(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150533
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】物流パレット及び火災感知システム
(51)【国際特許分類】
B65D 19/38 20060101AFI20231005BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D19/38 Z
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059687
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 聡司
【テーマコード(参考)】
3E063
5G405
【Fターム(参考)】
3E063AA02
3E063BA05
3E063CA04
3E063CA05
3E063CA08
3E063EE03
3E063FF20
5G405AA01
5G405AA06
5G405AA08
5G405AB02
5G405AD05
5G405CA26
5G405CA30
5G405CA31
5G405FA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、保管中などの積み上げた荷物からの出火を早期に発見することを課題とする。また、出火場所の特定を行い易くすることも課題とする。
【解決手段】フォークリフトの爪を差し込む差込口を有し、火災感知器を備え、前記火災感知器が無線により火災情報を報知することを特徴とする物流パレット。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトの爪を差し込む差込口を有し、
火災感知器を備え、
前記火災感知器が無線により火災情報を報知する
ことを特徴とする物流パレット。
【請求項2】
上板と、
下板と、
前記上板と前記下板を結合するスペーサーと、を備え、
前記上板と前記下板と前記スペーサーにより囲まれ、前記差込口を側方に有し、
前記下板は、複数の孔を有し、
前記火災感知器は、前記上板と前記下板の間に位置することを特徴とする請求項1に記載された物流パレット。
【請求項3】
前記差込口は直交する2方向に設けられ、
前記スペーサーはブロック形状のこまであり、
中央の前記こまの中に前記火災感知器を備えたことを特徴とする請求項2に記載された物流パレット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載された物流パレットにおいて、前記火災感知器に物流用のICタグと、倉庫内の物流パレットの位置情報を管理するための倉庫管理装置とを設け、
前記ICタグの位置を検出して火災位置を報知することを特徴とする火災感知システム。
【請求項5】
照射方向を制御可能な照明具を備え、
前記照明具は、報知された前記火災位置に照射方向を向けることを特徴とする請求項4に記載された火災感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を載置して荷役、輸送、保管を可能とする物流パレット及び物流パレットの火災感知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
煙や熱が上昇する性質から火災感知器は室内の上部に設けられる。倉庫等においても火災感知器は天井等の上部に設けられることが一般的である(特許文献1)。一方、荷物の移動を容易にするために、側方に差込口を設けた物流パレットが用いられている(特許文献2)。物流パレットの上に荷物を載置し、物流パレットの側方に設けられた差込口にフォークリフトの爪を差し入れることによって、物流パレットとその上の荷物を一緒に持ち上げて、荷物を移動させることができる。物流パレットには、木製のものや樹脂製のものがよく用いられている。倉庫等に荷物を保管する際には、物流パレットの上に荷物を載置した状態で保管することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に、荷物7を倉庫8の中に保管する状況のイメージを示す。倉庫8には天井に火災感知器81が設置されている。荷物7を倉庫8等に積み上げて保管する場合、荷物7同士の間は隙間がないか、狭い隙間となっている。そして、
図1のように、下の方の荷物7から出火すると、上部の荷物7によって、煙Sが上方向に流れるのが遮られ、煙Sや火災Fが倉庫8の上部空間に達するまで時間を要する。煙感知器等の火災感知器81は倉庫8の上部に設けられており、このような場合には火災を感知するまでに時間を要する。また、火災により生じる煙は上昇する間に拡散して、出火場所がどのあたりであるか分かりにくくなる場合もある。その場合には、消火に際して倉庫内の荷物の全てに消火液を掛けることになり、全ての荷物が損失してしまう。
【0006】
本発明は、保管中などの積み上げた荷物からの出火を早期に発見することを課題とする。また、出火場所の特定を行い易くすることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、フォークリフトの爪を差し込む差込口を有し、火災感知器を備え、前記火災感知器が無線により火災情報を報知することを特徴とする物流パレットを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、荷物を載置した物流パレットを積み上げて保管した状態で荷物から出火した場合、物流パレットに設けられた火災感知器により早期に火災を感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来の保管状態の荷物から出火した時の状況を示す図。
【
図2】物流パレットの上下面図(a)と側面図(b)。
【
図3】本発明の物流パレットの上下面図(a)と側面図(b)。
【
図4】火災感知器の上下面図(a)と側面図(b)。
【
図5】実施例において保管状態の荷物から出火した時の状況を示す図。
【
図6】実施例において保管状態の荷物から出火した時のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
物流パレットとしては木製や樹脂製の平パレットがよく用いられている。樹脂製の平パレットを
図2の物流パレット6として示す。物流パレット6の上下面は同じであり、
図2(a)は物流パレット6の上下面図である。また、物流パレット6の4つの側面は同じであり、
図2(b)は側面図である。物流パレット6は上板と下板を構成する2枚のデッキボード61をスペーサーで接合した形状となっている。デッキボード61は、多数の孔611が開いたメッシュ状の板である。
図2の2枚のデッキボード61を結合するスペーサーはブロック形状のこまである。そして、スペーサーは、4つのコーナーに設けられたコーナースペーサー62、側面に面して2つのコーナースペーサー62の間に設けられた端スペーサー63、内方に設けられた中スペーサー64のこまからなる。
【0011】
物流パレット6の側面には、端スペーサー63とコーナースペーサー62との間に、
図2(b)に示すように2つの差込口65が設けられている。物流パレット6には荷物が載置され、差込口65にフォークリフトの爪を差し入れることにより容易に移動させることができる。差込口65は直交する2方向に設けられている。このように、物流パレット6は多くの孔を有し、内部に空間があることを利用して火災感知器2を設ける。
【0012】
図3に、本発明の一実施形態である物流パレット1を示す。物流パレット1の上下面は同じであり、
図3(a)は物流パレット1の上下面図である。また、物流パレット1の4つの側面は同じであり、
図3(b)は側面図である。物流パレット1は上板と下板を構成する2枚のデッキボード11をスペーサーで結合した形状となっている。デッキボード11は、多数の孔111が開いたメッシュ状の板である。
図3の2枚のデッキボード11を繋ぐスペーサーはブロック形状のこまであり、4つのコーナーに設けられたコーナースペーサー12、側面に面して2つのコーナースペーサー12の間に設けられた端スペーサー13、内方に設けられた中スペーサー14からなる。中央のこまである中スペーサー14は、側方に向けた4方向が開口しており、中心に空間を有する。そして、中スペーサー14の中の空間に火災感知器2が備えられている。
【0013】
図4に、本発明の一実施形態における火災感知器2を示す。
図4(a)は火災感知器2の上下面図である。また、火災感知器2の4つの側面は同じであり、
図4(b)は側面図である。火災感知器2は扁平な円柱状であり、外枠21の側面に複数の感知孔22が開いている。火災感知器2はセンサ部23、バッテリー24、送信部25、物流用のICタグ26を備えている。なお、センサ部23、バッテリー24、送信部25は外枠21の内側に設けられており、図示していない。火災感知器2は、内部に設けたバッテリー24で駆動し、感知孔22から入った煙をセンサ部23により感知する煙感知器である。センサ部23で煙を感知すると送信部25から煙感知情報を無線で送信する。無線による煙感知情報は火災受信機42で受信される。ここで、火災感知器2からの無線信号が火災受信機42まで届かないくらい倉庫4が広い場合には、倉庫4内に無線信号の中継増幅器を設け、火災受信機42まで無線信号が減衰しないように増幅するようにしてもよい。煙感知情報にはICタグ26の識別情報も付加される。これにより、煙を感知した火災感知器2が備えられた物流パレット1が特定される。
【0014】
図5に、本実施形態の火災感知システムと倉庫管理システムを備えた倉庫の荷物3から出火したときの状況を示す。本実施形態において、倉庫管理システムは火災感知システムの一部を構成する。倉庫4には、火災感知システムの火災受信機42と、倉庫管理システムの倉庫管理装置43が備えられている。そして、火災受信機42は倉庫管理装置43と接続している。火災受信機42は倉庫4の天井に設置された火災感知器41により煙Sを感知した際に火災警報を発生する。また、倉庫4の上部には、照射方向を制御可能な照明具44が設けられている。照明具44は、報知された火災位置に照射方向を向けて、火災のおおよその位置を示すことができる。
【0015】
実施形態の倉庫管理システムでは、物流パレット1に備えた火災感知器2のICタグ26により、倉庫4内での保管位置が倉庫管理装置43に記憶されている。保管位置の取得は、例えば、倉庫管理システムがフォークリフトの位置や爪の高さ等を常時把握しており、フォークリフトに設けた受信装置(図示せず)がICタグ26の信号を検知しなくなった時のフォークリフトの位置や爪の高さ等により行われる。フォークリフトに設けた受信装置は、ICタグ26が比較的近傍にあるときのみICタグ26のコードを無線受信する。
【0016】
図5は、荷物3が物流パレット1の上に載置された状態でフォークリフトにより倉庫4へ運び込まれ、他の荷物3の上に載置された状態である。そのため、荷物3の上に物流パレット1が載置されている。
【0017】
図5に示すように、倉庫4において、下方に保管された荷物3で火災Fが生じると、煙Sが上昇する。物流パレット1は、
図3に示すように下面のデッキボード11に複数の孔111が開いており、側面にも差込口15が開いている。差込口15は、直交する2方向に設けられており、物流パレット1の内部の空間に続いている。内部の空間は、火災感知器の感知孔22に続いている。そのため、煙Sは物流パレット1の内部の空間に入り、火災感知器2の感知孔22からセンサ部23に達する。
【0018】
倉庫4に保管状態の荷物3から出火した時のフロー図を
図6に示す。火災感知器2のセンサ部23で煙Sを感知(ステップS1)すると、ICタグ26の識別情報が付加された火災情報が生成される(ステップS2)、火災情報が送信部25から無線送信される(ステップS3)。そして、火災受信機42で受信されて火災が検知され、火災受信機42から火災警報が発生する(ステップS4)。
【0019】
火災受信機42では、倉庫管理装置43からICタグ26の位置情報を取得し、受信した識別情報のICタグ26の位置を火災位置として導出する(ステップS5)。そして、火災位置を、火災受信機42の表示部(図示せず)に表示することのより報知する(ステップS6)。また、火災位置の情報は火災受信機42から照明具44に送信される(ステップS7)。照明具44は、報知された火災位置に照射方向を向けて照明する(ステップS8)。この照明により、火災Fのおおよその位置を示すことができる。
【0020】
最上部に位置する荷物3から火災Fが生じた場合には、天井に設けられた火災感知器41により煙Sが感知され、火災受信機42から火災警報が発せられる。この場合は、目視により火災Fの位置を発見することができる。
【0021】
本発明の火災感知システムで用いる物流パレットは木製であってもよいが、差込口から差し込まれたフォークリフトの爪が当たらない位置に火災感知器を設置する。倉庫は荷物を搭載した物流パレット1を自動的に棚に収納する自動倉庫であってもよい。また、倉庫ではなく船内やトラック等の貨物室で火災感知システムを用いてもよく、屋外で用いてもよい。また、検出した火災の位置にのみ消火液を散布するように消火装置を作動させてもよい。また、倉庫内に火災受信機に接続した複数の受信端末を設け、物流パレット1の火災感知器2から無線送信された煙感知情報を複数の受信端末で受けることにより位置を算出して火災位置を報知してもよい。
【0022】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0023】
最後に倉庫管理装置について説明しておく。倉庫管理装置は、倉庫内のパレットの位置情報を管理するための装置である。実施例では、火災感知器2にICタグ26が設けられるとしたが、火災感知器自体にICタグを設けずに、物流パレットに直接的にICタグを設けるようにしてもよい。倉庫内にあるパレットはこのICタグが設けられることで、ICタグの識別情報は、フォークリフトによって読み込まれ、そのフォークリフトが倉庫の出入り口を通過する際、出入り口に設けた読み取り装置によって識別情報を読み取られ、倉庫の在庫データベースの情報が更新されるようになっている。倉庫管理装置43は、この在庫データベースを管理するもので、倉庫内にあるパレットの位置情報を把握している。この位置情報は、実施形態のように、フォークリフトに設けた受信装置がICタグの信号を検知しなくなった時のフォークリフトの位置や爪の高さ等により行われてもよい。
【0024】
これにより、火災受信機と倉庫管理装置とを接続し、お互いに情報を送受信できるようにし、火災受信機がICタグと火災感知器の対応表を有することで、パレットにより積み上げた荷物が火災で燃える場合には、倉庫管理装置からのICタグの識別情報により、パレットの位置情報を把握して、倉庫内の火災発生場所を知ることが可能となる。また、火災受信機42では、火災感知器2により火災が発生したことを認識できる。パレットの位置情報の把握方法としては、火災発生時に、火災受信機が火災感知器からのアドレスが付加された火災信号を受信したら、火災受信機が記憶している対応表により火災信号を受信した火災感知器に対応するICタグを特定する。そして、ICタグの識別情報を倉庫管理装置に送信し、その識別情報に対する位置情報を問い合わせて、位置情報を受け取って、火災発生場所を把握するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 物流パレット、11 デッキボード、111 孔、12 コーナースペーサー、13 端スペーサー、14 中スペーサー、15 差込口、
2 火災感知器、21 外枠、22 感知孔、23 センサ部、24 バッテリー、25 送信部、26 ICタグ、
3 荷物、
4 倉庫、41 火災感知器、42 火災受信機、43 倉庫管理装置、44 照明具
6 物流パレット、61 デッキボード、611 孔、62 コーナースペーサー、63 端スペーサー、64 中スペーサー、65 差込口、
7 荷物、8 倉庫、81 火災感知器、
F 火災、
S 煙