(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150536
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ロール
(51)【国際特許分類】
B08B 1/04 20060101AFI20231005BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B08B1/04
F16C13/00 A
F16C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059690
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(72)【発明者】
【氏名】山田 純也
【テーマコード(参考)】
3B116
3J103
【Fターム(参考)】
3B116AA01
3B116AA46
3B116BA08
3B116BA15
3J103AA02
3J103AA17
3J103AA28
3J103AA38
3J103AA41
3J103AA46
3J103FA03
3J103FA30
3J103GA02
3J103GA52
3J103HA02
3J103HA41
3J103HA60
(57)【要約】
【課題】 ロール本体を構成するロール片の外周側の変形や倒れを抑えることができると共に、製造コストを低減させることができるロールを提供する。
【解決手段】 ロール10は、台座2と、ロール部1とを有し、台座2は、複数のシャフト3a、3bと、この複数のシャフト3a、3bの端部同士を連結させる両端のフランジ4a、4bとを有し、ロール部1は、不織布及び/又は合成樹脂多孔質体からなる略円盤形状であると共に、一方の側面から他方の側面に連通する複数の孔部が同心円上に略均等に形成されたロール片5を、孔部が一致するように積層して形成されているものであって、ロール部1は、連続する孔部の各々に、シャフト3a、3b・・が挿通されている共に、両端側からフランジ4a、4bで押圧固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス、製紙、あるいはフィルム状のシートの被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄、吸収する為のロールにおいて、
前記ロールは、台座と、ロール部と、を有し、
前記台座は、複数のシャフトと、該複数のシャフトの端部同士を連結させる両端のフランジと、を有し、
前記ロール部は、不織布及び/又は合成樹脂多孔質体からなる略円盤形状であると共に、一方の側面から他方の側面に連通する複数の孔部が同心円上に略均等に形成されたロール片を、前記孔部が一致するように積層して形成されているものであって、
前記ロール部は、連続する前記孔部の各々に、前記シャフトが挿通されている共に、両端側から前記フランジで押圧固定されていることを特徴とするロール
【請求項2】
ロール部と、両端のフランジの少なくとも一つは、軸の放射方向略中央であって、軸方向に亘って管状の吸液通路が連通するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロール
【請求項3】
ロール部は、ロール片の孔部の壁面が、吸液通路の壁面と繋がっていることを特徴とする請求項2に記載のロール
【請求項4】
ロール片の孔部は、複数の同心円上に各々2個以上が形成されていると共に、前記ロール片の中心から半径方向に向かって、前記複数の同心円上の孔部が重ならない位置に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のロール
【請求項5】
ロール片の内周側の同心円上に位置する孔部に挿通されるシャフトの外径の長さと、ロール片の外周側の同心円上に位置する孔部に挿通されるシャフトの外径の長さが異なるように形成されていると共に、これに対応して前記孔部の外径も異なるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のロール
【請求項6】
ロール部の吸液通路には、合成樹脂製の筒が挿通されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のロール
【請求項7】
ロール部の吸液通路の壁面は、階段状又は傾斜状の面で形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のロール
【請求項8】
ロール部のシャフトを取り外した孔部は、前記ロール部のメンテナンス作業時に、液体又は気体を注入し、ロール部を洗浄可能なことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のロール
【請求項9】
シャフトは、中空形状であって、前記シャフトの内部に冷水又は温水を注入可能なことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のロール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス、製紙、あるいはフィルム状のシートの被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄、吸引する為のロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被洗浄面に付着した水分等を除去、搾取、洗浄、吸引する為のロールが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のロールは、少なくとも一方が開口し、本体の軸方向に開設した中空部及びこの中空部に連通する透孔を、その本体周面に多数開設した筒状の軸本体と、この軸本体の両端に一体に形成した貫通孔を有する軸受部と、前記軸本体にフランジを介して不織布と、この不織布と異質材料でなるロール本体構成部材とを設けて圧着状に多数枚重畳したロール本体とからなるものであり、ロールに連通する真空ポンプ等を備えた吸引装置によって、ロールに含侵された水分等を外部に排出する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のロール等に使用される筒状の軸本体は、耐久性を考慮して通常金属で作製されており、大径の中空部と周面の透孔を形成するための製造コストは嵩むものであった。また、軸本体は、ロール本体の軸中心に設けられた貫通孔に設置されることから、ロール本体を構成するロール片がゴムやスポンジなどの柔らかい材料で形成されている場合は、軸本体から離れている外周側が被洗浄面との当接時に生じる応力によって変形し易く、軸方向に倒れ易いという課題を有していた。さらに、ロール片同士を強く圧着するか、または接着剤等で固定しないと、各ロール片が空転する恐れが生じていた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、ロール本体を構成するロール片の外周側の変形や倒れを抑えることができると共に、ロール片の空転を防止できるものであり、さらに製造コストを低減させることができるロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス、製紙、あるいはフィルム状のシートの被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄、吸収する為のロールにおいて、前記ロールは、台座と、ロール部と、を有し、前記台座は、複数のシャフトと、該複数のシャフトの端部同士を連結させる両端のフランジと、を有し、前記ロール部は、不織布及び/又は合成樹脂多孔質体からなる略円盤形状であると共に、一方の側面から他方の側面に連通する複数の孔部が同心円上に略均等に形成されたロール片を、前記孔部が一致するように積層して形成されているものであって、前記ロール部は、連続する前記孔部の各々に、前記シャフトが挿通されている共に、両端側から前記フランジで押圧固定されていることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明では、ロール部の複数の孔部の各々にシャフトを挿通する構成とすることによって、従来のような大径の中空部を備えた金属製の軸本体を使用しなくてもよくなり、製造コストの低減を図ることができる。また、複数のシャフトを外周側に近づけた位置に配置することによって、ロール部を構成するロール片の外周側の変形や、軸方向への倒れを抑えることができる。さらに、各ロール片の空転を防止することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ロール部と、両端のフランジの少なくとも一つは、軸の放射方向略中央であって、軸方向に亘って管状の吸液通路が連通するように形成されていることを特徴としている。これにより、従来のような大径の中空部を備えた金属製の軸本体を使用しなくても吸液通路を形成することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、ロール部は、ロール片の孔部の壁面が、吸液通路の壁面と繋がっていることを特徴としている。これにより、シャフトを孔部に挿入する際の抵抗を小さくすることができるので、シャフトの着脱作業やメンテナンス作業を容易にすることができる。また、孔部がロール片の内部に占める割合を小さくすることができると共に、吸液効率を高めることができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれかの発明において、ロール片の孔部は、複数の同心円上に各々2個以上が形成されていると共に、前記ロール片の中心から半径方向に向かって、前記複数の同心円上の孔部が重ならない位置に形成されていることを特徴としている。これにより、ロール全体の剛性が向上すると共に、撓みにくくなるため、バランスの良いロールにすることができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、ロール片の内周側の同心円上に位置する孔部に挿通されるシャフトの外径の長さと、ロール片の外周側の同心円上に位置する孔部に挿通されるシャフトの外径の長さが異なるように形成されていると共に、これに対応して前記孔部の外径も異なるように形成されていることを特徴としている。例えば、内周側のシャフトの外径を太く、外周側のシャフトの外径を細くした場合には、外径側に配置するシャフトの数を増やすことができ、バランス調整を可能にすると共に、シャフトの着脱の抵抗を小さくすることができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項2又は3の発明において、ロール部の吸液通路には、合成樹脂製の筒が挿通されていることを特徴としている。これにより、従来の金属製の筒と比較して製造が容易であると共に、合成樹脂製の筒の周面に穴部を形成して中空部を吸液通路にすることができる。また、合成樹脂製の筒の周面に形成した穴部の数、大きさ、位置を調整することによって、局所的に吸引することや全体を均等に吸引することが可能となり、吸引効率を高めることができる。
【0014】
請求項7の発明は、請求項2又は3の発明において、ロール部の吸液通路の壁面は、階段状又は傾斜状の面で形成されていることを特徴としている。これにより、例えば片側吸引の場合において、吸引力が弱い側の壁面の面積が、吸引力が強い側の壁面の面積よりも大きくなるように、階段状又は傾斜状の面で形成することによって、ロール部の長手方向において液体の吸引量を均等に近づけることができる。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1~7のいずれかの発明において、ロール部のシャフトを取り外した孔部は、前記ロール部のメンテナンス作業時に、液体又は気体を注入し、ロール部を洗浄可能なことを特徴としている。これにより、ロール表面に付着している鉄粉や塵埃などの異物を外部に排出させることができる。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1~8のいずれかの発明において、シャフトは、中空形状であって、前記シャフトの内部に冷水又は温水を注入可能なことを特徴としている。これにより、ロールの使用環境に対応してロール部の温度をコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1のロールの発明は、製造コストの低減を図ることができると共に、ロール片の外周側の変形や倒れを抑えることができ、各ロール片の空転を防止できる。また、請求項2の発明は、一層製造コストの低減を図ることができる。また、請求項3の発明は、シャフトの着脱作業やメンテナンス作業を容易にすることができ、孔部がロール片の内部に占める割合を小さくすることができると共に、吸液効率を高めることができる。
【0018】
請求項4の発明は、ロール全体の剛性が向上すると共に、撓みにくくなるため、バランスの良いロールにすることができる。また、請求項5の発明は、バランス調整を可能にすると共に、シャフトの着脱の抵抗を小さくすることができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。また、請求項6の発明は、従来の金属製の筒と比較して製造が容易であると共に、合成樹脂製の筒の周面に穴部を形成することによって、局所的に吸引することや全体を均等に吸引することが可能となり、吸引効率を高めることができる。
【0019】
請求項7の発明は、ロール部の長手方向において液体の吸引量を均等に近づけることができる。また、請求項8の発明は、、ロール表面に付着している鉄粉や塵埃などの異物を外部に排出させることができる。また、請求項9の発明は、ロールの使用環境に対応してロール部の温度をコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)本発明に係るロールの第1実施形態を示す正面図(b)同断面図
【
図2】第1実施形態のロールの一方の端部近傍を示す斜視図
【
図3】(a)ロール片の第1実施形態を示す斜視図(b)ロール片の第2実施形態を示す斜視図(c)ロール片の第3実施形態を示す斜視図
【
図4】本発明に係るロールを吸引装置に連結した状態を示す斜視図
【
図5】(a)本発明に係るロールの第2実施形態を示す断面図(b)本発明に係るロールの第3実施形態を示す断面図
【
図6】(a)本発明に係るロールの第4実施形態で使用する合成樹脂製の筒を示す斜視図(b)本発明に係るロールの第4実施形態を示す断面図
【
図7】(a)本発明に係るロールの第5実施形態で使用するフランジとシャフトを示す斜視図(b)本発明に係るロールの第5実施形態を示す断面図
【
図8】(a)本発明に係るロールの第6実施形態で使用するシャフトを示す斜視図(b)本発明に係るロールの第6実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
図1(a)は、本発明に係るロールの第1実施形態を示す正面図であり、
図1(b)は、同断面図である。これらの図を用いて本発明に係るロールの概要について以下に説明する。
【0022】
本発明に係るロール10は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス、製紙、あるいはフィルム状のシートの被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄、吸引する為のロールであり、ロール部1及び台座2を有している。
【0023】
台座2は、複数のシャフト3a、3b・・・と、この複数のシャフト3a、3b・・・の端部同士を連結させる両端のフランジ4a、4b、4c、4dとを有している。尚、両端のフランジ4aとフランジ4bには、後述する駆動手段に連結される回転軸11が形成されている。また、一方の端部のフランジ4aには、軸の放射方向略中央であって、軸方向に亘って管状の吸液通路6bが形成されている。
【0024】
ロール部1は、不織布又は合成樹脂多孔質体からなる略円盤形状であると共に、一方の側面から他方の側面に連通する複数の孔部5a、5b・・・が同心円上に略均等に形成されたロール片5を、孔部5a、5b・・・が一致するように積層して形成されている。
【0025】
そして、ロール部1は、連続する孔部5a、5b・・・の各々に、シャフト3a、3b・・・が挿通されている共に、両端側からフランジ4a、4b、4c、4dで押圧固定されている。また、ロール部1は、軸の放射方向略中央であって、軸方向に亘って管状の吸液通路6aが形成されており、前述したフランジ4aの吸液通路6bと連通している。
【0026】
第1実施形態のロール10は、ロール部1の複数の孔部5a、5b・・・の各々にシャフト3a、3b・・・を挿通する構成とすることによって、従来のような大径の中空部を備えた金属製の軸本体を使用しなくてもよくなり、製造コストの低減を図ることができる。また、複数のシャフト3a、3b・・・を外周側に近づけた位置に配置することによって、ロール部1を構成するロール片5の外周側の変形や軸方向への倒れを抑えることができる。また、従来のような大径の中空部を備えた金属製の軸本体を使用しなくても吸液通路6a、6bを形成することができ、製造コストの低減を図ることができる。さらに、ロール片5同士を強く圧着又は接着剤等で強固に固定しなくても、各ロール片5が空転することを防止できる。
【0027】
図2は、第1実施形態のロールの一方の端部近傍を示す斜視図である。複数のシャフト3a、3b・・・(
図2では8本のシャフト)は、フランジ4cに挿通されており、4本のシャフトの端部は、ボルト12でフランジ4cに固定される。また、残りの4本のシャフトは、フランジ4aにも挿通されて、ボルト12で端部がフランジ4aに固定される。
【0028】
図3(a)~(c)は、本発明のロールを構成するロール片の第1実施形態から第3実施形態を示す斜視図である。
図3(a)に示す第1実施形態のロール片5は、略円盤形状であると共に、一方の側面から他方の側面に連通する複数の孔部5a、5b・・・が同心円上に略均等に配置されている。また、円盤の略中央に吸液通路6aが形成されている。
【0029】
ロール片5は、繊維と、繊維同士を接着するバインダーと、繊維及びバインダー以外の部分を占める空隙部とで構成された不織布又はスポンジ等の合成樹脂多孔質体を使用している。尚、本発明を構成するロール部1は、外径の小さいロール片と外径が大きいロール片の2種類を使用して形成することができる。この場合、外径が小さいロール片を不織布又は合成樹脂多孔質体として、外径が大きいロール片を合成樹脂多孔質体とすることができる。これにより、外径の違いによらずロール片の全てを合成樹脂多孔質体で形成した場合は弾性力が向上すると共に吸引力が向上する。一方で外径が小さいロール片を不織布で形成した場合には、不織布の剛性により全体形状が安定すると共に、外径の大きいロール片は合成樹脂多孔質体のため被洗浄面に付着した液体を効率よく吸引することができる。
【0030】
また、不織布の製造方法は、例えば複数本の繊維を平板状に集積し3次元に絡合させた形成体にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより繊維の間を結合させるケミカルボンド法を採用することができる。他には、水流絡合法、スパンボンド法、メルトブロー法、ファイバーボンド法やサーマルボンド法等を適宜採用することができる。また、不織布を形成する繊維には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成樹脂繊維が単独使用、あるいは併用される。
【0031】
また、合成樹脂多孔質体の内部空隙率(気孔率)は約60~90%が好ましく、最適には約80~85%が更に好ましい。液体の粘性等により内部空隙率を適宜選択することで、液体の吸引効率と耐久性を共に向上させることができる。また、合成樹脂多孔質体の製造方法は、例えばポリウレタンを水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることで極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンを採用することができる。
【0032】
図3(b)に示す第2実施形態のロール片15は、略円盤形状であると共に、一方の側面から他方の側面に連通する複数の孔部15a、15b・・・が2つの同心円上に略均等に配置されている。また、円盤の略中央に吸液通路16が形成されている。また、ロール片15の中心から半径方向に向かって、2つの同心円上の孔部15aと15bとが重ならない位置に形成されている。尚、第2実施形態のロール片は2つの同心円上に孔部を配置している構成を示しているが、2つ以上の複数の同心円上に各々2個以上の孔部が形成されていると共に、ロール片の中心から半径方向に向かって、複数の同心円上の孔部が重ならない位置に形成されていれば本発明に含まれる。
【0033】
また、ロール片の内周側の同心円上に位置する孔部に挿通されるシャフトの外径の長さと、ロール片の外周側の同心円上に位置する孔部に挿通されるシャフトの外径の長さが異なるように形成する場合に対応して、孔部の外径が異なるように形成されている。
図3(b)においては、内側の同心円上に配置された孔部15a、15a・・の外径の長さが、外側の同心円上に配置された孔部15b、15b・・の外径の長さよりも大きくなるようにしている。これにより、外径側に配置するシャフトの数を増やすことができ、バランス調整を可能にすると共に、シャフトの着脱の抵抗を小さくすることができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0034】
図3(c)に示す第3実施形態のロール片25は、内側の同心円上に略均等に配置された4つのロール片の孔部25a、25a・・の壁面が、吸液通路26の壁面と繋がっている。これにより、シャフトを孔部25a、25a・・に挿入する際の抵抗を小さくすることができるので、シャフトの着脱作業やメンテナンス作業を容易にすることができる。また、孔部25a、25a・・がロール片の内部に占める割合を小さくすることができると共に、吸液効率を高めることができる。また、ロール片25は、外側の同心円上に略均等に配置された4つのロール片の孔部25b、25b・・は、ロール片の中心から半径方向に向かって、内側の同心円上の孔部25a、25a・・とは重ならない位置に形成されている。
【0035】
図4は、本発明に係るロールを吸引装置に連結した状態を示す斜視図である。ロール10、10は、洗浄装置13に上下一対で設置され、上部に位置するロール10の回転軸11に一定の圧力が加えられ、上下のロール10、10は、回転軸11、11がジョイント18a、18bを介して駆動手段17a、17bに連結され、この駆動手段17a、17bによって、矢印の方向に回転駆動し、上部のロール10と下部のロール10の間を、表裏の両面及び側面に水分等の液体が付着したガラス板14が白抜き矢印の方向に送出されている。また、回転11、11の内部は、配管19a、19bを介して真空ポンプ22に連接されている。上部及下部に位置するロール10、10は、ガラス板14の表裏の両面と側面から水分等の液体を除去する。
【0036】
上記の如くのロール10、10の状態において、真空ポンプ22を稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部に負圧が付加され、ロール部に吸収された液体は、回転軸11、11の内部に形成された吸液通路から配管19a、19bを通り、ロール10、10の外部に吸引されて、排出される。
【0037】
図5(a)は、本発明に係るロールの第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態のロール20は、ロール部の吸液通路36の壁面が傾斜状の面9で形成されている。これにより、片側吸引の場合において、吸引力が弱い側の壁面の面積が、吸引力が強い側の壁面の面積よりも大きくなるように、傾斜状の面9で形成することによって、ロール部の長手方向において液体の吸引量を均等に近づけることができる。
【0038】
図5(b)は、本発明に係るロールの第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態のロール30は、ロール部の吸液通路46の壁面が階段状の面8で形成されている。これにより、上述の傾斜状の面9で形成した場合と同様に、ロール部の長手方向において液体の吸引量を均等に近づけることができる。尚、
図5(b)に示すような3段階の階段状の面8とすれば、3種類のロール片を複数枚準備すればロール部を作成することができるので、
図5(a)の傾斜状の面9を作成するよりも製造コストの低減を図ることができる。
【0039】
図6(a)は、本発明に係るロールの第4実施形態で使用する合成樹脂製の筒を示す斜視図であり、
図6(b)は、第4実施形態のロールを示す断面図である。第4実施形態のロール40は、ロール部の吸液通路に合成樹脂製の筒7が挿通されており、筒7の中空部が吸液通路56となっている。また、筒7の周面には吸液通路56と連通する複数の穴部7aが形成されている。これにより、従来の金属製の筒と比較して製造が容易であると共に、合成樹脂製の筒7の周面に吸液通路56と連通する穴部7aを形成することによって、局所的に吸引することや全体を均等に吸引することが可能となり、吸引効率を高めることができる。
【0040】
図7(a)は、本発明に係るロールの第5実施形態で使用するフランジとシャフトを示す斜視図であり、
図7(b)は、第5実施形態のロールを示す断面図である。第5実施形態で使用するシャフト23a(23b)は、ロール50の両端部に位置するフランジ24と連通する中空部23cを備えている。また、フランジ24は、吸液通路24cと連通する通路24a及び通路24bを備えている。そして、ロール50は、フランジの通路24a及び通路24bと、吸液通路24cと、シャフトの中空部23cを利用して冷水又は温水を注入することができる構成としている。これにより、冷水又は温水を継続的に注入することで、シャフト23a(23b)の外表面温度を調整し、ロール50の使用環境に対応してロール部の温度をコントロールすることができる。
【0041】
図8(a)は、本発明に係るロールの第6実施形態で使用するシャフトを示す斜視図であり、
図8(b)は、第6実施形態のロールを示す断面図である。第6実施形態で使用するシャフト33a(33b)は、ロール60の一方の端部に位置するフランジ24と連通する中空部33dと、周面に形成され、中空部33dと連通する複数の穴部33cとを備えている。フランジ24は、第5実施形態で使用するフランジと同様であるので説明は省略する。そして、ロール60は、フランジ24の吸液通路24cから液体又は気体を注入し、ロール部を洗浄することができる構成としている。これにより、ロール60の表面に付着している鉄粉や塵埃などの異物を外部に排出させることができる。尚、ロール部のメンテナンス作業時に、ロール部のシャフトを取り外した孔部に、液体又は気体を注入し、ロール部を洗浄する構成としてもよく、これも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス、製紙、あるいはフィルム状のシートの被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄、吸引する為のロールとして利用される。
【符号の説明】
【0043】
1 ロール部
2 台座
3a、3b シャフト
4a、4b、4c、4d フランジ
5、15、25 ロール片
5a、5b、15a、15b、25a、25b 孔部
6a、6b、16、26 吸液通路
7 合成樹脂製の筒
7a 穴部
8 階段状の面
9 傾斜状の面
10 ロール
11 回転軸
12 ボルト