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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150562
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】バイブレータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20231005BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04G21/06
B06B1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059730
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512270807
【氏名又は名称】株式会社北斗工業
(71)【出願人】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筒井 隆規
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩▲朗▼
(72)【発明者】
【氏名】中平 憲文
(72)【発明者】
【氏名】對馬 陽公
(72)【発明者】
【氏名】武石 海斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 正樹
【テーマコード(参考)】
2E172
5D107
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172FA29
5D107BB10
5D107CC09
5D107CD08
5D107DE02
5D107DE03
(57)【要約】
【課題】コンクリートの締固めに使用するバイブレータの動作を制御するリモコンに、バイブレータの振動オン・オフ制御の他、タイマー設定やバイブレータの振動用モータの回転方向を制御するための制御信号出力機能を持たせ、バイブレータの作業者が単独で操作を行うことを可能とする。
【解決手段】本発明によるバイブレータ制御システムは、コンクリートの締固めに使用するバイブレータの動作を制御するためのリモコンと、リモコンからの制御信号を受信してバイブレータに電力を供給する電力供給装置とを備え、リモコンはバイブレータの振動オン・オフの制御を行う制御信号、及び少なくともバイブレータの振動部の回転方向の制御又はバイブレータの振動時間のタイマー制御のいずれかの制御を行う制御信号を出力する制御信号出力部を備え、電力供給装置は受信した制御信号に対応した電力をバイブレータに供給する電力制御部を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの締固めに使用するバイブレータの動作を制御するためのリモコンと、有線又は無線によりリモコンからの制御信号を受信してバイブレータに電力を供給する電力供給装置とを備え、
前記リモコンは前記バイブレータの振動オン・オフの制御を行う制御信号、及び少なくとも前記バイブレータの振動部の回転方向の制御又は前記バイブレータの振動時間のタイマー制御のいずれかの制御を行う制御信号を出力する制御信号出力部を備え、
前記電力供給装置は受信した制御信号に対応した電力を前記バイブレータに供給する電力制御部を備えることを特徴とするバイブレータ制御システム。
【請求項2】
前記リモコン又は前記バイブレータは、前記電力供給装置から前記バイブレータに供給する電力の状況に応じて通知される通知信号を受信して、作業者に前記バイブレータの動作の情報を光、音、振動、又はディスプレイにて知らせる通知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のバイブレータ制御システム。
【請求項3】
前記リモコン又は前記電力供給装置は、前記バイブレータの振動時間のタイマー設定を受け付けるタイマー設定部を備え、
前記電力供給装置は、前記リモコンから受信するか、前記電力供給装置が直接タイマー設定部で受け付けたタイマー設定に基づいて前記バイブレータに電力を供給するとき、タイマー動作の終了前の所定時間に、終了準備通知信号を出力し、
前記通知手段は前記終了準備通知信号を受信して作業者にタイマー動作の終了が近づいたことを通知することを特徴とする請求項2に記載のバイブレータ制御システム。
【請求項4】
前記リモコンは、前記バイブレータのタイマー動作中に、振動を一時的に止める一時停止指示、及び一時的に止めた振動を再開する再開指示を受け付ける入力手段をさらに備え、
前記電力供給装置は、前記リモコンから一時停止指示を受信すると電力の供給を中断すると共にタイマーを一時的に停止し、前記リモコンから再開指示を受信すると電力の供給を再開すると共にタイマーを一時的に停止した時間から再開し、一時停止前に電力を供給した時間と合計してタイマー設定時間になるまで電力の供給を行うことを特徴とする請求項3に記載のバイブレータ制御システム。
【請求項5】
前記リモコン又は前記電力供給装置は、前記バイブレータのタイマー動作中に、予め設定したプログラムに基づき振動の周波数を可変させる可変周波数振動指示、又は前記バイブレータの回転方向を切り替える可変回転方向指示のいずれかを含む可変動作指示を受け付ける入力手段をさらに備え、
前記電力供給装置は、前記リモコンから受信するか、前記電力供給装置が直接前記入力手段から受け付けた可変動作指示に基づいて前記バイブレータに電力を供給することを特徴とする請求項3に記載のバイブレータ制御システム。
【請求項6】
前記リモコン又は前記電力供給装置は、前記バイブレータの振動の周波数変更指示を受け付ける振動周波数設定部を備え、
前記電力供給装置は、前記リモコンから受信するか、前記電力供給装置が直接振動周波数設定部で受け付けた振動周波数設定に基づいて振動周波数を変更して前記バイブレータに電力を供給するとき、新たな振動周波数に応じた締固め範囲を示す締固め範囲通知信号を出力し、
前記通知手段は締固め範囲通知信号を受信して光、音又はディスプレイ表示により締固め範囲の変更を通知することを特徴とする請求項2に記載のバイブレータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイブレータ制御システムに関し、特にコンクリートの締固めに使用するバイブレータの動作を制御するためのリモコンに、バイブレータの振動オン・オフ制御の他、タイマー設定やバイブレータの振動用モータの回転方向を制御するための制御信号出力機能を持たせることにより、バイブレータの作業者が単独で容易にきめ細かい操作を行うことを可能とするバイブレータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木や建築など様々な工事現場においてコンクリートが使用されることが多いが、コンクリートを打設する場合、コンクリートの品質を維持するためにバイブレータによる締固めは不可欠な作業である。締固めは型枠に打ち込んだコンクリートにバイブレータを挿し込んで振動を加え、運搬中や打ち込みの際に巻き込まれた気泡を除去する作業である。
【0003】
締固めに使用するバイブレータは、モータと振動振子を備え、モータに電力を供給して駆動するとモータに連結された振動振子により振動が発生し、この振動がコンクリートに伝搬されるようになっている。バイブレータには小型で全長が短く手元に操作用のスイッチを備え、作業者が一人で扱えるものもあるが、大型の構造物などに使用する高周波出力のバイブレータは、先端を挿し込む深さも深くなり、バイブレータの作業者の手の届く範囲には操作用のスイッチ類を設けることはできない。このため高周波出力のバイブレータは、バイブレータの作業者の他にスイッチ類を操作する別の作業者が必要となる。
締固め作業に多くの作業人員が必要であるという課題に対応するため、バイブレータの電源オン・オフを無線リモコンにより操作する技術も考案されている。
【0004】
特許文献1には、バイブレータ動力源の制御を無線制御により行うコンクリートバイブレータにおいて、送信機には、複数の押しボタンと、押しボタンに割り当てられた動作モードを所定符号に変換する符号変換部と、この符号変換部から送出された符号でキャリアを変調して送信する送信部とを備え、受信機は、受信した信号をデコードするデコーダと、デコーダからの信号に基づきバイブレータ動力源の動作周波数を制御するためのインバータとを備え、各押しボタンに割り当てられた動作モードの指定に応じて、バイブレータ動力源の始動、停止及び動作周波数が任意に制御できるように構成されたコンクリ-トバイブレ-タが開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の考案によれば、バイブレータを操作する作業者が送信機を携帯することにより、バイブレータ動力源の始動、停止が一人で行えるため、締固め作業に必要な作業人員の削減が可能となる。しかし、状況により、バイブレータの駆動のモータの回転方向によって特性の異なるスパイラル型のバイブレータが使用される場合には、正転か逆転かの選択若しくは途中での切り替えが必要であるし、コンクリートの品質を安定化させるために、振動を伝搬する時間を一定のものとする場合などにはタイマーの設定も必要となる。特許文献1に記載の送信機には動作周波数を任意に制御するためのスイッチは備えられているものの、こうした多様なニーズにこたえられるようには構成されていない。
【0006】
そこで、バイブレータを操作する作業者が補助となる作業者を必要とせず、単独でタイマー設定やバイブレータの駆動のモータの回転方向の切り替えを行うなど従来技術には無い機能により多様な締固めを行うことができるバイブレータ制御システムの提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】公開実用新案第平3-84362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来のバイブレータ制御システムにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、コンクリートの締固めに使用するバイブレータの動作を制御するためのリモコンに、バイブレータの振動オン・オフ制御の他、タイマー設定やバイブレータの振動用モータの回転方向を制御するための制御信号出力機能を持たせることにより、バイブレータの作業者が単独で容易にきめ細かい操作を行うことを可能とするバイブレータ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明によるバイブレータ制御システムは、コンクリートの締固めに使用するバイブレータの動作を制御するためのリモコンと、有線又は無線によりリモコンからの制御信号を受信してバイブレータに電力を供給する電力供給装置とを備え、前記リモコンは前記バイブレータの振動オン・オフの制御を行う制御信号、及び少なくとも前記バイブレータの振動部の回転方向の制御又は前記バイブレータの振動時間のタイマー制御のいずれかの制御を行う制御信号を出力する制御信号出力部を備え、前記電力供給装置は受信した制御信号に対応した電力を前記バイブレータに供給する電力制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
前記リモコン又は前記バイブレータは、前記電力供給装置から前記バイブレータに供給する電力の状況に応じて通知される通知信号を受信して、作業者に前記バイブレータの動作の情報を光、音、振動、又はディスプレイにて知らせる通知手段を備えることが好ましい。
【0011】
前記リモコン又は前記電力供給装置は、前記バイブレータの振動時間のタイマー設定を受け付けるタイマー設定部を備え、前記電力供給装置は、前記リモコンから受信するか、前記電力供給装置が直接タイマー設定部で受け付けたタイマー設定に基づいて前記バイブレータに電力を供給するとき、タイマー動作の終了前の所定時間に、終了準備通知信号を出力し、前記通知手段は前記終了準備通知信号を受信して作業者にタイマー動作の終了が近づいたことを通知することが好ましい。
【0012】
前記リモコンは、前記バイブレータのタイマー動作中に、振動を一時的に止める一時停止指示、及び一時的に止めた振動を再開する再開指示を受け付ける入力手段をさらに備え、前記電力供給装置は、前記リモコンから一時停止指示を受信すると電力の供給を中断すると共にタイマーを一時的に停止し、前記リモコンから再開指示を受信すると電力の供給を再開すると共にタイマーを一時的に停止した時間から再開し、一時停止前に電力を供給した時間と合計してタイマー設定時間になるまで電力の供給を行うことが好ましい。
【0013】
前記リモコン又は前記電力供給装置は、前記バイブレータのタイマー動作中に、予め設定したプログラムに基づき振動の周波数を可変させる可変周波数振動指示、又は前記バイブレータの回転方向を切り替える可変回転方向指示のいずれかを含む可変動作指示を受け付ける入力手段をさらに備え、前記電力供給装置は、前記リモコンから受信するか、前記電力供給装置が直接前記入力手段から受け付けた可変動作指示に基づいて前記バイブレータに電力を供給することが好ましい。
【0014】
前記リモコン又は前記電力供給装置は、前記バイブレータの振動の周波数変更指示を受け付ける振動周波数設定部を備え、前記電力供給装置は、前記リモコンから受信するか、前記電力供給装置が直接振動周波数設定部で受け付けた振動周波数設定に基づいて振動周波数を変更して前記バイブレータに電力を供給するとき、新たな振動周波数に応じた締固め範囲を示す締固め範囲通知信号を出力し、前記通知手段は締固め範囲通知信号を受信して光、音又はディスプレイ表示により締固め範囲の変更を通知することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るバイブレータ制御システムによれば、リモコンを備えることにより作業者は単独でバイブレータの振動オン・オフ制御の他、タイマー設定やバイブレータの振動用モータの回転方向を制御することができ、後方でバイブレータのこうした電源操作を行うための別の作業者が不要となることから、締固めの作業者の削減が可能となる。
【0016】
また、本発明に係るバイブレータ制御システムによれば、リモコン又は電力供給装置はタイマー設定部を備え、電力供給装置はタイマー設定に基づいてバイブレータに電力を供給するとき、タイマー動作の終了前の所定時間に、終了準備通知信号を出力し、終了準備通知信号を受信したリモコン又はバイブレータは、通知手段により作業者にタイマー動作の終了が近づいたことを通知するので、作業者はタイマーの終了前に次の動作への心構えが整い、スムーズに次の場所への移動を進めることができる。
【0017】
本発明に係るバイブレータ制御システムによれば、タイマー動作中にリモコンに一時停止指示を入力して一時的にバイブレータの振動を止め、再開指示の入力によりバイブレータの振動を再開することができるが、その一時停止前後の振動時間の合計がタイマー設定の時間を超えないように制御されるため、過振動によるコンクリートの品質低下を防止することができる。
【0018】
また、本発明に係るバイブレータ制御システムによれば、タイマー動作中にプログラムに基づき振動の周波数を可変させる可変周波数振動指示、又は前記バイブレータの回転方向を切り替える可変回転方向指示のいずれかを含む可変動作指示を行うことができるため、作業者は単独でも容易に多様な締固めを行うことができる。
【0019】
一般にバイブレータの振動用モータの回転方向の違いにより、バイブレータを挿入するときの進行方向の反れやすさが異なる傾向があるが、本発明に係るバイブレータ制御システムによれば、リモコンによりバイブレータの振動用モータの回転方向を容易に切り替えることができるので、例えばスライドセントルの天端の締固めのように、バイブレータの挿入場所の微調整が必要な場合でも、回転方向を適宜切り替えて狙った場所に容易に挿入することが可能となる。
【0020】
本発明に係るバイブレータ制御システムによれば、リモコン又は電力供給装置は、バイブレータの振動の周波数変更指示を受け付ける振動周波数設定部を備え、電力供給装置は、振動周波数を変更してバイブレータに電力を供給するとき、新たな振動周波数に応じた締固め範囲を示す締固め範囲通知信号を出力し、締固め範囲通知信号を受信したリモコン又はバイブレータは、通知手段により作業者に締固め範囲の変更を通知するので、作業者は締固め範囲を認識し、次の締固めのためのバイブレータの挿入を適正な位置にして作業することが可能となる。
【0021】
本発明に係るバイブレータ制御システムによれば、鉄筋が密に配置された部分で締固めを行う際に、締固め後に抜けにくくなるバイブレータに対しても、手元のリモコンで逆転、正転を繰り返すことで抜けやすくなるため、作業者は単独で作業効率の低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムの全体構成を概略的に示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態によるリモコンの構成例を示す図である。
図3】本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における終了準備通知信号の処理を説明する図である。
図4】本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における一時停止・再開処理を説明する図である。
図5】本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における可変周波数振動処理を例示的に説明する図である。
図6】本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における可変回転方向処理を例示的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係るバイブレータ制御システムを実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムの全体構成を概略的に示すブロック図である。
【0024】
図1を参照すると、本発明の実施形態によるバイブレータ制御システム1は、コンクリートの締固めに使用するバイブレータ30、バイブレータ30に電力を供給する電力供給装置20、及び電力供給装置20を介してバイブレータ30の動作を制御するためのリモコン10を備える。図1では、電力供給装置20にバイブレータ30が1つ接続されるように示すが、電力供給装置20が複数の電力出力端子を備える場合、バイブレータ30は複数であってもよい。その場合リモコン10もバイブレータ30の数に応じて複数であることが望ましい。
【0025】
本発明の実施形態によるバイブレータ制御システム1は、バイブレータ30を操作する作業者が携帯して操作可能なリモコン10に、様々な設定や、制御を行うための指示の入力手段を備えることにより、作業者が単独でバイブレータ30をきめ細かく制御することができるようにするシステムである。これにより、通常ではバイブレータ30の作業者以外にバイブレータ30の電源の制御を行う後方の作業者が必要となるような長尺のバイブレータ30を使用する場合も、一人の作業者で締固め作業を行うことが可能となる。
【0026】
また、バイブレータ制御システム1は、バイブレータ30の動作状況に応じて通知手段により、作業者にタイマー動作の終了が近いことや、現在適用中バイブレータ30の振動周波数に基づく有効な締固め範囲の通知などの通知情報を通知する。これにより作業者は次の締固め位置への移動準備からセッティングまでを効率的に行うことができる。
【0027】
リモコン10は、入力手段11、タイマー設定部12、振動周波数設定部13、制御信号生成部14、制御信号出力部15、及び通知手段16を備える。
入力手段11は、バイブレータ30の振動のオン・オフの制御、バイブレータ30に備えられ振動を生成するためのモータの回転軸の回転方向の制御、バイブレータ30の振動時間のタイマー制御などの制御の指示の入力を受け付ける。入力手段11は、制御項目が複数ある場合、例えば回転スイッチのように制御項目を選択するスイッチと、その実行を指示するボタンスイッチなどの組み合わせで構成してもよいが、一実施形態では直接に指示入力ができるように制御指示に応じて個別にボタンスイッチなどの手段を備える。
【0028】
一実施形態のリモコン10は、振動のオン・オフの制御の指示の他、少なくともバイブレータ30の振動部の回転方向の制御又はバイブレータ30の振動時間のタイマー制御のいずれかの制御を行う指示を受け付ける入力手段11を備える。他の実施形態のリモコン10では、上記に加えてさらにバイブレータ30のタイマー動作中に一時的に振動を止めたり、再開したりする指示や、予め設定したプログラムに基づき振動の周波数を可変させる可変周波数振動指示、又はバイブレータ30の振動用モータの回転方向を切り替える可変回転方向指示のいずれかを含む可変動作指示を受け付ける入力手段11を備える。
【0029】
タイマー設定部12は、バイブレータ30の振動時間のタイマー設定を受け付ける。コンクリートの締め固めは、バイブレータ30による振動を加える時間が短いと、十分な効果が得られない一方で、振動を加える時間が長すぎると、コンクリートの分離による品質低下が懸念される。そこで安定した締め固め作業とするために、タイマーを設定してタイマー制御を行うことは有効な手法である。
【0030】
一実施形態では、タイマー設定部12は、振動時間を表示する表示窓と、振動時間を増加させる増加ボタン及び振動時間を減少させる減少ボタンを備える。また他の実施形態では、予め設定されたタイマー制御プログラムを表示する表示窓と、タイマー制御プログラムを切り替える切換えボタンとを備える。このようにすることで単に振動時間をタイマー制御するだけでなく、次の振動までの間隔を含めて、例えば60秒間振動オンに続き30秒間の振動オフ時間を組み合わせた間欠動作なども行うことができるようになる。30秒間の振動オフ時間の間にバイブレータ30を次の振動場所に移動し、これを繰り返して連続的に効率よく締固めを行うことができる。
【0031】
振動周波数設定部13は、バイブレータ30の振動の周波数変更指示を受け付ける。打設するコンクリートの仕様や打設した現場の状況に応じて振動の周波数を変更することが望ましい場合も生ずる。一実施形態では、振動周波数設定部13は、振動の周波数を表示する表示窓と、振動の周波数を増加させる増加ボタン及び振動の周波数を減少させる減少ボタンを備える。
【0032】
制御信号生成部14は、入力手段11により入力された振動のオン・オフの制御や振動時間のタイマー制御などの指示入力、及びタイマー設定や周波数設定などで設定された設定値に基づき、電力供給装置20に出力する制御信号を生成する。リモコン10に入力される指示や設定値は、例えばタイマー動作中の一時停止などのように2つの指示の組み合わせで規定されるものもあり、制御信号生成部14は、マイコン等の論理演算処理が可能な電子回路を実装することにより実現される。
【0033】
制御信号出力部15は、制御信号生成部14が生成した制御信号を電力供給装置20に出力する。このため制御信号出力部15は電力供給装置20に信号を送信するための有線又は無線の通信手段を備える。実施形態では締固めを行う作業者の作業性を考慮して無線の通信手段を備える。状況に応じて選択して使用できるように有線及び無線の通信手段を両方備えてもよい。
【0034】
通知手段16は、バイブレータ30の動作状況、即ち電力供給装置20からバイブレータ30に供給される電力の状況に応じて、電力供給装置20から出力される通知信号に基づき、作業者に通知信号に対応した情報を光、音、振動、又はディスプレイにより通知する。通知信号としては終了準備通知信号、締固め範囲通知信号などが含まれる。終了準備通知信号は、タイマー設定に基づいてバイブレータ30に電力を供給するとき、タイマー動作の終了前の所定時間に出力されるものであり、作業者にタイマー動作の終了が近づいたことを通知するものである。これにより作業者は振動の終了のタイミングに気を使うことなく、通知を受けてから次の締固めの位置への移動の準備を整えることができる。また、締固め範囲通知信号は、振動の周波数の変更指示を受けて出力されるものであり、新たな振動周波数に応じた締固め範囲を示すものである。同じバイブレータ30でも振動の周波数が高い程有効な締固めの範囲が広くなるため、締固めを行う位置の適切な間隔も周波数に応じて変化する。そこで通知手段16は締固め範囲通知信号を受信すると作業者に変更が適用された振動に基づく締固め範囲を通知する。
【0035】
締め固めを行う作業者が、締固めを行う位置の適切な間隔を把握することは重要である。そこで一実施形態では、通知手段16は、締固めの初期設定の振動数に基づく締固め範囲通知信号を電力供給装置20から受け、初期の振動数に基づく締固め範囲を通知し、その後、振動の周波数の変更が行われる毎に、変更された締固め範囲を通知するように設けられる。
【0036】
通知手段16は、光で通知する場合はLEDなどの発光手段により光の点滅や光の色の変化などで通知し、音で通知する場合はスピーカなどの音源により通知する。また振動により通知する場合は、振動モータなどにより通知を行い、ディスプレイにより通知する場合は受信した通知に基づく情報を液晶ディスプレイなどに表示して通知する。通知手段16は、これらの何れかでもよいし、これらを組み合わせて通知するようにしてもよい。
リモコン10は上記の構成要素の他、図示しない電池などの電源供給部を備える。
【0037】
電力供給装置20は、リモコン10からの制御信号に基づきバイブレータ30に供給する電力を制御する中継器21と外部電力を受け周波数を変更して電力を出力するインバータ22とを備え、中継器21は、制御信号受信部23、入力手段24、タイマー設定部25、振動周波数設定部26、電力制御部27、及び通知信号出力部28を備える。
【0038】
制御信号受信部23は、リモコン10から出力される制御信号を受信するものであり、リモコン10の制御信号出力部15に応じた有線又は無線の通信手段を備える。電力供給装置20が複数のバイブレータ30に対応し、それぞれのバイブレータ30に個別にリモコン10が対応する場合、制御信号受信部23は、どのリモコン10からの制御信号かを識別する必要がある。そこでこのような場合には、リモコン10には予め固有の識別番号を設定しておき、リモコン10からの制御信号には固有の識別番号の情報も含めた形とすることで電力供給装置20はどのリモコン10からの制御信号かを判別することが可能となる。リモコン10に設定する固有の識別番号は、例えば電力供給装置20が備える電力の出力端子の番号に合わせることでリモコン10と電力の出力端子に接続されるバイブレータ30とを対応付けることができる。
【0039】
入力手段24は、メイン電源のオン・オフのスイッチを含み、電力供給装置20への入力を受け付ける。また入力手段24は、バイブレータ30の振動時間のタイマー制御指示や、バイブレータ30のタイマー動作中に、予め設定したプログラムに基づき振動の周波数を可変させる可変周波数振動指示、又はバイブレータ30の振動用モータの回転方向を切り替える可変回転方向指示のいずれかを含む可変動作指示を受け付ける。プログラムは、どのような振動をどのような時間で出力するかを予め様々な組み合わせで設定し、記憶部に選択可能に保存しておき、入力手段からの入力によりプログラムを指定することにより、それに対応した電力が出力されるように構成したものである。実施形態ではプログラムは電力制御部27に備えられる記憶部に保存され、電力制御部27はプログラムの選択がなされると記憶部から該当するプログラムを抽出してプログラムの設定に従いバイブレータ30に電力を供給する。
【0040】
タイマー設定部25は、バイブレータ30の振動時間のタイマー設定を受け付ける。電力供給装置20は作業者が携帯する必要はない。そのためタイマー設定部25も携帯性を考慮する必要が無いので、例えば操作盤から突出するトグルスイッチによりタイマー時間を設定するようにしてもよい。これに限らず、リモコン10のタイマー設定部12で説明したような振動時間を表示する表示窓と、振動時間を増加させる増加ボタン及び振動時間を減少させる減少ボタン、又は予め設定されたタイマー制御プログラムを表示する表示窓と、タイマー制御プログラムを切り替える切換えボタンなどで構成してもよい。電力供給装置20が複数のバイブレータ30を制御する場合は、タイマー設定部25は、それぞれのバイブレータ30に対応して複数の設定が行えるように設ける。
【0041】
タイマー設定部(12、25)は、必ずしもリモコン10と電力供給装置20とに重複して設ける必要はなく、リモコン10がタイマー設定部12を備える場合、電力供給装置20はタイマー設定部25を備える必要はない。逆に電力供給装置20がタイマー設定部25を備える場合、リモコン10はタイマー設定部12を備える必要はない。タイマー設定部(12、25)をリモコン10と電力供給装置20とで重複して設ける場合は、タイマー設定部12とタイマー設定部25とは連動させるか、いずれかを選択的に優先させるように構成する。
【0042】
振動周波数設定部26は、バイブレータ30の振動の周波数変更指示を受け付ける。振動周波数設定部26も、リモコン10の振動周波数設定部13と同様の機能であり、構成も振動周波数設定部13と同様のものでよい。振動周波数設定部(13、26)についても必ずしもリモコン10と電力供給装置20とに重複して設ける必要はない。リモコン10と電力供給装置20とで重複して設ける場合は、振動周波数設定部13と振動周波数設定部26とは連動させるか、いずれかを選択的に優先させるように構成する。
【0043】
電力制御部27は、リモコン10から送信される制御信号か、電力供給装置20の入力手段24に直接入力された制御の指示に対応してバイブレータ30に電力を供給する。
電力制御部27は、リモコン10から送信される制御信号を制御信号受信部23経由で受け取ると、制御信号に含まれるリモコン10の識別番号により、どのリモコン10からの指示であるかを判別し、制御信号の指示に対応する電力を判別したリモコン10と対応したバイブレータ30に供給する。
【0044】
例えば、識別番号1番のリモコン10からの制御信号がタイマー制御の指示である場合、電力制御部27は、タイマー設定部12の設定に基づき、設定された時間で出力端子1番に接続されるバイブレータ30への電力の供給を停止するように制御する。或はタイマー設定部12で設定されたプログラム番号に基づき、出力端子1番に接続されるバイブレータ30が間欠動作を行うように電力の供給を制御する。また制御信号が振動を生成するためのモータの回転軸の回転方向の制御の場合、電力制御部27は、対応する出力端子に接続されるバイブレータ30のモータの回転が指定された回転方向となるように電力を供給する。
【0045】
電力制御部27は、バイブレータ30に電力を供給するのに加え、バイブレータ30の動作状態、即ちバイブレータ30への電力の供給状態に応じて、作業者に情報を通知するための通知信号を生成する。通知信号は前述のように終了準備通知信号、締固め範囲通知信号などである。電力制御部27は、タイマー動作に基づき設定された時間で電力を供給する場合、タイマー動作の終了前の所定時間に、終了準備通知信号を生成する。例えば60秒のタイマー設定でバイブレータ30に電力を供給する場合、終了の5秒前に終了準備通知信号を生成する。この場合の終了前の所定時間である5秒は予め設定された時間である。所定時間は動作プログラムに予め組み込まれたものとしてもよいし、別途所望する値に設定できるように設定手段を設けてもよい。
【0046】
また、電力制御部27は、バイブレータ30に供給する電力における振動の周波数に基づき、バイブレータ30の締固め範囲を示す締固め範囲通知信号を生成する。バイブレータ30の有効な締固め範囲はバイブレータ30の振動の周波数により変化するが、これ以外にもバイブレータ30の振動部の直径によっても変わってくる。そこで、電力制御部27は、バイブレータ30の振動部の直径又は型式と、それぞれの振動部の振動数に応じた締固め範囲とを含む対応表を電力制御部27の備える記憶部に保存し、供給する電力における振動の周波数に応じた締固め範囲を抽出して締固め範囲通知信号を生成する。このため一実施形態では、電力供給装置20は図示しないバイブレータ30の振動部の直径又は型式の選択が可能な入力部をさらに備える。電力供給装置20が複数のバイブレータ30に電力を供給する場合、電力制御部27は、それぞれのバイブレータ30の動作状況に応じて個別に通知信号を生成する。
【0047】
通知信号出力部28は、終了準備通知信号、締固め範囲通知信号などの通知信号を出力する。通知信号はバイブレータ30又はリモコン10の備える通知手段に出力される。そこで通知信号出力部28は、有線又は無線の通信手段を備える。電力供給装置20が複数のバイブレータ30に電力を供給する場合、通知信号出力部28は、電力制御部27が個別に生成したバイブレータ30毎の通知信号に応じて対応するバイブレータ30又はリモコン10に通知信号を出力する。
【0048】
インバータ22は、外部電力の入力を受け周波数を変更して電力を出力する。インバータ22は、入力された交流の外部電力を直流に変換するコンバータとスイッチングにより周波数の異なる交流に変換するインバータを備え、電力制御部27の制御により周波数を変換して出力する。インバータ22は、中継器21とはケーブルで接続される別装置としてもよいし、中継器21と一体の装置としてもよい。
【0049】
バイブレータ30は、振動部31と、通知手段32とを備える。
振動部31は、モータとモータの回転軸に取り付けられる振動振子とを備え、電力供給装置20からの電力の供給を受けるとモータが回転し、これに伴い振動振子が偏心して回転することで振動が生じる。モータの回転数は供給される電力の周波数により決定されるので回転数を変更する場合は、電力供給装置20の電力制御部27により周波数を変更した電力を供給する。またモータの回転方向は、例えばモータが3相モータの場合は供給される電力の位相により決定されるので、回転方向を切り替える場合、電力制御部27は位相を切り替えた電力を供給するように制御する。
【0050】
通知手段32は、電力供給装置20から出力される通知信号に基づき、作業者に通知信号に対応した情報を光、音、振動、又はディスプレイにより通知する。バイブレータ30はコンクリートの中に挿入され、挿入される深さは打設するコンクリートの状況により変わってくるため、通知手段32の設置には制約がある。そこでバイブレータ30に通知手段32を設ける場合は、例えばバイブレータ30及びバイブレータ30の電力供給用ケーブルの外周のチューブを透明にし、中にLEDをライン上に並べて配置した照明部材などを設けるようにするのが好ましい。LEDを使用することにより点滅状態や色の変化により作業者に情報を伝達することができる。
【0051】
この他、例えばバイブレータ30及びバイブレータ30の電力供給用ケーブルの外周のチューブを挿通できるように円筒の鞘状の把持部を設け、把持部の一部又は把持部から外周に広がる鍔の部分に通知手段32を備えてもよい。この場合、通知手段32は作業者の手元にあり、コンクリートへの挿入深さにも影響されないため、光、音、振動、又はディスプレイにより通知する通知手段32とすることができる。
【0052】
通知手段(16、32)はバイブレータ30の動作状況に応じて作業者に情報を伝達するものであるため、リモコン10とバイブレータ30とで重複して備える必要はなく、リモコン10又はバイブレータ30の何れかが備えていればよい。ただ作業者が把握すべき情報が提供されるため、見落とさないようにリモコン10及びバイブレータ30のそれぞれに備えられることが好ましい。
【0053】
図2は、本発明の実施形態によるリモコンの構成例を示す図である。
図2を参照すると、本発明の実施形態によるリモコン10は、リモコン本体100とリモコン本体100を腕などに取り付けるための固定手段17とを備える。リモコン本体100には、電力供給装置20を制御するための各種の制御の指示を入力するための入力手段(101、102、103、105、106、108)、タイマー設定部104、振動周波数設定部107、及び通知手段109を備える。
【0054】
入力手段(101、102、103、105、106、108)の内、振動オン・オフボタン101はバイブレータ30への電力の供給と停止の切り替えを行うスイッチであり、押下する毎にオン・オフが切り替わる。回転方向切換えボタン102はバイブレータ30の振動部31のモータの回転方向を切り替えるスイッチであり、正ボタンと逆ボタンのいずれかを押下することで正転か逆転かを選択するスイッチである。
一般にバイブレータ30の振動用モータの回転方向の違いにより、バイブレータ30を挿入するときの進行方向の反れやすさが異なる傾向があるが、手元に回転方向を簡単に切り替える回転方向切換えボタン102を備えることにより、例えばスライドセントルの天端の締固めのようにバイブレータの挿入場所の微調整が必要な場合でも、手元の回転方向切換えボタン102で振動用モータの回転方向を切り替えて、狙ったところにバイブレータ30を挿入することが可能となる。
また鉄筋が密に配置された部分で締固めを行う際に、締固め後に抜けにくくなるバイブレータ30に対しても、正転と逆転との切り替えを繰り返すことでバイブレータ30を容易に抜き取ることができるようになる。
【0055】
可変回転方向指示ボタン103は、予め設定したプログラムに基づきバイブレータ30の振動部31の交流モータの回転方向を可変させる可変回転方向指示の入力ボタンである。押下する毎に可変回転方向振動を行うか一定の回転方向で振動するかが切り替わる。回転方向を可変させるプログラムが複数ある時は、押下する毎にプログラムの種類の変更及び一定の回転方向での振動がサイクリックに切り替わるようにする。
【0056】
タイマー制御指示ボタン105はタイマー制御を行うか連続動作を行うかを切り替えるスイッチである。タイマー制御を行う場合は、タイマー設定部104で設定した時間に従い電力の供給を停止するよう制御することになる。
一時停止・再開ボタン106はバイブレータ30がタイマー動作中に振動を一時的に止めるとき、及び再開するときに押下するボタンである。
【0057】
可変周波数振動指示ボタン108は予め設定したプログラムに基づき振動の周波数を可変させる可変周波数振動指示の入力ボタンである。押下する毎に可変周波数振動を行うか一定の周波数で振動するかが切り替わる。振動の周波数を可変させるプログラムが複数ある時は、押下する毎にプログラムの種類の変更及び一定の周波数での振動がサイクリックに切り替わるようにする。
【0058】
それぞれの入力手段(101、102、103、105、106、108)の横には確認ランプ110が設けられ、可変回転方向指示や可変周波数振動指示などが実行されるように押下されたか否か、或は正ボタンと逆ボタンのいずれが選択された状態にあるか等が判別できるように点灯、消灯などで状態を表す。
【0059】
タイマー設定部104は、バイブレータ30をタイマー動作させるときの振動の継続時間、即ちモータへの電力の継続供給時間を設定するためのものであり、図2の実施形態では中央の振動時間を表示する表示窓を挟んで上側に振動時間を増加させる増加ボタン、下側に振動時間を減少させる減少ボタンを備える。実施形態によっては、単純な振動時間の設定に限らず、プログラムによる振動と、振動と振動の間の間隔とを含む間欠動作を選択できるようにしてもよく、その場合は中央の表示窓に、振動時間(秒)と間隔(秒)を組み合わせて「60/30」などのように表示し、増加ボタンまたは減少ボタンでプログラムを切り替え表示し、所望のプログラムを選択できるようにしてもよい。
【0060】
振動周波数設定部107は、バイブレータ30の振動の周波数変更指示を受け付ける。図2の実施形態では、中央の振動の周波数を表示する表示窓を挟んで、上側に振動の周波数を増加させる増加ボタン、下側に振動の周波数を減少させる減少ボタンを備える。
【0061】
通知手段109は電力供給装置20から出力される通知信号に基づき、作業者に通知信号に対応した情報を通知するものであり、図2の実施形態では、通知手段109は通知用ディスプレイである。図中では通知用ディスプレイには電力供給装置20から受信した締固め範囲通知信号に基づき、バイブレータ30の振動の周波数が200Hzで設定され、その時の締固め範囲が直径600mmであることが示されている。作業者はこの通知を参照して次にバイブレータ30を挿入する位置を正しく認識することができる。
【0062】
また、通知信号が終了準備通知信号である場合には、一実施形態では振動の終了時刻までの秒数をカウントダウンしながら表示する。他の実施形態では通知手段109として通知用ディスプレイの他にLEDランプ、振動モータ、又はスピーカを備え、光の点滅、振動、又は音により振動の終了時刻が近いことを作業者に通知する。実施形態によっては光の点滅と振動の組み合わせなど複数の通知手段の組み合わせで通知するようにしてもよい。
【0063】
図2のリモコン10の構成例は、リモコン10の構成の1つの実施形態に過ぎず、リモコン10上に備える入力手段(101、102、103、105、106、108)やタイマー設定部104などの設定部などの数や種類は様々な形で変形可能であり、またそれらの配置も特に制約はない。また固定手段17も腕にはめるようなベルトに限らず、首から下げたり作業服のベルトに取り付けたりするようにしてもよい。
【0064】
図3は、本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における終了準備通知信号の処理を説明する図である。図3(a)はタイマー動作中の電力供給装置の電力出力の状態を示し、図3(b)は終了準備通知信号を受信した通知手段の出力のタイミングを示す図である。
【0065】
図3(a)を参照すると、電力供給装置20の電力制御部27は、設定されたタイマー時間の間バイブレータ30に電力を供給し、タイマー時間の終了時点で電力の供給を停止する。また電力制御部27は、予め設定された所定時間に基づき、タイマー設定時間に達する所定時間前に終了準備通知信号を生成する。生成された終了準備通知信号は通知信号出力部28からリモコン10又はバイブレータ30の通知手段(16、32)に送信される。終了準備通知信号を受信した通知手段(16、32)はタイマー時間の終了時点まで光、音、振動、又はディスプレイにより作業者への通知を行う。図2では通知手段(16、32)の出力を連続した出力として表すが、光の点滅や1秒ごとのカウントダウンなどで通知する場合は断続した出力となり得る。その場合も通知手段(16、32)の出力のタイミングは終了準備通知信号を受信してからタイマー時間の終了時点までの間である。
【0066】
図4は、本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における一時停止・再開処理を説明する図である。図4(a)はタイマー動作中の電力供給装置の途中で中断しない場合の電力出力の状態を示し、図4(b)はタイマー動作中に振動の一時停止を行う場合の電力出力の状態を示す。
【0067】
図4(a)は図3(a)と同じであるので説明は省略する。図4(b)を参照すると、タイマー動作中に一時停止指示が入力され、バイブレータ30への電力の供給が停止した後、時間Tが経過してから再開指示が入力され、再び電力が供給される。バイブレータ30への電力の供給が停止した時間Tの間はタイマーも一時停止し、再開指示が入力された時点で一時停止した時間の続きとしてタイマーが再開する。
【0068】
そこで当初設定のタイマー時間の終了時点においてもバイブレータ30への電力の供給は停止せず、電力の供給が停止した時間Tが更に経過した時点で電力の供給が停止する。この場合も電力制御部27は、当初設定のタイマー時間より時間Tだけ遅れたタイマーの終了時点の所定時間前に終了準備通知信号を生成する。そこでタイマー動作中に一時停止指示を行っても作業者はタイマーの終了時点の所定時間前にタイマー動作が間もなく終了することを正しく把握することができる。
【0069】
図5は、本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における可変周波数振動処理を例示的に説明する図である。図5(a)はタイマー動作中の電力供給装置の電力出力の状態を示し、図5(b)は出力電力の周波数を示す。
【0070】
図5(a)はタイマー設定に基づく間欠動作による電力出力の状態を示す。間欠動作は締固めのための振動を加える時間と移動などのための間隔時間との組み合わせで規定され、バイブレータ30への電力の供給は締固めの時間と間隔時間に応じて行われる。間欠動作としては締固めの時間に電力を供給し、間隔時間に電力供給を停止するパターンを繰り返すようにしてもよいが、図5(a)では間隔時間も出力を落として一定の電力を供給する場合の出力状況を示している。この場合も電力制御部27は、設定された締固めの時間の終了する所定時間前に終了準備通知信号を出力する。その後所定時間内に電力の出力を徐々に低下し、設定された締固めの時間の終了後は出力を抑えた一定の電力を供給する。他の実施例では締固めの時間の間は一定の電力を供給し、締固めの時間が終了する時点でステップ的に出力を低減させる。
【0071】
図5(b)を参照すると、電力制御部27は、リモコン10又は電力供給装置20の入力手段(11,24)からタイマー動作中に可変周波数振動を行う可変周波数振動指示の入力を受け、出力電力の周波数を可変させる。図5(b)の例では電力制御部27はプログラムに従い、終了準備通知信号を出力するタイミングに合わせて出力電力の周波数を漸減させ、締固めの時間の終了する時点で一定の低い周波数で出力を継続する。間隔時間が終了すると再び高い振動数の電力が供給される。周波数の可変設定はプログラムにより図5の様に徐々に変化するようにしてもよいし、ステップ状に変化するようにしてもよい。
【0072】
バイブレータ30は、締め固め後は振動を加えながらコンクリートから抜き取る方が、コンクリートが周囲にまとわりつきにくいが、空中で高い振動数で長い時間振動させると振動部31が過熱して焼損が発生するおそれがある。その点、図5(b)のようにプログラムでタイマー終了後は低い周波数で振動するように制御することにより、振動部31の焼損などの不具合を回避しつつ取り扱い性が改善するバイブレータ30を実現できる。
【0073】
図6は、本発明の実施形態によるバイブレータ制御システムのタイマー動作における可変回転方向処理を例示的に説明する図である。図6(a)はタイマー動作中の電力供給装置の電力出力の状態を示し、図6(b)及び図6(c)は出力電力における振動モータの正転用又は逆転用の電力の内訳を示す。
【0074】
図6(a)は図3(a)と同じであるので説明は省略する。図6(b)、(c)を参照すると、電力制御部27は、リモコン10又は電力供給装置20の入力手段(11,24)からタイマー動作中に可変回転方向振動を行う可変回転方向指示の入力を受け、振動モータの回転方向を可変させるように電力を供給する。図6(b)の例では、電力制御部27は、タイマー設定時間に達する所定時間前までは、逆転用の電力をバイブレータ30に供給し、タイマー設定時間に達する所定時間前に回転方向を変更するように正転用の電力をバイブレータ30に供給する。その後タイマー設定時間に達したところで電力の供給を停止する。このような回転方向の制御は、回転方向により振動の伝搬特性が変化しやすいスパイラル型のバイブレータ30などの制御に有効である。
【0075】
図6(c)の例では、電力制御部27は、タイマー設定時間に達する所定時間前まで逆転用の電力と正転用の電力とを交互に供給し、タイマー設定時間に達すると電力の供給を停止する。鉄筋が密に配置された部分で締固めを行う際に、締固め後にバイブレータ30が抜けにくくなることが有るが、このような場合、正転、逆転を切り替えることを繰り返すとバイブレータ30が抜けやすくなることが知られている。図6(c)の例のようにプログラムで正転、逆転が繰り返されるように電力が供給されると抜けにくいバイブレータ30でも容易に抜き取ることができるようになる。
図6(b)、(c)の事例の他にも、プログラムの設定の仕方により、どのタイミングでどのように回転方向を切り替えるかは様々に変形が可能である
【0076】
以上のようにコンクリート締固めを行う作業者は、手元で操作するリモコン10に様々な機能の入力や、バイブレータ30の動作に関する情報を確認する通知が行われる通知手段を有するので、補助の作業員を付けることなく単独でバイブレータ30の制御をきめ細かく行うことができるようになる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 バイブレータ制御システム
10 リモコン
11、24 入力手段
12、25、104 タイマー設定部
13、26、107 振動周波数設定部
14 制御信号生成部
15 制御信号出力部
16、32 通知手段
17 固定手段
20 電力供給装置
21 中継器
22 インバータ
23 制御信号受信部
27 電力制御部
28 通知信号出力部
30 バイブレータ
31 振動部
100 リモコン本体
101 入力手段(振動オン・オフボタン)
102 入力手段(回転方向切換えボタン)
103 入力手段(可変回転方向指示ボタン)
105 入力手段(タイマー制御指示ボタン)
106 入力手段(一時停止・再開ボタン)
108 入力手段(可変周波数振動指示ボタン)
109 通知手段(通知用ディスプレイ)
110 確認ランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6