯正具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、歯科矯正具のマウスピースが歯列部に装着され、該歯列部を構成する歯に取り付けられるアタッチメントであって、三角錐形状に形成されるとともに、前記歯への取付状態の正面視において、二等辺三角形に形成され、該二等辺三角形の底辺が前記歯の歯軸方向に対して直交する方向に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記取付状態の正面視において、前記二等辺三角形の底辺に対向する点が歯肉部側に配設されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記取付状態の正面視において、前記二等辺三角形の底辺に対向する点が歯冠部先端側に配設されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又乃至3のいずれか一項に記載の構成に加え、前記歯列部の前歯に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の構成に加え、前記歯列部が上顎歯列部であって、該上顎歯列部の歯の頬側の歯面に固定されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の構成に加え、前記歯列部が下顎歯列部であって、該下顎歯列部の歯の舌側の歯面に固定されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアタッチメントと、前記アタッチメントに対応した凹部が形成され、前記歯列部に装着された状態で前記凹部に前記アタッチメントが嵌合されるマウスピースと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、三角錐形状に形成されるとともに、歯への取付状態の正面視において、二等辺三角形に形成され、この二等辺三角形の底辺が歯の歯軸方向に対して直交する方向に取り付けられることから、構造を極めて簡素化し、歯列部を構成する歯を所望の位置に圧下又は挺出することが可能となる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、歯への取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺に対向する点が歯肉部側に配設されるので、歯列部の歯を圧下させることが可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、歯への取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺に対向する点が歯冠部先端側に配設されるので、歯列部の歯を挺出させることが可能となる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、歯列部の前歯に取り付けられるので、圧下又は挺出する効果を高めることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明によれば、歯列部が上顎歯列部であって、この上顎歯列部の歯の頬側の歯面に固定されるので、圧下又は挺出する効果を高めることができる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明によれば、歯列部が下顎歯列部であって、この下顎歯列部の歯の舌側の歯面に固定されるので、圧下又は挺出する効果を高めることができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアタッチメントと、アタッチメントに対応した凹部が形成され、歯列部に装着された状態で凹部にアタッチメントが嵌合されるマウスピースと、を備えることから、構造を極めて簡素化し、歯列部を構成する歯を所望の位置に圧下又は挺出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るアタッチメントを上顎歯列部の中切歯に取り付けた状態を示す正面図である。
図2図1の拡大側面図である。
図3図1の拡大正面図である。
図4図3のA-A線による拡大断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るアタッチメントにマウスピースを装着した歯科矯正具を示す正面図である。
図6図5のB-B線による拡大断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るアタッチメントを上顎歯列部の中切歯に取付方向を反転させた状態の変形例を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[発明の一実施形態]
図1乃至図6は、本発明の一実施形態を示す。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るアタッチメントを上顎歯列部の中切歯に取り付けた状態を示す正面図である。図2は、図1の拡大側面図である。図3は、図1の拡大正面図である。図4は、図3のA-A線による拡大断面図である。図5は、本発明の一実施形態に係るアタッチメントにマウスピースを装着した歯科矯正具を示す正面図である。図6は、図5のB-B線による拡大断面図である。
【0024】
なお、以下の一実施形態では、マウスピースを口腔部内に挿入し、上顎歯列部に装着した例について説明する。また、以下の一実施形態では、マウスピースを上顎歯列部に装着した状態で、その前歯側を前側、奥歯側を後側とし、口蓋側(舌側)を内側、頬側(唇側)を外側として説明する。
【0025】
ここで、図1に示すように、上顎歯列部3は、前歯4、犬歯6、及び奥歯7を有する。前歯は、切歯であって、左右の中切歯、左右の側切歯を備える。奥歯は、臼歯であって、左右の第1、第2小臼歯、左右の第1~第2大臼歯を備える。また、以下の一実施形態では、アタッチメントを右の中切歯に取り付けた例について説明する。
【0026】
図1図3に示すように、本実施形態は、上顎歯列部3を構成する前歯4の右の中切歯5にアタッチメント10が取り付けられている。このアタッチメント10が取り付けられた上顎歯列部3には、図5に示すようにマウスピース2が上顎歯列部3を覆うように装着されて本実施形態の歯科矯正具1が構成される。マウスピース2は、上顎歯列部3に装着されて上顎歯列部3を横方向に拡げるとともに、上顎歯列部3の個々の歯、本実施形態の場合には右の中切歯5を圧下又は挺出すべき方向に移動させ、あるいは移動させた歯を元に戻らないように成型した成型物(アライナー又はリテーナー)である。
【0027】
マウスピース2は、例えば複数異なる大きさのもの、あるいは異なる硬さのものを段階的に用意して、それらを定期的に交換することにより矯正治療を進めていくものである。例えば、最初に用意されるマウスピース2は、患者の当初の上顎歯列部3の個々の歯の位置から、0.2~0.5mm程度個々の歯を移動させた後の歯列形状に対応させて作られる。このマウスピース2を1~3週間程度装着すると、上顎歯列部3の個々の歯は徐々に移動していくことになる。その後、さらに個々の歯を移動させた形状に対応させたマウスピース2を順次用意し、少しずつ個々の歯を移動させることにより、患者の矯正治療を行う。
【0028】
なお、本実施形態の矯正とは、個々の歯を圧下又は挺出すべき方向、整列すべき方向に移動させて矯正すること以外に、矯正することによって移動させた歯を元に戻らないようにする保定のことを含むものとする。以下の実施形態では、個々の歯を圧下又は挺出すべき方向に移動させて矯正する場合について説明する。
【0029】
本実施形態のマウスピース2は、全体が弾性を有する樹脂材料であって、例えば0.40~0.50mmの厚さに一体成形されている。具体的に、上記樹脂材料は、例えばポリウレタン等のウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル樹脂等から選択される。なお、マウスピース2は、装着前の患者の歯列に対応した形状とは異なり、矯正後の歯列に対応した形状に成型されている。すなわち、患者が最初にマウスピース2を装着する際には、マウスピース2に負荷をかけて少し弾性変形させながら嵌め込むことになる。そのように変形されたマウスピース2は、その弾性ゆえに、最初に一体成型された形状に復元する力が発生し、少しずつ歯列を矯正する方向に整列させていく。上記樹脂材料は、無色透明又は乳白色であることが望ましく、これにより口腔1内に挿入した場合、上顎歯列部3に装着していることが目立たず、審美性に優れたものとなる。
【0030】
本実施形態のアタッチメント10は、図1図3に示すように右の中切歯5の頬側(外側)の歯面5aに接着剤により取り付けられている。アタッチメント10は、三角錐形状に形成され、底面部11及び側面部12,13,14を有する。底面部11は、歯面5aに接着剤により固定され、二等辺三角形の形状に形成されている。アタッチメント10は、歯面5aへの取付状態の正面視において、二等辺三角形に形成され、この二等辺三角形の底辺11aが歯面5aの歯軸5b方向に対して直交する方向に取り付けられる。図1図6では、アタッチメント10は、取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺11aに対向する点11bが歯肉部9側に配設される。
【0031】
ここで、二等辺三角形の底面部11の底辺11aは、側面部12,13の2つの底辺よりも短く、これら側面部12,13の2つの底辺が同じ長さに形成されている。また、側面部14は、側面部12,13と異なる三角形状であって、側面部12,13が同じ三角形状に形成されている。
【0032】
マウスピース2には、図5及び図6に示すように上顎歯列部3に装着したときにアタッチメント10に対応する位置に凹部2aが形成されている。したがって、マウスピース2を上顎歯列部3に装着した場合には、マウスピース2の凹部2aにアタッチメント10が嵌合する。
【0033】
アタッチメント10は、上記のように右の中切歯5の頬側(外側)の歯面5aに接着剤により固定され、この接着剤には、例えばブラケット用ボンディング剤が用いられる。具体的には、歯面5aをセルフエッチングプライマー(歯面調整材)により処理する。アタッチメント10の底面部11にボンディング剤を塗布し、上記セルフエッチングプライマーにより処理された歯面5aに底面部11を取り付け、光重合によりボンディング剤を硬化させて歯面5aに底面部11を固定する。上記ボンディング剤には、例えばガラスフィラー、メタクリル酸エステル、リン酸エステルモノマー、光重合開始材を含むものが用いられる。
【0034】
アタッチメント10は、縦長の三角錐形状に形成され、底面部11が歯面5aに固定されたとき、3本の稜線部15a,15b,15cのうち、底辺11aに対向する点11bから頂点までの稜線部15aが図3に示す歯軸5bと同方向となるように配置される。この場合、稜線部15aは、歯軸5bと重なるような位置に配置してもよく、あるいは歯軸5bと平行となるような位置に配置してもよい。したがって、他の2本の稜線部15b,15cは、歯軸5bと所定の角度を有して配置される。
【0035】
2本の稜線部15b,15cと側面部12,13の各底辺とのなす角度は、例えば45度に設定されている。本実施形態では、上記のように形成されたアタッチメント10を、底面部11を介して頬側(外側)の歯面5aに接着剤によって固定したことで、アタッチメント10は、マウスピース2の装着状態においてマウスピース2からの力を側面部14が受けて中切歯5を矯正すべき方向、すなわち圧下させる方向に力が作用することとなる。
【0036】
図3に示すように、アタッチメント10の初期値の縦の長さL1は、3.0mm+3.0mm~3.0mm-1.0mmの範囲である。すなわち、縦の長さL1は、6.0mm~2.0mmの範囲である。横の長さL2は、3.0mm~3.0mm-1.0mmの範囲である。すなわち、横の長さL2は、3.0mm~2.0mmの範囲である。図4に示すように、高さHは、1.5mm+1.0mm~1.5mm-0.5mmの範囲である。すなわち、高さHは、2.5mm~1.0mmの範囲である。
【0037】
ここで、アタッチメント10の縦横の相対的な長さは、横の長さL2が短く、縦の長さL1が長く形成されている。このように縦の長さL1が横の長さL2よりも長く形成したことで、マウスピース2に対する保持力が高まり、より矯正効果が高まる。同様に、アタッチメント10の高さHを高くすれば、マウスピース2に対する保持力が一段と高まり、より矯正効果が高まる。
【0038】
アタッチメント10は、コンポジットレジン(有機質(レジン)と無機質(ガラス粉等)からなる複合材料)やコンポマーで上記のように一体に成形されている。上記コンポジットレジンには、それ自体に接着性を持たせた自己接着性歯科用コンポジットレジンがあり、このコンポジットレジンは、歯科用接着剤の使用を省略することのできる材料である。自己接着性歯科用のコンポジットレジンは、例えば、機械的強度を付与するための架橋性単量体、フィラー、及び硬化性を向上させるための重合開始剤という歯科用コンポジットレジンの成分の他に、歯質への接着性を付与するために、歯科用接着剤に用いられている酸性基を有する単量体をさらに含むものもある。上記材料は、無色透明又は乳白色であることが望ましく、これにより口腔内に挿入した場合、上顎歯列部3に装着していることが目立たず、審美性に優れたものとなる。
【0039】
ここで、アタッチメント10は、あらかじめ型材によって一体成形することができる。特に、光重合コンポジットレジンの場合には、透明な型材が用いられる。
【0040】
次に、本実施形態のアタッチメント10の作用を説明する。
【0041】
まず、図1図3に示すように患者の上顎歯列部3の右の中切歯5の頬側(外側)の歯面5aにアタッチメント10を接着剤にて取り付ける。この場合、アタッチメント10は、3本の稜線部15a,15b,15cのうち、底辺11aに対向する点11bから頂点までの稜線部15aが図3に示す歯軸5bと同方向となるように配置される。なお、本実施形態では、アタッチメント10を上顎歯列部3の右の中切歯5の頬側(外側)の歯面5aに取り付けるようにしたが、他の上顎歯列部3の前歯4に取り付けるようにしてもよい。
【0042】
また、アタッチメント10は、取付状態の正面視において、二等辺三角形に形成され、この二等辺三角形の底辺11aが歯面5aの歯軸7b方向に対して直交する方向に取り付けられるとともに、この取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺11aに対向する点11bが歯肉部8側になるように配設される。
【0043】
次いで、マウスピース2を口腔内に挿入し、マウスピース2が上顎歯列部3の全体及び歯肉部9の一部を覆うように装着する。このとき、アタッチメント10がマウスピース2に形成された凹部2aに嵌合する。このマウスピース2の装着状態において、アタッチメント10の側面部12,13,14のうち、側面部14にマウスピース2の凹部2aが最も強い力が作用することから、中切歯5が圧下するように移動させる。ここで、側面部12,13は、それぞれ中切歯5の移動方向を誘導するガイドとしての機能を有する。
[発明の一実施形態の変形例]
図7は、本発明の一実施形態に係るアタッチメントを上顎歯列部の中切歯に取付方向を反転させた状態の変形例を示す拡大側面図である。
【0044】
なお、前記一実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して異なる構成及び作用について説明する。
【0045】
図7に示すように、本変形例は、上記実施形態のアタッチメント10を180度変えた状態を示している。本変形例は、歯面5aへの取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺11aに対向する点11bが歯冠部9の先端側に配設されるようにしている。
【0046】
本変形例では、上記のようにアタッチメント10を配置することで、アタッチメント10の側面部14がマウスピース2の凹部2aから最も強い力を受けることで、中切歯5を挺出させることができる。ここで、側面部12,13は、上記実施形態と同様に、それぞれ中切歯5の移動方向を誘導するガイドとしての機能を有する。その他の構成及び作用は、上記実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0047】
したがって、本実施形態及び変形例では、中切歯5を圧下させるか、あるいは挺出させるかによってアタッチメント10の取付方向を変えて側面部14にマウスピース2の凹部2aから最も強い力を作用させるようにしている。
【0048】
このように本実施形態及び変形例のマウスピース2は、アライナーとして使用され、個々の歯を圧下させるか、あるいは挺出すべき方向に徐々に移動させるようにしている。ここで、アタッチメント10は、縦の長さL1を横の長さL2よりも長く形成するとともに、高さHを高く形成して上顎歯列部3に対してマウスピース2の保持力を高めて、より複雑な方向に上顎歯列部3の右の中切歯5を圧下又は挺出させるように移動させる。
【0049】
このように本実施形態及び変形例によれば、アタッチメント10は、三角錐形状に形成されるとともに、歯面5aへの取付状態の正面視において、二等辺三角形に形成され、この二等辺三角形の底辺11aが歯面5aの歯軸5b方向に対して直交する方向に取り付けられることから、構造を極めて簡素化し、上顎歯列部3を構成する歯を所望の位置に圧下又は挺出することが可能となる。
【0050】
加えて、本実施形態及び変形例によれば、アタッチメント10は、三角錐形状に形成されていることから、側面部12,13,14が3つの面になるため、他の多角錐形状よりも着脱が容易になる。
【0051】
また、本実施形態によれば、アタッチメント10は、歯面5aへの取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺11aに対向する点11bが歯肉部8側に配設されるので、上顎歯列部3の歯を圧下させることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の変形例によれば、アタッチメント10は、歯面5aへの取付状態の正面視において、二等辺三角形の底辺11aに対向する点11bが歯冠部9先端側に配設されるので、上顎歯列部3の歯を挺出させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態及び変形例によれば、アタッチメント10は、上顎歯列部3の前歯4に取り付けられるので、圧下又は挺出する効果を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態及び変形例の歯科矯正具1によれば、アタッチメント10と、このアタッチメント10に対応した凹部2aが形成され、上顎歯列部3に装着された状態で凹部2aにアタッチメント10が嵌合されるマウスピース10と、を備えることから、構造を極めて簡素化し、上顎歯列部3を構成する歯を所望の位置に圧下又は挺出することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態及び変形例では、アタッチメント10を上顎歯列部3の中切歯5の歯面5aに取り付けた例について説明したが、上顎歯列部3の他の前歯4や奥歯7でもよく、また下顎歯列部の歯に固定するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施形態及び変形例では、マウスピース2を上顎歯列部3に装着した例について説明したが、これに限らず下顎歯列部を構成する前歯4や奥歯7にアタッチメント10を取り付け、この下顎歯列部にマウスピース2を装着する場合にも適用可能である。
【0057】
さらに、本実施形態及び変形例では、上顎歯列部3の前歯4及び奥歯7の全体を覆うようにマウスピース2を装着するようにしたが、これに限らず上顎歯列部3の前歯4だけ、あるいは奥歯7だけを覆うようにしてもよい。これは下顎歯列部の場合でも同様である。
【0058】
また、本実施形態及び変形例のアタッチメント10は、頬側(外側)に設けた例について説明したが、これに限らずアタッチメント10を舌側(内側)に設けてもよく、また頬側と舌側の双方に設けるようにしてもよい。このようにアタッチメント10を下顎歯列部の歯の舌側の歯面に固定したとしても、歯を圧下又は挺出する効果が得られる。
[発明の他の実施形態]
本発明の一実施形態及び変形例を説明したが、この実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0059】
上記一実施形態及び変形例では、マウスピース2を上顎歯列部3に装着した例について説明したが、これに限らず下顎歯列部に装着した場合、上顎歯列部3及び下顎歯列部の双方に装着した場合にも適用可能であり、要するに上顎歯列部3及び下顎歯列部の少なくとも一方に装着した場合に適用可能である。
【0060】
また、上記一実施形態及び変形例では、アタッチメント10を右の中切歯5だけに取り付けた例について説明したが、これに限定することなく、他の前歯4又は奥歯7にも複数取り付けるようにしてもよい。そして、アタッチメント10を前歯4又は奥歯7に複数取り付けた場合、複数の歯のうち、例えば第1の歯を圧下させ、第2の歯を挺出させ、第3の歯の向きを変えるように矯正するようにしてもよい。
【0061】
さらに、上記一実施形態及び変形例では、マウスピース2の素材、形状については、口腔内に挿入することができるもので同様の機能を有するものであれば、適宜の素材で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 歯科矯正具
2 マウスピース
2a 凹部
3 上顎歯列部
4 前歯
5 中切歯
5a 歯面
5b 歯軸
6 犬歯
7 奥歯
8 歯肉部
9 歯冠部
10 アタッチメント
11 底面部
11a 底辺
11b 点
12 側面部
13 側面部
14 側面部
15a~15c 稜線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7