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特開2023-150548タイヤ部材の品質検査方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150548
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】タイヤ部材の品質検査方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20231005BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20231005BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20231005BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20231005BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/25
B29D30/06
B29K21:00
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059703
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】辻 三雄
(72)【発明者】
【氏名】久田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 智
(72)【発明者】
【氏名】岩井 厚司
(72)【発明者】
【氏名】島田 孝介
(72)【発明者】
【氏名】横治 岳史
(72)【発明者】
【氏名】石井 健太
【テーマコード(参考)】
4F207
4F215
【Fターム(参考)】
4F207AA45
4F207AB18
4F207AH20
4F207AJ08
4F207AM22
4F207AM23
4F207AP12
4F207AQ03
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK63
4F207KL84
4F207KM06
4F207KM16
4F215AH20
4F215AP20
4F215AQ01
4F215VA10
4F215VA12
4F215VD03
4F215VD09
4F215VL25
4F215VL32
4F215VP28
4F215VQ03
4F215VQ08
(57)【要約】
【課題】複数種類の構成部材を接合した長尺のタイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきの大きさを、迅速に精度よく把握する品質検査方法及びシステムを提供する。
【解決手段】長尺のタイヤ部材Rを、搬送装置2を用いて長手方向Lに搬送しながら、タイヤ部材Rの表面側からX線検査装置3により、タイヤ部材Rの所定長さ範囲Cに対してX線を照射して所定長さ範囲CのX線透過度に基づく画像データDを取得する工程を連続的に継続して行うことにより、長手方向Lに隙間なく連続した所定長さ範囲Cの画像データDを取得して、それぞれの画像データDを演算装置4に入力し、それぞれの画像データDでの濃淡に基づいて演算装置4によって、タイヤ部材Rの質量や特定成分の含有率がより大きい未加硫ゴムにより形成されている構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさを算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の構成部材を接合して形成した長尺のタイヤ部材の所定の品質を把握するタイヤ部材の品質検査方法において、
前記タイヤ部材を長手方向に搬送しながら、前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して、前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得する工程を連続的に継続して行って、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データを取得し、取得したそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記所定の品質の前記タイヤ部材の前記長手方向でのバラつきの大きさを把握するタイヤ部材の品質検査方法。
【請求項2】
前記所定の品質として、特定成分の含有率が他の前記構成部材を形成している未加硫ゴムよりも高い未加硫ゴムにより形成されている特定の前記構成部材の幅方向寸法の前記長手方向での分布を把握する請求項1に記載のタイヤ部材の品質検査方法。
【請求項3】
前記特定成分がカーボンブラックである請求項2に記載のタイヤ部材の品質検査方法。
【請求項4】
前記所定の品質として、前記タイヤ部材の質量の前記長手方向での分布を把握する請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ部材の品質検査方法。
【請求項5】
複数種類の構成部材が接合されて形成されている長尺のタイヤ部材の所定の品質を把握するタイヤ部材の品質検査システムにおいて、
前記タイヤ部材を長手方向に搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送されている前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得するX線検査装置と、前記画像データが入力される演算装置とを有し、
前記画像データを取得する工程が連続的に継続して行われて、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データが取得されて、取得されたそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記演算装置により前記所定の品質の前記タイヤ部材の前記長手方向でのバラつきの大きさが算出される構成にしたタイヤ部材の品質検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ部材の品質検査方法およびシステムに関し、さらに詳しくは、複数種類の構成部材が接合されて形成されている長尺のタイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきの大きさを、迅速に精度よく把握できるタイヤ部材の品質検査方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、様々な長尺のタイヤ部材が使用されて製造されている。これらタイヤ部材には、種類の異なるゴムや補強材など、複数種類の構成部材が接合されて形成されているものがある。タイヤの製造ラインでは、これらのタイヤ部材の品質を把握するために種々の検査が行われる。
【0003】
従来、タイヤ部材の品質を検査する装置として、タイヤ部材の横断面での個々の構成部材の形状や寸法などを、製造ラインを止めることなく把握する測定装置が提案されている(特許文献1参照)。この提案されている測定装置では、タイヤ部材を搬送するベルトコンベヤなどの移送装置を備えた搬送経路に、タイヤ部材を蓄積するバッファ手段(フェスツーン機構)が配置され、その下流側にCTスキャナが配置されている。そして、タイヤ部材の内部をCTスキャナによって検査している間は、タイヤ部材の検査範囲に該当する部分は搬送が一時的に停止される。一方で、バッファ手段の上流側に配置された押出機はタイヤ部材の押出を継続し、押出されたタイヤ部材はバッファ手段によって一時的に蓄積される。このようにして、搬送経路でタイヤ部材をCTスキャナで検査している間も、押出機によるタイヤ部材の押出を中断させずに製造ラインが止まることを回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-86635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案されている測定装置では、タイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきの大きさを精度よく把握するには、タイヤ部材を長手方向に多数の区間に隙間なく細分化し、細分化されたそれぞれの区間に対して搬送を一時的に停止してCTスキャナによる検査を行う必要がある。したがって、検査されたタイヤ部材を、搬送経路を経て次工程に搬送するには、相当の時間を要することになる。一方で、CTスキャナによる検査に伴ってCTスキャナよりも下流側へのタイヤ部材の搬送を一時的に停止する回数を減らすために、検査を行う区間を間引きすると、タイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきの大きさを精度よく把握することができない。それ故、タイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきの大きさを、迅速に精度よく把握するには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤ部材の品質検査方法は、複数種類の構成部材を接合して形成した長尺のタイヤ部材の所定の品質を把握するタイヤ部材の品質検査方法において、前記タイヤ部材を長手方向に搬送しながら、前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して、前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得する工程を連続的に継続して行って、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データを取得し、取得したそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記所定の品質の前記タイヤ部材の前記長手方向でのバラつきの大きさを把握することを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤ部材の品質検査システムは、複数種類の構成部材が接合されて形成されている長尺のタイヤ部材の所定の品質を把握するタイヤ部材の品質検査システムにおいて、前記タイヤ部材を長手方向に搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送されている前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得するX線検査装置と、前記画像データが入力される演算装置とを有し、前記画像データを取得する工程が連続的に継続して行われて、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データが取得されて、取得されたそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記演算装置により前記所定の品質の前記タイヤ部材の前記長手方向でのバラつきの大きさが算出される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記タイヤ部材を長手方向に搬送しながら、前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して取得した前記画像データを用いるので、前記所定の品質の把握のために前記タイヤ部材の搬送を停止させる必要がない。そして、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データを取得し、取得したそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて前記所定の品質を精度よく把握できる。それ故、前記タイヤ部材長手方向での前記所定の品質のバラつきの大きさを、迅速に精度よく把握するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】タイヤ部材の品質検査システムの実施形態を側面視で例示する説明図である。
図2図1のX線検査装置の周辺を拡大して例示する説明図である。
図3図2に例示する範囲を平面視で例示する説明図である。
図4】検査対象のタイヤ部材を横断面視で例示する説明図である。
図5図4のタイヤ部材の一部を切り欠いて平面視で例示する説明図である。
図6図1のX線検査装置により取得された画像データを例示する説明図である。
図7図4のタイヤ部材の幅方向位置でのX線の透過線量を例示するグラフ図である。
図8】構成部材M1の幅方向寸法の長手方向での分布を例示するグラフ図である。
図9】タイヤ部材の質量の長手方向での分布を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤ部材の品質検査方法およびシステムを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図3に例示するタイヤ部材の品質検査システム1(以下、システム1という)の実施形態は、長尺のタイヤ部材Rの所定の品質の長手方向Lでのバラつきの大きさを把握するために使用される。図中の矢印L、矢印Wはそれぞれ、タイヤ部材Rの長手方向、幅方向を示している。
【0012】
図4図5に例示するような複数種類の構成部材M(M1~M5)が接合されて形成されている長尺のタイヤ部材Rが検査対象になる。この実施形態では検査対象のタイヤ部材Rは、押出機6(6a~6e)から押出される未加硫ゴムからなる構成部材M1~M5が接合されたトレッドゴムである。検査対象になるタイヤ部材Rはトレッドゴムに限定されず、サイドゴムなど、ゴムを主材料にしていてタイヤの製造に用いられる公知の種々の部材である。
【0013】
それぞれの構成部材M1~M5は、種類が異なる未加硫ゴムであり、例えば、同種の原料ゴムに異なる配合剤が配合されている場合、同種の原料ゴムに同じ配合剤が異なる配合量で配合されている場合、異種の原料ゴムに異なる配合剤が配合されている場合、異種の原料ゴムに同じ配合剤が異なる配合量で配合されている場合などが該当する。
【0014】
構成部材Mの種類は複数であればよく5種類に限定されないが、例えば2種類以上8種類以下程度である。すべての構成部材Mが未加硫ゴムからなる場合だけでなく、一部の構成部材Mが補強材(補強コードなど)の場合もある。タイヤ部材Rのサイズは特に限定されないが、長さは例えば数m以上数百m以下であり、幅は例えば10mm以上2000mm以下、厚さ(最大厚さ)は例えば0.3mm以上100mm以下である。
【0015】
図4図5に例示するタイヤ部材Rでは、シート状の構成部材M2、M3が上下に積層され、その上に構成部材M4が積層され、幅方向両端部には、構成部材M2およびM3の幅方向両端部を覆う構成部材M5が積層されている。そして、タイヤ部材Rの幅方向中央部では構成部材M1が、タイヤ部材Rを上下に(厚さ方向に)貫通している。タイヤ部材Rの表面には構成部材M1、M4、M5が露出し、裏面には構成部材M1、M2、M5が露出していて、この裏面が搬送装置2に当接してタイヤ部材Rが搬送装置2に載置される。タイヤ部材Rが良品であれば、それぞれの構成部材M1~M5は、概ね図4に例示する横断面形状で長手方向Lの全長に延在している。尚、図面では構成部材Mどうしの境界を破線で示している。
【0016】
構成部材M1は、カーボンブラックが多量に配合されていてシリカ無配合のアーストレッドゴムである。構成部材M1は、断面が概ね矩形状で構成部材Mの中で最も厚く、カーボンブラックの含有率(重量割合)が構成部材Mの中で最も高くて比重(密度)が最も小さい部材である。構成部材M1の幅方向寸法は例えば0.5mm以上50mm以下である。
【0017】
構成部材M2は、カーボンブラック配合、シリカ無配合もしくは少量配合の接着用ゴムであり、構成部材Mの中で最も薄いシート状の部材である。構成部材M3は、カーボンブラック配合、シリカ無配合もしくは少量配合のアンダートレッドゴムであり、構成部材M2よりも厚いシート状の部材である。
【0018】
構成部材M4は、カーボンブラックに代えてシリカが多量に配合されているカーボンブラック無配合もしくは少量配合のキャップゴムである。構成部材M4は、構成部材Mの中で構成部材M1に次いで厚い部材であり、その表面には長手方向Lに延在する凹部および凸部を有していて、幅方向位置に応じて厚さが異なっている。構成部材M5は、カーボンブラック配合、シリカ無配合の端部ゴムである。構成部材M5は、タイヤ部材Rの幅方向端面の傾斜面を形成していて、幅方向位置に応じて厚さが異なっている。
【0019】
それぞれの構成部材M1~M5は比重(密度)が異なっていて、それぞれの比重(平均値)は予め把握されている。構成部材Mの中でシリカが最も多く顕著に配合されている構成部材M4は、他の構成部材M1、M2、M3、M5に比して比重が大きい。尚、それぞれの構成部材Mには要求性能に応じて、その他の公知の成分が含有される。また、上述した無配合とは、その成分の配合が皆無の場合だけを意味するのではなく、極微小量が含有される場合も含む。
【0020】
このシステム1は、搬送装置2と、X線検査装置3と、演算装置4とを有している。演算装置4にはモニタ5が通信可能に接続されている。搬送装置2の搬送方向上流側には押出機6が配置され、搬送方向下流側には、振り分けコンベヤ9を介して、巻取り機7と排出コンベヤ10とが並置されている。搬送装置2のX線検査装置3よりも搬送方向下流側では、搬送装置2の上方に切断機8が配置されている。
【0021】
搬送装置2は、タイヤ部材Rを長手方向Lに搬送する。搬送装置2としては、ベルトコンベヤ装置や多数の回転ローラが配列されたローラコンベヤ装置などの公知の種々の仕様を採用することができる。
【0022】
X線検査装置3は、照射部3aと受光部3bとを有している。照射部3aは搬送装置2に載置されているタイヤ部材Rの上方に配置され、受光部3bはこのタイヤ部材Rの下方に配置されている。したがって、搬送装置2によって搬送されているタイヤ部材Rは、照射部3aと受光部3bとの上下間を通過する。
【0023】
搬送装置2により搬送されているタイヤ部材Rの表面側(図では上側)から、照射部3aはタイヤ部材Rの所定長さ範囲Cに対して、タイヤ部材Rの全幅を網羅するようにX線を照射する。タイヤ部材Rを透過したX線は受光部3bに受光される。そして、X線が照射されたタイヤ部材Rの所定長さ範囲CのX線透過度に基づく画像データDがX線検査装置3により取得される。公知の種々の仕様のX線検査装置3を採用することができる。
【0024】
照射部3aは連続して、或いは、断続的にX線を照射し、長手方向Lに連続する所定長さ範囲Cのそれぞれの画像データDを取得する。長手方向Lに隣接する所定長さ範囲Cどうしは、長手方向Lに多少重複してもよいが、長手方向Lには離間しないようにする。X線を断続的に照射する際には、搬送装置2によるタイヤ部材Rの搬送速度が速くなる程、或いは、所定長さ範囲Cが小さい程、インターバルが短くなって頻繁にX線を照射することになる。換言すると、搬送装置2による搬送速度が遅くなる程、或いは、所定長さ範囲Cが大きい程、X線を断続的に照射する際のインターバルが長くなる。
【0025】
所定長さ範囲Cの大きさ(長さ)や搬送装置2による搬送速度は任意に設定することができるが、所定長さ範囲Cの大きさは例えば50mm(5mm以上1000mm以下)程度である。また、搬送装置2による搬送速度は例えば50mm/s以上1000mm/s以下程度である。また、X線の照射強度(X線管の電圧および電流)は、事前テストなどを行って、検査対象のタイヤ部材Rに仕様に応じて、より鮮明な画像データDを取得できる範囲に設定する。
【0026】
演算装置4には、X線検査装置3により取得された画像データDが逐次、入力される。演算装置4にはその他に種々のデータが入力され、インストールされているプログラムを用いて種々の演算処理が行われる。演算装置4としては、公知のコンピュータを用いることができる。演算装置4は、X線検査装置3とは独立別個に備えてもよく、X線検査装置3の一部として組み込まれた仕様でもよい。
【0027】
モニタ5には、X線検査装置3により取得された画像データD、演算装置4により演算処理されたデータ(画像データなど)が表示される。モニタ5としては、公知の種々の仕様を採用すればよい。
【0028】
押出機6(6a~6e)は、回転駆動されるスクリューが内設されたシリンダを有し、原料ゴムと各種の配合剤とが混練された未加硫ゴムを、スクリューを回転させて適度な粘度にしつつ前方に送って押出ヘッド6Hから押出す。公知の種々の仕様の押出機6を採用することができる。この実施形態では、タイヤ部材Rが5種類の構成部材M1~M5を接合して形成されているので、5台の押出機6a~6eが使用されている。それぞれの押出機6a、6b、6c、6d、6eからはそれぞれ、対応する構成部材M1、M2、M3、M4、M5を形成する異なる種類の未加硫ゴムが押出される。押出機6a~6eにより押出されたそれぞれの未加硫ゴムは、押出ヘッド6Hを通過することで接合されて一体化したタイヤ部材Rとして押出ヘッド6Hから押出される。
【0029】
巻取り機7は、搬送装置2により搬送されたタイヤ部材Rを巻き取って一時的にストックする。巻取り機7は、タイヤ部材Rをライナとともに巻き取る巻取りドラムを有している。製造されたタイヤ部材Rが次工程で直ちに使用される押出・成形直結ラインなどでは巻取り機7は不要になる。
【0030】
切断機8は、搬送装置2に載置されているタイヤ部材Rを横断して切断する。切断機8としては回転丸刃など公知のカッタが採用される。
【0031】
振り分けコンベヤ9は、一方端部(搬送方向上流側端部)を中心にして上下に旋回する。搬送装置2により搬送されたタイヤ部材Rは、振り分けコンベヤ9の他方端部が下方に旋回すると巻取り機7に導かれ、上方に旋回すると排出コンベヤ10に導かれる。
【0032】
以下、本発明の品質検査方法によって、タイヤ部材Rの所定の品質の長手方向Lでのバラつきの大きさを把握する手順の一例を説明する。まず、所定の品質として、特定成分(カーボンブラック)の含有率が他の構成部材M2~M5よりも高い未加硫ゴムにより形成されている構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでの分布を把握する場合を説明する。
【0033】
図1に例示するように、押出機6から押出ヘッド6Hを経て押出されたタイヤ部材Rを、前方に配置されている搬送装置2に載置して長手方向Lに搬送する。この搬送過程では、図2図3に例示するように、タイヤ部材Rを長手方向Lに搬送しながら、タイヤ部材Rの表面側から所定長さ範囲Cに対して、照射部3aによりタイヤ部材Rの表面に向かってX線が照射される。タイヤ部材Rの所定長さ範囲Cを透過したX線は、受光部3bに逐次受光される。
【0034】
これにより、X線検査装置3によって、所定長さ範囲CのX線透過度に基づく図6に例示する画像データDが取得される。このように画像データDを取得する工程を連続的に継続して行うことにより、長手方向Lに隙間なく連続した所定長さ範囲Cの画像データDが取得される。取得したそれぞれの画像データDは、演算装置4に逐次入力され、演算処理されて解析される。演算装置4では、画像データDでの濃淡に基づいて、構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさ(バラつき具合)が算出される。この演算装置4による算出工程について以下、詳述する。
【0035】
照射部3aから照射されたX線は、タイヤ部材Rを透過して受光部3bにより受光される。タイヤ部材Rが厚くなる程、タイヤ部材RでのX線の減衰がより大きくなる(吸収量が多くなる)ため受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が減少する。また、タイヤ部材RにX線を減衰させ易い成分(原子番号と密度が大きい)の含有量が多いと、受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が減少する。これに伴い、得られる画像データDはより黒色に近くなって濃くなる。一方、タイヤ部材Rが薄くなる程、タイヤ部材RでのX線の減衰がより小さくなる(吸収量が少なくなる)ため受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が増加する。また、タイヤ部材RにX線を減衰させ易い成分の含有量が少なければ、受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が増加する。これに伴い、得られる画像データDはより白色に近くなって淡くなる。
【0036】
シリカはカーボンブラックに比して、X線を顕著に減衰させる(吸収する)成分である。したがって、シリカが含有されている、或いはシリカの含有量が多い構成部材Mは、シリカに代えてカーボンブラックが含有されている、或いはカーボンブラックの含有量が多い構成部材Mよりも、画像データDは黒色に近くなって濃くなる。このように画像データDでの濃淡は、X線が透過する位置でのタイヤ部材Rの厚さおよび含有成分に依存する。
【0037】
図7で一点鎖線Zによって例示するように、このタイヤ部材RのX線の透過線量Zは幅方向Wで変化する。尚、図7ではタイヤ部材Rの幅方向位置を理解し易くするため、グラフの下方にタイヤ部材Rの横断面図が記載されている。この透過線量Zは、X線をタイヤ部材Rの表面側から照射した場合に裏面側で受光されるX線量を示している。この透過線量Zは、X線が透過する位置のタイヤ部材Rの厚さ、比重および減弱係数に基づいて算出することができる。透過線量Zがより大きい幅方向位置になる程、画像データDでは色が濃くなる。
【0038】
それ故、図6に例示する画像データDでは、構成部材M4の最も厚い位置では色が最も濃く、最も薄い位置では色が淡くなっている。構成部材M1は最も厚い部材ではあるが、比重が最も小さい部材であるため、構成部材M1が配置されている位置では画像データDの色は淡くなっている。構成部材M5が配置されている位置では、タイヤ部材Rの幅方向端に向かって画像データDの色は淡くなっている。図6では、色の濃さに応じて斜線の配置ピッチを変化させていて、相対的に色が濃い部分では斜線の配置ピッチを小さくして密に記載している。
【0039】
したがって、図6の画像データDには色が濃い部分と淡い部分が存在していて、色の淡い部分は複数箇所(構成部材M4の最も薄い位置、構成部材M1の位置、構成部材M5の位置)に存在している。したがって、画像データDでの単純な濃淡だけでは、いずれの淡い部分が構成部材M1の存在している位置であるのか識別し難い。ただし、同じ種類の未加硫ゴムで厚さが変化する場合は、透過線量Zの変化は厚さの変化と同様に徐々に変化するので画像データDでの濃淡の変化が緩やかになる。一方、異なる種類の未加硫ゴムでは、含有成分の違いに起因して透過線量Zが大きく変化するので画像データDでの濃淡の変化が急激になる。
【0040】
そこで、この実施形態では、図7に例示するタイヤ部材Rの幅方向Wでの透過線量Zを把握しておき、透過線量Zの差異の大きさを利用する。即ち、それぞれの構成部材Mの透過線量Zを予め把握しておき、図7に例示するように幅方向Wに隣り合う構成部材Mの境界でのその構成部材Mどうしの透過線量Zの差異の大きさの基準範囲を設定する。つまり、幅方向Wでの透過線量Zの変化が基準範囲であれば、構成部材M1とM4とが幅方向Wに隣り合っていることが実質的に保証できるように基準範囲を設定する。
【0041】
そして、設定した基準範囲に対応する画像データDの濃淡の差異の範囲を判定基準として演算装置4に記憶する。演算装置4は、それぞれの画像データDに対して幅方向Wでの濃淡の差異の大きさを算出して、その差異が判定基準に入っている位置を検出すると、その検出した幅方向位置が構成部材M1とM4との境界であると判断する。タイヤ部材Rに1本の構成部材M1が長手方向Lに延在しているのであれば、構成部材M1とM4との境界が幅方向Wに間隔をあけた2箇所で検出され、その境界どうしの幅方向Wの間隔が構成部材M1の幅方向寸法として算出される。
【0042】
その結果、図8に例示するように、タイヤ部材Rでの構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさが算出される。図8の縦軸のMcは、構成部材M1の幅方向寸法の設計値を示していて、製造されたタイヤ部材Rでは構成部材M1の幅方向寸法が、長手方向Lでどの程度変動しているかを把握できる。図8において幅方向寸法がゼロになっている場合は、構成部材M1が長手方向Lの途中で途切れていることを意味する。したがって、図8のデータによれば、構成部材M1の長手方向Lに対する連続性を把握することができる。
【0043】
モニタ5には、品質確認結果として例えば、図6の画像データD上で、構成部材M1が存在していると判断された部分(上述した境界どうしの幅方向Wの間隔の領域)に、視認し易い色(黄色や水色など)を付して表示することもできる。これにより、関係者はモニタ5を見ることで、品質確認結果を即座に把握し易くなる。
【0044】
この実施形態では、照射部3aからタイヤ部材Rの所定長さ範囲Cに対して、タイヤ部材Rの全幅を網羅するようにX線が照射されているが、タイヤ部材Rでの構成部材M1が配置されている幅方向位置は予め把握されている。したがって、X線を照射する幅方向範囲は、構成部材M1が配置されているとして予め把握されている幅方向位置を含む、より狭い範囲に設定することもできる。
【0045】
算出された構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさが、予め設定された許容範囲内であれば、該当する所定長さ範囲Cは良品部分と判断される。そして、搬送装置2により搬送されたタイヤ部材Rの良品部分は、振り分けコンベヤ9により、巻取り機7に導かれて巻き取られる。押出・成形直結ラインなどの場合は、タイヤ部材Rの良品部分はそのまま次工程に搬送される。
【0046】
算出された構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさが許容範囲外の場合は、該当する所定長さ範囲C(不良部分)は搬送装置2の上で、切断機8により切断される。そして、その切断された所定長さ範囲C(不良部分)が搬送装置2の搬送方向下流端部まで搬送されると、振り分けコンベヤ9は排出コンベヤ10側に旋回する。これにより、切断された所定長さ範囲C(不良部分)は排出コンベヤ10に載置されて搬送されて、製造ラインから除外される。
【0047】
上述したように、搬送装置2によって長手方向Lに搬送されている状態のタイヤ部材Rの表面側から所定長さ範囲Cに対してX線を照射して取得した画像データDを用いるので、構成部材M1の幅方向寸法を把握するためにタイヤ部材Rの搬送を停止させる必要はない。そして、長手方向Lに隙間なく連続した所定長さ範囲Cの画像データDを取得して、それぞれの画像データDでの濃淡に基づいて演算装置4により、構成部材M1の幅方向寸法を精度よく把握することができる。したがって、それ故、長手方向Lでの構成部材M1の幅方向寸法のバラつき(即ち、構成部材M1の長手方向Lの連続性)を、迅速に精度よく把握するには有利になる。
【0048】
上述の実施形態では、特定成分としてカーボンブラックの含有率が他の構成部材Mを形成している未加硫ゴムよりも高い未加硫ゴムにより形成されている構成部材M1の長手方向での分布を把握する場合を例にしている。この特定成分はカーボンブラックに限らず、目的に応じてその他の成分にすることもできる。また、検査対象とする特定部材は、構成部材M1に限らず、他の構成部材Mにすることもできる。
【0049】
次に、X線検査装置3により検査を行う所定の品質として、タイヤ部材Rの質量の長手方向Lでの分布を把握する場合を説明する。尚、この分布は、上述した構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさに代えて、或いは、加えて、把握することができる。
【0050】
事前に、多数のタイヤ部材Rのサンプルについて上述した画像データDを同条件下で取得する。また、それぞれのサンプルの単位長さ当たりの質量データを取得する。これらの画像データDおよび質量データを教師データとして機械学習させることにより、検査対象として取得した画像データDから、その画像データDに対応する所定長さ範囲Cの単位長さ当たりの質量を推定する予測モデル(コンピュータプログラム)を生成して、演算装置4に記憶する。
【0051】
画像データDでの濃淡は、上述したようにタイヤ部材Rの厚さおよび含有成分に依存して変化するので、その濃淡の分布はその画像データDに対応するタイヤ部材Rの部分(所定の長さ範囲C)の単位長さ当たりの質量と相関関係がある。そこで、例えば画像データDを多数の微小領域に細分化して、それぞれの微小領域の濃淡の程度およびそれぞれの微小領域の位置などと、その画像データDに対応する単位長さ当たりの質量との相関関係を機械学習させて得ることで推定モデルを生成する。機械学習の手法としては、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングなど公知の種々の手法を用いることができる。
【0052】
搬送されているタイヤ部材Rのそれぞれの所定長さ範囲Cの質量を推定する際には、X線検査装置3により逐次取得された画像データDを推定モデルに入力して演算装置4により演算処理する。これにより、それぞれの所定長さ範囲Cの質量が推定、算出される。
【0053】
その結果、図9に例示するように、タイヤ部材Rの質量(単位長さ当たりの質量)の長手方向Lでのバラつきの大きさが算出される。図9の縦軸のRaは、タイヤ部材Rの質量(単位長さ当たりの質量)の許容範囲を示していて、図9によれば、製造されたタイヤ部材Rでは、その質量が長手方向Lでどの程度変動しているかを把握できる。図9において質量が許容範囲Ra内の場合は、該当する所定長さ範囲Cは良品部分として判断され、許容範囲Ra外になった場合は、該当する所定長さ範囲Cは不良部分として判断される。
【0054】
この実施形態でも先の実施形態と同様に、良品部分に該当する所定長さ範囲Cは振り分けコンベヤ9により巻取り機7に導かれる。不良部分に該当する所定長さ範囲Cは搬送装置2の上で、切断機8により切断されて、振り分けコンベヤ9により排出コンベヤ10に導かれて製造ラインから除外される。
【符号の説明】
【0055】
1 品質検査システム
2 搬送装置
3 X線検査装置
3a 照射部
3b 受光部
4 演算装置
5 モニタ
6(6a~6e) 押出機
6H 押出ヘッド
7 巻取り機
8 切断機
9 振り分けコンベヤ
10 排出コンベヤ
R タイヤ部材
M(M1、M2、M3、M4、M5) 構成部材
C 所定長さ範囲
D 画像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9