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特開2023-15053生物学的流体から免疫阻害剤を除去するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015053
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】生物学的流体から免疫阻害剤を除去するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
A61M1/36 165
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022163897
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2021572881の分割
【原出願日】2019-11-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】521486239
【氏名又は名称】イミューニコム, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMUNICOM, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフス, スティーブン フランシス
(72)【発明者】
【氏名】オング, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャフリ, アミル
(72)【発明者】
【氏名】シーガル, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】プリンス, スティーブン マイケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がん患者の体液からの可溶性TNF受容体等の免疫阻害剤の除去するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】本システム及び方法は、がん患者の体液からの可溶性TNF受容体等の免疫阻害剤の除去のために有用である。いくつかの実施形態では、可溶性TNF受容体は、血漿から80%以上の効率で選択的に除去される。いくつかの実施形態では、システムは一本鎖TNFアルファの固定化捕捉リガンドを含む。本システム及び方法は、様々ながんの種類、ステージ、及び重症度の処置のために有用である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血漿から可溶性腫瘍壊死因子受容体(sTNF-R)を体外で除去するためのカラムであって、
前記血漿が通過するように構成された区画と、
前記区画内に配置された捕捉支持体と、を含み、
前記捕捉支持体が、少なくとも10%の捕捉効率及び1670ng/分未満の溶出速度を有する、カラム。
【請求項2】
前記捕捉効率が少なくとも50%である、請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記捕捉効率が少なくとも80%である、請求項2に記載のカラム。
【請求項4】
前記捕捉効率が少なくとも90%である、請求項3に記載のカラム。
【請求項5】
前記捕捉効率が少なくとも95%である、請求項4に記載のカラム。
【請求項6】
前記溶出速度が50ng/分未満である、請求項1に記載のカラム。
【請求項7】
前記溶出速度が10ng/分未満である、請求項6に記載のカラム。
【請求項8】
前記捕捉支持体が体積を有し、
前記溶出速度が、捕捉支持体1mlあたり150ng/分未満である、請求項1に記載のカラム。
【請求項9】
前記溶出速度が、捕捉支持体1mlあたり50ng/分未満である、請求項8に記載のカラム。
【請求項10】
前記溶出速度が、捕捉支持体1mlあたり10ng/分未満である、請求項9に記載のカラム。
【請求項11】
前記捕捉剤が、腫瘍壊死因子(TNF)の一部を含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項12】
前記捕捉剤が、一本鎖TNF(scTNF)を含む、請求項11に記載のカラム。
【請求項13】
前記scTNFが、還元的アミノ化によって、アフィニティクロマトグラフィー支持体材料、中空繊維膜、シート膜、膜カセット及びビーズのうちの1種に共有結合で連結される、請求項12に記載のカラム。
【請求項14】
前記一本鎖TNFが、少なくとも3つのTNFモノマー又はそれらの部分を含む、請求項12に記載のカラム。
【請求項15】
前記sTNF-RがTNF-R1を含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項16】
前記sTNF-RがTNF-R2を含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項17】
前記捕捉効率及び溶出速度が、前記カラムを通る前記血漿の流れの30秒間にわたる平均である、請求項1に記載のカラム。
【請求項18】
前記カラムが、前記カラムを通る前記血漿の流れの最初の5分間に前記捕捉効率及び溶出速度を示す、請求項1に記載のカラム。
【請求項19】
前記捕捉効率及び溶出速度が、前記カラムを通る前記血漿の流れの2時間にわたる平均である、請求項1に記載のカラム。
【請求項20】
前記カラムが、前記カラムを通る前記血漿の流れの間の任意の時間において、前記捕捉効率及び溶出速度を示す、請求項1に記載のカラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1.分野]
[01]本開示は、血漿から免疫阻害剤を除去するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
[2.緒言]
[02]がんを死滅させるための免疫系の活用は、1世紀以上にわたって腫瘍学者及びがん研究者の関心の的であった。患者の腫瘍が免疫刺激性細菌感染の後で寛解に入るという観察(例えばColey,W.B.(1991)Clin Orthop Relat Res,3~11頁;Hughes,W.T.及びSmith,D.R.(1973)Cancer 31,1008~1014頁;Yates,J.W.及びHolland,J.F.(1973)Cancer 32,1490~1498頁;Muller,H.E.(1974)(筆者の翻訳),Pathol Microbiol(Basel)40,297~304頁を参照)、並びにがんの免疫細胞浸潤と生存率との相関(例えばLipponen,P.K.ら(1992)Eur J Cancer 29A,69~75頁;Ma,D.及びGu,M.J.(1991)J Tongji Med Univ 11,235~239頁;Pastrnak,A.及びJansa,P.(1989)Acta Univ Palacki Olomuc Fac Med 124,7~71頁;Di Giorgioら(1992)Int Surg 77,256~260頁);Di Giorgio,A.ら(1992)Int Surg 77,256~260頁を参照)は、新生組織形成を免疫学的に制御できる可能性を示唆している。しかし、がん免疫療法の分野における研究者が、患者の予後において顕著な改善を主張できるようになったのは、わずか最近の10年間である。この分野における主要な成果は、T細胞活性化の負のレギュレーター又はチェックポイントを抑制する抗体の開発であった。これらの抗体は、「免疫チェックポイント阻害剤」と名付けられる薬物のクラスに属する。FDAによって承認された最初のものであるイピリムマブは、細胞傷害性T細胞関連プロテイン4(CTLA-4)を標的とする拮抗性抗体であり、2010年に転移黒色腫患者の全生存期間を改善した。関連する研究は、イピリムマブ及びグリコプロテイン100(gp100、黒色腫細胞タンパク質としても知られている)(患者403名)、イピリムマブ単独(137名)、又はgp100単独(136名)を受けるように割り付けられた切除不能のステージIII又はIVの黒色腫を有するHLA-A0201陽性患者全676名を評価した。メジアン全生存期間は、gp100単独を受けた患者の6.4か月と比較して、イピリムマブ及びgp100を受けた患者で10.0か月であった(死亡のハザード比0.68、P<0.001)。イピリムマブ単独でのメジアン全生存期間は10.1か月であった(gp100単独と比較した死亡のハザード比0.66、P=0.003)。イピリムマブ群の間では全生存期間の差は検出されなかった(イピリムマブ及びgp100とのハザード比1.04、P=0.76)(例えばHodi,F.S.ら(2010)N Engl J Med 363,711~723頁を参照)。抗CTLA-4療法の成功に続いて、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)又はそのリガンドPD-L1を標的とする抗体は、多種のがんにおける全生存期間の改善に有効であることが証明された(例えばHamid,O.ら(2013)N Engl J Med 369,134~144頁;Herbst,R.S.ら(2014)Nature 515,563~567頁;Powles,T.ら(2014)Nature 515,558~562頁;Topalian,S.L.ら(2014)J Clin Oncol 32,1020~1030頁;Ribas,A.及びWolchok,J.D.(2018)Science 359,1350~1355頁を参照)。例えば1つの研究では、296名の患者が抗PD-1リガンド抗体処置を受けた。奏功が評価できた236名の患者の中で、非小細胞肺がん、黒色腫、又は腎細胞がんの患者において客観的奏功(完全又は部分奏功)が観察された。集積奏功率(全用量)は、非小細胞肺がんの患者で18%(患者76名中14名)、黒色腫の患者で28%(患者94名中26名)、腎細胞がんの患者で27%(患者33名中9名)であった。奏功は持続的であり、1年以上のフォローアップを行った患者では31名中20名において奏功が1年以上持続した(Topalian,S.L.ら(2012)N Engl J Med 366,2443~2454頁を参照)。これらの研究の勇気づけられる結果は、がん研究の分野からの興味を刺激し、代替の免疫チェックポイント分子の標的化へのさらなる検討を鼓舞した。
【0003】
[03]チェックポイントの封鎖はがん治療におけるブレークスルーを表しているが、大多数のがん患者はこれらの処置に反応せず、いくつかの腫瘍の型は本質的に耐性があるようである。処置は進行中の免疫応答を強化するように設計されており、浸潤性T細胞を有しない腫瘍を含めて初期免疫活性化を欠く症例では非効率である。したがって、免疫細胞の動員を増強する治療戦略の開発は、免疫チェックポイントの封鎖に応答する患者の割合を増大させると考えられる。チェックポイント阻害剤の限界には、使用する抗体への患者の全身の曝露、並びに一貫して応答を誘起できないことが含まれる。
【0004】
[04]TNFα(腫瘍壊死因子-アルファ、又は本明細書で相互交換可能にTNFと称する)は、抗がん活性を促進し、その名称が暗示するように抗腫瘍剤として初期に特徴付けられた強力なサイトカインである(例えばCarswell,E.A.ら(1975)Proc Natl Acad Sci USA 72,3666~3670頁を参照)。続いて、TNFは腫瘍の微小環境の中でその文脈上の活性に応じて腫瘍促進と腫瘍抑制の両方の効果を有することが示された(例えばWang,X.及びLin,Y.(2008)Acta Pharmacol Sin 29,1275~1288頁を参照)。腫瘍の微小環境の中で、低レベルのTNFの発現は血管新生、血管の透過性、及び転移の可能性に寄与する一方、高レベル及び腫瘍への治療用送達の間では、TNFはアポトーシスによる血管の一体性の破壊、直接的な腫瘍の殺滅、及び抗腫瘍免疫応答の誘起を含む抗腫瘍効果を示した(例えばBerberoglu,U.ら(2004)Int J Biol Markers 19,130~134頁;Michalaki,V.ら(2004)Br J Cancer 90,2312~2316頁;Talmadge,J.E.ら(1987)Cancer Res 47,2563~2570頁を参照)。臨床的状況における増大したTNFの有利な効果が報告されている。例えば、61名の非小細胞肺がんの患者におけるTNF発現の研究は、より好ましい臨床転帰と直接相関する症例の45.9%でTNFの発現を実証した(例えばBoldrini,L.ら G.(2000)Br J Cancer 83,480~486頁を参照)。TNFの投与は、分離四肢投与について承認されており、肝がんの分離肝手技において臨床的有益性が示されている。
【0005】
[05]sTNF-R(TNFの可溶性受容体)は抗がん免疫応答を阻害し、TNFの毒性の制御に寄与している。TNFの抗腫瘍効果の天然の制御又は減衰は、血漿中に存在し、TNFに結合/TNFを中和する、放出された可溶性TNF受容体を含む阻害性分子の存在に帰せられる(例えばXanthoulea,S.ら(2004)J Exp Med 200,367~376頁;Aderka,D.ら(1998)J Clin Invest 101,650~659頁;Aderka,D.ら(1991)Cancer Res 51,5602~5607頁;Selinsky,C.L.ら(1998)Immunology 94,88~93頁;Selinsky,C.L.及びHowell,M.D.(2000)Cell Immunol 200,81~87頁を参照)。これらの可溶性阻害剤のがん促進活性は、プラズマフェレーシスを受けている患者で起こったがんの退縮の初期の観察の後で発見された(例えばIsrael,L.ら(1976)Lancet 2,642~643頁;Israel,L.ら(1977)Cancer 40,3146~3154頁を参照)。連続的な研究により、この観察はsTNF-Rの除去に帰せられることが示された。cDNAの分子クローニング及び組換えタンパク質の研究により、それらの抗TNF活性及び腫瘍促進機能が確認された(例えばSchall,T.J.ら(1990)Cell 61,361~370頁;Engelmann,H.ら(1990)J Biol Chem 265,1531~1536頁を参照)。
【0006】
[06]低用量のTNFでは、正常濃度のsTNF-R阻害剤は投与された少量のTNFに結合してこれを不活化することができる。しかし、増大した量の投薬又は正常レベルより高いレベルへのより高いTNF産生の刺激は、毒性の影響なしに治療効果のある抗腫瘍濃度に達するTNFの能力に対抗するsTNF-Rの放出を誘起する可能性がある。したがって、抗がん効果を達成するためにTNF阻害を克服する能力は、最大耐量(MTD)に極めて近い量のTNFの投与を必要とする。この理由により、全身TNF療法は、おそらく有効であろうが、多くのヒト臨床試験で毒性を示している。この不都合なリスク/ベネフィットの考慮のため、TNFを用いる全身療法は主として放棄されてきた。しかし、TNFへの全身曝露をブロックする分離四肢手技は、化学療法剤と組み合わせて実施されてきた(例えばDeroose,J.P.ら(2012)Ann Surg Oncol 19,627~635頁;Verhoef,C.ら(2007)Curr Treat Options Oncol 8,417~427頁を参照)。
【0007】
[07]腫瘍によって産生される免疫「ブロッキングファクター」を体外で除去する医療デバイスを用いる試みがある。残念ながら今までのところ、これらのデバイスには、a)他の生物材料の非特異的結合、b)デバイスから患者の循環系への免疫吸着性材料の「溶出」、及びc)標的タンパク質の循環系からの非効果的な除去、等の多くの限界がある。本発明は、従来のシステムのこれらの及びその他の限界を克服する。
【0008】
[概要]
[08]以下は、本手法のいくつかの態様の非網羅的なリストである。本手法のいくつかの態様及びその他の態様を、以下の開示に記載する。
【0009】
[09]したがって、本開示の1つ又は複数の態様は、体液の少なくとも1つの標的成分を除去するためのシステムに関する。システムは、患者から体液を受容するように構成された入り口、及び入り口に連結されて入り口から体液を受容するように構成された隔離チャンバーを備える。隔離チャンバーは、体液の少なくとも1つの標的成分に結合して、捕捉支持体と体液との接触に応答して隔離チャンバー中で少なくとも1つの標的成分を捕捉するように構成された捕捉支持体を備える。捕捉支持体は、少なくとも1つの標的成分に結合して体液中の少なくとも1つの標的成分の量を低減させるように構成されている。隔離チャンバーは、入り口とは分離された隔離チャンバーへのアクセスを提供するように構成された第1及び第2のアクセスポートを備える。第1及び第2のアクセスポートは、隔離チャンバーへの及び/又は隔離チャンバーからの捕捉支持体の挿入及び/又は除去を容易にするように構成されている。システムは、低減された量の少なくとも1つの標的成分を有する体液の一部又は全部の任意選択による患者に戻す再導入のために、低減された量の少なくとも1つの標的成分を有する体液を隔離チャンバーから通過させるように構成された出口、並びに隔離チャンバー中の捕捉支持体を入り口及び出口から分離するように構成された1つ又は複数のフィルターを備える。1つ又は複数のフィルターは、捕捉支持体を隔離チャンバー内に保持するように構成されている。
【0010】
[10]一実施形態では、(a)少なくとも1つの標的成分に結合する捕捉支持体の捕捉効率は、血漿流速45mL/分以下において80%以上であり、任意選択で(b)少なくとも1つの標的成分への捕捉支持体の結合親和性は少なくとも約10-7であり、及び/又は(c)出口を通過する捕捉支持体の溶出速度は約100ng/mL/分未満である。
【0011】
[11]一実施形態では、(b)少なくとも1つの標的成分への捕捉支持体の結合親和性は10-7以上であり、任意選択で(a)少なくとも1つの標的成分に結合する捕捉支持体の捕捉効率は、流速45mL/分以下において80%以上であり、及び/又は(c)出口を通過する捕捉支持体の溶出速度は約100ng/mL/分未満である。
【0012】
[12]一実施形態では、(c)出口を通過する捕捉支持体の溶出速度は約100ng/mL/分未満であり、任意選択で(a)少なくとも1つの標的成分に結合する捕捉支持体の捕捉効率は、流速45mL/分以下において80%以上であり、及び/又は(b)少なくとも1つの標的成分への捕捉支持体の結合親和性は10-7以上である。
【0013】
[13]一実施形態では、体液は、血漿を含む。
【0014】
[14]一実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、タンパク質、複合体、アセンブリー、又は細胞を含む。
【0015】
[15]一実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、患者における抗がん免疫応答を阻害するように機能する1つ又は複数の血漿成分を含む。
【0016】
[16]一実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、1つ又は複数の免疫阻害剤を含む。
【0017】
[17]一実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、可溶性TNF-α受容体を含む。
【0018】
[18]一実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、sTNF-R1受容体及び/又はsTNF-R2受容体を含む。
【0019】
[19]一実施形態では、捕捉支持体は、アフィニティクロマトグラフィー支持体材料を含む。他の実施形態では、捕捉支持体は、中空繊維膜、シート若しくはロール化シートの膜、膜カセット、及び/又はビーズを含む。
【0020】
[20]一実施形態では、捕捉支持体は、アフィニティクロマトグラフィー支持体材料を含み、アフィニティクロマトグラフィー支持体材料は、セファロース、アガロース、又はアクリルアミドを含む。
【0021】
[21]一実施形態では、捕捉支持体は、セラミック材料を含むがこれに限定されない多孔質又は非多孔質のマトリックス材料を含む。
【0022】
[22]一実施形態では、捕捉支持体は、体液の2つ以上の標的成分と結合するように構成されている。
【0023】
[23]一実施形態では、捕捉支持体は、抗体、抗体断片、結合ペプチド、アプタマー、又はアビマーが固定された固体支持体を含む。
【0024】
[24]一実施形態では、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0025】
[25]一実施形態では、捕捉支持体は、TNFα、TNFαのマルチマー、一本鎖TNFα、TNFαの断片、TNFαの断片のマルチマー、又はこれらの組合せを含む。
【0026】
[26]一実施形態では、TNFαのマルチマーは、その中の1つ又は複数のモノマーがアミノ末端からカルボキシ末端への連結の中にあるTNFαモノマーを含む。
【0027】
[27]ある特定の実施形態では、TNFαのマルチマーは、モノマーの間のスペーサーを含まなくてもよく、含んでもよい。
【0028】
[28]ある特定の実施形態では、スペーサーは、1つ又は複数のアミノ酸残基を含む。
【0029】
[29]一実施形態では、スペーサーは、1つ又は複数のグリシン、セリン、及び/又はアラニンアミノ酸を含む。
【0030】
[30]一実施形態では、捕捉支持体は、sc-TNFαリガンド、任意選択で配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の全配列又は部分配列を含む。
【0031】
[31]一実施形態では、捕捉支持体は、TNFαリガンドのトリマー形を含む。
【0032】
[32]一実施形態では、scTNFαリガンドのトリマー形は、スペーサーアミノ酸を有し若しくは有しない配列番号2又は配列番号3の配列を含む。
【0033】
[33]一実施形態では、捕捉支持体は、ビーズに結合したリガンドを含む。
【0034】
[34]一実施形態では、リガンドは、所与のビーズの上の所与の密度及び配向を有する。密度及び/又は配向は、リガンドと体液の少なくとも1つの標的成分との結合を増強するように構成されている。
【0035】
[35]一実施形態では、ビーズの大きさ、数、密度、及び/又は濃度は、ビーズを通過する体液の層流を容易にしてリガンドと体液の少なくとも1つの標的成分との結合を増強するように構成されている。
【0036】
[36]一実施形態では、ビーズは、結合特異性を増強するためにエタノールアミン中でクエンチされている。
【0037】
[37]一実施形態では、体液は、全血である。
【0038】
[38]一実施形態では、入り口、隔離チャンバー、及び出口は、体外閉回路カラムを形成している。
【0039】
[39]一実施形態では、体外閉回路カラムは、操作中に無菌のままであるように構成されている。
【0040】
[40]一実施形態では、システムは、体外閉回路カラムを損なうことなしに、捕捉された少なくとも1つの標的成分の全部又は一部のサンプリング又は除去を容易にするように構成された標的成分出口ポートを備える。
【0041】
[41]一実施形態では、システムは、体外閉回路カラムを損なうことなしに、隔離チャンバーへの溶出剤の導入を容易にするように構成された溶出剤ポートを備える。
【0042】
[42]一実施形態では、溶出剤ポートは、再使用のためにシステムを準備するように構成された調整剤を受容するようにさらに構成されている。
【0043】
[43]一実施形態では、システムは、入り口、隔離チャンバー、及び出口を通して再調整剤を駆動するように構成されたポンプをさらに備える。
【0044】
[44]一実施形態では、ポンプは、シリンジポンプ、ペリスタポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、又はこれらの組合せを含む。
【0045】
[45]一実施形態では、1つ又は複数のフィルターは、約3ミクロン~約100ミクロンの平均孔径を有する。
【0046】
[46]一実施形態では、システムは、同じ機能を有する捕捉支持体を備える1つ又は複数の追加の隔離チャンバーをさらに備える。
【0047】
[47]一実施形態では、1つ又は複数の追加の隔離チャンバーは、隔離チャンバーと組み合わされて、複数の異なる標的成分と結合するように構成された多段階分離回路を形成する。
【0048】
[48]一実施形態では、患者は、ヒト又は獣医学の対象である。獣医学の対象は、イヌ、ネコ等の家庭内動物、ウマ、ブタ、ウシ等の農場若しくは牧場の動物、及び/又はその他の動物を含み得る。
【0049】
[49]別の実施形態によれば、上記の実施形態のいずれかのシステムによって体液の少なくとも1つ又は複数の標的成分を除去する方法が提供される。本方法は、入り口を通して隔離チャンバーに患者からの体液を導くステップ、体液の少なくとも1つの標的成分を結合して隔離チャンバー中の少なくとも1つの標的成分を捕捉して、体液中の少なくとも1つの標的成分の量を低減させるステップ、及び任意選択で患者に戻す再導入のために低減された量の少なくとも1つの標的成分を有する体液の一部又は全部を隔離チャンバーから出口を通して通過させるステップを含む。
【0050】
[50]一実施形態では、本方法は、患者に戻して再導入された体液中の少なくとも1つの標的成分の低減された量を測定するステップをさらに含む。
【0051】
[51]一実施形態では、測定するステップは、液体クロマトグラフィー-質量スペクトル(LC-MS)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高性能液体クロマトグラフィー(UHPLC)、抵抗測定、発光測定、化学発光、電界発光、電界化学発光、クロマトグラフィーモニタリング、陽電子発光トモグラフィー(PET)、X線コンピュータトモグラフィー(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波、ガンマカメラ、単一光子発光コンピュータトモグラフィー(SPECT)、ELISA、表面プラスモン共鳴(SPR)、及び/又は二層干渉分光法(BLI)のうちの1つ又は複数を含む。
【0052】
[52]一実施形態では、本方法は、患者に戻して再導入された体液中の捕捉支持体の溶出速度を測定するステップをさらに含む。
【0053】
[53]いくつかの実施形態では、本方法は、ヒト、獣医学、家庭/コンパニオン動物、牧場/農場動物、及び/又はその他の用途のためである。
【0054】
[54]本明細書で開示したシステム又は方法のこれらの及びその他の目的物、特色、及び特徴、並びに操作の方法及び構造の関連する要素の機能、並びに部品及び製造の経済の組合せは、その全てが本明細書の一部を形成する以下の記述及び添付した特許請求の範囲を、付随する図面を参照して考慮することによって、より明確になる。ここで種々の図において同様の参照番号は対応する部品を指定している。しかし、図面は説明及び記述の目的のためのみであって、本発明の限定の定義としては意図していないことは明示的に理解すべきである。明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、「a」、「an」、及び「the」の単数形は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の参照物を含む。
【0055】
[55]上述の態様及び本手法のその他の態様は、以下の図面に鑑みて本出願を読めばより良く理解される。図面で同様の番号は類似又は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】1つ又は複数の実施形態による本システムの例示的実施形態を説明する図である。
図2】1つ又は複数の実施形態による本システムのより詳細な外観を提供する図である。
図3】1つ又は複数の実施形態による本システムの対応する断面図を説明する図である。
図4】1つ又は複数の実施形態による、体液(本例では血漿)の標的成分に結合し、隔離チャンバー中の標的成分を捕捉する、本システムのハウジングの隔離チャンバー内の捕捉支持体(例えば、本例ではリガンドがコートされたビーズ)を説明する図である。
図5】1つ又は複数の実施形態による、図4に示す捕捉支持体の拡大図である。拡大図は、ビーズ及び捕捉リガンドを含む捕捉支持体を示す。
図6】1つ又は複数の実施形態による、例示的な再生機構を説明する図である。
図7】1つ又は複数の実施形態による、入り口から出口への液流に対して直列又は並列に構成することができる2つ以上の内部隔離チャンバーをシステムが備える、例示的な実施形態を説明する図である。
図8】1つ又は複数の実施形態による、単一のプラズマフェレーシスフロー回路の中の直列及び/又は並列の構成で多数のシステムを利用することができる例示的な使用方法を説明する図である。
図9】1つ又は複数の実施形態による、単一のハウジングの中でそれぞれが独立的に制御できる流量バルブを有する多数の隔離チャンバーを説明する図である。
図10】1つ又は複数の実施形態による、本システムによって血液、血漿、及び/又はその他の体液の標的成分を除去する方法を説明する図である。
図11】1つ又は複数の実施形態による、手技時間の関数としての患者の血液プールからのsTNF-R1及びsTNF-R2の低減並びにカラムの捕捉効率を含む代表的なシステム性能の特徴を説明する図である。
【0057】
[例示的実施形態の詳細な説明]
[67]本発明は種々の改変及び代替の形態を受け入れることができるが、その特定の実施形態は図面において例として示され、本明細書において詳細に記述される。図面はスケール通りではないことがある。しかし図面及びその詳細な説明は開示した特定の形態に本発明を限定することを意図しておらず、その逆であり、添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲の中に含まれる全ての改変、等価物、及び代替物を包含するべきであることを意図していると理解されたい。
【0058】
[68]本明細書に記載した問題を軽減するため、本発明者らは、解決策を発明するとともに、ある場合には重要なことに、本分野において他の者には見過ごされてきた(又は予期されていなかった)問題を認識しなければならなかった。まさに、本発明者らは、産業傾向が本発明者らの予測通りに継続するならば、現在発生中であって将来もっと明確になるであろうこれらの問題を認識することの困難さを強調したい。さらに、その多くが同時に起こる諸問題に対処するので、いくつかの実施形態は課題に特定され、全ての実施形態が本明細書に記載した従来のシステムにおけるあらゆる問題に対処するわけでも、本明細書に記載したあらゆる利益を提供するわけでもないことを理解されたい。その上で、これらの問題の種々の置換を解決する改善を、以下に記述する。
【0059】
[69]本システム及び方法は、がん患者の免疫調節に有用であり、自己免疫性及び炎症性障害を含むがそれらに限らないその他の疾患の比較的有用な免疫調節を提供し得る。いくつかの実施形態では、免疫吸着手段を用いる患者の血液からの免疫抑制因子の体外除去が提供される。いくつかの実施形態では、本システム及び方法は、がん患者からの可溶性腫瘍壊死因子受容体(sTNF-R)の効率的な除去を提供する。TNFは、がんに対する身体の天然の免疫応答の一部として腫瘍の成長及び抑制を調節する内因性サイトカインである。しかし多くのがんでは、TNFの抗腫瘍効果は、可溶性TNF受容体(sTNF-R1及びsTNF-R2、例えばGatanaga,T.ら(1990)Lymphokine Res 9,225~229頁;Gatanaga,T.ら(1990)Proc Natl Acad Sci USA 87,8781~8784頁;Schall,T.J.ら(1990)Cell 61,361~370頁;Berberoglu,U.ら(2004)Int J Biol Markers 19,130~134頁を参照)として知られている循環中の阻害性分子の存在によってブロックされている。内因性TNFの治療的抗腫瘍効果をブロックするこれらの受容体は、がんにおいて増大し、疾患のステージと相関することが示されてきた(例えばAderka,D.ら(1991)Cancer Res 51,5602~5607頁を参照)。sTNF-Rはまた、乳がん、悪性黒色腫、結腸直腸がん、及び骨肉腫の予後インジケーターであり、患者の生存と負に相関する(例えばLangkopf,F.及びAtzpodien,J.(1994)Lancet 344,57~58頁;Viac,J.ら(1996)Eur J Cancer 32A,447~449頁を参照)。プラズマフェレーシス、即ちイムノフェレーシス(Immunopheresis)(商標)として知られているプロセスによって患者の血液からsTNF-Rを選択的に除去することは、内因性TNFの抗腫瘍効果の実体を表すことによって患者の天然の抗腫瘍免疫応答を増強し、それにより腫瘍負荷の低減を容易にし、患者の生存を改善することができる。
【0060】
[70]図1は、本システムの例示的実施形態を説明する(項目10)。図1において、システム10はアフェレーシス装置12に連結されていることが示されている。システム10は、sTNF-R(例えば腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1A(TNFRSF1A及びCD120a)としても知られている可溶性腫瘍壊死因子受容体1(sTNF-R1)、及び腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B(TNFRSF1B及びCD120b)としても知られている可溶性腫瘍壊死因子受容体2(sTNF-R2)を例示的標的成分としてがん患者14の血液から選択的に除去するように構成されている。システム10は、使用中の充填及び血漿の流れを容易にする種々のポートを有するハウジング16の中に高選択性結合マトリックスを含む。患者14から取り出された血液は処理されて血漿が得られ、血漿はプラズマフェレーシスの手技のためのアフェレーシス装置の血漿流路18の中にシステム10を設けることによって処理される。
【0061】
[71]市販のアフェレーシス装置12の例には、例えばTerumo BCT Spectra Optia Systemが含まれる。アフェレーシス装置のその他のメーカーには、それだけに限らないが、Fresenius、Haemonetics、Baxter、Nigale、及びAsahiが含まれる。次いでアフェレーシスはメーカーの説明書に従って実施され得る。
【0062】
[72]図1に示すように、アフェレーシス装置12は、患者14からの血液20の静脈内取出し、及び次に(例えば遠心力、膜フィルター、及び/又はその他の部品を使用して)血液の血漿及び細胞分画への分離22を容易にし得る。次いで血漿分画はシステム10にポンプで送られ、ここで血漿は例えば(本明細書に記載した)TNFリガンドを用いてsTNF-Rを捕捉する(本明細書に記載した結合マトリックスを含む)捕捉支持体を通過する。次いで血漿はポンプでシステム10の外に戻され、処理された血漿の一部又は全部は患者14の分離された細胞と合わされ、患者14の循環系に戻して再導入24される。
【0063】
[73]いくつかの実施形態では、処理された血漿は廃棄されて新鮮な血漿によって置き換えられる。例えば、血漿交換を同時に行ってもよく、交換血漿は阻害剤を除去するようにさらに処理される。例えば、血漿交換に続いて(例えば本明細書に記載した)イムノフェレーシスを行ってもよい。
【0064】
[74]本出願を通して血液、血漿、sTNF-R、及びTNFリガンドを具体的に述べているが、本明細書に記載した成分及び/又は原理は、その他の体液、体液のその他の標的成分、及び/又はその他の捕捉若しくは結合の要素に適用できることに留意されたい。
【0065】
[75]図2は、システム10のより詳細な外観を提供する。図3は、対応する断面図を示す。図2及び図3を参照して、システム10は、ハウジング16、入り口200、並びに捕捉支持体204、アクセスポート206及び208、出口210、1つ又は複数のフィルター(例えば図3に示す212及び214)、エンドキャップ250及び252を備える隔離チャンバー202、及び/又はその他の部品を備える。図2及び図3に示すように、システム10は、例えば体外閉回路カラムを形成し得る。
【0066】
[76]閉回路カラムは、操作中に無菌のままであるように構成され得る。いくつかの実施形態では、システム10の部品は、粒子を除去するために組立て前に例えば70%のイソプロピルアルコールで洗浄される。エンドキャップ250及び252にはフィルター212及び214を取り付け、バレル又は(例えば)チューブの末端に押し付けてハウジング16を形成し得る。キャップ254及び256は入り口200及び出口210にねじ込むか、及び/又はその他の方法で連結してもよい。この中間組立て品を包装し、例えばエチレンオキシド(EtO)を用いて滅菌する。残留EtOは製造工程を続ける前に消散させる。EtO滅菌した中間組立て品に、アクセスポート206及び208を通して捕捉支持体204を無菌的に充填し、次いでポート206及び208を(例えば)ポリカーボネートの(例えば)ルアー(例えば上述の)キャップでしっかりとキャップする。次いで組み立てたデバイスを個別に包装し、(例えば)17.5~30kGyの電子線照射で最終滅菌する。いくつかの実施形態では、利用できる他の滅菌手段には、ガンマ線照射、エチレンオキシド、過酸化水素、漂白、熱滅菌、蒸気滅菌、オゾン、並びに/又は捕捉支持体204の安定性及び/若しくはその他の因子に応じたその他の滅菌操作が含まれる。
【0067】
[77]ハウジング16、入り口200、出口210、及び/又はシステム10のその他の部品は、アフェレーシス装置(例えば図1に示す装置12)の(例えば血漿の)流路と連結するように構成してもよい。ハウジング16、入り口200、出口210、及び/又はシステム10のその他の部品は、患者の血液が例えば細胞分画と血漿分画とに(例えば本明細書に記載したように)分離された後にある流路の一点で、アフェレーシス装置の流路と連結するように構成してもよい。ハウジング16は、患者の体液を入り口200と出口210との間に導く流体チャネル又は流路を形成してもよい。
【0068】
[78]ハウジング16は、捕捉支持体204及び/又はシステム10のその他の部品の構造支持を提供し得る。ハウジング16は、円形の断面形状及び/又はその他の断面形状を有する長いチューブ状本体を形成し得る。ハウジング16は、捕捉支持体204、1つ又は複数のフィルター212及び/若しくは214、並びに/又はその他の部品を備える隔離チャンバー202を収容し得る。いくつかの実施形態では、ハウジング16及び/又はシステム10のその他の部品は、射出成形及び/又はその他の操作によって製造し得る。
【0069】
[79]ハウジング16はフィルター212及び214を収容し、それによりフィルター212及び214は入り口200と出口210との間の流体の流れ方向に実質的に垂直である。フィルター212及び214は、隔離チャンバー202の中の捕捉支持体204を入り口200及び出口210から分離するように構成してもよい。フィルター212、214は、捕捉支持体204を隔離チャンバー202の中に保持するように、及び/又はその他の機能を行うように、構成してもよい。
【0070】
[80]いくつかの実施形態では、フィルター212及び/又は214は、ハウジング16を通過する流体の流れの方向に実質的に垂直に取り付けられた多孔質バリアを形成し得る。フィルター212は入り口200に近接して、またフィルター214は出口210に近接して位置してもよく、それによりハウジング16の中に隔離チャンバー202が形成される。フィルター212及び/又は214は、捕捉支持体204(例えば本明細書に記載した1つ又は複数のビーズ)の(全てまで及び全てを含む)一部がシステム10を逃れて、例えば患者の循環系に流入することを防止するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、フィルター212及び/又は214は、例えば多孔質フリットを含み得る。いくつかの実施形態では、フィルター212、214は、例えば約3ミクロン~約100ミクロンの平均孔径、及び/又はその他の平均孔径を有し得る。いくつかの実施形態では、フィルター212及び214はハウジング16の内径より大きな直径を有し、それによりフィルター212及び214はハウジング16の中でぴったりとフィットし、体液がシステム10を通して流動した際に移動しない。いくつかの実施形態では、フィルター212及び214は、フィルター212及び214をハウジング16のリム(例えばハウジング16によって形成されるチューブのいずれかの末端)に対して押し付けるエンドキャップ250及び252(以下に記載)からの圧力によって適所に保持されている。いくつかの実施形態では、フィルター212及び214は、接着剤、ワッシャー、ガスケット、ステッチ、オーバーモールド、超音波溶接、及び/又はその他の部品並びに/若しくはプロセスによってハウジング16の中の適所に保持されている。いくつかの実施形態では、フィルター212及び214は、ポリエチレン及び/又はその他の材料から形成してもよい。
【0071】
[81]いくつかの実施形態では、ハウジング16は、入り口200及び出口210を形成し及び/又はこれらを備えるエンドキャップ250及び252をハウジング16のいずれかの末端に備える。エンドキャップ250及び252はハウジング16にねじ込まれ、及び/又はその他の方法で(例えばクリップ、クランプ、接着剤、超音波溶接、嵌合、その他によって)ハウジング16に連結してもよい。いくつかの実施形態では、エンドキャップ250及び/又は252は、システム10が実質的に気密であることを保証するようにハウジング16に固定してもよい。換言すれば、システム10は保存、輸送、及び使用の間の無菌性を保証するために、内部及び外部の圧力(空気と流体の両方)に耐えるように構成されている。いくつかの実施形態では、エンドキャップ250及び252は、それぞれ入り口200及び出口210で終端している。いくつかの実施形態では、入り口200及び/又は出口210はキャップ254、256を備え得る。いくつかの実施形態では、エンドキャップ250及び/又は252はポリプロピレン及び/又はその他の材料から形成してもよい。いくつかの実施形態では、キャップ254及び/又は256は、例えば高密度ポリエチレン及び/又はその他の材料から形成してもよい。
【0072】
[82]いくつかの実施形態では、ハウジング16はプラスチック及び/又はその他の材料から形成してもよい。例えば、ハウジング16は、ECTFE(エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、halarECTFE、ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン)、tefzelエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、FEP(フッ素化エチレンポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、Makrolonポリカーボネート、PEI(ポリエーテルイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PETG(ポリエチレンテレフタレートコポリマー)、PFA(ポリフルオロアルコキシ)、Teflon PFA、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PMP(ポリメチルペンテン)、ポリプロピレン、PPCO(ポリプロピレンコポリマー)、ポリスチレン、PSF(ポリスルホン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、SAN(スチレンアクリロニトリル)、TFE(テトラフルオロエチレン)、Teflon TFE、TMX(サーマノックス)、PMX(パーマノックス)、及び/又はその他の材料のうち1つ又は複数から形成してもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング16は、金属材料(例えば鉄、鉄合金、鋼、ステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金)、ガラス、及び/又はその他の材料から形成してもよい。
【0073】
[83]入り口200は、患者(例えば図1に示す患者14)から血液、血漿、及び/又はその他の体液を受容するように構成してもよい。出口210は、患者(例えば図1に示す患者14)に戻して再導入するために低減された量の1つ又は複数の標的成分を有する血液、血漿、及び/又はその他の体液を隔離チャンバー202から通過させるように構成してもよい。いくつかの実施形態では、入り口200及び/又は出口210は、ルアーフィッティング及び/又はその他の入り口若しくは出口の流体コネクタータイプ又は構成であってもよい。いくつかの実施形態では、入り口200及び/又は出口210は、アフェレーシス装置のチューブセット、静脈内チューブ延長セット、流体チューブアダプター、フィルター、ストップコック、及び/又は閉ループ患者流体ラインアセンブリーにおいて一般に用いられるその他のエレメントに流体的に連結されるように構成される。いくつかの実施形態では、入り口200及び/又は出口210は、患者からの血液、血漿、及び/又はその他の体液が約5mL/分~約300mL/分、及び/又はその他の流速でシステム10を流れるように構成してもよい。いくつかの実施形態では、流速は約10mL/分~約100mL/分であってもよい。いくつかの実施形態では、流速は約25mL/分~約75mL/分であってもよい。いくつかの実施形態では、流速は約35mL/分~約70mL/分であってもよい。いくつかの実施形態では、流速は約40mL/分~約60mL/分であってもよい。これらの例示的な流速は、本明細書に記載したシステムによって適応できる範囲内である。いくつかの手技については、5mL/分未満の流速では完了するために過度の時間を必要とすることがある。逆に、300mL/分を超える流速では、アフェレーシス装置と併せて用いた場合にシステム10の捕捉効率を制限することがある。しかし、300mL/分の流速が可能であることが予測される。入り口200及び/又は出口210は、そのような流速を容易にする特定の大きさの直径及び/又はその他の特徴を有し得る。
【0074】
[84]いくつかの実施形態では、入り口200及び/又は出口210は、(例えば)約200μgまでのsTNF-Rタンパク質を含むヒト血漿がシステム10を通過して流れるように構成してもよい。この例は、患者のsTNF-Rの期待される全血漿量に基づいている。ヒト血漿中におけるsTNF-R(sTNF-R1とsTNF-R2の組合せ)の濃度範囲はおよそ3~10ng/mLであり、例示的な患者の血漿体積は体重(W)1kgあたり50ccの範囲であろう。sTNF-Rの全量は約(W(kg)×50mL/kg×(3~10ng/mL)/1000ng/μg)である。即ち、(例えば)70kgの個体については、sTNF-Rの量は10.5~35μgの範囲となる。いくつかの実施形態では、システム10の捕捉能力の過剰量は、(例えば)約45mL/分までの流速でシステム10を流れる血漿についての過剰量のsTNF-Rの実験室におけるベンチ試験に基づいて、十分な効率の余裕を創成できる。いくつかの実施形態では、入り口200及び/又は出口210は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、マクロロン(Makrolon)(商標)、及び/又はその他の材料から形成してもよい。
【0075】
[85]隔離チャンバー202は、入り口200に連結してもよい。隔離チャンバー202は、入り口200から血液(例えば全血)、血漿、及び/又はその他の体液を受容するように構成してもよい。隔離チャンバー202は、捕捉支持体204、アクセスポート206、208、及び/又はその他の部品を備え得る。
【0076】
[86]捕捉支持体204は、血液、血漿、及び/又はその他の体液の少なくとも1つの標的成分と結合して、隔離チャンバー202の中で少なくとも1つの標的成分を捕捉するように構成してもよい。捕捉支持体204は、例えば(ビーズリガンド及び/又は本明細書に記載したその他の成分を含む)結合マトリックスであり、及び/又はそれを含み得る。捕捉は、捕捉支持体204と血液、血漿、及び/又はその他の体液との接触に応答して起こり得る。捕捉支持体204は、少なくとも1つの標的成分と結合して、血液、血漿、及び/又はその他の体液中の少なくとも1つの標的成分の量を低減するように構成してもよい。
【0077】
[87]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、複合体、アセンブリー、又は細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、患者における抗がん免疫応答を阻害するように機能する血漿又は血清成分等の1つ又は複数の血液製剤を含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分は、1つ又は複数の免疫阻害剤を含み得る。例えば、少なくとも1つの標的成分は、可溶性TNFα受容体、sTNF-R1受容体、sTNF-R2受容体、sTNF-R1及びsTNF-R2の受容体、並びに/又はその他の受容体及び受容体の組合せを含み得る。
【0078】
[88]いくつかの実施形態では、捕捉部分は、血漿中の他の特定の分子と結合してこれを捕捉するように選択してもよい。これらの他の分子又は標的の例としては、それだけに限らないが、アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレノ受容体、GABA受容体、アンギオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、コレシストキニン受容体、ドーパミン受容体、グルカゴン受容体、グルココルチコイド受容体、グルタメート受容体、ヒスタミン受容体、ミネラロコルチコイド受容体、オルファクトリー受容体、オピオイド受容体、プリン作動性受容体、セクレチン受容体、セロトニン受容体、ソマトスタチン受容体、ステロイドホルモン受容体、カルシウム検知受容体、ホルモン受容体、エリスロポエチン受容体、及びナトリウム利尿ペプチド受容体、又はこれらのリガンドが挙げられる。他の例には、それだけに限らないが、I型インターロイキン受容体等のI型サイトカイン受容体、エリスロポエチン受容体、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、成長ホルモン受容体、オンコスタチンM受容体、ミオスタチン受容体、白血病阻害因子受容体、II型インターロイキン受容体等のII型サイトカイン受容体、インターフェロンα/β受容体、インターフェロンγ受容体、又はこれらのリガンド;インターロイキン-1受容体、CSF1、ckit受容体、インターロイキン-18受容体、又はこれらのリガンド等の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;CD27、CD40、及びリンフォトキシン受容体又はこれらのリガンド;CCR1及びCXCR4等のサーペンタインCCR及びCXCRの受容体、並びにインターロイキン8受容体又はこれらのリガンドを含むケモカイン受容体;TGFβ受容体1及びTGFβ受容体2を含むTGFβ受容体又はこれらのリガンド;ガレクチン;並びに/又はその他の構造が含まれる(Ozaki及びLeonard,J.Biol.Chem 277:29355~29353頁,2002を参照)。
【0079】
[89]いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、固体支持体及び/又はその他の部品を含み得る。固体支持体は、アフィニティクロマトグラフィー支持体材料、中空繊維膜、シート状膜、膜カセット、ロール化シート膜、及び/又はその他の材料であってもよい。捕捉支持体204がアフィニティクロマトグラフィー支持体材料を含む実施形態では、アフィニティクロマトグラフィー支持体材料は、糖、セファロース、アガロース等の炭水化物若しくは多糖、又はアクリルアミド等のポリマー、及び/又はその他の材料を含み得る。
【0080】
[90]いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、多孔質又は非多孔質マトリックス材料を含み得る。いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、血液、血漿、及び/又はその他の体液の2つ以上の標的成分に結合するように構成してもよい。
【0081】
[91]いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、支持体に結合した親和性薬剤(例えば本明細書に記載したリガンド)を含むがこれに限定されない異なる捕捉部分を含むアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであってもよい。アフィニティクロマトグラフィーマトリックスは、親和性薬剤(例えばリガンド)と固体支持体との連結を容易にするため、代わりに臭化シアノゲン、トレシル、トリアジン、ビニルスルホン、アルデヒド、エポキシド、又は活性化されたカルボン酸等の、しかしこれらに限定されない連結基を含み得る。クロマトグラフィーマトリックスは、必要であれば固体支持体を化学的に活性化することによって、メチル-リジン親和性薬剤を連結基で固体支持体と連結し、親和性薬剤が固体支持体と共有結合するように固体支持体とメチル-リジン親和性薬剤とを接触させることによって調製してもよい。さらに、親和性薬剤がメチル化されたタンパク質及びペプチドとの結合のためによりアクセスしやすくなるように、リンカーを通じて親和性薬剤を固体支持体に連結してもよい。
【0082】
[92]いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、抗体、抗体断片、結合ペプチド、アプタマー、アビマー、及び/又はその他の成分が固定された固体支持体を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体はIgA、IgD、IgE、IgG、若しくはIgMのうち1つ又は複数、免疫グロブリンサブクラス、及びこれらの混合物、これらの組合せ、並びに/又はその他の抗体である。
【0083】
[93]いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、TNFα(上述のように、TNF及びTNFαは本明細書では相互交換可能に用いられる)、TNFのマルチマー、一本鎖(sc)TNF、TNFの断片、TNFの断片のマルチマー、又はこれらの組合せ等のリガンドを含む親和性薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、1つ又は複数の固体支持体に結合したTNFリガンドであり、及び/又はこれを含み得る。いくつかの実施形態では、結合は例えば共有結合連結及び/又はその他の結合であってもよい。
【0084】
[94]TNFの種類には、霊長類TNF及びヒトTNF等の哺乳動物TNFが含まれる。例示的なヒトTNFの配列には、
1.(SSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIAL、配列番号1)[処理されたTNFモノマー、Genbank受託番号AQY77150.1];
2.トリマー形:
(MCGSHHHHHHGSASSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIALGGGSGGGSGGGSGGGSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIALGGGSGGGSGGGSGGGSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIAL、配列番号2);及び
3.トリマー形:
(GSASSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIALGGGSGGGSGGGSGGGSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEIRPDYLDFAESGQVYFGIIALGGGSGGGSGGSGGGSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIAL、配列番号3)
が含まれる。
【0085】
[95]例示的なTNFは、配列番号1の配列のモノマー、配列番号1の配列のダイマー、配列番号1の配列のトリマー、又は配列番号2若しくは配列番号3のトリマー形、又はこれらの部分配列を含み得る。配列番号2又は配列番号3を含むモノマーは、任意選択でGGGS等のグリシン若しくはセリンのスペーサー配列、又は(GGGS)等のスペーサーマルチマーによって共有結合連結されてもよい。アミノ酸、スペーサー配列、及びスペーサーマルチマーがダイマー形又はトリマー形に組み込まれてもよく、組み込まれなくてもよい。
【0086】
[96]TNFの天然又は非天然に生じるバリアントが含まれる。そのようなバリアントには、機能を獲得又は喪失したバリアントが含まれる。
【0087】
[97]TNFバリアントの非限定的な例には、参照TNF配列の1つ又は複数のアミノ酸の置換(例えば1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100、又はそれ以上の残基)、付加(例えば1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100、又はそれ以上の残基の挿入)、及び欠失(例えば部分配列又は断片)が含まれる。いくつかの実施形態では、バリアントTNF配列は、未改変配列の機能又は活性、例えばsTNF-R(例えばsTNF-R1受容体及び/又はsTNF-R2受容体)に結合する能力の少なくとも一部を保持している。
【0088】
[98]バリアントは、1つ又は複数の非保存的若しくは保存的なアミノ酸配列の相違若しくは改変、又はその両方を有し得る。「保存的置換」は、1つのアミノ酸の生物学的、化学的、又は構造的に類似の残基による置き換えである。「生物学的に類似」は、置換が生物活性を破壊しないことを意味する。「構造的に類似」は、アミノ酸がアラニン、グリシン、及びセリン等の類似した長さ、又は類似した大きさの側鎖を有することを意味する。化学的類似性は、残基が同じ電荷を有するか、いずれも親水性又は疎水性であることを意味する。特定の例には、1つの疎水性残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシン、又はメチオニンの別の残基への置換、又は1つの極性残基の別の残基への置換、例えばアルギニンのリジンへの、グルタミン酸のアスパラギン酸への、又はグルタミンのアスパラギンへの、セリンのスレオニンへの置換等が含まれる。保存的置換の特定の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、又はメチオニン等の疎水性残基の別の残基への置換、極性残基の別の残基への置換、例えばアルギニンのリジンへの、グルタミン酸のアスパラギン酸への、又はグルタミンのアスパラギンへの置換等が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換には、典型的には以下のグループ、即ちグリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシンの中での置換が含まれる。「保存的置換」は、非置換の親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を用いることも含まれる。
【0089】
[99]そのようなバリアントには、例えばタンパク質又はポリペプチドが改変された又はさらなる特性を有するように、組換えDNA技術を用いて改変された、又は改変され得る、タンパク質又はポリペプチドが含まれる。バリアントは天然産生のタンパク質又はペプチド等の参照配列とは異なることがある。
【0090】
[100]アミノ酸配列レベルで、天然又は非天然に産生されるバリアントタンパク質は、参照タンパク質と少なくとも約70%同一、より典型的には約80%同一、さらにより典型的には約90%若しくはそれ以上同一となるが、非保存領域では実質的な領域における非同一性(例えば70%未満同一、例えば60%、50%又は40%未満さえも同一)が許される。他の実施形態では、配列は参照配列と少なくとも60%、70%、75%、又はそれ以上の同一性(例えば80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性)を有する。タンパク質又はポリペプチドにアミノ酸の変化を導入する手技は当業者には公知である(例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2007)を参照)。
【0091】
[101]用語「同一性」及びその文法的変形は、2つ以上の参照実体が「整列された」配列にある場合に、両者が同一であることを意味する。即ち例として、2つのポリペプチド配列が同一である場合には、少なくとも参照領域又は参照部分の中では、両者は同一のアミノ酸配列を有する。同一性は配列の定義された区域(領域又はドメイン)にわたり得る。同一性の「区域」又は「領域」は、同一である2つ以上の参照実体を指す。即ち、2つのタンパク質配列が1つ又は複数の配列の区域又は領域にわたって同一である場合には、これらはその領域の中で同一性を共有している。「整列された」配列は、参照配列と比較して失われたアミノ酸(ギャップ)の補正をしばしば含む多数のタンパク質(アミノ酸)配列を指す。
【0092】
[102]同一性は全配列長又は配列の一部にわたって延在し得る。例えば、同一性パーセントを共有する配列の長さは、2、3、4、5又はそれ以上の隣接するアミノ酸、又はそれ以上、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20等の隣接するアミノ酸である。別の非限定的な例では、同一性を共有する配列の長さは20以上の隣接するアミノ酸、又はそれ以上、例えば21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35等の隣接するアミノ酸である。さらなる非限定的な例では、同一性を共有する配列の長さは35以上の隣接するアミノ酸、例えば36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、45、47、48、49、50等の隣接するアミノ酸である。さらに特定の非限定的な例では、同一性を共有する配列の長さは、50以上のアミノ酸、例えば50~55、55~60、60~65、65~70、70~75、75~80、80~85、85~90、90~95、95~100、100~110等の隣接するアミノ酸である。
【0093】
[103]2つの配列の間の同一性の程度は、コンピュータプログラム及び数学的アルゴリズムを用いて確認することができる。配列同一性パーセントを計算するそのようなアルゴリズムは一般に、比較する領域又は区域にわたる配列のギャップ又はミスマッチを説明している。例えば、BLAST(例えばBLAST2.0)検索アルゴリズム(例えばNCBIを通して公衆利用可能なAltschulら、J.Mol.Biol.215:403頁(1990)を参照)は、以下の例示的な検索パラメーターを有している。ミスマッチ:-2、ギャップオープン:5、ギャップエクステンション:2。タンパク質又はポリペプチドの配列比較のため、BLASTPアルゴリズムが典型的にはPAM100、PAM250、BLOSUM62、又はBLOSUM50等のスコアリングマトリックスと組み合わせて用いられる。FASTA(例えばFASTA2及びFASTA3)及びSSEARCH配列比較プログラムも、同一性の程度を定量するために用いられる(Pearsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444頁(1988);Pearson,Methods Mol Biol.132:185頁(2000);及びSmithら、J.Mol.Biol.147:195頁(1981))。Delaunay系トポロジカルマッピングを用いてタンパク質構造の類似性を定量するためのプログラムも開発されている(Bostickら、Biochem Biophys Res Commun.304:320頁(2003))。
【0094】
[104]TNF等のリガンド及びタンパク質は、付加及び挿入、例えば異種のドメインを含む。付加(例えば異種のドメイン)は、任意の種類の分子の共有又は非共有の結合であり得る。典型的には、付加及び挿入(例えば異種のドメイン)は、相補的又は独特の機能又は活性を付与する。
【0095】
[105]付加又は挿入の非限定的な例としては、アミノ酸スペーサー、2つ以上のアミノ酸を含むスペーサー、及び2つ以上のアミノ酸を含むそのようなスペーサーのマルチマーがある。スペーサーのアミノ酸及びマルチマーとして機能するアミノ酸の非限定的な例には、グリシン、セリン、及びアラニンが含まれる。
【0096】
[106]付加及び挿入にはキメラ及び融合配列が含まれ、これはその配列に共有結合した天然(野生型)の参照配列の中に正常では存在しない1つ又は複数の分子を有するタンパク質配列である。用語「融合」又は「キメラ」、及びこれらの文法的変形は、その分子の部分又は一部が、それらが典型的には天然に共存しないので、その分子とは区別される(異種の)異なる実体を含むことを意味する。即ち、例えば融合又はキメラの1つの部分は、天然には共存せず構造的に区別される部分を含むか、又はそれからなる。
【0097】
[107]いくつかの実施形態では、TNFリガンドを(1つ又は複数の)固体支持体に共有結合で連結する方法には、アミン還元化学、臭化シアノゲン(CNBr)、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボニルジイミダゾール、還元的アミノ化、2-フルオロ-1-メチルピリジニウム(FMP)活性化、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)媒介アミド結合形成、有機スルホニルクロリド、トシルクロリド及びトレシルクロリド、ジビニルスルホン、アズラクトン、塩化シアヌル(トリクロロ-s-トリアジン)、スルフヒドリル反応性化学、ヨードアセチル及びブロモアセチル活性化、マレイミド、ピリジルジスルフィド、ジビニルスルホン、エポキシ若しくはビスオキシラン、TNF-チオール、カルボニル反応性化学、ヒドラジド、還元的アミノ化、ヒドロキシル反応性化学、塩化シアヌル、活性水素反応性化学、ジアゾニウム、マンニッヒ縮合、光反応架橋、CNBr活性化及び過ヨウ素酸塩活性化を伴う固定化血清アルブミン、並びに/又はその他の方法が含まれる。
【0098】
[108]いくつかの実施形態では、結合は例えばイオン性結合、静電結合、ファンデルワールス結合、疎水性結合、及び/又はその他の結合であり得る。いくつかの実施形態では、静電結合は、ビオチンに結合した固定化アビジン、ストレプトアビジン及びモノマーアビジン、抗体抗原複合体、リガンド受容体複合体、並びに/又はその他の連結分子等の適合する分子を用いてTNFリガンドと1つ又は複数の固体支持体との間に形成してもよい。
【0099】
[109]いくつかの実施形態では、固体支持体は、アガロース、セファロース、セルロース、多孔質ガラス、シリカ、アクリルアミド誘導体ポリアクリルアミドビーズ、トリスアクリル、セファクリル、ウルトロゲル(Ultrogel)(登録商標)AcAクロマトグラフィー吸着剤(Pall Corporation)、アズラクトンビーズ、メタクリレート誘導体、TSKゲル(TSKgel)(登録商標)クロマトグラフィーゲル(Tosoh Corporation)、トヨパール(TOYOPEARL)(登録商標)HWポリマーゲル(Tosoh Corporation)、HEMA(2-ヒドロキシメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシメタクリレート)、Eupergit、ポリスチレン及びその誘導体、Poros、ポリエーテルスルホン、多糖、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリビニリデンフルオリド、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル))、ポリカーボネート、ポリエチレン、ガラス、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(アゾラクトン)、ポリスチレン、ポリラクチド、セラミック、ナイロン、金属、並びに/又はその他の材料等の材料から形成してもよい。いくつかの実施形態では、固体支持体は、プレート、膜、ビーズ、セラミック、及び/又はその他の部品によって形成してもよい。
【0100】
[110]いくつかの実施形態では、固体支持体は、例えばビーズであるか、又はビーズを含み得る。いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、ビーズに結合したリガンドを含む。上述のように、いくつかの実施形態では、リガンドはsc(一本鎖)-TNFαリガンドであるか、又はこれを含み得る。いくつかの実施形態では、リガンドはsc-TNFリガンドのダイマー形又はトリマー形であるか、又はこれらを含み得る。いくつかの実施形態では、リガンドは、例えば患者血漿からのsTNF-Rに結合し、これを効率的に捕捉する一本鎖ポリペプチド(sc-TNF)リガンド(モノマー、ダイマー、又はトリマー)等のTNFリガンドであり、及び/又はこれを含み得る。
【0101】
[111]改変されたアミノ酸配列又はタンパク質の純度によるコンフォメーションの変化を有するリガンドは、結合親和性の増強又は低減等の実質的な変化の原因となると考えられる。配列内のそのような変異は、それぞれポリペプチドのsTNF-Rへの結合効率を改善又は低下させる可能性がある。TNF製剤中の不純物は、使用するタンパク質の全量に比例して連結されるTNFの量を減少させることによって、連結に用いられるTNFの量を低下させる可能性がある。これらのリガンドは、患者の生物材料のこの標的部分について高い標的親和性又は結合親和性を有し得る。そのような結合親和性はKとして表される(K値が低いと結合親和性が高くなることに留意されたい)。リガンドの代表的な標的親和性は、例えば約10-6より大きく、又は約10-7より大きく、又は約10-8より大きく、又は約10-9より大きく、又は約10-10より大きく、又は約10-11より大きく、又は約10-12より大きく、又は約10-13より大きいことがあり得る。TNFのsTNF-R1に対する親和性は、例えばほぼ10-11であってもよい。TNFのsTNF-R2に対する親和性は、例えばほぼ10-10であってもよい。
【0102】
[112]いくつかの実施形態では、sc-TNFリガンドはsc-TNFα分子を含む。いくつかの実施形態では、sc-TNFリガンドはTNFαモノマー、TNFαタンパク質の1つ若しくは複数の複合体、及び/又はその他の成分を含む。いくつかの実施形態では、複合体はダイマー、トリマー、マルチマー、ムテイン、及び/又はこれらの断片を含む。いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、複数のアガロースビーズにコンジュゲートしたsc-TNFタンパク質リガンド(例えばこれは例えば図1~3に示すようにシステム10を通過して循環する血漿中に存在するsTNF-Rに選択的に結合する)を含み得る。
【0103】
[113]いくつかの実施形態では、sc-TNF(及び/又はその他のリガンド)の生成は、遺伝子操作及びタンパク質発現の種々の手段を通じて実施してもよい(例えばMuller,R.ら(1986)FEBS Lett 197,99~104頁;Mori,T.ら(1994)Gene 144,289~293頁;Horwitz,A.H.ら(1996)Protein Expr Purif 8,28~40頁;Li,H.ら(2019)World J Microbiol Biotechnol 35,27頁;Ashman,K.ら(1989)Protein Eng 2,387~391頁;Su,X.ら(1992)Biotechniques 13,756~762頁;Li,C.B.ら(1992)Sci China B 35,319~328頁;Guo,D.ら(1995)Biochem Biophys Res Commun 207,927~932頁;Xiang,J.ら(1997)J Biotechnol 53,3~12頁;Tang,P.ら(1996)Biochemistry 35,8216~8225頁を参照)。
【0104】
[114]リガンドは、所与の支持体(例えばビーズ等)の上で所与の密度及び配向を有し得る。リガンドは、例えばアミン又はチオール部分を通じてビーズ(及び/又はその他の支持体)に共有結合で連結することができる。密度及び配向は、リガンドと体液の標的成分との間の結合を増強するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、リガンドは結合のアクセス可能性のためにアミノ(N)又はカルボキシル(C)末端において支持マトリックス(例えば所与のビーズ)から外へ延在するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、結合に干渉する可能性のある立体障害を低減する手段として、通過する体液の中にリガンドを延在させるために、(例えば)ビーズ表面とリガンドとの間にリンカーを設けてもよい。
【0105】
[115]密度は、支持体1mgあたりのリガンドのmgとして表すことができる。いくつかの実施形態では、リガンドは54Kのタンパク質であってもよい。例としてであって限定なく、支持体は例えば少なくとも約0.1mg(1.8×10-6ミリモル)リガンド/mg支持体(例えばビーズ)、少なくとも約1mg(18×10-6ミリモル)リガンド/mg支持体(例えばビーズ)、少なくとも約5mgリガンド/mg支持体(例えばビーズ)、少なくとも約7mg(1.3×10-4ミリモル)リガンド/mg支持体(例えばビーズ)、少なくとも約10mgリガンド/mg支持体(例えばビーズ)、少なくとも約15mgリガンド/mg支持体(例えばビーズ)、又は少なくとも約20mgリガンド/mg支持体(例えばビーズ)、又はそれ以上のリガンド密度を有し得る。
【0106】
[116](例えばハウジング16の形状及び大きさと組み合わせた)ビーズ等の支持体の大きさ、数、密度、及び/又は濃度は、リガンドと体液中の標的成分との結合を増強するために、ビーズを通過する血液、血漿、及び/又はその他の体液の層流を容易にするように構成してもよい。ビーズの大きさを増大させることは、比例して、より高い流速に適応し得る。連結したリガンドの密度の増大は捕捉容量を増大させ得る一方、標的分子の効果的な結合に干渉する可能性のある立体障害に寄与し得る濃縮を避けることができる。支持体(例えばビーズ)の大きさ、数、密度、配向、及び/又は濃度は、例えば捕捉速度と臨床実用的な手技時間との間のトレードオフを効果的にバランスさせるシステム10を通過する血漿の流速を容易にし得る。例えば、システム10の1つの実施形態を含むプラズマフェレーシス手技には、患者血漿からのsTNF-R1/R2の特定の標的濃度の低減を達成するために、隔離チャンバー202を通過して患者血漿体積の2倍を循環させる必要があり得る。一方、第1の実施形態の2倍の捕捉速度効率を有する代替の実施形態では、同程度のsTNF-R1/R2濃度の低減を達成して、それにより臨床手技時間をほぼ2分の1に低減するために、その隔離チャンバーを通過して患者血漿体積の1倍を循環させることのみが必要である。いくつかの実施形態では、ビーズは、市販のアガロース又はポリアクリルアミド組成物等の1つ又は複数の異なるビーズ材料を含み得る。
【0107】
[117]いくつかの実施形態では、ビーズ及び/又はその他の固体支持体は、それらがフィルター212及び214(本明細書のフィルター孔径に関する考察を参照)を通過することを防止する大きさを有してもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは、結合特異性を増強するために、エタノールアミン又はエチレンジアミンで(TNFの連結の後で残った結合部位がその占有において飽和している場合)クエンチしてもよい。エタノールアミンは例えばその生体親和性プロファイルのためにクエンチ剤として用いられる。いくつかの実施形態では、制御を改善し回収を最大化するために(又はその他の理由で)、ビーズをイムロン、ポリスチレン、又はポリエチレン等の薬剤で前処理してもよく、及び/又はビーズを市販の架橋剤で前処理してもよい。架橋剤は、1つ又は複数の循環免疫複合体を捕捉する分子の固相への結合を容易にするために用いられる任意の化学物質であってもよい。市販の架橋剤の非限定的な例としては、例えばポリ-L-リジン、グルタルアルデヒド、及び/又は臭化シアノゲンがある。
【0108】
[118]いくつかの実施形態では、ビーズは、(例えば本明細書に記載した)共有又は非共有で結合した親和性分子を含み得る結合マトリックスを形成し得る。いくつかの実施形態では、ビーズは例えば直径20~1,000μmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは例えば直径25~500μmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは例えば直径25~200μmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは例えば直径40~180μmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは例えば直径50~170μmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは例えば直径65~160μmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは例えば直径75~150μmの範囲であってもよい。
【0109】
[119]ビーズは、生体親和性であって、種々のリガンドが(例えば上述のように)共有結合で連結されるか、又は静電的に結合する材料から形成してもよい。リガンドの結合は、アミン還元化学、臭化シアノゲン(CNBr)、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボニルジイミダゾール、還元的アミノ化、FMP活性化、EDC媒介アミド結合形成、有機スルホニルクロリド、トシルクロリド及びトレシルクロリド、ジビニルスルホン、アズラクトン、塩化シアヌル(トリクロロ-s-トリアジン)、スルフヒドリル反応性化学、ヨードアセチル及びブロモアセチル活性化法、マレイミド、ピリジルジスルフィド、ジビニルスルホン、エポキシ若しくはビスオキシラン、TNF-チオール、カルボニル反応性化学、ヒドラジド、還元的アミノ化、ヒドロキシル反応性化学、塩化シアヌル、活性水素反応性化学、ジアゾニウム、マンニッヒ縮合、光反応架橋、並びに/又はその他の操作等の共有結合法を用いて実施してもよい。連結は、CNBr活性化又は過ヨウ素酸塩活性化を伴う固定化血清アルブミンを用いて行うこともできる。いくつかの実施形態では、結合はa)ビオチンに結合した固定化アビジン、ストレプトアビジン及びモノマーアビジン、b)抗体抗原複合体、及び/又はc)リガンド-受容体複合体等の非共有相互作用を用いて実施してもよい。
【0110】
[120]いくつかの実施形態では、標的成分に結合する捕捉支持体204の、[1-(出口210におけるsTNF-Rの血漿中濃度/入り口200におけるsTNF-Rの血漿中濃度)]×100と等価で、パーセンテージとして表される捕捉効率は、sTNF-R1及び/又はsTNF-R2の少なくとも10%以上であってもよい。いくつかの実施形態では、捕捉効率は少なくとも50%以上であってもよい。いくつかの実施形態では、捕捉効率は少なくとも80%以上であってもよい。いくつかの実施形態では、捕捉効率は少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上であってもよい。
【0111】
[121]より多くの標的薬剤がカラム(システム10)内に集積して捕捉されるとともにシステムの捕捉マトリックス中の利用可能な結合部位が減少するので、捕捉効率値は時間に基づく成分を考慮に入れ得る(例えば処置の最初の5、10、15、30、45、60、90、120分、又はそれより長時間にわたる捕捉効率)。いくつかの非限定的な例として、いくつかの実施形態では、例えば流れている生物試料の中のsTNF-Rタンパク質(sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)の少なくとも80%以上が、約30分以内に隔離チャンバー202の中でTNFリガンドに結合するようになり得る。いくつかの実施形態では、流れている生物試料の中のsTNF-Rタンパク質(sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)の少なくとも90%以上が、約30分以内に隔離チャンバー202の中でTNFリガンドに結合するようになり得る。いくつかの実施形態では、流れている生物試料の中のsTNF-Rタンパク質(sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)の少なくとも95%以上が、約30分以内に隔離チャンバー202の中でTNFリガンドに結合するようになり得る。いくつかの実施形態では、流れている生物試料の中のsTNF-Rタンパク質(sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)の少なくとも96%以上が、約30分以内に隔離チャンバー202の中でTNFリガンドに結合するようになり得る。いくつかの実施形態では、流れている生物試料の中のsTNF-Rタンパク質(sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)の少なくとも97%以上が、約30分以内に隔離チャンバー202の中でTNFリガンドに結合するようになり得る。いくつかの実施形態では、流れている生物試料の中のsTNF-Rタンパク質(sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)の少なくとも98%以上が、約30分以内に隔離チャンバー202の中でTNFリガンドに結合するようになり得る。いくつかの実施形態では、流れている生物試料の中のsTNF-Rタンパク質(sTNF-R1及び/又はsTNF-R2)の少なくとも99%以上が、約30分以内に隔離チャンバー202の中でTNFリガンドに結合するようになり得る。
【0112】
[122]いずれの理論にも縛られることを望まないが、本明細書に記載した捕捉効率値は、上述の(例えば極めて高い標的親和性を有する)sc-TNFリガンドの使用、トリマー形のsc-TNFリガンドの使用、リガンドの純度、ビーズ上のリガンドの密度、ビーズ上のリガンドの結合配向、ビーズの大きさ、システム10の中のビーズの数、密度、及び濃度、捕捉効率と臨床手技時間とをバランスさせるシステム10を通過する流速、ビーズを通過する層流が得られるハウジング16の物理的大きさ及び構造、リガンドをビーズに連結するために用いる(例えば化学的及び/又は静電的)プロセス、滅菌手法及び放射線量、並びに/又はその他の因子に起因し得る。換言すれば(再びいずれの理論にも縛られることを望まないが)、例えばカラム(システム10)の効率が高い1つの理由は、リガンドの高い結合効率と併せて、ビーズマトリックス上の捕捉リガンドの量が多いことによるであろう。
【0113】
[123]いくつかの実施形態では、標的成分に対する捕捉支持体204の高い結合特異性及び/又は親和性は、捕捉リガンドの唯一の既知の相互作用が血漿中のsTNF-R1及び/又はsTNF-R2に限られているためであろう。この結合特異性は、上述のsc-TNFリガンドの使用、トリマー形のsc-TNFリガンド、ビーズ(の例えば化学組成)及び/又は特定のビーズマトリックスを形成するために用いる材料、ビーズをクエンチするための(例えば非特異結合を低減するために用いる)エタノールアミンの使用、標的タンパク質結合と非特異的結合との最適化、フィルター212及び214に用いる孔径、並びに/又はその他の因子に起因し得る。
【0114】
[124]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-5又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-6である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-7である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-8である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-9である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-10である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-11である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-12である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-13である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的成分に対する捕捉支持体の結合親和性は、少なくとも約10-14である。
【0115】
[125]いくつかの実施形態では、システム10は、1日最大耐量(MTD)限界の1000分の1未満のTNF溶出速度を有するように構成してもよい(例えばGoossens,V.ら(1995)Proc.Natl Acad.Sci.USA,92,8115~8119頁を参照)。いくつかの実施形態では、システム10は、MTD用量限界の10000分の1未満の溶出速度を有するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、システム10は、1日限界MTDの500分の1未満の溶出速度を有するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、システム10は、1日限界MTDの100分の1未満の溶出速度を有するように構成してもよい。これにより、患者の循環系への捕捉支持体204(例えば本明細書に記載したリガンド)の一部の逃散(即ち、溶出)に起因する臨床的影響及び/又は副反応によって偏ることのない、1つ又は複数の標的成分の成功した効率的で特異的な捕捉を含むシステム10の臨床的有効性が保証され得る。
【0116】
[126]溶出速度は、生産後にシステム10の隔離チャンバー202の中に含まれる捕捉支持体204の全体積に対する、システム10から逃散した捕捉支持体204の(例えばng/mL/分の単位での)パーセントとして定義され得る。例えばいくつかの実施形態では、システム10は約150ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。いくつかの実施形態では、システム10は約100ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。いくつかの実施形態では、システム10は約80ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。いくつかの実施形態では、システム10は約50ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。いくつかの実施形態では、システム10は約40ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。いくつかの実施形態では、システム10は約30ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。いくつかの実施形態では、システム10は約20ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。いくつかの実施形態では、システム10は約10ng/mL/分未満の溶出速度を有し得る。
【0117】
[127]溶出速度は、sc-TNFリガンドとビーズとの間の(例えば化学的及び/又は静電的)結合の強さ及び一体性、特定のリガンドとの還元的アミノ化化学の使用、トリマー形のsc-TNFリガンドの使用、ビーズにリガンドを連結するために用いる(例えば化学的及び/又は静電的)プロセス、患者の処置のためにシステム10を準備するための臨床的前処理アプローチ(例えば使用前の洗い流しの体積及び流速)、捕捉効率と臨床的手技時間とをバランスさせるシステム10を通過する臨床実用的な流速、製造中のハウジング16の清浄化、生産において利用する滅菌手法及び放射線量、並びに/又はその他の因子に起因し得る。いくつかの実施形態では、システム10の臨床的前処理準備(例えば使用前の洗い流しの体積及び流速)は、約100mL/分の流速の1リッターの正常食塩水による洗い流しを含む。
【0118】
[128]非限定的な例として、図4及び図5は、体液(本実施例では(sTNF-R1 402及びsTNF-R2 403を含む)血漿404)中の標的成分402(sTNF-R1)及び/又は第2の標的成分403 sTNF-R2(これらは単に例であり、より多くの標的成分が可能である)に結合して隔離チャンバー202の中で標的成分402及び403を捕捉する、ハウジング16の隔離チャンバー202の中の捕捉支持体204(例えば本実施例ではビーズ400)を図示している。図5は、図4に示すビーズ400(例えば捕捉支持体の一部)の拡大図である。図5は、入り口200から出口210(図1~3)へシステム10(図1~3)を通過する体液(例えば血漿404)の方向500を示す。いくつかの実施形態では、システム10は対称であってもよく、装置のいずれかの端部が上向き流の入り口又は下向き流の出口として働くように用いることを臨床使用者が選択できるように双方向であってもよい。
【0119】
[129]図4及び図5に示すように、捕捉支持体204と体液(血漿404)との間に接触がある場合に、捕捉が生じる。具体的には、捕捉は、血漿404中のsTNF-R1及びsTNF-R2分子402、403と、ビーズ400に結合した(連結された)リガンド(例えば上述のsc-TNFリガンド)410との間の近接した及び/又は直接の接触に応答して生じる。リガンド410とビーズ400との間の結合412も示している。捕捉支持体204(例えばビーズ400とリガンド410の組合せ)は、1つ又は複数の標的成分402、403(sTNF-R1及びsTNF-R2分子)に結合して体液(例えば血漿404)中の1つ又は複数の標的成分402、403の量を低減するように構成してもよい。
【0120】
[130]いくつかの実施形態では、処理されたsTNF-R欠乏血漿が出口210(図2及び図3)を通過すれば、処理されたsTNF-R欠乏試料の一部又は全部は(例えば図1に示すアフェレーシス装置を介して)患者に再注入され得る。sTNF-Rが除去されれば、患者血液中の複合体化していないsTNF-Rの貯蔵が低減し、(1つ又は複数の)腫瘍部位における抗がん効果を促進するTNFの利用可能性の増大に向けた濃度平衡のシフトがもたらされる。
【0121】
[131]本明細書に記載したように、システム10(図1~3)は、免疫抑制の状態に伴う免疫抑制因子を選択的に除去するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、免疫抑制因子は可溶性TNF受容体1及び可溶性TNF受容体2(sTNF-R)である。患者の血液、血漿、及び/又はその他の体液からsTNF-Rを除去することは、内因性TNFの利用可能性の増大をもたらし、これは(1つ又は複数の)腫瘍部位における抗がん効果を促進する。
【0122】
[132]図2及び図3に戻って、アクセスポート206、208は、隔離チャンバー202へのアクセスを提供するように構成してもよい。このアクセスは、入り口200、出口210、及び/又はその他のアクセスポイントを介するアクセスから分離され得る。アクセスポート206及び208は、隔離チャンバー202への、又はそれからの、捕捉支持体204の挿入及び/又は取出しを容易にするように構成してもよい。これは、例えばシステム10の製造時、及び/又はその他の時に実施してもよい。
【0123】
[133]いくつかの実施形態では、捕捉支持体204は、システム10における使用の前に、保存のために保存緩衝溶液中に懸濁してもよい。いくつかの実施形態では、保存緩衝溶液は静菌性食塩水、静菌性リン酸塩、及び/又はその他の溶液を含む。いくつかの実施形態では、保存緩衝溶液は、0.9%のベンジルアルコールを含んでもよい静菌性リン酸塩緩衝食塩水(PBS)であってもよい。捕捉支持体204は、引き続いてハウジング16に無菌的に充填するための準備ができるまで、溶液中で2~8℃に冷蔵してもよい。いくつかの実施形態では、システム10は、製造、出荷、及び/又は臨床使用の時の間で2~8℃に保存してもよい。
【0124】
[134]いくつかの実施形態では、保存緩衝溶液は、システム10の臨床使用の直前に(例えば入り口200及び出口210を介して)システム10から洗い流される。いくつかの実施形態では、アクセスポート206、208は、キャップ及び/又はその他の部品を有するルアーフィッティングを備える。いくつかの実施形態では、アクセスポート206及び/又は208は、対応するキャップ及び/又はその他の部品を有する。対応するキャップは、ポリカーボネート及び/又はその他の材料から形成してもよい。
【0125】
[135]図6は、システム10と連結するように構成された例示的な再生機構600を図示する。いくつかの実施形態では、再生機構はシステム10の付加的な部分及び/又は延長と考えてもよい。図6に示すように、機構600は洗浄溶液602の供給源、再生溶液604の供給源、ポンプ606、廃棄ライン608、及び/又はその他の部品を備え得る。いくつかの実施形態では、洗浄溶液602及び再生溶液604は、ポンプ606によってシステム10を通って廃棄ライン608に、交互にポンプ輸送してもよい。
【0126】
[136]いくつかの実施形態では、システム10は、(例えばシステム10によって形成された体外閉回路カラムを損なうことなしに)捕捉された標的成分の全部又は一部のサンプリング又は除去を容易にするように構成された標的成分出口ポートを備え得る。
【0127】
[137]いくつかの実施形態では、システム10は、捕捉と解離のステップを入れ替えることによって再使用を容易にするように構成してもよい。さらなる捕捉の前に標的を解離することにより、カラムはほぼ元の仕様及び機能に再生され得る。この解離を達成するために、ビーズに結合したタンパク質とそのリガンドとの間の捕捉された複合体が破壊され、複合体の解離がもたらされる。そのような解離ステージは用途に依存し得るので、特定の解離条件は、循環するタンパク質の特定のサブタイプ又は捕捉された複合体化部分に依存し得る。高い塩濃度を惹起する親水性化剤又は低pHのような薬剤は、効果的な解離剤となり得る。捕捉複合体を解離させるために、塩化ナトリウム(300mM~1.5M)又はグアニジン塩酸塩(3~8M)等の親水性化剤の高い塩濃度が用いられる。いくつかの実施形態では、塩溶液は、ほぼ7.2のpHを有し、500mMのNaOH、2mMのEDTA、及び50mMのTris緩衝液、又は500mMのNaOH、2mMのEDTA、及び50mMのリン酸ナトリウムを含み得る。或いは、捕捉された免疫複合体は低pH溶液で解離され得る。解離ステージに効果的なpHは、例えばほぼ2.8であってもよい。例示的なpH範囲は1.5~2.5であってもよい。これは、pHを調整したクエン酸塩又はグリシン溶液によって達成し得る。いくつかの実施形態では、pH範囲は2.0~2.5であってもよい。いくつかの実施形態では、pH範囲は約2.5~3.5であってもよい。しかし、pHが低いと必要な解離時間が短くなることを理解されたい。例えば酢酸、クエン酸、及び塩酸等の酸を、pHを低下させるために用いてもよい。塩濃度の上昇又はpHの低下に加えて、免疫複合体を解離するその他の方法も可能である。塩濃度の上昇又はpHの低下に加えて、解離条件は短時間で生じるように、またウシ血清アルブミン(BSA)及び/又はその他の、リガンド若しくは受容体と競合する成分を含むように、構成してもよい。
【0128】
[138]いくつかの実施形態では、システム10は、(例えばシステム10によって形成された体外閉回路カラムを損なうことなしに)隔離チャンバーへの溶出剤の導入を容易にするように構成された溶出剤ポートを備え得る。溶出剤ポートは、再使用のためにシステム10を準備するように構成された調整剤を受容するようにさらに構成してもよい。いくつかの実施形態では、(1つ又は複数の)溶出剤ポートはアクセスポート206及び/又は208の一方又は両方と同一であってもよい。
【0129】
[139]いくつかの実施形態では、ポンプ606は、入り口200(図2)、隔離チャンバー202(図2)、及び出口210(図2)を通過して溶出/再生剤を駆動するように構成してもよい。ポンプ606には、シリンジポンプ、ペリスタポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、これらの組合せ、及び/又はその他のポンプが含まれ得る。
【0130】
[140]いくつかの実施形態では、システム10は、図7に示すように、1つ又は複数の追加の隔離チャンバー202を備え得る。図7は、追加の隔離チャンバー202を有するシステム10の2つの例示的実施形態700及び750を図示する。例示的実施形態700では、隔離チャンバー202A及び202Bがハウジング16内に直列に位置している。例示的実施形態750では、チャンバー202C、202D、及び202Eがハウジング16内に並列に位置している。異なるチャンバー(例えば202A及びB、並びに202C~E)は、フィルター212、214(及び/又はその他のフィルター)、分離膜710、及び/又はその他の部品によって、分離され得る。いくつかの実施形態では、分離膜710は、例えばフィルター212及び/又は214、及びその逆であってもよい。
【0131】
[141]これらの追加の隔離チャンバー202A~Eは、上述の捕捉支持体204(図2)と類似及び/又は同一の捕捉支持体、又は異なる捕捉支持体を備え得る。追加の隔離チャンバー202(A~E)及び捕捉支持体は、隔離チャンバー202及び捕捉支持体204と類似及び/又は同一に機能するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、複数の異なる標的成分と結合するように構成された多段階分離回路を形成させるために、1つ又は複数の追加の隔離チャンバー(202A~E)を組み合わせてもよい(例えば202A及びB、並びに202C、D、及びE)。いくつかの実施形態では、多段階隔離チャンバーは直列構成(例えば実施形態700)で構成してもよく、この場合にはシステム10を通過して流れる体液(例えば血漿)の全体積が複数の隔離チャンバーのそれぞれを逐次的に(例えば202A、次いで202B)通過する。いくつかの実施形態では、多段階隔離チャンバーは並列構成(例えば実施形態750)で構成してもよく、この場合にはシステム10を流れる体液(例えば血漿)の体積は均等又は非均等の分画に分配され、それによりこれらの流体の分画された部分体積が複数の隔離チャンバーのそれぞれ(例えば202C、202D、及び202E)を通って並列に通過する。
【0132】
[142]図8は、複数のシステム(例えば複数のシステム10)が処置手技の間、同時に単一のプラズマフェレーシス流れ回路802又は852の中に構成される追加の実施形態800及び850を図示する。一実施形態(例えば800)では、複数のシステム(10)が直列に繋がれ、例えば血漿は1つのシステム(10)を通って次に流れる。別の実施形態(例えば850)では、2つ以上のシステム(10)が並列に構成され、プラズマフェレーシス流れ回路を流れる体液(例えば血漿)の体積は均等又は非均等の分画に分配され、それによりこれらの流体の分画された部分体積が複数のシステムのそれぞれを通って並列に通過し得る(例えば2つのシステム10が実施形態850に示されているが、これは限定することを意図していない)。そのような並列システム構成を含む一実施形態では、プラズマフェレーシス流れ回路中の流体の全体積は、最初に並列のシステム隔離チャンバー(例えば上述の202)の1つ又は複数を通過するように指向され、次いで同じ処置手技の間の引き続く時間で、回路中の流体は異なるシステムを通過するように再指向されるか、又は流れ回路内に連結された並列のシステムの異なる組合せを通過するように再分割され得る。上述の構成のいずれにおいても、それぞれの個別のシステムは、体液中の同じ又は異なる標的薬剤を標的とする同じ又は異なる捕捉マトリックスを含み得る。
【0133】
[143]図9は、流体をシステム10に導入するための入り口200、それぞれがシステム10の入り口200から出口210(これらは例えばオスルアーポートによって形成してもよい)への独立した流路(903~909)を有し、それぞれが個別に隔離チャンバーを「オン」又は「オフ」できるそれ自体の流量制御バルブ910、912、914、916(例えばストップコック及び/又はその他の部品)を有する多数の隔離チャンバー902を備えるシステム10の実施形態900を図示する。この実施形態では、流体は任意の1つのチャンバー又は同時に多数のチャンバーの任意の組合せを通るように指向することができる。図9の下部に例示的な流路950を示す。一度に用いられる1つ又は複数のチャンバーを出る流体は、アフェレーシス装置に戻すためにシステム流体の出口210で再び合わせられる。この実施形態では、それぞれの隔離チャンバー902~908は、体液中の1つ又は複数の異なる標的部分を標的とするように構成された(例えば上述の捕捉支持体204に含まれる)1つ又は複数の異なる捕捉分子を含み得る。図10に示すように、複数の隔離チャンバー902~908及びこれらの対応する流量制御バルブ910~916は、単一の統一された外部ハウジング(例えば上述の16)の中に含まれていてもよい。
【0134】
[144]図10は、システム10(図1~3)によって血液、血漿、及び/又はその他の体液中の標的成分を除去する方法1000を図示している。以下に提示する方法1000の操作は説明的であることを意図している。いくつかの実施形態では、方法1000は、記述していない1つ又は複数のさらなる操作によって、及び/又は考察した操作の1つ又は複数なしに、達成してもよい。さらに、方法1000の操作が図10に図示され以下に記載される順序は、限定することを意図していない。
【0135】
[145]操作1002では、血液、血漿、及び/又はその他の体液が、患者(例えば図1に示す患者14)から入り口200(図2~3)を通って隔離チャンバー202(図2~3)に導かれる。
【0136】
[146]操作1004では、血液、血漿、及び/又はその他の体液中の標的成分が、隔離チャンバー202(図2~3)において標的成分を捕捉して血液、血漿、及び/又はその他の体液中の標的成分の量を低減するように結合され得る。
【0137】
[147]操作1006では、低減された量の標的成分を有する体液が、患者に戻して再導入するために、隔離チャンバー202(図2~3)から出口210(図2~3)を通過する。
【0138】
[148]操作1008では、体液中の低減された量の標的成分が患者に戻して再導入され、この量は定量的に測定しても測定しなくてもよい(例えば、操作1008は任意選択であってもよい)。定量的測定が用いられるいくつかの実施形態では、測定には液体クロマトグラフィー-質量スペクトル(LC-MS)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高性能液体クロマトグラフィー(UHPLC)、抵抗測定、発光測定、化学発光、電界発光、電界化学発光、クロマトグラフィーモニタリング、陽電子発光トモグラフィー(PET)、X線コンピュータトモグラフィー(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波、ガンマカメラ、単一光子発光コンピュータトモグラフィー(SPECT)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、表面プラスモン共鳴(SPR)測定、及び/又はその他の操作の実施のうちの1つ又は複数が含まれ得る。
【0139】
[149]操作1010では、患者に戻して再導入される体液中の捕捉支持体の溶出速度を測定し又は測定しなくてもよい(例えば、操作1010は任意選択であってもよい)。捕捉剤(例えばTNF)の濃度は、入り口200及び出口210から、及び/又はそれらに取り付けられた流体コネクターから採取した流体試料から決定してもよい。測定された2つの濃度値の差を用いて、隔離チャンバーから逃散する捕捉剤の速度及び量を決定してもよい。いくつかの実施形態では、ある期間(例えば単一の処置手技の継続時間)にわたってシステムから患者の循環系に溶出する捕捉剤の全量を決定するために、mL/分で表す流速を利用してもよい。
【0140】
[150]最も実用的かつ好ましい実施であると現在のところ考えられるものに基づいて説明の目的のために本開示の(1つ又は複数の)システム又は(1つ又は複数の)方法を詳細に記述したが、そのような詳細は単にその目的のためであり、本開示は開示した実施に限定されず、逆に添付した特許請求の範囲の精神及び範囲の中にある改変及び等価の配置を包含することを意図していることを理解されたい。例えば、本開示は、任意の実施の1つ又は複数の特徴を、可能な程度に他の任意の実施の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができることを理解されたい。
【0141】
[151]以下に添付した実施例は、本明細書に記載したシステム及び方法の種々の実施形態の成功した使用の種々の実証を提供する。
【0142】
実施例1-本システムの材料及びアセンブリー
[152]材料-本システムのこの実施形態において利用した固定化固体支持体マトリックス(捕捉支持体204)は、アガロース系ビーズ(即ち、強く架橋された支持レジン)であった。
【0143】
[153]化学-メタ過ヨウ素酸ナトリウムを用いて固体支持体マトリックス(捕捉支持体204)を活性化し、次いでこれを還元的アミノ化によって一本鎖TNFリガンドに連結した。固体支持体マトリックス1mLあたり1mgの量のTNFを連結した。
【0144】
[154]アセンブリー-結合マトリックス(捕捉支持体204)は、アガロースビーズに共有結合で連結された一本鎖TNF(SC-TNF)タンパク質を含む。デバイスハウジングは、充填のための2つのサイドポートを有し、ベントなしのルアーキャップでキャップされたポリカーボネート管からなっている。エンドキャップはオスルアーポートを有し、管に固く結合されて、エンドキャップのルアーポートによってそれぞれの端部で終端する流体的にシールされた筐体を創成している。それぞれのエンドキャップ及び管の間の接合部におけるハウジングの内部には、TNFリガンドが連結されたビーズを保持するための平均孔径15~50μmのフィルターフリットがあり、フィルターフリットの最小直径は(例えば上述の)フィルターの孔径より大きい。
【0145】
実施例2-本システム及び方法を利用するためのパラメーター
[155]1.必ずしも日常的な臨床応用ではない捕捉効率及び/又は溶出を決定するためにカラム前並びにカラム後の血漿濃度の測定を行う構成では、定期的な血漿サンプリングを可能にするために、3方向のストップコックバルブをカラムのエンドキャップの入り口及び出口に取り付ける。2.ストップコックが取り付けられたシステムを、アフェレーシス装置の血漿回路に接続する。3.以下のステップ4、6、及び10を完了するために、アフェレーシス装置の使用説明書に従って、手技から独立した及び/又は手技に特異的な操作パラメーターを用いてアフェレーシスユニットを構成する。4.患者をアフェレーシス装置に接続する前に、1Lの正常食塩水でシステムを洗い流す。5.患者をアフェレーシス装置に接続する。6.患者を本システムで処置する。7.適用可能であれば、研究プロトコル及び/又は臨床処置手技計画に従って血液並びに血漿の試料を採取する。8.典型的なアフェレーシス処置実施指針に従って患者のバイタルサインを連続的にモニターする。9.処置の前、処置の間、及び処置の後に、有害事象について患者を連続的にモニターする。10.処置後に正常食塩水でデバイスを洗い流し/洗浄し、保持していたエンドキャップでカラムを再キャップし、使用したデバイスの適正な保存及び/又は廃棄を確実にする。
【0146】
[156]本発明のカラムは、システム10等の血漿処理カラムに適合するように設計された、例えばTerumo BCT又はSpectra Optia System等のアフェレーシス装置と併用することを意図している。そのようなシステムは、オペレーターによって構成された患者データ及びデバイスパラメーターに基づいて計算を自動化する。アフェレーシス装置がそのような計算を自動化しない場合には、以下の表で同定する式を用いてもよい。
【0147】
[157]
【表1】
【0148】
[158]
【表2】
【0149】
[159]
【表3】
【0150】
[160]意図した臨床性能-(例えばシステム10)のイムノフェレーシスカラムは、遠心又は膜による分離手法を用い、患者血漿からsTNF-Rを効率的に除去するための(例えばシステム10等による)二次血漿処理を可能にする市販のアフェレーシス装置と成功裡に一体化するように設計されたデバイスである。本明細書で開示したシステムは、以下に記載する臨床性能の要求に合致する。特定した処理時間及び流速は、遠心分離手法を用いる現代のアフェレーシスシステムの能力の範囲内にあることが確認されている。
【0151】
[161]システム性能の規格-1.生物学的安全性:循環血液への長期の曝露を支持する体外デバイスとしての使用のために生物学的に安全であることを実証した。2.結合標的:sTNF-R(sTNF-R1及びsTNF-R2を含む)。3.結合効率:臨床的に妥当な流速での30分の処置後に80%を超える。4.結合容量:sTNF-R 230μgを超える。5.流速(血漿):60mL/分以下。6.処理時間:ほぼ2時間。7.目標血漿交換体積:血漿体積の2倍。8.溶出速度(TNFα):50ng/分未満。9.有効期限:2~8℃で6か月を超える。10.耐圧性:776mmHg。
【0152】
実施例3-in vitroパラメーターに基づくシステム10の有効性
[162]前臨床試験-in vitro試験によって、システム10は「意図した臨床性能」(前の節)で定義した性能及び安全性の規格に合致することが実証された。TNFを連結した結合マトリックスは、標準のin vitro試験において、添加した緩衝溶液とヒト血漿の両方で98%を超えるsTNF-Rを効果的に捕捉した一方、計算されたsc-TNFαの溶出速度を50ng/分未満(2時間で最大6μgと等価)に維持した。TNFαの1日あたり最大耐量(MTD)がほぼ200μgであるので、これは許容できる安全限界を十分に下回る(例えばGoossens,V.ら(1995)Proc.Natl Acad.Sci.USA,92,8115~8119頁を参照)。これらの性能及び安全性の尺度は、ビーズを電子線照射(15~30kGy)によって滅菌した後も再現された。さらに、本実施例では、システム10は300mL/分未満、10~44mL/分、及び/又は45~100mL/分の持続した流量のために設計されている。ハウジング(例えば図2及び図3に示す16)は776mmHgを超える内圧に耐えることができ、これは一般に用いられるアフェレーシス装置についての典型的な背圧シャットオフ閾値を十分に上回る。
【0153】
[163]結合マトリックス(例えば捕捉支持体204)の特徴解析-TNFリガンドの同定、純度、及び一体性-sTNF-Rを捕捉するための結合剤として、組換え一本鎖TNFαリガンド(sc-TNFαリガンド、3つのTNFαモノマーを含む)を用いた。TNFαは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって純度を、質量スペクトルによって一体性及び同定を、フローテスト結合アッセイによって機能性の強さを、評価することによって特徴解析した。HPLCは、リン酸塩緩衝液を移動相とするカラムを用い、流速1mL/分で実施した。一体性は質量スペクトルによって測定し、それにより、計算された分子量約54kDを確認した。
【0154】
[164]sTNF-Rを添加した緩衝液中の結合マトリックスの結合効率-標準のフローテストのため、本発明の照射したカラムから2mLの量のビーズ床を得て小さなカラムに移し、sTNF-R1又はsTNF-R2を添加したリン酸塩緩衝液からの捕捉効率について試験した。TNF-R1を添加した緩衝液(20ng/mL)をカラムにそれぞれ10ml/分、5mL/分、2.5mL/分、5mL/分、及び10mL/分で通過させた。0.5分間隔で試料を採取し、sTNF-Rについてアッセイした。結果は、全ての試料について98%を超える捕捉効率であった。TNFαについてのアッセイは、その放出が7ng/分未満であることを示した。
【0155】
[165]sTNF-Rを添加したヒト血漿における結合マトリックスの捕捉容量-システム10の容量を試験するため、デバイスを通して45mL/分の流速で1.8リッターの添加したヒト血漿を流すことによって、本発明のカラムを試験した。それぞれの運転で用いたヒト血漿には、高濃度の各受容体(sTNF-R1 9.74ng/mL及びsTNF-R2 127.5ng/mL)を添加した。カラム後の血漿の試料を10分ごとに採取し、市販の高精度sTNF-R1/sTNF-R2診断キットを用いてsTNF-R濃度を分析した。カラムに保持されたsTNF-Rの量を計算して、捕捉効率及び全容量を確認した。
【0156】
[166]sTNF-Rのカラム前及びカラム後の濃度を比較することによって、各時点における結合効率を計算した。結合マトリックスは、85%を超えるsTNF-R1及びsTNF-R2を捕捉した。結合効率は、sTNF-R1については最後まで95%を超え、sTNF-R2についてはより低い効率が観察されたが、その捕捉は85%を超えたままであった。sTNF-R2についての結合効率のわずかな直線的低下は、おそらく用いたTNFαリガンドに対するこの可溶性受容体の結合親和性が低いことに起因する。
【0157】
[167]カラムに捕捉されたsTNF-Rの全量は、sTNF-Rの処理前と処理後の濃度を比較することによって決定した。カラムは15mL/分の運転で230μg、45mL/分の運転で149.4μgのsTNF-Rを捕捉した。これらの値はいずれも、がん患者に典型的に存在するほぼ30μgのsTNF-Rの量を上回っている。15ml/分の運転で、カラム効率が低下し始める時点である80分におけるTNF-Rの全捕捉量は99.9μgであった。これはまだがん患者に存在する典型的な量を十分に上回っている。
【0158】
[168]本発明のデバイスからのTNFαの溶出-薬理学的に顕著な量を患者に注入する可能性を避けるため、システム10はその使用の間にシステム10からのTNFαの意図しない放出(即ち、「溶出」)を防止するように構成されている。フローテストの実施の間に、ビーズからのTNFの放出を決定した。リン酸塩緩衝食塩水にほぼ20ng/mLのsTNF-R1を添加し、システム10(図1~3)のカラムから得られた2mLのビーズ床を通過させた。流速は、10mL/分、5mL/分、2.5ml/分、5mL/分、及び10mL/分で、それぞれの流速について30秒間、逐次的に実施した。市販の高精度TNF診断キットを用いて試料を分析した。ng/分単位でのTNFの溶出速度は、試料中のTNFの濃度(ng/mL)に流速(mL/分)を掛けることによって計算した。10mL/分で採取した最終分画中の放出量は、ビーズ2mLあたり0.65ng/分、即ち0.325ng/分/mL(0.65ng/分/2mL)であった。本実施例では、50ng/分の規格内にあるビーズ床体積の上限は(50ng/分)/(0.325ng/分/mL)、即ちビーズ154mLである。
【0159】
[169]デバイスハウジングの一体性-上昇した内圧でシステム10の一体性が維持されることを確認するため、本発明の空のハウジング(例えば16)について試験を実施した。チューブ及びコネクターを用いて、システム10のサイドポート(例えば206、208)をコンプレッサーに取り付けた。キャップをしたハウジングを水浴に浸漬して776mmHgの圧を加え、気泡の発生について観察した。デバイスの故障(浸漬したデバイスから漏れてくる泡の存在)は観察されなかった。この試験圧力は、Optiaユニットの最大圧力(500mmHg)を超えている。
【0160】
実施例4-イヌモデルにおける有効性の実証
[170]天然に発生する固形悪性腫瘍又は黒色腫(ステージ4)を有するイヌからのシステム10を用いるsTNF-Rの体外除去の効果を、概念実証比較腫瘍学研究において評価した。研究には、sc-TNFαペプチド-ビーズマトリックスを有するシステム10を用いた。システム10は、システム10を通過する二次血漿処理のために、Terumo BCT Spectra Optia Apheresis Systemと併用した。血管アクセスのために大部分のイヌでは二重管腔カテーテルを採用し、クエン酸塩デキストロース抗凝固(ACDA)液によって体外抗凝固を達成し、Spectra Optiaのユーザー操作マニュアルが推奨するように、カルシウムグルコネートの注入によって逆行させた。全部で20頭のイヌを処置した。患イヌは本研究の4~8週の処置フェーズの経過にわたって12~24回のアフェレーシス処置を受けた。本研究の間に300回を超えるイムノフェレーシス処置を実施した。
【0161】
[171]デバイスの性能-デバイスのin vivoでの安全性及び性能を確認するため、処置の間30分ごとにカラム前及びカラム後の(それぞれデバイスの入り口及び出口のポートから採取した)血漿中のTNF及びsTNF-Rを測定し、またそれぞれの処置の前、処置の間30分ごと、及び処置の後30分ごと(処置直後1.5時間の間)に全身(血液から)のTNF及びsTNF-Rを測定した。
【0162】
[172]それぞれの処置の間、(システム10の)カラム前及びカラム後の血漿の分析により、それぞれの個別の処置の経過にわたって、sTNF-Rは効率的かつ一貫して除去され、血液中のTNFレベルの測定可能な増大はなかったことが示された。処置前及び処置後の血漿の分析により全体的に、全身sTNF-Rレベルのほぼ50%の低減が示された。
【0163】
[173]デバイスの安全性及び臨床的有効性-デバイスの臨床的安全性及び有効性を評価するため、本研究を通して安全性、忍容性、及び腫瘍の進行に対する影響の測定を行った。
【0164】
[174]全体で20頭のイヌにわたる300回を超えて実施したイムノフェレーシス処置の経過の間、重篤な有害事象の報告はほとんどなく、特定のアフェレーシス手技に帰せられるか、又はシステム10による処置若しくはsTNF-Rの除去の結果としての有害事象はなかった。患イヌのQoLデータを検討すると、処置に対する忍容性が最もよく説明される。QoLの変化は、患イヌ1頭あたり12~24回の処置を含む本研究の能動的処置フェーズを通して大部分のスコアについて「中立」と全体的にスコア付けされた。いくつかのスコアは悪化したが、大部分のスコアは処置の全経過を通して安定なパラメーター又は改善を示し、これは本研究におけるステージ4の患イヌ集団については好ましい転帰を表している。
【0165】
[175]本発明のデバイスによる処置は、腫瘍の進行に対して全体として有益な効果を有していた。大部分のイヌ(評価可能な12/17例)は処置の間のある時点で「安定な疾患」(SD)とスコア付けされ(データは示していない)、評価可能な17頭のイヌのうち7頭は処置フェーズの終わりに好ましい処置関連効果を示し、一例は完全寛解(CR)を示した。
【0166】
[176]結論-イヌの全体的状態は研究中、腫瘍負荷における観察可能な安定化又は低減及び生活の質の改善を伴って全体的に改善された。さらに、臨床的に顕著な安全性の問題がないことは、従来の化学療法及び照射に伴う典型的かつ顕著な副作用なしに、臨床的に有意義な利益を提供する可能性を提示するので、一般的アフェレーシス手技の確立された相対的安全性と一致し、かつ説得力がある。このイヌコンパニオン動物研究は、sc-TNFペプチド-ビーズマトリックスを含む本発明のApheresis Immunoadsorption Affinity Columnを利用するsTNF-Rの体外除去が、がんを有するイヌにおいて治療に有効であることを示し、そのようなデバイスの使用がヒト対象において採用できるという説得力のある臨床的証拠を提供した。
【0167】
実施例5-生体親和性
[177]Food & Drug Administration(FDA)のBiocompatibility Testing Matrix及びInternational Standard ISO 10993-1(2009)に従ってシステム10を生物学的安全性について評価した。システム10は、接触時間が長い循環血液の体外導通デバイスと分類することができる。これは他の多くの市販の体外免疫吸着カラムに利用される同じ試験カテゴリーである。
【0168】
[178]生体親和性試験は、21 CFR Part58(Good Laboratory Practice for Nonclinical Laboratory Studies)に従って実施した。全ての試験は、認定済みの独立した検査機関によって、滅菌した最終デバイスについて行われた。実施した試験に基づいて、デバイスはISO 10993-1(2012)コンセンサス標準「Biological evaluation of medical devices-Part 1:Evaluation and testing within a risk management process」の中に含まれる推奨及び原理、並びに2016年6月16日に発行されたFDAの付属ガイダンス書類に適合する。
【0169】
実施例6-ヒト対象における安全性の実証
[179]システム10の試験的な安全性及び性能のデータを収集するため、ヒトでは初めての特例使用の臨床研究を行った。デバイスは、コンパニオンイヌ比較腫瘍学研究(上述)において行ったように、システム10を通過する二次血漿処理とともにTerumo BCT Spectra Optia Systemと組み合わせて用いた。イヌでの研究からの経験に基づいて血管アクセスのために二重管腔カテーテルを採用した。体外抗凝固(ACDA溶液)及び(カルシウムグルコネートの注入による)逆行は、イヌの研究において採用したものと同様であり、Spectra Optiaのユーザー操作マニュアルの推奨によった。
【0170】
[180]アフェレーシス手技性能-システム10は、Terumo BCT Spectra Optiaのアフェレーシス装置とともに成功裡に利用された。実施したそれぞれの処置について、システム10は体外血漿回路に適切に一体化することができた。二次血漿処理回路(例えばシステム10に連結された回路)におけるデバイスに帰せられる妨害は報告されなかった。システム回路の一体性は一貫して維持され(例えば漏洩/流体損失は報告されなかった)、全ての処置は成功裡に完了することができた。この全体的なデータに基づいて、本発明のデバイスはTerumo BCT Spectra Optiaとともに用いるために適していると思われる。
【0171】
[181]安全性及び忍容性の結果-全部で14名の患者を本研究に登録した。全ての患者は現在の処置が奏功しなかったがその他の点では安定した進行がんを有していた(ベースラインEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スコア0~2)。各患者が受けた処置の範囲は一定ではない(例えば1人の患者は16回までの処置を受けた)。全体で93回の個別の処置が完了し、予期しなかったフェレーシスに関連する有害事象(AE)又は有害装置影響(ADE)は報告されなかった。本研究から収集したデータに基づいて、本アプローチ及びシステム10を用いるイムノフェレーシスは、一般に安全であり忍容性も十分であると思われる。
【0172】
[182]図11は、手技時間の関数としてのヒト患者血液プールからのsTNF-R1及びsTNF-R2の低減並びにカラムの捕捉効率を含む代表的なシステム10(図1~3)の性能の特徴を図示している。図11は、単一のヒト患者の処置からの典型的なシステム10の性能結果の説明である。全血及び血漿の試料を、ベースライン(T=0分)、30分、60分、90分、及び処置の終了時(即ち血漿体積の2倍がシステムの循環を完了した時)(これは本実施例では手技の開始時刻の175分後に起こった)に採取した。それぞれの時点で、全血は患者の中央ラインカテーテルから採取し、血漿試料はシステム10の入り口(例えば図2~3に示す200)及び出口(例えば図2~3に示す210)から採取した。さらに、処置後30分及び60分で全血試料を採取した。試料中のsTNF-R1及びsTNF-R2の濃度は、市販の高精度診断アッセイを用いて分析した。図11は各時点における対応する入り口200と出口210でのsTNF-R1及びsTNF-R2の濃度を示し、これはシステム10が処置の経過を通じて効率的にsTNF-R1及びsTNF-R2を捕捉していたことを実証している。さらに、患者の全体の循環系(即ち、中央ライン全血測定)において観察されたsTNF-R1及びsTNF-R2の濃度の着実な経時的低減、並びにこれに続く処置後30分及び60分におけるリバウンドレベルは、処置時間の間にsTNF-R1及びsTNF-R2の内因性レベルを低減するという臨床的目標が効果的に達成されたことを示している。
【0173】
[183]本発明は、以下の態様であってもよい。
[1]
体液の少なくとも1つの標的成分を除去するためのシステムであって、
患者から前記体液を受容するように構成された入り口、
前記入り口に連結されて前記入り口から前記体液を受容するように構成された隔離チャンバーであり、
前記体液の前記少なくとも1つの標的成分に結合して、捕捉支持体と前記体液との接触に応答して前記隔離チャンバー中で前記少なくとも1つの標的成分を捕捉するように構成され、前記少なくとも1つの標的成分に結合して前記体液中の前記少なくとも1つの標的成分の量を低減させるように構成されている、捕捉支持体、及び
前記入り口とは分離された前記隔離チャンバーへのアクセスを提供するように構成され、前記隔離チャンバーへの及び/又は前記隔離チャンバーからの前記捕捉支持体の挿入及び/又は除去を容易にするように構成されている、第1及び第2のアクセスポート
を備える、隔離チャンバー、
低減された量の前記少なくとも1つの標的成分を有する前記体液の一部又は全部を前記患者に戻す任意選択による再導入のために、前記低減された量の前記少なくとも1つの標的成分を有する前記体液を前記隔離チャンバーから通過させるように構成された出口、並びに
前記隔離チャンバー中の前記捕捉支持体を前記入り口及び前記出口から分離するように構成され、前記捕捉支持体を前記隔離チャンバー内に保持するように構成されている、1つ又は複数のフィルター
を備える、システム。
[2]
(a)前記少なくとも1つの標的成分に結合する前記捕捉支持体の捕捉効率が、血漿流の流速45mL/分以下において80%以上であり、任意選択で
(b)前記少なくとも1つの標的成分への前記捕捉支持体の結合親和性が少なくとも約10-7であり、及び/又は
(c)前記出口を通過する前記捕捉支持体の溶出速度が約100ng/mL/分未満である、
[1]に記載のシステム。
[3]
(b)前記少なくとも1つの標的成分への前記捕捉支持体の結合親和性が10-7以上であり、任意選択で
(a)前記少なくとも1つの標的成分に結合する前記捕捉支持体の捕捉効率が、流速45mL/分以下において80%以上であり、及び/又は
(c)前記出口を通過する前記捕捉支持体の溶出速度が約100ng/mL/分未満である、
[1]に記載のシステム。
[4]
(c)前記出口を通過する前記捕捉支持体の溶出速度が約100ng/mL/分未満であり、任意選択で
(a)前記少なくとも1つの標的成分に結合する前記捕捉支持体の捕捉効率が、流速45mL/分以下において80%以上であり、及び/又は
(b)前記少なくとも1つの標的成分への前記捕捉支持体の結合親和性が10-7以上である、
[1]に記載のシステム。
[5]
前記体液が血漿を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載のシステム。
[6]
前記少なくとも1つの標的成分が、タンパク質、複合体、アセンブリー、又は細胞を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載のシステム。
[7]
前記少なくとも1つの標的成分が、前記患者における抗がん免疫応答を阻害するように機能する1つ又は複数の血漿成分を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載のシステム。
[8]
前記少なくとも1つの標的成分が、1つ又は複数の免疫阻害剤を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載のシステム。
[9]
前記少なくとも1つの標的成分が、可溶性TNFα受容体を含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載のシステム。
[10]
前記少なくとも1つの標的成分が、sTNF-R1受容体及び/又はsTNF-R2受容体を含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載のシステム。
[11]
前記捕捉支持体が、アフィニティクロマトグラフィー支持体材料、中空繊維膜、シート膜、膜カセット、ビーズ、又はロール化シート膜を含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載のシステム。
[12]
前記捕捉支持体が、前記アフィニティクロマトグラフィー支持体材料を含み、前記アフィニティクロマトグラフィー支持体材料が、セファロース、アガロース、又はアクリルアミドを含む、[11]に記載のシステム。
[13]
前記捕捉支持体が、多孔質又は非多孔質のマトリックス材料を含む、[1]~[12]のいずれか一項に記載のシステム。
[14]
前記捕捉支持体が、前記体液の2つ以上の標的成分と結合するように構成されている、[1]~[13]のいずれか一項に記載のシステム。
[15]
前記捕捉支持体が、抗体、抗体断片、結合ペプチド、アプタマー、又はアビマーが固定された固体支持体を含む、[1]~[14]のいずれか一項に記載のシステム。
[16]
前記抗体が、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、及びこれらの組合せからなる群から選択される、[15]に記載のシステム。
[17]
前記捕捉支持体が、TNFα、TNFαのマルチマー、一本鎖TNFα、TNFαの断片、TNFαの断片のマルチマー、又はこれらの組合せを含む、[1]~[16]のいずれか一項に記載のシステム。
[18]
前記捕捉支持体が、sc-TNFαリガンド、任意選択で配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の配列又は部分配列を含む、[1]~[17]のいずれか一項に記載のシステム。
[19]
前記捕捉支持体が、sc-TNFαリガンドのトリマー形を含む、[18]に記載のシステム。
[20]
前記sc-TNFαリガンドの前記トリマー形が、配列番号2又は配列番号3の配列又は部分配列を含む、[19]に記載のシステム。
[21]
前記捕捉支持体が、ビーズに結合したリガンドを含む、[1]~[20]のいずれか一項に記載のシステム。
[22]
前記リガンドが、所与のビーズの上の所与の密度及び配向を有し、前記密度及び/又は配向が、前記リガンドと前記体液の前記少なくとも1つの標的成分との結合を増強するように構成されている、[21]に記載のシステム。
[23]
前記ビーズの大きさ、数、密度、及び/又は濃度が、前記ビーズを通過する前記体液の層流を容易にして、前記リガンドと前記体液の前記少なくとも1つの標的成分との結合を増強するように構成されている、[21]又は[22]に記載のシステム。
[24]
前記ビーズが、結合特異性を増強するためにエタノールアミン中でクエンチされている、[21]~[23]のいずれか一項に記載のシステム。
[25]
前記体液が、全血である、[1]~[24]のいずれか一項に記載のシステム。
[26]
前記入り口、前記隔離チャンバー、及び前記出口が、体外閉回路カラムを形成している、[1]~[25]のいずれか一項に記載のシステム。
[27]
前記体外閉回路カラムが、操作中に無菌のままであるように構成されている、[26]に記載のシステム。
[28]
前記体外閉回路カラムを損なうことなしに、前記捕捉された少なくとも1つの標的成分の全部又は一部のサンプリング又は除去を容易にするように構成された標的成分出口ポートをさらに備える、[26]又は[27]に記載のシステム。
[29]
前記体外閉回路カラムを損なうことなしに、前記隔離チャンバーへの溶出剤の導入を容易にするように構成された溶出剤ポートをさらに備える、[26]~[28]のいずれか一項に記載のシステム。
[30]
前記溶出剤ポートが、再使用のために前記システムを準備するように構成された調整剤を受容するようにさらに構成されている、[29]に記載のシステム。
[31]
前記入り口、前記隔離チャンバー、及び前記出口を通して再調整剤を駆動するように構成されたポンプをさらに備える、[1]~[30]のいずれか一項に記載のシステム。
[32]
前記ポンプが、シリンジポンプ、ペリスタポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、又はこれらの組合せを含む、[31]に記載のシステム。
[33]
前記1つ又は複数のフィルターが、3ミクロン~100ミクロンの平均孔径を有する、[1]~[32]のいずれか一項に記載のシステム。
[34]
同じ機能を有する捕捉支持体を含む1つ又は複数の追加の隔離チャンバーをさらに備える、[1]~[33]のいずれか一項に記載のシステム。
[35]
前記1つ又は複数の追加の隔離チャンバーが、前記隔離チャンバーと組み合わされて、複数の異なる標的成分と結合するように構成された多段階分離回路を形成する、[34]に記載のシステム。
[36]
前記患者が、ヒト又は獣医学の対象である、[1]~[35]のいずれか一項に記載のシステム。
[37]
[1]~[36]のいずれか一項に記載のシステムによって前記体液の前記少なくとも1つ又は複数の標的成分を除去する方法であって、
前記入り口を通して前記隔離チャンバーに前記患者からの前記体液を導くステップ、
前記体液の前記少なくとも1つの標的成分を結合して前記隔離チャンバー中の前記少なくとも1つの標的成分を捕捉して、前記体液中の前記少なくとも1つの標的成分の量を低減させるステップ、及び任意選択で
前記患者に戻す再導入のために前記低減された量の前記少なくとも1つの標的成分を有する前記体液の一部又は全部を前記隔離チャンバーから前記出口を通して通過させるステップを含む、
方法。
[38]
前記患者に戻して再導入された前記体液中の前記少なくとも1つの標的成分の前記低減された量を測定するステップをさらに含む、[37]に記載の方法。
[39]
前記測定が、LC-MS、HPLC、UHPLC、抵抗測定、発光測定、化学発光、電界発光、電界化学発光、クロマトグラフィーモニタリング、陽電子発光トモグラフィー(PET)、X線コンピュータトモグラフィー(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波、ガンマカメラ、単一光子発光コンピュータトモグラフィー(SPECT)、ELISA、SPR、又はBLIのうちの1つ又は複数を含む、[38]に記載の方法。
[40]
前記患者に戻して再導入された前記体液中の前記捕捉支持体の溶出速度を測定するステップをさらに含む、[37]~[39]のいずれか一項に記載の方法。
[41]
ヒト又は獣医学の用途のためである、[37]~[40]のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【外国語明細書】