(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150566
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20231005BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231005BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231005BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20231005BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231005BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231005BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/62 Z
H01M4/36 E
H01M4/485
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M10/0562
H01M10/0525
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059735
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(72)【発明者】
【氏名】冨田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】上剃 春樹
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL18
5H029AM12
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB29
5H050DA03
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】 電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出が容易なリチウムイオン二次電池を提供する。本発明のリチウムイオン二次電池は、SDGsの目標3、7、11、および12に関係する。
【解決手段】 本発明のリチウムイオン二次電池は、固体電解質と、スピネル型Li
4-a-cTi
5-bM
1
a+bO
12-δ(M
1はLi、Na、K、Mg、Ca、Al、Znおよび遷移金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、-1≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、-0.2≦δ≦1)である第1の負極活物質と、特定の第2の負極活物質とを含有しており、前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計量を100体積%としたとき、前記第2の負極活物質の割合が5体積%以上であることを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有し、
前記負極は、固体電解質と、スピネル型Li4-a-cTi5-bM1
a+bO12-δ(M1はLi、Na、K、Mg、Ca、Al、Znおよび遷移金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、-1≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、-0.2≦δ≦1)である第1の負極活物質と、M2
xNb1-xO2.5-θ、およびM3
yM4
1-yO3-η(M2およびM3は、それぞれ、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Znおよび遷移金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、WおよびMoのうちの少なくとも一方であり、xは0以上0.8以下、yは0以上1.0以下、θは0より大きく1.0以下、ηは0以上1.0以下)よりなる群から選択される少なくとも1種の第2の負極活物質とを含有しており、
前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計量を100体積%としたとき、前記第2の負極活物質の割合が5体積%以上であり、前記第2の負極活物質としてM2
xNb1-xO2.5-θを含有する場合、その割合が95体積%以下であり、前記第2の負極活物質としてM3
yM4
1-yO3-ηを含有する場合、その割合が25体積%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記第2の負極活物質が前記M2
xNb1-xO2.5-θであり、かつ元素M2がTiであり、
前記正極と前記負極とが対向する面積S(cm2)と前記負極の厚みh(cm)との比h/S、と前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計体積を100体積%としたときの前記第2の負極活物質の割合Z(体積%)とが、下記式(1)を満たす請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
h/S<-0.48×(Z/100)+0.30 (1)
【請求項3】
前記第2の負極活物質が前記M2
xNb1-xO2.5-θであり、かつ元素M2が少なくともAlを含み、
前記正極と前記負極とが対向する面積S(cm2)と前記負極の厚みh(cm)との比h/Sと、前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計体積を100体積%としたときの前記第2の負極活物質の割合Z(体積%)とが、下記式(2)を満たす請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
h/S<-0.35×(Z/100)+0.30 (2)
【請求項4】
前記第2の負極活物質が前記M3
yM4
1-yO3-ηであり、
前記正極と前記負極とが対向する面積S(cm2)と前記負極の厚みh(cm)との比h/Sと、前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計体積を100体積%としたときの前記第2の負極活物質の割合Z(体積%)とが、下記式(3)を満たす請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
h/S<-0.34×(Z/100)+0.30 (3)
【請求項5】
前記負極の見かけ体積を100体積%としたときの前記固体電解質の割合Cが、20~65体積%である請求項1~4に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記正極は、正極活物質として、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoMnO4、LiFePO4、LiCoPO4、およびLi2CoP2O7よりなる群から選択される少なくとも1種の活物質を含有している請求項1~5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記正極と前記負極との間に介在する固体電解質層を有する全固体二次電池である請求項1~6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出が容易なリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器や、電気自動車などの電源用途に利用されている。リチウムイオン二次電池の社会への提供により、国際連合が制定する持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、目標3(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)、目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する)、目標11〔包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する〕、および目標12(持続可能な生産消費形態を確保する)の達成に貢献することができる。
【0003】
リチウムイオン二次電池の正極の活物質には、一般にLiCoO2などのリチウム含有複合酸化物が汎用されており、負極の活物質には、通常、黒鉛などの炭素材料が使用されている。また、リチウム析出による内部短絡を起こさずに大きな電流値で充放電可能な電池を構成するために、Li4Ti5O12などのリチウムチタン酸化物を負極活物質として使用することも行われている(特許文献1~6など)。
【0004】
ところで、リチウムイオン二次電池の適用機器の多くには、使用途中での残存容量を把握できるように、残存容量の検出手段が備えられている。リチウムイオン二次電池の残存容量の検出手段としては、電圧測定方式、クーロン・カウンタ方式、電池セル・モデリング方式、およびインピーダンス・トラック方式のうちのいずれかの検出法によって残存容量を検出するものが一般的である。ところが、電圧測定方式以外の検出法を利用した検出手段には電池残量計ICが必要となるため、駆動電源にリチウムイオン二次電池を使用する時計や、バックアップ電源にリチウムイオン二次電池を使用する機器のように、検出手段のコストにある程度の制限がある機器においては、より低価格としやすい電圧測定方式を利用した検出手段が好まれている。
【0005】
ところが、正極活物質にLiCoO2を使用し、負極活物質にLi4Ti5O12を使用したリチウムイオン二次電池は、出力特性や耐久性に優れることから、比較的使用頻度が高いものの、残存容量が比較的少ない段階では電圧の変化量が小さすぎたり、残存容量が非常に少なくなった放電末期において急激に電圧が低下したりするため、電圧測定方式を利用した検出手段では、正確な残存容量の検出が困難であった。
【0006】
一方、リチウムチタン酸化物と共に他の負極活物質を使用することで、電池の放電末期の急激な電圧低下現象などを抑制する試みもなされている(特許文献7、8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-129644号公報
【特許文献2】特開2016-81691号公報
【特許文献3】特開2021-34326号公報
【特許文献4】特開2021-34328号公報
【特許文献5】特開2021-39860号公報
【特許文献6】国際公開第2021/44883号
【特許文献7】特開平7-302587号公報
【特許文献8】特開2016-81691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献7、8にあるように、非水電解液を有する電池においては、リチウムチタン酸化物と共に他の負極活物質を使用することで、電池の放電末期の急激な電圧低下現象などの抑制には一定の効果があるものの、固体電解質を含有する負極を用いた電池(例えば全固体電池)では、特に放電時の負荷が異なる状況下においては電池の正確な残存容量の検出が困難である。これは、固体電解質を含有する負極を用いた電池では、固体電解質粒子が障害となって負極内での導電パスを良好にすることが難しく、また、従来からリチウムチタン酸化物と共に使用されてきた他の負極活物質が固溶体型であることから、負極の厚み方向の充電深度の差が、非水電解液を有する電池よりも生じやすいためであると考えられる。
【0009】
こうしたことから、リチウムチタン酸化物を負極活物質とし、かつ固体電解質を含有する負極を用いた電池においては、従来とは異なる手段によって電圧測定方式を利用した検出手段での正確な残存容量検出を可能とする技術の開発が求められる。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出が容易なリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極および負極を有し、前記負極は、固体電解質と、スピネル型Li4-a-cTi5-bM1
a+bO12-δ(M1はLi、Na、K、Mg、Ca、Al、Znおよび遷移金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、-1≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、-0.2≦δ≦1)である第1の負極活物質と、M2
xNb1-xO2.5-θ、およびM3
yM4
1-yO3-η(M2およびM3は、それぞれ、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Znおよび遷移金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、WおよびMoのうちの少なくとも一方であり、xは0以上0.8以下、yは0以上1.0以下、θは0より大きく1.0以下、ηは0以上1.0以下)よりなる群から選択される少なくとも1種の第2の負極活物質とを含有しており、 前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計量を100体積%としたとき、前記第2の負極活物質の割合が5体積%以上であり、前記第2の負極活物質としてM2
xNb1-xO2.5-θを含有する場合、その割合が95体積%以下であり、前記第2の負極活物質としてM3
yM4
1-yO3-ηを含有する場合、その割合が25体積%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出が容易なリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のリチウムイオン二次電池の一例を模式的に表す断面図である。
【
図2】本発明のリチウムイオン二次電池の他の例を模式的に表す平面図である。
【
図4】実施例1(実施例1-1)および比較例1~3、5のリチウムイオン二次電池におけるh/SとZとの関係を表すグラフである。
【
図5】実施例2~13および比較例5のリチウムイオン二次電池におけるh/SとZとの関係を表すグラフである。
【
図6】実施例14~17および比較例5の各リチウムイオン二次電池におけるh/SとZとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極および負極を有し、前記負極は、固体電解質と、スピネル型Li4-a-cTi5-bM1
a+bO12-δ(M1はLi、Na、K、Mg、Ca、Al、Znおよび遷移金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、-1≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、-0.2≦δ≦1)である第1の負極活物質と、M2
xNb1-xO2.5-θ、およびM3
yM4
1-yO3-η(M2およびM3は、それぞれ、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Znおよび遷移金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、WおよびMoのうちの少なくとも一方であり、xは0以上0.8以下、yは0以上1.0以下、θは0より大きく1.0以下、ηは0以上1.0以下)よりなる群から選択される少なくとも1種の第2の負極活物質とを含有しており、 前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計量を100体積%としたとき、前記第2の負極活物質の割合が5体積%以上であり、前記第2の負極活物質としてM2
xNb1-xO2.5-θを含有する場合、その割合が95体積%以下であり、前記第2の負極活物質としてM3
yM4
1-yO3-ηを含有する場合、その割合が25体積%以下である。
【0015】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池は、固体電解質、およびスピネル型のリチウムチタン酸化物である第1の負極活物質と共に、第2の負極活物質として前記特定の活物質のうちの少なくとも1種を含有し、かつ第1の負極活物質と第2の負極活物質との比率が特定範囲にある。
【0016】
第2の負極活物質は、充電カーブの形状が第1の負極活物質に比べてなだらかな材料である。本発明のリチウムイオン二次電池においては、第2の負極活物質の作用により、固体電解質を含有する負極であるにも関わらず、第1の負極活物質であるリチウムチタン酸化物を用いた場合に問題となっていた残存容量が少なくなった時点での急激な電圧降下現象や、電圧降下が極めて小さくなる現象を抑制して、電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出を容易にすることが可能となる。
【0017】
他方、前記第2の負極活物質を使用した場合には、負極の厚み方向の分極による問題が生じやすいが、本発明においては、第1の負極活物質の作用によってこうした問題の発生も抑制でき、例えば負荷特性に優れたリチウムイオン二次電池とすることができる。
【0018】
M2
xNb1-xO2.5-θにおける元素M2が遷移金属元素である場合、元素M2はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Mo、Ag、La、Ce、Wが好ましい。また、M3
yM4
1-yO3-ηにおける元素M3が遷移金属元素である場合、元素M3はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Mo、Nb、Ag、La、Ceが好ましい。
【0019】
M2
xNb1-xO2.5-θの具体例としては、TiNb2O7、Cu0.2Al0.74Nb11.1O27.9、TiNb2O7、Cu0.2Al0.74Nb11.1O27.9、AlNb11O29、Nb12O29、Zn2Nb34O87、Cu0.02Ti0.94Nb2.04O7、Ti2Nb10O29、Ti2Nb10O27.1、TiNb6O17、Cr0.6Ti0.8Nb10.6O29、TiNb24O62、Cu2Nb34O87、FeNbO29、Cr0.2Fe0.8Nb11O29、Al0.2Fe0.8Nb11O29、ZrNb14O37、Mg2Nb34O87、K2Nb8O21、Cr0.5Nb24.5O62、K6Nb10.8O30などが挙げられる。また、M3
yM4
1-yO3-ηの具体例としては、W18O49、WO3、WNb12O33、W3Nb14O44、W5Nb16O55、W8Nb18O69、WNb2O8、W16Nb18O93、W10.3Nb6.7O47、W7Nb4O31、MoO3、MoO2などが挙げられる。
【0020】
また、第1の負極活物質の具体例としては、Li4Ti5O12、Li4Ti5-xMoxO12(x=0.1, 0.15)、Ba0.005Li3.9990Ti5O12、Sr0.005Li3.9990Ti5O12、Li3.8Fe0.3Ti4.9O12などが挙げられる。
【0021】
以下、第2の負極活物質のうち、M2
xNb1-xO2.5-θを「第2の負極活物質(a)」といい、M3
yM4
1-yO3-ηを「第2の負極活物質(b)」という場合がある。
【0022】
負極は、第2の負極活物質として、第2の負極活物質(a)および第2の負極活物質(b)のうちのいずれか1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。また、負極が含有する第2の負極活物質(a)は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。さらに、負極が含有する第2の負極活物質(b)は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0023】
なお、本発明によれば、前記の通り、リチウムイオン二次電池における残存容量が少なくなった時点での急激な電圧降下現象や電圧降下が極めて小さくなる現象を抑制できるが、具体的には、下記ΔE1と下記ΔE2と下記ΔE3とが、下記(4)式および下記(5)式の関係を満たす特性を確保することができる。
【0024】
2≦ΔE2/ΔE1≦20 (4)
【0025】
0.2≦ΔE3/ΔE2≦2 (5)
【0026】
ここで、ΔE1:充電深度30%における開回路電圧と充電深度20%における開回路電圧との差;ΔE2:充電深度20%における開回路電圧と充電深度10%における開回路電圧との差;ΔE3:充電深度10%における開回路電圧と充電深度5%における開回路電圧との差、である。ΔE1は5mV以上110mV以下であることが好ましい。
【0027】
なお、本明細書でいう充電深度(SOC)は、初回放電以降の充放電サイクルにおける、満充電状態を100%、完全放電状態を0%と定義した場合の電池の充電状態をさす。
【0028】
なおリチウムイオン二次電池においては、前記ΔE1と前記ΔE2との比:ΔE2/ΔE1が、20以下であることが好ましい。この場合には、SOCが30%から10%までの間での電圧降下を、電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出が容易となる程度に緩やかにできる。ただし、ΔE2/ΔE1が小さすぎると、SOCが30%から10%までの間での電圧降下が小さくなりすぎて、却って電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出がし難くなる虞がある。よって、ΔE2/ΔE1は、2以上であることが好ましい。
【0029】
また、リチウムイオン二次電池においては、前記ΔE2と前記ΔE3との比:ΔE3/ΔE2が、2以下であることが好ましい。この場合には、SOCが20%以下の段階での電圧降下を、電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出が容易となる程度に緩やかにできる。ただし、ΔE3/ΔE2が小さすぎると、SOCが20%以下の段階での電圧降下が小さくなりすぎて、却って電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出がし難くなる虞がある。よって、ΔE3/ΔE2は、0.2以上であることが好ましい。
【0030】
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極が固体電解質を含有するものであるが、こうした負極は、通常、非水電解液およびセパレータに代えて固体電解質を有し、かつ正極も固体電解質を含有する全固体二次電池に好ましく適用される。よって、本発明のリチウムイオン二次電池は、全固体二次電池を好ましい態様とする。以下には、本発明のリチウムイオン二次電池が全固体二次電池である場合について、詳細に説明する。
【0031】
<負極>
負極には、例えば、負極集電体の片面または両面に、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質)を含有する負極合剤の層(負極合剤層)を有する構造のもの、負極活物質を含有する負極合剤の成形体からなるもの(ペレットなど)などが使用できる。
【0032】
負極活物質には、第1の負極活物質と第2の負極活物質とを使用するが、それらと共に、第1の負極活物質および第2の負極活物質以外の負極活物質を使用してもよい。第1の負極活物質および第2の負極活物質以外の負極活物質としては、一般的なリチウムイオン二次電池に使用されている負極活物質のうちの、第1の負極活物質であるスピネル型Li4-a-cTi5-bM1
a+bO12-δおよび第2の負極活物質の具体例として先に例示した各種活物質以外のものが挙げられる。
【0033】
リチウムイオン二次電池において、例えば前記(4)式および前記(5)式の関係を満たすように調整して、残存容量が少なくなった時点での急激な電圧降下現象を抑制する観点から、負極が含有する第1の負極活物質と第2の負極活物質との合計量を100体積%としたときに、第2の負極活物質の割合(第2の負極活物質として2種以上の活物質を使用する場合は、それらの合計量)が、5体積%以上であり、10体積%以上であることが好ましい(すなわち、第1の負極活物質の割合が、95体積%以下であり、90体積%以下であることが好ましい)。
【0034】
また、リチウムイオン二次電池において、例えば前記(4)式および前記(5)式の関係を満たすように調整し、残存容量が少なくなった時点での電圧降下の程度をある程度大きくすることに加えて、第2の負極活物質によって生じ得る問題を第1の負極活物質の作用によって抑制し、良好な負荷特性を確保する観点からは、負極が含有する第1の負極活物質と第2の負極活物質との合計量を100体積%としたときの、第2の負極活物質の割合は、以下の通りであることが望ましい。
【0035】
第2の負極活物質(a)を含有する場合、その割合は、95体積%以下であり、90体積%以下であることが好ましい。また、第2の負極活物質(b)を含有する場合、その割合は、25体積%以下であり、20体積%以下であることが好ましい。そして、第2の負極活物質の総割合〔第2の負極活物質として、第2の負極活物質(a)および第2の負極活物質(b)のうちの2種以上を併用する場合、その合計割合〕は、95体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましい(すなわち、第1の負極活物質の割合が、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい)。
【0036】
なお、負極が含有する負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質と第2の負極活物質との合計割合は、40体積%以上であることが好ましい。よって、第1の負極活物質および第2の負極活物質以外の負極活物質を使用する場合は、第1の負極活物質と第2の負極活物質との合計割合が前記の値を満たす範囲で使用することが好ましい。
【0037】
負極合剤における全負極活物質の含有量は、10~99質量%であることが好ましい。
【0038】
負極合剤には、導電助剤を含有させることができる。導電助剤の具体例としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などが挙げられる。負極合剤において導電助剤を含有させる場合には、その含有量は、1~15質量%であることが好ましい。
【0039】
負極合剤には、固体電解質を含有させる。その固体電解質は、Liイオン伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などが使用できる。
【0040】
硫化物系固体電解質としては、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-P2S5-GeS2、Li2S-B2S3系ガラスなどの粒子が挙げられる他、近年、Liイオン伝導性が高いものとして注目されているthio-LISICON型のもの〔Li10GeP2S12、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3などの、Li12-12a-b+c+6d-eM1
3+a-b-c-dM2
bM3
cM4
dM5
12-eXe(ただし、M1はSi、GeまたはSn、M2はPまたはV、M3はAl、Ga、YまたはSb、M4はZn、Ca、またはBa、M5はSまたはSおよびOのいずれかであり、XはF、Cl、BrまたはI、0≦a<3、0≦b+c+d≦3、0≦e≦3〕や、アルジロダイト型のもの〔Li6PS5Clなどの、Li7-f+gPS6-xClx+y(ただし、0.05≦f≦0.9、-3.0f+1.8≦g≦-3.0f+5.7)で表されるもの、Li7-hPS6-hCliBrj(ただし、h=i+j、0<h≦1.8、0.1≦i/j≦10.0)で表されるものなど〕も使用することができる。
【0041】
水素化物系固体電解質としては、例えば、LiBH4、LiBH4と下記のアルカリ金属化合物との固溶体(例えば、LiBH4とアルカリ金属化合物とのモル比が1:1~20:1のもの)などが挙げられる。前記固溶体におけるアルカリ金属化合物としては、ハ
ロゲン化リチウム(LiI、LiBr、LiF、LiClなど)、ハロゲン化ルビジウム(RbI、RbBr、RbF、RbClなど)、ハロゲン化セシウム(CsI、CsBr、CsF、CsClなど)、リチウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0042】
ハロゲン化物系固体電解質としては、例えば、単斜晶型のLiAlCl4、欠陥スピネル型または層状構造のLiInBr4、単斜晶型のLi6-3mYmX6(ただし、0<m<2かつX=ClまたはBr)などが挙げられ、その他にも例えば国際公開第2020/070958や国際公開第2020/070955に記載の公知のものを使用することができる。
【0043】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2系ガラスセラミックス、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-GeO2系ガラスセラミックス、ガーネット型のLi7La3Zr2O12、NASICON型のLi1+OAl1+OTi2-O(PO4)3、Li1+pAl1+pGe2-p(PO4)3、ペロブスカイト型のLi3qLa2/3-qTiO3などが挙げられる。
【0044】
これらの固体電解質の中でも、Liイオン伝導性が高いことから、硫化物系固体電解質が好ましく、LiおよびPを含む硫化物系固体電解質がより好ましく、特にLiイオン伝導性が高く、化学的に安定性の高いアルジロダイト型の硫化物系固体電解質がさらに好ましい。
【0045】
なお、固体電解質の平均粒子径は、粒界抵抗軽減の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、一方、正極活物質と固体電解質との間での十分な接触界面形成の観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0046】
本明細書でいう固体電解質及びその他の粒子(正極活物質など)の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」など)を用いて、粒度の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(D50)を意味している。
【0047】
負極合剤における固体電解質の含有量は、4~60質量%であることが好ましい。
【0048】
負極合剤にはバインダを含有させることができる。その具体例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。なお、例えば負極合剤に硫化物系固体電解質を含有させる場合のように、バインダを使用しなくても、負極合剤において良好な成形性が確保できる場合には、負極合剤にはバインダを含有させなくてもよい。
【0049】
負極合剤において、バインダを要する場合には、その含有量は、15質量%以下であることが好ましく、また、0.5質量%以上であることが好ましい。他方、負極合剤において、バインダを要しなくても良好な成形性が得られる場合には、その含有量が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、バインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
【0050】
負極に集電体を用いる場合、その集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル;カーボンシート;などを用いることができる。
【0051】
負極は、例えば、第1の負極活物質、第2の負極活物質、および固体電解質、さらには必要に応じて添加される第1の負極活物質および第2の負極活物質以外の負極活物質、導電助剤、およびバインダなどを混合して調製した負極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで、負極合剤の成形体を形成する工程を経て製造することができる。
【0052】
負極合剤の成形体を有する負極の場合、そのままで負極とすることができるほか、負極合剤の成形体を集電体と圧着するなどして貼り合わせることで、負極集電体の片面または両面に負極合剤の成形体で構成された層(負極合剤層)を有する負極を製造することができる。
【0053】
また、集電体を有する負極の場合、前記の負極合剤を溶媒に分散させた負極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を、集電体に塗布し、乾燥した後、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をして、集電体の表面に負極合剤層を形成する方法によっても、製造することができる。
【0054】
負極合剤含有組成物の溶媒には、水やN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒を使用することができる。なお、負極合剤含有組成物に固体電解質も含有させる場合の溶媒は、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが好ましい。特に、硫化物系固体電解質や水素化物系固体電解質は、微少量の水分によって化学反応を起こすため、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、トルエン、キシレン、メスチレン、テトラリンなどの炭化水素溶媒に代表される非極性非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。特に、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することがより好ましい。また、三井・デュポンフロロケミカル社製の「バートレル(登録商標)」、日本ゼオン社製の「ゼオローラ(登録商標)」、住友3M社製の「ノベック(登録商標)」などのフッ素系溶媒、並びに、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、アニソールなどの非水系有機溶媒を使用することもできる。
【0055】
加圧成形によって形成される負極合剤の成形体の厚みは、通常は50μm以上であるが、電池の高容量化の観点から、200μm以上であることが好ましい。また、負極合剤の成形体の厚みは、通常、3000μm以下であり、電池の負荷特性を高める観点から、500μm以下であることが好ましい。
【0056】
さらに、溶媒を含有する負極合剤含有組成物を用いて集電体上に負極合剤層を形成することで製造される負極の場合には、負極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、50~1000μmであることが好ましい。
【0057】
二相共存反応型のリチウムイオン吸蔵挙動を示すリチウムチタン酸化物(第1の負極活物質)と比較して、前記第2の負極活物質は固溶体型のリチウムイオン吸蔵挙動を示すため、電極の厚み方向への分極が大きくなる傾向にある(第2の負極活物質がスピネル型のリチウムチタン酸化物よりも優れた出力特性を示す場合は除く)。よって、前記負極が含有する前記第1の負極活物質と前記第2の負極活物質との合計体積を100体積%としたときの前記第2の負極活物質の割合Z(体積%)が高くなるほど、負極の厚み(集電体を有する場合は、これを除く負極合剤層や負極合剤の成形体の厚み。以下同じ。)が薄くなるよう電池を設計し、正極と負極の対向する面積が広くなるよう電池を設計することが好ましい。
【0058】
例えば、後述の電池(実施例参照)においては、良好な負荷特性(放電電流が0.5Cでの放電容量の、放電電流が0.05Cでの放電容量に対する容量維持率が80%以上)を実現するにあたって、正極と負極とが対向する面積S(cm2)と負極の厚みh(cm)との比h/Sと、第1の負極活物質と第2の負極活物質との合計体積:100体積%中の第2の負極活物質の割合Z(体積%)との間に、特定の関係が成り立つ。
【0059】
具体的には、例えば、第2の負極活物質が、第2の負極活物質(a)であって、元素M2がTiであるときには、下記式(1)を満たす場合に、より良好な負荷特性が確保できる。
【0060】
h/S<-0.48×(Z/100)+0.30 (1)
【0061】
また、第2の負極活物質が、第2の負極活物質(a)であって、元素M2が少なくともAlを含むときには、下記式(2)を満たす場合に、より良好な負荷特性が確保できる。
【0062】
h/S<-0.35×(Z/100)+0.30 (2)
【0063】
さらに、第2の負極活物質が、第2の負極活物質(b)であるときには、下記式(3)を満たす場合に、より良好な負荷特性が確保できる。
【0064】
h/S<-0.34×(Z/100)+0.30 (3)
【0065】
前記式(1)における傾き「-0.48」、前記式(2)における傾き「-0.35」および前記式(3)における傾き「-0.34」は、いずれも負極に用いる材料の組み合わせと負極の作製条件とによって決定される値である。なお、第1の負極活物質である前記スピネル型リチウムチタン酸化物と負荷特性が同等の負極活物質を第2の負極活物質と併用した場合は、前記式(1)、前記式(2)および前記式(3)の右辺の傾きが0となり、第1の負極活物質よりも負荷特性が優れる負極活物質を第2の負極活物質と併用した場合は、前記式(1)、前記式(2)および前記式(3)の右辺の傾きが0より大きくなることから、負極活物質の負荷特性に起因する比h/Sの制限は生じないが、本発明の電池に係る前記第2の負極活物質の場合は、前記の通り、第1の負極活物質よりも負荷特性が劣るため、電池において所定の負荷特性を達成するには、第2の負極活物質の種類に応じて、h/Sが前記式(1)、前記式(2)または前記式(3)を満たすように、電池を設計することが好ましい。
【0066】
比h/Sは、0.001以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。
【0067】
また、負極の見かけ体積:100体積%に占める固体電解質の割合Cは、20体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、65体積%以下であることが好ましく、55体積%以下であることがより好ましい。
【0068】
負極の見かけ体積に占める固体電解質の割合Cは、負極(負極合剤層または負極合剤の成形体)の断面のSEM-EDS観察による各構成成分の組成分析と、ICP発光分光分析装置(ICP-OES)による負極の平均組成分析と、それぞれの成分の真密度の文献値により推定することができる。第1の負極活物質と第2の負極活物質との体積分率(第2の負極活物質の割合Z)についても同様に求めることができる。なお、負極の見かけ体積とは、負極合剤層や負極合剤の成形体の、空孔部分を含む全体の体積(集電体を有する場合はこれを除く)を意味している。
【0069】
<正極>
正極には、例えば、正極集電体の片面または両面に、正極活物質を含有する正極合剤の層(正極合剤層)を有する構造のもの、正極活物質を含有する正極合剤の成形体からなるもの(ペレットなど)などが使用できる。
【0070】
正極活物質には、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている正極活物質、すなわち、Liイオンを吸蔵・放出可能な活物質であれば特に制限はなく使用できる。なお、本発明のリチウムイオン二次電池においては、放電末期における電圧降下が急激な正極活物質を使用しても、負極の作用により、残存容量が小さくなっても急激な電圧低下を抑制することができる。よって、本発明のリチウムイオン二次電池では、放電末期における電圧降下が急激な正極活物質を使用した場合に、その効果がより顕著に奏される。
【0071】
放電末期における電圧降下が急激な正極活物質の具体例としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoMnO4、LiFePO4、LiCoPO4、Li2CoP2O7などが挙げられる。正極活物質には、例えば前記例示のもののうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
後述するように、正極合剤は固体電解質を含有する場合があるが、その正極合剤が含有する正極活物質の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、正極活物質は一次粒子でも一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。平均粒子径が前記範囲の正極活物質を使用すると、正極に含まれる固体電解質との界面を多くとれるため、電池の負荷特性がより向上する。
【0073】
また、固体電解質を含有する正極合剤に含まれる正極活物質は、固体電解質の副反応をより良好に抑制する観点から、その表面に、固体電解質との反応を抑制するための反応抑制層を有していることが好ましい。
【0074】
反応抑制層は、イオン伝導性を有し、正極活物質と固体電解質との反応を抑制できる材料で構成されていればよい。反応抑制層を構成し得る材料としては、例えば、Liと、Nb、P、B、Si、Ge、Ti、Zr、TaおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含む酸化物、より具体的には、LiNbO3などのNb含有酸化物、Li3PO4、Li3BO3、Li4SiO4、Li4GeO4、LiTiO3、LiZrO3、Li2WO4などが挙げられる。反応抑制層は、これらの酸化物のうちの1種のみを含有していてもよく、また、2種以上を含有していてもよく、さらに、これらの酸化物のうちの複数種が複合化合物を形成していてもよい。これらの酸化物の中でも、Nb含有酸化物を使用することが好ましく、LiNbO3を使用することがより好ましい。
【0075】
反応抑制層は、正極活物質:100質量部に対して0.1~2.0質量部で表面に存在することが好ましい。この範囲であれば正極活物質と固体電解質との反応を良好に抑制することができる。
【0076】
正極活物質の表面に反応抑制層を形成する方法としては、ゾルゲル法、メカノフュージョン法、CVD法、PVD法、ALD法などが挙げられる。
【0077】
正極合剤における正極活物質の含有量は、20~95質量%であることが好ましい。
【0078】
正極合剤には、導電助剤を含有させることができる。その具体例としては、負極合剤に含有させ得るものとして先に例示した導電助剤と同じものなどが挙げられる。正極合剤における導電助剤の含有量は1~10質量%であることが好ましい。
【0079】
正極合剤にはバインダを含有させることができる。その具体例としては、負極合剤に含有させ得るものとして先に例示したバインダと同じものなどが挙げられる。なお、例えば正極合剤に硫化物系固体電解質を含有させる場合のように、バインダを使用しなくても、正極合剤において良好な成形性が確保できる場合には、正極合剤にはバインダを含有させなくてもよい。
【0080】
正極合剤において、バインダを要する場合には、その含有量は、15質量%以下であることが好ましく、また、0.5質量%以上であることが好ましい。他方、正極合剤において、バインダを要しなくても良好な成形性が得られる場合には、その含有量が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、バインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
【0081】
正極合剤には、固体電解質を含有させることができる。その具体例としては、負極合剤に含有させ得るものとして先に例示した固体電解質と同じものなどが挙げられる。前記例示の固体電解質の中でも、リチウムイオン伝導性が高く、また、正極合剤の成形性を高める機能を有していることから、硫化物系固体電解質を用いることがより好ましい。
【0082】
正極合剤に固体電解質を含有させる場合、その含有量は、4~80質量%であることが好ましい。
【0083】
正極が集電体を有する場合、その集電体には、アルミニウムやニッケル、ステンレス鋼などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル;カーボンシート;などを用いることができる。
【0084】
正極は、例えば、正極、さらには必要に応じて添加される導電助剤、固体電解質およびバインダなどを混合して調製した正極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで、正極合剤の成形体を形成する工程を経て製造することができる。
【0085】
正極合剤の成形体を有する正極の場合、そのままで正極とすることができるほか、正極合剤の成形体を集電体と圧着するなどして貼り合わせることで、正極集電体の片面または両面に正極合剤の成形体で構成された層(正極合剤層)を有する正極を製造することができる。
【0086】
また、集電体を有する正極の場合、前記の正極合剤を溶媒に分散させた正極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を、集電体に塗布し、乾燥した後、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をして、集電体の表面に正極合剤層を形成する方法によっても、製造することができる。
【0087】
加圧成形によって形成される正極合剤の成形体の厚みは、通常は50μm以上であるが、電池の高容量化の観点から、200μm以上であることが好ましい。また、正極合剤の成形体の厚みは、通常、3000μm以下であり、電池の負荷特性を高める観点から、500μm以下であることが好ましい。
【0088】
さらに、溶媒を含有する正極合剤含有組成物を用いて集電体上に正極合剤層を形成することで製造される正極の場合には、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、50~1000μmであることが好ましい。
【0089】
<固体電解質層>
リチウムイオン二次電池が全固体二次電池である場合、正極と負極との間に介在させる固体電解質層における固体電解質には、正極に使用し得るものして先に例示した各種の硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質および酸化物系固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。ただし、電池特性をより優れたものとするためには、硫化物系固体電解質を含有させることが好ましく、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質を含有させることがより好ましく。そして、正極、負極および固体電解質層の全てに、硫化物系固体電解質を含有させることがさらに好ましく、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質を含有させることが特に好ましい。
【0090】
固体電解質層は、樹脂製の不織布などの多孔質体を支持体として有していてもよい。
【0091】
固体電解質層は、固体電解質を加圧成形などによって圧縮する方法;固体電解質を溶媒に分散させて調製した固体電解質層形成用組成物を基材(支持体となる多孔質体を含む)や正極、負極の上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理などの加圧成形を行う方法;などで形成することができる。
【0092】
固体電解質層形成用組成物に使用する溶媒は、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが望ましく、固体電解質を含有する正極合剤含有組成物用の溶媒として先に例示した各種の溶媒と同じものを使用することが好ましい。
【0093】
固体電解質層の厚みは、10~500μmであることが好ましい。
【0094】
<電極体>
正極と負極とは、固体電解質層を介して積層した積層電極体や、さらにこの積層電極体を巻回した巻回電極体の形態で、電池に用いることができる。
【0095】
なお、固体電解質層を有する電極体を形成するに際しては、正極と負極と固体電解質層とを積層した状態で加圧成形することが、電極体の機械的強度を高める観点から好ましい。
【0096】
<リチウムイオン二次電池の形態>
本発明のリチウムイオン二次電池の一例を模式的に表す断面図を
図1に示す。
図1に示すリチウムイオン二次電池1は、外装缶40と、封口缶50と、これらの間に介在する樹脂製のガスケット60で形成された外装体内に、正極10、負極20、および正極10と負極20との間に介在する固体電解質層30が封入されている。
【0097】
封口缶50は、外装缶40の開口部にガスケット60を介して嵌合しており、外装缶40の開口端部が内方に締め付けられ、これによりガスケット60が封口缶50に当接することで、外装缶40の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。
【0098】
外装缶および封口缶にはステンレス鋼製のものなどが使用できる。また、ガスケットの素材には、ポリプロピレン、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
【0099】
また、
図2および
図3に、本発明のリチウムイオン二次電池の他の例を模式的に表す図面を示す。
図2はリチウムイオン二次電池の平面図であり、
図3は
図2のI-I線断面図である。
【0100】
図2および
図3に示すリチウムイオン二次電池100は、2枚の金属ラミネートフィルムで構成したラミネートフィルム外装体500内に電極体200を収容しており、ラミネートフィルム外装体500は、その外周部において、上下の金属ラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。
【0101】
電極体200は、リチウムイオン二次電池100が全固体二次電池の場合には、正極と、負極と、これらの間に介在する固体電解質層とが積層されて構成されている。
【0102】
なお、
図3では、図面が煩雑になることを避けるために、ラミネートフィルム外装体500を構成している各層や、電極体200を形成している各構成要素(正極、負極など)を区別して示していない。
【0103】
電極体200の有する正極は、電池100内で正極外部端子300と接続しており、また、図示していないが、電極体200の有する負極も、電池100内で負極外部端子400と接続している。そして、正極外部端子300および負極外部端子400は、外部の機器などと接続可能なように、片端側をラミネートフィルム外装体500の外側に引き出されている。
【0104】
リチウムイオン二次電池の形態は、
図1に示すような、外装缶と封口缶とガスケットとで構成された外装体を有するもの、すなわち、一般にコイン形電池やボタン形電池と称される形態のものや、
図2および
図3に示すような、樹脂フィルムや金属-樹脂ラミネートフィルムで構成された外装体を有するもの以外にも、金属製で有底筒形(円筒形や角筒形)の外装缶と、その開口部を封止する封止構造とを有する外装体を有するものであってもよい。
【0105】
本発明のリチウムイオン二次電池は、電圧検出方式を利用した検出手段での残存容量の検出が容易であり、こうした検出手段を備えた機器の電源用途などに好適である。
【実施例0106】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0107】
実施例1
<正極の作製>
394gの脱水エタノール中で、0.86gのリチウムおよび38.7gのペンタエトキシニオブを混合し、反応抑制層形成用コート液を調製した。次に、転動流動層を用いたコート装置にて、1000gのLiCoO2(正極活物質)上に、前記反応抑制層形成用コート液を毎分2gの速度で塗布した。得られた粉末を350℃で熱処理することで、LiCoO2の表面に、LiCoO2:100質量部に対して、2質量部のLiNbO3で構成された反応抑制層を形成した。
【0108】
反応抑制層を表面に形成したLiCoO2と、気相成長炭素繊維(導電助剤)と、Li6PS5Cl(硫化物系固体電解質)とを混合して正極合剤を調製した。前記LiCoO2と導電助剤と硫化物系固体電解質の混合比は、質量比で66:4:30であった。この正極合剤:79mgを直径:7.5mmの粉末成形金型に投入し、プレス機を用いて1000kgf/cm2の圧力で成形を行い、円柱形状の正極合剤成形体よりなる正極を作製した。
【0109】
<固体電解質層の形成>
前記粉末成形金型内の前記固体電解質層の上に、正極に使用したものと同じ硫化物系固体電解質:8mgを入れ、プレス機を用いて1000kgf/cm2の圧力で成形を行い、正極合剤成形体の上に固体電解質層を形成した。
【0110】
<負極の作製>
Li4Ti5O12(第1の負極活物質)と、W18O49(第2の負極活物質)と、固体電解質層に使用したものと同じ硫化物固体電解質と、グラフェン(導電助剤)とを混合し、よく混練して負極合剤を調製した。この負極合剤においては、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率は、質量比で59:32:9であり、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合は、それぞれ、70質量%、30質量%で、負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合は、それぞれ、84体積%、16体積%であった。
【0111】
次に、前記負極合剤:93mgを前記粉末成形金型内の前記固体電解質層の上に投入し、プレス機を用いて6000kgf/cm2の圧力で成形を行い、前記固体電解質層の上に負極合剤成形体よりなる負極を形成することにより、正極、固体電解質層および負極が積層された積層電極体を作製した。得られた積層電極体では、正極と負極との対向面積Sが0.454cm2で、負極の高さhが0.080cmであり、h/Sの値は0.18(cm-1)であった。
【0112】
<リチウムイオン二次電池(全固体二次電池)の組み立て>
東洋炭素株式会社製の可撓性黒鉛シート「PERMA-FOIL(製品名)」(厚み:0.1mm、見かけ密度:1.1g/cm3)を前記積層電極体と同じ大きさに打ち抜いたものを2枚用意し、そのうちの1枚を、ポリプロピレン製の環状ガスケットをはめ込んだステンレス鋼製の封口缶の内底面上に配置した。次に、前記黒鉛シートの上に、負極を前記黒鉛シート側にして前記積層電極体を重ね、その上に前記黒鉛シートのもう1枚を配置し、さらにステンレス鋼製の外装缶をかぶせた後、外装缶の開口端部を内方にかしめて封止を行うことにより、封口缶の内底面と前記積層電極体との間、および、外装缶の内底面と前記積層電極体との間に、それぞれ前記黒鉛シートが配置された、直径約9mmの扁平形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0113】
なお、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0363cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0114】
比較例1
負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、20質量%、80質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、36体積%、64体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で68.5:24.8:6.7に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:82mgを用い、前記正極合剤:83mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.065cmであり、h/Sの値は0.14(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0297cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0115】
比較例2
比較例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:68mgを用い、前記正極合剤:71mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.047cmであり、h/Sの値は0.10(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0212cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0116】
比較例3
比較例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:54mgを用い、前記正極合剤:56mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.037cmであり、h/Sの値は0.08(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0170cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0117】
実施例2
第2の負極活物質をTiNb2O7(Ti1/3Nb2/3O7/3)に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、80質量%、20質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、83体積%、17体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で52:39:9に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:82mgを用い、前記正極合剤:80mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.080cmであり、h/Sの値は0.18(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0363cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0118】
実施例3
第2の負極活物質をTiNb2O7に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、75質量%、25質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、79体積%、21体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で56:34:10に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:82mgを用い、前記正極合剤:83mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.078cmであり、h/Sの値は0.17(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0354cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0119】
実施例4
実施例3と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:69mgを用い、前記正極合剤:69mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.065cmであり、h/Sの値は0.14(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0295cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0120】
実施例5
実施例3と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:57mgを用い、前記正極合剤:58mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.055cmであり、h/Sの値は0.12(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0250cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0121】
実施例6
第2の負極活物質をTiNb2O7に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、66質量%、34質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、72体積%、28体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で57:34:9に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:79mgを用い、前記正極合剤:87mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.075cmであり、h/Sの値は0.17(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0340cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0122】
実施例7
実施例6と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:66mgを用い、前記正極合剤:73mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.065cmであり、h/Sの値は0.14(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0286cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0123】
実施例8
実施例6と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:56mgを用い、前記正極合剤:61mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.052cmであり、h/Sの値は0.11(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0236cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0124】
実施例9
第2の負極活物質をTiNb2O7に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、50質量%、50質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、56体積%、44体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で58:33:9に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:75mgを用い、前記正極合剤:95mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.069cmであり、h/Sの値は0.15(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0313cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0125】
実施例10
実施例9と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:62mgを用い、前記正極合剤:80mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.057cmであり、h/Sの値は0.13(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0259cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0126】
実施例11
実施例9と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:52mgを用い、前記正極合剤:67mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.048cmであり、h/Sの値は0.11(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0218cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0127】
実施例12
第2の負極活物質をTiNb2O7に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、33質量%、67質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、39体積%、61体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で29.3:9:32.5変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:49mgを用い、前記正極合剤:74mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.045cmであり、h/Sの値は0.10(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0204cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0128】
実施例13
実施例12と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:38mgを用い、前記正極合剤:56mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.035cmであり、h/Sの値は0.08(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0159cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0129】
実施例14
第2の負極活物質をCu0.2Al0.74Nb11.1O27.9(Cu2/120Al7/120Nb111/120O279/120)に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、66質量%、34質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、72体積%、28体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で57:34:9に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:79mgを用い、前記正極合剤:87mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.075cmであり、h/Sの値は0.17(cm-1)であった。得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0340cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0130】
実施例15
第2の負極活物質をCu0.2Al0.74Nb11.1O27.9(Cu2/120Al7/120Nb111/120O279/120)に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、33質量%、67質量%(負極活物質の全量を100体積%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合が、それぞれ、39体積%、61体積%)に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で29.3:9:32.5に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:68mgを用い、前記正極合剤:103mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.063cmであり、h/Sの値は0.14(cm-1)であった。得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0286cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0131】
実施例16
実施例15と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:49mgを用い、前記正極合剤:74mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.045cmであり、h/Sの値は0.10(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0204cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0132】
実施例17
実施例15と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:38mgを用い、前記正極合剤:56mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における積層電極体は、負極の高さhが0.035cmであり、h/Sの値は0.08(cm-1)であった。また、得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0159cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0133】
比較例4
負極活物質にTiNb2O7のみを使用し、前記TiNb2O7、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で69:25:6に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:59mgを用い、前記正極合剤:122mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0218cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、45体積%であった。
【0134】
比較例5
負極活物質にLi4Ti5O12のみを使用し、前記Li4Ti5O12、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で55:35:10に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:98mgを用い、前記正極合剤:60mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0431cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0135】
比較例6
第2の負極活物質をNb2O5に変更し、負極活物質の全量を100質量%としたときの、第1の負極活物質の割合および第2の負極活物質の割合を、それぞれ、66質量%、34質量%に変更し、負極活物質(第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計)、硫化物系固体電解質、およびグラフェンの比率を、質量比で57:34:9に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:79mgを用い、前記正極合剤:87mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られたリチウムイオン二次電池における負極(負極合剤成形体)の見かけ体積は0.0340cm3であり、その見かけ体積を100体積%としたときの固体電解質の割合Cは、51体積%であった。
【0136】
実施例1~17および比較例1~6のリチウムイオン二次電池について、0.05Cの電流値で所定の電圧になるまで定電流充電し、続いて電流値が0.01Cになるまで定電圧充電を行い、次に0.05Cの電流値で所定の電圧になるまで定電流放電し、電池の初期容量(0.05C容量)を求めた。前記充電条件と同じ条件で再度充電し、SOCが所定の値(30%、20%、10%または5%)となるまで0.05Cの電流値で定電流放電させてから、開回路電圧を測定した。そして、各SOCでの開回路電圧から、各電池のΔE1、ΔE2およびΔE3を求め、ΔE2/ΔE1およびΔE3/ΔE2を算出した。
【0137】
なお、前記の定電流充電での電圧は、実施例1では3.3Vおよび3.0Vまで、比較例1~3では3.3Vまで、実施例2~17、比較例4、6では3.5Vまで、比較例2では2.8Vまでとし、前記の定電流放電での電圧は1.0Vまでとした。
【0138】
次に、各SOCにおける開回路電圧を測定した電池を前記充電条件と同じ条件で再度充電し、電流値を0.5Cに変えた以外は前記放電条件と同じ条件で定電流放電して0.5C容量を測定した。そして、各電池について、0.5C容量を0.05C容量で除した値を百分率で表した容量維持率を求めることで、負荷特性を評価した。
【0139】
実施例1~17および比較例1~6の各リチウムイオン二次電池の構成を表1~表4に示し、前記の評価結果を表5~表8に示す。表1~表4中の「第2の負極活物質」における「割合Z」の欄の数値は、第1の負極活物質および第2の負極活物質の合計体積:100体積%中の第2の負極活物質の割合Z(体積%)を意味している(後記の表9においても同様である)。また、表1中の「式(3)の右辺」は、前記式(3)の右辺である「-0.34×(Z/100)+0.30」の値を意味し、表2中の「式(1)の右辺」は、前記式(1)の右辺である「-0.48×(Z/100)+0.30」の値を意味し、表3中の「式(2)の右辺」は、前記式(2)の右辺である「-0.35×(Z/100)+0.30」の値を意味している。また、表5において、「実施例1-1」では、実施例1のリチウムイオン二次電池について、充電時の電圧を3.3Vまでとした場合の評価結果を示しており、「実施例1-2」は、実施例1のリチウムイオン二次電池について、充電時の電圧を3.0Vまでとした場合の評価結果を示している。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
表1~表8に示す通り、実施例1~17のリチウムイオン二次電池は、ΔE1、ΔE2/ΔE1およびΔE3/ΔE2のいずれもが好適な値であり、SOCが30%以下の時点での急激な電圧降下が抑制されていた。よって、実施例1~17のリチウムイオン二次電池であれば、電圧検出方式を利用した検出手段を適用した場合に、放電末期においても残存容量を高い正確性で検出することができる。
【0149】
これに対し、第2の負極活物質の体積割合が大きすぎる負極を使用した比較例1~3の電池、第2の負極活物質に該当する負極活物質のみを使用した比較例4の電池、第1の負極活物質であるLi4Ti5O12のみを負極活物質に使用した比較例5の電池、および第2の負極活物質に変えてNb2O5を使用した比較例6の電池は、ΔE1、ΔE2/ΔE1およびΔE3/ΔE2のいずれかが不適な値であり、放電末期における残存容量を正確に検知することが困難な電池であった。
【0150】
また、実施例1(実施例1-1)および比較例1~3、5の各リチウムイオン二次電池におけるh/SとZとの関係を表すグラフを
図4に示す。
図4中の直線は、式「h/S=-0.34×(Z/100)+0.30」を表しており、この直線よりも図中下側にプロットされている電池(実施例1の電池)は、表1および表5に示す通り、負荷特性が良好であった。
【0151】
さらに、実施例2~13および比較例5の各リチウムイオン二次電池におけるh/SとZとの関係を表すグラフを
図5に示す。
図5中の直線は、式「h/S=-0.48×(Z/100)+0.30」を表しており、この直線よりも図中下側にプロットされている電池(実施例2~5、7、8の電池)は、表2および表6に示す通り、負荷特性が良好であった。
【0152】
また、実施例14~17および比較例5の各リチウムイオン二次電池におけるh/SとZとの関係を表すグラフを
図6に示す。
図6中の直線は、式「h/S=-0.35×(Z/100)+0.30」を表しており、この直線よりも図中下側にプロットされている電池(実施例17、20の電池)は、表3および表7に示す通り、負荷特性が良好であった。
【0153】
実施例18
正極活物質にLiNi0.5Mn1.5O4を使用し、実施例1と同様にして、その表面に反応抑制層を形成し、前記LiNi0.5Mn1.5O4と、固体電解質層に使用したものと同じ硫化物固体電解質と、グラフェン(導電助剤)とを混合し、よく混練して正極合剤を調製した。前記LiNi0.5Mn1.5O4と導電助剤と硫化物系固体電解質の混合比は、質量比で70:3:27であった。この正極合剤:99mgを用い、実施例2と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:69mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0154】
実施例19
正極活物質にLiMn2O4を使用し、実施例1と同様にして、その表面に反応抑制層を形成し、前記LiMn2O4と、固体電解質層に使用したものと同じ硫化物固体電解質と、グラフェン(導電助剤)とを混合し、よく混練して正極合剤を調製した。前記LiMn2O4と導電助剤と硫化物系固体電解質の混合比は、質量比で70:3:27であった。この正極合剤:90mgを用い、実施例2と同様にして負極合剤を調製し、この負極合剤:71mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0155】
比較例7
比較例5で調製したものと同じ負極合剤:97mgを用い、実施例18で調製したものと同じ正極合剤:57mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0156】
比較例8
比較例5で調製したものと同じ負極合剤:81mgを用い、実施例19で調製したものと同じ正極合剤:77mgを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0157】
実施例18、19および比較例7、8のリチウムイオン二次電池について、実施例1の電池などと同様にして、ΔE1、ΔE2およびΔE3を求め、ΔE2/ΔE1およびΔE3/ΔE2を算出した。なお、定電流充電での電圧は、実施例18では4.2Vまで、実施例19、比較例7では3.5Vまで、比較例8では2.8Vまでとし、定電流放電での電圧は、いずれも1.5Vまでとした。
【0158】
実施例18、19および比較例7、8の各リチウムイオン二次電池の構成を表9に示し、前記の評価結果を表10に示す。
【0159】
【0160】
【0161】
表9および表10に示す通り、実施例18、19のリチウムイオン二次電池は、ΔE2/ΔE1およびΔE3/ΔE2のいずれもが好適な値であり、SOCが30%以下の時点での急激な電圧降下が抑制されていた。よって、実施例18、19のリチウムイオン二次電池であれば、電圧検出方式を利用した検出手段を適用した場合に、放電末期においても残存容量を高い正確性で検出することができる。
【0162】
これに対し、第1の負極活物質であるLi4Ti5O12のみを負極活物質に使用した比較例7、8の電池は、ΔE2/ΔE1およびΔE3/ΔE2のいずれかが不適な値であり、放電末期における残存容量を正確に検知することが困難な電池であった。